JP2017001992A - 経皮吸収型製剤 - Google Patents

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健治 冨永
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康史 森田
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稔浩 加来
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Abstract

【課題】リバスチグミンの製剤からの放出及び皮膚透過の徐放性並びにリバスチグミンの粘着基剤中での安定性に優れた経皮吸収型製剤の提供。【解決手段】粘着基剤が、(a)リバスチグミンを8〜12質量%と、(b)グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸のうちいずれか1種以上からなるヒドロキシ酸を0.3〜3質量%と、(c)熱可塑性弾性体を10〜50質量%と、(d)粘着付与剤として脂環族飽和炭化水素樹脂を10〜40質量%と、(d)可塑剤として流動パラフィンを10〜40質量%と、を含有し、かつ、粘着基剤層の厚さが120〜260μmである構成を有している。【選択図】なし

Description

本発明は、薬効成分としてリバスチグミン「3−[(1S)−1−(dimethylamino)ethyl]phenyl N−ethyl−N−methylcarbamate」を含有する経皮吸収型製剤に関する。
本発明において使用する薬効成分であるリバスチグミンはコリンエステラーゼ阻害作用を示し、アルツハイマー型認知症の治療に使用されている。
リバスチグミンは最初に経口投与を目的として製剤化が行われ、アルツハイマー型認知症患者に対して有効性を示したが、悪心や嘔吐等の消化器症状の副作用が認められた。これらの副作用は経口投与時の高い最高血漿中薬物濃度、あるいはそれに伴う血漿中薬物濃度の大きな変動に起因するものと考えられている。そこで、この課題を解決し、副作用の軽減を目指して薬物動態プロファイルを改善した経皮吸収型製剤が種々検討されている。
例えば、特許文献1には、a)リバスチグミン及び抗酸化剤を含む医薬組成物、b)医薬組成物を支持するための裏打ち層、c)裏打ち層と医薬組成物を固定するための接着剤、d)接着剤に接触した剥離性ライナーから構成された経皮デバイスが開示されている。
また、特許文献2及び特許文献3には、リバスチグミンの経時安定性を向上させるため、薬物含有層と粘着剤含有層を分離した構成とし、それぞれの層に特定のアクリル系粘着剤を使用することで、抗酸化剤を含有しない貼付剤が開示されている。
しかし、特許文献1〜3は、薬物含有層と粘着剤含有層を別途調製する必要があり、構成も複雑で生産性に欠ける難点が指摘されている。
特許文献4は、ドネペジル、ザナペジル等の認知症治療薬を含有する粘着組成物に、皮膚透過性を向上させるために有機酸又はその塩を配合させ、別途の層を有しない経皮吸収型製剤が開示されている。同文献では1時間あたり1.2μg/cm2以上の皮膚透過速度を得るために実施例に酢酸ナトリウムを使用することが記載されている。
また、特許文献5には、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、粘着付与樹脂及び可塑剤からなるマトリックス層にリバスチグミンを含有することで、別途の層を有しない、且つ抗酸化剤及び有機酸を含有しない経皮吸収型製剤が開示されている。
しかし、特許文献5の場合は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体系粘着基剤からのリバスチグミンの皮膚への分配が大きく、リバスチグミンの皮膚透過性が高すぎる傾向がある。その結果、患者のリバスチグミン吸収量が過量となり、悪心や嘔吐、下痢、腹痛、めまい等の副作用が発現する恐れがあると指摘されている。この対処法として、該吸収量を抑えるために、粘着基剤中の薬効成分量を減量する方法が考えられるが、この場合、薬効の持続性が低下する可能性がある。また、貼付面積を小さくして、投与量を減らす方法も考えられるが、貼付部にリバスチグミンに起因する紅班や浮腫等の副作用が報告されていることから、該吸収量に依存して皮膚に対する副作用が増大する可能性がある。
特許第3820103号公報 WO2013/031992号公報 特許第5093545号公報 WO2003/032960号公報 特表2014−508728号公報 米国特許出願公開第2011/0066120号公報 欧州特許第2172194号公報
本発明は上記従来の課題を解決するもので、リバスチグミンの製剤からの放出及び皮膚透過の徐放性並びにリバスチグミンの粘着基剤中での安定性に優れた経皮吸収型製剤の提供を目的とする。
前述したように粘着基剤の主成分にスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を使用することで、高い皮膚透過性を得ることは可能であるが、徐放作用を考慮しない場合、所定量のリバスチグミンの継続投与に困難性が見られ、その結果、リバスチグミンの吸収量が過量となり、悪心や嘔吐等の副作用が発現する虞がある。
このため、製剤からのリバスチグミンの放出速度、皮膚透過速度を適度に制御しなければならないと考え、鋭意研究した結果、一般的にpH調節剤として使用される有機酸のうち、特にヒドロキシ酸を粘着基剤中に含有させることで、ヒドロキシ酸のリバスチグミンに対する放出及び皮膚透過の徐放化効果を見出し、本発明を完成した。
本発明者は、リバスチグミンの製剤からの放出及び皮膚透過の徐放化を目的として、塩基性薬物であるリバスチグミンに対する徐放化作用を期待して添加物を探索する過程において、pH調節剤として使用されているヒドロキシ酸に、中和作用による徐放化作用があることを見出した。この作用メカニズムとしては、3級アミンでありルイス塩基性を有するリバスチグミンに対して、有機酸であるヒドロキシ酸が、ルイス酸として作用し、リバスチグミンとの親和性を向上させた結果、粘着基剤中を拡散するリバスチグミン遊離塩基の量が抑制されたことによるものと推察している。
一方、特許文献5は、実施例において、リバスチグミン遊離塩基が使用され、薬効成分が塩形態ではないため、pH調節剤を含有しない場合でも高い経皮吸収性を得ているものと推定している。
尚、特許文献6及び特許文献7には、リバスチグミンは比較的酸化の影響を受けやすいとされ、時間の経過とともに分解生成物が増加する虞があることが指摘されている。このため、リバスチグミンの経時不安定性を解消する観点から、カルボキシル基やヒドロキシ基を含有しない貼付剤が提案されている。しかしながら、本発明者は、粘着基剤中の薬剤の種類及びそれらの配合割合を所定の範囲に選択することによって、リバスチグミンの経時不安定性を解消できることに成功した。
本発明は上記目的を達成するために、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の経皮吸収型製剤は、粘着基剤中に、(a)リバスチグミンと、(b)徐放化剤としてヒドロキシ酸と、(c)熱可塑性弾性体と、を含有する経皮吸収型製剤であって、前記リバスチグミンと前記ヒドロキシ酸の配合比率が1:1〜100:1である構成を有している。
