JP2016514464A - 生物試料の安定化 - Google Patents

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Abstract

本発明は、血液試料などの細胞含有試料の安定化に適する方法および組成物を提供する。使用される安定化剤は、一級または二級カルボン酸アミドである。一局面において、細胞含有生物試料を、少なくとも1つのカルボン酸アミドと接触させることによって上記試料を安定化するための方法が提供され、ここで上記カルボン酸アミドが一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択され、好ましくは、上記細胞含有生物試料および少なくとも1つの上記カルボン酸アミドを含む得られた組成物が少なくとも0.25%の濃度の上記カルボン酸アミドを含む。

Description

本発明をもたらした研究は、助成金契約番号222916の下、European Community’s Seventh Framework Programme (FP7/2007−2013)かからの資金供与を受けた。
発明の分野
本明細書で開示の技術は、特に、細胞含有試料、特に血液試料の安定化に適した方法と組成物、およびそれぞれに安定化された生物試料から核酸を単離する方法に関する。
発明の背景
核酸は診断分野で重要なバイオマーカーである。例えば、ゲノム(特に、mRNAおよびmiRNA)の転写物プロファイルは、分子インビトロ診断におけるバイオマーカーとして広く使用され、疾患の転帰を予測し、個人に合わせた療法の方針を示すことを期待した、正常な生物学的および病理学的プロセスに関する洞察(inside into)を与える。したがって、核酸、特に、RNAのプロファイリングは、疾患診断、予後およびバイオマーカー発見のための臨床試験において重要である。転写プロファイルからの定量的情報を得る能力は、基礎生物学の調査、疾患の診断、薬物開発の促進、特定の病状および遺伝的プロファイルに合わせるように治療薬の調整をするための強力なツールであり、また、生物学的または治療プロセスおよび治療方針に関連するデータベースを生成するための強力なツールでもある。ここ数年で、下流のアッセイおよびデータ分析(分析プロセス)の大きな改善が行われてきた。しかし、特に、新しい生体分子標的に対する解析前のステップ、例えば、試料取扱いおよび試料安定化は、発現プロファイルに重大な影響を与えており、その後の分析を損なう可能性があることが見出された(例えば、Haertelら,2001,Pahl und Brune,2002、を参照)。分析される試料の安定化に関する予防策を講じないと、試料は輸送および貯蔵の間に変化し、これにより標的分子の発現プロファイルを極度に変化させる可能性がある(例えば、Rainenら,2002;Baechlerら,2004を参照)。このように、遺伝子発現、特に、血液細胞遺伝子発現は、試料のエクスビボ取扱いに敏感である。試料の取扱いが原因で発現プロファイルが変化すると、その後の分析は試料の元の状況、したがって、患者の元の状況を反映するのではなく、試料の取扱い、輸送および貯蔵の間に生成された人工プロファイルを測定していることになる。したがって、最適化された安定化プロセスが必要であり、このプロセスにより、発現プロファイルを安定化させ、信頼性の高い分析が可能となる。特に、血液細胞遺伝子発現プロファイルの分析を可能とするために血液試料を安定化させる必要性がある。
特に、血液試料などの試料のより長期にわたる安定化は、正規の方式としては、フェノールおよび/またはクロロホルムなどの有機溶媒の添加により、または液体窒素中もしくはドライアイスを使用しての直接凍結により行われた。これらの方法は、病院、手術室または日常診断検査室向けとしては、実用的な技術と言えるようなものではない。これらの問題を克服するために、PreAnalytiXは、試料採集の時点でRNA遺伝子発現プロファイルの即時安定化のための試薬を含む真空採血チューブを備えたヒト血液採集用の最初の研究製品を開発した(PAXgene Blood RNA Tube)。それぞれの安定化組成物は、遺伝子誘発および転写物分解によるRNAプロファイルの変化の恐れなしに、室温での輸送および貯蔵を可能とする(例えば、米国特許第6,617,170号、同第7,270,953号、Kruhofferら,2007を参照)。試料(本明細書では血液)の即時溶解を実現するその他の安定化剤は、Tempus Blood RNAチューブ製品の名称でABI/Life Technologiesにより販売されている。別の製品は、バイオマトリカのVacuette RNAgard Blood Tubeである。また、これを使うと、チューブ溶解が採集中即時に起こり、血液インキュベーションの全期間にわたる無傷のRNAにより示されるように、RNアーゼは不活化される。これらのそれぞれの方法の欠点は、安定化により細胞の完全な溶解が起こることである。細胞の破壊により、細胞内核酸は細胞外核酸と混合され、この結果、これらの2つの核酸集団の別々の分析ができないということになる。さらに、単離された核酸の質および量のみでなく、血液試料などの試料中に含まれる特定の細胞の存在、非存在または数についても、それらそれぞれについての発現プロファイルが分析対象である。全ての細胞選別または細胞富化によるそれぞれに細胞分析が不可能になるため、細胞の破壊は大きな欠点である。
したがって、細胞の安定化を特に目的とした特定の安定化試薬、それぞれに採血するチューブが提供されることが多い。それぞれの製品は、貯蔵後の試料の細胞含量を調べ、例えば、腫瘍細胞の存在を、例えば、蛍光活性化セルソーター(FACS)分析により検出する、または異なる白血球の相互に対する比率の変化をフローサイトメトリー(FC)もしくはFACS分析により検出することが可能となる。例えば、血液細胞は貯蔵の期間中わずかな溶解しか示さないが、多くのワークフローはフローサイトメトリーまたはFACS分析用の標準的EDTA採血チューブを使用する。Streck Inc.によるさらなる製品は、フローサイトメトリーによる免疫表現型検査用の全血試料を保存する直接真空採血チューブ(direct−draw vacuum blood collection tube)である。それは白血球抗原を保存し、白血球のサブセットをフローサイトメトリー分析により識別可能にする。白血球表面抗原分類(CD)マーカーの完全性を維持する技術は、例えば、米国特許第5,460,797号および同第5,459,073号に記載されている。
しかし、異なる安定化試薬の使用、それに応じて核酸分析および細胞分析を行う試料採集用の安定化チューブの使用は、手間のかかることである。患者の部位での採血ごとに、種々の下流アッセイ(例えば、細胞の検出およびRNAの分析)に専用の種々の試料採集チューブ、例えば、採血チューブの数を減らすニーズがある。したがって、細胞の形態を保存すると同時に核酸を安定化する試料採集および安定化システムが必要である。
同時に細胞安定化および核酸安定化を行うというニーズに対処するために、ホルムアルデヒド放出剤の使用に基づく安定化システムが開発された。それぞれの安定化剤は、無細胞RNA BCT(採血チューブ)の名称でStreck Inc.から市販されている。10ml採血チューブは、血漿中の無細胞のRNAの室温で3日間までの保存および安定化向けである。保存剤は、試料処理および貯蔵の間、血漿中の無細胞のRNAを安定化し、血液細胞からの非標的バックグラウンドRNAの放出を防止する。米国特許出願公開第2011/0111410号は、ホルムアルデヒド放出成分を使った同じ血液試料中の細胞およびRNA安定化の実現について記載している。したがって、本文献は、安定化剤が、採取血液中の血液細胞を安定化し、それにより無細胞のRNAまたはグロビンRNAの細胞RNAへの混入を防ぎ、少なくとも、2時間RNA合成を阻害し、血液細胞中にある細胞RNAを保存して採血の時点から実質的に変化のない血液細胞のタンパク質発現パターンを維持する技術について記載している。白血球はそれぞれに安定化された試料から単離することができ、その後(than)、細胞RNAは白血球から抽出される。しかし、それぞれに安定化された試料からの核酸の単離は非常に難しい。理由は、使用したホルムアルデヒド放出剤がその後の核酸単離プロセスを妨害するからである。したがって、特にRNAなどの核酸の安定化および単離を目的とした安定化方法(例えば、PAXgene Blood RNA Tube)を使って安定化した核酸の単離に比べて、核酸の収率および/または純度が極端に低下する。
さらに、先行技術において、血液または組織試料などの細胞含有試料を安定化するための方法が知られており、これらの方法は、細胞、トランスクリプトーム、ゲノムおよびプロテオームを安定化する。このような方法は、例えば、国際公開第2008/145710号で開示されている。前記方法は、特定の安定化化合物の使用に基づく。ホルムアルデヒド放出剤を含む安定化方法とは対照的に、核酸の単離は安定化剤によって損なわれない。
細胞含有生物試料中に存在する臨床的に関心のあるさらなる核酸種は、細胞外核酸である。細胞外核酸は、血液、血漿、血清およびその他の体液中で同定されてきた。それぞれの試料中で見出される細胞外核酸は、それらがヌクレアーゼから保護されているという事実に起因して、ある程度の分解抵抗性がある(例えば、それらはプロテオリピド複合体の形で分泌され、タンパク質に会合するか、または小胞中に含まれるという理由による)。多くの医学的状態、悪性疾患、および感染過程における高レベルの細胞外核酸、例えば、DNAおよび/またはRNAの存在は、特に、スクリーニング、診断、予後、疾患進行の監視、潜在的治療標的の特定、および処置反応のモニタリングにとって着目すべき対象である。さらに、母体血液中の増加した胎児DNA/RNAは、例えば、性別判定、染色体異常の評価、および妊娠関連合併症のモニターに使われている。したがって、細胞外核酸は、非侵襲的診断および予後に特に有用であり、例えば、非侵襲的出生前遺伝学的検査、腫瘍学、移植医学または多くのその他の疾患などの多くの適用分野における診断マーカーとして使用することができ、そのため、診断への適合性が高い(例えば、胎児または腫瘍由来核酸)。しかし、細胞外核酸は健康な人間にも見つかる。細胞外核酸の一般的用途および分析方法は、例えば、国際公開第97/035589号、同第97/34015号、Swarupら,FEBS Letters 581(2007)795−799、Fleischhacker Ann.N.Y.Acad.Sci.1075:40−49(2006)、FleischhackerおよびSchmidt,Biochmica et Biophysica Acta 1775(2007)191−232、Hromadnikovaら(2006)DNA and Cell biology,Volume 25,Number 11 pp 635−640;Fanら(2010)Clinical Chemistry 56:8に記載されている。
従来では、血液などの細胞含有生物試料から細胞外核酸を単離する第一ステップは、例えば、血液の場合の血清または血漿などの前記試料の本質的に無細胞画分を得ることである。その後、細胞外核酸は、血液試料の処理時に前記無細胞画分、通常は血漿、から単離される。しかし、試料の本質的に無細胞画分を得ることには問題がある場合があり、また、破壊により放出された細胞核酸が細胞外核酸に混入する可能性がある遠心分離中の細胞破壊を、注意深く制御された条件を使って防ぐことが重要であるため、分離は手間のかかる時間浪費型多段階プロセスとなることが多い。さらに、多くの場合、全ての細胞を除去するのは困難である。したがって、血漿または血清などの、一般に「無細胞」として分類されることがよくある多くの処理試料は、実際には、分離プロセス中に除去されなかった依然として残余量の細胞を含んでいる。別の考慮すべき重要事項は、細胞核酸が、通常、採血イベントから比較的短い期間の、エクスビボインキュベーションの間の細胞破壊により試料中に含まれる細胞から放出されるということである。細胞溶解が始まるとすぐに溶解細胞は追加の核酸を放出し、これが細胞外核酸と混ざり、試験用の細胞外核酸を回収することがますます困難になる。これらの問題は先行技術において考察されている(例えば、Chiuら(2001),Clinical Chemistry 47:9 1607−1613;Fanら(2010)および米国特許出願公開第2010/0184069号、を参照されたい)。さらに、利用可能な細胞外核酸の量と回収可能性は、分解に起因して時間の経過と共に実質的に低下する可能性がある。
先行技術において、全血中に含まれる循環核酸を安定化することを特に狙った方法が知られている。1つの方法は、細胞膜を安定化するためにホルムアルデヒドを採用し、それにより、細胞溶解を減らし、さらには、ホルムアルデヒドがヌクレアーゼを阻害する。それぞれの方法は、例えば、米国特許第7,332,277号および同第7,442,506号に記載されている。しかし、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出物質の使用には、核酸分子間またはタンパク質と核酸との間での架橋を誘発することにより細胞外核酸の単離の有効性を損なう可能性があるという理由から、欠点がある。血液試料を安定化する代替方法は、例えば、米国特許出願公開第2010/0184069号および同第2010/0209930号に記載されている。このことは、細胞含有生物試料を安定化して、このような試料中に含まれる、例えば、細胞外核酸の効率的回収を可能とする手段を提供することに対する大きなニーズがあることを示している。
遺伝子発現プロファイルおよび全血試料などの細胞含有生物試料中に含まれる細胞外核酸集団の安定化をもたらし、それにより、このような安定化試料の取扱い、それぞれに処理を容易にする試料処理技術の開発に対し、依然として継続したニーズがある。
先行技術の試料安定化方法の少なくとも1つの欠点を克服することが本発明の目的である。特に、細胞含有試料、とりわけ、全血試料を安定化できる方法を提供するのが1つの目的である。特に、細胞含有試料中に含まれる核酸の安定化を可能とする試料安定化方法を提供するのが1つの目的である。さらに、細胞溶解によらないで、細胞含有試料に含まれる細胞外核酸集団を安定化し、さらには、含まれる細胞の遺伝子発現プロファイルを安定化する試料安定化方法を提供するのが1つの目的である。
米国特許第6,617,170号明細書 米国特許第7,270,953号明細書
本発明は、意外にも、一級および二級カルボン酸アミドが細胞含有生物試料、特に全血試料または、例えば、血漿などの全血由来の試料の安定化に効果的であるという知見に基づいている。これらの添加物は細胞外核酸集団の安定化に極めて効果的であり、特に、ゲノムDNA、なかでも、断片化ゲノムDNAの混入を避けるか、または少なくとも大きく減らすことができることが明らかになった。さらに、これらの添加物は含まれる細胞の遺伝子発現プロファイルを安定化して、それにより、信頼性の高い遺伝子発現プロファイリングを可能とすることも明らかになった。先行技術の方法とは対照的に、この安定化効果は細胞溶解に基づいていない。したがって、本明細書で記載の安定化技術は、必要に応じ、細胞外および細胞内核酸集団の別々の分析も可能とする。さらに、本明細書で記載の安定化は、安定化試料中に含まれる細胞の分析、例えば、細胞形態および/または細胞表面特徴の分析も可能にする。
