以下の詳細な説明は、図面を参照しながら読むべきであり、種々の図面中、同様の要素には、同様の参照番号が付されている。図面は、必ずしも縮尺どおりとは限らず、所定の実施形態を示しており、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。以下の詳細な説明は、本発明の原理を限定するものではなく、あくまでも例を示すものである。この説明文は、当業者による発明の製造及び使用を明確に可能ならしめるものであり、出願時における発明を実施するための最良の形態と考えられるものを含む、発明の複数の実施形態、適応例、変形例、代替例、並びに使用例を述べるものである。
考察全体を通じて、添付の図面に関して、好適な基準座標系を与える目的で、「上方」、「下方」、「近位」、「遠位」、「最上」、「最下」などといった特定の用語が頻繁に用いられている。これらの用語は、特に示されていない限り、本発明の範囲全体に影響を及ぼすようには意図されていない。
本明細書で使用する場合、「患者」又は「ユーザー」という用語は、いずれかのヒト又は動物被検体を指し、本発明のシステム又は方法をヒトへの使用に限定するようには意図されていないが、本発明のヒト患者への使用が、好ましい実施形態である。
「試料」という用語は、ある成分の有無、ある成分、例えば分析物の濃度などといったいずれかの特性を定性的又は定量的な判断を行うように意図された、ある体積の液体、溶液、又は懸濁液を意味する。本発明の実施形態は、ヒト及び動物の全血試料に適用可能である。本明細書において記載されているように、本発明との関連における典型的な試料としては、血液、血漿、赤血球、血清、及びこれらの懸濁液が挙げられる。
説明及び特許請求の範囲全体を通じて数値に関連して使用される「約」という用語は、当業者にとって身近であり、許容される、精度区間を示す。本用語を支配する区間は、好ましくは±10%である。明記されない限り、上述の用語は、本明細書に記載され、特許請求の範囲に従う本発明の範囲を狭めることは意図されない。
図1Aは、分析物計測計又は検査計10を備える分析物測定システム100を示している。分析物計測計10は、データ管理ユニット(「DMU」)140を保持するハウジング11によって規定され、バイオセンサを受容するよう寸法設定されたポート22を更に含む。一実施形態によれば、分析物計測計10は、手持ち式の血糖計測計であってよく、バイオセンサは、血糖の測定を行うためにテストストリップポート22に挿入可能なテストストリップ24の形状で用意する。分析物計測計10は、図1Aに示されているように、複数のユーザーインターフェースボタン16と、LCDディスプレイのようなディスプレイ14とを更に備える。所定の数のグルコーステストストリップ24をハウジング11に格納してよいとともに、血糖検査に使用する際に手に取れるようにしてよい。複数のユーザーインターフェースボタン16が、DMU 140に対応付けられており、これらのボタンは、データの入力を可能にし、データの出力を促し、ディスプレイ14に表示されるメニューをナビゲートし、コマンドの実行を開始させるように構成できる。出力データとしては、ディスプレイ14に表示される分析物濃度を表す数値を挙げることができる。入力情報としては、時間及び日付の情報、個人の食物摂取、薬の服用、健診の受診、及び全身の健康状態、並びに運動レベルといった個人の日常生活に関する情報を挙げてよい。これらの入力は、ディスプレイ14に表示されるプロンプトによって要求することができ、分析物計測計10のメモリモジュールに記憶してよい。具体的には、この例示的な実施形態によれば、ユーザーインターフェースボタン16は、マーク、例えば、上下矢印、「OK」というテキスト文字などを備え、これのマークにより、ユーザーは、ディスプレイ14に表示されるユーザーインターフェースを通じて、ナビゲート可能になる。この図では、ボタン16は別個のスイッチとして示されているが、バーチャルボタンによる、ディスプレイ14上のタッチスクリーンインターフェースを用いてもよい。
分析物測定システム100の電子部品は、例えば、ハウジング11内にあり、かつ本明細書に記載のシステムのDMU 140を形成するプリント基板上に配置できる。図1Bは、この例示的な実施形態の目的において、ハウジング11内に配置された電子サブシステムのいくつかを、簡略化した概略図の形で示している。DMU 140は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、混合信号プロセッサ(「MSP」)、論理プログラミング可能デバイス(「FPGA」)、又はこれらの組み合わせの形態の処理ユニット122を含み、これは、以下に説明するようなプリント基板上に含まれるか、又はこれに接続する様々な電子モジュールに電気的に接続される。