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)熱可塑性弾性体を使用することで、熱可塑性弾性体の高い熱安定性並びに他成分との低い反応性により、リバスチグミンの良好な経時的安定性を与えるという作用を有する。
(2)リバスチグミンの良好な経時的安定性は、3級アミンでありルイス塩基性を有するリバスチグミンに対して、有機酸であるヒドロキシ酸が、ルイス酸として作用し、リバスチグミン遊離塩基との親和性を向上させ、粘着基剤中のリバスチグミン遊離塩基の量を抑制したことによるものと推察している。
(3)リバスチグミンとヒドロキシ酸の配合比率が1:1〜100:1とすることで、リバスチグミン遊離塩基の量が調整されることにより、リバスチグミンの製剤からの放出を抑制し、皮膚透過性の徐放化に資するという作用を有する。
ここで、リバスチグミンは、アルツハイマー型認知症薬として公知であるコリンエステラーゼ阻害作用を有する。リバスチグミンとしては、遊離塩基型と酸付加塩型があり、いずれも本発明の経皮吸収型製剤として使用可能であるが、中でも遊離塩基型のリバスチグミンが好適に用いられる。これは、粘着基剤中でのリバスチグミンの拡散性において、遊離塩基型の方が酸付加塩型よりも優れているためである。
粘着基剤中で、リバスチグミンの含有量は3〜15質量%、好ましくは8〜12質量%の範囲において配合処方される。リバスチグミンの含量が8質量%未満では、薬効成分の経皮吸収量が少なく十分なコリンエステラーゼ阻害作用が得られ難くなる傾向があり、3質量%未満ではほとんど期待できない。また、12質量%を超えるにつれ、薬効成分の粘着基剤中からの経皮吸収量が過量となる傾向があり、15質量%を超えるとそれらが著しいので好ましくない。
リバスチグミン(a)とヒドロキシ酸(b)の配合比率(a/b)は、1〜100であり、好ましくは2〜50である。この配合比率が2より小さくなるにつれ、リバスチグミンの粘着基剤中からの経皮吸収量が不足する傾向があり、1未満ではそれらが著しいので好ましくない。また、50を超えるにつれ、粘着基剤中からのリバスチグミンの徐放性が得られ難くなる傾向があり、100を超えるとほとんど期待できない。
ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、タルトロン酸が用いられる。
尚、上述したヒドロキシ酸を徐放化剤として配合した処方については、先行技術の存在は勿論、研究報告された事実もなく、また、薬効成分の徐放効果についても報告された例はない。特に、乳酸については本発明者らの鋭意なる研究を積み重ねた結果、初めて見出された知見である。
粘着基剤としては、主に熱可塑性弾性体、粘着付与剤、可塑剤を含有し、必要に応じて薬物を含有するものが用いられる。
熱可塑性弾性体としては、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ブチルゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリシロキサン、(メタ)アクリル酸系高分子等のいずれか1種以上が用いられる。
粘着基剤中における熱可塑性弾性体の配合割合としては10〜50質量%の範囲内で適宜処方される。
粘着付与剤としては、テルペン系、テルペンフェノール系、クマロンインデン系、スチレン系、ロジン系、キシレン系、フェノール系、石油系等が用いられる。なかでも凝集性、薬効成分の安定性の観点から石油系樹脂が特に好ましい。また、石油系樹脂は必要に応じてロジン系樹脂と併用することができるが、長期保存時の粘着剤の保型性の観点から、粘着付与剤の主成分としては石油系樹脂が好ましい。
石油系樹脂としては、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系飽和炭化水素樹脂が挙げられ、中でも粘着力、粘着基剤との相溶性、耐老化性の観点から脂環族系飽和炭化水素樹脂が好ましい。
脂環族系飽和炭化水素樹脂としては、具体的にはアルコンP−70、アルコンP−90、アルコンP−100、アルコンP−115、アルコンP−125(商品名、荒川化学工業(株))等が挙げられ、1種又は2種以上を組合せて使用することができる。
粘着付与剤の配合量は、5〜50質量%であり、好ましくは10〜40質量%である。配合量については10質量%よりも少なくなるにつれ、長時間の貼付を可能とする十分な粘着力が得難い傾向があり、5質量%より少なくなるとこの傾向が著しいので好ましくない。他方、40質量%を超えるにつれ、剥離時の痛みや皮膚のかぶれが発生し易くなる傾向が見られ、50質量%を超えるとこの傾向が著しいので好ましくない。
また、粘着基剤にリバスチグミンの溶解性を増加させるために、溶解剤を更に含有させてもよい。このような溶解剤としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、クエン酸トリエチル等が挙げられ、中でも製造後における薬効成分の結晶析出を長期間にわたり抑制できる点を考慮するとポリエチレングリコールが好ましい。
ポリエチレングリコールの平均分子量は1000〜25000が好ましく、7000〜25000が特に好ましい。このようなポリエチレングリコールとしては、マクロゴール1000(商品名、三洋化成工業(株))、マクロゴール1500(商品名、三洋化成工業(株))、マクロゴール1540(商品名、三洋化成工業(株))、マクロゴール4000(商品名、三洋化成工業(株))、マクロゴール6000(商品名、三洋化成工業(株))、マクロゴール20000(商品名、三洋化成工業(株))等が挙げられる。このような溶解剤は2種以上混合して使用しても良く、溶解剤の配合量は、充分な経皮吸収性、貼付剤としての充分な凝集力の維持及び薬効成分の安定性を考慮し、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の範囲内で適宜配合される。5質量%を超えるにつれ、粘着剤の凝集力が低下し、貼付剤の粘着力が低下する傾向にあり、10質量%を超えるとその傾向が著しいので好ましくない。
粘着基剤中に充填剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤等を必要に応じて配合してもよい。
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等が好ましい。
抗酸化剤としては、トコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール等が好ましい。
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体等の公知の化合物が好ましい。
このような充填剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤は、粘着基剤全量に対して2質量%以下の範囲内で適宜配合される。
可塑剤は、貼付剤の粘着性を調整する目的で配合される。可塑剤としては、流動パラフィン、石油系オイル(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、シリコンオイル、二塩基酸エステル(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(ポリブテン、液状イソプレンゴム等)、サリチル酸グリコール、ジエチレングリコール、クロタミトン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシル等が挙げられ、中でも粘着基剤との相溶性の点から流動パラフィンが特に好ましい。
