JP2017006953A - レーザ溶接方法及びレーザ溶接機 - Google Patents
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Abstract
【課題】作業者の熟練度に依存せずにトーチ部の走査精度を担保でき、形成される溶接部の品質ばらつきを抑えることができるレーザ溶接方法及びレーザ溶接機を提供する。
【解決手段】このレーザ溶接方法は、出入口枠(第1のワーク)12の車両外側面(主面)14aに外板13の端部16を重ね合わせる配置工程と、ハンドトーチ型のレーザ溶接機1を用い、出入口枠12の車両外側面14aと外板13の端部16側の端面16aとに重ね合わせ部分Pに沿って連続的なレーザ溶接部W2を形成する溶接工程と、を備え、溶接工程において、レーザ溶接機1のトーチ部4を台車41に支持し、トーチ部4の先端に取り付けたコンタクトチップ7を出入口枠12及び外板13の少なくとも一方に当接させた状態で、台車41を手動で走行させることによりトーチ部4を走査する。
【選択図】図2
【解決手段】このレーザ溶接方法は、出入口枠(第1のワーク)12の車両外側面(主面)14aに外板13の端部16を重ね合わせる配置工程と、ハンドトーチ型のレーザ溶接機1を用い、出入口枠12の車両外側面14aと外板13の端部16側の端面16aとに重ね合わせ部分Pに沿って連続的なレーザ溶接部W2を形成する溶接工程と、を備え、溶接工程において、レーザ溶接機1のトーチ部4を台車41に支持し、トーチ部4の先端に取り付けたコンタクトチップ7を出入口枠12及び外板13の少なくとも一方に当接させた状態で、台車41を手動で走行させることによりトーチ部4を走査する。
【選択図】図2
Description
本発明は、レーザ溶接方法及びレーザ溶接機に関する。
ステンレス鋼製の鉄道車両構体の形成には、主に抵抗スポット溶接が用いられてきた。鉄道車両構体における溶接箇所としては、例えば外板と出入口枠との溶接が挙げられる。出入口枠は、車両のドアなどが配置される部分であり、雨などが車両内に入り込まないように水密性が要求される。抵抗スポット溶接では、溶接部自体によってワークの水密性を確保することが難しいため、溶接個所に対応して樹脂シールを配置して水密性の確保が行われていた。しかしながら、樹脂シールは劣化が早く、水密性の維持のためのメンテナンスが不可欠となる。
このような問題に対し、近年では、溶接部自体によってワークの水密性を確保可能な技術としてレーザ溶接が着目されている。例えば特許文献1に記載の鉄道車両用構体では、外板の端部の外面側に出入口枠の端部を重ね合わせ、出入口枠の端部と外板の主面とをレーザ溶接によって連続溶接している。
現状、レーザ溶接を行うに当たっては、溶接予定線に沿って自動でレーザ光を走査する溶接機が用いられている。しかしながら、自動溶接では、上述した外板と出入口枠との溶接のように立体的なワーク同士を溶接する場合に、レーザ光の倣い性(溶接予定線への沿わせ易さ)を確保しにくいという問題がある。自動溶接においてレーザ光の倣い性を確保するためには、ワークの形状に応じた複数点のティーチング(コンピュータへの加工座標の入力)がその都度必要となるため、溶接の作業性の向上が課題となっている。
このような課題に対し、ハンドトーチ型のレーザ溶接機を用いることが考えられる。ハンドトーチ型のレーザ溶接機では、レーザを出射させるトーチ部を手動で走査してワーク同士の溶接を実施するので、溶接前の複雑なティーチング作業は不要となる。一方、ハンドトーチ型のレーザ溶接機を用いる場合、手元のぶれなどが生じるため、トーチ部の走査の直線精度や曲線精度が作業者の熟練度に依存し易いという問題がある。作業者ごとにトーチ部の走査の直線精度や曲線精度がばらつくと、ワークに形成される溶接部の溶接品質がばらつくこととなり、品質の管理項目が増加してしまうおそれがある。
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、作業者の熟練度に依存せずにトーチ部の走査精度を担保でき、形成される溶接部の品質ばらつきを抑えることができるレーザ溶接方法及びレーザ溶接機を提供することを目的とする。
上記課題の解決のため、本発明の一側面に係るレーザ溶接方法は、第1のワークの主面に第2のワークの端部を重ね合わせる配置工程と、ハンドトーチ型のレーザ溶接機を用い、第1のワークの主面と第2のワークの端部側の端面とに重ね合わせ部分に沿って連続的なレーザ溶接部を形成する溶接工程と、を備え、溶接工程において、レーザ溶接機のトーチ部を台車に支持し、トーチ部の先端に取り付けたコンタクトチップを第1のワーク及び第2のワークの少なくとも一方に当接させた状態で、台車を手動で走行させることによりトーチ部を走査する。
