次に、本発明に係るパネル施工機の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態のパネル施工機を示した外観斜視図であり、図2は、パネル施工機による太陽光パネルの施工状況を示した図である。本実施形態のパネル施工機1が施工対象とするソーラー発電施設は傾斜地にあり、傾斜架台300が斜面500に沿って設けられている。その傾斜架台300は斜面500に沿って長く、複数の太陽光パネル10が傾斜方向に連続して取り付けられるものである。例えば本実施形態では、パネル列310が3列設けられ、各々のパネル列310には6枚の太陽光パネル10が取り付けられる。
こうした傾斜地でのパネル取り付け作業は、作業者が太陽光パネル10を担いで傾斜架台300に配置させることは困難である。一方で、従来例のような平地対応のパネル施工機を使用することもできない。本実施形態のパネル施工機1は、こうした傾斜地に設置するソーラー発電施設の施工に対応したものであり、特に太陽光パネル10の配置を効率よく行うためのものである。ただし、パネル施工機1は、傾斜地でのパネル配置にとって特に効果的であるものの、これに限定されるわけではなく、通常の平地に設置するソーラー発電施設のパネル配置にも有効である。
傾斜地にあるソーラー発電施設の施工現場は、傾斜架台300を設置した斜面500の上方に作業路510が造成されている。傾斜架台300は、その作業路510から斜面500下方へと延びるように造られている。傾斜架台300は、斜面500及び作業路510に複数の架台柱301が垂直に立設され、その架台柱301に複数の傾斜梁302が架けられている。傾斜梁302は、斜面500に沿うように固定され、地面から所定の高さにある。一つのパネル列310では、太陽光パネル10の幅寸法よりも狭い間隔で2本の傾斜梁302が平行に設けられている。なお、本実施形態では、パネル施工機1から傾斜架台300に対して送り出される方向に直交する方向が太陽光パネル10の幅方向であり、図2に示す太陽光パネル10の長手方向を幅方向として説明する。
パネル施工機1を使用した太陽光パネル10の施工では、複数の太陽光パネル10が施工場所まで運搬され、斜面500上方の作業路510から傾斜架台300に沿って順番に下方へと送られ、傾斜梁302の所定位置に取り付けられる。こうした複数の太陽光パネル10の施工場所への運搬と、傾斜架台300への太陽光パネル10の送り出しとが一台のパネル施工機1によって行われる。
そのパネル施工機1は、走行装置2によって移動可能なものである。走行装置2は、走行フレームの車幅方向両側に一対のクローラ201が配置され、平地だけではなく傾斜地などでも走行可能なものである。パネル施工機1には、機体後方になる図1右側には走行駆動部202が設けられている。すなわち、機体後方にガソリンエンジンと油圧ポンプが搭載され、ガソリンエンジンの駆動により油圧ポンプから供給される油圧が油圧モータの駆動源となっている。そして、機体後方には走行操作部203が設けられ、作業者は、走行するパネル施工機1の後方側を連れ歩きしながら走行操作部203のレバー操作を行うことになる。
走行装置2の上には、搭載した太陽光パネル10を傾斜架台300へと送り出す作業部3と、傾斜架台300に対する作業部3の位置決めを行う調整部4とが構成されている。そこで先ず作業部3の構成について説明する。その作業部3は、調整部4のユニットフレーム90上に組み付けられている。その作業部3には、6枚の太陽光パネルを搭載することが可能であり、図1に示すように、機体の幅方向からの挿入するように図面手前側が開放されたコの字形構造になっている。したがって、その内側がパネル搭載スペース8になっている。なお、本実施形態では、図1に示すように、パネル施工機1について前後方向をX軸方向、幅方向(横方向)をY軸方向、そして高さ方向をZ軸方向として説明する。
作業部3は、太陽光パネルを傾斜架台300へ送り出すための送り出し位置が上部にあり、そこに揺動可能なコの字形状の揺動フレーム11が設けられている。揺動フレーム11は、図面手前の機体横側にコの字両端部を支点として揺動可能になっており(図2参照)、ユニットフレーム90との間に電動シリンダを駆動手段とするパネル傾斜装置12が前後両側に設けられている。揺動フレーム11は、そのパネル傾斜装置12によって図2に示すような傾斜姿勢になり、内側に保持された太陽光パネル10が傾斜架台300へ向けて送り出し可能な状態になる。
