JP2017000136A - スクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、皮膚の機能に大きく影響するセラミド合成促進剤を容易に見出すためのスクリーニング方法を得ることにある。【解決手段】本発明者らが鋭意検討した結果、Ctip2の遺伝子発現を促進する物質がセラミドの合成を促進することがわかった。この方法であれば、多くの遺伝子発現を促進するか試験する必要はなく、容易にスクリーニングできる。【選択図】なし
Description
本発明は、遺伝子の発現を指標にした容易に実施可能なスクリーニング方法である。
スフィンゴ脂質の1つであるセラミドは、皮膚の最も外側の層である角層中に含まれる脂質の40〜60%を占めている。セラミドは、角層の下に位置する顆粒層が生成する層板顆粒に由来し、角層中において水分子と水素結合することで、層状構造(ラメラ構造)を構築し、角層中の水分保持(保湿)機能や、バリア機能に関与している。角層中のセラミドの量が減少すると、皮膚の保湿機能やバリア機能が低下し、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、乾癬等の皮膚疾患を引き起こすと考えられている。
角層細胞間脂質中におけるセラミド量の減少は、バリア機能又は保湿機能の機能低下に深く関与することが知られているため、皮膚外用剤などの形態によりセラミドを直接的に補給する試みも行われている(特許文献1)
しかしながら、セラミドを直接的に補給しても効果の持続性が不十分であり、また、皮膚の状態によっては、皮膚への浸透性が不十分な場合があるなどの欠点があった。
以上のことより表皮細胞自身のセラミド合成を活発にする方法が有効である。
そこで各種の方法を用いてセラミド合成促進剤のスクリーニングを行っている。例えば、セラミド合成律速酵素(セリンパルミトリルトランスフェラーゼ (SPT))(特許文献2 WO2008/053960)、セラミド合成酵素(β-グルコセレブロシダーゼ)(特許文献3)、LASS3、LASS4(特許文献4)、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(特許文献5)、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用試験(特許文献6)等が挙げられる。
しかしながら、セラミド合成には多くの遺伝子が関わっており、1つの遺伝子の発現でセラミドの合成を促進するかは不明である。
また、Ctip2(COUP (Chicken ovalbumin upstrem promoter) - TF (transcription factor) - interaction protein 2)は、核内受容体の1種であり、心臓、血管、筋肉および手足を含む組織および器官の発達を制御する際に重要な役割を果たしていることは判明しているが具体的な関与は充分に解明されていない。
角層細胞間脂質中におけるセラミド量の減少は、バリア機能又は保湿機能の機能低下に深く関与することが知られているため、皮膚外用剤などの形態によりセラミドを直接的に補給する試みも行われている(特許文献1)
しかしながら、セラミドを直接的に補給しても効果の持続性が不十分であり、また、皮膚の状態によっては、皮膚への浸透性が不十分な場合があるなどの欠点があった。
以上のことより表皮細胞自身のセラミド合成を活発にする方法が有効である。
そこで各種の方法を用いてセラミド合成促進剤のスクリーニングを行っている。例えば、セラミド合成律速酵素(セリンパルミトリルトランスフェラーゼ (SPT))(特許文献2 WO2008/053960)、セラミド合成酵素(β-グルコセレブロシダーゼ)(特許文献3)、LASS3、LASS4(特許文献4)、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤(特許文献5)、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用試験(特許文献6)等が挙げられる。
しかしながら、セラミド合成には多くの遺伝子が関わっており、1つの遺伝子の発現でセラミドの合成を促進するかは不明である。
また、Ctip2(COUP (Chicken ovalbumin upstrem promoter) - TF (transcription factor) - interaction protein 2)は、核内受容体の1種であり、心臓、血管、筋肉および手足を含む組織および器官の発達を制御する際に重要な役割を果たしていることは判明しているが具体的な関与は充分に解明されていない。
本発明の目的は皮膚の機能に大きく影響するセラミド合成促進剤を容易に見出すためのスクリーニング方法を検討した。