このような可塑剤は2種以上混合して用いても良く、貼付剤としての充分な凝集力の維持を考慮し、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%の範囲内で使用するのが好ましい。5質量%未満では粘着剤の凝集力が増加して粘着力の低下や作業性の低下等を招き易くなる傾向にあり、50質量%を超えると粘着剤の凝集力が低下して保型性が低下する傾向が著しいので好ましくない。
本発明の請求項2に記載の経皮吸収型製剤は、請求項1において、前記ヒドロキシ酸が、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸のいずれか1種以上を含有する構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下の作用が得られる。
(1)グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸のいずれか1種以上を添加することにより、塩基性薬物であるリバスチグミンに対するルイス酸としての作用により徐放化効果を高めることができる。
(2)グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸のいずれか1種以上を添加することにより粘着基剤中の薬効成分の高い安定性を得ることができる。
本発明の請求項3に記載の経皮吸収型製剤は、請求項1又は2において、前記粘着基剤が、(a)前記リバスチグミンを8〜12質量%と、(b)グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸のうちいずれか1種以上からなる前記ヒドロキシ酸を0.3〜3質量%と、(c)前記熱可塑性弾性体を10〜50質量%と、(d)粘着付与剤として脂環族飽和炭化水素樹脂を10〜40質量%と、(d)可塑剤として流動パラフィンを10〜40質量%を含有し、かつ、粘着基剤層の厚さが120〜260μmである構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下の作用が得られる。
(1)脂環族飽和炭化水素樹脂を使用することにより、その耐老化性により粘着基剤層の良好な 経時的安定性を有する。
(2)脂環族飽和炭化水素樹脂及び流動パラフィンを所定量添加することにより、高い皮膚安全 性を有する。
(3)リバスチグミンを8〜12質量%含有することにより、リバスチグミンの良好な薬効を得ることができる。
(4)グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸のいずれか1種以上を0.3〜3質量%含有することにより、リバスチグミンの優れた徐放性を得ることができる。
(5)粘着基剤層の厚さを120〜260μmとすることで、良好な凝集力や保型性を維持し、皮膚に対する粘着性や付着性を持続させ、薬効成分の経皮吸収性の持続性を維持し経皮吸収型製剤の使用性に優れる。
ここで、上記の諸成分を用いて調製される本発明の経皮吸収型製剤の粘着基剤層の厚さは120〜260μmであり、好ましくは160〜220μmである。厚さが160μmより薄くなるにつれ粘着性や付着性、徐放性の持続性が低下し、薬効成分の経皮吸収性の持続性が不十分となる傾向があり、特に、120μmより薄くなるとその傾向が強いので好ましくない。
他方、厚さが220μmよりも厚くなるにつれ凝集力や保型性が低下し、皮膚に対し粘着剤があと残りする傾向にあり、特に、260μmより厚くなるとその傾向が強いので好ましくない。
支持体としては、薬効成分の放出に影響しないものが望ましく、厚さは10〜100μmが好ましい。支持体の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ナイロン等の合成樹脂のフィルム、シート、シート状多孔質体、シート状発泡体、紙、織布又は不織布あるいはこれらの積層体等が挙げられる。
また、ウイルス等の分解能を有する光触媒を使用した特殊加工の支持体も使用できる。
粘着剤層を覆う剥離フィルムは、シリコン処理を施したポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、剥離紙、セロファン又はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の合成樹脂フィルムが挙げられ、その厚さは25〜100μmが好ましい。
本発明の請求項4に記載の経皮吸収型製剤は、請求項1乃至3のいずれか1において、前記ヒドロキシ酸が乳酸からなり、前記熱可塑性弾性体がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体からなる構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3のいずれか1で得られる作用に加え、以下の作用が得られる。
(1)ヒドロキシ酸として、乳酸を用いることにより、粘着基剤中からの薬効成分の好適な徐放性が得られるとともに、最適な経皮吸収量が得られる。
(2)熱可塑性弾性体として、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いることにより、リバスチグミン含有製剤の凝集性に優れる。
(3)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体は、耐候性、耐老化性、耐薬品性に優れているので、リバスチグミン含有製剤の変性を防ぎ、経皮吸収型製剤の経時的安定性に優れる。
ここで、乳酸としては、DL−乳酸、L−乳酸、D−乳酸、無水乳酸、環状二量体であるラクチドあるいはそれらの混合物が用いられる。
リバスチグミンに対する徐放化剤としては、乳酸の配合が必須であるが、他の有機酸、例えば酒石酸、DL−リンゴ酸、クエン酸、イソステアリン酸等を併用して使用しても良い。
乳酸の粘着基剤中の含有量は0.3〜3質量%、好ましくは0.5〜2質量%の範囲において配合処方される。乳酸の含有量が0.5質量%よりも少なくなるにつれ、粘着基剤中からの薬効成分の徐放性が得られ難くなる傾向があり、0.3質量%未満ではほとんど期待できない。また、2質量%を超えるにつれ、薬効成分の粘着基剤中からの経皮吸収量が不足する傾向があり、3質量%を超えるとその傾向が著しいので好ましくない。
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体としては、TR−2000、TR−2003、SIS−5002、5200(商品名、JSR(株))、クインタック3530、3421、3570C(商品名、日本ゼオン(株))、クレイトンD−KX401CS、D−1107CP、D−1161JP(商品名、JSRクレイトンエラストマー(株))、ソルプレン428(商品名、フィリップペトロリアム(株))等が挙げられ、1種又は2種以上を組合せて使用することもできる。