また、作業部3には、パネル傾斜装置12と同様に、機体の前後両側の揺動フレーム11とユニットフレーム90との間にパネル移動装置13が組み付けられている。パネル移動装置13は、パネル搭載スペース8内に水平な姿勢の太陽光パネルを上下方向に6枚搭載し、順番に揺動フレーム11の高さへと移動させるものである。そして、揺動フレーム11には、送り出し位置まで上昇した太陽光パネルを保持して、傾斜架台300へ送り出すためのパネル送り装置14が設けられている。パネル送り装置14は、図2に示すように傾斜した太陽光パネル10の上側端部を把持し、その太陽光パネルを吊った状態で傾斜架台300へと送るものである。また、作業部3には、送り出し位置まで上昇した太陽光パネルをパネル移動装置13から受け取り、傾斜架台300への移動を案内する案内装置15などが設けられている。そこで次に、作業部3に構成されたパネル傾斜装置12、パネル移動装置13、パネル送り装置14及び案内装置15などについて更に詳しく説明する。
ここで、図3は、パネル傾斜装置12を示した簡略図である。パネル傾斜装置12は、コの字形の揺動フレーム11のうち機体の前後に位置する2箇所の横梁部材111(図1参照)に対して同じように構成されている。揺動フレーム11は、一対の横梁部材111に縦梁部材112の両端部が固定されてコの字形になっている。その横梁部材111には、コの字の端部側に支柱21が直交して固定され、支柱21の下端部がユニットフレーム90に対して軸着されている。更に、横梁部材111とユニットフレーム90との間には傾斜用アクチュエータ22が連結されている。傾斜用アクチュエータ22は、シリンダ221に対してロッド222が伸縮作動する電動シリンダである。図示するように斜めに配置され、シリンダ221側端部がユニットフレーム90に対して軸着され、ロッド222側端部が揺動フレーム11に対して支柱21とは反対側端部に軸着されている。
パネル傾斜装置12は、傾斜用アクチュエータ22の収縮作動により揺動フレーム11が実線で示すように水平姿勢になり、傾斜用アクチュエータ22の伸長作動により揺動フレーム11が一点鎖線で示すように傾斜姿勢になる。支柱21の下端部が支点となって揺動するため、傾斜姿勢の揺動フレーム11は、その下側端部がユニットフレーム90よりも傾斜架台300側に突き出し、傾斜梁302と重なる位置まで移動するようになっている。
次に、図4は、パネル移動装置13を示した簡略図であり、前後方向から示した(パネル搭載スペース8の外側からX軸方向に見た)図(A)と、横方向(Y軸方向)から示した図(B)である。パネル移動装置13は、パネル傾斜装置12と同じく横梁部材111の下方2箇所に設けられ、パネル搭載スペース8の前部と後部とに対称的に構成されている。そのパネル移動装置13は、平行な2本の回転軸25,26が上下に設けられ、それぞれ両端部に固定されたギア27を介して無端チェーン28が上下方向に掛けられている。
左右の無端チェーン28の間にはパネル移動用モータ29が固定され、その出力軸にカップリング30を介して鉛直方向に伝達軸31が連結されている。その伝達軸31と、直交する回転軸25とは、ウォームギアによって回転の伝達が行われるようになっている。すなわち、伝達軸31にはウォーム32が固定され、回転軸25にはウォームホイール33が固定されている。従って、パネル移動用モータ29の駆動により、回転軸25に回転が伝達され左右両側の無端チェーン28に同期した回転が与えられるようになっている。
左右の無端チェーン28には、L字形をしたプレートのパネル受け34が等間隔で6個固定されている。よって、パネル受け34は、パネル搭載スペース8側にあって無端チェーン28の鉛直部分(ギヤ27による曲線部分以外)に位置している場合には、図4(B)の実線で示すように水平に張り出している。こうした複数のパネル受け34がパネル搭載スペース8内の4箇所に設けられ、図1の矢印Y1方向から挿入される太陽光パネルに対し、その幅方向両端部を支える上下6段のスロットとして機能するものとなっている。また、パネル受け34の手前には、水平プレートが6段に固定されたガイド部材35がユニットフレーム90に固定されている(図1参照)。
パネル移動装置13では、機体前後に配置された2個のパネル移動用モータ29を同時に制御することにより、4本の無端チェーン28の回転が一致し、同一高さに位置する4箇所のパネル受け34の移動が合わせられる。そこで、図4(B)に示す矢印の方向にパネル受け34が上昇することにより、一点鎖線で示す送り出し位置に太陽光パネル10が配置される。その送り出し位置には、パネル受け34から太陽光パネル10を受け取って傾斜架台300への移動を案内する案内装置15が設けられている(図1参照)。図5は、その案内装置15を示した平面の簡略図であり、非案内状態(A)と案内状態(B)とが示されている。
