JP2017005215A - Iii族窒化物半導体発光素子とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高温動作時の発光量の減少を抑制するIII 族窒化物半導体発光素子とその製造方法を提供することである。【解決手段】 発光素子100は、n側超格子層150と、発光層160と、p型クラッド層170と、を有する。発光素子100は、n型半導体層からp型半導体層まで達する複数のピットK1を有する。発光層160とn側超格子層150との境界における第1のピットのピット径D1は、発光層160とp型クラッド層170との境界における第1のピットのピット径D2よりも大きい。そして、ピット径D1およびピット径D2は、次式 0.15 ≦ (D1−D2)/T ≦ 1.0 を満たす。ここで、膜厚Tは、発光層の膜厚である。【選択図】図4

Description

本明細書の技術分野は、III 族窒化物半導体発光素子とその製造方法に関する。特に、ピットを有するIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法に関するものである。
III 族窒化物半導体発光素子は、電子と正孔とが再結合することにより発光する発光層と、n型半導体層と、p型半導体層と、を有する。このIII 族窒化物半導体発光素子を製造する際には、基板の上に半導体層をエピタキシャル成長させる。この場合に、基板と半導体層との間の格子不整合に起因する貫通転位が半導体層に発生する。この貫通転位では、成長する際にピットが生じる。
このようなピットは、駆動電圧を低減させる効果がある。例えば、特許文献1では、ピットを構成するファセット面を利用して駆動電圧を低減させる旨が開示されている(特許文献1の段落[0020]−[0021]参照)。
特開2008−218746号公報
ところで、照明用途の発光素子では、比較的高温状態におかれることが多い。しかし、このような高温状況下では、発光素子の発光効率は低下することがある。高温状況下では、ピットの周囲でキャリアの漏れが生じているためと考えられる。そのため、ピットをi−GaNで埋める技術も考案されている。この場合には、ピットの箇所におけるn型半導体層とp型半導体層との間の距離は、p型半導体層でピットを埋める場合に比べて大きい。そのため、キャリアの漏れについては抑制できると考えられるが、駆動電圧が上昇してしまう。
本明細書の技術は、前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、高温動作時の発光量の減少を抑制するIII 族窒化物半導体発光素子とその製造方法を提供することである。
第1の態様におけるIII 族窒化物半導体発光素子は、n型半導体層と、n型半導体層の上の発光層と、発光層の上のp型半導体層と、を有する。このIII 族窒化物半導体発光素子は、n型半導体層からp型半導体層まで達する複数のピットを有する。発光層とn型半導体層との境界における複数のピットのうちの第1のピットのピット径D1は、発光層とp型半導体層との境界における第1のピットのピット径D2よりも大きい。そして、ピット径D1およびピット径D2は、次式
0.15 ≦ (D1−D2)/T ≦ 1.0
T : 発光層の膜厚
を満たす。
このIII 族窒化物半導体発光素子では、高温動作時においても十分な発光量で発光する。つまり、この発光素子では、室温時の発光量と高温時の発光量との間にそれほど大きな差はない。この発光素子では、ピットの内部において発光層の各層の膜厚が十分な厚みを有している。そのため、高温動作時において、ピットの箇所でキャリアの漏れがほとんど生じていないためであると考えられる。
第2の態様におけるIII 族窒化物半導体発光素子においては、発光層は、第1のピットの外部に位置する平坦部と、第1のピットの内部に位置するとともに平坦部と連なる斜面部と、を有する。平坦部の膜厚と斜面部の膜厚とは、次式
0.56 ≦ B/A ≦ 0.9
A: 発光層の平坦部の膜厚
B: 発光層の斜面部の膜厚
を満たす。
第3の態様におけるIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法は、n型半導体層と、n型半導体層の上の発光層と、発光層の上のp型半導体層と、を有するIII 族窒化物半導体発光素子を製造する方法である。この方法では、n型半導体層からp型半導体層まで達する複数のピットを形成する。発光層とn型半導体層との境界における複数のピットのうちの第1のピットのピット径D1を、発光層とp型半導体層との境界における第1のピットのピット径D2よりも大きく形成する。そして、ピット径D1およびピット径D2を、次式
0.15 ≦ (D1−D2)/T ≦ 1.0
T : 発光層の膜厚
を満たすように複数のピットを形成する。
第4の態様におけるIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法においては、発光層は、第1のピットの外部に位置する平坦部と、第1のピットの内部に位置するとともに平坦部と連なる斜面部と、を有する。平坦部の膜厚と斜面部の膜厚とを、次式
