JP2017002366A - 冷間加工性に優れた熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

冷間加工性に優れた熱延鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来、熱間鍛造で製造されてきた駆動系部品に対し、冷間鍛造での成形を可能とする熱延鋼板を製造する方法を提供する。
【解決手段】C:0.03%以上0.50%未満、Al:0.70%以上2.00%以下を含みかつ、Si:0.05%以上0.50%以下、Mn:0.05%以上2.00%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、N:0.005%以下、O:0.010%以下を含み、さらに、Cr:0.05%以上1.00%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下、B:0.0005%以上0.0050%以下、Ti:0.005%以上0.10%以下、Nb:0.005%以上0.05%以下の1種又は2種以上を含む回復・再結晶フェライ相と変態フェライト相からなり、0.7未満の平均r値(r−m)と−0.2以上0.1以下のΔr値を有することを特徴とする冷間加工性に優れた熱延鋼板。
【選択図】図1

Description

本発明は、冷間鍛造等の冷間加工性に優れた熱延鋼板とその製造方法に関するものである。
近年、地球環境保護の観点からCO2排出量を低減するため、自動車車体や機械部品の軽量化が進められる一方、製造工程の簡素化による製造コストの大幅な削減を実現する観点から、これまで熱間鍛造で製造した自動車部品についても、特に、駆動系部品については、冷間鍛造で製造する試みがなされている。
そこで、製造工程を簡素化するとともに、部品の軽量化を図るためには、従来の熱間での加工性に匹敵する加工性が必要となる。そのため、本発明が対象とする機械部品において所要の加工性を確保するためには、特に、その素材として高炭素熱延鋼板を用いる場合、対象となる部品性能として高い焼入れ性が要求されるばかりでなく、複雑な部品形状に加工するために実施される冷間鍛造において、特に部品内で生じる大きな板厚変動による割れが発生しないといった優れた加工性が求められる。
そのため、熱延鋼板に優れた冷間加工性を付与するためには、鋼板組織を適切に制御し、十分に軟質化する必要がある。
例えば、高炭素熱延鋼板の軟質化は、通常、鋼板組織において、フェライト粒を粗大化し、炭化物を球状化することで可能となる。これまで、高炭素鋼熱延鋼板を軟質化し加工性を改善する方法が数多く提案されている(例えば、特許文献1〜5、参照)。
特許文献1及び2には、Cを0.2〜1.3質量%を含む鋼材に対し、仕上げ圧延を600℃以上Ar1点以下で特定の圧下率で実施し、その後、450〜700℃の温度範囲で巻き取る方法が開示されている。即ち、板厚方向における炭化物の分散状態を制御するものであり、球状化炭化物と層状パーライトが混在する組織とすることが特徴である。そのため、集合組織を制御することにより、冷間鍛造性という冷間加工性を付与することを目的とした本発明とは全く異なるものである。
また、特許文献3は、加工性に優れた軟質な高炭素鋼の製造方法に関するものであるが、そのためには、コイル全体を長時間加熱する必要があり、生産性に課題を残している。
一方、特許文献4には、Cを0.2〜1.3質量%含有する鋼素材の熱間圧延において、仕上げ圧延前又は中にパーライト変態を完了させ、仕上げ圧延で、パーライトを分断して微細化し、高温で巻き取り、自己保有熱で炭化物を球状化する高炭素熱延鋼帯の製造方法が提案されている。即ち、特別な球状化熱処理を必要とせず、熱間圧延のままで、焼入れ性と冷間加工性に優れた高炭素熱延鋼帯(C:0.2〜1.3質量%)を製造するものであるが、熱延制御と冷却制御を所要の条件下で適確に行う必要があり、本発明における鋼板特性を得ることは困難である。
また、特許文献5には、Cを0.2〜0.7質量%含有する鋼に、 熱間圧延を仕上げ温度(Ar3変態点−20℃)以上で行った後、冷却速度120℃/秒を超えかつ、冷却終了温度620℃以下で冷却を行い、次いで、巻取温度600℃以下で巻き取り、酸洗後、焼鈍温度640℃以上Ac1変態点以下で焼鈍する高焼入性高炭素熱延鋼板の製造方法が提案されている。
この製造方法によれば、プレス成形や冷間鍛造の際、割れが発生し難い、軟質で加工性に優れた高炭素熱延鋼板を製造することができるが、ベイナイト相を主体とする組織を球状化する長時間にわたる箱焼鈍を行う必要があるため、コストアップを余儀なくされるものである。
特開平08−176726号公報 特開平08−269619号公報 特開平09−157758号公報 特開平09−324212号公報 特開2003−073742号公報