図1に示すように、揺動フレーム11の横梁部材111には、パネルガイドプレート36が鉛直に固定され、その上部には上限ラインレール37が固定されている。パネルガイドプレート36は、送り出し位置まで上昇した太陽光パネル10を幅方向(X軸方向)の両側から挟み込む位置に配置され、上限ラインレール37は、パネル搭載スペース8内を上昇する太陽光パネル10の上限位置を特定するものである。パネルガイドプレート36は、パネル受け34と干渉しないように2箇所に切欠き部が形成され、その切欠き部以外の部分にはガイドローラ38が通るための貫通孔が6箇所に形成されている。
案内装置15は、上限ラインレール37によって位置決めされた太陽光パネル10に対し、ガイドローラ38がパネルガイドプレート36を通って図5(A)から(B)の状態になるよう構成されている。よって、送り出し位置まで上昇した太陽光パネル10は、幅方向両端部が、ガイドプレート36によって挟まれ、下側からはガイドローラ38によって支えられるようになっている。ガイドローラ38は、パネルガイドプレート36に沿った長ブラケット39に取り付けられている。また、その長ブラケット39はX軸スライダ40に固定され、図5に示すように(A)(B)間の移動が可能になっている。
案内装置15は、こうしたX軸スライダ40を駆動させる案内用アクチュエータ41が設けられている。案内用アクチュエータ41は電動シリンダであり、ロッド411がY軸方向に伸縮作動するよう固定されている。ロッド411の先端にはリード板42が固定されている。リード板42には2箇所に湾曲したリード孔421が形成され、各々のリード孔421内にはX軸スライダ40に固定されたローラ43が入っている。従って、案内用アクチュエータ41が駆動してリード板42がY軸方向に移動することにより、リード孔421内をローラ43が相対的に移動し、X軸スライダ40及びガイドローラ38がX軸方向に移動するようになっている。
次に、図5(B)に示す状態でガイドローラ38上に載せられた太陽光パネル10は、図1の矢印Y1方向に押されてパネル送り装置14によって保持されるようになっている。図6は、パネル送り装置14に太陽光パネル10をY1方向に押すパネルプッシュ装置16を示した簡略図であり、平面図(A)とY軸方向から見た図(B)である。パネルプッシュ装置16は、図1に示すように横梁部材111の先端部分に設けられている。パネルプッシュ装置16は、横梁部材111にプッシュ用アクチュエータ45が固定されている。プッシュ用アクチュエータ45は電動シリンダであり、ロッドがY軸方向に伸縮作動するようになっている。
プッシュ用アクチュエータ45には円筒形状のリードパイプ46が固定され、その内部をロッドが伸縮するようになっている。リードパイプ46には、直線部分と旋回部分とを有するリード孔461が形成されている。そして、ロッドに直交して固定されたピン455がリード孔461内に位置し、リードパイプ46には、その外周を摺動可能なスライドブロック47が嵌め合わされている。スライドブロック47はピン455に固定され、プッシュ用アクチュエータ45の伸縮作動によってリード孔461内をピン455が直線移動及び旋回移動するのに従い、スライドブロック47も直線移動及び旋回移動を行うようになっている。そうしたスライドブロック47にプッシャ48が取り付けられている。
パネルプッシュ装置16は、プッシャ48が旋回することにより、太陽光パネル10の送り出しに干渉しないように実線で示す位置に退避し、また太陽光パネル10の押し付けが可能なように、一点鎖線で示す位置に移動するようになっている。こうしたパネルプッシュ装置16に対して、反対側すなわち揺動フレーム11の縦梁部材112側にはパネル送り装置14が設けられている。そこで、図7は、パネル送り装置14の機構を示した簡略図であり、図8は、図7のA−A矢視断面図である。
パネル送り装置14には、1本のアームバー50に対して2本の平行リンク51及び4本のクロスリンク52がピン結合され、アームバー50及び平行リンク51にそれぞれピン移動孔が形成された平行クランク140が左右2か所に構成されている。そして、アームバー50と平行リンク51とはクランプ用バネ49によって連結され、常に実線で示す接近状態になるように付勢力が作用している。こうした平行クランク140は送り出しバー53に設けられ、2つの平行クランク140に共通するアームバー50には、送り出しバー53に支点を有する手動レバー54が両端部にピン結合されている。