本発明者らが鋭意検討した結果、Ctip2の遺伝子発現を促進する物質がセラミドの合成を促進することがわかった。
この方法であれば、多くの遺伝子発現を促進するか試験する必要はなく、容易にスクリーニングできる。
勿論、さらにスクリーニングでセラミド合成促進剤として有望な物質が抽出できれば、さらに様々な有効性、安全性の試験を実施して、セラミド合成促進剤としてより有効であるか確認する。
まず、使用する細胞は通常ヒトの表皮ケラチノサイトを用いる。
表皮ケラチノサイトとしては、いずれの部位の表皮細胞を用いてもよく、例えば新生児の包皮、成人女性の乳房などの表皮細胞を用いることができる。表皮細胞としては市販の表皮細胞を用いることもできる。このような市販の表皮細胞の例としては、正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)(クラボウ社製)などを挙げることができる。
これにスクリーニング対象の試料を加えて24〜72時間程度培養し、同時にスクリーニング対象の試料を加えず培養した細胞中からRNAを抽出、逆転写反応によりcDNAを合成し、適切なPCRプライマーを設定しリアルタイムPCRを用い、コントロールを1とした時の相対値として算出する。
この方法であれば、多くの遺伝子発現を促進するか試験する必要はなく、容易にスクリーニングできる。
勿論、さらにスクリーニングでセラミド合成促進剤として有望な物質が抽出できれば、さらに様々な有効性、安全性の試験を実施して、セラミド合成促進剤としてより有効であるか確認する。
まず、使用する細胞は通常ヒトの表皮ケラチノサイトを用いる。
表皮ケラチノサイトとしては、いずれの部位の表皮細胞を用いてもよく、例えば新生児の包皮、成人女性の乳房などの表皮細胞を用いることができる。表皮細胞としては市販の表皮細胞を用いることもできる。このような市販の表皮細胞の例としては、正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(NHEK)(クラボウ社製)などを挙げることができる。
これにスクリーニング対象の試料を加えて24〜72時間程度培養し、同時にスクリーニング対象の試料を加えず培養した細胞中からRNAを抽出、逆転写反応によりcDNAを合成し、適切なPCRプライマーを設定しリアルタイムPCRを用い、コントロールを1とした時の相対値として算出する。
しかしながら上記の方法に拘らず、Ctip2遺伝子の発現量を指標すれば類似の方法でもなんら問題はなく、スクリーニングの対象物がCtip2遺伝子の発現量を増加させるか確認できる方法であればなんら限定させるものではない。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
実施例
2継代目のヒト包皮由来表皮細胞(クラボウ)を50−70%コンフルエントとなるようHuMedia−KG2培地(フェノールレッド不含)で培養後、前日にカルシウム濃度を1.8mMに変更したHuMedia−KG2培地に、スクリーニング対象物質を添加し、37℃、5%CO2インキュベータ中で2日間培養した。
2継代目のヒト包皮由来表皮細胞(クラボウ)を50−70%コンフルエントとなるようHuMedia−KG2培地(フェノールレッド不含)で培養後、前日にカルシウム濃度を1.8mMに変更したHuMedia−KG2培地に、スクリーニング対象物質を添加し、37℃、5%CO2インキュベータ中で2日間培養した。
<RNAの抽出>
細胞からの Total RNAの抽出は、トリプシン/EDTAで剥離後、SV Total RNA Isolation System(プロメガ社)を用い、プロメガ社の添付マニュアル(日本語プロトコールNoTM048J2001年6月作成)に従い調製した。RNA濃度は、NanoDrop1000(Thermo SCIENTIFIC)を用い算出した。
細胞からの Total RNAの抽出は、トリプシン/EDTAで剥離後、SV Total RNA Isolation System(プロメガ社)を用い、プロメガ社の添付マニュアル(日本語プロトコールNoTM048J2001年6月作成)に従い調製した。RNA濃度は、NanoDrop1000(Thermo SCIENTIFIC)を用い算出した。
<RT反応およびリアルタイムPCR>
2.5μgのTotal RNAを使い、MMLV Reverse Transcriptase RNaseH−(東洋紡社)を用い、東洋紡社推奨プロトコール(TOYOBO BIOCHEMICALS FOR LIFE SCIENCE 2008/2009のページ1−42)に従いRT反応を行なった。