処理ユニット122は、例えば、テストストリップポートコネクタ104(「SPC」)に、アナログフロントエンド(AFE)サブシステム125を介して電気的に接続されている。AFE 125は、血糖試験時にストリップポートコネクタ104に電気的に接続される。所定の分析物濃度を測定するために、AFE 125は、ポテンシオスタットを用いて、分析物テストストリップ24の電極間における抵抗の大きさの変動(試料又はコントロール液をテストストリップに付着させたことを示す)を検出する。試料をテストストリップ24に付着させ、テストストリップ中の試薬と反応させてから所定時間の経過後、試料に流れる電流を発生させる電極によって、予め設定した電圧波形を、反応させた試料に印加する。AFE 125は、ディスプレイ14上の表示のために、電流測定値をデジタル形態に変換する。処理ユニット122は、ストリップポートコネクタ104、アナログフロントエンドサブシステム125からの入力を受容するよう構成することが可能であり、これはまた、ポテンシオスタット機能及び電流測定機能の一部も実行することができる。
分析物テストストリップ24は、電気化学のグルコーステストストリップの形態であることができ、この様々な実施形態が以下に説明される。テストストリップ24は、1つ以上の作用電極を含むことができる無孔の基材として定義される。テストストリップ24は、複数の電気的接触パッドも備えることができ、この場合、各電極は、少なくとも1つの電気的接触パッドと電気的に連通していることができる。ストリップポートコネクタ104は、突起の形状をしたそれ自体の電気接触子を用いて、電気的接触パッドと電気的に係合するとともに、電極と電気的連通を形成するように構成できる。テストストリップ24は、テストストリップ24の試料収容チャンバの1つ以上の内面又はテストストリップ24の試料収容チャンバ内の電極(作用電極など)の上に配置された試薬を含むことができる。試薬層は、酵素とメディエーターを含むことができる。試薬層での使用に適する例示的な酵素としては、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ(補酵素ピロロキノリンキノン「PQQ」依存性)、及びグルコースデヒドロゲナーゼ(補酵素フラビンアデニンジヌクレオチド「FAD」依存性)が挙げられる。試薬層での使用に適する例示的なメディエーターとしては、フェリシアニドが挙げられ、この場合、フェリシアニドは酸化型である。試薬層は、付着させた流体試料中のグルコース又はその他の分析物を物理的に酵素的副産物に変換し、その過程で、試料のグルコース濃度に比例する量の還元型メディエーター(例えばフェロシアニド)を生成するように構成できる。続いて、作用電極を用いて、予め設定した信号を電圧波形の形態で試料に印加して、還元型メディエーターの濃度を電流の形で測定できる。そして、マイクロコントローラ122が、例えばディスプレイ14に表示するために、電流の大きさをミリグラム/デシリットル(mg/dL)という数値単位のグルコース濃度に変換できる。このような電流測定を行う例示的な分析物計測計は、「System and Method for Measuring an Analyte in a Sample」という標題の米国特許出願公開第2009/0301899 A1号に記載されており、この特許出願は、参照により、あたかも本願に完全に記載されているかのように、本願に組み込まれる。
ディスプレイモジュール119(ディスプレイプロセッサ及びディスプレイバッファを備えてよい)は、英数字テキスト及びグラフィックデータなどの出力データを受信して表示し、処理ユニット122の制御下でユーザーインターフェース入力オプションを表示するように、電気的インターフェース123を介して、処理ユニット122に電気的に接続されている。メニューオプションなどのユーザーインターフェースの構造は、ユーザーインターフェースモジュール103に記憶されており、メニューオプションを血糖測定システム100のユーザーに対して表示するように、処理ユニット122によってアクセス可能である。音声モジュール120は、DMU 140によって受信又は記憶された音声データを出力するためのスピーカー121を備える。音声出力としては、例えば通知、リマインダー、及び警告を挙げることができ、あるいは、ディスプレイ14に表示されるディスプレイデータと併せて再生される音声データを挙げてよい。このような記憶音声データは、処理ユニット122によってアクセスして、プログラムされた時間に再生データとして実行できる。音声出力の音量は、処理ユニット122によって制御し、音量設定は、プロセッサによって決定されたとおりに、又はユーザーが調節したとおりに、設定モジュール105に記憶できる。ユーザー入力モジュール102は、ユーザーインターフェースボタン16を介して入力を受容し、これは処理され、電気的インターフェース123を通して処理ユニット122に送信される。処理ユニット122は、血糖測定などの分析物測定に対応するタイムスタンプ(日付及び時間を挙げてよい)を記録するように、プリント基板に接続されたデジタル時刻クロックに電気的にアクセスでき、そして、これらのタイムスタンプは、後に、必要に応じてアクセス、アップロード、又は表示できる。ディスプレイ14上の視覚出力としては、例えば通知、リマインダー、及び警告を挙げることができ、あるいは、スピーカー121によって再生される音声データと併用される視覚出力を挙げてよい。