2箇所の平行クランク140の間には、送り出しバー53に対してクランプレバー55が揺動自在に取り付けられている。クランプレバー55は、X軸に平行な支持ピン551によって中間部分が軸着されたものであり、下端部分がストッパ用バネ56によって付勢されている。そのため、通常時のクランプレバー55は、一点鎖線で示すように傾斜姿勢であり、その上端部分が離間状態のアームバー50を下から支えている。そして、パネルプッシュ装置16によって太陽光パネル10が矢印で示すY1方向から押し当てられることにより、クランプレバー55がストッパ用バネ56の付勢力に抗して起立するようになっている。すなわち、クランプレバー55によるアームバー50の支えは外されることになる。
パネル送り装置14は、太陽光パネル10の縁部を上下方向から挟み込む把持ブロック57,58が設けられている(図1参照)。この把持ブロック57,58は、アームバー50や平行リンク51とY軸方向に見た場合に重なる位置配置された平行クランクであり、平行クランク140のクロスリンク52及びピン部材を共通にして構成されている。従って、アームバー50と平行リンク51との接近状態によって太陽光パネル10が把持ブロック57,58によって把持され、アームバー50と平行リンク51との離間状態によって太陽光パネル10が把持ブロック57,58から解放されるようになっている。
更に、パネル送り装置14は、こうして把持した太陽光パネルを傾斜架台300へ移動させることが可能な構成を有している。先ず、送り出しバー53にはX軸方向両端部の上面に一対のガイドローラ59が設けられ、下面の中間寄りに一対のガイドローラ60が設けられている。ガイドローラ59は、上限ラインレール37上を転動するものであり、ガイドローラ60は、傾斜架台300の傾斜梁302をガイドレールとして転動するものである。傾斜梁302はC形鋼によって構成されているため、その中にガイドローラ60が入り込み、傾斜梁302に沿って下降する太陽光パネルのX軸方向のずれが防止できるようになっている。
次に、把持ブロック57,58の把持によって太陽光パネルと一体になる送り出しバー53には、ウインチ17(図1参照)が連結されている。図9は、ウインチ17の構造を示した簡略図である。ウインチ17は、ドラム61にギヤ62,63を介して駆動モータ64が連結され、ドラム61には、ポリエステル製の一定幅の平ベルト65が、そのベルト幅で巻回されている。ウインチ17は、送り出しバー53の両端部に設けられ、そうした左右一対のウインチ17の平ベルト65が送り出しバー53に連結されている。従って、同期するウインチ17の巻出しにより、太陽光パネルが姿勢を保って傾斜下方へと送り出されるようになっている。
本実施形態のパネル施工機1は、太陽光パネル10を傾斜架台300へと送り出す作業部3が以上のように構成され、更にその下には作業部3を傾斜架台300に対して位置決めする調整部4が構成されている。調整部4は、作業部3に対するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向を調整するほか、Y軸を中心とした揺動角(θ1)及びZ軸を中心とした揺動角(θ2)の調整も可能なものであり、各調整機構が層状に構成されている。そこで、下層側の機構から順に説明する。
図10は、X軸調整機構を示した簡略図である。X軸調整機構は、走行部2上にベースフレーム66が固定され、その上にローラ671を備えたX軸フレーム67が搭載されている。X軸フレーム67は、ローラ671によってX軸方向に移動自在であるが、更に不図示の補助ローラがベースフレーム66に対してY軸方向やZ軸方向から当たり、同方向へずれが生じないように構成されている。また、ベースフレーム66とX軸フレーム67との間には台形ネジ機構が構成されている。すなわち、ハンドル681の付いたネジ軸68がベースフレーム66に対し、軸受を介してX軸方向に取り付けられ、そのネジ軸68が貫通するナット69がX軸フレーム67側に固定されている。よって、ネジ軸68の回転によりX軸方向に移動するナット69を介してX軸フレーム67のX軸方向の位置調整が行われるようになっている。