従来技術においては、熱延鋼板の冷間加工性を高めるため、熱延で形成した鋼板組織を、仕上げ熱延又は球状化焼鈍で球状化して軟質化するが、熱延工程、冷却工程、焼鈍工程を所要の条件下で適確に行う必要がある。また、特に、焼鈍は箱焼鈍で行うため、製造工期に長時間を要し、製造コストの点で課題がある。
そこで、本発明は、冷間加工性として、特に、冷間鍛造性に優れた熱延鋼板の製造方法において、製造工程を短縮して、製造コストを大幅に低減することに加え、冷間加工性(冷間鍛造性)を付与することを課題とし、該課題を解決する熱延鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、熱延鋼板の熱間圧延において、仕上げ圧延を(γ+α)の2相域で行った後、所定の温度域で巻き取るか、又は、一旦、300℃以下の温度域まで冷却後、巻き取る前又は一旦巻き取った後に、所定の温度域に加熱後、そのまま巻き取ることにより、特に、熱延板での平均r値が、従来の熱延鋼板で得られる値に比べて極めて低くなるばかりでなく、その異方性も小さくなることを知見した。
この知見は、変形モードの特徴から、冷間鍛造に対して優位な特性であることを示唆している。
上記知見が得られた一つの実験結果について説明する。即ち、0.045%(%は質量%)C−0.05%Si−1.1%Mn−0.011%P−0.0015%S−1.4%Alからなる鋼を溶製し、実験室規模の熱間圧延装置を用いて、加熱温度:1250℃、仕上温度:950℃とし、表1に示す条件で冷却−巻取を再現した。ここで、再加熱はランアウトテーブル内で実施するものである。
得られた熱延鋼板について、酸洗後、JIS Z 2201に準拠した5号試験片に加工し、JIS Z 2241に記載の試験方法に従って引張試験を実施した。得られた特性を表1に示す。いずれの条件においても、本発明の目指している冷間鍛造性に対して優位な特性となる低い平均r値(r-m)と小さいΔr値を示している。
なお、r−m及びΔrは、L(圧延方向)、C(板幅方向)、及び、45°(X)方向のr値を測定し、平均r値(r−m={(r−L)+(r−C)+2×(r−X)}/4)と、その異方性(Δr={(r−L)+(r−C)−2×(r−X)}/2)を用いて評価した。
ここで、r−L、r−C、r−Xは、各々圧延方向、板幅方向、及び45°方向のr値を示す。さらに、こうした特性が得られた原因について、表1中のNo.1の熱延鋼板について、板厚の1/4の部分(1/4t部)を、EBSD(Electron Backscattered Diffraction Pattern)法により組織を解析した(使用ソフト:(株)TSLソリューションズ製OIM−Analysis5)。得られた結果を図1に示す。
隣接する二つの結晶粒同士の角度差で解析を行い、その角度差が2°以上15°未満の結晶粒界(赤色)と、15°以上の結晶粒界(青色)で区別した。その結果、結晶粒径が細かい部分は、隣り合う結晶粒との角度差が2°以上15°未満であることから、加工フェライトが回復・再結晶過程にある部分であると考えられる。
ただし、白黒図である図1から、上記回復・再結晶部分の加工フェライトが明瞭に示されないため、隣り合う結晶粒の角度差が2°以上、15°未満の部分、即ち、加工フェライトが回復・再結晶過程にある部分を黒で示したものを図4に示す。
即ち、熱間圧延中はフェライトであった部分であることから、当該部分を回復・再結晶フェライト相とした。一方、15°以上の結晶粒界に囲まれた部分は、その結晶粒の形態から考えて、熱間圧延中はオーステナイトであった部分である。
即ち、この部分を変態フェライト相とする。さらに、ODF(Orientation Distribution Function)で表わしたものを図2及び図3に示すが、αRの部分は、(001)<110>方位の集積度が特に高いことも見出された。なお、αRの粒径は、凡そ20μm以下である。一方、αTの部分の結晶粒については、その結晶方位はランダムである。こうした視点から、熱延板のミクロ組織について解析した結果についても表1に示す。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)面積分率で40%以上の回復・再結晶フェライ相と変態フェライト相を含むミクロ組織からなり、0.7未満の平均r値(r−m)と−0.2以上0.1以下のΔr値を有することを特徴とする冷間加工性に優れた熱延鋼板。
(2)前記ミクロ組織が、第二相を含むことを特徴とする前記(1)に記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板。
