関連出願の相互参照
本出願は、2013年7月25日に提出された米国仮特許出願第61/858,533号明細書の利益を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
連邦支援の研究に関する陳述
本発明は、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)によって与えられた認可番号1R43AI112124−01A1の下で政府支援で行われた。政府は、本発明においてある一定の権利を有する。
[配列表]
当該の出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2014年7月24日に作成された前記ASCII写しは、Avatar_007_WO1_Sequence_Listing.txtと命名され、サイズが196,452バイトである。
[著作権および参照による組込み]
本特許文書の開示の一部は、著作権保護の対象となる資料を含有する。著作権所有者は、それが特許商標庁の特許ファイルまたはレコードにおいて発表されるように、誰かによる特許文書または特許開示の複写による複製に反対しないが、そうでなければ全ての著作権の権利を一切留保する。
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発明の背景
毎年、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、米国において4〜5百万人の子供に感染し、乳幼児の入院の主な原因である(約150,000の入院)。世界的に、それは、1歳未満の乳幼児における死亡の6.7%を占め、マラリアに次いで2番目である。さらに、それは、高齢者および免疫無防備状態の対象を含めた他の高リスク群への深刻な脅威を引き起こし、それは、米国においてさらにおよそ180,000の入院および12,000人の死亡をもたらす。RSVのための現行の最先端の治療はなく、RSVのための唯一の現在承認されている予防的治療は、認可されたモノクローナル抗体シナジス(パリビズマブ)の受動的な投与であり、これは、RSV融合(F)タンパク質を認識し、約50%のみ重度の疾患の発生率を減少させる。シナジスでの予防法の高いコストは、その使用を未熟児および先天性心疾患を有する24ヶ月未満の乳幼児のみに限定する。総説に関して、Costello et al.,“Targeting RSV with Vaccines and Small Molecule Drugs, Infectious Disorders,”Drug Targets,2012,vol.12,no.2を参照されたい。より効果的かつ、理想的には、より対費用効果の高いRSVワクチンの開発は、甚大な価値のものであろう。RSV Fタンパク質特異的抗体が疾患から保護することができるという臨床的証拠は、この重要な未だ対処されていない医学的必要に取り組むために、追加のより良いモノクローナル抗体を同定するための、および予防ワクチンを開発するための一致した努力を促した。
本発明のいくつかの側面が以下に要約されている。さらなる側面は、ここで、発明の詳細な説明、実施例、図および特許請求の範囲において記載されている。
RSV Fタンパク質は、RSVからの保護と関連がある強力な中和抗体を誘導することが既知である。最近、RSV Fタンパク質三量体の融合前立体構造(ここで、「融合前F」または「前F(pre-F)」と称されてもよい)がヒト血清における中和活性の一次決定因子であることが示された。また、現在までに単離された最も強力な中和抗体(nAb)は、融合前立体構造のみに特異的に結合する。しかしながら、可溶性の前Fは、非常に不安定であり、融合後立体構造に容易に移行し、ワクチン免疫原としてのその有用性を限定する。その融合前(前F)立体構造において安定化されたRSV Fタンパク質は、非常に価値があり、候補RSVワクチン免疫原を提供する。同様に、かかる安定化されたRSV前Fタンパク質は、抗体、たとえば診断用および治療用抗体の産出にも有用である。その融合前立体構造における(強力なnAb−D25に結合している)RSV Fタンパク質の結晶構造が最近報告された。その内容がそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、McLellan et al.,2013,Science,340,p.1113−1117を参照されたい。この研究に基づいて、本発明者らは、RSV Fタンパク質の構造の広範な分析を行い、その前F立体構造におけるRSV Fタンパク質を安定化させるまたは「ロックする」ためのいろいろな新規な設計戦略および新規な構築物を開発した。
いくつかの態様では、本発明は、RSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体、たとえば、標的架橋、たとえば標的ジチロシン架橋を使用して、融合前立体構造において安定化され得るもしくは「ロックされ得る」または安定化されたもしくは「ロックされた」ものを提供する。本発明は、かかるRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を作製するおよび使用するための方法も提供する。
いくつかの態様では、本発明は、そこに、またはその間に、その前F立体構造におけるRSV Fタンパク質を安定化させるために架橋を作製することができる、RSV Fタンパク質のアミノ酸配列内の特定の部位を提供する。いくつかの態様では、架橋は、標的ジチロシン架橋である。ジチロシン架橋が使用される場合、本発明は、既存のチロシン残基を含むかまたはジチロシン架橋が行われ得るようにチロシン残基に変異され得るもしくは変異された特定のアミノ酸残基(またはアミノ酸残基の対)を提供する。
いくつかの態様では、本発明は、少なくとも1つのジチロシン架橋を含む単離されたRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を提供し、ここで、少なくとも1つのジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンがチロシンへの点変異から生じる。
いくつかの態様では、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10、またはそのアミノ酸残基1〜513(RSV F外部ドメインを含む)、と少なくとも約75%の配列同一性を有する単離されたRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を提供し、ここで、タンパク質ポリペプチドは、チロシンへの点変異から生じる少なくとも1つのチロシン残基を含む。いくつかのかかる態様では、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、少なくとも1つのジチロシン架橋を含有し、ここで、少なくとも1つの架橋の少なくとも1つのチロシン残基は、チロシンへの点変異から生じる。
いくつかの態様では、本発明は、配列番号11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31もしくは32のアミノ酸配列、またはそのアミノ酸残基1〜513(RSV F外部ドメインを含む)を有する単離されたRSV Fポリペプチドを提供する。いくつかの態様では、本発明は、配列番号11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31もしくは32、またはそのアミノ酸残基1〜513(RSV F外部ドメインを含む)、と少なくとも約75%の配列同一性を有する、単離されたRSV Fタンパク質またはポリペプチドを提供する。いくつかのかかる態様では、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、少なくとも1つのジチロシン架橋を含有し、ここで、少なくとも1つの架橋の少なくとも1つのチロシン残基は、チロシンへの点変異から生じる。
いくつかの態様では、ジチロシン架橋が存在する場合、ジチロシン架橋は、2つの既存のチロシン残基を含む。いくつかの態様では、ジチロシン架橋は、チロシンへの点変異から生じるチロシンに架橋している既存のチロシンを含む。いくつかの態様では、ジチロシン架橋は、チロシンへの点変異から生じる2つのチロシンを含む。いくつかの態様では、ジチロシン架橋は、プロトマー内結合、プロトマー間結合、分子内結合、分子間結合、またはその任意の組合せを含む。いくつかの態様では、ジチロシン架橋は、RSV Fタンパク質F1ポリペプチドおよびRSV Fタンパク質F2ポリペプチド内または間の結合を含む。いくつかの態様では、チロシンへの点変異は、配列番号1もしくは配列番号4のアミノ酸位置:77、88、97、147、150、155、159、183、185、187、220、222、223、226、255、427もしくは469、または別のRSV Fアミノ酸配列もしくはその外部ドメインにおけるかかるアミノ酸位置の1つに相当する任意のアミノ酸位置からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸位置に位置している。
いくつかの態様では、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9または10と少なくとも約75%の配列同一性を有する、単離されたRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を提供し、ここで、ポリペプチドは、少なくとも1つのジチロシン架橋を含み、ここで、架橋の一方または両方のチロシンは、チロシンへの点変異から生じ、ここで、架橋は、アミノ酸位置:147および286;198および220;198および222;198および223;198および226;33および469;77および222;88および255;97および159;183および427;1
85および427;または187および427に位置している1つ以上の対合チロシンアミノ酸残基間に位置している。いくつかの態様では、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、1つを超えるジチロシン架橋を含む。いくつかの態様では、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、2つ、3つ、4つ、5つ以上のジチロシン架橋を含む。いくつかの態様では、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、アミノ酸位置77および222、ならびに33および469に位置している対合チロシンアミノ酸残基でのジチロシン架橋を含む。
いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、1つ以上のさらなる架橋、たとえばジスルフィド結合をさらに含む。かかる態様では、1つ以上のジスルフィド結合の少なくとも1つのシステインは、システインへの点変異から生じる。いくつかの態様では、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、キャビティ充填疎水性アミノ酸置換(cavity-filling hydrophobic amino acid substitution)をさらに含む。いくつかの態様では、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、三量体形成ドメインをさらに含む。かかる態様では、三量体形成ドメインは、フォールドン(foldon)ドメインである。
いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、対象における保護免疫応答を引き出すかつ/または対象におけるRSV特異的中和抗体の産生を引き出す能力がある。いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、中和抗体を結合する能力がある少なくとも1つの抗原性部位、たとえば、抗原性部位φを含む。
いくつかの態様では、本発明は、1つ以上の本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を含む組成物(たとえば医薬組成物および/またはワクチン組成物)を提供する。いくつかの態様では、かかる組成物は、アジュバント、担体、免疫賦活剤、またはその任意の組合せを含む。いくつかの態様では、組成物は、呼吸器合胞体ウイルスのためのワクチンであるかまたはその部分を形成する。いくつかの態様では、本発明は、対象にRSVに対するワクチン接種を施す方法であって、対象に本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体の1つ以上を含む組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。いくつかの態様では、対象は、年齢が24ヶ月未満のヒトまたは年齢が50歳を超えるヒトである。いくつかの態様では、投与することは、単回の免疫化を含む。いくつかの態様では、本発明の方法は、対象に1つ以上の本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を含む医薬組成物を投与して、対象におけるRSV感染を治療するまたは防止することをさらに含む。いくつかの態様では、本発明は、対象における免疫応答を誘導するための医薬であって、1つ以上の本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を含む医薬を提供する。いくつかの態様では、医薬は、ワクチンである。
いくつかの態様では、本発明は、RSVワクチン免疫原を作製する方法であって、(a)融合前立体構造におけるRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を同定することおよび取得すること;(b)1つ以上の架橋(たとえばジチロシン架橋)の導入が融合前立体構造を安定化させる、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体における1つ以上の領域を選択すること;(c)工程(b)において選択された領域の1つ以上でRSV Fタンパク質中に1つ以上の架橋(たとえばジチロシン架橋)を導入して、操作されたRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を形成すること;および(d)操作されたRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が、(i)中和抗体に結合する増強された能力、(ii)広域中和に結合する増強された能力、(iii)B細胞受容体に結合し、これを活性化する増強された能力、(iv)動物における抗体応答を引き出す増強された能力、(v)動物における保護抗体応答を引き出す増強された能力、(vi)動物における中和抗体の産生を引き出す増強された能力、(vii)動物における広域中和抗体の産生を引き出す増強された能力、(viii)動物における保護免疫応答を引き出す増強された能力、および(ix)動物における4要素中和エピトープ(quaternary neutralizing epitope)に結合し、これを認識する抗体の産生を引き出す増強された能力からなる群から選択される1つ以上の特性を有するかどうかを決定することを含む方法であり、操作されたRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が1つ以上の特性iからixを有する場合、操作されたRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、RSVワクチン免疫原候補である方法を提供する。いくつかのかかる態様では、工程(d)は、操作されたRSV Fタンパク質が中和抗体に結合する、広域中和抗体に結合する、B細胞受容体に結合し、これを活性化して、動物における抗体応答を引き出す、動物における保護抗体応答を引き出す、動物における中和抗体の産生を引き出す、動物における広域中和抗体の産生を引き出す、動物における保護免疫応答を引き出す、かつ/または動物における4要素中和エピトープを認識する抗体の産生を引き出す能力を評価するための1つ以上のアッセイを行うことを含む。いくつかの態様では、ジチロシン架橋が使用される場合、工程(c)において導入された1つ以上のジチロシン架橋の少なくとも1つのチロシンは、チロシンへの点変異から生じる。いくつかの態様では、方法は、工程(c)の前に、工程(b)において選択された領域の1つ以上でRSV Fタンパク質中に1つ以上のチロシンへの点変異を導入することをさらに含む。
本発明のこれらおよび他の態様は、本特許明細書を通して記載されている。
(A)RSVサブタイプAからの可溶性RSV Fタンパク質(WT)(配列番号1)、および(B)RSVサブタイプAからの全長RSV Fタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)(受託番号AHJ60043.1)。両方の配列のアミノ酸残基1〜513は、可溶性と膜結合性(全長)型の両方に共通であるRSV Fタンパク質のコア配列である。配列番号1におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6x Hisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。配列番号2におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、膜貫通領域および細胞質尾部を含有する内在性RSV Fタンパク質配列を含む。
(同上)
(A)RSVサブタイプBからの可溶性RSV Fタンパク質(配列番号3)、および(B)RSVサブタイプBからの全長RSV Fタンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)(受託番号AHL84194)。両方の配列のアミノ酸残基1〜513は、可溶性と膜結合性(全長)型の両方に共通であるRSV Fタンパク質のコア配列である。配列番号3におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6x Hisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。配列番号4におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、膜貫通領域および細胞質尾部を含有する内在性RSV Fタンパク質配列を含む。
(同上)
(A)可溶性DS−Cav1修飾RSV Fタンパク質(配列番号5)、および(B)全長DS−Cav1修飾RSV Fタンパク質(配列番号6)(McLellan et al.(2013)Science 342:592−598)のアミノ酸配列。両方の配列のアミノ酸残基1〜513は、可溶性と膜結合性(全長)型の両方に共通であるRSV Fタンパク質のコア配列である。配列番号5におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6x Hisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。配列番号6におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、膜貫通領域および細胞質尾部を含有する内在性RSV Fタンパク質配列を含む。
(同上)
(A)可溶性Cav1修飾RSV Fタンパク質(配列番号7)、および(B)全長Cav1修飾RSV Fタンパク質配列(配列番号8)(McLellan et al.(2013)Science 342:592−598)のアミノ酸配列。両方の配列のアミノ酸残基1〜513は、可溶性と膜結合性(全長)型の両方に共通であるRSV Fタンパク質のコア配列である。配列番号7におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6x Hisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。配列番号8におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、膜貫通領域および細胞質尾部を含有する内在性RSV Fタンパク質配列を含む。
(同上)
(A)可溶性DS修飾RSV Fタンパク質(配列番号9)、および(B)全長DS修飾RSV Fタンパク質配列(配列番号10)(McLellan et al.(2013)Science 342:592−598)のアミノ酸配列。両方の配列のアミノ酸残基1〜513は、可溶性と膜結合性(全長)型の両方に共通であるRSV Fタンパク質のコア配列である。配列番号9におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6x Hisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。配列番号10におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、膜貫通領域および細胞質尾部を含有する内在性RSV Fタンパク質配列を含む。
(同上)
RSVサブタイプA(配列番号1、図において「RSV_F_WT」として同定される)およびサブタイプB(配列番号4)からのRSV Fタンパク質の配列アラインメント。サブタイプA配列において太字および下線で示されたアミノ酸残基は、単一または二重変異のいずれかとしてジチロシン架橋結合のために標的とされ得る部位を示す。サブタイプBにおける同等の部位も、ボックスで示されている。ジチロシン架橋結合のための標的とされる示された位置は、RSVサブタイプAとB間に100%保存されている。両方の配列のアミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。配列番号1におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6x Hisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。配列番号4におけるアミノ酸残基514から先からのC末端配列は、膜貫通領域および細胞質尾部を含有する内在性RSV Fタンパク質配列を含む。