そうしたX軸フレーム67上には、Y軸を中心とした揺動角(θ1)調整機構が構成されている。図11は、θ1調整機構を示した簡略図である。X軸フレーム67の上にはY軸方向の揺動軸701を支点にしてθ1フレーム70が搭載され、X軸方向両端が上下して傾斜するように構成されている。θ1フレーム70のX軸方向両側には台形ネジ機構が構成されている。すなわち、上下の軸受によってZ軸方向に2本のネジ軸71が設けられ、それぞれにボール721を保持したナット72が螺合している。θ1フレーム70にはX軸方向両端部には凹部が形成され、そこにナット72のボール721が入り込んでいる。
一対のネジ軸71は、一方が右ネジであり他方が左ネジであるため、両方のネジ軸71に同方向の回転が与えられることにより一対のナット72が上下逆方向に移動し、θ1フレーム70に所定の傾きが生じるようになっている。そこで、ハンドル741が付いたシャフト74がX軸フレーム67に対して軸受を介してX軸方向に水平に取り付けられている。そして、そのシャフト74と、シャフト74に直交するギヤ軸75とに固定された傘歯車76同士が噛み合い、シャフト74の回転がギヤ軸75に伝達されるようになっている。ギヤ軸75には他のギヤ軸75との間にギヤを介して駆動チェーン77が掛け渡され、更に、2組あるギヤ軸75とネジ軸78との間にギヤを介して従動チェーン79が掛け渡されている。
よって、シャフト74に回転が与えられると、その回転が傘歯車76を介してギヤ軸75に伝達され、更に駆動チェーン77及び従動チェーン79を介して一対のネジ軸71に回転が与えられる。そして、ナット72,73が上下逆方向に移動することにより、θ1フレーム70が所定の角度に傾けられる。また、こうしたθ1フレーム70の上には作業部3の高さ調整を行う高さ調整機構が構成されている。図12及び図13は、そうした高さ調整機構を示した簡略図であり、図12はY軸方向から見た側面図であり、図13は平面図である。
高さ調整機構は、θ1フレーム70とZ軸フレーム80との間にあって、リンク機構と台形ネジ機構とが組み合わされたものであり、図13に示すように4箇所に同じ構成の昇降部81が設けられている。昇降部81には、Z軸フレーム80の下面に軸受を介してネジ軸82がX軸方向に配置され、そのネジ軸82にはナット83が螺合している。ナット83とθ1フレーム70との間に長尺の駆動側リンク84がピン結合され、その駆動側リンク84とZ軸フレーム80との間に短尺の従動側リンク85がピン結合されている。こうした駆動側リンク84及び従動側リンク85により、ナット83の直線運動(X軸方向の運動)を、Z軸フレーム80側連結ピンの直交する直線運動(Z軸方向の運動)に変換するスコット・ラッセルリンク機構が構成されている。
X軸方向の直線運動は、図13に示すように、Z軸フレーム80にはX軸方向に延びたシャフト86が軸受を介して設けられ、そのシャフト86に取り付けられたハンドル861からの回転によって、4箇所ある昇降部81のネジ軸82に同時に回転が伝達されるようになっている。すなわち、Z軸フレーム80のX軸方向外側には、シャフト86に固定されたギヤと、4本のネジ軸82に固定されたギヤとの間にチェーン87a,87b,87c,87dが掛けられている。
よって、ハンドル861を回すことでシャフト86に回転が与えられ、チェーン87a,87b,87c,87dを介して4箇所のネジ軸82が回転するようになっている。4箇所の昇降部81では、こうしたネジ軸82の回転と、その回転に伴うナット83の直線運動とは同期し、同じタイミングによる駆動側リンク84と従動側リンク85との運動により、Z軸フレーム80側連結ピンがZ軸方向に移動することで、Z軸フレーム80がθ1フレーム70に対してほぼ平行な状態で昇降することになる。
次に、図14は、上下方向のZ軸を中心とした揺動角(θ2)調整機構を示した簡略図である。θ2調整機構は、作業部3から送り出される太陽光パネルが傾斜梁302に沿って真っすぐ下降するように向きを合わせるものである。そこで、θ2テーブル88の長辺側(パネル搭載スペース8の解放側)の側面に位置決めバー881(図1参照)が設けられ、それが一つのパネル列310にある2本の架台柱301に当てられるようになっている。その際、位置決めバー881が架台柱301の位置に倣うように、Z軸フレーム80上のθ2テーブル88が、テーブルベアリング89を介して回転自在に搭載されている。