(3)前記鋼板が、質量%で、C:0.03%以上0.50%未満、Al:0.70%以上2.00%以下を含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板。
(4)前記熱延鋼板が、さらに、質量%で、Si:0.05%以上0.50%以下、Mn:0.05%以上2.00%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、N:0.005%以下、O:0.010%以下を含むことを特徴とする前記(3)に記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板。
(5)前記熱延鋼板が、さらに、質量%で、Cr:0.05%以上1.00%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下、B:0.0005%以上0.0050%以下、Ti:0.005%以上0.10%以下、Nb:0.005%以上0.05%以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする前記(3)又は(4)に記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板。
(6)連続熱延工程で、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板を製造する方法であって、800℃以上の温度域で熱間圧延を終了した熱延鋼板を、冷却帯で、直ちに750℃以下に冷却し、そのまま巻き取ることを特徴とする冷間加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
(7)連続熱延工程で、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板を製造する方法であって、800℃以上の温度域で熱間圧延を終了した熱延鋼板を、冷却帯で、直ちに300℃以下に冷却し、巻き取る直前に、600℃以上750℃以下に加熱し、そのまま巻き取ることを特徴とする冷間加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
(8)連続熱延工程で、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の冷間鍛造性に優れた熱延鋼板を製造する方法であって、800℃以上の温度域で熱間圧延を終了した熱延鋼板を、冷却帯で、直ちに300℃以下に冷却して巻き取り、その後、巻き戻しながら600℃以上750℃以下に加熱し、そのまま巻き取ることを特徴とする冷間加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、冷間加工性として、特に冷間鍛造性に優れ、駆動系機械部品の素材として好適な熱延鋼板を連続工程で製造することができる。
本発明における熱延鋼板のミクロ組織の特徴を示す図である。 本発明における熱延鋼板に形成された集合組織を示す図である。 本発明における熱延鋼板のミクロ組織を示す図である。 本発明における熱延鋼板の加工フェライトが回復・再結晶過程にある部分を示す図である。
本発明の冷間加工性に優れた熱延鋼板は、800℃以上の温度域で熱間圧延を実施した熱延鋼板であって、ミクロ組織が、主として、回復・再結晶フェライ相と変態フェライト相からなる組織であることを特徴とする。
本発明の冷間加工性に優れた熱延鋼板の製造方法は、連続熱延工程で製造する方法であって、800℃以上の温度域で熱間圧延を終了した熱延鋼板を、冷却帯で、直ちに750℃以下の温度域に冷却し、そのまま巻き取るか、又は、冷却帯で直ちに300℃以下の温度域まで冷却し、巻き取る前に600℃以上750℃以下に加熱し、そのまま巻き取るか、又は、上記300℃以下の温度域まで冷却した後に、一旦、そのまま巻取り、その後、巻き戻しながら加熱を開始し、再び巻き取る直前で600℃以上750℃以下に加熱することを特徴とする。
仕上げ圧延は、(α+γ)の二相域で行って終了する。仕上げ圧延を(α+γ)の二相域で行うことにより、巻き取った後における熱延鋼板のミクロ組織が、図1に示すように、回復・再結晶フェライ相と変態フェライト相からなる。
こうした形成過程の異なる2種類のフェライトを混在させることにより、従来、圧延工程で製造される薄鋼板では達成できなかった極めて低い平均r値(r−m)と、極めて小さい異方性(Δr)を達成することができ、そのことにより、冷間鍛造性が向上することを知見した。
しかし、これまでに実施されてきた二相域での圧延は、Ar3点以下で行うことから、実際の温度域は、750〜650℃程度の温度域となり、通常、実施される圧延温度域に比べて非常に低いため、圧延荷重が高くなることが懸念される。