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の配合量については、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。この配合量が上記20質量%より少なくなるにつれ、粘着剤の凝集力や保型性等が低下する傾向にあり、10質量%未満ではその傾向が著しく好ましくない。他方、上記40質量%を超えると粘着剤の凝集力が増加して粘着力の低下や作業性の低下等を招き易くなる傾向にあり、50質量%を超えるとその傾向が著しいので好ましくない。
また、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とポリイソブチレンをブレンドして使用しても良い。
ポリイソブチレンの配合量については、好ましくはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体に対し、3〜30質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。この配合量が上記5質量%より少なくなるにつれ、貼付剤の粘着力が低下する傾向にあり、他方、20質量%を超えるにつれ粘着剤の凝集力が低下して長期保存時の粘着剤の保型性が低下する傾向にあるので好ましくない。
ポリイソブチレンとしては、オパノールB−3、B−10、B−15、B−50SF、B−80、B−100、B−200(商品名、BASF(株))、ビスタネックスLM−MS、LM−MH、MML−80、LLM−100、LLM−120、LLM−140、エクソンブチル065(商品名、エクソン化学(株))、テトラックス3T、4T、5T、6T(商品名、新日本石油(株))等が挙げられ、1種又は2種以上を組合せて使用することができる。
本発明の経皮吸収型製剤は、薬効成分であるリバスチグミンの粘着基剤中での安定性及び粘着基剤からの徐放性に優れるとともに、副作用の極めて少ない、アルツハイマー型認知症の治療に大変有用である。
本発明の経皮吸収型製剤は、パッチ剤及びテープ剤等の貼付剤として使用することができる。尚、貼付剤を製造する場合は、公知又は周知である製剤を処方するのに必要な基剤成分を配合し、公知又は周知の製造方法により目的とする製剤を得ることができる。
次に、本発明における経皮吸収型製剤の製造方法の好適な一例について説明する。
先ず、上記諸成分及び薬効成分をそれぞれ所定の割合となるように有機溶剤(トルエン、ヘキサン、酢酸エチル等)に添加し、撹拌して混合し均一な溶解物を得る。あるいは、上記粘着基剤層を構成する諸成分(薬効成分以外)をそれぞれ所定の割合で窒素等の不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で加熱混合し、次に薬効成分等を添加した後に更に撹拌して均一な溶解物を得ても良い。
次に、この溶解物を剥離フィルム上に展延後乾燥機により乾燥して有機溶剤を揮発除去させた後に支持体上に圧着転写させる。支持体に展延後乾燥機により乾燥して有機溶剤を揮発除去させた後に剥離フィルムを被せても良い。
また、加熱混合して均一な溶解物を得ている場合は、一旦剥離フィルム上に展延し、支持体を被せて溶解物を支持体上に圧着転写させ、冷却後に所望の形状に切断する。この溶解物を直接支持体上に展延し、更に剥離フィルムを被せた後に所望の形状に切断しても良い。
尚、前記製造方法における各基剤成分、薬効成分、その他の添加成分を配合する順序はその一例を述べたものであり、経皮吸収型製剤の製造方法はこの配合順序に特に限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例及び比較例における各基剤成分の数値は粘着基剤全量を100質量%とし、それに対する質量%を意味するものである。
(実施例1)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 10.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 32.3
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)ポリイソブチレン 7.5
(商品名:オパノールB80、BASF)
(4)流動パラフィン 23.3
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)脂環族飽和炭化水素樹脂 26.4
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(6)乳酸 0.5
(商品名:乳酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂にトルエンを加え、撹拌混合した後、乳酸及びリバスチグミンを加え、撹拌混合して均一な溶解物を得た。この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが180μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを乾燥除去して粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例1)を作成した。
(実施例2)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 10.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 32.3
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)ポリイソブチレン 7.5
(商品名:オパノールB80、BASF)
(4)流動パラフィン 22.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)脂環族飽和炭化水素樹脂 26.4
(商品名:アルコンP−100、荒川化学工業)
(6)乳酸 1.0
(商品名:乳酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂にトルエンを加え、撹拌混合した後、乳酸及びリバスチグミンを加え、撹拌混合して均一な溶解物を得た。この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが180μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを乾燥除去して粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例2)を作成した。
(実施例3)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 10.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 32.3
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)ポリイソブチレン 7.5
(商品名:オパノールB80、BASF)
(4)流動パラフィン 23.5
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)脂環族飽和炭化水素樹脂 26.4
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(6)乳酸 0.3