よって、X軸方向に2本ある架台柱301に位置決めバー881を当てることで、テーブルベアリング89の回転により自ずとθ2テーブル88が傾斜架台300に倣うことになる。そして、こうしたθ2調整機構の上には、Y軸方向の位置調整を行うY軸調整機構が設けられている。図15は、Y軸調整機構を示した簡略平面図である。Y軸調整機構は、θ2テーブル88と作業部3が搭載されたユニットフレーム90(図1参照)との間に台形ネジ機構が構成されている。台形ネジ機構は2箇所に設けられ、両方のネジ軸91に固定されたギヤ92にチェーン93が掛け渡されている。また、ネジ軸91と直交する方向にハンドル961が付いたシャフト96が軸受を介して支持されており、そのシャフト96と一方のネジ軸91とに固定された傘歯車97同士が噛み合っている。そのため、ハンドル961の操作により、傘歯車97やチェーン93を介して両方のネジ軸91に同期した回転が与えられるようになっている。
ネジ軸91にはナット95が螺合し、Y軸方向に配置された各ネジ軸91に対して平行なガイドレール93が各々に設けられ、そのガイドレール93にはガイドブロック94が摺動自在に組み付けられている。このY軸調整機構は、ナット95及びガイドレール93の組と、ネジ軸91及びガイドブロック94の組とがY軸方向に相対的に移動するものであり、前者が下方のθ2テーブル88に取り付けられ、後者が作業部3側のユニットフレーム90に取り付けられている。よって、ハンドル961を回せば、ナット95に対してネジ軸91がY軸方向に移動し、ガイドレール93に対してガイドブロック94が摺動するようになっている。
次に、図16は、パネル施工機1の制御構成を簡略的に示したブロック図である。パネル施工機1は、走行装置2の走行を操作するため機体後方側(図1右側)に設けられた走行操作部203のほか、反対の機体前方側には作業部3を操作するための作業操作部204が設けられ、各操作部203,204からの操作信号に基づいて走行装置2や作業部3の各駆動手段の駆動を制御するための制御装置205が設けられている。制御装置205の制御方式としては、例えば、PLC(Programable Logic Controller)によるシーケンス制御が採用される。
制御装置205には、作業部3を構成する各電動アクチュエータなどの作動を検出する各センサ206(センサは複数存在する)のほか、電源スイッチ207や緊急停止のための非常用ボタン208などが接続されている。パネル施工機1は、走行操作部203や作業操作部204による直接行う操作のほか、離れた位置から行う遠隔操作が可能なものである。すなわち、制御装置205には通信装置209が接続され、携帯装置210との間で操作のための通信が可能になっている。本実施形態では、例えば携帯端末210としてタブレットを使用し、通信装置209はデータ通信をBluetooth(登録商標)の規格で動作するようにする。そして、パネル施工機1には遠隔操作状態を表示するためのシグナルタワー211が設けられ、制御装置205に接続されている。
続いて、上記パネル施工機1を使用した太陽光パネル8の施工方法について説明する。パネル施工機1は、パネル搬入場所でパネル搭載スペース8内に最大6枚の太陽光パネルが搭載される。図1に示す状態のパネル施工機1に対して、パネル受け34によって構成されている6段のスロット部分に矢印Y1方向から挿入される。パネル受け34手前のガイド部材35にはストッパがあり、挿入された太陽光パネルはY1逆向きの移動が制限される。そこで、作業者による走行操作部203の操作により、走行装置2のクローラが駆動し、図2に示すように傾斜架台300上方の作業路510まで移動する。そして、停止したパネル施工機1に対し、調整部4の操作によって作業部3の位置決めが行われる。
パネル施工機1は、傾斜架台300のパネル列310に合わせて停止し、傾斜梁302に沿って太陽光パネルが正しく下降するようにした位置決め調整が行われる。すなわち、ユニットフレーム90に設けられたカギ98(図1参照)が架台柱301に引っ掛けられるようにして調整が行われる。先ずX軸方向には、図10に示すネジ軸68がハンドル681によって回され、ナット69を介してX軸フレーム67がX軸方向に移動する。よって、ハンドル681の回転方向及び回転量によってX軸フレーム67上の作業部3についてX軸方向の位置調整が行われる。
次に、図11に示すシャフト74がハンドル741によって回されると、その回転が傘歯車76を介して駆動チェーン77及び従動チェーン79に伝達され、2本のネジ軸71が回転する。2本のネジ軸71は逆向きに同期して回転し、左右一対のナット72が上下逆方向に移動して、ボール721を介して上下に押されたθ1フレーム70が傾く。よって、ハンドル741の回転方向及び回転量によりθ1フレーム70上の作業部3についてX軸の角度が調整される。