本発明の第1の態様では、細胞含有試料の安定化方法であって、該試料を少なくとも1つのカルボン酸アミドと接触させることを含み、該カルボン酸アミドは一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択される、方法を提供する。好ましくは、細胞含有生物試料および少なくとも1つのカルボン酸アミドを含む得られた組成物は、少なくとも0.25%の濃度のカルボン酸アミドを含む。
ホルムアミド、ブタンアミド、N−メチルホルムアミドおよびN−メチルアセトアミドなどの一級および二級カルボン酸アミドは、細胞含有試料、特に血液試料に対する極めて効果的な安定化剤である。それぞれの化合物の添加は、細胞外核酸集団に対して好都合な安定化効果をもたらすことが明らかになった。実施例で示すように、これらの化合物は、細胞含有試料中に含まれる細胞外核酸集団の安定化に適する。さらに、実施例で示すように、これらの化合物は、含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルの安定化、したがってその保存に適する。実施例で示すように、安定化後、安定化期間中の遺伝子発現プロファイルの変化は、減らされるか、あるいは防止される。したがって、一級または二級カルボン酸アミドによる安定化時には、遺伝子発現プロファイルは基本的に「凍結」され、したがって、試料を採集の状態、それぞれに試料安定化の状態で保存される。好ましくは、細胞含有試料は全血、血漿または血清から選択される。さらに、達成された細胞安定化特性は、血液試料中に含まれる、例えば、血液細胞または循環性腫瘍細胞などの安定化試料中に含まれる特定の細胞の分析および分離も可能とする。
安定化効果を高めることを目的として、例えば、細胞含有試料中に含まれる細胞外核酸集団および/または含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルを安定化するために、安定化剤の組み合わせを提供することも本発明の1つの目的である。それぞれの組み合わせは、少なくとも1つの一級または二級カルボン酸アミドと、追加の少なくとも1つの三級アミドおよび/または少なくとも1つのアポトーシス阻害剤を含んでもよい。意外にも、アポトーシス阻害剤、特に、カスパーゼ阻害剤などは、試料中に含まれる細胞、例えば、損傷または死細胞に由来する細胞内核酸、特に、断片化ゲノムDNAの細胞外核酸集団への混入を減らすことが明らかになった。このように、試料中に含まれる細胞外核酸集団を、生物試料が得られ、それぞれに採取された時点で示された状態に実質的に保存するという点において、アポトーシス阻害剤を含む安定化剤の組み合わせは非常に効果的である。また、それぞれの組み合わせは、安定化効果を高める、例えば、キレート化剤などの追加の添加物を含んでもよい。試料が血液または血液に由来する試料の場合には、通常、抗凝固剤も添加される。例えば、EDTAなどのキレート化剤はこの目的に適する。それぞれの安定化の組み合わせは、第1の態様による細胞含有試料の安定化法に都合よく使用することができる。
第2の態様では、生物試料から核酸を単離する方法であって、前記方法は、
a)本発明の第1の態様で定義される方法により細胞含有試料を安定化するステップと、
b)該安定化試料から核酸を単離するステップと、
を含む、方法が提供される。
ステップa)の安定化は、上述した本発明の第1の態様により達成される。上記で考察したように、本発明による安定化は、特に、試料中に含まれる細胞外核酸集団を、生物試料が得られて、それぞれに採集された時点で示された状態に実質的に保存するという効果を有する。したがって、それぞれに安定化された試料から得られた細胞外核酸は、非安定化試料から得られる細胞外核酸に比べて、試料中に含まれる、例えば、崩壊細胞由来の細胞内核酸、特に、断片化ゲノムDNAの混入がより少ない。細胞外核酸集団の実質的な保存は、この安定化/保存によりその後の全ての試験の正確さが高められるという理由から、重要な利点である。それは、細胞外核酸集団の単離およびその後の分析の標準化を可能とし、それにより、細胞外核酸画分を基準にした診断または予後への適用をより信頼性の高いものにし、また、使用する貯蔵/取扱い条件に対する依存性をより少ないものにする。特に、本発明の教示は、ある特定の細胞外核酸分子の比率を、試料が採取された時点の比率に対して、実質的に一定に保つことができるという利点を有する。この安定化は、細胞内核酸が実質的に細胞内に保持され、細胞外核酸が実質的に安定化することを実現する。さらに、本明細書で記載の安定化方法は細胞内核酸の安定化にも適する。試料安定化後、細胞内のRNAは分解から保護され、さらに、含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルの変化が阻害される。このように、本明細書で記載の安定化は、特に、インビトロ分解を減らし、遺伝子誘発を最小限にする。したがって、それぞれに安定化された試料から単離された細胞内核酸は、例えば、遺伝子発現プロファイリングおよび安定化試料中のインビボ転写物レベルの正確な提示が必要なその他の分析方法によく適合する。さらに、好都合にも、本明細書で記載の安定化方法は、必要に応じ、安定化細胞外核酸を同一安定化試料由来の安定化細胞内核酸から、別々に単離することを可能とする。
第3の態様では、細胞含有生物試料の安定化に適する組成物であって、該組成物は、
a)少なくとも1%の濃度の、少なくとも1つのカルボン酸アミドであって、一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択されるカルボン酸アミドと、
b)少なくとも1つの抗凝固剤と、
を含む、組成物が提供される。
それぞれの安定化組成物は、細胞含有生物試料、特に全血、血漿および/または血清中に含まれる細胞外核酸集団を安定化することにより、前記試料の安定化に特に効果的である。さらに、それぞれの安定化組成物は、含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルを安定化するのに効果的である。さらに、実施例に示すように、細胞および、例えば、含まれる細胞の細胞形態および/または細胞表面特徴などの重要な細胞特徴を保存することができる。それぞれの安定化組成物は、室温で少なくとも2日、好ましくは少なくとも3日間の全血などの試料の貯蔵および/または取扱い、例えば、輸送を、試料、それに含まれるそれぞれに細胞外核酸集団の品質を実質的に損なうことなく可能とする。したがって、本発明による安定化組成物を使用する場合、試料採集、例えば、採血と核酸抽出との間の時間は、試料中に含まれる細胞外核酸集団または含まれる細胞の遺伝子発現プロファイルに実質的な影響を与えることなく変えることができる。それが細胞外核酸集団および細胞内核酸集団の異なる取扱い方法に起因する変動、特に転写物レベルの変動を減らすので、これは重要な利点である。一実施形態では、組成物は少なくとも1つのアポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤を追加で含む。
第4の態様では、細胞含有生物試料、好ましくは血液試料を採集するための容器であって、該容器は、
a)好ましくは少なくとも1%の濃度の、少なくとも1つのカルボン酸アミドであって、一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択されるカルボン酸アミドと、
b)少なくとも1つの抗凝固剤と、
を含む、容器が提供される。
細胞含有生物試料、好ましくは血液試料を採集するための容器は、本発明の第3の態様による組成物を含んでもよい。それぞれの容器、例えば、安定化組成物を含む試料採集チューブの提供は、試料がそれぞれの容器中に採集されるとすぐに試料が安定化されるという利点を有する。さらに、それぞれの試料採集容器、特に採血チューブは、血液細胞およびそれらの遺伝子転写プロファイルを安定化することができ、また、細胞外核酸および任意選択で、ウイルス、それぞれに血液試料中または血液由来の試料中に含まれるウイルス核酸を安定化することができる。それにより、さらなる問題が克服された。
第5の態様では、患者から生物試料、好ましくは血液を、本発明の第4の態様による容器のチャンバ内に直接に採集する、好ましくは吸引するステップを含む方法が提供される。
第6の態様では、本発明の第3の態様による組成物を作製する方法であって、組成物の成分が混合され、好ましくは溶液中で混合される、方法が提供される。本発明で使用する場合、用語の「溶液」は、特に、液体組成物、好ましくは水性の組成物を意味する。それは、単相のみの均質の混合物であってよいが、溶液が、例えば、沈殿物などの固体成分を含む場合も、本発明の範囲内に含まれる。
当業者なら、本出願の他の目的、特徴、利点および態様は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになろう。しかし、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および具体的実施例は、本出願の好ましい実施形態を示しているが、これらは例示目的のみのために提示されていることを理解されたい。
図1〜4は、実施例1の試料由来のFOS、IL1B、IL8およびTP53(図1〜4)の相対的転写物レベルを示す。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内のRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図1〜4は、実施例1の試料由来のFOS、IL1B、IL8およびTP53(図1〜4)の相対的転写物レベルを示す。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内のRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図1〜4は、実施例1の試料由来のFOS、IL1B、IL8およびTP53(図1〜4)の相対的転写物レベルを示す。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内のRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図1〜4は、実施例1の試料由来のFOS、IL1B、IL8およびTP53(図1〜4)の相対的転写物レベルを示す。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内のRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図5は、実施例1の1人のドナーの一定分量の末梢血試料由来のH&E染色血液スライドの顕微鏡による評価を示す。 図6は、実施例1の1人のドナーの末梢血試料のフローサイトメトリー(FC)分析を示す。血液をBD EDTAチューブおよびPreAnalytiX PAXgene Blood RNA Tube(PAXgene)中へ直接採取した。実施例1に記載のように、複製EDTA血液試料を未処理のまま([+]対照[EDTA]、[−]対照[EDTA+a.dest])とするか、または最終濃度5%v/vのホルムアミドおよび0.5xMOPS緩衝液(pH5.5)で処理した。試料の採集と処理の直後に、一定分量の血液をインキュベーションなしに分析し(0時間試料)、残りの試料をFC分析の前に室温で1日および3日間インキュベートした(24時間および72時間試料)。各図は、細胞、細胞壊死組織片および粒子の信号を含む、一定分量の試験試料当たり10,000イベントのサイズ(x軸=前方散乱)および粒状性(y軸=側方散乱)を示す。(+)対照(EDTA)試料に関して、FC分析における相互に識別可能な異なる集団の白血球(L、M、NG)および無細胞画分(D)を円で示している。それらの内容は次の通りである:D=壊死組織片、亜細胞成分、細胞の断片L=リンパ球M=単球NG=好中性顆粒球(+)対照(EDTA):細胞安定化の陽性対照として機能する未処理EDTA血液試料。(−)対照(EDTA+a.dest):脱イオン水の添加により完全に溶解した、細胞安定化の陰性対照として機能する未処理EDTA血液試料。(−)対照(PAXgene):全細胞として完全に溶解した細胞を含むPAXgene血液試料は、チューブ中への採血中に、血液がチューブ中のRNA安定化添加剤と接触するとすぐに直接溶解される。この試料は細胞安定化の追加の陰性対照として機能した。較正対照:既知の蛍光および直径のCALIBRITE Beads(BD)で、BD FACSCalibur(商標)測定器を較正する機能を果たす。試験溶液5%v/vホルムアミド:5%v/vホルムアミドおよび0.5xMOPS緩衝液(pH5.5)を含むEDTA血液試料。 図7〜10は、8人のドナーからEDTAチューブおよびPAXgene Blood RNA Tube中に採取した血液試料中のFOS、IL1B、IL8、およびTP53(図7〜10)の相対的転写物レベルを示す。EDTA血液試料を未処理のままとするか、または採血後直ちに最終濃度8%w/vのアセトアミドと混合した。室温で1日間のインキュベーション後に、複製チューブなしの、および複製チューブ由来の血液試料からRNA単離を行った。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内の成功したRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図7〜10は、8人のドナーからEDTAチューブおよびPAXgene Blood RNA Tube中に採取した血液試料中のFOS、IL1B、IL8、およびTP53(図7〜10)の相対的転写物レベルを示す。EDTA血液試料を未処理のままとするか、または採血後直ちに最終濃度8%w/vのアセトアミドと混合した。室温で1日間のインキュベーション後に、複製チューブなしの、および複製チューブ由来の血液試料からRNA単離を行った。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内の成功したRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図7〜10は、8人のドナーからEDTAチューブおよびPAXgene Blood RNA Tube中に採取した血液試料中のFOS、IL1B、IL8、およびTP53(図7〜10)の相対的転写物レベルを示す。EDTA血液試料を未処理のままとするか、または採血後直ちに最終濃度8%w/vのアセトアミドと混合した。室温で1日間のインキュベーション後に、複製チューブなしの、および複製チューブ由来の血液試料からRNA単離を行った。