リアルタイムPCRはAppliedBiosystems 7500 リアルタイムPCR Systemを用い、以下のように実施した。SYBR Green法を用い(THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix,東洋紡社)、7500 リアルタイムPCR Systemの操作マニュアル(AppliedBiosystems)を用いて、Comparative CT(△△CT)法(n=3)により遺伝子発現比較を実施した。内部標準としてGAPDHを使用した。
2.5μgのTotal RNAを使い、MMLV Reverse Transcriptase RNaseH−(東洋紡社)を用い、東洋紡社推奨プロトコール(TOYOBO BIOCHEMICALS FOR LIFE SCIENCE 2008/2009のページ1−42)に従いRT反応を行なった。
リアルタイムPCRはAppliedBiosystems 7500 リアルタイムPCR Systemを用い、以下のように実施した。SYBR Green法を用い(THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix,東洋紡社)、7500 リアルタイムPCR Systemの操作マニュアル(AppliedBiosystems)を用いて、Comparative CT(△△CT)法(n=3)により遺伝子発現比較を実施した。内部標準としてGAPDHを使用した。
<使用プライマー>
Ctip2:フォワードプライマーがGGAGGGAATGGGAGAGAAAG(配列番号1)の塩基配列と、リバースプライマーがTGGTAAGCTGGTGAGCACTG(配列番号2)の塩基配列とのセット
GAPDH:フォワードプライマーがGAGTCAACGGATTTGGTCGT(配列番号3)の塩基配列と、リバースプライマーがTTGATTTTGGAGGGATCTCG(配列番号4)の塩基配列とのセット
Ctip2:フォワードプライマーがGGAGGGAATGGGAGAGAAAG(配列番号1)の塩基配列と、リバースプライマーがTGGTAAGCTGGTGAGCACTG(配列番号2)の塩基配列とのセット
GAPDH:フォワードプライマーがGAGTCAACGGATTTGGTCGT(配列番号3)の塩基配列と、リバースプライマーがTTGATTTTGGAGGGATCTCG(配列番号4)の塩基配列とのセット
この実施例に以下の試料を培地中に mg/mlになるように加え、試料を加えないで試験したものの遺伝子発現量を1として表した。
試料は以下のように作成した。
試料1
ヒバマタ(Fucus vesiculosus)(乾燥物、細断品)を50gに50%(V/V)エタノール水溶液2リッターを加え、ときどき撹拌しながら、24時間抽出後、濾過(No5C)し、エバポレートしたのち、これを凍結乾燥した。
試料2
アルニカ属の植物(Arnica montana)(花、乾燥物、細断品)を50gに50%(V/V)エタノール水溶液2リッターを加え、ときどき撹拌しながら、24時間抽出後、濾過(No5C)し、エバポレートしたのち、これを凍結乾燥した。
試料3
サガラメ(乾燥物、細断品)を50gに50%(V/V)エタノール水溶液2リッターを加え、ときどき撹拌しながら、24時間抽出後、濾過(No5C)し、エバポレートしたのち、これを凍結乾燥した。
試料4
シロバナイリス(Iris florentina)の根(乾燥物、細断品)を50gに50%(V/V)エタノール水溶液2リッターを加え、ときどき撹拌しながら、24時間抽出後、濾過(No5C)し、エバポレートしたのち、これを凍結乾燥した。
試料5
大豆(乾燥物、細断品)を50gに50%(V/V)エタノール水溶液2リッターを加え、ときどき撹拌しながら、24時間抽出後、濾過(No5C)し、エバポレートしたのち、これを凍結乾燥した。
試料1
ヒバマタ(Fucus vesiculosus)(乾燥物、細断品)を50gに50%(V/V)エタノール水溶液2リッターを加え、ときどき撹拌しながら、24時間抽出後、濾過(No5C)し、エバポレートしたのち、これを凍結乾燥した。
試料2
アルニカ属の植物(Arnica montana)(花、乾燥物、細断品)を50gに50%(V/V)エタノール水溶液2リッターを加え、ときどき撹拌しながら、24時間抽出後、濾過(No5C)し、エバポレートしたのち、これを凍結乾燥した。
試料3
サガラメ(乾燥物、細断品)を50gに50%(V/V)エタノール水溶液2リッターを加え、ときどき撹拌しながら、24時間抽出後、濾過(No5C)し、エバポレートしたのち、これを凍結乾燥した。
試料4
シロバナイリス(Iris florentina)の根(乾燥物、細断品)を50gに50%(V/V)エタノール水溶液2リッターを加え、ときどき撹拌しながら、24時間抽出後、濾過(No5C)し、エバポレートしたのち、これを凍結乾燥した。
試料5