DS−Cav1 RSV Fタンパク質(配列番号5)、ならびにRSVサブタイプA(配列番号1)およびサブタイプB(配列番号4)からのRSV Fタンパク質の配列アラインメント。DS−Cav1およびRSVサブタイプA配列(残基514〜568)においてイタリック体で示されたC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)およびstrepタグが後に続く外来性フォールドン三量体形成ドメインを含有する。RSVサブタイプB配列(残基514〜574)において太字および下線で示されたC末端配列は、膜貫通領域および細胞質尾部を含有する内在性Fタンパク質配列である。
位置147(A147Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号11)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置220(V220Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号12)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置222(E222Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号13)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置223(F223Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号14)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置226(K226Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号15)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置469(V469Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号16)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置77(K77Y)および222(E222Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号17)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置88(N88Y)および255(S255Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号18)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置97(M97Y)および159(H159Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号19)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置185(V185Y)および427(K427Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号20)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置187(V187Y)および427(K427Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号21)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置183(N183Y)および427(K427Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号22)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
チロシンへの単一または二重変異を含む、可溶性RSV Fタンパク質サブタイプA(配列番号1)およびそれに由来する修飾RSV Fタンパク質の例(配列番号11〜21)の配列アラインメント。ボックス内のチロシンは、WTサブタイプA配列中に導入されている。2つの新しいチロシンが同じ配列中に導入されている場合、それらは、互いに架橋することが典型的に意図されている。単一のチロシンのみが導入されている場合、そのチロシンは、太字および下線で示されたその配列における内在性または既存のチロシンと架橋することが典型的に期待されている。各配列のアミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
(同上)
(同上)
位置147(A147Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(DS−Cav1)のアミノ酸配列(配列番号23)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置220(V220Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(DS−Cav1)のアミノ酸配列(配列番号24)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置222(E222Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(DS−Cav1)のアミノ酸配列(配列番号25)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置223(F223Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(DS−Cav1)のアミノ酸配列(配列番号26)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置226(K226Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(DS−Cav1)のアミノ酸配列(配列番号27)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
位置469(V469Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(DS−Cav1)のアミノ酸配列(配列番号28)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
複数のジチロシン架橋の形成を促進するように設計されている位置222(E222Y)および469(V469Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号29)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
複数のジチロシン架橋の形成を促進するように設計されている位置226(K226Y)および469(V469Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(サブタイプA)のアミノ酸配列(配列番号30)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
複数のジチロシン架橋の形成を促進するように設計されている位置222(E222Y)および469(V469Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(DS−Cav1)のアミノ酸配列(配列番号31)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
複数のジチロシン架橋の形成を促進するように設計されている位置226(K226Y)および469(V469Y)でのチロシンへの変異を含む、修飾可溶性RSV Fタンパク質(DS−Cav1)のアミノ酸配列(配列番号32)。アミノ酸残基1〜513は、RSV Fタンパク質のコア配列である。アミノ酸残基514から先からのC末端配列は、トロンビン切断部位、6xHisタグ(配列番号46)、およびstrepタグが後に続くフォールドン三量体形成ドメインを含む。
プロトマー内およびプロトマー内ジチロシン架橋が導入され得る、RSV融合前Fタンパク質三量体における2つの標的位置の例を示すリボンダイヤグラム。(A)位置185(V185Y)で導入されたチロシンと位置427(K427Y)(配列番号20)で導入されたチロシン間の操作されたF1−F1プロトマー間ジチロシン結合の側面図(および拡大)。(B)位置198(198Y)での内在性チロシンと位置222(E222Y)(配列番号13)で導入されたチロシン間の操作されたF1−F1プロトマー内ジチロシン結合の上からの図(および拡大図)。標的チロシン残基は、四角のボックスで示されている。
RSV A型Fタンパク質配列(配列番号47)ならびに融合前および融合後二次構造のアラインメント。配列の下の円柱および矢印は、それぞれ、αヘリックスおよびβストランドを表す。アミノ酸配列の下の「X」は、構造が異常であるまたは欠損している場所を示す。灰色の影付けは、融合前から融合後立体構造への移行において5Åより多く移動する残基の位置を示す。黒の三角形は、N結合型グリコシル化の部位を示し、アミノ酸配列の上の文字および線は、抗原性部位を示し、矢印は、フューリン切断部位の位置を示す。補充的資料であるMcLellan et al.,2013, Science 340:1113−1117からの図。
哺乳類細胞におけるRSV Fタンパク質の発現のための例示的核酸構築物。
RSV Fタンパク質の標的ジチロシン架橋結合。HEK293細胞を、F1−F1プロトマー内DT架橋(E222Y(配列番号13)およびK226Y(配列番号15))、F1−F2プロトマー内DT架橋(V469Y(配列番号16)およびN88Y−S255Y(配列番号18))、またはF1−F1分子間DT架橋(V185Y−K427Y(配列番号20))を可能にするRSV−F変異体を発現するベクターでトランスフェクトした。バックグラウンド減算蛍光強度値を示す。(INT)強度、(DT)ジチロシン、(−)および(+)は、それぞれ、ジチロシン架橋結合テクノロジーの適用前および後を示す。
ジチロシン架橋結合は、RSV融合前Fタンパク質上の重要なエピトープを安定化させる。HEK293細胞を野生型(WT)RSV−FまたはK226Y置換を含有する変異体を発現する構築物でトランスフェクトした。(A)トランスフェクション後72hで、上澄みを架橋した(DT)または架橋せず、総タンパク質を、RSV−Fの融合前と融合後型の両方を認識する高親和性ヒト抗hRSV抗体(PBS中の100ng/ml)を使用してELISAによって測定した。(B)4℃で16日間の保管後に、部位φの提示を、部位φを認識する前F特異的ヒトモノクローナル抗体(PBS中の2μg/ml)を使用してELISAによって測定した。
RSVサブタイプA(配列番号33−図において「RSV_F_WT_サブタイプ_A」として同定される)およびRSVサブタイプB(配列番号34−図において「RSV_F_WT_サブタイプ_B」として同定される)からのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列の配列アラインメント。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
(同上)
ヒト細胞における発現にコドン最適化されたRSVサブタイプAからのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列(配列番号35)。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
ハムスター細胞(たとえばCHO細胞)における発現にコドン最適化されたRSVサブタイプAからのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列(配列番号36)。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
昆虫細胞(たとえばSF9昆虫細胞)における発現にコドン最適化されたRSVサブタイプAからのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列(配列番号37)。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
マウス細胞における発現にコドン最適化されたRSVサブタイプAからのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列(配列番号38)。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
ヒト細胞における発現にコドン最適化されたRSVサブタイプBからのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列(配列番号39)。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
ハムスター細胞(たとえばCHO細胞)における発現にコドン最適化されたRSVサブタイプBからのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列(配列番号40)。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
昆虫細胞(たとえばSF9昆虫細胞)における発現にコドン最適化されたRSVサブタイプBからのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列(配列番号41)。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
マウス細胞における発現にコドン最適化されたRSVサブタイプBからのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列(配列番号42)。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
ヒト細胞における発現にコドン最適化され、DS−CAV1変異も含むRSVサブタイプAからのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列(配列番号43)。変異を、太字で変異コドンを囲むボックスと共に示す。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
ヒト細胞における発現にコドン最適化され、DS変異も含むRSVサブタイプAからのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列(配列番号44)。変異を、太字で変異コドンを囲むボックスと共に示す。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
ヒト細胞における発現にコドン最適化され、CAV1変異も含むRSVサブタイプAからのRSV Fタンパク質(全長−膜貫通および細胞質ドメインを有する)をコードするヌクレオチド配列(配列番号45)。変異を、太字で変異コドンを囲むボックスと共に示す。ヌクレオチド1〜1539は、アミノ酸残基1〜513をコードし、これらは、RSV Fタンパク質のコア外部ドメイン配列である。ヌクレオチド1540から先は、内在性RSV F膜貫通領域および細胞質尾部をコードする配列を含む。
発明の詳細な説明
本発明は、部分的には、RSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体、たとえば融合前立体構造において安定化され得るまたは安定化されるもの、かかるポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を作製する方法、かかるポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を含む組成物(たとえば医薬組成物およびワクチン組成物)、ならびにたとえばワクチン接種方法、治療方法および他の方法におけるかかるポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体の使用の方法を提供する。いくつかの態様では、RSVポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、たとえばRSVワクチンにおける立体構造的に特異的な免疫原として有用であってもよい。
定義および略称
本明細書では、「約」および「およそ」という用語は、数値と関連して使用される場合、示された値の+または−20%以内を意味する。
ここでは、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、特に明記しない限り、互換的に使用される。ここでは、「タンパク質複合体」という用語は、2つ以上のタンパク質またはタンパク質サブユニット、たとえば2つ以上のモノマーまたはプロトマーの集合体を表す。特に明記しない限り、タンパク質に関するここでの全ての記述は、タンパク質複合体に等しく適応され、逆の場合も同様である。
ここでは、「安定化された」および「ロックされた」という用語は、たとえば、その融合前立体構造におけるRSV Fタンパク質を安定化させるまたはロックすることにおける架橋結合の効果に関連して、互換的に使用される。これらの用語は、100%の安定性を必要としない。むしろ、これらの用語は、改善されたまたは増加した安定性の程度を意味する。たとえば、いくつかの態様では、「安定化された」という用語がその融合前立体構造における架橋されたRSV Fタンパク質と関連して使用される場合、その用語は、融合前立体構造が、それがかかる架橋結合の前またはこれなしに有するよりも大きい安定性を有することを意味する。安定性、および相対的な安定性は、たとえばRSV融合前立体構造の半減期に基づいて、本出願の他の節において記載した様々な方法で測定してもよい。安定性の改善または増加は、意図された適用に有用または重大である任意の程度までであってもよい。たとえば、いくつかの態様では、安定性は、約10%、25%、50%、100%、200%(すなわち2倍)、300%(すなわち3倍)、400%(すなわち4倍)、500%(すなわち5倍)、1000%(すなわち10倍)以上増加してもよい。
RSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体
RSV融合または「F」タンパク質は、呼吸器合胞体ウイルスのエンベロープ糖タンパク質である。RSV Fタンパク質は、可溶性(膜貫通ドメインを有さない)型または膜結合性(膜貫通ドメインを有する)型のいずれかである単一のポリペプチド前駆体として翻訳されてもよい。このポリペプチドは、三量体を形成し、これは、場合によって、保存フューリンコンセンサス切断部位で1つ以上の細胞プロテアーゼによってタンパク分解性に切断されて、F1(C末端)およびF2(N末端)断片として既知である2つのジスルフィド結合断片をもたらしてもよい。F2断片は、RSV F前駆体の最初のおよそ83アミノ酸を含む。切断されていない前駆体タンパク質または切断されたF2およびF1断片のヘテロ二量体のいずれかは、RSV Fプロトマーを形成することができる。3つのかかるプロトマーは、集合して、最終RSV Fタンパク質複合体を形成し、これは、3つのプロトマーのホモ三量体である。
RSV Fタンパク質三量体は、ウイルスおよび細胞膜の融合を媒介する。RSV Fタンパク質三量体の融合前立体構造(ここで、「前F」と称されてもよい)は、高度に不安定(準安定性)である。しかしながら、いったんRSVウイルスが細胞膜とドッキングすると、RSV Fタンパク質三量体は、高度に安定な融合後(「後F」)立体構造への一連の立体構造的変化および移行を経る。RSV Fタンパク質は、RSV保護と関連する強力な中和抗体(nAb)を誘導することが既知である。たとえば、RSV Fタンパク質での免疫化は、ヒトにおいて保護的であるnAb(たとえばシナジス)を誘導する。いくつかの中和エピトープ(部位I、IIおよびIV)は、RSV Fタンパク質の融合後型に存在する。しかしながら、最近、Magro et al.は、その融合後立体構造におけるRSV Fタンパク質でのヒト血清のインキュベーションは、Fタンパク質に対する中和活性の大部分を枯渇させることに失敗したことを示し、これは、融合前立体構造に特有の中和抗原性部位の存在を示している(Magro et al. 2012,PNAS 109(8):3089)。X線結晶解析によって、パリビズマブ(シナジス)、モタビズマブ(ヌマックス)によって認識されるエピトープ、より最近発見された101Fモノクローナル抗体のエピトープ(McLellan et al.,2010,J.Virol.,84(23):12236−44l;およびMcLellan et al.,2010,Nat.Struct.Mol.Biol.,Feb 17(2):248−50)が位置づけられた。ごく最近、McLellan et al.(Science 340:1113−1117(2013))は、その融合前立体構造におけるFタンパク質の構造を解明し、これは、融合前立体構造においてのみ示され、一連の抗体、たとえば、シナジスおよびヌマックスよりも最大50倍より強力に中和する5C4が結合する新規な中和エピトープ−部位φ−を明らかにした。したがって、この融合前立体構造におけるRSVワクチン免疫原および提示部位φが効果的な保護を引き出すというますます増加する証拠がある。しかしながら、現在まで、RSV Fタンパク質の融合前立体構造の高度に不安定な(準安定性)性質は、かかるワクチンの開発への重大な障壁であることが判明した。McLellan et al.の融合前および融合後RSV F構造の比較に基づいて、大きい立体構造的変化(>5Å)を経るFタンパク質の2つの領域があると思われる。これらの領域は、F1サブユニットのNおよびC末端(それぞれ、残基137〜216および461〜513)に位置している(図32を参照されたい)。部位φエピトープに結合しているD25抗体によってその融合前立体構造において保持されているRSV Fタンパク質の結晶構造では、C末端F1残基は、フォールドン三量体形成ドメインを付加することによって、融合前立体構造において安定化され得る。F1のN末端領域を安定化させるために、McLellan et al.は、抗体D25の結合は、結晶学的研究に十分であることを発見した。しかしながら、ワクチン免疫原の生成に関して、代替の安定化戦略、たとえばRSV Fタンパク質が大きい抗体分子に結合していることを要求しないものが必要である。試みられた1つの代替の手法は、対合システイン変異(ジスルフィド結合形成に関して)およびF1 N末端近くのキャビティ充填変異の導入を伴った(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、McLellan et al.(2013)Science 342:592−598において報告されているDS−Cav1 RSV Fタンパク質変異体を参照されたい)。しかしながら、かかる変異体の結晶学的分析は、構造が部分的にのみ融合前立体構造であったことを明らかにした。したがって、臨床的ワクチン開発のための免疫原を獲得するために、RSV Fタンパク質のさらなる操作が必要である。