(商品名:乳酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂にトルエンを加え、撹拌混合した後、乳酸及びリバスチグミンを加え、撹拌混合して均一な溶解物を得た。この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが180μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを乾燥除去して粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例3)を作成した。
(実施例4)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 10.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 22.8
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)流動パラフィン 38.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)脂環族飽和炭化水素樹脂 26.4
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(5)乳酸 2.0
(商品名:乳酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂にトルエンを加え、撹拌混合した後、乳酸及びリバスチグミンを加え、撹拌混合して均一な溶解物を得た。この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが200μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを乾燥除去して粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例4)を作成した。
(実施例5)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 10.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 39.8
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(4)流動パラフィン 23.3
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)脂環族飽和炭化水素樹脂 26.4
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(6)乳酸 0.5
(商品名:乳酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂を加熱撹拌して混合した後、乳酸及びリバスチグミンを加え、加熱混合して均一な溶融物を得た。この溶融物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが160μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例5)を作成した。
(実施例6)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 10.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 32.3
(商品名:クレイトンDX−401JS、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)ポリイソブチレン 5.5
(商品名:オパノールB80、BASF)
(4)流動パラフィン 22.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)脂環族飽和炭化水素樹脂 26.4
(商品名:アルコンP−100、荒川化学工業)
(6)乳酸 3.0
(商品名:乳酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂を加熱撹拌して混合した後、乳酸及びリバスチグミンを加え、加熱混合して均一な溶融物を得た。この溶融物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが220μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例6)を作成した。
(実施例7)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 12.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 38.3
(商品名:クレイトンDX−401JS、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)ポリイソブチレン 19.5
(商品名:オパノールB80、BASF)
(4)流動パラフィン 12.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)脂環族飽和炭化水素樹脂 16.4
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(6)乳酸 1.0
(商品名:乳酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂を加熱撹拌して混合した後、乳酸及びリバスチグミンを加え、加熱混合して均一な溶融物を得た。この溶融物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが160μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例7)を作成した。
(実施例8)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 8.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 39.3
(商品名:クレイトンDX−401JS、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)流動パラフィン 12.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)脂環族飽和炭化水素樹脂 38.4
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(5)乳酸 1.5
(商品名:乳酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂を加熱撹拌して混合した後、乳酸及びリバスチグミンを加え、加熱混合して均一な溶融物を得た。この溶融物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが220μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例8)を作成した。