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内の成功したRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図7〜10は、8人のドナーからEDTAチューブおよびPAXgene Blood RNA Tube中に採取した血液試料中のFOS、IL1B、IL8、およびTP53(図7〜10)の相対的転写物レベルを示す。EDTA血液試料を未処理のままとするか、または採血後直ちに最終濃度8%w/vのアセトアミドと混合した。室温で1日間のインキュベーション後に、複製チューブなしの、および複製チューブ由来の血液試料からRNA単離を行った。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内の成功したRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図11〜14は、3人のドナーからEDTAチューブおよびPAXgene Blood RNA Tube中に採取した血液試料中のFOS、IL1B、IL8、およびTP53(図11〜14)の相対的転写物レベルを示す。EDTA血液試料を未処理のままするか、または採血後直ちに最終濃度2%w/vのN−メチルアセトアミド(安定化血液組成物中の最終濃度)と混合した。室温で1日と3日間のインキュベーション後に、複製チューブなしの、および複製チューブ由来の血液試料からRNA単離を行った。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内の成功したRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図11〜14は、3人のドナーからEDTAチューブおよびPAXgene Blood RNA Tube中に採取した血液試料中のFOS、IL1B、IL8、およびTP53(図11〜14)の相対的転写物レベルを示す。EDTA血液試料を未処理のままするか、または採血後直ちに最終濃度2%w/vのN−メチルアセトアミド(安定化血液組成物中の最終濃度)と混合した。室温で1日と3日間のインキュベーション後に、複製チューブなしの、および複製チューブ由来の血液試料からRNA単離を行った。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内の成功したRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図11〜14は、3人のドナーからEDTAチューブおよびPAXgene Blood RNA Tube中に採取した血液試料中のFOS、IL1B、IL8、およびTP53(図11〜14)の相対的転写物レベルを示す。EDTA血液試料を未処理のままするか、または採血後直ちに最終濃度2%w/vのN−メチルアセトアミド(安定化血液組成物中の最終濃度)と混合した。室温で1日と3日間のインキュベーション後に、複製チューブなしの、および複製チューブ由来の血液試料からRNA単離を行った。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内の成功したRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図11〜14は、3人のドナーからEDTAチューブおよびPAXgene Blood RNA Tube中に採取した血液試料中のFOS、IL1B、IL8、およびTP53(図11〜14)の相対的転写物レベルを示す。EDTA血液試料を未処理のままするか、または採血後直ちに最終濃度2%w/vのN−メチルアセトアミド(安定化血液組成物中の最終濃度)と混合した。室温で1日と3日間のインキュベーション後に、複製チューブなしの、および複製チューブ由来の血液試料からRNA単離を行った。転写物をリアルタイムモノプレックスRT−PCRアッセイを使って分析した。個々の試料のサイクル閾値(CT)として与えられた転写物レベルを白色バーで、平均を標準偏差付きの黒色中実バーで、および遺伝子発現変化および各PCRラン内の成功したRT−PCRの陽性対照として機能する異なる実験の追加のドナーの対照試料(プレート対照)を影付きバーで示す。 図15〜21は、種々の濃度のホルムアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図15〜21は、種々の濃度のホルムアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図15〜21は、種々の濃度のホルムアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図15〜21は、種々の濃度のホルムアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図15〜21は、種々の濃度のホルムアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図15〜21は、種々の濃度のホルムアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図15〜21は、種々の濃度のホルムアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図22〜23は、種々の濃度のアセトアミドを、カスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図22〜23は、種々の濃度のアセトアミドを、カスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図24は、種々の濃度のプロパンアミドを、カスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図25〜29は、種々の濃度のブタンアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図25〜29は、種々の濃度のブタンアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図25〜29は、種々の濃度のブタンアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図25〜29は、種々の濃度のブタンアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図25〜29は、種々の濃度のブタンアミドを、単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図30は、種々の濃度のN−メチルホルムアミドを、カスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。 図31は、種々の濃度のN−メチルアセトアミドを、カスパーゼ阻害剤と組み合わせて使った細胞外核酸集団の安定化を示す。
本発明は、細胞含有生物試料中に含まれる細胞外核酸集団を安定化するために、および/または含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルを安定化し、したがってトランスクリプトームを安定化するために適する方法、組成物および装置、ならびに、したがってこれらの技術に関する。本明細書で開示の安定化技術は、例えば、細胞外核酸集団中への、試料に含まれる損傷および/または死細胞に由来する、例えば、それから放出される細胞内核酸、特に、断片化ゲノムDNAの混入のリスクを減らす。さらに、本明細書で開示の安定化技術は、含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルを実質的に保存し、それにより、遺伝子発現プロファイルの信頼性の高い分析を可能とする。さらに、本明細書で記載の安定化は、細胞外核酸への細胞内核酸の混入を防ぎ、逆もまた同じである。これにより、必要に応じ、同じ安定化細胞含有試料由来の細胞外核酸集団および細胞内核酸の別々の分析が可能となる。このように、本発明は、含まれる細胞を溶解することなく試料の安定化を実現し、したがって、細胞外核酸集団および/または細胞内核酸集団の安定化を実現する。むしろ、試料中に含まれる細胞を安定化し、それにより、細胞内核酸の放出を実質的に防止するか、または低減する。さらに、実施例で示すように、転写物レベルの変化を阻害し、したがって、その変更を阻害することにより、含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルが実質的に保存される。さらに、細胞を安定化試料から回収することができ、別の分析を行うのに適している。例えば、必要に応じ、含まれる細胞の形態および/または細胞の表面特徴を分析することができる。さらに、安定化試料は、例えば、全血試料中に存在する腫瘍細胞、例えば、循環性腫瘍細胞などの特定の細胞の存在または非存在に関し分析することができる。
本発明の方法と組成物を使って達成される核酸の顕著な安定化は、試料、それぞれにそれに含まれる細胞外核酸の品質を危険にさらすことなく、安定化試料の室温での長期間の貯蔵および/または取扱いを可能とする。細胞外核酸集団および細胞内のトランスクリプトームの組成物は安定化され、したがって、本発明の教示を使って試料が得られる時点で実質的に保存されるので、細胞外核酸集団の組成物に大きな影響を与えることなく試料採集と核酸抽出との間の時間を変えることができる。これは、例えば、診断または予後のための細胞外核酸分析の標準化を可能とする。理由は、試料の取扱い/貯蔵の変動が質、細胞外核酸集団のそれぞれに組成物の質に与える影響が少なく、それにより、先行技術の方法より重要な利点を提供するからである。したがって、試料、別々に安定化された試料から得られたそれぞれに細胞外核酸が、より適切に比較できるようになる。さらに、含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルの安定化の達成により、安定化試料の長期の貯蔵の後であっても、信頼性の高い遺伝子発現分析が可能となる。さらに、好都合にも、本発明の教示により、他の方法では破壊細胞から放出される細胞内核酸、特に、断片化ゲノムDNAの細胞外核酸への混入を回避し、それぞれに減らすために、試料中に含まれる細胞を試料の無細胞部分から直接分離することが不要になる。この利点は、試料の取扱い、特に、全血試料の取扱いを著しく単純化する。例えば、本発明の教示に従い医院で得られ、安定化された全血試料は、室温で輸送することができ、細胞外核酸を含む血漿は、受け取った臨床検査室で含まれる細胞から都合よく分離することができる。しかし、本発明の教示は、細胞除去生物試料、すなわち一般に「無細胞」と称される試料、例えば、血漿または血清を処理する際にも好都合である。それぞれの細胞除去すなわち「無細胞」生物試料は、依然として(また、使った分離プロセスに応じて)残余細胞、特に、ゲノムDNAを含む白血球を含み、この結果として、残存する細胞が貯蔵プロセスにおける輸送中に損傷を受けるか、または死ぬ場合に(可能性として)、細胞外核酸集団へ細胞内核酸、特に、断片化ゲノムDNAが次第に混入される危険性を招く可能性がある。本発明により教示される安定化方法を使用すれば、この危険性は大幅に低減される。本発明の技術は、試料が採集され、安定化剤と接触させた時点の試料の細胞外核酸集団および含まれる細胞の遺伝子発現プロファイルを効果的に保存することができ、前記試料から細胞外核酸を単離するために前記試料は受け取った施設で正しく処理(worked up)することができる一方で、細胞外核酸集団への細胞内核酸の混入をそれぞれに減らすことを実質的に回避することができる。細胞内核酸は安定化細胞から単離することができ、また、例えば、遺伝子発現プロファイリング用として使用することができる。例えば、検査室などの試料を受け取る施設は、通常、例えば、高速遠心分離器(または他の手段、下記を参照)などの、例えば、血漿などの細胞除去試料中に存在する可能性のある残余細胞等の試料中に含まれる細胞を効率的に取り除くために必要な設備も備えている。このような設備は試料が得られる施設に存在しない場合が多い。したがって、本発明は、大量の細胞、例えば、全血試料を含む生物試料を安定化する場合に多くの利点を有するが、しかし、ほんの少量の細胞を含むか、または、例えば、血漿、血清、尿、唾液、関節液、羊水、涙液、膿漿液、リンパ液、髄液、脳脊髄液などの細胞を含むと疑われているに過ぎない生物試料を安定化する際にも重要な利点がある。
細胞含有試料の安定化方法
本発明の第1の態様では、細胞含有試料、好ましくは血液試料と、少なくとも1つのカルボン酸アミドとを接触させることにより該試料を安定化する方法であって、該カルボン酸アミドは一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択される、方法が提供される。好ましくは、細胞含有生物試料および少なくとも1つのカルボン酸アミドを含む得られた組成物は、少なくとも0.25%の濃度のカルボン酸アミドを含む。
提供された実施例で示されるように、このような化合物は、細胞含有試料に対する顕著な安定化効果を達成することにおいて、例えば、安定化試料中の細胞外核酸集団の組成を実質的に保存することにおいて、特に効果的である。それにより、細胞外核酸集団へ、細胞内核酸、特に、含まれる細胞由来の、例えば、損傷または死細胞由来の断片化ゲノムDNAが混入されるという危険性が減らされ、および/または試料中に存在する核酸の分解が低減され、それぞれに阻害される。これは、前記試料に含まれる細胞外核酸集団の組成が実質的に保存され、それぞれに安定化されるという効果をもたらす。また、1つまたはそれを超える一級および/または二級カルボン酸アミドの混合物も安定化に使用することができる。さらに、本明細書で安定化用に使用するカルボン酸アミドは架橋性がないので、標準的核酸単離方法を使って、それぞれに安定化された試料から効率的に核酸を単離することができる。それは、例えば、安定化試料のさらなる処理を単純化し、さらに、細胞外核酸集団中に含まれる、例えば、希少な標的核酸をその後に検出することができる確率を高めるので、これは重要な利点である。
一実施形態では、一級カルボン酸アミドと二級カルボン酸アミドから選択されるカルボン酸アミドは、式1:
(式中、R1は水素残基またはアルキル残基であり、R2は水素残基および直鎖または分岐鎖配置の1〜20原子の炭素鎖長の炭化水素残基から選択され、R3は水素残基であり、R4は酸素である)
を有する。R1、R2およびR3の好適かつ好ましい例も下記に記載されている。
一実施形態では、R1はC1−C5アルキル残基、好ましくはC1−C4アルキル残基またはC1−C3アルキル残基、より好ましくはC1−C2アルキル残基である。別の実施形態では、R1は水素残基である。R1の鎖長nは、好ましくは、1、2、3、4または5の値を有する。特に好ましいのは、R1に対する1または2の鎖長である。特に好ましい実施形態では、R1は、水素残基、メチル残基、エチル残基およびプロピル残基からなる群より選択される。