メモリモジュール101(揮発性及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(「RAM」)112、リードオンリーメモリ(「ROM」)又はフラッシュメモリを含んでよい不揮発性メモリ113、並びに、例えばデータポート13(USBポートであってよい)を介して携帯型外部メモリ装置に接続するための回路114が挙げられるが、これらに限らない)は、電気的インターフェース123を介して、処理ユニット122に電気的に接続されている。外部メモリ装置としては、サムドライブに収容されたフラッシュメモリ装置、携帯型ハードディスクドライブ、データカード、又はいずれかの他の形態の電子記憶装置を挙げてよい。オンボードメモリは、分析物計測計10の操作の際に、処理ユニット122によって実行されるプログラムの形態で、様々な組み込みアプリケーションと格納アルゴリズムを含むことができる。具体的には、本明細書に記載されている様々なモジュールからの処理ユニット122への入力を用いて、例えば、ユーザーに血糖検査を実施させるリマインダーをトリガーできる。オンボードメモリは、血糖測定に関連する日付及び時間を含め、ユーザーの血糖測定の履歴を記憶するのにも用いることができる。分析物計測計10の無線送信能力、又はデータポート13を介した有線送信を用いて、接続されたコンピューター又はその他の処理装置に、上記のような測定データを転送できる。
無線モジュール106は、1つ以上の内蔵アンテナ107を介して無線デジタルデータを送受信するための送受信回路を備えてよく、電気的インターフェース123を介して処理ユニット122に電気的に接続されている。無線送受信回路は、集積回路チップ、チップセット、処理ユニット122を介して操作可能なプログラマブル機能、又はこれらの組み合わせの形態であってよい。各無線送受信回路は、異なる無線送信規格に適合している。例えば、無線送受信回路108は、WiFiとして知られているワイヤレスローカルエリアネットワークIEEE 802.11の規格に適合していてよい。送受信回路108は、分析物計測計10に近接するWiFiアクセスポイントを検出するとともに、検出したそのWiFiアクセスポイントからデータを送受信するように構成してよい。無線送受信回路109は、ブルートゥースプロトコルに適合可能であり、分析物計測計10に近接するブルートゥースビーコンから送信されたデータを検出しかつ処理するよう構成されている。無線送受信回路110は、近距離線通信(「NFC」)基準に適合することが可能であり、例えば分析物計測計10に近接する別のNFC適合装置と無線通信を確立するよう構成される。無線送受信回路111は、セルラーネットワークとのセルラー通信用の回路を備えてよく、利用可能なセルラー通信タワーを検出して、それにリンクするように構成されている。
給電モジュール116は、ハウジング11内の全てのモジュールと、処理ユニット122とに電力を供給するために、これらに電気的に接続されていてよい。給電モジュール116は、標準的な電池又は充電式電池118を備えてよい。また、処理ユニット122が、給電モジュール116の電池残量モードで残留電力レベルをモニタリングできるように、給電モジュール116は、電気的インターフェース123を介して、処理ユニット122に電気的に接続されていてよい。処理ユニット122は、電池118の最新の電力レベルを示すために、電池レベル示度を検出して、分析物計測計100のディスプレイ14に出力するのに用いてよい。電力レベルは、デジタル形式で検出して、対応するインジケーターバーを点灯させるなどして、ディスプレイ14に出力してよく、電池残量がかなりなくなったら、低電力状態を知らせるために、ディスプレイ及び音声アラームの出力機能を起動してよい。
一実施形態では、電源116の電池118は、限られた用途のために設置されていてよい。後述のように、テストストリップ24に設けられた電源を用いて、テストストリップ24に供給された試料のアッセイを行うのに必要な全ての電力を供給してもよい。したがって、分析物測定システム100は、電源116の電池118に依存して、オーディオ、送受信機、メニューオプションなどの様々なコンポーネントに電力を供給してよい一方で、テストストリップ24は、試料のアッセイを行うのに十分な電力を計測計に供給する。本明細書に開示されている実施形態を使用できる別のシナリオは、分析物計測計の電池残量又はその他の電力供給量が予想外に激減して、試料のアッセイを完遂するのに十分な電力を供給できないような場合である。本明細書に記載されているテストストリップの実施形態は、アッセイを完遂させる電力を供給することによって、分析物計測計の確実な動作を可能にできる。