本発明は、架橋され得るまたは架橋されるべきRSV Fタンパク質内の特定の部位を提供すること、およびかかる架橋の形成を促進することができるRSV Fタンパク質の変異型を提供することを含めた、その融合前立体構造におけるRSV Fタンパク質を安定化させるためのある特定の代替の手法を提供する。かかる架橋および変異は、単独で使用することができる(たとえば野生型RSV Fタンパク質の文脈で、またはいかなる人工の変異もしくは他の人工の修飾も含まないRSV Fタンパク質の文脈で)、または1つ以上の他の人工の変異、修飾、架橋、もしくは安定化戦略と組み合わせて使用することができる。したがって、たとえば、ここで記載した手法は、付加されたフォールドン三量体形成ドメイン、安定化抗体(たとえばD25)、および/または他の部分的もしくは潜在的安定化修飾もしくは変異−たとえばMcLellan et al.によって報告されたDS−Cav1 RSV Fタンパク質変異体におけるものの使用と関連して使用することができる。
本発明者らは、RSV Fタンパク質の構造の広範な分析を行い、いろいろな新規な設計戦略および新規な操作されたRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を開発した。本発明は、かかるRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を作製するおよび使用するための方法も提供する。いくつかの態様では、本発明は、その前F立体構造におけるRSV Fタンパク質を「ロックする」ために、そこに、またはその間に標的架橋が作製され得るRSV Fタンパク質のアミノ酸配列内の特定の部位を提供する。いくつかの態様では、標的架橋は、ジチロシン架橋である。ジチロシン架橋が使用される場合、本発明は、既存のチロシン残基を含むまたはジチロシン架橋が作製され得るようにチロシン残基に変異され得るもしくは変異されている特定のアミノ酸残基(またはアミノ酸残基の対)を提供する。
本特許明細書を通して、それらの1つまたは複数のアミノ残基番号(たとえば、アミノ酸残基77、88、97、または222)を参照することによってRSV Fタンパク質における特定のアミノ酸残基または特定のアミノ酸領域を言及する場合、特に明記しない限り、番号付けは、配列表および図においてここで提供したRSVアミノ酸配列に基づく(たとえば、図6および配列番号1を参照されたい)。しかしながら、当業者は理解することになるように、たとえば、配列番号1と比較して付加されたまたは除去されたさらなるアミノ酸残基がある場合、異なるRSV配列が異なる番号付けシステムを有してもよいことことに注目すべきである。それ自体として、特定のアミノ酸残基がそれらの番号によって参照される場合、記述は、所与のアミノ酸配列の最初から数える場合に正確にその番号を付けられた位置に位置するアミノ酸のみに限定されず、むしろ、その残基が同じ正確な番号を付けられた位置にない場合、たとえば、RSV配列が配列番号1よりも短いもしくは長い、または配列番号1と比較して挿入もしくは欠失を有する場合でさえも、任意のおよび全てのRSV F配列における同等の/相当するアミノ酸残基が意図されていることを理解すべきである。当業者は、たとえば所与のRSV F配列を配列番号1またはここで提供した他のRSV Fアミノ酸配列のいずれかに整列させることによって、何がここで列挙した特定の番号を付けられた残基のいずれかに相当する/同等のアミノ酸位置であるかを容易に決定することができる。
本発明は、RSV Fタンパク質およびポリペプチドアミノ酸配列、ならびにかかる配列を含む組成物および方法を提供する。しかしながら、本発明は、ここで開示した特定のRSV F配列に限定されない。むしろ、本発明は、ここで提供した特定の配列の変形形態、変更形態および誘導体を企図する。
いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、限定なく、RSVサブタイプA(たとえば可溶性型(配列番号1、またはそのアミノ酸残基1〜513)であるまたは全長型(配列番号2)である)のアミノ酸配列;RSVサブタイプB(たとえば可溶性型(配列番号3、またはそのアミノ酸残基1〜513)であるまたは全長型(配列番号4)である)のアミノ酸配列;RSV変異DS−Cav1(たとえば可溶性型(配列番号5、またはそのアミノ酸残基1〜513)であるまたは全長型(配列番号6)である)のアミノ酸配列;RSV変異Cav1(たとえば可溶性型(配列番号7、またはそのアミノ酸残基1〜513)であるまたは全長型(配列番号8)である)のアミノ酸配列;またはRSV変異DS(たとえば可溶性型(配列番号9、またはそのアミノ酸残基1〜513)であるまたは全長型(配列番号10)である)のアミノ酸配列、またはその任意の断片を含めた、当技術分野で既知の任意の適したRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体配列のアミノ酸配列に由来することができる(またはこれらを含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなることができる)。いくつかの態様では、本発明のRSV Fタンパク質およびポリペプチドは、任意の既知のRSV F配列またはRSV F外部ドメイン配列(配列番号1〜10のアミノ酸残基1〜513、または配列番号1〜10を含むがこれらに限定されない)と、または任意の既知のRSVグループ、サブグループ、ファミリー、サブファミリー、タイプ、サブタイプ、属、種、株、および/もしくはクレード、もしくはその任意の断片からのRSV F配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列に由来することができる(またはこれらを含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなることができる)。ここで提供した様々なRSV F配列のアミノ酸残基1〜513は、コアRSV F外部ドメイン配列であることに注目すべきである。全てのかかる配列におけるアミノ酸残基514から先は、いくつかの態様では存在してもよいが他のものでは存在しなくてもよいさらなるドメインを含む。いくつかの態様では、かかるさらなるドメインの変異体が存在してもよい。たとえば、ここで提供した全ての可溶性RSV F配列におけるアミノ酸残基514から先は、任意のフォールドン三量体形成ドメイン、トロンビン切断部位、6x Hisタグ(配列番号46)、およびstrepタグを含む。いくつかの態様では、これらのさらなる配列は、無くても、修飾されていても、再編成されていてもまたは置きかえられていてもよい。たとえば、いくつかの態様では、種々の三量体形成ドメインを使用してもよく、または種々のエピトープタグを使用してもよい。同様に、ここで提供した全ての「全長」または膜結合性RSV F配列におけるアミノ酸残基514から先は、任意のRSV Fタンパク質膜貫通領域および細胞質尾部を含む。いくつかの態様では、これらのさらなる配列は、無くても、修飾されていても、再編成されていても、たとえば種々の膜貫通または細胞質ドメインで置きかえられていてもよい。
いくつかの態様では、本発明は、1つ以上の人工的に導入された架橋を含むRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を提供し、ここで、RSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体内の以下のアミノ酸残基の少なくとも1つがRSV Fタンパク質における別のアミノ酸残基:Y33、K77、N88、M97、A147、S150、S155、H159、N183、V185、V187、Y198、V220、E222、F223、K226、S255、Y286、K427およびV469に人工的に架橋している。いくつかのかかる態様では、架橋は、ジチロシン架橋である。
いくつかの態様では、本発明は、1つ以上の人工的に導入された架橋を含むRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を提供し、ここで、かかる人工的に導入された架橋は、以下のアミノ酸残基:Y33、K77、N88、M97、A147、S150、S155、H159、N183、V185、V187、Y198、V220、E222、F223、K226、S255、Y286、K427およびV469の2つを連結する。いくつかのかかる態様では、架橋は、ジチロシン架橋である。
いくつかの態様では、本発明は、アミノ酸残基の以下の対の1つ以上におけるアミノ酸残基が人工的に導入された架橋:147/286、198/220、198/222、198/223、198/226、33/496、77/222、88/255、97/159、183/427、185/427、および187/427によって互いに架橋しているRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を提供する。いくつかのかかる態様では、架橋は、ジチロシン架橋である。
いくつかの態様では、本発明は、以下の領域:F1可動性N末端(残基137〜216)、α2(残基148〜160)、α3(残基163〜173)、β3(残基176〜182)、β4(残基186〜195)、α4(残基197〜211)、F1可動性C末端(残基461〜513)、β22(残基464〜471)、α9(残基474〜479)、β23(残基486〜491)、およびα10(残基493〜514)の2つの間に人工的に導入された架橋を含むRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を提供する。いくつかのかかる態様では、架橋は、ジチロシン架橋である。
いくつかの態様では、本発明は、以下の領域:約位置67から約位置87までのアミノ酸残基、約位置78から約位置98までのアミノ酸残基、約位置87から約位置107までのアミノ酸残基、約位置137から約位置157までのアミノ酸残基、約位置140から約位置160までのアミノ酸残基、約位置145から約位置165までのアミノ酸残基、約位置149から約位置169までのアミノ酸残基、約位置173から約位置193までのアミノ酸残基、約位置175から約位置195までのアミノ酸残基、約位置177から約位置197まで、約位置188から約位置208までのアミノ酸残基、約位置210から約位置230までのアミノ酸残基、約位置212から約位置232までのアミノ酸残基、約位置213から約位置233までのアミノ酸残基、約位置216から約位置236までのアミノ酸残基、約位置245から約位置265までのアミノ酸残基、約位置276から約位置296までのアミノ酸残基、約位置417から約位置437までのアミノ酸残基、および約位置459から約位置479までのアミノ酸残基の2つの間に人工的に導入された架橋を含むRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を提供する。いくつかのかかる態様では、架橋は、ジチロシン架橋である。
本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体が1つ以上のジチロシン架橋を含む態様では、ジチロシン架橋は、2つの内在性チロシン残基間、2つの「チロシンへの」変異から生じるチロシン残基間、または「チロシンへの」変異から生じるチロシン残基と内在性チロシン残基間に導入されてもよい。いくつかの態様では、1つを超えるジチロシン架橋が、RSV Fタンパク質またはポリペプチド中に導入されている。
本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体が1つ以上のジチロシン架橋を含む態様では、「チロシンへの」変異が導入され得るアミノ酸位置の非限定的な例は、K77、N88、M97、A147、S150、S155、H159、N183、V185、V187、V220、E222、F223、K226、S255、K427およびV469(図6を参照されたい)、またはその任意の組合せを含む。
本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体が1つ以上のジチロシン架橋を含む態様では、ジチロシン架橋を形成するために使用することができる既存のまたは内在性チロシン残基の非限定的な例は、Y33、Y198およびY286(図6を参照されたい)、またはその任意の組合せを含む。
本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体が1つ以上のジチロシン架橋を含む態様では、ジチロシン架橋がその間に導入され得る残基対の非限定的な例は、147/286、198/220、198/222、198/223、198/226、33/496、77/222、88/255、97/159、183/427、185/427、および187/427、またはその任意の組合せを含む。
本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体が1つ以上のジチロシン架橋を含む態様では、そこからアミノ酸がチロシン置換および/またはジチロシン架橋結合のために選択されてもよいRSV Fタンパク質の領域または二次構造の非限定的な例は、F1可動性N末端(残基137〜216)、α2(残基148〜160)、α3(残基163〜173)、β3(残基176〜182)、β4(残基186〜195)、α4(残基197〜211)、F1可動性C末端(残基461〜513)、β22(残基464〜471)、α9(残基474〜479)、β23(残基486〜491)、およびα10(残基493〜514)を含む。そこから1つ以上のアミノ酸がチロシン置換および/または架橋結合のために選択されてもよいRSV Fタンパク質の他の領域の非限定的な例は、約位置67から約位置87まで、約位置78から約位置98まで、約位置87から約位置107まで、約位置137から約位置157まで、約位置140から約位置160まで、約位置145から約位置165まで、約位置149から約位置169まで、約位置173から約位置193まで、約位置175から約位置195まで、約位置177から約位置197まで、約位置188から約位置208まで、約位置210から約位置230まで、約位置212から約位置232まで、約位置213から約位置233まで、約位置216から約位置236まで、約位置245から約位置265まで、約位置276から約位置296まで、約位置417から約位置437まで、および約位置459から約位置479までの残基を含む。
いくつかの態様では、本発明は、配列番号11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、もしくは32のアミノ酸配列、またはそのアミノ酸残基1〜513(そのそれぞれが、ジチロシン架橋結合を促進するためのおよびその前F立体構造におけるRSV Fタンパク質の「ロッキング」を促進するための1つ以上の「チロシンへの」変異を含むRSV Fアミノ酸配列の変異体である)、またはその任意の断片、たとえばそのアミノ酸残基1〜513を含む断片、および/またはRSV Fタンパク質のF1もしくはF2断片を含む断片、またはタンパク分解性に産出されてもよいかつ/もしくは集合して機能的RSV Fタンパク質を構築してもよいまたはその部分を形成してもよいRSV Fタンパク質の任意の他の断片に由来する、これらを含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなるRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を提供する。いくつかの態様では、本発明は、配列番号11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、もしくは32、またはそのアミノ酸残基1〜513、またはその任意の断片と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列に由来する、これを含む、本質的にこれからなる、またはこれからなるRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を提供する。
ジチロシン架橋が標的とされてもよいRSV Fタンパク質またはポリペプチドにおけるアミノ酸位置の非限定的な例は、そこでF2−F1プロトマー内結合が形成することになる、Y33(既存のTyr残基)およびV469Y(Tyrへの置換)、そこでF1−F1分子内結合が形成する、位置Y198(既存のTyr残基)およびE222Y(Tyrへの置換)、そこでF2−F1プロトマー間結合が形成する、位置K77Y(Tyrへの置換)およびE222Y(Tyrへの置換)、そこでF2−F1プロトマー間結合が形成する、位置N88Y(Tyrへの置換)およびS255Y(Tyrへの置換)、そこでF2−F1プロトマー間結合が形成する、位置M97Y(Tyrへの置換)およびH159Y(Tyrへの置換)、そこでF1−F1プロトマー間結合が形成する、位置V185Y(Tyrへの置換)およびK427Y(Tyrへの置換)、ならびにそこでF1−F1プロトマー間結合が形成する、位置N183Y(Tyrへの置換)およびK427Y(Tyrへの置換)を含む。これらの位置は、RSV融合前Fタンパク質の原子レベルの構造の分析によって最初に同定された。さらなる非限定的な例は、位置A147Y(Tyrへの置換)およびY286(既存のTyr)、Y198(既存のTyr残基)およびV220Y(Tyrへの置換)、Y198(既存のTyr残基)およびF223Y(Tyrへの置換)、Y198(既存のTyr残基)およびK226Y(Tyrへの置換)、V187Y(Tyrへの置換)およびK427Y(Tyrへの置換)ならびにN88Y(Tyrへの置換)およびS255Y(Tyrへの置換)を含む。いくつかの態様では、本発明のRSVポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、上記に列挙したジチロシン架橋の1つを含む。いくつかの態様では、本発明のRSVポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、上記に列挙したジチロシン架橋の2つを含む。いくつかの態様では、本発明のRSVポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、上記に列挙したジチロシン架橋の3つを含む。いくつかの態様では、本発明のRSVポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、上記に列挙したジチロシン架橋の4つを含む。いくつかの態様では、本発明のRSVポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、上記に列挙したジチロシン架橋の5つ以上を含む。いくつかの態様では、本発明のRSVポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、上記に列挙したジチロシン架橋の任意の組合せまたは1つ以上を含む。
1つを超えるジチロシン架橋を有するように設計されているRSV Fタンパク質の非限定的な例は、たとえば、位置222で置換されたチロシンが位置198で内在性チロシンと対合するように設計されており、位置469で置換されたチロシンが位置33で内在性チロシンと対合するように設計されており、したがって、2つのジチロシン架橋の形成によってRSV Fタンパク質を安定化させるサブタイプA(配列番号29)またはDS−Cav1(配列番号31)に由来する2つの「チロシンへの」変異(E222Y/V469Y)を有するRSV Fタンパク質;および、たとえば、位置226で置換されたチロシンが位置198で内在性チロシンと対合するように設計されており、位置469で置換されたチロシンが位置33で内在性チロシンと対合するように設計されており、したがって、2つのジチロシン架橋の形成によってFタンパク質を安定化させるサブタイプA(配列番号30)またはDS−Cav1(配列番号32)に由来する2つのチロシンへの変異(K226Y/V469Y)を有するRSV Fタンパク質を含む。
上記のように、成熟したRSV F三量体の各プロトマーは、非共有結合的に会合してプロトマーを形成するF1およびF2と称される2つの別個のポリペプチド鎖に切断されてもよい。同じプロトマー内のF1ポリペプチドとF2ポリペプチド間の結合は、分子間結合およびプロトマー内結合の例である。本発明は、限定なく、配列番号16(位置469で導入されたチロシンが内在性チロシン33と対合するように設計されているV469Y)、配列番号17(導入されたチロシン間にジチロシン対を形成するように設計されているK77Y/E222Y)、配列番号18(導入されたチロシン間にジチロシン対を形成するように設計されているN88Y/S255Y)、および配列番号19(導入されたチロシン間にジチロシン対を形成するように設計されているM97Y/H159Y)を含めた、この相互作用を安定化させるように設計されている架橋を含む例示的なRSV Fタンパク質およびポリペプチド、ならびにかかる配列に由来し、かかる配列に存在する特定の「チロシンへの」変異を含むRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を提供する。本発明は、限定なく、配列番号20(V185Y/K427Y)、配列番号21(V187Y/K427Y)、配列番号22(N183Y/K427Y)を含めた、三量体の2つのプロトマーを一緒に保持するように設計されている架橋(分子間、プロトマー間結合)を含む、例示的なRSV Fタンパク質およびポリペプチド、ならびにかかる配列に由来し、かかる配列に存在する特定の「チロシンへの」変異を含むRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体も提供する。これらのタンパク質のそれぞれでは、あるプロトマーにおけるある導入されたチロシンは、隣接するプロトマー上の他の導入されたチロシンと対合するように設計されている。たとえば、配列番号20(V185Y/K427Y)では、「プロトマーA」上の位置185のチロシンは、「プロトマーB」上の位置427のチロシンとジチロシン結合を形成する(図31Aを参照されたい)。