0.56 ≦ B/A ≦ 0.9
A: 発光層の平坦部の膜厚
B: 発光層の斜面部の膜厚
を満たすように複数のピットを形成する。
第5の態様におけるIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法においては、発光層として、InGaNから成る井戸層と、井戸層の上に位置するキャップ層と、キャップ層の上に位置するInを含む障壁層と、を形成する。また、キャップ層を形成する際に徐々に温度を上昇させる。
本明細書では、高温動作時の発光量の減少を抑制するIII 族窒化物半導体発光素子とその製造方法が提供されている。
実施形態における発光素子の構造を示す概略構成図である。 実施形態における発光素子の半導体層の積層構造を示す図である。 実施形態の発光素子に形成されるピットを説明するための図(その1)である。 実施形態の発光素子に形成されるピットを説明するための図(その2)である。 実施形態における発光素子の製造方法を説明するための図(その1)である。 実施形態における発光素子の製造方法を説明するための図(その2)である。 障壁層へのInのドープ量とピット径との関係を示すグラフである。 障壁層へのInのドープ量と発光層の1周期分の膜厚との関係を示すグラフである。 室温での発光素子の全放射束を示すグラフである。 室温での発光素子の駆動電圧を示すグラフである。 ピット径の変化率と光度維持率との関係を示すグラフである。
以下、具体的な実施形態について、半導体発光素子とその製造方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、これらの実施形態に限定されるものではない。また、後述する半導体発光素子の各層の積層構造および電極構造は、例示である。実施形態とは異なる積層構造であってももちろん構わない。そして、それぞれの図における各層の厚みは、概念的に示したものであり、実際の厚みを示しているわけではない。また、後述するピットの大きさ等については、実際のものより大きく描いてある。
1.半導体発光素子
図1は、本実施形態の発光素子100の概略構成を示す図である。図2は、発光素子100における半導体層の積層構造を示す図である。発光素子100は、フェイスアップ型の半導体発光素子である。発光素子100は、III 族窒化物半導体から成る複数の半導体層を有する。
図1に示すように、発光素子100は、基板110と、低温バッファ層120と、n型コンタクト層130と、n側静電耐圧層140と、n側超格子層150と、発光層160と、p型クラッド層170と、p型コンタクト層180と、透明電極190と、n電極N1と、p電極P1と、を有している。低温バッファ層120と、n型コンタクト層130と、n側静電耐圧層140と、n側超格子層150と、発光層160と、p型クラッド層170と、p型コンタクト層180とは、半導体層Ep1である。n型コンタクト層130と、n側静電耐圧層140と、n側超格子層150とは、n型半導体層である。p型クラッド層170と、p型コンタクト層180とは、p型半導体層である。また、n型半導体層は、ドナーをドープしていないud−GaN層等を有していてもよい。p型半導体層は、アクセプターをドープしていないud−GaN層等を有していてもよい。
基板110の主面上には、半導体層Ep1が、低温バッファ層120、n型コンタクト層130、n側静電耐圧層140、n側超格子層150、発光層160、p型クラッド層170、p型コンタクト層180の順に形成されている。n電極N1は、n型コンタクト層130の上に形成されている。p電極P1は、透明電極190の上に形成されている。
基板110は、MOCVD法により、主面上に上記の各半導体層を形成するための成長基板である。そして、その表面に凹凸加工がされていてもよい。基板110の材質は、サファイアである。また、サファイア以外にも、SiC、ZnO、Si、GaNなどの材質を用いてもよい。
低温バッファ層120は、基板110の結晶性を受け継ぎつつ、上層を形成するためのものである。そのため、低温バッファ層120は、基板110の主面上に形成されている。低温バッファ層120の材質は、例えばAlNやGaNである。
n型コンタクト層130は、n電極N1とオーミック接触をとるためのものである。n型コンタクト層130は、低温バッファ層120の上に形成されている。また、n型コンタクト層130の上には、n電極N1が位置している。n型コンタクト層130は、n型GaNである。そのSi濃度は1×1018/cm3 以上である。また、n型コンタクト層130を、キャリア濃度の異なる複数の層としてもよい。n電極N1とのオーミック性を向上させるためである。n型コンタクト層130の厚みは、例えば、1000nm以上10000nm以下である。もちろん、これ以外の厚みを用いてもよい。