式1に従う化合物のR2およびR3は、同じであるか、または異なり、水素残基および炭化水素残基から選択される。一実施形態では、式1に従う化合物は、一級アミドであり、R2およびR3は両方水素残基である。別の実施形態では、式1に従う化合物は、二級アミドであり、R2は炭化水素残基、R3は水素残基である。以下に記載の別の実施形態では、式1に従う化合物は、三級アミドであり、R2およびR3は同じまたは異なる炭化水素残基である(下記参照)。炭化水素残基R2および/またはR3は、短鎖アルキルおよび長鎖アルキルを含むアルキル、アルケニル、アルコキシ、長鎖アルコキシ、シクロアルキル、アリール、ハロアルキル、アルキルシリル、アルキルシリルオキシ、アルキレン、アルケンジイル、アリーレン、カルボキシレート、およびカルボニルからなる群から相互に独立に選択することができる。一般基、例えば、アルキル、アルコキシ、アリールなどが特許請求され、明細書および特許請求の範囲で記載されている。好ましくは、本発明の範囲に含まれ、一般に記載される基に含まれる下記の基が使用される:
(1)アルキル:好ましくは短鎖アルキル、特に、直鎖および分岐C1−C5アルキルまたは長鎖アルキル:直鎖および分岐C5−C20アルキル;
(2)アルケニル:好ましくはC2−C6アルケニル;
(3)シクロアルキル:好ましくはC3−C8シクロアルキル;
(4)アルコキシ:好ましくはC1−C6アルコキシ;
(5)長鎖アルコキシ:好ましくは直鎖および分岐C5−C20アルコキシ;
(6)アルキレン:好ましくは二価の直鎖または分岐鎖の、2〜18炭素原子を有し、任意にヘテロ原子を含む、脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素残基であり、例えば、メチレン、1,1−エチレン、1,1−プロピリデン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、2,2−プロピリデン、ブタン−2−オ−ル−1,4−ジイル、プロパン−2−オ−ル−1,3−ジイル、1,4−ブチレン、1,4−ペンチレン、1,6−ヘキシレン、1,7−ヘプチレン、1,8−オクチレン、1,9−ノニレン、1,10−デシレン、1,11−ウンデシレン、1,12−ドセジレン、シクロヘキサン−1,1−ジイル、シクロヘキサン−1,2−ジイル、シクロヘキサン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロペンタン−1,1−ジイル、シクロペンタン−1,2−ジイル、およびシクロペンタン−1,3−ジイル、を含む群より選択される;
(7)アルケンジイル:好ましくは、1,2−プロペンジイル、1,2−ブテンジイル、2,3−ブテンジイル、1,2−ペンテンジイル、2,3−ペンテンジイル、1,2−ヘキセンジイル、2,3−ヘキセンジイル、および3,4−ヘキセンジイル、を含む群より選択される;
(8)アルキンジイル:アルキンジイルは、−C≡C−に相当する;
(9)アリール:好ましくは、300Da未満の分子量を有する芳香族化合物から選択される;
(10)アリーレン:好ましくは、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,2−ナフタレニレン(1,2−naphtthalenylene)、1,3−ナフタレニレン(1,3−naphtthalenylene)、1,4−ナフタレニレン(1,4−naphtthalenylene)、2,3−ナフタレニレン(2,3−naphtthalenylene)、1−ヒドロキシ−2,3−フェニレン、1−ヒドロキシ−2,4−フェニレン、1−ヒドロキシ−2,5−フェニレン、1−ヒドロキシ−2,6−フェニレン、を含む群より選択される;
(11)カルボキシレート:好ましくは基−C(O)ORであり、式中、Rは、水素、C1−C6アルキル、フェニル、C1−C6アルキル−C6H5、Li、Na、K、Cs、Mg、Caから選択される;
(12)カルボニル:好ましくは基−C(O)Rであり、式中、Rは、水素、C1−C6アルキル、フェニル、C1−C6アルキル−C6H5および−NR’2の群より選択されるアミン(アミドを生成する)から選択され、式中、各R’は水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルキル−C6H5およびフェニルから独立に選択され、両方のRがC1−C6アルキルを表す場合には、それらはNC3〜NC5ヘテロ環を形成し、その環のアルキル置換基が別のアルキル鎖を形成することができる;
(13)アルキルシリル:好ましくは基−SiR1R2R3であり、式中、R1、R2およびR3は、水素、アルキル、長鎖アルキル、フェニル、シクロアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、長鎖アルコキシから相互に独立に選択される;
(14)アルキルシリルオキシ:好ましくは基−O−SiR1R2R3であり、式中、R1、R2およびR3は、水素、アルキル、長鎖アルキル、フェニル、シクロアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、長鎖アルコキシから相互に独立に選択される。
ある特定の実施形態では、R1、R2、および/またはR3は水素残基または未置換飽和直鎖または分岐鎖炭化水素残基である。
R2および/またはR3の鎖長nは、特に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20の値であってよい。好ましくはR2およびR3は、1〜10の炭素鎖の長さを有する。この場合、鎖長nは、特に、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10の値であってよい。好ましくは、R2およびR3は、1〜5の炭素鎖の長さを有し、この場合、鎖長は特に、1、2、3、4および5の値であってよい。特に好ましいのは、R2およびR3に対する1または2の鎖長である。好ましくは、R2およびR3は、両方が以下に記載する三級アミド中のアルキル残基、好ましくはC1−C5アルキル残基である。特に好ましい実施形態では、R2および/またはR3は、水素残基およびアルキル残基からなる群より選択され、好ましくはメチル残基である。
R4は好ましくは酸素である。
好ましい実施態様では、一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択される、本発明によるカルボン酸アミドは、式1に従う化合物であり、式中、R3は水素残基であり、R4は酸素残基である。好ましくは、R2は、水素残基、およびC1−C5アルキル残基からなる群より選択され、好ましくはメチル残基である。さらに、R1は、好ましくは、水素残基、メチル残基、エチル残基およびプロピル残基からなる群より選択される。好ましくは、一級カルボン酸アミドは、ホルムアミド、アセトアミド、プロパンアミドおよびブタンアミドからなる群より選択される。好ましくは、カルボン酸アミドは、ブタンアミドおよびホルムアミドから選択される。より好ましくは、それは、特に、細胞外核酸集団の安定化用としてブタンアミドである。実施例により示されるように、ブタンアミドは特に効果的な安定化剤で、またさらに、GHS分類による非毒性である。一実施形態では、一級カルボン酸アミドはプロパンアミドではない。
一実施形態では、細胞含有生物試料は、N−アルキルホルムアミド、N−アルキルアセトアミド、およびN−アルキルプロパンアミドからなる群より選択される、また、好ましくは、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミドおよびN−メチルプロパンアミドから選択される少なくとも1つの二級カルボン酸アミドと接触させられる。実施例に示されるように、これらの化合物は全て効果的安定化剤である。
細胞含有生物試料を一級または二級カルボン酸アミドまたはそれぞれの化合物の混合物の内の少なくとも1つ(および任意の追加の添加物、例えば、好ましくはカスパーゼ阻害剤)と接触させて得られる混合物は、前記化合物(またはこれら化合物の混合物)を、少なくとも0.1%、少なくとも0.25%、少なくとも0.5%、少なくとも0.75%、少なくとも1%、少なくとも1.25%、少なくとも1.5%、または少なくとも2%の濃度で含むことができる。適切な濃度範囲としては、0.1%〜30%、0.25%〜20%、0.5%〜15%、0.7%〜10%、0.8%〜7.5%、0.9%〜6%および1%〜5%が挙げられるがこれらに限定されない。本発明で使用する場合、パーセンテージ値で示した濃度または濃度範囲は、特に、液体組成物中の固体化合物、物質または組成物に対しては、体積当たりの重量パーセンテージ(w/v)、液体組成物中の液体化合物、物質または組成物に対しては、体積当たりの体積パーセンテージ(v/v)として与えられる。実施例から分かるように、一級および二級カルボン酸アミドは広い濃度範囲にわたり効果のある安定化剤である。当業者であれば、異なる化合物および/または異なる試料タイプに対する適切な濃度も、定型的な実験を使って、例えば、実施例に記載の試験アッセイにおいて異なる濃度を試験することにより決定することができる。
一実施形態では、ブタンアミドがカルボン酸アミドとして使用され、細胞含有生物試料をブタンアミドおよび任意の追加の添加物と接触させた後で得られる混合物は、ブタンアミドを、少なくとも0.1%(w/v)、少なくとも0.2%(w/v)、少なくとも0.3%(w/v)、少なくとも0.4%(w/v)、少なくとも0.5%(w/v)、少なくとも0.6%(w/v)、少なくとも0.75%(w/v)、少なくとも1%(w/v)、少なくとも1.25%(w/v)、少なくとも1.5%(w/v)、少なくとも1.75%(w/v)、少なくとも1.85%(w/v)、少なくとも2%(w/v)、少なくとも2.1%(w/v)、少なくとも2.2%(w/v)、少なくとも2.3%(w/v)、少なくとも2.4%(w/v)、少なくとも2.5%(w/v)、少なくとも2.6%(w/v)、少なくとも2.7%(w/v)、少なくとも2.8%(w/v)、少なくとも2.9%(w/v)または少なくとも3%(w/v)の濃度で含有することができる。ブタンアミドは、細胞含有生物試料、特に、細胞含有試料の無細胞の部分に含まれる細胞外核酸集団に対し安定化効果を発揮する濃度で使用される。実施例により示されるように、ブタンアミドは種々の濃度で効果的である。当業者であれば、異なる試料タイプに対するブタンアミドの適切な濃度も、定型的な実験を使って、例えば、実施例に記載の試験アッセイにおいて異なる濃度のブタンアミドを試験することにより決定することができる。実施例により示されるように、ブタンアミドに対する適切な濃度範囲もまた、1つまたはそれを超える追加の安定化剤がブタンアミドと組み合わせて使用されるか否かに依存する。例えば、血液などの細胞含有生物試料を安定化するために、本明細書で記載の1つまたはそれを超える追加の安定化添加剤、好ましくは少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤および/または式1に従う三級アミド(下記参照)がブタンアミドと組み合わせて使用される場合には、より低い濃度のブタンアミドを使用することができる。細胞含有生物試料および任意の追加の添加物と混合する場合のブタンアミドの適切な濃度範囲としては、0.1%(w/v)〜15%、0.25%(w/v)〜13%(w/v)、0.4%(w/v)〜12%(w/v)、0.5%(w/v)〜10%(w/v)、0.75%(w/v)〜8%(w/v)、1%(w/v)〜7.5%(w/v)、1.25%(w/v)〜7%(w/v)、1.5%(w/v)〜6.5%(w/v)、1.75%(w/v)〜6%(w/v)、1.8%(w/v)〜5.5%(w/v)、1.9%(w/v)〜5.25%(w/v)、2%(w/v)〜5%(w/v)、2.1%(w/v)〜4.75%(w/v)、2.2%(w/v)〜4.5%(w/v)、2.3%(w/v)〜4.25%(w/v)、2.4%(w/v)〜4%(w/v)、2.5%(w/v)〜3.75%(w/v)または2.5%(w/v)〜3.5%(w/v)が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態では、細胞含有生物試料をブタンアミドおよび任意の追加の添加物に接触させた後に得られる前記混合物は、ブタンアミドを、0.5%(w/v)〜3.5%(w/v)、好ましくは0.75%(w/v)〜3.25%または0.9%(w/v)〜3%(w/v)の範囲の濃度で含む。このような濃度は血液試料を安定化するのに特に適する。実施例で示されるように、これらの範囲の濃度のブタンアミドの使用により、血液試料に対する優れた安定化効果が得られ、さらに、血液試料中に含まれる赤血球の溶血反応が防止される。さらなる安定化剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤および/または式1に従う三級アミドなどを追加で使用する場合、2%(w/v)以下のより低いブタンアミド濃度が特に効果的である。実施例で示されるように、これらの安定化剤の組み合わせの使用は、血液試料を安定化するために特に有利である。
一実施形態では、カルボン酸アミドとしてホルムアミドが使用される。ホルムアミドは、トランスクリプトームならびに細胞外核酸集団の安定化において特に効果的である。細胞含有生物試料をホルムアミドおよび任意の追加の添加物と接触させた後に得られる混合物は、ホルムアミドを、少なくとも0.1%(v/v)、少なくとも0.25%(v/v)、少なくとも0.5%(v/v)、少なくとも0.75%(v/v)、少なくとも1%(v/v)、少なくとも1.25%(v/v)、少なくとも1.5%(v/v)または少なくとも2%(v/v)の濃度で含有することができる。ホルムアミドは、細胞含有生物試料、特に、細胞含有試料および/またはトランスクリプトームの無細胞の部分に含まれる細胞外核酸集団に対し安定化効果を発揮する濃度で使用される。実施例により示されるように、ホルムアミドは種々の濃度で効果的である。当業者であれば、異なる試料タイプに対するホルムアミドの適切な濃度も、定型的な実験を使って、例えば、実施例に記載の試験アッセイにおいて異なる濃度のホルムアミドを試験することにより決定することができる。実施例により示されるように、ホルムアミドに対する適切な濃度範囲もまた、1つまたはそれを超える追加の安定化剤がホルムアミドと組み合わせて使用されるか否かに依存する。例えば、血液などの細胞含有生物試料を安定化するために、本明細書で記載の1つまたはそれを超える追加の安定化添加剤、好ましくは少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤がホルムアミドと組み合わせて使用される場合には、より低い濃度のホルムアミドを使用することができる。細胞含有生物試料および任意の追加の添加物と混合する場合のホルムアミドに対する適切な濃度範囲としては、0.25%(v/v)〜20%(v/v)、0.5%(v/v)〜15%(v/v)、0.7%(v/v)〜10%(v/v)、0.8%(v/v)〜7.5%(v/v)、0.9%(v/v)〜6%(v/v)および1%(v/v)〜5%(v/v)が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態では、細胞含有生物試料をホルムアミドおよび任意の追加の添加物に接触させた後に得られる前記混合物は、ホルムアミドを、0.5%(v/v)〜15%(w/v)、好ましくは0.7%(v/v)〜10%(v/v)の範囲の濃度で含む。このような濃度は血液試料を安定化するのに特に適する。実施例で示されるように、これらの範囲の濃度のホルムアミドの使用により、血液試料に対する優れた安定化効果が得られる。トランスクリプトームの安定化に関しては、得られる細胞含有試料との混合物中のホルムアミドの濃度は、好ましくは、少なくとも2%(v/v)、好ましくは、少なくとも3%(v/v)である。実施例で示されるように、約5%(v/v)の濃度が特に効果的である。したがって、濃度は2%(v/v)〜7.5%(v/v)の範囲であるのがこの目的のために好ましい。