このレーザ溶接方法では、ハンドトーチ型のレーザ溶接機を用いることで、自動溶接の場合とは異なり、レーザ光の倣い性を確保するための複雑なティーチング作業が不要となり、溶接の作業性を向上できる。また、このレーザ溶接方法では、手作業でレーザ溶接を行うにあたり、トーチ部を台車に支持し、トーチ部の先端のコンタクトチップをワークに当接させた状態で台車を走行させてトーチ部を走査する。これにより、ワークをガイドとして台車を走行させることが可能となるので、トーチ部を走査する際の手元のぶれを抑制できる。したがって、作業者の熟練度に依存せずにトーチ部の走査精度を担保できる。
また、台車にトーチ部を角度調整自在に支持する支持部を設け、溶接工程において、第1のワーク及び第2のワークに対するトーチ部の角度を支持部によって調整した後、コンタクトチップを第1のワーク及び第2のワークの少なくとも一方に当接させてもよい。こうすると、コンタクトチップを第1のワーク及び第2のワークに最適な角度で当接させることができる。
また、溶接工程において、トーチ部の走査距離を測距部によって計測してもよい。測距部によって走査距離を計測することで、レーザ溶接によって得られる接合体のトレーサビリティの確立が可能となる。
また、台車に導電性材料によって形成された走行ローラ及び本体部を設け、溶接工程において、レーザ溶接機のアースを本体部に対して接続した状態で、台車を第1のワークの主面に載置して移動させてもよい。この場合、レーザ溶接機からトーチ部、ワーク、台車、アースを経由する通電回路を形成できる。したがって、通電の有無によるレーザ溶接機のインターロック機能を実現でき、レーザ溶接作業の安全性を向上できる。
また、本発明の一側面に係るレーザ溶接機は、第1のワークの主面と第2のワークの端部との重ね合わせ部分に沿って連続的なレーザ溶接機を形成するハンドトーチ型のレーザ溶接機であって、第1のワーク及び第2のワークの少なくとも一方に当接するコンタクトチップを取り付け可能なトーチ部と、トーチ部を支持して手動で走行する台車と、を備える。
このレーザ溶接機では、自動溶接の場合とは異なり、レーザ光の倣い性を確保するための複雑なティーチング作業が不要となり、溶接の作業性を向上できる。また、このレーザ溶接機は、トーチ部を支持して手動で走行する台車を備えており、手作業でレーザ溶接を行うにあたり、トーチ部の先端のコンタクトチップをワークに当接させた状態で台車を走行させてトーチ部を走査することができる。これにより、ワークをガイドとして台車を走行させることが可能となるので、トーチ部を走査する際の手元のぶれを抑制できる。したがって、作業者の熟練度に依存せずにトーチ部の走査精度を担保できる。
また、台車は、トーチ部を角度調整自在に支持する支持部を有していてもよい。こうすると、コンタクトチップを第1のワーク及び第2のワークに最適な角度で当接させることができる。
また、レーザ溶接機は、トーチ部の走査距離を計測する測距部を更に備えていてもよい。測距部によって走査距離を計測することで、レーザ溶接によって得られる接合体のトレーサビリティの確立が可能となる。
また、台車は、導電性材料によって形成された走行ローラ及び本体部を有し、本体部に対して接続されたアースを更に備えていてもよい。この場合、レーザ溶接機からトーチ部、ワーク、台車、アースを経由する通電回路を形成できる。したがって、通電の有無によるレーザ溶接機のインターロック機能を実現でき、レーザ溶接作業の安全性を向上できる。
本発明によれば、作業者の熟練度に依存せずにトーチ部の走査精度を担保でき、形成される溶接部の品質ばらつきを抑えることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の一側面に係るレーザ溶接方法及びレーザ溶接機の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係るレーザ溶接機の一実施形態を示す概略正面図である。同図に示すように、レーザ溶接機1は、ワーク同士を所定の溶接予定線に沿ってレーザ溶接する装置として構成されている。レーザ溶接機1は、いわゆるハンドトーチ型のレーザ溶接機であり、例えばファイバレーザ発振器を内蔵する箱状の本体部2と、本体部2から延びる可撓性のケーブル3の先端に設けられたトーチ部4とを備えている。