別の実施形態では、分析物計測計が常駐電源を含まず、テストストリップ24に常駐する電源から十分な電力を得て、試料のアッセイを行って、限られた時間、結果を分析物測定システム100のディスプレイ14に表示するように構成されている簡易的な測定システム100を提供できる。測定システム100のこのような簡易的なデザインは更に、例えば受動テストストリップのテストストリップポート22への挿入を感知する典型的な検出回路を省くことができる。当業者であれば、計測計によって、計測計自体の電池の電力下で、様々な組み合わせの機能を提供できるとともに、テストストリップに設けられた電源によって、様々な機能に電力を供給できることが分かるであろう。内部電源を必要としない簡易的な分析物計測計10も製造でき、この分析物計測計10は、テストストリップの電源に依存して、分析物計測計に電力を供給することが考えられる。
概して、図2A〜2Bを参照すると、テストストリップ24は、テストストリップ24の遠位端213に、試料を受け入れる注入口227を備える。注入口227は、電極220〜222と直接連通する試料チャンバ226につながっている。試料チャンバ226は、そのチャンバに付着させた試料と反応する露出試薬層228を備える。分析物計測計10のマイクロコントローラ122は、電極220〜222との電気的連通を介して、反応した試料のアッセイを行うための電気信号をプログラマブルに生成する。例えば第1の作用電極を介して、試料を通じて電圧信号を送信し、第2の作用電極などにおいて、試料応答信号を測定して、それによって試料の分析物濃度を決定する。テストストリップ24内に組み立てられている電池203は、試料のアッセイを行うために、分析物計測計10に電力を供給する。テストストリップ24は、様々な構成を有することができるが、典型的には、下で更に詳細に論じるように、取り扱い性と分析物測定システムへの接続を可能にするように、十分な構造的一体性を有する1つ以上の剛体又は半剛体層の形態をしている。テストストリップ24は、プラスチック及び他の絶縁材を含む様々な材料から形成してよく、各種層への接着剤塗布を用いて組み立ててよい。試薬層228以外の各種層の材料は、典型的には、絶縁性(非導電性)である材料であり、不活性及び/又は電気化学的に非機能的であってよく、その場合、時間の経過とともに容易に腐食することもなければ、試料チャンバ226に付着させた試料と化学反応することもない。
図2A〜2Bを更に詳細に参照すると、テストストリップ24は、平面の構造によって概ね画定される複数の層を備える。最下層229は、絶縁基材230から作られている。基材230の遠位端213は、絶縁層225と、絶縁層225の上に成膜した試薬層228とを更に備える。試薬層228は、各種のメディエーター及び/又は酵素を含む様々な材料から形成できる。好適なメディエーターの非限定例としては、フェリシアニド、フェロセン、フェロセン誘導体、オスミウムビピリジル錯体、及びキノン誘導体が挙げられる。好適な酵素の非限定例としては、グルコースオキシダーゼ、補酵素ピロロキノリンキノン(PQQ)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド依存性GDH、及びFAD依存性GDHが挙げられる。試薬層228を作るのに適する1つの例示的な試薬処方は、「Method of Manufacturing a Sterilized and Calibrated Biosensor−Based Medical Device」という標題の米国特許第7,291,256号に記載されており、その全体は、参照により、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる。試薬層228は、スロットコーティング、チューブ端部からの分注、インクジェット、及びスクリーン印刷などの様々なプロセスを用いて形成できる。詳細には論じないが、当業者であれば、本明細書に開示されている試薬が、バッファ、湿潤剤、及び/又は安定剤を含むことができることも分かるであろう。