ところが、本発明においては、成分組成の特徴から、通常実施される熱間圧延の温度域でも、(α+γ)の二相域での圧延とすることができる。また、熱延鋼板のミクロ組織に40%以上の回復・再結晶フェライトを形成させるためには、仕上げ温度は800℃以上とするが、好ましくは、回復・再結晶フェライトを40%以上とするために、900℃以上が好ましい。
一方、圧延温度の上限については、特に限定する理由はないが、あまり高くなり過ぎると、ロール表面へのダメージが大きくなるので、1100℃を上限とする。好ましくは1050℃である。
一方、巻取った後のミクロ組織においては、鋼中に含まれるC量が高くなると、必然的に焼入れ性が向上するため、変態フェライト相以外にパーライトやベイナイトという炭化物の析出を含む組織(厳密には、この組織は変態フェライト+セメンタイト)になり易い。
しかし、集合組織は、フェライト相の部分が支配的であるため、結果的に、フェライト以外にパーライトやベイナイトという炭化物を含む組織が形成されても、本発明の効果に対する影響はほとんどない。また、前述したように、変態フェライト相の部分の方位はランダムであることから、本発明において重要な組織因子は、回復・再結晶フェライト相が重要な組織因子である。
なお、変態フェライト以外に炭化物やパーライトやベイナイトに加え、マルテンサイトといった第二相が形成されても、本発明の効果は損なわれないが、総合的な加工性を考慮すると、特に、第二相の分率は40%以下とする。そのため、回復・再結晶フェライトと変態フェライトとしては合計で60%以上とする。
仕上げ圧延に続いて実施する冷却は、通常の冷却手段で実施される。即ち、10℃/秒以上の冷却速度で、750℃以下の温度域まで冷却し、そのまま巻き取る。750℃を超えた温度域で巻き取ると、スケールの生成が多くなり、酸洗性が劣化するので、750℃を上限とする。
なお、本発明において、巻取り温度の下限を設定する理由はないが、冷却停止温度の安定性の視点から、500℃を下限とする。一方、冷却速度については、10℃/秒未満となると著しく生産性が低下して好ましくないので、10℃/秒を下限とする。上限についても、特に限定する理由はないが、1000℃/秒を超えると設備負荷が大きくなり過ぎるので、1000℃/秒を上限とする。
本発明においては、仕上げ圧延後の冷却条件として、一旦、300℃以下まで冷却した後、再加熱を実施し、所定の温度域で巻取りを実施しても、本発明の効果は損なわれない。その際、300℃を超える温度域で冷却を停止しようとすると、冷却終点温度が安定しなくなり、材質のばらつきが大きくなるため、好ましくない。
さらに、冷却後、直ちに再加熱を実施するが、その理由は、その後に実施される巻取り中に、加熱中にオーステナイトであった部分については、焼戻しの効果により、鋼板強度の極度な上昇を抑制することができる。したがって、その効果を十分に得るためには、600℃以上の温度域まで加熱する必要がある。
一方、750℃を超える温度域まで再加熱すると、強度は低下するが、過度にスケールが生成するため、酸洗性が劣化して好ましくない。前述の再加熱は、オフラインで実施しても、その効果は変わりなく、即ち、一旦、300℃以下の温度域で巻き取った後、別工程に移送後、巻き戻しながら再加熱を行うことも、前述の再加熱と同様の効果が得られる。
なお、本発明で実施する再加熱は、いわゆる、電気による加熱であり、誘導加熱や通電加熱が適用される。その場合、加熱速度は10℃/秒以上、好ましくは100℃/秒である。10000℃/秒を超える加熱速度とすると、加熱設備の負担が極端に大きくなるため、加熱速度は10000℃/秒が上限である。
また、前記冷却・加熱条件により、前述した第二相の分率を、本発明の範囲内とすることができる。
なお、C量が0.10質量%以下の場合は、300℃以下の温度域に冷却後、そのまま巻き取って冷間鍛造用の鋼板として適用することが可能である。ただし、C量が0.10質量%を超えた場合は、強度が高くなりすぎて、冷間鍛造における負荷が大きくなりすぎることが懸念される。
次に、本発明の熱延鋼板の成分組成の限定理由について説明する。以下、「%」は「質量%」である。
C:0.03%以上0.50%未満
Cは、成形品の強度の確保に必要な元素である。0.03%未満では、所要の強度を確保できないので、Cは0.03%以上とする。好ましくは0.05%以上である。一方、0.50%以上になると、硬くなりすぎて、冷間加工性が低下するばかりでなく、溶接性が劣化するので、Cは0.50%未満とする。好ましくは0.20%以下である。
Al:0.70%以上2.00%以下