本体部2は、CPU、メモリ、通信インタフェイス、ハードディスク等を備えたコンピュータシステムを内蔵し、レーザ発振条件等の制御を行う部分である。本体部2の上面側には、ディスプレイ5が設置されている。ディスプレイ5には、レーザ光の出力値やパルス幅などの諸条件の設定値、レーザ発振器の実温度・実出力値などが表示されるようになっている。また、本体部2の底面側には、キャスター6が設けられており、レーザ溶接機1が移動自在となっている。
トーチ部4は、ファイバレーザ発振器からのレーザ光を外部に出射する部分である。トーチ部4は、レーザ溶接を行う作業者が把持しやすい外径の略円筒状をなしている。トーチ部4の周面には、滑り止めや保護ガラスなどが設けられている。トーチ部4の先端には、コンタクトチップ7が着脱自在に取り付けられる。コンタクトチップ7は、中空の筒状部材であり、トーチ部4を通ったレーザ光は、コンタクトチップ7の先端から外部に出射する。レーザ溶接機1では、溶接対象や用途に応じて、先端形状の異なるコンタクトチップ7が用意されている。
レーザ溶接機1には、保護メガネ(不図示)が付属している。保護メガネの左右のレンズには、トーチ部4から出射するレーザ光に対応する波長の光をカットする機能が付加されている。このような保護メガネを装着することにより、レーザ溶接の際にレーザ光(若しくはその反射光)が作業者の目に直接入射してしまうことを防止でき、レーザ溶接時における作業者の安全性の向上が図られる。また、レーザ溶接機1には、インターロック機構のためのアース8(図6参照)が設けられている。
図2は、図1に示したレーザ溶接機に付属する台車の一例を示す斜視図である。同図に示す台車41は、トーチ部4を用いて作業者が手動でレーザ溶接を行う際に、トーチ部4の走査をサポートする装置である。台車41は、図2に示すように、本体部42と、支持部43と、操作部44と、測距部45とを備えて構成されている。
本体部42は、例えば金属などの導電性材料によって略直方体状に形成されている。本体部42の底面側には、台車41を任意の方向に走行させる複数の走行ローラ46が設けられている。ここでは、本体部42の底面側の四隅にそれぞれ走行ローラ46が設けられている。走行ローラ46の本体部分は、例えばアルミニウム合金、ステンレス鋼、銅合金などによって形成されている。また、ワークとの接触面となる走行ローラ46の表面は、本体部分と同材料によって形成されていてもよく、銅、導電性カーボンなどの他の導電性材料によって形成されていてもよい。
支持部43は、回転盤47と、支柱48と、回転軸49とによって構成されている。回転盤47は、本体部42の上面に取り付けられ、本体部42の上面の中心周りに回転自在となっている。回転盤47に対しては、例えば止めネジなどの回り止めが設けられており、任意の回転位置での固定が可能となっている。
また、支柱48は、肉厚の板状をなしており、回転盤47上に立設されている。支柱48の略中央部分には、断面円形の貫通孔が厚み方向に設けられている。回転軸49は、支柱48の貫通孔に挿通され、軸回りに回転自在となっている。回転軸49に対しては、例えば止めネジなどの回り止めが設けられており、任意の回転位置での固定が可能となっている。回転軸49における貫通孔からの突出部分の一端側には、断面円形の貫通孔が径方向に設けられている。この貫通孔には、レーザ溶接機1のトーチ部4が着脱自在に挿通可能となっている。トーチ部4に対しては、例えば止めネジなどの回り止めが設けられており、長さ方向及び軸回りの回転方向について任意の位置での固定が可能となっている。また、貫通孔の内壁には、ゴムなどの絶縁性部材が設けられており、回転軸49に固定されたトーチ部4と台車41とが電気的に絶縁されるようになっている。
かかる支持部43の構成により、支持部43に支持されるトーチ部4は、本体部42の上面の面内方向(水平方向)と、これに直交する垂直面内方向(垂直方向)との2軸に角度調整可能となっている。これにより、台車41をワークに対してセットした際に、ワークの主面内方向に対するトーチ部4の角度調整と、ワークの主面に対するトーチ部4の傾き角度の調整とをそれぞれ実施することができる。
操作部44は、作業者が台車41を走行させる際に把持する部分である。操作部44は、支持部43によるトーチ部4の支持位置と反対側に位置する本体部42の側面に固定された一対の支柱50,50と、支柱50,50の先端同士を連結するように設けられた把持部51とを有している。支柱50,50は、支持部43の支柱48よりも上方に延びており、把持部51は、支柱48よりも高い位置に設けられている。これにより、把持部51を把持して台車41を走行させる際に支持部43によって操作が阻害されることを防止できる。把持部51のグリップ部分には、滑り止めなどが施されていることが好適である。