n側静電耐圧層140は、各半導体層の静電破壊を防止するための静電耐圧層である。n側静電耐圧層140は、n型コンタクト層130の上に形成されている。図2に示すように、n側静電耐圧層140は、n型GaN層141と、n型GaN層142と、ud−GaN層143と、n型GaN層144と、を有する。ここで、ud−GaN層143は、故意にドープされていないGaN層(ud−GaN:unintentionally doped GaN)である。ud−GaN層143のドナー濃度は、5×1017/cm3 以下の程度である。n型GaN層141は、n型コンタクト層130の上に形成されている。n型GaN層142は、n型GaN層141の上に形成されている。ud−GaN層143は、n型GaN層142の上に形成されている。n型GaN層144は、ud−GaN層143の上に形成されている。n型GaN層141の膜厚は、300nm以上1000nm以下である。n型GaN層142の膜厚は、10nm以上100nm以下である。ud−GaN層143の膜厚は、100nm以上1000nm以下である。n型GaN層144の膜厚は、10nm以上100nm以下である。これらの膜厚は、あくまで目安であり、これ以外の数値であってもよい。
n側超格子層150は、発光層160に加わる応力を緩和するための歪緩和層である。より具体的には、n側超格子層150は、超格子構造を有する超格子層である。n側超格子層150は、n側静電耐圧層140の上に形成されている。図2に示すように、n側超格子層150は、InGaN層151と、GaN層152と、n型GaN層153と、を積層した単位積層体を繰り返し積層したものである。その繰り返し回数は、10回以上20回以下の範囲内である。ただし、これ以外の回数であってもよい。InGaN層151の膜厚は、0.3nm以上100nm以下の範囲内である。GaN層152の膜厚は、0.3nm以上10nm以下の範囲内である。n型GaN層153の膜厚は、0.3nm以上100nm以下の範囲内である。これらの膜厚は、あくまで目安であり、これ以外の数値であってもよい。
発光層160は、電子と正孔とが再結合することにより発光する層である。発光層160は、n側超格子層150の上に形成されている。図2に示すように、発光層160は、井戸層161と、キャップ層162と、障壁層163と、を積層した単位積層体を繰り返し積層したものである。つまり、発光層160は、多重量子井戸構造(MQW構造)を有するものである。キャップ層162は、井戸層161を熱から保護するための保護層である。キャップ層162は、例えば、井戸層161のInを昇華させないようにする役割を担っている。そのため、キャップ層162は、井戸層161の上に位置している。また、障壁層163は、キャップ層162の上に位置している。
この積層の繰り返し回数は、例えば、5回以上20回以下である。もちろん、これ以外の回数であってもよい。井戸層161は、例えば、InGaN層である。キャップ層162は、例えば、GaN層である。障壁層163は、例えば、AlInGaN層である。井戸層161は、Inを含有する。障壁層163も、Inを含有する。
井戸層161のIn組成比は、障壁層163のIn組成比よりも大きい。ここで、井戸層161のIn組成比は、0.05以上0.30以下の範囲内である。障壁層163のIn組成比は、0.01以下である。これらの数値範囲は、あくまで目安である。そのため、これらの数値範囲に必ずしも限定されない。
井戸層161の膜厚は、1nm以上5nm以下の範囲内である。キャップ162の膜厚は、0.2nm以上1.8nm以下の範囲内である。障壁層163の膜厚は、1nm以上10nm以下の範囲内である。これらの数値は、あくまで例示である。そのため、これら以外の数値範囲を用いてもよい。なお、発光層160の全体での厚みは、500nm以上1000nm以下の範囲内である。もちろん、これ以外の範囲内であってもよい。
p型クラッド層170は、発光層160の上に形成されている。図2に示すように、p型クラッド層170は、p型InGaN層171と、p型AlGaN層172と、を繰り返し積層して形成したものである。繰り返し回数は、例えば、5回以上20回以下である。もちろん、これ以外の回数であってもよい。p型InGaN層171のIn組成比は、0.05以上0.30以下の範囲内である。p型InGaN層171の膜厚は、0.2nm以上5nm以下である。p型AlGaN層172のAl組成比は、0.10以上0.4以下の範囲内である。p型AlGaN層172の膜厚は、1nm以上5nm以下である。これらの数値は、あくまで例示である。したがって、これ以外の数値であってもよい。また、異なる構成であってもよい。
p型コンタクト層180は、p型クラッド層170の上に形成されている。p型コンタクト層180の厚みは、10nm以上100nm以下である。p型コンタクト層180では、Mgが1×1019/cm3 以上1×1022/cm3 以下の範囲内でドープされている。
透明電極190は、p型コンタクト層180の上に形成されている。透明電極190の材質は、ITO、IZO、ICO、ZnO、TiO2 、NbTiO2 、TaTiO2 、SnO2 のいずれかであるとよい。