複数の接触パッド215〜219は、基材230の近位端231に配置されており、分析物計測計10のテストストリップポート22に挿入されるテストストリップ24の端部に位置する。基材230の近位端231にある接触パッドから基材230の遠位端213まで延びる複数の電極としては、対電極接触パッド216に電気的に接続された対電極220、第1の作用電極接触パッド217に電気的に接続された第1の作用電極221、及び第2の作用電極接触パッド218に電気的に接続された第2の作用電極222が挙げられる。電極220〜222は、試料を試料チャンバ226に付着させた後、反応した試料と電気的に直接接触するように、試料チャンバ226に対して露出している。電気的接触パッド215〜219及び電極220〜222を形成する導電性パターンは、アルミニウム、炭素、グラフェン、グラファイト、銀インク、酸化スズ、酸化インジウム、銅、ニッケル、クロム、及びこれらの合金のような安価な材料を含むいずれかの導電性材料から形成できる。しかしながら、任意に応じて、パラジウム、プラチナ、インジウムスズ酸化物、又は金など、導電性である高価な材料を使用することができる。導電層は、スパッタリング、無電解めっき、熱蒸着、及びスクリーン印刷などの様々なプロセスによって、基材層230の上に成膜できる。
絶縁材層205は、最下層229に、その遠位端213で、絶縁層225の少なくとも一部、試薬層228、及び電極220〜222の一部を覆うように接着している。絶縁層205は、その中に形成され、かつ試薬層228の上に配置された開口を有し、その開口は、試薬層228及び電極220〜222と連通している試料チャンバ226の内壁を画定する。最上保護層201は、試料チャンバ226の最上面を、絶縁層225は、試料チャンバ226の最下面を形成する。したがって、流体試料をチャンバ226に供給し、分析物測定システム又は装置に電気的に結合させると、試料チャンバ226、試薬層228、及び電極220〜222は、電気化学セルを形成する。当業者であれば、電気的接触パッド215〜219及び電極220〜222が、図示されている以外の様々な構成を有することができるのが分かるであろう。テストストリップ24は、本明細書に示されている以外の追加の層を備えてもよい。
例示的な一実施形態では、試料チャンバの容積は、約0.1マイクロリットル〜約5マイクロリットル、好ましくは約0.2マイクロリットル〜約3マイクロリットル、より好ましくは約0.2マイクロリットル〜約0.4マイクロリットルの範囲であることができる。小さい容積をもたらすために、注入口227の面積は、約0.005cm2〜約0.2cm2、好ましくは約0.0075cm2〜約0.15cm2、より好ましくは約0.01cm2〜約0.08cm2の範囲であることができ、絶縁層205の厚みは、約1マイクロメートル〜500マイクロメートル、より好ましくは約10マイクロメートル〜400マイクロメートル、より好ましくは約40マイクロメートル〜200マイクロメートル、更に好ましくは約50マイクロメートル〜150マイクロメートルの範囲であることができる。当業者であれば分かるように、試料チャンバの容積と注入口227の面積は大きく変動することがある。
この例示的な実施形態の目的上、導電性接着剤を用いて、電圧端子207を有する薄型電池203を最下層に接着して、電池端子207がそれぞれ、接触パッド215、219の1つに電気的に接続されるようにしてよい。図2Bの完成済みのテストストリップアセンブリーで示されているように、最上の非導電性保護層201は、接触パッド215〜219を露出させたままで、テストストリップ24を覆う。
続いて、図3を含めた図を参照すると、分析物計測計10の電気接触子は、テストストリップ24の近位端231を分析物計測計10のテストストリップポート22に挿入したときにテストストリップ24の接触パッド215〜219と電気的に接続するように、突起301として形成されている。図3に示されているように、テストストリップ24をテストストリップポート22に受け入れる分析物計測計10は、テストストリップ24の対応する接触パッド215〜219と係合する金属製突起301を用いて、電気的接触パッド、例えば図3では接触パッド223と係合する。突起301は、導電性金属材料から作られていてよい可撓性バネアームを備え、このアームは、収縮して、テストストリップ24を挿入可能にして、接触パッド215〜219が分析物計測計10の例示的な突起301と十分なオーミックコンタクトを形成するようにする。
図3の側面図は、1つの接触パッド219と1つの電気突起301が見えるように示されているが、(図2A〜2Bに示されているように、)残りの接触パッド215〜218が接触パッド219に隣接して配置されているとともに、各接触パッド215〜19用に、追加の突起301が分析物計測計10に配置されていることは分かるであろう。したがって、分析物計測計10は、対応する電極220〜222に電気的に接続され、それにより、マイクロコントローラ122とテストストリップ電極220〜222との電気的連通を可能にする。
分析物計測計10の2つの突起301は、分析物計測計の給電モジュール116のストリップポート電源117に内部で接続されている。テストストリップ24をテストストリップポート22に挿入すると、これらの突起301がそれぞれ、テストストリップ24の電源接触パッド215、219の一端と係合し、それにより、電圧及び電流の形で電力を分析物計測計10に供給する。そして、テストストリップを組み立てると、電源接触パッド215、219のもう一方の端部はそれぞれ、電池端子207の1つに電気的に接続され、それにより、電池203から、電圧及び電流の形で電力を分析物計測計10に供給する。