測距部45は、台車41に支持されるトーチ部4の走査距離を計測する部分である。測距部45は、例えば走行ローラ46の回転数を検出する検出センサによって構成されている。測距部45は、検出結果を示す結果情報をレーザ溶接機1に対して送信する。結果情報を受信したレーザ溶接機1側では、形成する接合体の識別番号などと関連付けて結果情報を格納する。また、レーザ溶接機1側では、結果情報に基づくトーチ部4の走査距離と、結果情報の受信時刻とに基づいて、トーチ部4の走査速度を算出するようにしてもよい。この場合、トーチ部4の走査速度が適切な範囲となっているか否かをレーザ溶接機1側で判断することが可能となる。
図3は、レーザ溶接機を用いて形成される接合体の一例を示す断面図である。同図に示すように、本実施形態で例示する接合体11は、ステンレス鋼製の鉄道車両の出入口枠(第1のワーク)12を外板(第2のワーク)13に溶接してなる接合体である。
出入口枠12は、鉄道車両の側構体に設けられるドアの配置空間を形成する枠部材である。出入口枠12は、例えば厚さ1.0mm〜6.0mm程度のステンレス鋼によって形成されている。出入口枠12の一端側は平坦部14となっており、他端側は平坦部14から折れ曲がる折曲部15となっている。また、外板13は、鉄道車両の側構体の外郭部分を形成する平板部材である。外板13は、例えば厚さ1.0mm〜3.0mm程度のステンレス鋼によって形成されている。外板13は、例えば出入口枠12よりも薄いが、厚さの大小関係に特に制限はない。外板13と出入口枠12とが等厚であってもよい。
接合体11は、折曲部15の折れ曲がり方向が車内側を向くように、鉄道車両構体に適用される。本実施形態では、出入口枠12における平坦部14の車両外側面(主面)14aに対して外板13の端部16が重ね合されている。出入口枠12と外板13との重ね合わせ部分Pには、レーザ溶接又は抵抗スポット溶接が施されており、当該重ね合わせ部分Pの延在方向(ここでは図3の奥行方向)に沿って所定の間隔でスポット溶接部W1が形成されている。
また、出入口枠12の車両外側面14aと外板13における端部16側の端面16aとには、レーザ溶接による隅肉溶接が施されており、重ね合わせ部分Pの延在方向に沿って連続的なレーザ溶接部W2が形成されている。このような連続的なレーザ溶接部W2の形成により、出入口枠12と外板13とが強固かつ水密に接合されている。
外板13における端部16の車両外側の角部16bには、面取り加工が施されている。接合体11では、出入口枠12の車両外側に外板13が重ね合されており、外板13の車両外側に出入口枠12が重ね合される場合と比較すると、鉄道車両の側構体に出入口枠12の厚さ分の張り出しが生じることがなく、良好な外観を形成できる。一方、出入口枠12の近傍に外板13の端部16が位置しているため、接合体11を側構体に適用した鉄道車両では、乗客等が外板13の端部16に触れる可能性がある。したがって、外板13の角部16bを面取り加工によってR形状としておくことが好適である。
続いて、上述した接合体11の製造工程について説明する。なお、以下の図面では、説明の便宜上、出入口枠12の折曲部15を省略する。
接合体11を製造するにあたっては、図4に示すように、まず、出入口枠12及び外板13を用意し、出入口枠12の車両外側面14aに外板13の端部16を重ね合わせる(配置工程)。次に、抵抗スポット溶接機などを用い、出入口枠12と外板13との重ね合わせ部分Pにスポット溶接部W1を形成する。
スポット溶接部W1の形成の後、出入口枠12の車両外側面14aと外板13の端部16側の端面16aとの重ね合わせ部分Pに沿って連続的なレーザ溶接部W2を形成する(溶接工程)。図5は、溶接工程でレーザ溶接機に適用する第1のコンタクトチップ7Aの一例を示す図である。同図に示すように、第1のコンタクトチップ7Aは、例えば導電性材料によって形成され、中空の円筒状をなしている。第1のコンタクトチップ7Aを形成する導電性材料は、ワークに傷を発生させない観点から、ワークの形成材料よりも硬度が低い材料であることが好適である。このような導電性材料としては、例えば銅、銅合金、導電性カーボンなどが挙げられる。
第1のコンタクトチップ7Aは、ワークに対して所定の傾斜角をもって接触するように設計されている。ここでは、出入口枠12及び外板13に対し、第1のコンタクトチップ7Aが45°傾斜して接触するように設計されている。また、第1のコンタクトチップ7Aは、トーチ部4の先端に取り付けられた状態において、第1のコンタクトチップ7Aの中心軸L1とレーザ溶接機1の本体部2から導光されるレーザ光の光軸とが略一致するように設計されている。