いくつかの態様では、RSV Fタンパク質のF1ポリペプチドは、同じプロトマーのF2ポリペプチドと架橋している(分子間/プロトマー内結合)。いくつかの態様では、F1ポリペプチドは、分子内架橋している(たとえば、架橋の両方のチロシンは、同じF1ポリペプチド内に位置している)。いくつかの態様では、F2ポリペプチドは、分子内架橋している(たとえば、架橋の両方のチロシンは、同じF1ポリペプチド内に位置している)。いくつかの態様では、RSV融合前Fタンパク質のF1ポリペプチドは、隣接するプロトマーのF1ポリペプチドと架橋している(プロトマー間結合)。いくつかの態様では、RSV融合前Fタンパク質のF1ポリペプチドは、隣接するプロトマーのF2ポリペプチドと架橋している(プロトマー間結合)。
前Fから後F構造への移行は、RSVタンパク質、特にF1のCおよびN末端の部分の非常に著しい再編成を伴う一方、残りのタンパク質は、著しく少なく移動する。本発明の方法によって前F立体構造を安定化させるために、著しく移動する(たとえば5Åより多く)タンパク質の部分は、単一のプロトマーのF1鎖の2つの残基間で、単一のプロトマーのF2鎖の2つの残基間で、同じプロトマー内のF1鎖の1つの残基とF2鎖の1つの残基間で、または2つの隣接するプロトマーのF1および/またはF2残基間でのいずれかで、著しく少なく移動する(たとえば5Å未満)タンパク質の部分に結合され得る。あるいは、著しく移動する(たとえば5Åより多く)タンパク質の部分は、同様にF1鎖の2つの残基間で、F2鎖の2つの残基間で、同じプロトマー内のF1鎖の1つの残基とF2鎖の1つの残基間で、または2つの隣接するプロトマーのF1および/またはF2残基間でのいずれかで、著しく移動する(たとえば5Åより多く)タンパク質の他の部分にも結合され得る。移動または非移動部分のいずれかへの移動部分の共有結合は、融合前構造から中間構造または融合後構造のいずれかへの移行を妨げる。
融合前から融合後への移行において5Åより多く移動するF2における位置は、位置62から76を含む一方、位置26から61および77から97は、5Å未満移動する(位置98〜109は、融合前構造において未だ決定されていない)。前Fから後F移行において5Åより多く移動するF1における位置は、位置137から216(F1可動性N末端)および461から513(F1可動性C末端)を含む。前F構造のF1可動性N末端は、Fタンパク質三量体(3つのプロトマーからなる複合体)の同じプロトマー内でまたはプロトマー間で、それぞれ互いに、または他の移動もしくは非移動部分に結合され得る、□2(位置148から160)、□3(位置163から173)、□3(位置176から182)、□4(位置186から195)、および□4(位置197から211)二次構造をさらに含む。前F構造のF1可動性C末端は、Fタンパク質三量体の同じプロトマー内でまたはプロトマー間で、それぞれ互いに、または他の移動もしくは非移動部分に結合され得る、□22(位置464から471)、□9(位置474から479)、□□3(位置486から491)、および□10(位置493から514)二次構造をさらに含む。(図32を参照されたい。)
いくつかの態様では(上記に記載したもの、およびここで列挙した特定のアミノ酸配列のいずれかを有するRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を伴うもの、およびここで提供した特定のアミノ酸配列との100%未満の同一性を有する、かかるRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体の変異体または断片を伴うものの全てを含めて)、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、1つ以上の望ましい特性、たとえば(1)前F立体構造を形成する、(2)架橋結合によって前F立体構造において「ロックされる」、(3)前F特異的抗体に結合する、(4)部位φに結合する抗体に結合する、(5)中和抗体に結合する、(6)広域中和抗体に結合する、(7)D25、AM22、5C4、101Fからなる群から選択される抗体に結合する、(8)パリビズマブ(シナジス)に結合する、(9)B細胞受容体に結合するかつ/またはこれを活性化する、(10)動物における抗体応答を引き出す、(11)動物における保護抗体応答を引き出す、(12)動物における中和抗体の産生を引き出す、(13)動物における広域中和抗体の産生を引き出す、(14)動物における4要素中和エピトープ(QNE)を認識する抗体の産生を引き出す、および/または(15)動物における保護免疫応答を引き出す能力があることを有するべきである。
特に明記しない限り、特定のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体に関するここでの全ての記述は、その全てのホモログ、オルソログ、アナログ、誘導体、変異型、断片、キメラ、融合タンパク質など、たとえばある特定の望ましい特性または特徴を有するもの(たとえば前F立体構造にある、または望ましい前F立体構造を有する複合体の部分を形成する能力がある、または1つ以上の抗RSV抗体、たとえばRSV前F立体構造に特異的であるかつ/もしくはφ部位に結合する抗体に結合する、もしくはこれの産生を引き出す能力があることを含むが、これらに限定されない、望ましい機能的特性を有するもの)に等しく関する。
同様に、特定のポリペプチド、タンパク質、および/またはタンパク質複合体ポリペプチド、タンパク質、および/またはタンパク質複合体(たとえば特定のアミノ酸配列を有するものまたは特定のRSV型、サブタイプ、もしくは株からのもの)に関するここでの全ての記述は、天然に存在してもよい(たとえば種々のRSVタイプ、サブタイプまたは株において)またはここで提供した特定の配列に関連しているが、ある方法において、たとえば組換え手段、化学的手段、または任意の他の手段によって人工的に改変されたかかるポリペプチド、タンパク質、および/またはタンパク質複合体の他の関連する形に等しく関する。ここで記載したポリペプチド、タンパク質、および/またはタンパク質複合体は、当技術分野で既知の任意の適したRSVポリペプチド、タンパク質、および/またはタンパク質複合体のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列を有する、またはこれに由来することができる。いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、任意のかかるタンパク質、またはその断片と実質的に相同である(たとえば、様々な態様では、当業者に既知の任意の適した方法を使用して、たとえば、当技術分野で既知のコンピューターホモロジープログラムを使用して整列させた場合、ここで記載したまたは当技術分野で既知の任意の特定のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体のアミノ酸または核酸配列と少なくとも約40%または50%または60%または70%または75%または80%または85%または90%または95%または98%または99%の同一性を有するもの)またはそのコード核酸が高ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、もしくは低ストリンジェンシー条件下で本発明のタンパク質のコード核酸配列にハイブリダイズする能力があるタンパク質を含めて、ここで記載したまたは当技術分野で既知の特定の特定のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体の誘導体および/またはアナログであってもよい、またはこれに由来してもよい。
いくつかの態様では、本発明は、ここで記載した特定のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体の断片、たとえば少なくとも約10アミノ酸、20アミノ酸、50アミノ酸、100アミノ酸、200アミノ酸、または500アミノ酸を含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなるものを提供する。
いくつかの態様では、ここで記載したまたは当技術分野で既知の特定のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体内の1つ以上のアミノ酸残基は、欠失、付加、または別のアミノ酸で置換され得る。かかる変異が導入されている態様では、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体をミクロ配列決定して、部分的なアミノ酸配列を決定することができる。他の態様では、RSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体をコードする核酸分子を配列決定して、変異の導入を同定するかつ/または確認することができる。
いくつかの態様では、1つ以上のアミノ酸残基を、同様の極性を有し、機能的同等物として働いてもよい別のアミノ酸によって置換することができ、これは、サイレント改変をもたらす。いくつかの態様では、配列内のアミノ酸に関する置換は、たとえば保存的置換を産み出すためにそのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択されてもよい。たとえば、無極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンを含む。極性で中性のアミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。正に荷電している(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシンおよびヒスチジンを含む。負に荷電している(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。かかる置換は、保存的置換であると一般的に理解されている。
いくつかの態様では、人工的、合成的、もしくは非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸アナログを使用して、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を作製することができる。非古典的アミノ酸は、一般的なアミノ酸のD−異性体、フルオロ−アミノ酸、および「デザイナー」アミノ酸、たとえば一般にβ−メチルアミノ酸、Cγ−メチルアミノ酸、Nγ−メチルアミノ酸、およびアミノ酸アナログを含むが、これらに限定されない。非古典的アミノ酸のさらに非限定的な例は、α−アミノカプリル酸、Acpa;(S)−2−アミノエチル−L−システイン/HCl、Aecys;アミノフェニルアセテート、Afa;6−アミノヘキサン酸、Ahx;γ−アミノイソ酪酸およびα−アミノイソ酪酸、Aiba;アロイソロイシン、Aile;L−アリルグリシン、Alg;2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、およびα−アミノ酪酸、Aba;p−アミノフェニルアラニン、Aphe;b−アラニン、Bal;p−ブロモフェニルアラニン、Brphe;シクロヘキシルアラニン、Cha;シトルリン、Cit;β−クロロアラニン、Clala;シクロロイシン、Cle;p−クロロフェニルアラニン、Clphe;システイン酸、Cya;2,4−ジアミノ酪酸、Dab;3−アミノプロピオン酸および2,3−ジアミノプロピオン酸、Dap;3,4−デヒドロプロリン、Dhp;3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、Dhphe;p−フルオロフェニルアラニン、Fphe;D−グルコサミン酸、Gaa;ホモアルギニン、Hag;δ−ヒドロキシリシン/HCl、Hlys;DL−β−ヒドロキシノルバリン、Hnvl;ホモグルタミン、Hog;ホモフェニルアラニン、Hoph;ホモセリン、Hos;ヒドロキシプロリン、Hpr;p−ヨードフェニルアラニン、Iphe;イソセリン、Ise;α−メチルロイシン、Mle;DL−メチオニン−S−メチルスルホニウムクロリド、Msmet;3−(1−ナフチル)アラニン、1Nala;3−(2−ナフチル)アラニン、2Nala;ノルロイシン、Nle;N−メチルアラニン、Nmala;ノルバリン、Nva;O−ベンジルセリン、Obser;O−ベンジルチロシン、Obtyr;O−エチルチロシン、Oetyr;O−メチルセリン、Omser;O−メチルトレオニン、Omthr;O−メチルチロシン、Omtyr;オルニチン、Orn;フェニルグリシン;ペニシラミン、Pen;ピログルタミン酸、Pga;ピペコリン酸、Pip;サルコシン、Sar;t−ブチルグリシン;t−ブチルアラニン;3,3,3−トリフルオロアラニン、Tfa;6−ヒドロキシドーパ、Thphe;L−ビニルグリシン、Vig;(−)−(2R)−2−アミノ−3−(2−アミノエチルスルホニル)プロパン酸ジヒドロキシクロリド、Aaspa;(2S)−2−アミノ−9−ヒドロキシ−4,7−ジオキサノナン酸、Ahdna;(2S)−2−アミノ−6−ヒドロキシ−4−オキサヘキサン酸、Ahoha;(−)−(2R)−2−アミノ−3−(2−ヒドロキシエチルスルホニル)プロパン酸、Ahsopa;(−)−(2R)−2−アミノ−3−(2−ヒドロキシエチルスルファニル)プロパン酸、Ahspa;(2S)−2−アミノ−12−ヒドロキシ−4,7,10−トリオキサドデカン酸、Ahtda;(2S)−2,9−ジアミノ−4,7−ジオキサノナン酸、Dadna;(2S)−2,12−ジアミノ−4,7,10−トリオキサドデカン酸、Datda;(S)−5,5−ジフルオロノルロイシン、Dfnl;(S)−4,4−ジフルオロノルバリン、Dfnv;(3R)−1−1−ジオキソ−[1,4]チアジン−3−カルボン酸、Dtca;(S)−4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロノルロイシン、Hfnl;(S)−5,5,6,6,6−ペンタフルオロノルロイシン、Pfnl;(S)−4,4,5,5,5−ペンタフルオロノルバリン、Pfnv;ならびに(3R)−1,4−チアジナン−3−カルボン酸、Tcaを含むが、これらに限定されない。さらに、アミノ酸は、D(右旋性)またはL(左旋性)であり得る。古典的および非古典的アミノ酸の総説に関しては、Sandberg et al.,1998(Sandberg et al.,1998.New chemical descriptors relevant for the design of biologically active peptides. A multivariate characterization of 87 amino acids.J Med Chem 41(14):pp.2481−91)を参照されたい。
核酸
ここで記載したある特定のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を提供することに加えて、本発明は、かかるRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体をコードする核酸、ならびにかかる核酸を含む組成物およびベクターも提供する。かかる核酸は、当技術分野で既知の任意の適した方法を使用して取得または作製することができる。たとえば、RSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体をコードする核酸分子は、クローン化DNAから取得することができるかまたは化学的合成によって作製することができる。いくつかの態様では、核酸は、当業者に既知の方法のいずれか、たとえばランダムまたはポリA−プライムド逆転写(poly A-primed reverse transcription)によって調製されたRNAを逆転写することによって取得してもよい。供給源が何であっても、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体をコードする核酸分子は、任意の適したベクター、たとえば核酸分子の増殖に使用されるものまたは核酸分子の発現に使用されるもの中にクローニングすることができる。核酸は、必要な場合、様々な制限酵素を使用して、特定の部位で切断されてもよい。発現を必要とする態様では、核酸は、望ましい細胞型、たとえば哺乳類細胞または昆虫細胞における発現を方向付けるのに適したプロモーターに作動可能に連結することができ、任意の適した発現ベクター、たとえば哺乳類または昆虫発現ベクター中に組み込まれてもよい。
いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、限定なく、RSVサブタイプA(たとえば、配列番号33)からの野生型(WT)全長Fタンパク質をコードするヌクレオチド配列、またはRSVサブタイプB(たとえば、配列番号34)からの野生型(WT)全長Fタンパク質をコードするヌクレオチド配列、または目的の任意の特定の種の細胞における発現にコドン最適化されている、もしくは目的の任意の変異を含有するかかる配列の変異体を含めて、当技術分野で既知の任意の適したRSV Fポリペプチド、タンパク質もしくはタンパク質複合体配列、またはその任意の断片をコードする(またはこれをコードするヌクレオチド配列を含む、本質的にこれからなる、またはこれからなる)核酸配列に由来することができる。たとえば、いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、RSV F A型のFタンパク質をコードするが、ヒト(たとえば配列番号35)、ハムスター(たとえば配列番号36)、昆虫(たとえば配列番号37)、もしくはマウス細胞(たとえば配列番号38)における発現にコドン最適化されている、または任意の他の細胞型における発現に最適化されているヌクレオチド配列に由来することができる。同様に、いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、RSV F B型のFタンパク質をコードするが、ヒト(たとえば配列番号39)、ハムスター(たとえば配列番号40)、昆虫(たとえば配列番号41)、もしくはマウス細胞(たとえば配列番号42)における発現にコドン最適化されている、または任意の他の細胞型における発現に最適化されているヌクレオチド配列に由来することができる。同様に、いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、RSV F AまたはB型のFタンパク質をコードし、目的の任意の所与の種の細胞における発現にコドン最適化されていてもされていなくてもよく、また1つ以上の目的の他の変異を含むヌクレオチド配列に由来することができる。たとえば、いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体は、DS−CAV1(配列番号43)、DS(配列番号44)、および/またはCAV1(配列番号45)変異配列を含むヌクレオチド配列に由来することができる。配列番号43、44、および45において提供された3つの特定の配列は、ヒトコドン最適化全長RSV A型配列の文脈におけるDS、CAV1、およびDS−CAV1変異を含むが、かかる変異、または実際に、目的の任意の他の変異(本発明の「チロシンへの」変異の全てを含めて)は、目的の任意の種における発現に最適化されている、または目的の任意の変異を含む、またはRSV A型もしくはB型配列のある特定の部分のみ、たとえば、RSV F外部ドメインのみ(膜貫通および/または細胞質ドメインなし)をコードするヌクレオチド1〜1539のみを含む配列を含むが、これらに限定されない、任意の他の適したRSV A型またはB型配列の主鎖に等しく存在する。当業者は、ここで記載した様々なRSV Fポリペプチドおよびタンパク質をコードすることができるいろいろなヌクレオチド配列があり、全てのかかるヌクレオチド配列は、本発明の範囲内にあることが意図されていることを理解することになる。たとえば、いくつかの態様では、本発明のRSV Fタンパク質およびポリペプチドは、ここで示したもののいずれか(配列番号33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、および45を含めて)を含むが、これらに限定されない、RSV Fタンパク質をコードする任意の既知のヌクレオチド配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する、またはそのヌクレオチド1〜1539(外部ドメイン配列をコードする)と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する、または任意の既知のRSVグループ、サブグループ、ファミリー、サブファミリー、タイプ、サブタイプ、属、種、株、および/もしくはクレード、もしくはその任意の断片からのRSV Fタンパク質をコードするヌクレオチド配列と少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列に由来することができる。
さらに、当業者は、たとえば、変異されるべき特定のアミノ酸残基をコードするヌクレオチドコドンを位置づけ、必要に応じてそのコドンでヌクレオチドを変異させて、チロシンコードコドンをもたらすことによって、ここで記載した特定の「チロシンへの」変異の任意の1つ以上を含む核酸分子を容易に可視化するまたは作製することができる。
架橋結合
いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチドおよび/またはタンパク質は、集合して、望ましい立体構造的構造、たとえば前F立体構造を有するタンパク質複合体を構築し、その立体構造を安定化させるために架橋される。架橋され得るRSV Fタンパク質の特定の領域、およびかかる架橋結合を促進するように設計されている特定のRSV変異体の詳細は、本出願の他の節に記載されている。いくつかの態様では、架橋は、RSV融合前Fタンパク質の三次および/または四次構造を安定化させるために使用してもよい。いくつかの態様では、架橋結合は、分子内および/または分子間架橋結合であってもよい。いくつかの態様では、使用される架橋は、標的架橋である。いくつかの態様では、使用される架橋は、生理的条件下で安定である。いくつかの態様では、使用される架橋は、たとえば発現中におよび/または保管(たとえば高濃度のRSV融合前Fタンパク質を含む組成物の保管)中に、RSV融合前Fタンパク質の凝集体形成につながらない。いくつかの態様では、かかる架橋の導入は、免疫原、たとえばワクチン免疫原としての本発明のRSVポリペプチド、タンパク質およびタンパク質の有効性を増強してもよい。いくつかの態様では、かかる架橋の導入は、エピトープが特定の抗体によって認識され、抗体の産生を引き出し、かつ/または抗体結合時にB細胞受容体を活性化することができるように、RSV Fタンパク質内のエピトープ(たとえばφエピトープ)を安定化させてもよい。