分析物計測計10によって試料のアッセイを1回行い、それにより分析物濃度を定めて、分析物計測計10のディスプレイ14に表示させるには、約50mAの最大電流において、最大で約5分の計測計作動時間を要することがあり、したがって、約4.2mAh(ミリアンペア時)の電気量(エネルギー容量)を蓄積できる電池203が必要となることが通電試験によって示されている。したがって、十分なエネルギー容量を有する薄型電池を用いてテストストリップ24を作ることにより、電力を分析物計測計10に供給して、試料のアッセイを完遂するために分析物計測計10自体が他の電源を必要としないようにできるテストストリップが得られる。十分なエネルギー容量と、テストストリップ24のアセンブリーと適合可能なフォーマットを有する市販の電池の例としては、中国のGMB Co.,Ltd.製の極薄二酸化マンガンリチウムセル(パーツ番号CP452922)と、イスラエルのPower Paper Ltd.製の亜鉛−二酸化マンガン系アルカリペーパー電池が挙げられる。これらの薄型電池の例は、紙又はポリマーなどの薄膜基材の上に作られ、それらの電池の厚さは約0.5mm未満であり、エネルギー密度は約2.5mAh/cm2〜約5mAh/cm2であり、約1.5V〜約4Vの電圧を供給する。例示的な電池タイプとしては、リチウムポリマー、二酸化マンガンリチウム、及び塩化チオニルリチウムが挙げられる。図2Aに示されているように、このような薄膜電池203は、例えば導電性接着剤を用いて、接触パッド215、223の一端にそれぞれ接続される端子207を有してよい。
図4を参照すると、テストストリップ24内に一体型電池203を作る代替的な方法が示されている。本明細書では、一体型電池203は、市販の実施形態を用いて事前に作製されたものとして記載されているが、下記のように、テストストリップ24の最下層229の上の電極215〜219を覆うように、アルカリタイプの電池203を直接形成してもよい。まず、絶縁層402を基材230の上の電極215〜219の上に付着させてから、アルミニウムなどの金属製集電体層404を絶縁層402の上に付着させる。これに続いて、亜鉛負極層406を集電体404の上に形成してから、電解質層408を集電体404の上に形成する。これらの工程により、負極端子の形成が完了する。このようにして形成した負極端子に、絶縁性セパレータ層409を付着させる。次に、下記のように、負極の形成と対照的な順番で、正極端子を形成する。第2の電解質層407をセパレータ層409の上に形成してから、二酸化マンガン正極層405を電解質層407の上に形成する。アルミニウムなどの別の金属製集電体層403を正極層405の上に形成する。最上絶縁層401を集電体層403の上に形成する。上記の最上保護層201を絶縁層401として用いてよく、あるいは、最上絶縁層401に加えて、最上保護層201を用いてよい。
試料チャンバ226を形成する目的で、絶縁層205を最下層229に付着させる前又は後に、上記のような工程を用いて電池203を作製してよい。電池層401〜409は、スパッタリング、無電解めっき、熱蒸着、及びスクリーン印刷などの様々なプロセスを用いて形成してよい。
図5を参照すると、テストストリップ24をテストストリップポート22に挿入したときに、工程501でトリガーされる分析物測定システム100によって行う方法を示すフローチャートが示されている。電源接触パッド215、219は、テストストリップの一体型電源203に接続されるので、分析物計測計の接触子301が電源接触パッド215、219と係合すると、分析物計測計のSPC 105で電圧信号が受信される。この電圧信号はSPC 104で検出され、テストストリップ24が挿入されたことをマイクロコントローラ122が判断する。工程502では、挿入されたテストストリップ24内にユーザーが供給した試料のアッセイを完遂するのに十分な電力を供給するほど十分に高いレベルに電池電源118があるかをマイクロコントローラ122が判断する。試料のアッセイを行うのに必要な電源レベルを事前に定めて、オンボードメモリ101に記憶でき、このメモリにマイクロコントローラ122がアクセスして、判断を行う。工程502で、電力レベルが十分であるとマイクロコントローラ122が判断した場合には、分析物測定システム100は、工程503で、内部電池電源118を用いてアッセイを行う通常の手順を継続する。