第1のコンタクトチップ7Aの先端側には、凸状部21と、切欠部22とが設けられている。凸状部21は、レーザ溶接の際にワークに接触する部分である。凸状部21は、出入口枠12の車両外側面14aに接する第1面23と、外板13の端面16aに接する第2面24とによって構成されている。第1面23と第2面24とは、第1のコンタクトチップ7Aの先端において略直角をなしている。第1面23と第2面24とがなす角部25は、第1のコンタクトチップ7Aの中心軸L1上に位置している。この角部25には、R形状の切欠部26が設けられている。
切欠部22は、レーザ溶接の際にワークから発生する溶接ヒュームを第1のコンタクトチップ7Aの外部に放出する部分である。溶接ヒュームとは、溶接時にワークの表面で発生した金属蒸気が空気中で凝固した粉塵である。切欠部22は、第1のコンタクトチップ7Aの周面の一部を第2面24に連続して矩形に切り欠くことによって形成されている。切欠部22により、凸状部21をワークに接触させた状態においても凸状部21の近傍の内部空間が外部に露出し、溶接ヒュームの放出経路が形成される。
溶接工程では、図6及び図7に示すように、上記の第1のコンタクトチップ7Aをトーチ部4の先端に取り付ける。また、第1のコンタクトチップ7Aを取り付けたトーチ部4を台車41の支持部43に取り付け、出入口枠12の車両外側面14a及び外板13の車両外側面16cに対するトーチ部4の角度を支持部43によって調整する。そして、第1のコンタクトチップ7Aが出入口枠12の車両外側面14aと外板13の端部16との重ね合わせ部分Pを臨むように、台車41を出入口枠12の車両外側面14a上に載置する。
ここでは、平面視において、トーチ部4の長手方向の角度を溶接予定線に直交するように調整し、出入口枠12の車両外側面14a及び外板13の車両外側面16cに対するトーチ部4の傾き角度を45°に調整する。また、図6に示すように、レーザ溶接機1のアース8を台車41の本体部42に対して接続する。
トーチ部4の角度調整及び本体部42へのアース8の接続を行った後、台車41を操作し、第1のコンタクトチップ7Aにおける凸状部21の第1面23を出入口枠12の車両外側面14aに接触させると共に、第2面24を外板13の端面16aに接触させる。このとき、第1のコンタクトチップ7Aの切欠部26は、出入口枠12の車両外側面14aと外板13の端面16aとがなす隅部に対向する。
この状態で、トーチ部4からレーザ光を照射し、第1のコンタクトチップ7Aが当接する出入口枠12の車両外側面14a及び外板13の端面16aをガイドとしながら、出入口枠12の車両外側面14aと外板13の端部16との重ね合わせ部分Pに沿って台車41を手動で走行させる。これにより、出入口枠12の車両外側面14aと外板13の端面16aとが隅肉溶接され、レーザ溶接部W2によって出入口枠12と外板13とが水密かつ強固に接合される。台車41によるトーチ部4の走査開始位置から走行終了位置までの走査距離は、測距部45によって計測され、レーザ溶接機1に送信される。結果情報を受信したレーザ溶接機1側では、形成する接合体の識別番号などと関連付けて結果情報を格納する。
なお、溶接工程においては、台車41の本体部42、走行ローラ46、及び第1のコンタクトチップ7Aが導電性材料によって形成されているので、トーチ部4、ワーク、台車41、及びアース8を介した回路の通電状態に基づいて、レーザ溶接機1のインターロック機構を実現できる。例えば、第1のコンタクトチップ7Aがワークに接触しておらず、回路の通電状態がオフとなっている場合に、レーザ溶接機1からのレーザ光の出射を禁止することで、作業の安全性を担保できる。
レーザ溶接部W2の形成の後、外板13の端部16の面取り加工を行う(加工工程)。図8は、溶接工程でレーザ溶接機に適用する第2のコンタクトチップ7Bの一例を示す図である。同図に示すように、第2のコンタクトチップ7Bは、第1のコンタクトチップ7Aと同様に、例えば銅、銅合金、導電性カーボンなどの導電性材料によって形成され、中空の円筒状をなしている。
第2のコンタクトチップ7Bは、ワークに対して所定の傾斜角をもって接触するように設計されている。ここでは、出入口枠12及び外板13に対し第2のコンタクトチップ7Bが45°傾斜して接触するように設計されている。また、第2のコンタクトチップ7Bは、トーチ部4の先端に取り付けられた状態において、第2のコンタクトチップ7Bの中心軸L2とレーザ溶接機1の本体部2から導光されるレーザ光の光軸とが略一致するように設計されている。