本発明で使用する場合、用語の「細胞外核酸(複数)」または「細胞外核酸」は、特に、細胞中に含まれていない核酸を意味する。それぞれの細胞外核酸は、無細胞核酸と呼ばれることも多い。本明細書では、これらの用語は同義に使用される。したがって、細胞外核酸は、通常、試料内の細胞の外側または複数の細胞の外側に存在する。用語の「細胞外核酸」は、例えば、細胞外のRNAならびに細胞外のDNAを意味する。体液、例えば、血漿などの生物試料の無細胞画分(それぞれに部分)中で認められる典型的な細胞外核酸の例としては、哺乳動物細胞外核酸、例えば、細胞外腫瘍関連または腫瘍由来DNAおよび/またはRNA、その他の細胞外疾患関連DNAおよび/またはRNA、エピジェネティック修飾DNA、胎児DNAおよび/またはRNA、例えばmiRNAおよびsiRNAなどの低分子干渉RNA、および非哺乳動物細胞外核酸、例えば、ウイルス核酸、例えば、原核生物(例えば、細菌)、ウイルス、真核生物寄生生物または真菌から細胞外核酸集団中に放出された病原体核酸、が挙げられるが、これらに限定されない。細胞外核酸集団は、通常、損傷または死細胞から放出されたある特定量の細胞内核酸を含む。例えば、血液中に存在する細胞外核酸集団は、通常、損傷または死細胞から放出された細胞内グロビンmRNAを含む。これはインビボで起こる天然プロセスである。細胞外核酸集団中に存在するこのような細胞内核酸は、その後の核酸検出方法における対照としての目的も果たすことができる。本明細書で記載の安定化方法は、特に、細胞外核酸集団中に含まれるゲノムDNAなどの細胞内核酸の量が、エクスビボでの試料の取扱いが原因で細胞含有試料を採集した後で著しく増加するという危険性を減らす。したがって、エクスビボでの取扱いが理由の細胞外核酸集団の変質が減らされ、また、それが防止される場合さえある。一実施形態では、細胞外核酸は、例えば、血液、血漿、血清、唾液、尿、髄液、脳脊髄液、痰、涙液、汗、羊水またはリンパ液などの細胞含有生物試料として体液から採取され、それぞれにその中に含まれる。本明細書では、我々は、循環体液から得られた細胞外核酸を循環細胞外核酸または循環無細胞核酸と呼ぶ。一実施形態では、用語の細胞外核酸は、特に、哺乳動物細胞外核酸を意味する。例としては、腫瘍関連または腫瘍由来細胞外核酸などの疾患関連または疾患由来細胞外核酸、炎症または損傷、特に、外傷が原因で放出された細胞外核酸、その他の疾患に関連するおよび/またはそれが原因で放出された細胞外核酸、または胎児由来の細胞外核酸が挙げられるが、それらに限定されない。本発明で使用する場合、用語の「細胞外核酸(複数)」または「細胞外核酸」は、また、その他の試料、特に、体液以外の生物試料から得られる細胞外核酸も意味する。通常、1つを超える細胞外核酸が試料中に含まれる。通常、試料は1つを超える種類またはタイプの細胞外核酸を含む。本発明で使用する場合、用語の「細胞外核酸集団」は、特に、細胞含有試料中に含まれる種々の細胞外核酸の集団を意味する。細胞含有試料は、通常、特徴的で、したがって独特の細胞外核酸集団を含む。したがって、特定の試料の細胞外核酸集団に含まれる1つまたはそれを超える細胞外核酸のタイプ、種類および/または量は、重要な試料特徴である。上記で考察したように、試料の細胞外核酸集団中に含まれる1つまたはそれを超える細胞外核酸の組成および/または量は、医学、予後または診断分野で価値のある情報を提供できるので、前記細胞外核酸集団を安定化し、それにより実質的に保存することは重要である。したがって、細胞外核酸集団のプロファイルが効率的に安定化されれば好都合である。本明細書で記載の安定化技術は、混入を減らし、その結果、試料採集と安定化後の細胞内核酸、特に、ゲノムDNAによる細胞外核酸集団の希釈を低減する。このようにして、細胞外核酸集団の実質的な保存が達成される。実施例で示されるように、含まれる細胞外核酸の量、質および/または組成に関する細胞外核酸集団の変化、特にゲノムDNAの放出の増加に起因する変化は、安定化期間中、非安定化試料または、例えば、血液試料もしくは血液由来試料の場合にEDTAにより安定化されている対応する試料に比べて、顕著に低減される。一実施形態では、T(安定化時点)から安定化期間の終わり(好ましくは、T後、48時間、72時間または96時間)までのゲノムDNAの増加は、非安定化試料または、例えば、血液試料(例えば、1.5mg EDTA/mL安定化血液試料)もしくは血液由来試料の場合のEDTAにより安定化されている対応する試料に比べて、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減される。
さらに、上述のように、本発明の方法は、細胞内核酸、特に、細胞内RNAの安定化にも適する。本明細書で記載のように、細胞含有試料を一級および/または二級カルボン酸アミドと接触させることにより、含まれる細胞の遺伝子転写物レベルが安定化されるという結果になる。したがって、安定化試料中の新しい転写物の生成および既存の転写物の分解は、非安定化試料に比べて阻害され、それにより、安定化時により含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルを実質的に「凍結」する。したがって、この安定化は、それらが試料採集および安定化時に示した状態で転写物レベルを維持することにより、トランスクリプトームの安定化にも適する。用語の「トランスクリプトーム」は、特に、1つの細胞または細胞集団で生成されたmRNA、rRNA、tRNA、およびその他のmiRNAなどのノンコーディングRNAを含む一連の全てのRNA分子を意味する。実施例で示されるように、血液試料などの細胞含有生物試料は、転写物レベルの実質的な変化を生じることなく、少なくとも3日間およびそれより長い期間安定化可能であろう。遺伝子転写プロファイルは、RNA分解を減らし、特に、遺伝子誘発または下方制御などの遺伝子発現の変化を最小限にすることにより、特に、安定化される。理論に束縛される意図はないが、安定化のために本明細書で使われる一級および/または二級カルボン酸アミドは、細胞プロセスを阻害し、それにより、転写物の新規合成ならびに既存の転写物の分解が阻害されると考えられている。それらは細胞中に入り、したがって、それらはこれらの効果を達成するために細胞透過性であると考えられている。このように、細胞含有試料の採集および安定化後、採集およびそれぞれに安定化時に存在するインビボ遺伝子発現プロファイルが保存される。さらに、RNAの質および完全性が維持され、それにより、試料採集、それぞれに試料安定化時のインビボ転写物レベルの正確な提示が得られ、真の正確な転写物レベルを得ることが可能となる。安定化時のインビボ遺伝子転写プロファイルの保存は、例えば、それぞれに安定化された試料を使って転写物レベルの正確な提示を必要とする遺伝子発現プロファイリングまたはその他の分析方法を実施することを可能とする。しかし、望ましいことではあるが、全ての転写物レベルが安定化される、または等しく良好に安定化されることが必要ではない場合が多い。特定のまたは新しい標的転写物に対する安定化およびその結果の性能特徴は、遺伝子転写プロファイルを安定化する先行技術で通常行われる通り検証されてもよい。遺伝子転写プロファイルまたは特定の転写物レベルの安定化が達成されたことは、例えば、遺伝子転写プロファイルの安定化を分析するために確立されているマーカー遺伝子を基準にして判定することができる。一実施形態では、この方法で達成される含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルまたは転写物レベルの安定化は、c−fos、IL−1β、IL−8およびp53から選択される1つまたはそれを超える、より好ましくは、2つまたはそれを超えるマーカー遺伝子が、安定化時に少なくとも48時間安定化されるという結果を生ずる。これらのマーカー遺伝子は、貯蔵中に非常に不安定な転写物を与え、そのため、適切な安定化が行われなければ、試料採集後、上方制御または下方制御することが明らかになった。したがって、これらの遺伝子の転写物レベルは、遺伝子転写レベルの安定化が達成されたか否かを分析するためのマーカーとして適する。安定化効果は、実施例に記載のリアルタイムRT−PCRアッセイを使って分析することができる。一実施形態では、1つまたはそれを超えるこれらのマーカー遺伝子の転写物レベルは、T(安定化時点)と安定化期間の終わりとの間の値で、1.5CTを超える値、好ましくは1.25CT以上の値、より好ましくは多くとも1CT以上の値まで変化しない。好ましくはそれぞれの安定化効果は、少なくとも48時間、少なくとも72時間、または少なくとも96時間の間実現される。好ましくはそれぞれの安定化特徴は、少なくとも、マーカー遺伝子c−fos、IL8およびIL−1βを使って達成され、好ましくは全ての前述のマーカー遺伝子を使って達成される。実施例で示されるように、種々の一級および/または二級カルボン酸アミド、特に、ホルムアミドがそれぞれの安定化性能を達成する。
さらに、本発明による方法は細胞溶解に基づかないので、安定化期間後に細胞を安定化試料から分離することができ、また、安定化試料から単離された細胞は分析に適する。例えば、上述のように、RNAなどの細胞内核酸を、含まれる細胞から単離することができ、また、分析することができる。さらに、安定化試料中の細胞の保存は、細胞を選別または捕捉する可能性を開き、さらには、例えば、腫瘍細胞などのその後で詳細に分析される特定の細胞を富化する可能性も開く。例えば、循環性腫瘍細胞を単離し、それらの遺伝子発現プロファイルを分析できる。さらに、細胞形態および/または細胞マーカー、特に、得られた細胞を特徴付けるために細胞表面マーカーを分析することができる。さらに、細胞内核酸を前記富化特定細胞から単離することができる。例えば、RNAを前記細胞から単離することができる。本明細書で記載の安定化方法の転写物レベル安定化特徴は、好都合にも、遺伝子発現プロファイリングおよびその他の重要な分析のために単離RNAの使用を可能とする。本明細書で記載の安定化方法は、このように、例えば、癌またはその他の疾患の分子診断において有利である。理由は、それが、細胞の富化の後に富化細胞から核酸の抽出を可能とし、それにより、例えば、細胞含有試料、例えば、血液試料中の循環性腫瘍細胞の希なイベントを検出する確率が高まるからである。また、これは特定のバイオマーカー、特に、希なバイオマーカーが試料中で同定される確率も高める。
一実施形態では、細胞含有試料は、血液試料であり、白血球が安定化される。これにより、安定化試料から白血球の分離が可能となる。安定化期間中、好ましくは少なくとも48時間、少なくとも1つのタイプの含まれる血液細胞が安定化される場合には、白血球が安定化される。一実施形態では、血液試料中に含まれるリンパ球および/または単球が安定化される。本明細書で記載の安定化は細胞含有試料中に含まれる有核細胞の溶解を誘発または促進しない。したがって、安定化は細胞溶解に基づいていない。好ましくは、細胞含有試料が血液であり、目的の核酸が細胞外核酸、特に、細胞外のRNAである場合、本明細書で使われる安定化は溶血反応を防ぐ。インビトロ溶血反応のほとんどの原因は、検体採集に関連している。しかし、適切な安定化方法が使われない場合、インビトロ溶血反応は、通常、エクスビボ貯蔵中に血液試料中で起こる。目的の細胞外核酸によっては、溶血反応が大きな問題となる場合がある。目的の細胞外核酸がDNAの場合、溶血反応が問題となることは少ない。理由は、赤血球は核を含まず、その結果、ゲノムDNAを含まないからである。したがって、溶血反応中に細胞内DNAが赤血球から放出されることはない。目的の細胞外核酸がDNAである場合、特に、白血球の溶解または崩壊が問題となる。理由は、この場合、細胞内RNAに加えてゲノムDNAが放出されるためである。したがって、目的の細胞外核酸が細胞外DNAである場合、特に、白血球の溶解を防止する必要がある。白血球はそれらの安定性がそれぞれの間で異なる場合がある。したがって、一部のタイプの白血球は他のものより安定性が高い。しかし、一般に、白血球は赤血球より極めて安定である。したがって、赤血球の溶解により、白血球が溶解されたことを示すとは限らない。また、当該技術分野において、白血球と赤血球の溶解に対する異なる感受性を利用して、例えば、赤血球を特異的に溶解し、一方で、例えば白血球の採集を可能とするために白血球を保存する。しかし、目的の細胞外核酸がRNAの場合、赤血球の溶血反応とその結果の溶解には実際に問題が生ずる。成熟赤血球もRNAを含まないが、それらの前駆物質(網状赤血球)はRNAを含む。網状赤血球は、赤血球の約0.5%〜1%を占め、大量のグロビンRNAを含む。したがって、特に、目的の細胞外核酸がRNAの場合、貯蔵中の赤血球とその網状赤血球の溶解を、細胞外核酸集団、特に、細胞外RNA集団のグロビンmRNAによる希釈を減らす目的で防止/低減してもよい。さらに、上述のように、本明細書で記載の安定化方法を使って実現した細胞外核酸集団の組成およびそのプロファイルを維持することは重要である。理由は、このことが多くの診断用途に重要であるためである。本発明による安定化方法を使えば、溶血反応を効率的に防止/低減することができる。それにより、細胞外核酸集団は実質的に保存され、さらに、溶血反応および細胞溶解が防止されることから、安定化血液試料、特に、安定化血液試料から得られた血漿または血清は、通常、その他の標準的検査室分析にも適する。さらに、白血球の溶解の防止は、それぞれの細胞の単離および分析を可能とする。特に、それは、安定化試料中に含まれる白血球またはその他の保存された細胞からの細胞内RNAなどの細胞内核酸の単離を可能とする。
一実施形態では、安定化期間中、好ましくは少なくとも48時間、細胞の形態が保存される。これにより、それらの形態に基づいて含まれる細胞を分析し、任意選択で特徴付けすることが可能となる。一実施形態では、有核細胞の形態が保存される。一実施形態では、安定化中、血液試料中に含まれるリンパ球の形態が保存される。