(実施例9)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 15.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 29.3
(商品名:クレイトンD−1107CP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)ポリイソブチレン 5.0
(商品名:オパノールB80、BASF)
(4)流動パラフィン 22.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)脂環族飽和炭化水素樹脂 26.4
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(6)乳酸 1.5
(商品名:乳酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂にトルエンを加え、撹拌混合した後、乳酸及びリバスチグミンを加え、撹拌混合して均一な溶解物を得た。この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが120μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを乾燥除去して粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例9)を作成した。
(実施例10)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 5.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 21.3
(商品名:クレイトンD−1107CP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)ポリイソブチレン 5.0
(商品名:オパノールB50SF、BASF)
(4)流動パラフィン 34.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)脂環族飽和炭化水素樹脂 31.9
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(6)乳酸 2.0
(商品名:乳酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂にトルエンを加え、撹拌混合した後、乳酸及びリバスチグミンを加え、撹拌混合して均一な溶解物を得た。この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが260μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを乾燥除去して粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例10)を作成した。
(実施例11)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 10.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 39.8
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)流動パラフィン 22.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)脂環族飽和炭化水素樹脂 26.4
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(5)DL−リンゴ酸 1.0
(商品名:DL−リンゴ酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂を加熱撹拌して混合した後、DL−リンゴ酸及びリバスチグミンを加え、加熱混合して均一な溶融物を得た。この溶融物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが180μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例11)を作成した。
(実施例12)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 12.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 36.3
(商品名:クレイトンDX−401JS、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)ポリイソブチレン 19.5
(商品名:オパノールB50SF、BASF)
(4)流動パラフィン 19.4
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)脂環族飽和炭化水素樹脂 10.8
(商品名:アルコンP−100、荒川化学工業)
(6)グリコール酸 2.0
(商品名:グリコール酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂を加熱撹拌して混合した後、グリコール酸及びリバスチグミンを加え、加熱混合して均一な溶融物を得た。この溶融物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが160μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例12)を作成した。
(実施例13)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 12.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 36.8
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)流動パラフィン 22.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)脂環族飽和炭化水素樹脂 27.9
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(5)クエン酸 0.5
(商品名:くえん酸水和物、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂を加熱撹拌して混合した後、クエン酸及びリバスチグミンを加え、加熱混合して均一な溶融物を得た。この溶融物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが160μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例13)を作成した。
(実施例14)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 8.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 30.3