第2のコンタクトチップ7Bの先端側には、凹状部31と、切欠部32とが設けられている。凹状部31は、レーザ溶接の際にワークに接触する部分である。凹状部31は、外板13の車両外側面(主面)16cに接する第1面33と、外板13の端面16aに接する第2面34とによって構成されている。第1面33と第2面34とは、第2のコンタクトチップ7Bの先端において略直角をなしている。第1面33と第2面34とがなす隅部35は、第2のコンタクトチップ7Bの中心軸L2上に位置している。この隅部35には、R形状の切欠部36が設けられている。
切欠部32は、第1のコンタクトチップ7Aの切欠部22と同様に、レーザ溶接の際にワークから発生する溶接ヒュームを第2のコンタクトチップ7Bの外部に放出する部分である。切欠部32は、第2のコンタクトチップ7Bの周面の一部を第1面33に連続して矩形に切り欠くことによって形成されている。切欠部32により、凹状部31をワークに接触させた状態においても凹状部31の近傍の内部空間が外部に露出し、溶接ヒュームの放出経路が形成される。
また、第2のコンタクトチップ7Bの先端側には、出入口枠12の車両外側面14aに接する第3面37が設けられている。第3面37は、第2面34に連続して切欠部32の反対側に形成されている。第2面34と第3面37とは、第2のコンタクトチップ7Bの先端において略直角をなしている。第2面34と第3面37とがなす角部38は、第2のコンタクトチップ7Bの中心軸L2に対し、切欠部32の反対側にずれて位置している。
加工工程では、図9及び図10に示すように、上記の第2のコンタクトチップ7Bをトーチ部4の先端に取り付ける。また、第2のコンタクトチップ7Bを取り付けたトーチ部4を台車41の支持部43に取り付け、出入口枠12の車両外側面14a及び外板13の車両外側面16cに対するトーチ部4の角度を支持部43によって調整する。そして、第2のコンタクトチップ7Bが出入口枠12の車両外側面14aと外板13の端部16との重ね合わせ部分Pを臨むように、台車41を出入口枠12の車両外側面14a上に載置する。
ここでは、平面視において、トーチ部4の長手方向の角度を溶接予定線に直交するように調整し、出入口枠12の車両外側面14a及び外板13の車両外側面16cに対するトーチ部4の傾き角度を45°に調整する。また、台車41の本体部42へのアース8の接続は、溶接工程に引き続いて継続する。
トーチ部4の角度調整を行った後、台車41を操作し、第2のコンタクトチップ7Bにおける凹状部31の第1面33を外板13の車両外側面16cに接触させると共に、第2面34を外板13の端面16aに接触させる。また、第2のコンタクトチップ7Bの第3面37を出入口枠12の車両外側面14aに接触させる。このとき、第2のコンタクトチップ7Bの切欠部36は、外板13の端部16の角部16bに対向する。
この状態で、トーチ部4からレーザ光を照射し、第2のコンタクトチップ7Bが当接する出入口枠12の車両外側面14a、外板13の端面16a及び車両外側面16cをガイドとしながら、出入口枠12の車両外側面14aと外板13の端部16との重ね合わせ部分Pに沿って台車41を手動で走行させる。これにより、外板13の端部16の角部16bがR状に加工される。角部16bの面取り加工により、角部16b及びその近傍に生じていたバリ等も同時に除去される。以上の工程により、図3に示した接合体11が得られる。
加工工程においても、台車41によるトーチ部4の走査開始位置から走行終了位置までの走査距離は、測距部45によって計測され、レーザ溶接機1に送信される。結果情報を受信したレーザ溶接機1側では、形成する接合体の識別番号などと関連付けて結果情報を格納する。また、加工工程においても、台車41の本体部42、走行ローラ46、及び第2のコンタクトチップ7Bが導電性材料によって形成されているので、トーチ部4、ワーク、台車41、及びアース8を介した回路の通電状態に基づいて、レーザ溶接機1のインターロック機構を実現できる。
上述の工程では、外板13に出入口枠12を重ねわせる配置工程の後、レーザ溶接部W2を形成する溶接工程の前に、出入口枠12と外板13とをスポット溶接部W1によって接合している。外板13の厚さに比べて出入口枠12の厚さが大きい場合、レーザ溶接のみでは溶接強度の確保に必要な入熱量が過剰になることが考えられる。したがって、スポット溶接部W1によって出入口枠12と外板13の溶接強度を十分に確保した上で、水密性確保のためのレーザ溶接を組み合わせることで、レーザ溶接時のワークへの入熱量を抑えることができる。