工程502で、アッセイを行うには電力レベルの大きさが不十分であるとマイクロコントローラ122が判断した場合には、分析物測定システム100は、工程504で、低電力(低電圧)の通知をディスプレイ14に表示するが、この通知としては、スピーカー121を用いた聴覚的通知と視覚的表示を組み合わせたものを挙げてよい。低電圧という判断に応じて、テストストリップ24によって供給される一体型電源203は、一体型電源203によって供給される電力のみを用いて分析物測定システム100がアッセイを行えるようにできる。工程505では、分析物測定システム100は、電源接触パッド215、219との係合を介して、テストストリップ24内の一体型電源203によって供給される電力を用いてアッセイを行う通常の手順を継続する。
当業者であれば分かるように、本発明の態様は、システム、方法、又はコンピュータープログラム製品として具体化できる。したがって、本発明の態様は、全体がハードウェアの実施形態、全体がソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又はソフトウェアとハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形をとってよく、これらはいずれも、本明細書では、概して、「回路」、「モジュール」、「サブシステム」、及び/又は「システム」と称してよい。更に、本発明の態様は、1つ以上のコンピューター読み取り可能な媒体中に具現化されたコンピュータープログラム製品の形態をとり得、前記媒体は、コンピューター読み取り可能なプログラムコードが内部に具体化されている。
1つ以上のコンピューター可読媒体を任意に組み合わせたものを用いてもよい。コンピューター可読媒体は、コンピューター可読信号媒体又はコンピューター可読記憶媒体であってよい。コンピューター可読記憶媒体は、例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、又は半導体のシステム、装置、若しくはデバイス、又はこれらのいずれかの好適な組み合わせであってよいが、これらに限らない。コンピューター可読記憶媒体の更に具体的な例としては、1本以上の配線を有する電気的接続、ポータブルコンピューターディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM若しくはフラッシュメモリ)、光ファイバ、携帯型コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CR−ROM)、光学記憶装置、磁気記憶装置、又はこれらのいずれかの好適な組み合わせが挙げられる。本明細書との関連においては、コンピューター可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、若しくはデバイスによって使用されるか、又は命令実行システム、装置、若しくはデバイスとの関連で使用されるプログラムを収容又は記憶できる有形かつ非一時的ないずれかの媒体であってよい。
コンピューター可読媒体上で実現されるプログラムコード及び/又は実行可能な命令は、いずれかの適切な媒体を用いて送信でき、その媒体としては、無線、有線、光ファイバーケーブル、RFなど、又はこれらのいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限らない。
このコンピュータープログラムの命令をコンピューター、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイス上にロードして、一連の操作工程をそのコンピューター、他のプログラマブル装置、又は他のデバイス上で実行させ、コンピューター実施プロセスを生成させて、そのコンピューター又は他のプログラマブル装置上で実行される命令が、フローチャート及び/又はブロック図のブロックに定められている機能/動作を実施するプロセスをもたらすようにしてもよい。
更に、本明細書に記載されている様々な方法は、既成のソフトウェア開発ツールを用いてソフトウェアコードを生成するのに用いることができる。しかしながら、これらの方法は、その方法をコードするための新しいソフトウェア言語の要件及び利用可能性に応じて、他のソフトウェア言語に変換してもよい。
特定の変形形態と説明図に関して、本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明は、記載されている変形形態又は図に限定されないことを認識するであろう。加えて、上述の方法及び工程が特定の順序で起こる特定の事象を示している場合、当業者であれば、特定の工程の順序が変更可能であり、かかる変更が本発明の変形によるものであることを認識するであろう。更に、それらの工程のうちのある特定の工程は、可能であれば上述のように順次行われるが、同時に行われてもよい。したがって、本開示の範囲内にあるか、又は請求項に見られる本発明に均等である、本発明の変形形態が存在する限りにおいては、本特許は、それらの変形形態も包含するように意図されている。