Alは、本発明においては重要な元素の一つである。即ち、Alは、(α+γ)の二相域での熱間圧延を安定化する作用をなすとともに、安定した脱酸効果を奏する元素である。0.70%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Alは0.70%以上とする。好ましくは1.00%以上である。一方、2.00%を超えると、製鋼段階での鋳造中にノズル詰まりが起こり易くなるので、Alは2.00%以下とする。好ましくは1.70%以下である。
Si:0.05%以上0.50%以下、
Siは、強度の向上に寄与する元素である。0.05%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Siは0.05%以上とする。好ましくは0.10%以上である。一方、0.50%を超えると、強度が上昇し、靱性が低下するので、0.50%以下とする。好ましくは0.30%以下である。
Mn:0.05%以上2.00%以下
Mnは、焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する元素である。0.05%未満では、添加効果が十分に発現しないので、Mnは0.05%以上とする。好ましくは0.10%以上である。一方、2.00%を超えると、硬くなりすぎて、冷間加工性が低下するばかりでなく、偏析に起因して、冷間鍛造中に割れが生じ易くなるので、Mnは2.00%以下とする。好ましくは1.50%以下である。
本発明熱延鋼板は、上記元素の他、P:0.015%以下、S:0.015%以下、N:0.010%以下、O:0.010%以下を含有してもよい。
P:0.015%以下
S:0.015%以下
PとSは、不純物元素であり、少ないほど好ましい元素である。いずれも、0.015%を超えると、延性及び靱性が低下するので、P及びSは、いずれも0.015%以下とする。好ましくは、いずれも0.010%以下である。
N:0.005%以下、
Nは、鉄原料から不可避的に混入する元素であり、少ないほど好ましい元素である。0.005%を超えると、延性及び靱性が低下するので、0.005%以下とする。好ましくは0.002%以下である。
O:0.010%以下
Oは、脱酸後も不可避的に鋼中に残留する元素であり、少ないほど好ましい元素である、0.010%を超えると、酸化物が生成し、延性及び靱性を阻害するので、0.010%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
本発明熱延鋼板は、上記元素の他、本発明熱延鋼板の特性を損なわない範囲で、Cr:0.05%以上1.00%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下、B:0.0005%以上0.0050%以下、Ti:0.005%以上0.10%以下、Nb:0.005%以上0.05%以下の1種又は2種以上を含有してもよい。
なお、本発明熱延鋼板において、成分組成を構成する元素以外の残部は、Feと不可避的不純物である。
前記に規定された鋼は転炉で溶製された後、スラブに鋳造される。その際に100mm以下の薄スラブに鋳造されても構わない。その後、再加熱又はそのまま熱間圧延が実施される。その条件は通常実施されるもので構わないが、再加熱を実施する際は、1000℃以上1250℃以下で行う。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1)
表2に示す成分組成の鋳片を連続鋳造で製造し、表3に示す条件で熱間圧延を実施して熱延板とした。得られた熱延板について、前述と同様の方法で引張試験及び組織観察を実施した。
その際、冷間加工性の評価として、熱延板の硬度と、L、C、及び、45°(X)方向のr値を測定し、平均r値(r−m={(r−L)+(r−C)+2×(r−X)}/4)と、その異方性(Δr={(r−L)+(r−C)−2×(r−X)}/2)を評価した。冷間鍛造性との相関より、r−m:0.7以下、Δr値:−0.2以上0.1以下の特性を示すものを本発明の範囲とする。得られた結果を表3に併せて示す。
熱延鋼板の、板幅方向に垂直な断面の、圧延面から板厚の1/4の深さの部分で、500μm〜1mm角の領域をミクロ組織観察の対象とした。熱延板のミクロ組織は、SEM及びEBSDを用いて観察し、前述と同様に回復・再結晶フェライト相と変態フェライト相の分率を算出した。また、本発明における熱延鋼板の冷間鍛造性は、r−m及びΔrで評価した。表3に得られた特性を示す。
発明例においては、r−m:0.7以下、Δr値:−0.2以上0.1以下の特性を示し、冷間鍛造性が顕著に向上している。一方、C量、Si量、Mn量が本発明の範囲を超えたものは、回復・再結晶フェライト(αR)が形成されず、また、低温変態生成相の形成により強度が高い。そのため、冷間鍛造性が劣化するものと考えられる。