大豆(乾燥物、細断品)を50gに50%(V/V)エタノール水溶液2リッターを加え、ときどき撹拌しながら、24時間抽出後、濾過(No5C)し、エバポレートしたのち、これを凍結乾燥した。
さらに抽出したRNAに対して、以下の遺伝子に関しても同様にRT反応およびリアルタイムPCRを行い、それぞれの遺伝子発現量を測定した。
1.SPTLC セリンパルミトイル転移酵素
2.Acid-ceramidase
3.Gal-ceramidase
4.SGMS1(sphingomyelinase)
5.SMPD スフィンゴミエリン分解酵素
1.SPTLC セリンパルミトイル転移酵素
2.Acid-ceramidase
3.Gal-ceramidase
4.SGMS1(sphingomyelinase)
5.SMPD スフィンゴミエリン分解酵素
Ctip2の遺伝子発現を促進する試料1〜3は、セラミド合成に関わるSPTLC、Acid-ceramidase、Gal-ceramidas、SGMS、SMPDのすべての遺伝子の発現も促進した。
また、Ctip2の遺伝子発現を抑制する試料4〜6は、SPTLC、Gal-ceramidasの遺伝子の発現を抑制し、他の遺伝子も抑制するか、遺伝子の増減がほとんどない程度で、総合的に試料1〜3に比較して遺伝子発現量はかなり減少している。
このように、Ctip2の遺伝子発現を試験すれば、セラミド合成に関わる遺伝子の増減も高い確率で推定でき、セラミド合成促進成分のスクリーニング方法して最適である。
また、Ctip2の遺伝子発現を抑制する試料4〜6は、SPTLC、Gal-ceramidasの遺伝子の発現を抑制し、他の遺伝子も抑制するか、遺伝子の増減がほとんどない程度で、総合的に試料1〜3に比較して遺伝子発現量はかなり減少している。
このように、Ctip2の遺伝子発現を試験すれば、セラミド合成に関わる遺伝子の増減も高い確率で推定でき、セラミド合成促進成分のスクリーニング方法して最適である。
Claims (3)
- 細胞中のCtip2遺伝子の発現量を指標とするセラミド合成促進成分のスクリーニング方法。
- 細胞中のCtip2遺伝子の発現量を指標とするアトピー皮膚炎予防及び治療成分のスクリーニング方法。
- 細胞がヒト由来表皮細胞である請求項1乃至請求項2のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015118222 | 2015-06-11 | ||
JP2015118222 | 2015-06-11 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017000136A true JP2017000136A (ja) | 2017-01-05 |
Family
ID=57752387
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016093531A Pending JP2017000136A (ja) | 2015-06-11 | 2016-05-09 | スクリーニング方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017000136A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022181438A1 (ja) * | 2021-02-26 | 2022-09-01 | 国立大学法人神戸大学 | 被験試料の皮膚における異物応答反応の惹起性の評価方法、皮膚における異物応答反応の抑制性を有する物質の探索方法、及び、皮膚における異物応答反応を抑制する剤 |
-
2016
- 2016-05-09 JP JP2016093531A patent/JP2017000136A/ja active Pending
Non-Patent Citations (2)
Title |
---|
J. CELL SCI., vol. Vol.125, JPN6018033796, 2012, pages 5733 - 5744 * |
J. INVEST. DERMATOL., vol. Vol.133, JPN6018033795, 2013, pages 668 - 676 * |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022181438A1 (ja) * | 2021-02-26 | 2022-09-01 | 国立大学法人神戸大学 | 被験試料の皮膚における異物応答反応の惹起性の評価方法、皮膚における異物応答反応の抑制性を有する物質の探索方法、及び、皮膚における異物応答反応を抑制する剤 |
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