次に、図13に示すシャフト86がハンドル861によって回されると、その回転がチェーン87a,87b,87c,87dを介して各々伝達され、4箇所ある昇降部81のネジ軸82が回転する。これにより、ナット83のX軸方向の直線運動が駆動側リンク84及び従動側リンク85を介してZ軸方向の直線運動に変換され、Z軸フレーム80がほぼ水平な状態で上下動する。よって、ハンドル861の回転方向及び回転量によってZ軸フレーム80上の作業部3について高さ調整が行われる。
そして次に、図14に示すθ2テーブル88がテーブルベアリング89によって回転することにより、2本ある架台柱301に対して位置決めバー881が当てられ、太陽光パネルの送り出し方向が傾斜梁302に合わせられる。更に、図15に示す一対のネジ軸91がハンドル961によって回されると、不動側のナット95に対してネジ軸91がY軸方向に移動し、同じくガイドレール93に対してガイドブロック94が摺動する。よって、ハンドル961の回転方向及び回転量によってユニットフレーム90上の作業部3についてY軸方向の位置が調整される。
以上のような調整部4の位置調整によって太陽光パネルの送り出しが可能になる。調整部3による送り出しは、作業者が作業路510でパネル施工機1の作業操作部204から直接操作することができる他、携帯端末210を使用して傾斜架台300の下側から遠隔操作することもできる。携帯端末210を使用する場合、作業者は、作業位置までパネル施工機1を走行させ、そこで前述した調整部4に対する調整作業を行った後、傾斜架台300の下方側(太陽光パネルの取付位置)に移動し、その場で作業部3の操作を行い、送り出された太陽光パネルを傾斜梁302に取り付ける。すなわち、作業者一人で一連の作業を行うことができる。
そこで、作業部3による送り出し作業は、先ず図4に示すパネル送り用モータ29の駆動により無端チェーン28に回転が与えられ、最上位の太陽光パネル10が図4(B)の一点鎖線で示すように、上限ラインレール37(図1参照)に当たる上限位置まで持ち上げられる。そこで、図5に示す案内用アクチュエータ41の収縮作動により、ガイドローラ38がパネルガイドプレート36を突き抜け、図5(B)に示す位置に配置される。そこで、パネル送り用モータ29を僅かに逆回転させることにより、太陽光パネル10が下降してガイドローラ38に載り、揺動フレーム11側に移し替えられた状態になる。
その揺動フレーム11では、図6に示すプッシュ用アクチュエータ45の駆動によりプッシャ48が旋回しながらY1方向に移動し、太陽光パネル10が同方向に押される。太陽光パネル10は、プッシャ48によってY1逆向きの移動が制限されるほか、図7及び図8に示すパネル送り装置14のクランプレバー55に押し当てられる。よって、クランプレバー55がストッパ用バネ56の付勢力に抗して起立し、支えの外れたアームバー50がクランプ用バネ49によってと平行リンク51と互いに接近し、同じく接近する把持ブロック57,58によって太陽光パネル10が把持される。これにより、太陽光パネル10がパネル送り装置14によって保持され、ウインチ17による送り出しが可能になる。
次に、図3に示す傾斜用アクチュエータ22の駆動により揺動フレーム11が傾斜姿勢になり、太陽光パネルも傾斜架台300側に向けて前傾姿勢になる。このとき、揺動フレーム11及び太陽光パネルの角度は傾斜梁302の傾きに合わせられる。そして、図6に示すプッシャ48によるストッパ解除の後、ウインチ17の巻出しにより、平ベルト65に吊られた状態の太陽光パネルが傾斜梁302上を滑るようにして下降し、取付位置へと配置される。
その際、揺動フレーム11では、パネルガイドプレート36に挟まれた太陽光パネルがガイドローラ38上を移動し、送り出しバー53のガイドローラ59が上限ラインレール37上を転動して太陽光パネルの送り出しが案内される。一方、傾斜架台300では、送り出しバー53のガイドローラ60がC形鋼である傾斜梁302内に入ることにより太陽光パネルの送り出しが案内される。また、傾斜した揺動フレーム11は、図3に示すように先端が傾斜架台300に被さるように位置するため、ガイドローラ59の上限ラインレール37上の転動と、ガイドローラ60の傾斜梁302内の転動とが一部で重複し、パネル施工機1から傾斜架台300へと送り出しがスムーズに行われる。