一実施形態では、細胞の細胞表面エピトープが保存される。一実施形態では、CDタンパク質などの細胞表面タンパク質が保存される。細胞表面エピトープおよび細胞表面タンパク質の保存は、それにより、これらの細胞表面特徴に基づいて含まれる細胞の特徴付けおよび/または単離が可能となるために、有利である。特に、それは、細胞表面に存在する腫瘍マーカーの分析または前記マーカーに基づいて特定の細胞の単離を可能とする。
一実施形態では、安定化方法は、血液試料を一級および/または二級カルボン酸アミドおよび抗凝固剤と接触させることを含み、含まれる細胞の転写物レベルが安定化される。さらに、実施例で示されるように、追加的に細胞外核酸集団が安定化される。これは、それにより細胞外核酸集団を、同じ安定化試料由来の細胞内核酸集団とは別々に分析することが可能となるために有利である。一実施形態では、ホルムアミドがその目的のために使用される。一実施形態では、ブタンアミドが細胞外核酸集団を安定化するために使用される。
一実施形態では、安定化剤の組み合わせが使用され、これには、少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミドおよびアポトーシス阻害剤の使用が含まれる。既に、アポトーシス阻害剤単独でも、細胞含有試料の安定化および細胞外核酸集団をその組成物の変化、特に断片化ゲノムDNAの混入に起因する変化から実質的に保存するために効果的である。したがって、アポトーシス阻害剤を追加して使用すると、得られる安定化効果が強化される。例えば、アポトーシス阻害剤を試料に加えることにより、またはその逆を行うことにより、試料をアポトーシス阻害剤と接触させることができる。特に、細胞外核酸集団を安定化するために、好ましくは、少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミドおよびアポトーシス阻害剤を含む安定化組成物が使用される。得られた混合物中に存在する少なくとも1つのアポトーシス阻害剤は、試料中に含まれる細胞の安定化を支援し、試料中に含まれる核酸の分解を阻害することにより、細胞外核酸集団を実質的に保存することに寄与する。
本発明で使用する場合、用語の「アポトーシス阻害剤」は、特に、細胞含有生物試料中での存在により、細胞のアポトーシスプロセスの低減、防止、および/または阻害がもたらされる、および/または細胞をアポトーシス刺激に対してより抵抗性にする化合物を意味する。アポトーシス阻害剤としては、タンパク質、ペプチドまたはタンパク質様もしくはペプチド様分子、有機および無機分子が挙げられるが、これらに限定されない。アポトーシス阻害剤としては、代謝阻害剤、核酸分解それぞれに核酸経路の阻害剤、酵素阻害剤、特に、カスパーゼ阻害剤、カルパイン阻害剤およびアポトーシスプロセスに関与するその他の酵素阻害剤を含む化合物が挙げられる。それぞれのアポトーシス阻害剤を表1に挙げる。好ましくは細胞含有生物試料を安定化するために使用される少なくとも1つのアポトーシス阻害剤が、代謝阻害剤、カスパーゼ阻害剤およびカルパイン阻害剤からなる群より選択される。それぞれのカテゴリー中の各クラスの好適な例を表1に挙げる。好ましくは、アポトーシス阻害剤は細胞透過性である。
本発明の範囲には、同じまたは異なるクラスのアポトーシス阻害剤からの様々なアポトーシス阻害剤の組み合わせを使用すること、同じまたは異なる作用機序によってアポトーシスを阻害する様々なアポトーシス阻害剤の組み合わせをそれぞれに使用することも含まれる。
有利な実施形態では、アポトーシス阻害剤は、カスパーゼ阻害剤である。カスパーゼ遺伝子ファミリーのメンバーは、アポトーシスにおいて大きな役割を果たす。個々のカスパーゼの基質選択性または特異性を利用して、カスパーゼ結合との競合に成功するペプチドを開発してきた。カスパーゼに特異的なペプチドを、例えば、アルデヒド、ニトリルまたはケトン化合物にカップリングさせることによって、カスパーゼ活性化の可逆的または不可逆的な阻害剤を生成することが可能である。例えば、Z−VAD−FMKなどのフルオロメチルケトン(FMK)誘導体化ペプチドは、細胞傷害作用を与えることなく効果的な不可逆的阻害剤として作用する。N末端およびOメチル側鎖にベンジルオキシカルボニル基(BOC)を付与して合成された阻害剤は、細胞透過性が強化される。さらに適切なカスパーゼ阻害剤は、C末端にフェノキシ基を付与して合成される。一例は、Q−VD−OPhであり、これは、カスパーゼ阻害剤Z−VAD−FMKよりもアポトーシスを防止するのにさらにより効果的な、細胞透過性で不可逆的な適用範囲が広いカスパーゼ阻害剤である。
一実施形態では、少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミドに加えて使われるカスパーゼ阻害剤は、汎カスパーゼ阻害剤であり、このように適用範囲が広いカスパーゼ阻害剤である。一実施形態では、カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼ特異的修飾ペプチドを含む。好ましくは、前記カスパーゼ特異的ペプチドは、アルデヒド、ニトリルまたはケトン化合物によって修飾されている。好ましい実施形態では、カスパーゼ特異的ペプチドは、好ましくは、カルボキシル末端がO−フェノキシまたはフルオロメチルケトン(FMK)基で修飾されている。一実施形態では、カスパーゼ阻害剤は、Q−VD−OPhおよびZ−VAD(OMe)−FMKからなる群より選択される。一実施形態では、汎カスパーゼ阻害剤のZ−VAD(OMe)−FMKが使用され、これは不可逆的な競合ペプチド阻害剤であり、カスパーゼ−1ファミリーおよびカスパーゼ−3ファミリー酵素を阻止する。好ましい一実施形態では、カスパーゼに対し適用範囲が広い阻害剤であるQ−VD−OPhが使用される。Q−VD−OPhは細胞透過性であり、アポトーシスによる細胞死を阻害する。Q−VD−OPhは、極度に高い濃度でも細胞毒性がなく、アミノ酸のバリンおよびアスパラギン酸にコンジュゲートしたカルボキシ末端フェノキシ基からなる。Q−VD−OPhは、カスパーゼ−9およびカスパーゼ−3、カスパーゼ−8およびカスパーゼ−10、ならびにカスパーゼ−12の3つの主なアポトーシス経路によって媒介されるアポトーシスの防止に関して、同等に効果がある(Casertaら,2003)。さらなるカスパーゼ阻害剤を、表1に挙げる。一実施形態では、細胞含有試料を安定化するためにアポトーシス阻害剤として使用されるカスパーゼ阻害剤は、細胞の細胞内細胞死経路の下流に位置する、カスパーゼ−3などの1つまたはそれを超えるカスパーゼに対して作用する阻害剤である。一実施形態では、カスパーゼ阻害剤は、カスパーゼ−3、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9、カスパーゼ−10およびカスパーゼ−12からなる群より選択される1つまたはそれを超えるカスパーゼに対する阻害剤である。本発明の範囲には、カスパーゼ阻害剤の組み合わせを使用することも含まれる。
少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミドに加えてカスパーゼ阻害剤を使用する場合、生物試料を少なくとも1つのアポトーシス阻害剤と接触させた後に得られる混合物は、アポトーシス阻害剤(またはアポトーシス阻害剤の組合せ)を、少なくとも0.01μM、少なくとも0.05μM、少なくとも0.1μM、少なくとも0.5μM、少なくとも1μM、少なくとも2.5μM、または少なくとも3.5μMの群より選択される濃度で含むことができる。当然のことながら、より高い濃度を使用することもできる。細胞含有生物試料と混合される場合、アポトーシス阻害剤(単一または複数)の適切な濃度範囲としては、0.01μM〜100μM、0.05μM〜100μM、0.1μM〜50μM、0.5μM〜50μM、1μM〜40μM、より好ましくは1μM〜30μM、または2.5μM〜25μMが挙げられるが、これらに限定されない。濃度が高いほどより効果的であることが明らかになったが、低濃度でも良好な安定化結果が得られた。したがって、特にアポトーシス阻害剤が組み合わせて使用される場合、効果的な安定化は、例えば、0.1μM〜10μM、0.5μM〜7.5μM、または1μM〜5μMから選択される範囲の低濃度でも達成される。上記の濃度は、単一のアポトーシス阻害剤の使用、ならびにカスパーゼ阻害剤の組合せの使用に適用される。カスパーゼ阻害剤が組合せて使用される場合、アポトーシス阻害剤の組合せの全濃度が上述の特徴値を満たす場合には、アポトーシス阻害剤の前記混合物において使用される個々のアポトーシス阻害剤の濃度は、上述の濃度未満であってもよい。細胞をなおも効率的に安定化し、および/または試料中に存在する核酸の分解を低減する低濃度を使用することは、安定化に必要な費用を低くすることができるという利点がある。アポトーシス阻害剤は、本明細書に記載の1つまたはそれを超える安定化剤と併用して使用されるので、より低い濃度で使用することができる。前述の濃度は、カスパーゼ阻害剤、特にQ−VD−OPhおよび/またはZ−VAD(OMe)−FMKなどのカスパーゼ特異的修飾ペプチドをアポトーシス阻害剤として使用する場合に、特に適している。上述の濃度は、例えば、全血、特に10mlの血液を安定化するのに非常に適している。他のアポトーシス阻害剤および/または他の細胞含有生物試料に適した濃度範囲は、当業者が定型的な実験を使用して、例えば、実施例に記載した試験アッセイにおいて、アポトーシス阻害剤、それぞれに異なる濃度を試験することによって決定することができる。
一実施形態では、有効量のアポトーシス阻害剤は、細胞含有生物試料におけるアポトーシスを、それぞれのアポトーシス阻害剤を含有していない対照試料と比較して、少なくとも25パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも50パーセント、好ましくは少なくとも75パーセント、より好ましくは少なくとも85パーセント低下または低減するであろう。
したがって、一実施形態では、少なくとも1つのアポトーシス阻害剤および好ましくはホルムアミドおよびブタンアミドから選択される、少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミドを含む安定化剤の組み合わせが使用される。それぞれの組み合わせには、例えば、抗凝固剤およびキレート化剤などの安定化効果を高める追加の添加剤を含めることもできる。一実施形態では、安定化剤の組み合わせは、カスパーゼ阻害剤および抗凝固剤、好ましくはEDTAなどのキレート化剤を含む。それぞれの組み合わせは、第1の態様に従って細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化するのに適した方法で有利に使用することができる。安定化剤の組み合わせを用いることによって観察される安定化効果は、個々の安定化剤のいずれかを単独で使用する場合に観察される効果よりも強力であり、および/またはより低濃度を使用可能とし、それにより、安定化剤の併用は魅力的な選択肢となる。アポトーシス阻害剤および少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミドの適切で好ましい実施形態、ならびに試料の効果的な安定化を達成するのに適したそれぞれの薬剤の適切で好ましい濃度は、前に詳述されている。
本発明の背景技術で考察したように、細胞外核酸は、通常、試料中に「裸」では存在しないが、例えば、複合体中に保護されて放出されることにより、または小胞等に収容されることにより、ある程度安定化されている。これには、細胞外核酸が、既にある程度安定化されており、したがって通常は、全血、血漿または血清などの細胞含有試料中のヌクレアーゼによって急速には分解されないという効果がある。したがって、生物試料に含まれている細胞外核酸の安定化が意図される場合、その主な問題の1つは、試料に含有されている損傷細胞または死細胞から生じる細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAによって細胞外核酸集団が希釈され、それぞれに混入されることである。このことは、血漿または血清などの細胞除去試料(少量の細胞を含む可能性がある場合でも、「無細胞」と記載されることがある)を処理する場合にも問題になる。本発明による安定化技術は、この点で特に利点がある。理由は、試料中に存在する細胞外核酸を実質的に保存し、例えば、試料に含まれている細胞外核酸の分解を阻害するだけでなく(安定化されていない試料またはEDTAで安定化された試料と比較して、安定化期間にわたって好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%阻害する)、さらには試料に含有されている細胞からゲノムDNAが放出されるのを効率的に低減し、および/またはそれぞれのゲノムDNAの断片化を効率的に低減するからである。一実施形態では、本発明の教示に従って細胞含有試料を安定化するために、少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミドおよび任意のアポトーシス阻害剤の使用は、試料に含有されている細胞からDNAが放出されることから生じるDNAの増加が、非安定化試料に比較して低減されるという効果を有する。一実施形態では、前記ゲノムDNAの放出は、非安定化試料またはEDTAで安定化された対応する試料(特に血液試料、または血漿もしくは血清などの血液由来の試料の場合)と比較して、安定化期間にわたって少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、少なくとも17倍、または少なくとも20倍低減される。一実施形態では、前記ゲノムDNAの放出は、非安定化試料またはEDTAで安定化された対応する試料(特に血液試料、または血漿もしくは血清などの血液由来の試料の場合)と比較して、安定化期間にわたって少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減される。DNAの放出は、本明細書において実施例の項で記載する通り、例えばリボソーム18S DNAを定量化することにより決定することができる。したがって、試料に含まれる細胞外核酸集団は、標準のEDTAチューブで安定化された試料と比較して大幅に安定化される。したがって、一実施形態では、本発明により教示されるように、アポトーシス阻害剤と組み合わせて使用することができる式1に従う化合物によって達成される安定化効果により、試料に含有されている細胞からのDNAの放出を、例えば、実施例に記載の18S DNAアッセイで決定して、少なくとも最大10倍、好ましくは7倍、より好ましくは5倍、最も好ましくは少なくとも最大4倍まで低減するという結果が得られる。実施例によって示されるように、細胞外核酸集団の効果的な安定化は、少なくとも最長6日間にわたって達成することができる。試料のより短い貯蔵、例えば、最長3日間の貯蔵期間の間では、DNA放出を、例えば、実施例に記載の18S DNAアッセイで決定して、少なくとも最大2倍まで低減することができる。したがって、本発明の安定化方法を使用して、DNA放出を、3日間までの保存期間で、2倍またはそれ未満まで低減することができる。このことは、従来技術の方法と比較して、細胞外核酸集団の安定化における顕著な改善点である。これによって、その後の全ての試験の精度が著しく高められる。ある特定の場合には、例えば、試料材料を、例えば、室温で長距離輸送しなければならいか、または長期間貯蔵しなければならない場合(例えば、ある特定の国の場合にあり得る)には、本発明の方法によって初めて、このような期間が経過した後でも、これらの試験を実施することが可能となる。しかし当然のことながら、必要に応じてそれより早期に試料をさらに処理することもできる。達成され得る全ての安定化期間を必ずしも利用する必要はない。本発明を用いて達成される安定化によって、採集した後の試料の様々な取扱い/処理(例えば、貯蔵条件および貯蔵期間)によって生じる可能性のある細胞外核酸集団の変動が低減される。これにより、取扱いおよび分子分析の標準化が顕著に改善される。