また、熱間圧延がA3点を超えて実施されたものは、再結晶フェライトが形成されていないため、Δrが本発明の範囲を超えており、冷間鍛造性の劣化が懸念される。
J鋼、K鋼及びM鋼については、本発明の範囲内の条件で製造されたものであるが、C量、Si量、及び、Mn量が多く添加され過ぎたため、強度が800MPaを超えている。そのため、冷間鍛造は実施できるものの、加工時の負荷が高くなり過ぎることが懸念される。
L鋼については、Al量が本発明の範囲から低く外れたため、熱間圧延中に回復・再結晶フェライト相が形成されず、異方性が大きくなり、所定の部品形状への成形が困難なばかりでなく、歩留の低下が懸念される。
(実施例2)
表2のAに示す成分組成の鋳片を連続鋳造で製造し、表4に示す本発明の範囲の条件で熱間圧延、冷却、及び、巻取りを実施して熱延鋼板とした。室温まで冷却した熱延鋼板については、一旦、それを巻き戻し、表4に示す条件で加熱して、そのまま巻き取って、実施例1と同じ手法で、SEM及びEBSDを用いた組織観察を行うとともに、引張試験に加え、r−m及びΔrによる冷間鍛造性を評価した。
結果を表4に併せて示すが、いずれの場合も、良好な冷間鍛造性を示す特性が得られている。なお、条件コ、サ、及び、シは、薄スラブ連鋳法によるものであり、鋳造厚を100mmとした。
前述したように、本発明によれば、冷間加工性、特に、冷間鍛造性に優れ、駆動系機械部品の素材として好適な熱延鋼板を連続工程で製造することができる。よって、本発明は、鋼板製造産業において利用可能性が高いものである。

Claims (8)

  1. 面積分率で40%以上の回復・再結晶フェライ相と変態フェライト相を含むミクロ組織からなり、0.7未満の平均r値(r−m)と−0.2以上0.1以下のΔr値を有することとく冷間加工性に優れた熱延鋼板。
  2. 前記ミクロ組織が、第二相を含むことを特徴とする請求項1に記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板。
  3. 前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.03%以上0.50%未満、Al:0.70%以上2.00%以下を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板。
  4. 前記熱延鋼板が、さらに、質量%で、Si:0.05%以上0.50%以下、Mn:0.05%以上2.00%以下、P:0.015%以下、S:0.015%以下、N:0.005%以下、O:0.010%以下を含むことを特徴とする請求項3に記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板。
  5. 前記熱延鋼板が、さらに、質量%で、Cr:0.05%以上1.00%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下、B:0.0005%以上0.0050%以下、Ti:0.005%以上0.10%以下、Nb:0.005%以上0.05%以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板。
  6. 連続熱延工程で、請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板を製造する方法であって、800℃以上の温度域で熱間圧延を終了した熱延鋼板を、冷却帯で、直ちに750℃以下に冷却し、そのまま巻き取ることを特徴とする冷間加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
  7. 連続熱延工程で、請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板を製造する方法であって、800℃以上の温度域で熱間圧延を終了した熱延鋼板を、冷却帯で、直ちに300℃以下に冷却し、巻き取る直前に、600℃以上750℃以下に加熱し、そのまま巻き取ることを特徴とする冷間加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
  8. 連続熱延工程で、請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷間加工性に優れた熱延鋼板を製造する方法であって、800℃以上の温度域で熱間圧延を終了した熱延鋼板を、冷却帯で、直ちに300℃以下に冷却して巻き取り、その後、巻き戻しながら600℃以上750℃以下に加熱し、そのまま巻き取ることを特徴とする冷間加工性に優れた熱延鋼板の製造方法。
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