本実施形態では、溶接工程において、レーザ溶接機1からパルスレーザを出射してレーザ溶接部W2を形成する。レーザ溶接の条件は、例えばパルス幅10ms〜30ms、周波数10Hz〜30Hz、入熱量10J〜30J程度である。レーザ溶接部W2は、個々のナゲットをオーバーラップさせることによって形成してもよい。また、加工工程においては、レーザ溶接機1からCWレーザを出射して面取り加工を行う。この場合のCWレーザの出力は、例えば200W〜250W程度である。
以上説明したように、このレーザ溶接方法では、ハンドトーチ型のレーザ溶接機1を用いることで、自動溶接の場合とは異なり、レーザ光の倣い性を確保するための複雑なティーチング作業が不要となり、溶接の作業性を向上できる。また、このレーザ溶接方法では、手作業でレーザ溶接を行うにあたり、トーチ部4を台車41に支持し、トーチ部4の先端のコンタクトチップ7をワークに当接させた状態で台車41を走行させてトーチ部4を走査する。これにより、ワークをガイドとして台車41を走行させることが可能となるので、トーチ部4を走査する際の手元のぶれを抑制できる。したがって、作業者の熟練度に依存せずにトーチ部4の走査精度を担保できる。
また、このレーザ溶接方法では、台車41にトーチ部4を角度調整自在に支持する支持部43を設け、溶接工程において、ワークに対するトーチ部4の角度を支持部43によって調整した後、コンタクトチップ7をワークの少なくとも一方に当接させている。これにより、コンタクトチップ7をワーク対して最適な角度で当接させることができる。このような手法は、本実施形態で例示する出入口枠12及び外板13の接合のように、長尺のワーク同士のレーザ溶接を実施する場合に特に有用であり、ワークの主面及び端面の面精度の確保が難しい場合でも、レーザ光の照射位置を適切に調整することが可能となる。また、溶接継手を変更する場合の対応も容易となる。
また、このレーザ溶接方法では、溶接工程において、トーチ部4の走査距離を測距部45によって計測している。測距部45によって走査距離を計測し、レーザ溶接機1側で接合体11の識別情報と共に計測結果を格納しておくことで、レーザ溶接によって得られる接合体11のトレーサビリティの確立が可能となる。
また、このレーザ溶接方法では、台車41に導電性材料によって形成された走行ローラ46及び本体部42を設け、溶接工程において、レーザ溶接機1のアース8を本体部42に対して接続した状態で、台車41を出入口枠12の車両外側面14aに載置して移動させる。これにより、レーザ溶接機1の本体部2からトーチ部4、ワーク、台車41、アース8を経由する通電回路を形成できる。したがって、通電の有無によるレーザ溶接機1のインターロック機能を実現でき、レーザ溶接作業の安全性を向上できる。
アース8をワークに直接接続する場合、台車41によってトーチ部4が走査されてコンタクトチップ7とワークとの接触位置がアース8とワークとの接続位置から離れるに従って通電回路での電圧降下が生じ、レーザ溶接機1のインターロック機能が適切に作動しなくなるおそれがある。これに対し、アース8を台車41の本体部42に接続する場合、トーチ部4の走査距離に関わらず、コンタクトチップ7とワークとの接触位置と、アース8と台車41との接続位置との間隔は一定となる。したがって、通電回路の電圧降下の問題は生じず、レーザ溶接機1のインターロック機能を適切に作動させることができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、第1のワークとして出入口枠12を例示したが、第1のワークは、鉄道車両構体における開口部を保持する他の枠部材であってもよい。このような枠部材としては、例えば窓枠や幌枠などが挙げられる。また、第2のワークは、外板に限られない。本発明は、第1のワークと第2のワークとの隅肉溶接に広く適用可能である。また、本発明は、アルミニウム合金製の鉄道車両構体に用いられるワーク、マグネシウム合金製の鉄道車両構体のワークなどにも適用可能である。
また、台車41に対してリニアガイドを取り付け、リニアガイドによって台車41の走行方向を更にガイドさせるようにしてもよい。この場合、測距部45は、リニアガイドに内蔵させたリニアスケール又はロータリエンコーダによって構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、第2のコンタクトチップ7Bの第1面33を外板13の車両外側面16cに接触させると共に、第2面34を外板13の端面16aに接触させ、第3面37を出入口枠12の車両外側面14aに接触させているが、第3面37は、必ずしも出入口枠12の車両外側面14aに接していなくてもよい。この場合でも、第1面33が外板13の車両外側面16cに接し、第2面34が外板13の端面16aに接することで、台車41を走行させる際のガイド機能が十分に奏される。