p電極P1は、透明電極190の上に形成されている。p電極P1は、透明電極190の側から、Ni、Auを順に形成したものである。もちろん、これ以外の構成であってもよい。
n電極N1は、n型コンタクト層130の上に形成されている。n電極N1は、n型コンタクト層130の側から、V、Alを順に形成したものである。また、Ti、Alを順に形成してもよい。もちろん、これ以外の構成であってもよい。
また、発光素子100は、半導体層Ep1等を保護する保護膜を有していてもよい。
2.ピット
2−1.ピットの形状
図3は、発光素子100のピットK1を示す図である。発光素子100は、n型半導体層からp型半導体層まで達する複数のピットK1を有する。図3では、複数のピットK1のうち一つである第1のピットが抜き出して描かれている。また、ピットK1の断面形状は、正六角形に近い形状である。そして、ピット径D1、D2は、正六角形の向かい合う頂点間の距離である。ピット径D1、D2は、第1のピットのピット径である。
ピットK1は、発光素子100の半導体層Ep1を成長させる際に貫通転位Q1の箇所から形成される。本実施形態では、ピットK1は、n側静電耐圧層140のn型GaN層142から成長している。ピットK1は、基板110から上方に成長する貫通転位がn側静電耐圧層140の膜の内部で、横方向、すなわち貫通転位の成長方向に対して垂直な方向に広がる。そして、それがピットK1となる。そして、ピットK1は、p型コンタクト層180に達するまで成長する。
ピットK1は、n側静電耐圧層140の起点J1から成長し始める。そして、成長に従って横方向に広がる。n側静電耐圧層140およびn側超格子層150では、上層に向かうにつれてピットK1のピット径は大きくなっている。一方、発光層160では、上層に向かうにつれてピットK1のピット径は小さくなっている。つまり、発光層160とn側超格子層150との境界における第1のピットのピット径D1は、発光層160とp型クラッド層170との境界における第1のピットのピット径D2よりも大きい。そして、ピットK1は、p型クラッド層170で再び横方向に広がる。
よって、次式が成り立つ。
D1 > D2
D1: 発光層とn型半導体層との境界におけるピット径
D2: 発光層とp型半導体層との境界におけるピット径
2−2.ピット径の制御
ピットK1は、半導体層Ep1を成長させている最中に基板温度を所定の温度まで下げることにより生じると考えられる。そのため、複数のピットK1は、n側静電耐圧層140のほぼ同じ深さの位置から発生する。
2−2−1.膜厚と成長温度
このピットK1のピット径D1は、n側静電耐圧層140およびn側超格子層150の膜厚と、n側静電耐圧層140およびn側超格子層150を成長させる成長温度とにより、変化する。n側静電耐圧層140およびn側超格子層150の膜厚を厚くするほど、ピット径D1は大きくなる。逆に、n側静電耐圧層140およびn側超格子層150の膜厚を薄くするほど、ピット径D1は小さくなる。また、n側静電耐圧層140およびn側超格子層150を成長させる成長温度を高くするほど、ピット径D1は小さくなる。逆に、n側静電耐圧層140およびn側超格子層150を成長させる成長温度を低くするほど、ピット径D1は大きくなる。
また、同様に、発光層160を成長させる成長温度を高く設定するほど、ピット径D2は小さくなる。
n型半導体層を成長させる際のピット径と成長温度との関係は、p型クラッド層170とp型コンタクト層180とを形成する際にも同様に成り立つ。
2−2−2.Inのドープ
また、半導体層Ep1にInをドープさせることにより、ピット径は小さくなる。Inは、サーファクタント効果があるためである。これにより、平坦面の半導体層がピットK1の内部に入り込む。そのため、Inをドープした半導体層では、ピット径は小さくなる傾向にある。本実施形態では、発光層160の井戸層161および障壁層163にInをドープする。そのため、発光層160ではピット径は小さくなる傾向にある。その結果、前述したように、発光層160の上側のピット径D2は、発光層160の下側のピット径D1よりも小さい(図3参照)。なお、n側超格子層150も、InGaN層151を有している。そのため、n側超格子層150におけるピットK1のピット径は、InGaN層151がなかったとした場合のピットのピット径よりも少し小さい。
2−2−3.キャップ層の成長温度
そして、キャップ層162を成長させる際に、徐々に温度を上昇させることにより、ピット径D2は小さくなる。つまり、キャップ層162の成長終了時の基板温度を、キャップ層162の成長開始時の温度よりも高くする。これにより、ピット径D2は小さくなる。
2−3.ピット周辺の層構造