いくつかの態様では、標的架橋結合を使用することができる。標的架橋は、RSV Fタンパク質またはタンパク質複合体内の特定の1つまたは複数の位置で形成するように作製され得るものである。いくつかの戦略を、RSV Fタンパク質またはポリペプチドにおける特定の部位、たとえばここで記載した特定の部位への架橋を標的にするために使用してもよい。本発明は、架橋した場合、その前F立体構造における、ならびに/または中和抗体に結合するもしくは中和抗体の産生を引き出す能力がある、かつ/もしくは動物における中和抗体応答を生じる能力がある立体構造におけるRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を安定化させることができるまたは安定化させてもよいRSV Fタンパク質内の残基対を提供する。標的架橋は、ある特定のアミノ酸側鎖の物理的および/または化学的特性を利用することによって、たとえば特定のアミノ酸配列もしくは三次元構造を認識する酵素反応を利用することによって、または折り畳みタンパク質もしくはタンパク質複合体における架橋を形成する能力を有する非天然アミノ酸を組み込むことによって、ここで特定した部位または位置の1つ以上で導入されてもよい。
架橋または修飾は、望ましい結果、たとえば安定化または前F立体構造を達成するために、RSV Fタンパク質またはポリペプチドの構造における特定の部位を標的としてもよい。本発明は、好ましくは架橋または修飾が融合前立体構造におけるRSV Fタンパク質またはポリペプチドを安定化させる、または融合前立体構造の増強された安定化を提供する、RSV Fタンパク質またはポリペプチドにおける任意の適した位置での1つ以上の架橋および/または他の安定化修飾の標的導入を企図する。本発明は、アミノ酸位置Y33、K77、N88、M97、A147、S150、S155、H159、N183、V185、V187、Y198、V220、E222、F223、K226、S255、Y286、K427およびV469、またはその任意の組合せ;残基対147/286、198/220、198/222、198/223、198/226、33/496、77/222、88/255、97/159、183/427、185/427、および187/427、またはその任意の組合せ;F1可動性N末端(残基137〜216)、α2(残基148〜160)、α3(残基163〜173)、β3(残基176〜182)、β4(残基186〜195)、α4(残基197〜211)、F1可動性C末端(残基461〜513)、β22(残基464〜471)、α9(残基474〜479)、β23(残基486〜491)、およびα10(493〜514)を含む領域または二次構造;ならびに約位置67から約位置87まで、約位置78から約位置98まで、約位置87から約位置107まで、約位置137から約位置157まで、約位置140から約位置160まで、約位置145から約位置165まで、約位置149から約位置169まで、約位置173から約位置193まで、約位置175から約位置195まで、約位置177から約位置197まで、約位置188から約位置208まで、約位置210から約位置230まで、約位置212から約位置232まで、約位置213から約位置233まで、約位置216から約位置236まで、約位置245から約位置265まで、約位置276から約位置296まで、約位置417から約位置437まで、および約位置459から約位置479までの残基を含むRSV Fタンパク質の他の領域を含むが、これらに限定されない、ジチロシン架橋結合のためのここで記載した任意のRSV Fタンパク質アミノ酸残基、残基対、二次構造または他の領域を、他の標的架橋もしくは結合または他の修飾の形成にも使用してもよいことを企図する。
タンパク質を分子内でおよび分子間で架橋する種々様々の方法は、異なる長さのスペーサーアームでの架橋を有するもの、ならびに精製のための蛍光および官能基を有するおよび有さないものを含めて、当技術分野で既知である。かかる方法は、ヘテロ二官能性架橋剤(たとえばスクシンイミジルアセチルチオアセテート(SATA)、trans−4−(マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、およびスクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP))、ホモ二官能性架橋剤(たとえばスクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、光反応性架橋剤(たとえば4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸、STPエステル、ナトリウム塩(ATFB、STPエステル)、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸、スクシンイミジルエステル(ATFB、SE)、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアミン、塩酸塩、ベンゾフェノン−4−イソチオシアネート、ベンゾフェノン−4−マレイミド、4−ベンゾイル安息香酸、スクシンイミジルエステル、N−((2−ピリジルジチオ)エチル)−4−アジドサリチルアミド(PEAS;AET)、チオール反応性架橋剤(たとえばマレイミドおよびヨードアセトアミド)、アミン反応性架橋剤(たとえばグルタルアルデヒド、ビス(イミドエステル)、ビス(スクシンイミジルエステル)、ジイソシアネートおよび二塩基酸塩化物)の使用を含むが、これらに限定されない。チオール基は、アミン基と比較すると、大多数のタンパク質において高反応性であり比較的まれであるので、チオール反応性架橋結合をいくつかの態様において使用してもよい。チオール基が欠損しているまたはRSV融合前Fタンパク質の構造における適切な部位に存在しない場合、それらを、いくつかのチオレーション方法の1つを使用して導入することができる。たとえば、スクシンイミジルtrans−4−(マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレートを使用して、アミン部位でチオール反応性基を導入することができる。
いくつかの酸化的架橋、たとえばジスルフィド結合(自発的に形成し、pHおよびレドックス感受性である)、およびジチロシン結合(生理的条件下で高度に安定であり、不可逆的である)が既知である。
いくつかの態様では、架橋は、RSV融合前Fタンパク質の三次構造を安定化させる。いくつかの態様では、架橋は、RSV融合前Fタンパク質の四次構造を安定化させる。いくつかの態様では、架橋は、RSV融合前Fタンパク質の三次と四次構造の両方を安定化させる。
いくつかの態様では、本発明のRSV Fタンパク質またはポリペプチドは、熱安定性である架橋を有する。いくつかの態様では、本発明のRSV Fタンパク質またはポリペプチドは、有毒ではない架橋を有する。いくつかの態様では、本発明のRSV Fタンパク質またはポリペプチドは、標的架橋、または非標的架橋、または可逆的架橋、または不可逆的架橋、またはホモ二官能性架橋剤の使用によって形成される架橋、またはヘテロ二官能性架橋剤の使用によって形成される架橋、またはアミン基と反応する試薬の使用によって形成される架橋、またはチオール基と反応する試薬の使用によって形成される架橋、または光反応性である試薬の使用によって形成される架橋、またはアミノ酸残基間に形成される架橋、またはタンパク質もしくはタンパク質複合体の構造中に組み込まれた変異アミノ酸残基間に形成された架橋、または酸化的架橋、またはジチロシン結合、またはグルタルアルデヒド架橋、またはそれらの任意の組合せである架橋を有する。いくつかの態様では、本発明のRSV Fタンパク質またはポリペプチドは、グルタルアルデヒド架橋を有さない。
いくつかの態様では、本発明のRSV Fタンパク質またはポリペプチドは、いかなる人工的に導入されたジスルフィド結合も有さない、またはそれがかかるジスルフィド結合を有する場合、さらに人工的に導入された架橋も有する。いくつかの態様では、本発明のRSV Fタンパク質またはポリペプチドは、いかなる人工的に導入されたジスルフィド結合も有さないが、自然発生のジスルフィド結合を有してもよい。システイン側鎖が点変異によって操作されている場合、ジスルフィド結合は、人工的に導入することができる。しかしながら、ジスルフィド結合は、pH感受性であり、ある特定のレドックス条件下で溶解されることが既知であり、したがって、たとえばin vivoでの免疫原として使用される、ジスルフィド架橋で操作されたタンパク質および/またはタンパク質複合体の予防的および/または治療的有用性は、損なわれ得る。さらに、望まれないジスルフィド結合が凝集体形成を媒介する遊離のスルフヒドリル基を有するタンパク質間にしばしば形成し(たとえば、Harris RJet al. 2004,Commercial manufacturing scale formulation and analytical characterization of therapeutic recombinant antibodies.Drug Dev Res 61(3):137−154;Costantino&Pikal(Eds.),2004.Lyophilization of Biopharmaceuticals, editors Costantino&Pekal.Lyophilization of Biopharmaceuticals.Series:Biotechnology:Pharmaceutical Aspects II,see pages 453−454;Tracyet al.,2002、米国特許第6,465,425号を参照されたい)、これは、HIV gp120およびgp41での問題としても報告されている(Jeffset al. 2004.Expression and characterization of recombinant oligomeric envelope glycoproteins derived from primary isolates of HIV−1.Vaccine 22:1032−1046;Schulkeet al.,2002.Oligomeric and conformational properties of a proteolytically mature,disulfide−stabilized human immunodeficiency virus type 1 gp140 envelope glycoprotein. J Virol 76:7760−7776)。したがって、多くの態様では、ジスルフィド結合が使用されない、または架橋結合の唯一の方法として使用されないことが好ましい。
RSV融合前Fタンパク質の構造および/または免疫原性が架橋によって損なわれるまたは改変される場合、その全体構造および機能を維持することは、架橋結合反応に関するアミノ酸側鎖の有効性を制御することによってまたはさらなる架橋もしくは他の安定化修飾を導入することによって達成され得る。たとえば、DT架橋結合の場合、反応に利用できるが、複合体の構造の歪みにつながり、RSV Fタンパク質の免疫原性/抗原性を損なうチロシル側鎖は、かかる残基を別のアミノ酸、たとえば、フェニルアラニンに変異させることによって除去することができる。さらに、点変異は、結合の形成が最も有益な結果を引き起こすように、アミノ酸側鎖が架橋剤とまたは互いに反応することになる位置で導入されてもよい。これらの位置も、ここで記載したように同定されてもよい。
選択された残基に反応性側鎖が既に存在していない場合、反応性側鎖が存在し、反応に利用可能であるように、たとえばかかる点変異をその発現を方向付ける核酸のcDNA中に導入するための分子生物学的方法を使用して、点変異が導入されてもよい。
使用してもよい架橋は、アミンおよび/またはチオール基と反応するホモおよびヘテロ二官能性架橋剤、光反応性架橋試薬の使用から生じる可逆的架橋、タンパク質またはタンパク質複合体の構造中に組み込まれた非古典的アミノ酸間に形成してもよい任意の架橋、任意の酸化的架橋、たとえば、これらに限定されないが、ジチロシン架橋/結合、ヘテロ二官能性架橋剤(たとえばスクシンイミジルアセチルチオアセテート(SATA)、trans−4−(マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、およびスクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP))、ホモ二官能性架橋剤(たとえばスクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、光反応性架橋剤(たとえば4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸、STPエステル、ナトリウム塩(ATFB、STPエステル)、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸、スクシンイミジルエステル(ATFB、SE)、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアミン、塩酸塩、ベンゾフェノン−4−イソチオシアネート、ベンゾフェノン−4−マレイミド、4−ベンゾイル安息香酸、スクシンイミジルエステル、N−((2−ピリジルジチオ)エチル)−4−アジドサリシルアミド(PEAS;AET)、チオール反応性架橋剤(たとえばマレイミドおよびヨードアセトアミド)、アミン反応性架橋剤(たとえばグルタルアルデヒド、ビス(イミドエステル)、ビス(スクシンイミジルエステル)、ジイソシアネートおよび二塩基酸塩化物)を含むが、これらに限定されない。
本発明は、タンパク質間相互作用および/または望ましいタンパク質もしくはペプチド立体構造、たとえばRSV Fタンパク質の融合前立体構造を安定化させるための「架橋」としての標的非共有結合性チロシン−スタッキング相互作用の導入も企図する。架橋は、タンパク質もしくはタンパク質複合体内の導入された/操作されたチロシンおよび内在性チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、もしくはトリプトファンの芳香族側鎖間の、またはタンパク質もしくはタンパク質複合体内の導入された/操作されたチロシンおよび第2の導入された/操作されたチロシンの芳香族側鎖間の、T型、サンドイッチ、または平行置換piスタッキング相互作用(parallel displaced pi stacking interaction)を含むが、これらに限定されない標的piスタッキング相互作用を含む。
本出願の文脈において使用される不可逆的架橋は、生理学的に関連がある条件下で著しく溶解されないものを含む。使用される架橋の型は、発現中にまたは本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体が高濃度で保管される場合に、凝集体形成につながらないことが好ましい。ジスルフィド結合は、不可逆的架橋ではない。むしろ、それらは、可逆的架橋であり、生理学的に関連がある条件下で溶解しても、かつ/あるいはタンパク質発現および/もしくは産生中にまたは高濃度で保管された場合に凝集体形成をもたらしてもよい。
いくつかの態様では、架橋は、望ましい立体構造的安定化および/または望ましい免疫原性特性(たとえば前F立体構造を維持するかつ/または広域中和抗体に結合する能力)を達成するために、ここで記載したRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体の特定の領域を標的としてもよい。あるいは、ここで特定した部位で架橋を有するタンパク質は、たとえば化学的、物理的、および/または機能的特徴に基づいて、望ましい修飾を有するまたは有さない架橋したおよび架橋していないタンパク質の混合物から単離されてもよい。かかる特徴は、たとえば、三量体形成、前F立体構造の存在、および/または任意の望ましい抗原性、免疫原性、または生化学的特徴を含んでもよい。
あるいは、いくつかの態様では、架橋は、標的とされなくてもよく、望ましい架橋または特性を有するタンパク質は、非標的架橋結合系を使用して作製される修飾および非修飾タンパク質の混合物から単離されてもよい。
望ましい架橋を有するRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体が架橋したおよび架橋していないタンパク質の混合物から単離されるべき態様では、かかる単離または分離は、分子量、分子容、クロマトグラフ的特性、電気泳動における移動度、抗原性および生化学的特徴、蛍光特徴、溶解性、抗体への結合、構造的特徴、免疫学的特徴、または任意の他の適した特徴を含むが、これらに限定されない1つ以上の特徴に基づいて行われてもよい。
ここで記載した特定の架橋結合位置に加えて、さらなる架橋を作製することができる、たとえば反応性側鎖がRSV Fタンパク質/複合体上のどこか他で反応性側鎖との結合を形成することができるRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体内のさらなる位置を同定することができる。いくつかの態様では、たとえば、タンパク質、ポリペプチドまたはタンパク質複合体の免疫原性/抗原性を維持するまたは改善するために、かかるさらなる位置を選択することができる。いくつかの態様では、架橋されるかかるさらなる位置は、対で選択することができる。
ジチロシン(DT)架橋結合
いくつかの態様では、本発明は、ジチロシン(DT)架橋を含むRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体、ならびにかかるDT架橋RSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を作製する方法を提供する。
ジチロシン架橋結合は、タンパク質またはタンパク質複合体中に1つ以上の共有結合の炭素−炭素結合を導入する。これは、それらの構造的および機能的完全性を維持しながら、ポリペプチド内および/または間のジチロシン結合の導入によってタンパク質、タンパク質複合体、および立体構造を安定化させるための方法を提供する(その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Marshallet al.、米国特許第7,037,894号および第7,445,912号を参照されたい)。最小限に改変する、長さゼロのDT架橋は、生理的条件下で加水分解されず、タンパク質の構造的完全性を維持することが液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)によって実証された。ジチロシン架橋は、それらの特定の特徴を利用するように進化したタンパク質の状況において(たとえばElvin CMet al. 2005,Nature 437:999−1002;Tenovuo J&Paunio K 1979,Arch Oral Biol.;24(8):591−4)と非特異的タンパク質酸化の結果として(Giuliviet al. 2003,Amino Acids 25(3−4):227−32)の両方で、それらがin vivoで天然に形成するので、およびそれらが我々の最も一般的な食物のいくつかに多量に存在する:DT結合がたとえば混合および焼きの間にパン生地においてコムギグルテンの構造−グルテニンサブユニットを含む四次タンパク質構造−を形成するので(Tilleyet al. 2001,Agric. Food Chem 49,2627)、安全であることが既知である。ジチロシン結合は、in vitroで自発的に形成しない。むしろ、酵素的架橋反応は、タンパク質構造および機能を保存するための最適化された条件下で実行される。したがって、非特異的結合/凝集は、生じず(ジスルフィド結合とは異なり)、したがって、DT安定化免疫原の大規模な製造は、経済的により実行可能であり得る。
チロシル側鎖は、多くのレドックス酵素に存在し、酵素特異的反応の触媒作用は、長命で、比較的低い反応性を有するチロシルラジカルをしばしば伴う。最適化された条件下で、ラジカル形成は、チロシル側鎖に特異的である。極めて近接して、チロシル側鎖は、ラジカルカップリングを受け、共有結合性の炭素−炭素結合を形成する。反応しないチロシルラジカルは、非ラジカル化チロシル側鎖に戻る(Malencik&Anderson,2003.Di−tyrosine as a product of oxidative stress and fluorescent probe.Amino Acids 25:233−247)。したがって、チロシル側鎖は、単一の折り畳みポリペプチド鎖内または複合体内の密接に相互作用するタンパク質ドメイン上のいずれかに、DT結合を形成するために極めて近接して位置していなければならない。およそ5〜8ÅのCα−Cα分離が、結合形成に必須であるので(Brownet al.,1998.Determining protein−protein interactions by oxidative cross−linking of a glycine−glycine−histidine fusion protein.Biochemistry 37,4397−4406;Marshallet al. 2006,米国特許第7,037,894号)、および原子がこれらの結合の形成において付加されないので、生じる「ステープル」は、「長さがゼロ」であり、タンパク質構造に非破壊的である。
架橋されるチロシン残基は、架橋されるタンパク質の一次構造に天然に存在してもよいまたは制御された点変異によって付加されてもよい。DT結合を形成するために、チロシル側鎖を有するタンパク質をDT結合の形成につながる反応条件に供することができる。DT結合形成反応が酸化的架橋結合反応であるので、かかる条件は、酸化的反応条件である、または酸化的反応条件になる。いくつかの態様では、DT架橋結合反応条件は、さもなければ修飾されていない、または検出可能な程度に修飾されていないタンパク質を生じる。かかる条件は、H2O2の形成を触媒する酵素、たとえばペルオキシダーゼの使用によって取得されてもよい。DT結合形成は、約320nmの励起波長、および約400nmの波長で測定された蛍光での分光光度法によってモニターされてもよい(たとえば、図34を参照されたい)一方、チロシル蛍光の喪失は、標準的な手順によってもモニターされる。チロシル蛍光の喪失がDT結合形成でもはや化学量論的ではない場合、反応は、当業者に既知の任意の方法によって、たとえば、還元剤の付加およびその後の試料の冷却(氷上)または凍結によって停止してもよい。DT架橋結合を行う方法のさらなる詳細は、当技術分野で既知であり、たとえば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Marshallet al. 2006,米国特許第7,037,894号に報告されている。