細胞含有試料をさらに安定化するために、少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミドに加えて、追加の添加剤を使用することができる。それらはアポトーシス阻害剤に加えて、またはその代わりに使用することができる。安定化効果にも寄与する可能性のある適切な添加剤の選択は、安定化される細胞含有試料のタイプに応じて変わる場合もある。例えば、細胞含有生物試料として全血を処理する場合、例えば、ヘパリン、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸塩、シュウ酸塩、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される抗凝固剤を含めることが有利であり、一般的である。有利な実施形態では、抗凝固剤はキレート化剤である。キレート化剤は、有機化合物の2つまたはそれを超える原子を介して金属と配位結合を形成することができる有機化合物である。本発明におけるキレート化剤には、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジニトリロ四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)およびN,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン(NTA)が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施形態では、EDTAが使用される。本明細書で使用される場合、用語の「EDTA」は、特に、EDTA化合物の、例えば、KEDTA、KEDTAまたはNaEDTAなどのEDTA部分を指す。EDTAなどのキレート化剤の使用には、DNアーゼなどのヌクレアーゼが阻害され、それによって、例えば、DNアーゼによる細胞外DNAの分解が防止されるという有利な効果もある。さらに、EDTAをより高濃度で使用/添加すると、細胞から細胞内核酸、特にゲノムDNAが放出されるのを低減することができ、それにより、少なくとも1つの式1に従う化合物によって達成される安定化効果が支援されることが明らかになった。しかし、EDTA単独では、例えば、試料に含有されている細胞から放出されるゲノムDNAの断片化を効率的に阻害することができない。したがって、EDTAでは、十分な安定化効果を達成できない。しかし、EDTAは、本発明の教示と組み合せて、特にアポトーシス阻害剤、特にカスパーゼ阻害剤と組み合せて使用すると、上記で考察した理由から、安定化をさらに改善することができる。さらには、RNAの化学的安定性も増大すると思われる。一実施形態では、上述の1つまたはそれを超える安定化化合物と混合される生物試料中のキレート化剤、好ましくはEDTAの濃度は、接触させるステップの後で、0.05mM〜100mM、0.05mM〜50mM、0.1mM〜30mM、1mM〜20mM、および2mM〜15mMからなる群より選択される範囲である。それぞれの濃度は、血液、血漿および/または血清試料、特に10mlの血液試料を安定化する場合に、特に効果的である。
また、細胞含有試料の安定化をさらに支援し、それぞれに細胞外核酸集団の保存を支援するために、追加の添加剤を使用することもできる。それぞれの添加剤の例には、ヌクレアーゼ阻害剤、特にRNアーゼおよびDNアーゼ阻害化合物が挙げられるが、これらに限定されない。RNアーゼ阻害剤の例には、抗ヌクレアーゼ抗体またはリボヌクレオシド−バナジル複合体が挙げられるが、これらに限定されない。それぞれの追加の添加剤を選択する場合、安定化剤として使用される少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミドの安定化効果を損なわないように、および/または弱めないように注意すべきである。したがって、生物試料に含有されている細胞の溶解および/または分解を生ずる、もしくは助ける濃度、および/または生物試料の無細胞画分に含有される核酸の分解を助ける濃度で添加剤を使用すべきではない。したがって、カオトロピック塩は使うべきではない。さらにまた、安定化に使用される少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミドのトランスクリプトーム安定化効果を弱め、無効にする濃度で添加物を使用すべきではない。
一実施形態では、細胞含有試料は、少なくとも1つの式1:
(式中、R1は水素残基またはアルキル残基であり、R2およびR3は、同じまたは異なる直鎖または分岐鎖配置の1〜20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基であり、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基であり、好ましくはR4は酸素である)
に従う化合物の三級アミドとさらに接触させられる。
R1およびR2は、一級および二級カルボン酸アミドを表す式1中のR1およびR2と同じ意味を有する(上記を参照)。さらに、三級アミドでは、R3は同じ意味を有することができ、したがって、直鎖または分岐鎖配置の1〜20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基である。R2に対して好適で好ましい実施形態は、三級アミドのR3に対しても当てはまる。
一実施形態では、式1に従う三級アミドは、カルボン酸アミドである。一実施形態では、式1に従う三級アミドは、N,N−ジアルキルプロパンアミド、好ましくは、N,N−ジメチルプロパンアミドである。一実施形態では、式1に従う三級アミドは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロパンアミド、N,N−ジメチルブタンアミドからなる群より選択される。
一実施形態では、細胞含有生物試料が少なくとも1つの式1に従う一級または二級カルボン酸アミドおよび三級アミドならびに安定化のために使用される追加の任意の添加物と接触させられた後、得られた混合物は、
i)少なくとも0.1%、少なくとも0.25%、少なくとも0.5%、少なくとも0.75%、少なくとも1%、少なくとも1.25%または少なくとも1.5%の濃度;および/または
ii)0.1%〜30%、0.25%〜20%、0.5%〜15%、0.7%〜10%、0.8%〜7.5%、0.9%〜6%または1%〜5%の範囲の濃度の式1に従う三級アミドを含む。
一実施形態では、安定化される細胞含有生物試料は、安定化剤としての少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーとさらに接触させられる。用語のポリ(オキシエチレン)ポリマーは、特に、エチレンオキシドのオリゴマーまたはポリマーを意味する。ポリオキシエチレンポリマーは少なくとも2つのエチレンオキシド単位を含む。ポリ(オキシエチレン)ポリマーは、低および高分子量のものが知られている。一実施形態では、分子量は200〜20000Daの範囲である。ポリ(オキシエチレン)ポリマーは直鎖もしくは分岐鎖であってよく、またはその他の幾何学的配置であってもよい。直鎖ポリ(オキシエチレン)ポリマーが好ましい。ポリ(オキシエチレン)ポリマーは、未置換でも置換されていてもよく、また、ポリエチレングリコールであるのが好ましい。ポリエチレングリコールは、好ましくは非分岐鎖であり、未置換であっても置換されていてもよい。既知の置換型のポリエチレングリコールには、例えば、片方または両方の末端でC1−C5アルキル基で置換されている、アルキルポリエチレングリコールが含まれる。式:HO−(CHCHO)−Hの未置換ポリエチレングリコールが使われるのが好ましい。本出願でポリ(オキシエチレン)ポリマーに関して一般的に記載された全ての開示は、個別に適用され、また、明示的に記述されていなくても、特にポリエチレングリコールを好ましい実施形態とする。ポリ(オキシエチレン)ポリマーは種々の分子量で使用することができる。好ましくは、用語のポリエチレングリコールは、ポリ(オキシエチレン)ポリマーとして本明細書で適切で好ましいとして同定される分子量からも明らかなように、オリゴマーまたはポリマーを意味する。ポリ(オキシエチレン)ポリマーは、また、好ましい実施形態として、特にポリエチレングリコールを使用する。ポリエチレングリコールなどのポリ(オキシエチレン)ポリマーの追加の使用は、このようなポリマー、特に、ポリエチレングリコールは、細胞を安定化し、したがって、細胞含有試料(血液試料が好ましい)に与える安定化効果を支援するために使用することができることが明らかになったので、有利である。
本明細書で開示の安定化方法は、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド放出剤、などの架橋剤の使用に基づく現状の安定化方法に比べて大きな利点を提供する。架橋剤は、核酸分子間、または核酸とタンパク質との間で分子間または分子内共有結合を生じさせる。この架橋結合効果は、その後のこのような安定化試料からの核酸の単離を妨害する可能性がある。例えば、全血試料中の循環核酸の濃度は、既に相対的に低いので、このような核酸の収率をさらに減らすどのような処置も回避されるべきである。このことは、例えば、悪性腫瘍に由来する、または妊娠初期に発育中の胎児に由来する非常に希少な核酸分子を検出し分析する場合に、特に重要になる可能性がある。実施例で示されるように、本発明の方法は安定化のために架橋試薬を必要としない。したがって、一実施形態では、本発明による安定化方法は、タンパク質−核酸および/またはタンパク質−タンパク質架橋を誘発する架橋試薬の使用を含まない。特に、安定化は、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、またはホルムアルデヒド放出剤の使用を含まない。さらに、本発明による安定化方法は、有核細胞の溶解をもたらす添加物の使用を含まない。
本発明の有利な実施形態では、細胞含有生物試料(好ましくは、血液試料または血漿もしくは血清などの血液由来試料)は、
a)少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミド、好ましくは、ホルムアミドまたはブタンアミド(好ましい濃度は上述した通り)、
b)好ましくは1μM〜30μMの範囲の濃度の、少なくとも1つのカスパーゼ阻害剤、好ましくはQ−VD−OPh、および
c)追加の添加剤、好ましくは2mM〜100mMまたは4mM〜50mM、好ましくは4mM〜20mMの濃度範囲の好ましくはキレート化剤、最も好ましくはEDTA、と接触させられる。
安定化組成物の成分は、緩衝液、例えば、MOPS、TRIS、PBSなどの生理的緩衝液に含まれ、それぞれに溶解することができる。さらに、それらは水中またはいずれか他の適切な溶媒中に溶解することができる。一実施形態では、安定化組成物はDMSOなどの溶媒を含む。
少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミド、ならびに任意に存在する追加の添加物は、例えば、試料を採集するための装置、好ましくは容器内に存在させることができ、または生物試料を採集する直前に、それぞれの採集装置に添加することができ、または試料を装置内に採集した直後に採集装置に添加することができる。適切で好ましい一級および二級カルボン酸アミドは上述し、上記開示で言及されており、それはここでも適用される。一実施形態では、ホルムアミドまたはブタンアミドが安定化のために使用される。安定化剤(単一または複数)、および任意の追加の添加剤(単一または複数)を、細胞含有生物試料に別々に添加することも本発明の範囲に含まれる。しかし、取扱いを容易にするために、1つまたはそれを超える安定化剤、および任意の追加の添加剤が、それぞれの採集装置中に、例えば、1つの組成物の形で提供されるのが好ましい。しかし、それらは、採集装置中で別々の成分または組成物として存在してもよい。さらに、有利な一実施形態では、少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミド、ならびに任意の追加の添加剤(単一または複数)を、試料を添加する前に、収集装置内に存在させる。これにより、細胞含有生物試料を安定化剤(単一または複数)に接触させるとすぐに安定化することが確実になる。安定化剤(単一または複数)は、前記容器に採集され、それぞれにその容器に含まれる量の細胞含有試料を安定化するのに効果的な量で、容器内に存在する。上述の通り、試料はその採集後および/または採集中に安定化剤(単一または複数)と直接混合され、それによって安定化された試料が得られる。一実施形態では、安定化は、細胞の安定化を支援するために、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくはポリエチレングリコールの使用を含む。
好ましくは、試料は、試料の採集後および/または採集中に、安定化剤(単一または複数)と直接混合される。したがって、好ましくは、上述の安定化剤(単一または複数)および添加剤は、安定化組成物の形態で提供される。好ましくは、前記安定化組成物は、液体形態で提供される。前記安定化組成物は、試料の採集中に試料がすぐに安定化されるように、例えば、試料採集装置に予め充填することができる。一実施形態では、安定化組成物を、細胞含有試料と10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択される体積比で接触させる。多量の試料の安定化が少量の安定化組成物で実現することができることが、本発明の教示の特別な利点である。したがって、好ましくは、安定化組成物と試料の比は、1:2〜1:7、より好ましくは1:3〜1:5の範囲に含まれる。