図4は、ピットK1の周辺の層構造を示す概念図である。図4に示すように、n側超格子層150は、平坦部150aと、斜面部150bと、を有している。発光層160は、平坦部160aと、斜面部160bと、を有している。平坦部150a、160aは、ピットK1の外部に位置する平坦な箇所である。斜面部150b、160bは、ピットK1の内部の傾斜面に位置する箇所である。斜面部150b、160bは、それぞれ、平坦部150a、160aと連なっている。
図4では、作図上、平坦部150aの膜厚と平坦部160aの膜厚とは等しくなるように描いてある。そして、n側超格子層150の斜面部150bの膜厚は、平坦部150aの膜厚に比べると十分に薄い。発光層160の斜面部160bの膜厚は、平坦部160aの膜厚に比べてそれほど変わらない。ここで、発光層160の井戸層161および障壁層163は、Inを含んでいる。そして、サーファクタント効果により、平坦部160aの半導体層が斜面部160bに入り込むと考えられる。
そのため、平坦部150a、160aの膜厚が同じであれば、Inをドープした半導体層におけるピットK1の内部の斜面部160bの膜厚は、Inをドープしなかった半導体層におけるピットK1の内部の斜面部150bの膜厚よりも厚いと考えられる。また、このように、ピットK1の内部で膜厚が厚いと、ピットK1のピット径は、上層にかけて成長するにつれて小さくなると考えられる(図4参照)。なぜならば、図4に示すように、斜面部160bの膜厚が厚いほど、平坦部160aと斜面部160bとの境界160cがピットK1の中心側に位置するからである。ここで、半導体層160xにおけるピット径Dxは、図4に示すように、平坦部の表面と斜面部の表面との境界同士を結ぶ距離であって、六角形形状のピットにおける向かい合う頂点同士の距離である。
本実施形態では、発光層160の平坦部160aの膜厚A、発光層160の斜面部160bの膜厚Bとすると、次式が成り立つ。
0.56 ≦ B/A ≦ 0.9
A: 発光層の平坦部の膜厚
B: 発光層の斜面部の膜厚
つまり、斜面部160bの膜厚Bは、平坦部160aの膜厚Aよりもやや薄い程度である。
より好ましくは、次式が成り立つ。
0.67 ≦ B/A ≦ 0.8
2−4.ピット径の変化率
ここで、ピット径の変化率Fは、次式(1)により表される。
F = (D1−D2)/T ………(1)
F : ピット径の変化率
D1: 発光層とn型半導体層との境界におけるピット径
D2: 発光層とp型半導体層との境界におけるピット径
T : 発光層の膜厚
ピット径の変化率Fは、次式(2)を満たす
0.15 ≦ (D1−D2)/T ≦ 1.0 ………(2)
また、好ましくは、ピット径の変化率Fは、次式(3)を満たす。
0.40 ≦ (D1−D2)/T ≦ 0.8 ………(3)
つまり、ピット径D1、D2が上記の式(2)、(3)を満たす場合に、高温動作時における発光量の低下が抑制される。
3.ピット径の効果
ここで、発光層160でピット径が小さくなるように成長した場合の効果について説明する。後述する実験で説明するように、発光層160でピット径が小さくなるように半導体層を成長させると、高温条件下での半導体発光素子の発光効率が向上する。つまり、高温条件下の発光効率は、室温での発光効率とそれほど変わらない。
4.半導体発光素子の製造方法
ここで、本実施形態に係る発光素子100の製造方法について説明する。有機金属化学気相成長法(MOCVD法)により、各半導体層の結晶をエピタキシャル成長させる。ここで用いるキャリアガスは、水素(H2 )もしくは窒素(N2 )もしくは水素と窒素との混合気体(H2 +N2 )である。窒素源として、アンモニアガス(NH3 )を用いる。Ga源として、トリメチルガリウム(Ga(CH3 3 )を用いる。In源として、トリメチルインジウム(In(CH3 3 )を用いる。Al源として、トリメチルアルミニウム(Al(CH3 3 )を用いる。n型ドーパントガスとして、シラン(SiH4 )を用いる。p型ドーパントガスとして、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Mg(C5 5 2 )を用いる。また、これら以外のガスを用いてもよい。
4−1.n型コンタクト層形成工程
まず、基板110の主面上に低温バッファ層120を形成する。そして、バッファ層120の上にn型コンタクト層130を形成する。このときの基板温度は、1080℃以上1140℃以下である。
4−2.n側静電耐圧層形成工程
次に、n型コンタクト層130の上にn側静電耐圧層140を形成する。まず、シラン(SiH4 )を供給して、n型GaN層141を形成する。次に、シラン(SiH4 )を供給して、n型GaN層142を形成する。そして、シラン(SiH4 )の供給を停止して、ud−GaN層143を形成する。そして、シラン(SiH4 )を再び供給して、n型GaN層144を形成する。このときの基板温度は、750℃以上950℃以下の範囲内である。そして、この工程では、図5に示すように、ピットK2が形成される。半導体層の成長温度が、下がったためである。ピットK2は、この後の半導体層の成長にともなって成長し、ピットK1となるものである。このように、ピットK2を形成しつつ、n側静電耐圧層140を形成する。