そして、太陽光パネルは、ウインチ17からの平ベルト65の巻出しにより徐々に下降し、所定位置で停止して取り付け位置に配置される。そこで、太陽光パネルは作業者によって傾斜梁302に固定される。また、取り付け位置まで太陽光パネルが送られると、作業者によって図7に示す手動レバー54が実線で示す位置に戻される。よって、太陽光パネルは、把持ブロック57,58から解放されて送り出しバー53から切り離される。そして、ウインチ17の巻き戻しにより平ベルト65が巻き取られ、送り出しバー53が上昇して揺動フレーム11内に戻される。
その後、図3に示す傾斜用アクチュエータ22の収縮作動により揺動フレーム11が水平状態に戻され、図5に示す案内用アクチュエータ41の収縮作動により、ガイドローラ38が図5(A)の状態に戻される。そして、再び図4に示すパネル送り用モータ29の駆動により次の太陽光パネル10について同じように送り出しが行われる。パネル列310について6枚の太陽光パネルの取り付けが終われば、パネル施工機1はパネル搬入場所へと戻され、パネル搭載スペース8内に6枚の太陽光パネルが搭載され、作業場所への移動、調整部4の調整作業、太陽光パネルの送り出し作業及び取り付け作業が繰り返される。
よって、本実施形態のパネル施工機1によれば、6枚の太陽光パネル10を搭載して作業位置へと移動し、傾斜架台300に対して角度調整した太陽光パネル10を送り出して所定位置に配置することができる。すなわち、一度に複数枚の太陽光パネルを運搬することができ、別の作業機に移し替えることなくそのまま傾斜架台300に対して太陽光パネルを効率よく配置させることができる。しかもパネル施工機1は、傾斜架台300の上方から太陽光パネルを送り出すようにしたものであり、従来例のように傾斜架台にまで入り込んでパネル施工機自体を位置決めする必要がない点で作業者が容易に作業を進めることができる。また、調整部4のハンドル操作によって傾斜架台300に対する作業部3の位置決めを容易に行うことができる。
パネル施工機1は、そのパネル移動装置13が無端チェーン27のパネル受け34に太陽光パネル10を搭載して上昇させる構成であるため、パネル移動装置13の重心位置がパネル10の上昇に応じて上がってしまうことがなく作業時の安定を図ることができる。また、パネル移動装置13は太陽光パネル10を上昇させるだけであり、送り出し位置まで上昇した太陽光パネル10は揺動フレーム11に移し替えられて傾斜するため、この点でも大きな重心移動がなく作業時のパネル施工機1の安定を図ることができる。ただ、こうした構成はパネル施工機1のより高い安定を求めたものであり、作業時の安定が確保できるものであればこれに限定されることなく、例えばパネル移動装置13を傾かせた状態で太陽光パネルを上昇させるようにしたものであってもよい。
パネル施工機1は、パネルガイドプレート36からガイドローラ38が突き出すことによって、太陽光パネル10が揺動フレーム11に対して容易に移し替えられ、傾斜架台300への送り出し状態にすることができる。また、そのガイドローラ38やパネルガイドプレート36は、傾斜架台300へ送り出す太陽光パネルの移動をスムーズにし、移動姿勢を安定させることができる。また、揺動フレーム11へ移し替えられた太陽光パネル10は、パネルプッシュ装置16によってクランプレバー55に押し当てられるだけでパネル送り装置14に把持されるようになっている。また、パネル送り装置14から太陽光パネル10を解放する場合は、作業者が手動レバー54を倒すだけで容易に把持を解除することができる。
傾斜梁302に沿って太陽光パネル10を下降させるウインチ17は、平ベルト65がそのベルト幅で巻回されたものであるため、巻出し及び巻き戻しによって平ベルト65がドラム61に対して幅方向にずれてしまうことがない。よって、駆動を同期させる左右一対のウインチ17は、双方の平ベルト65の送り出し量が一致し、太陽光パネルの送り出しを正しい姿勢で行うことができる。また、パネル施工機1は、作業者が直接操作するほか、通信装置209を搭載して携帯端末210によって遠隔操作を行うこともできる。よって、傾斜架台300のようにパネル施工機1の停止位置と、太陽光パネル10の取り付け位置が離れているような場合でも、作業者は取り付け位置からパネル施工機1を操作することで、一人でも効率よく作業を行うことができる。
以上、本発明の部品回収装置の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、作業部3及び調整部4の具体的な構成は、パネル移動装置13やパネル送り装置14、台形ネジによる調整機構などに限定されるわけではなく、同様の作用効果を奏するものであれば異なる構造のものであってもよい。