さらに、上記実施形態では、出入口枠12及び外板13に対し、第1のコンタクトチップ7A及び第2のコンタクトチップ7Bが45°傾斜するように凸状部21及び凹状部31が設計されているが、当該傾斜角が45°〜75°となる範囲で凸状部21及び凹状部31が設計されていてもよい。いずれの傾斜角の場合においても、第1のコンタクトチップ7A及び第2のコンタクトチップ7Bは、トーチ部4に対して同軸に取り付けられることが好ましい。
1…レーザ溶接機、4…トーチ部、7…コンタクトチップ、8…アース、12…出入口枠(第1のワーク)、13…外板(第2のワーク)、14a…車両外側面(主面)、16…端部、16a…端面、41…台車、42…本体部、43…支持部、45…測距部、46…走行ローラ、P…重ね合わせ部分、W2…レーザ溶接部。
Claims (8)
- 第1のワークの主面に第2のワークの端部を重ね合わせる配置工程と、
ハンドトーチ型のレーザ溶接機を用い、前記第1のワークの前記主面と前記第2のワークの前記端部側の端面とに重ね合わせ部分に沿って連続的なレーザ溶接部を形成する溶接工程と、を備え、
前記溶接工程において、前記レーザ溶接機のトーチ部を台車に支持し、前記トーチ部の先端に取り付けたコンタクトチップを前記第1のワーク及び前記第2のワークの少なくとも一方に当接させた状態で、前記台車を手動で走行させることにより前記トーチ部を走査するレーザ溶接方法。 - 前記台車に前記トーチ部を角度調整自在に支持する支持部を設け、
前記溶接工程において、前記第1のワーク及び前記第2のワークに対する前記トーチ部の角度を前記支持部によって調整した後、前記コンタクトチップを前記第1のワーク及び前記第2のワークの少なくとも一方に当接させる請求項1記載のレーザ溶接方法。 - 前記溶接工程において、前記トーチ部の走査距離を測距部によって計測する請求項1又は2記載のレーザ溶接方法。
- 前記台車に導電性材料によって形成された走行ローラ及び本体部を設け、
前記溶接工程において、前記レーザ溶接機のアースを前記本体部に対して接続した状態で、前記台車を前記第1のワークの前記主面に載置して移動させる請求項1〜3のいずれか一項記載のレーザ溶接方法。 - 第1のワークの主面と第2のワークの端部との重ね合わせ部分に沿って連続的なレーザ溶接機を形成するハンドトーチ型のレーザ溶接機であって、
前記第1のワーク及び前記第2のワークの少なくとも一方に当接するコンタクトチップを取り付け可能なトーチ部と、
前記トーチ部を支持して手動で走行する台車と、を備えたレーザ溶接機。 - 前記台車は、前記トーチ部を角度調整自在に支持する支持部を有している請求項5記載のレーザ溶接機。
- 前記トーチ部の走査距離を計測する測距部を更に備えた請求項5又は6記載のレーザ溶接機。
- 前記台車は、導電性材料によって形成された走行ローラ及び本体部を有し、
前記本体部に対して接続されたアースを更に備えた請求項5〜7のいずれか一項記載のレーザ溶接機。
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WO2021095247A1 (ja) * | 2019-11-15 | 2021-05-20 | 株式会社小林製作所 | レーザー溶接システム |
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- 2015-06-23 JP JP2015125307A patent/JP2017006953A/ja active Pending
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WO2021095247A1 (ja) * | 2019-11-15 | 2021-05-20 | 株式会社小林製作所 | レーザー溶接システム |
JPWO2021095247A1 (ja) * | 2019-11-15 | 2021-11-25 | 株式会社小林製作所 | レーザー溶接システム |
US20220395928A1 (en) * | 2019-11-15 | 2022-12-15 | Kobayashi Manufacture Co., Ltd. | Laser welding system |
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