4−3.n側超格子層形成工程
次に、n側超格子層150を形成する。まずは、n側静電耐圧層140のn型GaN層144の上にInGaN層151から形成する。次に、InGaN層151の上にGaN層152を形成する。そして、GaN層152の上にn型GaN層153を形成する。このように、InGaN層151と、GaN層152と、n型GaN層153と、を積層した単位積層体を繰り返し積層する。
4−4.発光層形成工程
次に、n側超格子層150の上に発光層160を形成する。そのために、井戸層161と、キャップ層162と、障壁層163と、をこの順序で積層した単位積層体を繰り返し積層する。つまり、発光層形成工程は、井戸層161を形成する井戸層形成工程と、井戸層161の上にキャップ層162を形成するキャップ層形成工程と、キャップ層162の上に障壁層163を形成する障壁層形成工程と、を有する。そして、これらの工程を繰り返し行う。そのため、障壁層163の上に再び井戸層161を形成することとなる。井戸層161を成長させる際の基板温度を730℃以上850℃以下の範囲内とする。
また、発光層160を成長させる際に、(1)障壁層163を成長させる際に障壁層163にわずかなInをドープすること、(2)発光層160を成長させる際に温度を上昇させること、(3)キャップ層162を成長させる際に一定の基板温度でなく温度を徐々に上昇させながらキャップ層162を成長させること、という3つの製造条件を満たすように半導体層を成長させることにより、ピットK1のピット径D2を小さく形成することができる。もちろん、これらの3つの条件は、3つ同時に満たす必要はない。これらの一部を満たせば、ピット径D2は小さくなる傾向にある。
4−5.p型クラッド層形成工程
次に、発光層160の上にp型クラッド層170を形成する。ここでは、p型InGaN層171と、p型AlGaN層172と、を繰り返し積層する。
4−6.p型コンタクト層形成工程
次に、p型クラッド層170の上にp型コンタクト層180を形成する。基板温度を、900℃以上1050℃以下の範囲内とする。ここで、p型コンタクト層180の成長温度が高いため、p型コンタクト層180が、ピットK1を埋めることとなる。これにより、図6に示すように、基板110に各半導体層が積層されることなる。このとき、ピットK1は、n側静電耐圧層140からp型コンタクト層180に達するまでの領域にわたって形成されている。そのため、p型コンタクト層180の表面にはピットK1はない。
4−7.透明電極形成工程
次に、p型コンタクト層180の上に透明電極190を形成する。
4−8.電極形成工程
次に、透明電極190の上にp電極P1を形成する。そして、レーザーもしくはエッチングにより、p型コンタクト層180の側から半導体層の一部を抉ってn型コンタクト層130を露出させる。そして、その露出箇所に、n電極N1を形成する。p電極P1の形成工程とn電極N1の形成工程は、いずれを先に行ってもよい。
4−9.その他の工程
また、上記の工程の他、熱処理工程、絶縁膜形成工程、その他の工程を実施してもよい。以上により、図1に示す発光素子100が製造される。
5.実験
5−1.半導体層の成長条件とピット径との関係
まず、半導体層の成長条件とピット径との関係について調べるための実験を行った。発光層160を成長させる際にピット径を小さくするための製造条件は、次のとおりである。つまり、(1)障壁層163を成長させる際に障壁層163にわずかなInをドープすること、(2)発光層160を成長させる際に温度を上昇させること、(3)キャップ層162を成長させる際に一定の基板温度でなく温度を徐々に上昇させながらキャップ層162を成長させること、の3条件である。
表1に示すように、発光層160の総膜厚は、約68nmであった。n側静電耐圧層140まで半導体層を成長させた場合のピット径は、169.6nmであった。n側超格子層150まで半導体層を成長させた場合のピット径は、234.9nmであった。井戸層161のIn組成比は0.24であった。
図7は、上記の3条件について示すグラフである。図7の横軸は、TMIの流量(sccm)である。図7の縦軸は、ピット径D2である。図7に示すように、障壁層163にInをドープするほどピット径D2は小さい。従来より高い温度で発光層160を成長させるとピット径D2は小さい。また、基板温度を上昇させながらキャップ層162を成長させる場合には、ピット径D2は小さい傾向にある。なお、発光層160を成長させる成長温度は、従来より5℃だけ高い温度であった。また、図7において、TMIの流量がゼロの場合には、障壁層163へのInのドープ量はゼロである。しかし、その場合であっても、井戸層161を成長させる際には、もちろん、TMIを供給した。
図8は、発光層160の1周期分の膜厚をプロットしたグラフである。図8の横軸は、TMIの(sccm)流量である。図8の縦軸は、発光層160の1周期分の膜厚である。図8に示すように、製造条件を変えても、発光層160の1周期分の膜厚はほとんど変化しない。つまり、上記の3条件を変化させても、膜厚方向(縦方向)への成長速度には影響はなく、ピット径方向(横方向、つまり膜厚方向に垂直な方向)への成長速度は変化していることを示している。