(商品名:クレイトンDX−401JS、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)ポリイソブチレン 5.0
(商品名:オパノールB50SF、BASF)
(4)流動パラフィン 22.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)脂環族飽和炭化水素樹脂 31.9
(商品名:アルコンP−100、荒川化学工業)
(6)酒石酸 2.0
(商品名:DL−酒石酸、和光純薬工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂を加熱撹拌して混合した後、酒石酸及びリバスチグミンを加え、加熱混合して均一な溶融物を得た。この溶融物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが220μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(実施例14)を作成した。
(比較例1)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 10.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 32.3
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)ポリイソブチレン 7.5
(商品名:オパノールB80、BASF)
(4)流動パラフィン 23.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(5)脂環族飽和炭化水素樹脂 26.4
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂にトルエンを加え、撹拌混合した後、リバスチグミンを加え、撹拌混合して均一な溶解物を得た。この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが180μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを乾燥除去して粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(比較例1)を作成した。
(比較例2)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 10.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 39.8
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)流動パラフィン 22.8
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)脂環族飽和炭化水素樹脂 26.4
(商品名:アルコンP−90、荒川化学工業)
(5)イソステアリン酸 1.0
(商品名:イソステアリン酸EX、高級アルコール工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン及び脂環族飽和炭化水素樹脂にトルエンを加え、撹拌混合した後、イソステアリン酸及びリバスチグミンを加え、撹拌混合して均一な溶解物を得た。この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが180μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを乾燥除去して粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(比較例2)を作成した。
(比較例3)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 10.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 39.8
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)流動パラフィン 10.0
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)水素添加ロジングリセリンエステル 40.2
(商品名:KE−311、荒川化学工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン及び水素添加ロジングリセリンエステルにトルエンを加え、撹拌混合した後、リバスチグミンを加え、撹拌混合して均一な溶解物を得た。この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが120μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを乾燥除去して粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(比較例3)を作成した。
(比較例4)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 15.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 31.9
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)流動パラフィン 31.9
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)水素添加ロジングリセリンエステル 21.2
(商品名:KE−311、荒川化学工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン及び水素添加ロジングリセリンエステルにトルエンを加え、撹拌混合した後、リバスチグミンを加え、撹拌混合して均一な溶解物を得た。この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが120μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを乾燥除去して粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(比較例4)を作成した。
(比較例5)
下記組成及び製法により、経皮吸収型製剤を製造した。
(組成) 質量%
(1)リバスチグミン 20.0
(2)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 30.0
(商品名:クレイトンD−1161JSP、JSRクレイトン
エラストマー)
(3)流動パラフィン 30.0
(商品名:ハイコールM−352、カネダ)
(4)水素添加ロジングリセリンエステル 20.0
(商品名:KE−311、荒川化学工業)