タンパク質操作におけるジチロシン架橋結合の主要な利点は、(i)架橋結合のための特定の残基を標的とする能力(タンパク質および複合体の一次、二次、三次、および/または四次構造に基づいて)、(ii)最小の構造的修飾、(iii)反応の特異性(チロシンは、特定の架橋結合条件下で架橋を形成することが既知である唯一のアミノ酸である);(iv)連結の安定性、(v)架橋の長さがゼロ(原子が付加されない)、および(vi)架橋結合化学的性質の拡張可能性を含む。
いくつかの態様では、標的DT架橋は、ここで列挙したRSV Fタンパク質における特定の部位の1つ以上で導入されてもよい。他の態様では、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体内の架橋を作製することができるさらなる位置を同定することができる。いくつかの態様では、ジチロシン結合または架橋は、DT結合がたとえばそれらの近接近によって形成することになる、または形成することが期待されている、RSV Fタンパク質またはポリペプチドの構造内の特定の残基対を標的とする。いくつかの態様では、チロシル側鎖は、連結されるアミノ酸残基に既に存在している。いくつかの場合では、自然発生のチロシン残基は、ジチロシン結合形成に必要な対合チロシン残基の一方または両方のいずれかを構成してもよい。しかしながら、他の場合では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、1つ以上のチロシン残基を付加するように、またはチロシン残基を1つ以上の非チロシン残基で置換するように変異または操作されている。かかる変異は、ここで「チロシンへの」変異と称され、ジチロシン架橋/結合を形成することが望ましい部位で導入することができる。いくつかの態様では、本発明は、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体をコードする核酸配列におけるチロシンへの点変異を導入することによって望ましい架橋結合位置でチロシル側鎖が導入された、変異RSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を提供する。あるいは、いくつかの態様では、RSVタンパク質、ポリペプチドもしくはタンパク質複合体、またはその部分は、望ましい架橋結合位置でチロシル側鎖を有するチロシン残基またはアミノ酸を含むように合成されてもよい。逆に、いくつかの態様では、本発明は、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体をコードする核酸配列におけるチロシンからの点変異を導入することによってチロシル側鎖が望ましくない架橋結合位置で除去されている、変異RSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を提供する、またはRSV Fポリペプチド、タンパク質、もしくはタンパク質複合体は、架橋結合が望まれない位置でチロシル側鎖を有するチロシン残基またはアミノ酸を除外するように合成されていてもよい。たとえば、チロシル側鎖の少なくとも1つは、別の側鎖、たとえばフェニルアラニン側鎖で置きかえることができる(たとえば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Marshall CPet al. 米国特許出願第09/837,235号を参照されたい)。したがって、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、「チロシンへの」または「チロシンからの」点変異を含んでもよい。かかる変異は、当技術分野で既知の任意の適した変異誘発方法を使用して、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体をコードする核酸配列を改変することによって作製することができる。あるいは、変異RSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、当技術分野で既知の任意の他の適した方法によって合成、精製かつ/または産生されてもよい。
いくつかの態様では、本発明は、架橋がその融合前立体構造におけるRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を安定化させることになるまたは安定化させてもよい、RSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体における任意の適した位置での1つ以上のジチロシン架橋の標的導入を企図する。かかる安定化は、たとえば、RSV Fタンパク質F1およびF2ポリペプチド間または内の相互作用を安定化させる架橋を導入することによってかつ/またはRSV Fタンパク質プロトマー間または内の相互作用を安定化させる架橋を導入することによって、達成されてもよい。いくつかの態様では、RSV Fタンパク質のF1ポリペプチドは、同じプロトマーのF2ポリペプチドと架橋している(分子間/プロトマー内結合)。いくつかの態様では、F1ポリペプチドは、分子内架橋している(たとえば、架橋の両方のチロシンは、同じF1ポリペプチド内に位置している)。いくつかの態様では、F2ポリペプチドは、分子内架橋している(たとえば、架橋の両方のチロシンは、同じF1ポリペプチド内に位置している)。いくつかの態様では、RSV融合前Fタンパク質のF1ポリペプチドは、隣接するプロトマーのF1ポリペプチドと架橋している(プロトマー間結合)。いくつかの態様では、RSV融合前Fタンパク質のF1ポリペプチドは、隣接するプロトマーのF2ポリペプチドと架橋している(プロトマー間結合)。
RSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を作製するおよび分析すること
いくつかの態様では、本発明は、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を作製するための方法を提供する。本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、当技術分野で既知の任意の適した手段によって作製することができる。いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、組換え手段によって作製することができる。いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体、またはその任意の部分は、化学的合成手段によって作製することができる。たとえば、ここで記載したタンパク質またはタンパク質複合体の部分に相当するペプチドは、ペプチドシンセサイザーの使用によって合成することができる。
組換え生成方法
本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体が組換え手段によって作製される態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体をコードする核酸は、哺乳類細胞および昆虫細胞(たとえば、バキュロウイルス発現系を使用した、SF9またはHi5細胞)を含むが、これらに限定されない任意の適した細胞型において発現され得る。核酸分子からポリペプチドおよびタンパク質を発現させるための方法は、通例であり、当技術分野で既知であり、当技術分野で既知の任意の適した方法、ベクター、系、および細胞型を使用することができる。たとえば、典型的に、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体をコードする核酸配列は、適したプロモーターを含有する適した発現構築物中に配置されることになり、次いでこれは、発現のための細胞に送達されることになる。
キメラ/融合タンパク質およびオリゴマー形成ドメイン
いくつかの態様では、たとえばここで記載したRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体の分析および/または単離および/または精製を促進するためにキメラタンパク質/融合タンパク質を生成するために、ここで記載したRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体にキメラドメインを付加することが望ましいことがある。いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、リーダー配列、前駆体ポリペプチド配列、分泌シグナル、局在化シグナル、エピトープタグなどを含んでもよい。使用することができるエピトープタグは、FLAGタグ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)タグ、緑色蛍光タンパク質(GFP)タグ、赤血球凝集素A(HA)タグ、ヒスチジン(His)タグ、ルシフェラーゼタグ、マルトース結合性タンパク質(MBP)タグ、c−Mycタグ、タンパク質Aタグ、タンパク質Gタグ、ストレプトアビジン(strep)タグなどを含むが、これらに限定されない。
いくつかの態様では、ここで記載したRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体の集合を促進するために、および/または前F立体構造の安定化を促進するために、ならびに/またはRSV Fポリペプチド、タンパク質および/もしくはタンパク質複合体の他の構造的特徴を安定化させるために、オリゴマー形成ドメインを付加することが望ましいことがある。いくつかの態様では、オリゴマー形成ドメインは、T4フォールドンモチーフを含むが、これに限定されない三量体形成モチーフである。Habazettlet al.,2009(Habazettlet al.,2009.NMR Structure of a Monomeric Intermediate on the Evolutionarily Optimized Assembly Pathway of a Small Trimerization Domain.J.Mol.Biol.pp.null)、Kammereret al.,2005(Kammereret al.,2005.A conserved trimerization motif controls the topology of short coiled coils.Proc Natl Acad Sci USA 102(39):13891−13896)、Innamoratiet al.,2006(Innamoratiet al.,2006.An intracellular role for the C1q−globular domain.Cell signal 18(6):761−770)、およびSchellinget al.,2007(Schellinget al.,2007.The reovirus σ−1 aspartic acid sandwich:A trimerization motif poised for conformational change.Biol Chem 282(15):11582−11589)に報告されているものを含むが、これらに限定されないこれらの目的に使用することができる天然タンパク質における種々様々の三量体形成ドメインがある。三量体タンパク質複合体を安定化させることは、GCN4およびT4フィブリニチン(fibrinitin)モチーフを使用して達成することもできる(Panceraet al.,2005.Soluble Mimetics of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Viral Spikes Produced by Replacement of the Native Trimerization Domain with a Heterologous Trimerization Motif:Characterization and Ligand Binding Analysis.J Virol79(15):9954−9969;Gutheet al.,2004.Very fast folding and association of a trimerization domain from bacteriophage T4 fibritin.J.Mol.Biol.v337 pp.905−15;Papanikolopoulouet al.,2008.Creation of hybrid nanorods from sequences of natural trimeric fibrous proteins using the fibritin trimerization motif.Methods Mol Biol 474:15−33)。本発明のタンパク質のタンパク質間相互作用を安定化させるために、異種性のオリゴマー形成モチーフを当業者に既知の任意の組換え方法によって導入してもよい。
キメラRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、当業者に既知の任意の方法によって作製することができ、たとえば、別のタンパク質または他のタンパク質ドメインもしくはモチーフのアミノ酸配列へのペプチド結合を介してそのアミノまたはカルボキシ末端で連結している、1つまたはいくつかの本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/もしくはタンパク質複合体、ならびに/または任意の断片、誘導体、もしくはそのアナログ(たとえば、少なくとも本発明のポリペプチド、タンパク質、もしくはタンパク質複合体のドメイン、またはその少なくとも6、好ましくは少なくとも10アミノ酸からなる)を含んでもよい。いくつかの態様では、かかるキメラタンパク質は、キメラタンパク質(たとえば第2のコード配列にインフレームで連結されている第1のコード配列を含む)をコードする核酸の組換え発現;望ましいアミノ酸配列をコードする適切な核酸配列を互いに適切なコードフレームにおいてライゲーションすること、およびキメラ産物を発現させることを含むが、これらに限定されない当業者に既知の任意の方法によって生成することができる。
翻訳後修飾
いくつかの態様では、ここで記載したRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、翻訳後修飾を付加することまたは除去することによって、化学的修飾または付加物を付加することまたは除去することによって、および/または当業者に既知の任意の他の修飾を導入することによって改変されてもよい。たとえば、グリコシル化(または脱グリコシル化)、アセチル化(または脱アセチル化)、リン酸化(または脱リン酸化)、アミド化(または脱アミド)、ペグ化、既知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断によって、または当技術分野で既知の任意の他の手段によって翻訳もしくは合成中または後に修飾されるRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、本発明の範囲内に含まれる。たとえば、いくつかの態様では、RSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、ツニカマイシンなどの存在下でのブロモシアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4、アセチル化、ホルミル化、酸化、還元、代謝的合成による化学的切断に供されてもよい。いくつかの態様では、かかる翻訳後修飾を使用して、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を、より免疫原性、より安定、かつ/または中和および広域中和抗体に結合する能力がよりあるもしくは中和および広域中和抗体の産生を引き出す能力がよりある状態にすることができる。
その前F立体構造におけるRSV Fを取得すること
いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチドおよび/またはタンパク質は、集合して望ましい立体構造的構造、たとえば前F立体構造を有するタンパク質複合体を構築し、その立体構造を安定化させるために架橋される。本出願において他で記載したように、RSV Fタンパク質の前F立体構造は、3つのプロトマーから形成された三量体を含む。いくつかの態様では、酵素的架橋結合反応の前および/または間に、RSV Fタンパク質は、たとえば架橋結合が行われる間に、前F立体構造において取得されてもよい(かつ/または維持されてもよい)。いくつかの態様では、RSV Fタンパク質は、RSV F分子の大部分または実質的に全てが前F立体構造において存在するように、産生かつ/または単離されてもよい。いくつかの態様では、前F立体構造におけるRSV F分子は、前F立体構造にあるいくつかおよび他の立体構造にあるいくつかを含むRSV Fタンパク質分子の混合された集団から分離されてもよい。いくつかの態様では、RSV Fタンパク質は、細胞において発現され(たとえばその膜結合性または可溶性型として)、自発的に集合してその正常な前F立体構造を構築する。いくつかの態様では、さらなる安定化は、その前F型におけるRSV Fタンパク質を保持するために必要ではなくてもよい。いくつかの態様では、発現されたかつ集合した/折り畳まれたRSV Fタンパク質は、前F立体構造の形成および/または維持を支持する特定の条件下でまたは特定の組成物において保持されてもよい。たとえば、いくつかの態様では、RSV融合前Fタンパク質は、それとの接触がさもなければ後F立体構造へのスイッチをトリガーする細胞の非存在下で維持されてもよい。RSV融合前Fタンパク質は、標準的なタンパク質精製方法、たとえばイオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、および/またはアフィニティークロマトグラフィー方法を含むが、これらに限定されない当技術分野で既知の任意の適した方法を使用して、前F立体構造において取得かつ/または単離かつ/または維持されてもよい。いくつかの態様では、RSV融合前Fタンパク質は、抗体、小分子、ペプチド、および/またはペプチド模倣体を含むが、これらに限定されない、RSV Fタンパク質に結合し、その前F立体構造においてそれを安定化させる分子の存在下で発現されても、これと共発現されても、またはこれと接触させられてもよい。融合前RSV Fタンパク質に結合する抗体の非限定的な例は、5C4、AM22、およびD25抗体を含む(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、McLellanet al.(2013) Science 342:592−598を参照されたい)。いくつかの態様では、RSV Fタンパク質は、タンパク質が存在する培地/緩衝液のイオン強度を制御することによって(たとえば高または低イオン強度培地を使用することによって)、その前F立体構造において取得、単離、または維持されてもよい。いくつかの態様では、RSV Fタンパク質は、前F立体構造の保存を支持する1つ以上の温度で取得、単離、または維持されてもよい。いくつかの態様では、RSV Fタンパク質は、前F立体構造が損なわれる程度を減らす期間にわたって、取得、単離、または維持されてもよい。
いくつかの態様では、分析が、望ましい立体構造、たとえば前F立体構造がRSV Fタンパク質において形成されたかつ/または維持されていることを確認するために行われてもよい。かかる分析は、架橋結合の前に、架橋結合プロセス中に、架橋結合プロセス後に、またはかかる段階の任意の組合せで行われてもよい。かかる分析は、機能分析、結晶学的分析などを含めた、タンパク質またはタンパク質複合体の三次元構造を評価するための当技術分野で既知の任意の適した方法を含んでもよい。いくつかの態様では、かかる分析は、5C4、AM22、およびD25抗体を含むが、これらに限定されない、ここで他で記載したいくつかの抗体、たとえば前F立体構造に特異的なものおよび/またはφ部位に結合することが既知であるものへのRSVタンパク質の結合を評価することを含んでもよい。
タンパク質精製
いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を作製するための方法は、製造プロセスにおける1つ以上の工程の前、中、または後にRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を精製することを含んでもよい。たとえば、いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、製造工程の全ての完了後に精製されてもよい。いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、架橋結合プロセスを開始する前にまたはプロセスにおける中間方法工程の1つ以上の後に、たとえば、RSV Fポリペプチドまたはタンパク質の発現後に、タンパク質複合体の集合後に、その前F立体構造におけるRSV Fタンパク質を取得した後に、または架橋結合反応中もしくはこれを行った後に精製されてもよい。本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、当技術分野で既知の任意の適した方法を使用して、単離または精製されてもよい。かかる方法は、クロマトグラフィー(たとえばイオン交換、親和性、および/またはサイジングカラムクロマトグラフィー)、硫安塩析、遠心分離、差次的溶解性、またはタンパク質の精製のための当業者に既知の任意の他の技法によるものを含むが、これらに限定されない。特定の態様では、十分に架橋されなかったもの、または前F立体構造が十分に安定化されなかったものから、本発明の望ましいインフルエンザRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を分離することが必要であってもよい。これは、当技術分野で既知の任意の適した系を使用して行うことができる。たとえば、前F立体構造におけるRSVタンパク質は、前Fまたは後F特異的抗体を使用する抗体に基づく分離方法を使用して、前F立体構造ではないものから単離することができる。本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、それらを作製するために使用した任意の供給源から精製されてもよい。たとえば、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、昆虫、原核、真核、単細胞、多細胞、動物、植物、真菌、脊椎動物、哺乳類、ヒト、ブタ、ウシ、ネコ、ウマ、イヌ、トリ、もしくは組織培養細胞、または任意の他の供給源を含めた供給源から精製されてもよい。純度の程度は、変動してもよいが、様々な態様では、本発明の精製されたRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、それらが最終組成物における総タンパク質の約10%、20%、50%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または99.9%より多くを構成する形で提供される。いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、クロマトグラフィー、グリセロール勾配、アフィニティークロマトグラフィー、遠心分離、イオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーを含むが、これらに限定されない標準的な方法によって、またはタンパク質の精製のための当技術分野で既知の任意の他の標準的な技法によって、他のタンパク質、または任意の他の望ましくない産物(たとえば非架橋または非前F RSV F)から単離および精製されてもよい。単離されるRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、高または低イオン性培地において発現されても、または高もしくは低イオン性緩衝液もしくは溶液において単離されてもよい。本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、望ましい立体構造の保存を支持する1つ以上の温度でも単離されてもよい。それらは、調製物が望ましい立体構造を失う程度を減らす期間にわたっても単離されてもよい。タンパク質の調製物が1つ以上の望ましい立体構造(たとえば前F立体構造および/または中和抗体への結合、もしくは他の望ましい特性を支持する立体構造)を保持する程度は、たとえば、生化学的、生物物理学的、免疫的、およびウイルス学的分析を含むが、これらに限定されない当技術分野で既知の任意の適した方法によってアッセイされてもよい。かかるアッセイは、たとえば、免疫沈降法、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、または酵素免疫スポット(ELISPOT)アッセイ、結晶学的分析(抗体での共結晶化を含めた)、遠心沈降、分析超遠心分離法、動的光散乱法(DLS)、電子顕微鏡法(EM)、クライオEM断層撮影法、熱量測定法、表面プラズモン共鳴(SPR)、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、円二色性分析、およびX線小角散乱分析、中和アッセイ、抗体依存性細胞傷害アッセイ、および/またはin vivoウイルス学的負荷研究を含むが、これらに限定されない。
本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体の収量は、当技術分野で既知の任意の手段によって、たとえば、出発材料の量と比較して、または生成方法の任意の先行する工程に存在する材料の量と比較して最終の操作されたタンパク質(たとえば架橋された前F RSV)の量を比較することによって、決定することができる。タンパク質濃度は、標準的な手順、たとえば、BradfordまたはLowrieタンパク質アッセイによって決定することができる。Bradfordアッセイは、還元剤および変性剤に適合する(Bradford,M,1976.Anal.Biochem.72:248)。Lowryアッセイは、界面活性剤とのより良い適合性を有し、反応は、タンパク質濃度および読み取りに関してより線形である(Lowry,O J,1951.Biol.Chem.193:265)。
例示的な作製方法
いくつかの態様では、本発明は、その融合前立体構造において安定化されたRSV Fタンパク質を生成するための方法であって、(a)その前F立体構造におけるRSV Fタンパク質を取得すること、(b)1つ以上の架橋の導入が前F立体構造を安定化させる、RSV融合前Fタンパク質の三次および/または四次構造における1つ以上の領域を同定すること、および(c)工程(b)において同定された領域の1つ以上でRSV融合前Fタンパク質中に1つ以上の架橋を導入して、その融合前立体構造においてロックされた操作されたRSV Fタンパク質を形成することを含む方法を提供する。いくつかの態様では、工程(b)において同定される領域は、ここで記載した特定の領域または特定のアミノ酸残基の1つ以上を含む。いくつかの態様では、架橋は、標的架橋である。いくつかの態様では、架橋は、標的DT架橋である。いくつかの態様では、架橋は、生理的条件下で安定である。いくつかの態様では、その融合前立体構造において安定化された操作されたRSV Fタンパク質は、ワクチン免疫原として有用である。いくつかの態様では、その融合前立体構造においてロックされた操作されたRSV Fタンパク質は、以下の特性の1つ以上を有する:(i)そのように操作されていないRSV Fタンパク質と比較して(すなわち架橋の導入を有さないまたは架橋の導入前のRSV Fタンパク質と比較して)、中和抗体に結合する増強された能力、(ii)そのように操作されていないRSV Fタンパク質と比較して、広域中和抗体に結合する増強された能力、(iii)そのように操作されていないRSV Fタンパク質と比較して、B細胞受容体に結合し、これを活性化する増強された能力、(iv)そのように操作されていないRSV Fタンパク質と比較して、動物における抗体応答を引き出す増強された能力、(v)そのように操作されていないRSV Fタンパク質と比較して、動物における保護抗体応答を引き出す増強された能力、(vi)そのように操作されていないRSV Fタンパク質と比較して、動物における中和抗体の産生を引き出す増強された能力、(vii)そのように操作されていないRSV Fタンパク質と比較して、動物における広域中和抗体の産生を引き出す増強された能力、(viii)そのように操作されていないRSV Fタンパク質と比較して、動物における保護免疫応答を引き出す増強された能力、および(ix)そのように操作されていないRSV Fタンパク質と比較して、動物における4要素中和エピトープを認識する抗体に結合し、この産生を引き出す増強された能力。いくつかの態様では、ここで記載したその融合前立体構造において安定化されたRSV Fタンパク質を生成するための方法は、その融合前立体構造において安定化された操作されたRSV Fタンパク質が上記に列挙した特性の1つ以上を有するかどうかを決定するためのアッセイを行うことも含む。
RSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体の特性
いくつかの態様では、特にここで記載したように架橋されたものを含めた、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、ある特定の構造的、物理的、機能的、および/または生物学的特性を有する。かかる特性は、以下のものの1つ以上、または以下のものの任意の組合せを含んでもよい:前F立体構造の存在、RSV前F立体構造の安定性;RSV前F立体構造の改善された安定性(架橋されていないRSV Fタンパク質と比較して);RSV前F立体構造の改善された半減期(架橋されていないRSV Fタンパク質と比較して);改善された熱安定性(架橋されていないRSV Fタンパク質と比較して);延長された有効期間(架橋されていないRSV Fタンパク質と比較して);対象の身体内での延長された半減期(架橋されていないRSV Fタンパク質と比較して);凝集体を形成することなく溶液中で保管される能力(溶液中で高濃度で存在する場合を含めて);溶液中での減少した凝集(架橋されていないRSV Fタンパク質と比較して);抗体への結合;中和抗体への結合;広域中和抗体への結合;前F特異的抗体への結合;部位φを認識する抗体への結合;立体構造的に特異的な抗体への結合;準安定性エピトープを認識する抗体への結合;D25、AM22および5C4からなる群から選択される抗体への結合(その抗体は、そのそれぞれの内容がその全体が参照により本明細書に組み込まれる、McLellanet al.,2013,Science,340,p.1113;Kwakkenboset al.,2010,Nature Medicine,16,p.123;Spits&Beaumont,米国特許出願第12/600,950号;Beaumont,Bakker&Yasuda,米国特許出願第12/898,325号において報告されている);パリビズマブ(シナジス)への結合;中和抗体101Fへの結合;B細胞受容体への結合;B細胞受容体の活性化;動物における抗体応答を引き出すこと;動物における保護抗体応答を引き出すこと;動物における中和抗体の産生を引き出すこと;動物における広域中和抗体の産生を引き出すこと;動物における4要素中和エピトープ(QNE)を認識する抗体の産生を引き出すこと;動物における保護免疫応答を引き出すこと;および/または動物における体液性免疫応答を引き出すこと。抗体分子への結合の場合、いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、高特異性でおよび/または高親和性で抗体(たとえば前F特異的抗体、部位φに結合する抗体、および/またはD25、AM22もしくは5C4)に結合する。
特性に関するアッセイ
いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体、またはそれらの製造における任意の中間体は、それらが望ましい特性、たとえば望ましい構造的、物理的、機能的、および/または生物学的特性−たとえば上記で列挙したまたは本特許明細書において他で同定した特性を有することを確認するために分析されてもよい。たとえば、いくつかの態様では、in vitroまたはin vivoアッセイを行って、RSV Fタンパク質の立体構造的構造、安定性(たとえば熱安定性)、半減期(たとえば対象の身体内の)、溶液中での凝集、抗体(たとえば中和抗体、広域中和抗体;前F特異的抗体;部位φを認識する抗体、立体構造的に特異的な抗体、準安定性エピトープを認識する抗体、D25、AM22、5C4、101Fまたはパリビズマブ)への結合、B細胞受容体への結合、B細胞受容体の活性化、抗原性、免疫原性、抗体応答を引き出す能力、保護抗体/免疫応答を引き出す能力、中和抗体の産生を引き出す能力、または広域中和抗体の産生を引き出す能力を評価することができる。本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体がin vivoで動物において試験される態様では、動物は、哺乳類(たとえばげっ歯類種(たとえばマウスまたはラット)、ウサギ、ケナガイタチ、ブタ種、ウシ種、ウマ種、ヒツジ種、または霊長類種(たとえばヒトまたは非ヒト霊長類)、またはトリ種(たとえばニワトリ)を含むが、これらに限定されない任意の適した動物種であってもよい。
タンパク質の立体構造的構造を評価するためのアッセイは、当技術分野で既知であり、結晶学的分析(たとえばX線結晶解析または電子結晶解析)、遠心沈降分析、分析超遠心分離法、電子顕微鏡法(EM)、クライオ電子顕微鏡法(クライオEM)、クライオEM断層撮影法、核磁気共鳴(NMR)、X線小角散乱分析、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイなどを含むが、これらに限定されない任意の適したアッセイを使用することができる。
タンパク質の安定性を評価するためのアッセイは、当技術分野で既知であり、変性および非変性電気泳動、等温滴定熱量測定法、および変動するタンパク質濃度、温度、pHまたはレドックス条件でタンパク質がインキュベートされ、経時的に分析される時間経過実験を含むが、これらに限定されない任意の適したアッセイを使用することができる。タンパク質は、タンパク質分解への感受性に関しても分析されてもよい。
抗体へのタンパク質の結合を評価するためのアッセイは、当技術分野で既知であり、免疫沈降アッセイ、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、酵素免疫スポットアッセイ(ELISPOT)、結晶学的アッセイ(抗体での共結晶化を含めて)、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイなどを含むが、これらに限定されない任意の適したアッセイを使用することができる。
中和活性を評価するためのアッセイは、当技術分野で既知であり、任意の適したアッセイを使用することができる。たとえば、アッセイを行って、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体による動物に対するワクチン接種/免疫化によって産出された抗体または抗血清の中和活性を決定することができる。当技術分野で既知の中和アッセイは、Deyet al. 2007(Deyet al.,2007,Characterization of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Monomeric and Trimeric gp120 Glycoproteins Stabilized in the CD4−Bound State:Antigenicity,Biophysics,and Immunogenicity.J Virol 81(11):5579−5593)およびBeddowset al.,2006(Beddowset al.,2007,A comparative immunogenicity study in rabbits of disulfide−stabilized proteolytically cleaved,soluble trimeric human immunodeficiency virus type 1 gp140,trimeric cleavage−defective gp140 and momomeric gp120.Virol 360:329−340)によって報告されたものを含むが、これらに限定されない。
ワクチン免疫原が免疫応答を引き出すかつ/または保護免疫を明らかにする能力があるかどうかを評価するためのアッセイは、当技術分野で既知であり、任意の適したアッセイを使用することができる。たとえば、アッセイを行って、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体による動物に対するワクチン接種/免疫化がRSVの感染に対する免疫応答および/または保護免疫を提供するかどうかを決定することができる。いくつかの態様では、比較は、感染または抗体陽転またはウイルス負荷のそれらの割合に関してプラセボと試験ワクチン接種群間で行われてもよい。
タンパク質の薬物動態および体内分布を評価するためのアッセイも当技術分野で既知であり、任意の適したアッセイを使用して、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体のこれらの特性を評価することができる。
組成物
いくつかの態様では、本発明は、ここで記載したRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体のいずれかを含む組成物を提供する。いくつかの態様では、かかる組成物は、免疫原性組成物、ワクチン組成物および/または治療的組成物であってもよい。いくつかの態様では、かかる組成物は、対象に投与してもよい。
いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、1つ以上のさらなる活性成分、たとえば1つ以上のさらなるワクチン免疫原または治療薬を含む組成物で提供されてもよい。いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体は、薬学的に許容される担体、アジュバント、湿潤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、保存剤、および/または組成物の意図された使用に適した任意の他の成分を含むが、これらに限定されない1つ以上の他の成分を含む組成物で提供されてもよい。かかる組成物は、溶液、懸濁液、エマルションなどの形をとることができる。「薬学的に許容される担体」という用語は、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体がそれらの中でまたはそれらとともに提供され得る様々な希釈液、賦形剤および/またはビヒクルを含む。「薬学的に許容される担体」という用語は、ヒトおよび/または他の動物対象への送達に安全であることが既知である、および/または連邦または州政府の規制当局によって承認された、ならびに/または米国薬局方および/もしくは他の一般に認識された薬局方に列挙された、ならびに/またはヒトおよび/もしくは他の動物における使用に関して1つ以上の一般に認識された規制当局から特定のまたは個々の承認を受けている担体を含むが、これらに限定されない。かかる薬学的に許容される担体は、水、水溶液(たとえば生理食塩水、緩衝液など)、有機溶媒(たとえば石油、動物、野菜または合成的起源のもの、たとえばピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油を含めた、ある特定のアルコールおよび油)などを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様では、本発明の組成物は、1つ以上のアジュバントも含む。例示的なアジュバントは、無機または有機アジュバント、油に基づくアジュバント、ビロソーム、リポソーム、リポ多糖(LPS)、抗原に関する分子ケージ(たとえば免疫刺激複合体(「ISCOMS」))、流入領域リンパ節に輸送される安定なケージ様構造を形成するAg修飾サポニン/コレステロールミセル)、細菌細胞壁の成分、飲食された核酸(たとえば二本鎖RNA(dsRNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、および非メチル化CpGジヌクレオチド含有DNA)、AUM、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびスクアレンを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様では、ビロソームがアジュバントとして使用される。本発明に従って使用することができるさらなる市販のアジュバントは、Ribiアジュバント系(RAS、2%スクアレン中の解毒されたエンドトキシン(MPL)およびマイコバクテリア細胞壁成分を含有する水中油型エマルション(Sigma M6536))、TiterMax(安定な、代謝可能な油中水型アジュバント(CytRx Corporation 150 Technology Parkway Technology Park/Atlanta Norcross,Georgia 30092))、Syntexアジュバント製剤(SAF、Tween80およびプルロニックポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマーL121によって安定化された水中油型エマルション(Chiron Corporation,Emeryville,CA))、フロインド完全アジュバント、フロインド不完全アジュバント、ALUM−水酸化アルミニウム、Al(OH)3(Alhydrogel,Accurate Chemical&Scientific Co,Westbury,NYとして入手可能)、SuperCarrier(Syntex Research 3401 Hillview Ave.P.O.Box 10850 Palo Alto,CA 94303)、Elvax 40W1,2(エチレン酢酸ビニルコポリマー(DuPont Chemical Co.Wilmington,DE))、抗原と共に共沈したL−チロシン(多くの化学メーカーから入手可能);Montanide(マニド−オレイン酸、ISA Seppic Fairfield,NJ))、AdjuPrime(炭水化物ポリマー)、ニトロセルロース吸収タンパク質、Gerbuアジュバント(C−C Biotech,Poway,CA)などを含むが、これらに限定されない。
いくつかの態様では、本発明の組成物は、「有効量」の本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体を含む。「有効量」は、望ましい最終結果を達成するために必要な量である。望ましい最終結果の例は、体液性免疫応答の産出、中和抗体応答の産出、広域中和抗体応答の産出、および保護免疫の産出を含むが、これらに限定されない。望ましい最終結果を達成するために有効である、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体の量は、保護またはいくつかの他の治療効果が探求されるRSVウイルスの型、サブタイプ、および株、意図された対象の種(たとえばヒトであろうといくつかの他の動物種であろうと)、意図された対象の年齢および/または性別、計画された投与ルート、計画された投与レジメン、任意の進行中のインフルエンザ感染の重篤度(たとえば治療的使用の場合)などを含むが、これらに限定されない様々な因子に依存することになる。有効量−有効量の範囲であってもよい−は、いかなる過度の実験も有さない標準的な技法によって、たとえば意図された対象種または任意の適した動物モデル種におけるin vitroアッセイおよび/またはin vivoアッセイを使用して決定することができる。適したアッセイは、in vitroおよび/またはin vivoモデル系由来の用量応答曲線および/または他のデータからの外挿を伴うものを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様では、有効量は、特定の状況に基づいて医学または獣医学の従事者の判断に従って決定されてもよい。
本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体の使用
いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、研究ツールとして、診断用ツールとして、治療薬として、抗体試薬もしくは治療用抗体の作製のための標的として、および/またはワクチンもしくはワクチン組成物の成分として有用であってもよい。たとえば、いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、動物対象、たとえばヒトを含めた哺乳類対象におけるワクチン免疫原として有用である。本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体のこれらのおよび他の使用は、以下でより完全に記載されている。当業者は、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体がいろいろな他の適用にも有用であってもよく、全てのかかる適用および使用が本発明の範囲内にあることが意図されていることを理解することになる。
RSV F抗体を研究するためのツール
一態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、たとえばELISAアッセイ、Biacore/SPR結合アッセイ、および/または当技術分野で既知の抗体結合に関する任意の他のアッセイにおいて、抗RSV F抗体の結合および/または力価をアッセイするかつ/または測定するための分析物として有用であってもよい。たとえば、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、抗RSV F抗体の有効性を分析するかつ/または比較するために使用される。
抗体の産出のためのツール
本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、治療用抗体および/または研究ツールとして使用することができる抗体の産出にまたは任意の他の望ましい使用にも有用であってもよい。たとえば、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、研究ツールとしておよび/または治療学としての使用のためのRSV Fタンパク質に対する抗体を取得するための免疫化に使用することができる。いくつかの態様では、抗体を産出するために、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を使用して、非ヒト動物、たとえばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、非ヒト霊長類などを含むが、これらに限定されない脊椎動物を免疫化することができる。次いで、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよいかかる抗体および/またはかかる抗体を産生する細胞は、動物から取得することができる。たとえば、いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体を使用して、マウスを免疫化してもならびにモノクローナル抗体、および/またはかかるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製かつ取得してもよい。かかる方法は、ハイブリドーマ産生のための標準的な方法を含めたマウスモノクローナル抗体の産生のための当技術分野で既知の標準的な方法を使用して行うことができる。いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体は、たとえば、CDR移植方法、ファージディスプレイ方法、トランスジェニックマウス方法(たとえば完全なヒト抗体の産生を可能にするために遺伝子改変されたマウス、たとえばXenomouseを使用する)および/または当技術分野で既知の任意の他の適した方法を含むが、これらに限定されない、キメラ、ヒト化および完全なヒト抗体の産生のための現在当技術分野で既知の方法のいずれかを使用して、キメラ(たとえば部分ヒト)、ヒト化、または完全なヒト抗体の産生に使用してもよい。かかる系を使用して作製された、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体に対する抗体は、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質およびタンパク質複合体自体を好ましくは含むいくつかの抗原の1つまたはセットを使用して、抗原性に特徴付けることができる。かかる抗体のさらなる特徴付けは、ELISAに基づく方法、SPRに基づく方法、生化学的方法(たとえば、これらに限定されないが、等電点決定)、ならびにたとえば前臨床および臨床研究における抗体の体内分布、安全性、および有効性を研究するための当技術分野で既知の方法を含むが、これらに限定されない当業者に既知の任意の標準的な方法によって行ってもよい。
対象への投与
いくつかの態様では、本発明は、対象に本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体(またはかかるRSV Fポリペプチド、タンパク質および/もしくはタンパク質複合体を含む組成物)を投与することを含む方法を提供する。かかる方法は、RSVを有する個体を治療するための方法(すなわち治療方法)および/またはさらなるRSV感染から個体を保護するための方法(すなわち予防的方法)を含んでもよい。
本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/もしくはタンパク質複合体、またはかかるRSV Fポリペプチド、タンパク質および/もしくはタンパク質複合体を含む組成物を投与することができる対象(たとえば治療の方法またはワクチン接種の方法の過程で)は、特に、RSV感染に感受性であるまたはRSV感染の研究のためのモデル動物系を提供することができるものを含めた任意のおよび全ての動物種を含む。いくつかの態様では、対象は、哺乳類種である。いくつかの態様では、対象は、トリ種である。哺乳類対象は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、ウサギ、およびケナガイタチを含むが、これらに限定されない。トリ対象は、ニワトリ、たとえば養鶏場にいるものを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/もしくはタンパク質複合体、またはかかるRSV Fポリペプチド、タンパク質および/もしくはタンパク質複合体を含む組成物を投与する対象は、RSVを有するかまたはRSV感染のリスクがあるかのいずれかである。いくつかの態様では、対象は、免疫無防備状態である。いくつかの態様では、対象は、心疾患または障害を有する。いくつかの態様では、対象は、年齢が約50歳を超える、年齢が約55を超える、年齢が約60歳を超える、年齢が約65歳を超える、年齢が約70を超える、年齢が約75歳を超える、年齢が約80歳を超える、年齢が約85歳を超える、または年齢が約90歳を超えるヒトである。いくつかの態様では、対象は、年齢が約1ヶ月未満、年齢が約2ヶ月未満、年齢が約3ヶ月未満、年齢が約4ヶ月未満、年齢が約5ヶ月未満、年齢が約6ヶ月未満、年齢が約7ヶ月未満、年齢が約8ヶ月未満、年齢が約9ヶ月未満、年齢が約10ヶ月未満、年齢が約11ヶ月未満、年齢が約12ヶ月未満、年齢が約13ヶ月未満、年齢が約14ヶ月未満、年齢が約15ヶ月未満、年齢が約16ヶ月未満、年齢が約17ヶ月未満、年齢が約18ヶ月未満、年齢が約19ヶ月未満、年齢が約20ヶ月未満、年齢が約21ヶ月未満、年齢が約22ヶ月未満、年齢が約23ヶ月未満、または年齢が約24ヶ月未満のヒトである。
様々な送達系が当技術分野で既知であり、任意の適した送達系を使用して、対象に本発明の組成物を投与することができる。かかる送達系は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口送達系を含むが、これらに限定されない。本発明の組成物は、任意の便利な経路によって、たとえば注入またはボーラス注入によって、上皮または粘膜皮膚裏打ち(mucocutaneous lining)(たとえば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通した吸収によって投与してもよく、他の生物活性薬剤と一緒に投与してもよい。投与は、全身的または局所的とすることができる。肺投与も、たとえば、吸入器または噴霧器、およびエアロゾル化剤(aerosolizing agent)を有する製剤の使用によって用いることができる。
いくつかの態様では、本発明の医薬組成物をRSV Fタンパク質またはポリペプチドが望ましい結果の産出において最も効果的であり得る組織に局所的に投与することが望ましいことがある。これは、たとえば、カテーテルを使用した局所的注入、注射、送達によって、あるいは移植片、たとえば多孔性、非多孔性、もしくはゼラチン質の移植片またはそこからもしくはそこを通してタンパク質もしくはタンパク質複合体が局所的に遊離されてもよい1つ以上の膜(たとえばシアラスティック膜(sialastic membrane))もしくは繊維を含む移植片を用いて達成されてもよい。いくつかの態様では、徐放系を使用してもよい。いくつかの態様では、ポンプを使用してもよい(Langer,supra;Sefton,1987.CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201;Buchwaldet al.,1980.Surgery 88:507;Saudeket al.,1989.N.Engl.J.Med.321:574を参照されたい)。いくつかの態様では、高分子材料を使用して、本発明のRSV融合前Fタンパク質の放出を促進かつ/または制御してもよい(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974.CRC Pres.,Boca Raton,Florida;Controlled Drug Bioavailability,1984.Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York;Ranger&Peppas,1983 Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照されたい;Levyet al.,1985.Science 228:190;Duringet al.,1989.Ann.Neurol.25:351;Howardet al.,1989.J.Neurosurg 71:105も参照されたい)。いくつかの態様では、徐放系は、RSV融合前Fタンパク質またはポリペプチドが送達されることになる組織/器官の近くに置くことができる(たとえば、Goodson,1984.Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2:115 138を参照されたい)。本発明と共に使用してもよいいくつかの適した徐放系が、Langer,1990,Science;vol.249:pp.527−1533に報告されている。
いくつかの態様では、本発明の組成物の投与は、1つ以上の免疫賦活剤の投与と共に行うことができる。かかる免疫賦活剤の非限定的な例は、免疫賦活性、免疫増強、および炎症促進性活性を有する、様々なサイトカイン、リンホカインおよびケモカイン、たとえばインターロイキン(たとえば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、IL−13);増殖因子(たとえば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(CSF));および他の免疫賦活剤、たとえばマクロファージ(GM)炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2を含む。免疫賦活剤は、RSV Fタンパク質またはポリペプチドと同じ製剤で投与することができる、または別々に投与することができる。
いくつかの態様では、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/もしくはタンパク質複合体、またはそれらを含む組成物は、いろいろな異なるRSVワクチン接種方法またはレジメンで対象に投与することができる。いくつかのかかる態様では、単回用量の投与が好ましい。しかしながら、他の態様では、さらなる用量を同じまたは異なる経路によって投与して、望ましい予防的効果を達成することができる。新生児および乳幼児では、たとえば、複数の投与が免疫の十分なレベルを引き出すために必要とされ得る。投与は、RSV感染に対する保護の十分なレベルを維持するために必要に応じて、小児期を通して間隔を置いて継続することができる。同様に、RSV感染に特に感受性である成人、たとえば、高齢者および免疫無防備状態の個体は、保護免疫応答を樹立するかつ/または維持するために複数の免疫化を必要とし得る。誘導された免疫のレベルは、たとえば、中和分泌および血清抗体の量を測定することによってモニターすることができ、保護の望ましいレベルを引き出すかつ維持するために必要に応じて、用量を調節するまたはワクチン接種を繰り返すことができる。
いくつかの態様では、投与レジメンは、単回の投与/免疫化を含んでもよい。他の態様では、投与レジメンは、多回の投与/免疫化を含んでもよい。たとえば、ワクチンは、一次免疫化、続いて1回以上のブースターとして与えてもよい。本発明のいくつかの態様では、かかる「プライムブースト」ワクチン接種レジメンを使用してもよい。たとえば、いくつかのかかるプライムブーストレジメンでは、ここで記載したRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を含む組成物は、個体に時間的に離れている複数の機会(たとえば2、3、またはさらにそれを超える機会)で投与してもよく、第1の投与が「プライミング」投与であり、その後の投与が「ブースター」投与である。他のかかるプライムブーストレジメンでは、ここで記載したRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を含む組成物は、ここで記載したRSV Fポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体を含む組成物の1つ以上のその後の「ブースター」投与と共に、「プライミング」投与としての個体へのRSVポリペプチド、タンパク質またはタンパク質複合体をコードするウイルスまたはDNAベクターを含む組成物の第一の投与後に個体に投与してもよい。ブースターは、一次免疫と同じおよび/または異なる経路を通して送達してもよい。ブースターは、一次免疫または以前に投与されたブースター後のある期間後に一般に投与する。たとえば、ブースターは、一次免疫後約2週間以上で与えることができる、かつ/または第2のブースターは、第1のブースター後約2週間以上で与えることができる。ブースターは、対象の生涯の全体を通してある期間、たとえば、約2週間以上で繰り返し与えてもよい。ブースターは、一次免疫後または以前のブースター後、一定間隔で、たとえば、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約1年、約1.5年、約2年、約2.5年、約3年、約3.5年、約4年、約4.5年、約5年以上で行ってもよい。
好ましい単位用量製剤(unit dosage formulation)は、本発明のRSV Fポリペプチド、タンパク質および/またはタンパク質複合体の、用量もしくは単位(たとえば有効量)、またはその適切な画分を含有するものである。かかる成分に加えて、本発明の製剤は、当業者によって通例使用される他の薬剤を含んでもよい。本発明によって提供される医薬組成物は、従来の医薬技法を使用して調製される好ましい単位用量製剤で便利に提示してもよい。かかる技法は、活性成分および医薬担体または賦形剤または他の成分を結合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体と均一にかつ完全に結合させることによって調製される。非経口投与に適した製剤は、抗酸化剤、緩衝液、抗菌剤および製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含有してもよい水性および非水性無菌注射溶液、ならびに懸濁剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性無菌懸濁液を含む。製剤は、単位用量または複数用量容器、たとえば、密封されたアンプルおよびバイアルで提示してもよく、使用の直前に無菌液体担体、たとえば、注射用水の付加のみを必要とするフリーズドライした(凍結乾燥した)状態で保管してもよい。即時注射溶液および懸濁液は、当業者によって通例使用される、無菌パウダー、顆粒および錠剤から調製してもよい。
キット
本発明は、本発明のRSVポリペプチド、タンパク質もしくはタンパク質複合体、またはかかるポリペプチド、タンパク質もしくはタンパク質複合体を含有する組成物を含むキットをさらに提供する。本発明の方法および組成物の使用を促進するために、ここで記載した成分および/または組成物のいずれか、および実験または治療またはワクチン目的に有用なさらなる成分をキットの形でまとめることができる。典型的に、キットは、上記の成分に加えて、たとえば、成分を使用するための説明書、包装材料、容器、および/または送達デバイスを含むことができるさらなる材料を含有する。
本発明の様々な態様も以下の非限定的な例によってさらに記載されてもよい:
[実施例]
RSV Fタンパク質変異体E222Y(配列番号13)、K226Y(配列番号15)、V469Y(配列番号16)、N88Y/S255Y(配列番号18)、V185Y/K427Y(配列番号20)を以下で記載したようにジチロシン結合の導入によって改変されたヒト細胞において発現させた。
発現プラスミド。T4フィブリチン(fibritin)フォールドン三量体形成モチーフへのWTヒトRSV−F外部ドメインまたはDS−CAV1タンパク質外部ドメインのC末端融合物、トロンビン切断部位、6X Hisタグ(配列番号46)、およびstrepタグをコードするcDNAを、ヒト発現にコドン最適化し、合成した(Geneart)。RSV Fタンパク質変異体E222Y(配列番号13)、K226Y(配列番号15)、V469Y(配列番号16)、N88Y/S255Y(配列番号18)、V185Y/K427Y(配列番号20)をコードするcDNAも合成した。これらのDNA配列を、標準的な方法を使用して5’BamHIおよび3’XhoI制限エンドヌクレアーゼ部位を通してpCDNA3.1/zeo+発現ベクター(Invitrogen)中にクローニングした(図33)。
細胞およびトランスフェクション。HEK293細胞(ATCC)を10%ウシ胎仔血清および50μg/mlゲンタマイシンで補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Invitrogen)において増殖させた。細胞を6ウェル組織培養プレート(Corning)中に播種し、80%コンフルエントまで増殖させた(約24h)。細胞に、1:4比(M/V)のDNA対ポリエチレンイミン(25kDa、直鎖状)を使用して、ウェル当たり2μgの各RSV−F発現プラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクション後16hで、培地を除去し、2ml/ウェルの無血清Freestyle−293発現培地(Invitrogen)で置きかえた。細胞を、採取および分析の前に5%CO2中で37℃でさらに48h〜72h培養した。
ELISAによる細胞上清中のRSV−Fの検出。採取後、総RSV−Fタンパク質を細胞上清からEIA/RIA高結合96ウェルプレート(Corning)中で室温で1h、直接的に捕捉した。その後、タンパク質含有および対照ウェルをPBS−tween20(0.05%)中の4%脱脂乳で室温で1hブロックした。プレートをPBS−T(400μl/ウェル)で3×洗浄した。総RSV−Fを、RSV−Fの融合前と融合後型の両方を認識する高親和性ヒト抗hRSV抗体(PBS中の100ng/ml)を使用して1h検出した。融合前Fを部位φを認識する前F特異的ヒトモノクローナル抗体(PBS中の2μg/ml)を使用して検出した。ウェルを再びPBS−T中で3×洗浄し、その後、PBS中の1:5000希釈でのHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトF(ab)2(Jackson Immunoresearch)で室温で1hインキュベートした。ウェルをPBS−Tで6×洗浄し、総RSV−Fを検出し、比色シグナルを作製するために100μlの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を使用して定量化した。比色反応を等体積4N硫酸の付加によって停止した。最終光学濃度読みをBioRad Benchmark Plusマイクロプレート吸光度分光光度計を使用して450nmで得た。各上清に関する2×連続希釈シリーズを使用して、試料間のRSV−Fの相対量の正確な比較を可能にする各試料に関する検出可能なシグナルの線形範囲を決定した(図35)。
細胞上清におけるジチロシン架橋結合。採取後すぐに、100μlのトランスフェクトおよび対照細胞上清を黒、平底、非結合96ウェルFIAプレートのウェル(Greiner bio−one)に移した。300ngのアルトロマイセス・ラモス(Arthromyces ramosus)スペルオキシダーゼを各試料に加えて、架橋した。次いで1μlの1.2mM H202を120μM H202の最終反応濃度のために対照とDT反応物の両方に加えた。反応を室温で20分間進行させておき、その後pH10での等体積リン酸ナトリウム緩衝液の付加によって反応物をアルカリ化した。ジチロシン特異的蛍光をThermo Scientific Fluoroskan Ascent FLを使用して320nmの励起波長および405nmの放射波長で読んだ(図34)。
トランスフェクション後72hで、上澄みを架橋するか(DT)または架橋せず、総タンパク質を、RSV−Fの融合前と融合後型の両方を認識する高親和性ヒト抗hRSV抗体(PBS中の100ng/ml)を使用してELISAによって測定した。図35Aを参照されたい。4℃で16日間の保管後、部位φの提示を部位φを認識する前F特異的ヒトモノクローナル抗体(PBS中の2μg/ml)を使用してELISAによって測定した。ジチロシン架橋は、RSV融合前Fタンパク質上の重要なエピトープを安定化させることが発見された。図35Bを参照されたい。
前述の発明を明瞭さおよび理解の目的のためにいくらか詳細に記載したが、形および詳細における様々な変更を本発明の真の範囲から逸脱することなく行うことができることが本開示を読めば当業者には明らかとなる。本発明は、以下の特許請求の範囲の観点からもさらに定義されてもよい。