5−2.室温での発光素子の全放射束および駆動電圧
図9は、室温での発光素子の全放射束を示すグラフである。図9の横軸は、(D1−D2)/Tである。図9の縦軸は、全放射束(mW)である。図9に示すように、(D1−D2)/Tを変えても、室温における発光素子の全放射束はほとんど変化しなかった。つまり、TMIの流量、発光層の成長温度、キャップ層の温度上昇成長のいずれの条件を変えても、室温における発光素子の全放射束はほとんど変化しなかった。
図10は、室温での発光素子の駆動電圧を示すグラフである。図10の横軸は、(D1−D2)/Tである。図10の縦軸は、駆動電圧(V)である。図10に示すように、(D1−D2)/Tを変えても、室温における発光素子の駆動電圧はほとんど変化しなかった。つまり、TMIの流量、発光層の成長温度、キャップ層の温度上昇成長のいずれの条件を変えても、室温における発光素子の駆動電圧はほとんど変化しなかった。
このように、上記の3条件を変えても、室温での発光素子の性能はほとんど変化しなかった。
5−3.ピット径の変化率と光度維持率との関係
図11は、ピット径の変化率と光度維持率との関係を示すグラフである。図11の横軸は、ピット径の変化率Fである。図11の縦軸は、光度維持率である。なお、ピット径の変化率Fは、前述の式(1)により表される。
ピット径の変化率Fが正の値の場合には、図4のように、ピット径が狭くなるように発光層160は成長する。また、ピット径の変化率Fが大きいほど、ピット径は成長につれて急激に小さくなる。一方、ピット径の変化率Fが負の値の場合には、ピット径が広がるように発光層160は成長する。
光度維持率とは、室温(25℃)における発光素子の全放射束に対する高温(125℃)における発光素子の全放射束である。つまり、光度維持率が100%の場合には、高温(125℃)における発光素子の明るさが、室温(25℃)における発光素子の明るさに等しいことを意味する。また、光度維持率が低いほど、高温での全放射束が低温の全放射束に比べて小さいことを意味している。
図11に示すように、ピット径の変化率Fが0.15以上1.0以下の場合に、光度維持率は84%以上である。よって、ピット径の変化率Fは、0.15以上1.0以下の範囲内であるとよい。特にピット径の変化率Fが0.4以上0.8以下の場合に、光度維持率は87%程度以上である。したがって、より好ましくは、ピット径の変化率Fは、0.4以上0.8以下の範囲内である。
表1に示すように、発光層160の平坦部160aの膜厚A、発光層160の斜面部160bの膜厚Bとすると、膜厚の比B/Aが、0.56以上0.9以下の場合に、光度維持率は84%以上である。よって、膜厚の比B/Aは、0.56以上0.9以下であるとよい。また、膜厚の比B/Aが、0.67以上0.8以下の場合に、光度維持率は87%以上である。したがって、より好ましくは、膜厚の比B/Aは、0.67以上0.8以下である。
6.変形例
6−1.ピットの埋め込み
本実施形態では、ピットK1は、n側静電耐圧層140からp型コンタクト層180まで達している。つまり、p型コンタクト層180が、ピットK1を埋めている。しかし、p型クラッド層170が、ピットK1を埋めるようにしてもよい。ピットK1は、n型半導体層からp型半導体層まで形成されていることに変わりないからである。このように、ピットK1は、p型半導体層の途中で埋めて良い。
6−2.発光層
本実施形態では、発光層160は、井戸層161と、キャップ層162と、障壁層163と、を積層した単位積層体を繰り返し積層したものである。しかし、キャップ層162は、無くてもよい。その場合には、井戸層161と、障壁層163と、を単位積層体として繰り返し積層すればよい。また、キャップ層162を形成する場合に、キャップ層162にInをドープしてもよい。
6−3.フリップチップ
本実施形態の発光素子100は、フェイスアップ型の発光素子である。しかし、フリップチップ型の発光素子にも、本技術を適用することができる。また、レーザーリフトオフ型の発光素子にも、本技術を適用することができる。
6−4.n側静電耐圧層
本実施形態では、n側静電耐圧層140は、4層構造である。しかし、これ以外の構造であってもよい。ただし、ピットK1の起点J1は、n側静電耐圧層140の膜厚の内部にあるとよい。
7.本実施形態のまとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態の発光素子100では、発光層160の井戸層161および障壁層163にInをドープする。そのため、発光層160のInサーファクタント効果により、平坦部160aの半導体層がピットK1の内部に入り込む。これにより、発光層160の斜面部160bの膜厚は、ある程度厚くなる。そして、それとともに、発光層160を成長させる際にピットK1のピット径はやや小さくなる。これにより、高温条件下であっても発光効率の高い半導体発光素子が実現されている。