(製法)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、流動パラフィン及び水素添加ロジングリセリンエステルにトルエンを加え、撹拌混合した後、リバスチグミンを加え、撹拌混合して均一な溶解物を得た。この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて、厚さが90μmになるようにポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、トルエンを乾燥除去して粘着剤層を得た。更にポリエチレンテレフタレートフィルムを粘着剤層に積層することで(比較例5)を作成した。
〈試験例1(放出試験)〉
実施例1〜4、6、11、14及び比較例1、2並びに市販製剤を直径20mmの円形に打ち抜いた後、剥離フィルムを取り除き、横型拡散セルに装着した。拡散セルの外部ジャケット内に37℃の温水を循環させ、セル内部を一定の温度条件に保ち、レセプター側の拡散セルには、pH7.4に調製したリン酸塩緩衝液を充満させ、撹拌子で撹拌しながら、経時的に0.1mLずつサンプリングした。サンプリング後のレセプター溶液には、同量のpH7.4のリン酸塩緩衝液を添加した。サンプリングにより採取した溶液をHPLCにて分析し、薬物濃度を測定した。結果を表1に示す。
尚、参考例として、市販製剤のリバスチグミンパッチ(EXELON PATCH 9mg、含量 9mg/5cm2)を用いた。
Figure 2017001992
表1から明らかなように、実施例は、比較例と比べて、リバスチグミンの放出性が抑制され、徐放効果を発揮していることがわかる。従って、本発明の経皮吸収型製剤は、製剤からの薬物放出において優れた徐放性を示すことが確認された。また、本発明の経皮吸収型製剤は、市販製剤と比べて同等またはそれ以上の徐放性を示すことが確認された。
また、実施例からあきらかなように、ヒドロキシ酸を配合した製剤は,無配合の比較例1に対し、リバスチグミンの放出の抑制率が4〜45%もあることがわかった。尚、実施例6は抑制率は45%と優れるが、リバスチグミンの経皮吸収量が1192μg/cm2と少ないことがわかった。
更に、高級脂肪酸の徐放性を確認した。比較例2から明らかなように、徐放性に欠けることが分かった。
〈試験例2(in vitro皮膚透過試験)〉
ヘアレスマウス(雌、7週齢)の背部から皮膚を摘出し、皮下脂肪を取り除いた後、直径20mmの円形に打ち抜き、皮膚を採取した。実施例1〜6、11、14及び比較例1、2並びに市販製剤を直径13mmの円形に打ち抜いた後、剥離フィルムを取り除き、皮膚の角質層側に貼付して、横型拡散セルに装着した。拡散セルの外部ジャケット内に37℃の温水を循環させ、セル内部を一定の温度条件に保ち、レセプター側の拡散セルには、pH7.4に調製したリン酸塩緩衝液を充満させ、撹拌子で撹拌しながら、経時的に0.1mLずつサンプリングした。サンプリング後のレセプター溶液には、同量のpH7.4のリン酸塩緩衝液を添加した。サンプリングにより採取した溶液をHPLCにて分析し、薬物濃度を測定した。結果を表2に示す。尚、参考例として、市販製剤のリバスチグミンパッチ(EXELON PATCH 9mg、含量 9mg/5cm2)を用いた。

Figure 2017001992
表2から明らかなように、実施例は、比較例と比べて、皮膚透過性が抑制されていることがわかる。よって、本発明の経皮吸収型製剤は、製剤からの薬物皮膚透過において優れた徐放性を示すことが確認された。また、本発明の経皮吸収型製剤は、市販製剤と比べて同等またはそれ以上の徐放性を示すことが確認された。
〈試験例3(安定性試験)〉
実施例1〜3、11、14及び比較例1〜5の製剤をポリエステル製の袋に入れ、ヒートシーラーを用いて密封した。試験製剤を60℃の恒温下に4週間保存後、粘着基剤中のリバスチグミン含量をHPLCを用いて測定し、粘着基剤中におけるリバスチグミンの安定性を評価した。尚、保存前に測定したリバスチグミンの含量を初期値とし、この初期値に対する保存後のリバスチグミン含量の比を算出し、含量比(%)を求めた。また、製剤の外観を目視で観察し、形状の安定性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 2017001992
(表3)から明らかなように、実施例1〜3、11、14及び比較例1、2の製剤は、60℃に4週間保存した条件下でもリバスチグミンの含量はほとんど変化が認められないことがわかる。
一方、性状においては、粘着付与剤にロジン系樹脂を使用した比較例3、4、5の製剤は、膏体の変形が認められ、性状を保持することができなかった。
本結果から、本発明の経皮吸収型製剤は粘着基剤中におけるリバスチグミンの含量及び性状に変化がなく、保持安定性に優れた経皮吸収型製剤であることが確認された。
試験例1(放出試験)、試験例2(in vitro皮膚透過試験)及び試験例3(安定性試験)の結果から、支持体、粘着剤及び剥離フィルムからなり、該粘着基剤中にリバスチグミンを含有する経皮吸収型製剤において、該粘着基剤の基剤成分として乳酸及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有することを特徴とする経皮吸収型製剤は粘着基剤中での薬効成分の安定性及び粘着基剤からの放出及び皮膚透過の徐放性に優れたものであることが判明した。
本発明の経皮吸収型製剤は、リバスチグミンを含有する粘着基剤に対して、徐放化剤として乳酸を配合処方して使用することにより、リバスチグミンの皮膚透過の徐放性を得ることができる。また上述の乳酸を特定の配合割合にて処方することにより、粘着基剤中での薬効成分の安定性、粘着基剤からの放出及び皮膚透過の徐放性に優れた経皮吸収型製剤として、更には、皮膚に対する刺激性も見られず副作用が少ない極めて安全性の高い経皮吸収型製剤として有用である。すなわち、本発明における経皮吸収型製剤は製剤的安定性、経皮吸収性並びに使用時における安全性に優れ、アルツハイマー型認知症の治療を目的とした製剤として産業上大変有用である。

Claims (4)

  1. 粘着基剤中に、(a)リバスチグミンと、(b)徐放化剤としてヒドロキシ酸と、(c)熱可塑性弾性体と、を含有する経皮吸収型製剤であって、前記リバスチグミンと前記ヒドロキシ酸の配合比率が1:1〜100:1であることを特徴とする経皮吸収型製剤。
  2. 前記ヒドロキシ酸が、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸のうち1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の経皮吸収型製剤。
  3. 前記粘着基剤が、(a)前記リバスチグミンを8〜12質量%と、(b)グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸のうち1種以上からなる前記ヒドロキシ酸 を0.3〜3質量%と、(c)前記熱可塑性弾性体を10〜50質量%と、(d)粘着付与剤として脂環族飽和炭化水素樹脂を5〜50質量%と、(e)可塑剤として流動パラフィンを10〜40質量%と、を含有し、かつ、粘着基剤層の厚さが120〜260μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の経皮吸収型製剤。
  4. 前記ヒドロキシ酸が乳酸からなり、前記熱可塑性弾性体がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の経皮吸収型製剤。
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