なお、以上に説明した実施形態は単なる例示にすぎない。したがって当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。半導体の積層構造については、必ずしも図に示したものに限らない。積層構造や各層の繰り返し回数等、任意に選択してよい。また、有機金属気相成長法(MOCVD法)に限らない。キャリアガスを用いて結晶を成長させる方法であれば、他の方法を用いてもよい。また、液相エピタキシー法、分子線エピタキシー法等、その他のエピタキシャル成長法により半導体層を形成することとしてもよい。
100…発光素子
110…基板
120…低温バッファ層
130…n型コンタクト層
140…n側静電耐圧層
141…n型GaN層
142…n型GaN層
143…ud−GaN層
144…n型GaN層
150…n側超格子層
160…発光層
170…p型クラッド層
180…p型コンタクト層
190…透明電極
N1…n電極
P1…p電極
K1、K2…ピット

Claims (5)

  1. n型半導体層と、
    前記n型半導体層の上の発光層と、
    前記発光層の上のp型半導体層と、
    を有するIII 族窒化物半導体発光素子において、
    前記n型半導体層から前記p型半導体層まで達する複数のピットを有し、
    前記発光層と前記n型半導体層との境界における前記複数のピットのうちの第1のピットのピット径D1は、
    前記発光層と前記p型半導体層との境界における前記第1のピットのピット径D2よりも大きく、
    前記ピット径D1および前記ピット径D2は、次式
    0.15 ≦ (D1−D2)/T ≦ 1.0
    T : 発光層の膜厚
    を満たすこと
    を特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子。
  2. 請求項1に記載のIII 族窒化物半導体発光素子において、
    前記発光層は、
    前記第1のピットの外部に位置する平坦部と、
    前記第1のピットの内部に位置するとともに前記平坦部と連なる斜面部と、
    を有し、
    前記平坦部の膜厚と前記斜面部の膜厚とは、次式
    0.56 ≦ B/A ≦ 0.9
    A: 発光層の平坦部の膜厚
    B: 発光層の斜面部の膜厚
    を満たすこと
    を特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子。
  3. n型半導体層と、
    前記n型半導体層の上の発光層と、
    前記発光層の上のp型半導体層と、
    を有するIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法において、
    前記n型半導体層から前記p型半導体層まで達する複数のピットを形成し、
    前記発光層と前記n型半導体層との境界における前記複数のピットのうちの第1のピットのピット径D1を、
    前記発光層と前記p型半導体層との境界における前記第1のピットのピット径D2よりも大きく形成し、
    前記ピット径D1および前記ピット径D2を、次式
    0.15 ≦ (D1−D2)/T ≦ 1.0
    T : 発光層の膜厚
    を満たすように前記複数のピットを形成すること
    を特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  4. 請求項3に記載のIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法において、
    前記発光層は、
    前記第1のピットの外部に位置する平坦部と、
    前記第1のピットの内部に位置するとともに前記平坦部と連なる斜面部と、
    を有し、
    前記平坦部の膜厚と前記斜面部の膜厚とを、次式
    0.56 ≦ B/A ≦ 0.9
    A: 発光層の平坦部の膜厚
    B: 発光層の斜面部の膜厚
    を満たすように前記複数のピットを形成すること
    を特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  5. 請求項3または請求項4に記載のIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法において、
    前記発光層として、
    InGaNから成る井戸層と、
    前記井戸層の上に位置するキャップ層と、
    前記キャップ層の上に位置するInを含む障壁層と、
    を形成し、
    前記キャップ層を形成する際に徐々に温度を上昇させること
    を特徴とするIII 族窒化物半導体発光素子の製造方法。
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