本明細書で使用される場合、用語の「細胞含有試料」は、特に、少なくとも1個の細胞を含む試料を意味する。細胞含有試料は、少なくとも2個、少なくとも10個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも250個、少なくとも500個、少なくとも1000個、少なくとも1500個、少なくとも2000個、または少なくとも5000個の細胞を含むことができる。さらに、大幅に多くの細胞を含む細胞含有試料も、前記用語に包含され、本発明の教示に従って安定化することができる。しかし、それぞれの試料は残存細胞を含むことが多いので、用語の「細胞含有試料」は、例えば、血漿などの「無細胞」と一般に呼ばれる細胞除去試料を含む細胞除去試料も意味し、したがってこれも包含する。少なくとも、血漿などのいわゆる「無細胞」試料であっても残存量の細胞を含み、それにより前記残存細胞から放出される細胞内核酸による細胞外核酸集団への混入の危険性があることを、完全には除外できないことが多い。したがって、一実施形態では、それぞれの細胞除去試料および「無細胞」試料も、用語の「細胞含有試料」に包含される。したがって、「細胞含有試料」は、例えば、全血を用いる場合のように、多量の細胞を含む場合があるが、微量の細胞しか含まない場合もある。したがって、用語の「細胞含有試料」は、細胞を含有すると疑われているいるだけの場合、またはその危険性を有する場合の試料も包含する。上記で考察したように、例えば、血漿などの微量の、それぞれに残存量の細胞しか含まない生物試料に関しても(血漿は、調製方法に応じて、一般に無細胞と呼ばれる場合でも通常は残存する少量の細胞を含有する)、これらの残存細胞が、含まれる細胞外核酸の望ましくない混入をもたらすこともあるので、本発明による方法には大きな利点がある。本発明の安定化技術を使用すると、残存量の細胞しか含まないか、または残存量の細胞を含むと疑われているだけであるか、もしくはその危険性を有するそれぞれの試料もまた、先に詳述した通り確実に効果的に安定化される。一実施形態では、細胞部分は、細胞含有生物試料の、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも2.5%、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%を占める。細胞画分が40%超を占める細胞含有試料も、本明細書で記載の教示を使って安定化することができる。本発明による安定化方法の使用には、試料の組成および試料に含有されている細胞の数とは無関係に、試料に含まれる細胞外核酸集団が、実質的に保存され、それぞれに安定化され、それによって試料に含まれる細胞外核酸のその後の単離および/または分析の標準化が可能になるという利点がある。
一実施形態では、細胞含有生物試料は、全血、血液由来の試料、血漿、血清、喀痰、涙液、リンパ液、尿、汗、髄液、脳脊髄液、腹水、乳、糞便、気管支洗浄液、唾液、羊水、鼻汁、膣分泌物、精液/精漿、創傷分泌物、ならびに細胞培養上清、および他のスワブ試料から得られた上清からなる群より選択される。一実施形態では、細胞含有生物試料は、体液、身体分泌物または身体排泄物、好ましくは体液、最も好ましくは全血、血漿または血清である。細胞含有生物試料は、細胞外核酸を含む。別の実施形態では、細胞含有生物試料は、例えば糞便、組織または生検試料などの、ヒトまたは動物に由来する非流体試料である。本発明の方法を用いて安定化できる細胞含有生物試料の他の例には、細胞外核酸を含む生物試料である細胞懸濁液、細胞培養物、細胞培養上清などが挙げられるが、これらに限定されない。
上述のように、また実施例によって示されるように、本発明の方法を使用すると、細胞含有試料を長期間冷蔵または凍結することなく安定化することが可能となる。したがって、試料は、室温で、または、例えば、最大30℃もしくは最大40℃の高温でも保持することができる。一実施形態では、安定化効果は、室温で、少なくとも2日間、好ましくは少なくとも3日間、より好ましくは少なくとも1日間〜6日間、最も好ましくは少なくとも1日間〜少なくとも7日間にわたり実現される。実施例で示されるように、本発明の方法により安定化された試料は、室温で3日間貯蔵しても実質的に損なわれなかった。室温でより長い期間、最長6日間、またはさらには7日間貯蔵しても、細胞外核酸集団は、非安定化試料と比較して、または例えばEDTA処理などの標準的方法を使用して安定化された試料と比較して、実質的により安定化された。安定化効果は、経時的に低下する可能性があるとしても、それでも細胞外核酸集団の組成物を保存して、分析および/またはさらなる処理を可能にするのに十分である。したがって、本発明の方法により安定化された試料は、室温で長期間貯蔵した後でも、試料に含有されている細胞外核酸を単離し、任意に分析するのに適していた。さらに、トランスクリプトームは効果的に安定化された。したがって、安定化剤の好ましい組合せを使用した場合には特に試料は損なわれなかったため、さらに長い貯蔵/輸送時間も考えられる。しかし、通常の貯蔵時間、例えば、核酸の単離および任意の分析が実施される検査室までの輸送時間は、通常は6日または7日を超えず、むしろ2日または3日で完了するのが普通なので、通常はさらに長い期間は必要ではない。実施例で示されるように、安定化効率は、この期間中、特に良好である。しかし、本発明の方法を用いて達成することができる、特別に長い安定化期間および特別に高い安定化効率によって、重要な安全係数がもたらされる。
本発明の教示に従って使用される添加剤は高活性であるので、本発明の方法、さらには後述する本発明の組成物により、少量の添加物質を使って、多量の生物試料を安定化することも可能となる。このことは、特に試料に含有されている細胞外核酸を単離するために自動化プロセスの使用が意図されている場合には、試料のサイズ/体積がその後の単離手順に対して大きい制約を課すので、重要な利点である。さらに、細胞外核酸は、試料中に少量しか含まれないことが多いことを考慮する必要がある。したがって、例えば、血液試料などの多量の細胞含有試料の処理には、より多量の循環核酸を試料から単離することができ、したがってその後の分析に利用できるという利点がある。
生物試料の安定化の後、核酸分析技術を直接適用することができ、または核酸を試料から精製することができる。したがって、本発明の方法に従って安定化された試料は、核酸の分析方法および/または検出方法で分析することができ、および/またはさらに処理することができる。例えば、細胞外核酸を、安定化された試料から単離することができ、その後、核酸の分析方法および/または検出方法で分析することができ、またはさらに処理することができる。さらに、細胞を安定化試料から取りだして分析することができ、および/または得られた細胞から核酸を単離することができる。核酸単離および分析に関する詳細は、本発明の第2の態様と共に以降で記載され、また、それは前記開示で言及されている。記載されているように、本発明による安定化方法の1つの重要な利点は、例えば、安定化用のホルムアルデヒド放出剤などの架橋剤を使用する場合のような、安定化に起因して後で行われる核酸単離が妨害されるということがないという点にある。さらに、細胞の形態または細胞表面特徴に関して細胞を分析することができる。これにより、例えば、腫瘍細胞の特定が可能となる。一実施形態では、細胞内RNAが安定化試料中に含まれる細胞から単離され、分析される。一実施形態では、本方法は、1つまたはそれを超える遺伝子転写物の定性的または定量的分析を実施することを含む。
核酸を単離する方法
さらに、第2の態様では、生物試料から核酸を単離する方法であって、
a)第1の態様による方法により細胞含有試料を安定化するステップと、
b)該安定化試料から核酸を単離するステップと、
を含む、方法が提供される。
一実施形態では、前記方法は、
a)第1の態様による方法により細胞含有試料を安定化することと、
b)該安定化試料から細胞内核酸を単離することと、を含む。
一実施形態では、前記方法は、細胞含有生物試料から細胞外核酸を単離するための方法であり、前記方法は、
a)本発明の第1の態様で定義される方法により細胞含有試料に含まれる細胞外核酸集団を安定化するステップと、
b)細胞外核酸を単離するステップと、を含む。
上記で考察したように、本発明による安定化には、生物試料を取得し、それぞれに採集した時点にて示される状態で、その試料に含まれている細胞外核酸集団が実質的に保存されるという効果がある。特に、損傷細胞または死細胞から放出される細胞内核酸、特にゲノムDNA、より具体的には断片化ゲノムDNAから生じる、通常観察される核酸の高い増加は、実施例で示されるように効果的に低減される。したがって、それぞれに安定化された試料から得られる細胞外核酸は、非安定化試料と比較して、試料に含まれている分解細胞または死細胞から生じる細胞内核酸の混入が少なく、特に断片化ゲノムDNAの含有量が少ない。さらに、特有の安定化ステップによって、回収可能な細胞外核酸の量を増やすことが可能になる。本発明による安定化方法は、試料を架橋することなく実施することができる。このことは、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出剤などの架橋剤が、架橋に起因して回収可能な細胞外核酸の量を減少させる可能性があるため、これらの試薬を使用に対する重要な利点となる。このように、本発明による方法によって、細胞外核酸の診断および予後能力が改善される。さらに、前記安定化は、試料に含有されている細胞を分離する前および/またはステップb)で試料に含まれている細胞外核酸を単離する前に、室温の場合でも長期間の試料の貯蔵、および/または取扱い、例えば、輸送を可能とする。ステップa)で実施される安定化の詳細については、上記開示で言及され、その開示はここでも適用される。
一実施形態では、例えば、全血試料などの、細胞含有生物試料は、前に詳述したように、少なくとも1つの一級または二級カルボン酸アミド、および任意の追加の添加物を使用して、ステップa)で安定化される。適切で好ましい実施形態は、上述した。全血試料を安定化するのに特に好ましいのは、上述の抗凝固剤、好ましくはキレート化剤と組み合わせてカスパーゼ阻害剤を追加で使用することである。
例えば、全血を用いる場合のように、試料が多量の細胞を含む場合には、細胞外核酸を含む試料の無細胞画分、それぞれに細胞を減らした画分または細胞除去画分を得るために、細胞が残りの試料から分離される。したがって、一実施形態では、ステップa)とステップb)との間で、細胞含有試料から細胞が除去される。この中間ステップは、任意ステップに過ぎず、例えば、血漿または血清などの微量の残存細胞しか含まない試料を処理する場合および/または目的の細胞外核酸がDNAである場合には使用できない。本発明の安定化により、安定化期間中の含まれる細胞からのゲノムDNAの放出が低減、あるいは防止され、さらに、ブタンアミドに加えてカスパーゼ阻害剤を使用する場合には特に、ゲノムDNAの断片化が低減される。本明細書で記載のように、そのかなり大きいサイズのために、非断片化ゲノムDNAはより小さい細胞外DNAから識別することができる。このことにより、非断片化ゲノムDNAの存在下であっても、サイズ選択的分離プロトコルを使って細胞外DNAの選択的な単離が可能となる。しかし、結果を改善するためには、ステップb)で細胞外核酸を単離する前に、別では核酸単離の間に細胞から放出される細胞内核酸での細胞外核酸集団への混入を減らすために、細胞(または潜在的な残存細胞)を安定化試料から除去することが好ましい。含まれる細胞を除去することは、細胞内RNAを細胞外RNAから識別するのが困難な場合があり、さらに、細胞の除去により細胞外RNAの希釈が防止できるために、目的の細胞外核酸がRNAである場合に特に有利である。しかし、目的の細胞外核酸がDNAの場合にも、ステップb)の前の細胞除去ステップは、これによりステップb)で標準的核酸単離手順の使用が可能となるために、概して好都合であり、したがって好ましい。細胞含有生物試料のタイプに応じて、残存細胞を含む細胞を、例えば、遠心分離、好ましくは高速遠心分離によって、または遠心分離ステップを回避すべき場合には、例えば濾過、沈殿もしくは、例えば、(任意選択により磁気)粒子表面への結合などの、遠心分離以外の手段を使用することによって分離し、除去することができる。それぞれの細胞分離法は先行技術でよく知られており、したがって、詳細に記述する必要はない。それぞれの細胞除去ステップは、自動化試料調製プロトコルにも容易に含めることができる。それぞれに除去された細胞を、必要に応じさらに処理することもできる。細胞は、例えば、貯蔵、分析することができ、および/または、例えば、核酸もしくはタンパク質などの生体分子を、除去された細胞から単離することができる。さらに、細胞内RNAなどの細胞内核酸を本明細書記載の方法を使って安定化することができることが明らかになった(上記参照)。トランスクリプトームの追加の安定化は、例えば、インビトロ診断用の重要なバイオマーカーであり得る、単離された細胞内核酸中の転写物プロファイルを分析することが可能となるので、有利である。
さらに、試料を処理するためのさらなる中間ステップを含めることも、本発明の範囲に含まれる。
次に、細胞外核酸は、ステップb)で、例えば無細胞画分、それぞれに細胞除去画分、例えば、上清、血漿および/または血清から単離される。細胞外核酸を単離するために、それぞれの試料から、それぞれに細胞除去試料から核酸を単離するために適する、いずれかの既知の核酸単離方法を使用することができる。それぞれの精製方法の例としては、抽出、固相抽出、シリカに基づく精製、磁気粒子に基づく精製、フェノール−クロロホルム抽出、クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー(アニオン交換表面を使用する)、電気泳動法、濾過、沈殿、クロマチン免疫沈降、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、配列特異的な結合を可能にし、固体支持体に結合する適切なプローブを使用することによって、特異的標的である細胞外核酸を特異的に単離することも本発明の範囲に含まれる。当業者に既知の任意の他の核酸単離技術を使用することもできる。一実施形態では、核酸は、カオトロピック剤および/またはアルコールを使用して単離される。好ましくは、核酸は、固相、好ましくはシリカまたはアニオン交換官能基を含む固相に結合させることによって単離される。QIAamp(登録商標)Circulating Nucleic Acid Kit(QIAGEN)、Chemagic Circulating NA Kit(Chemagen)、NucleoSpin Plasma XS Kit(Macherey−Nagel)、Plasma/Serum Circulating DNA Purification Kit(Norgen Biotek)、Plasma/Serum Circulating RNA Purification Kit(Norgen Biotek)、High Pure Viral Nucleic Acid Large Volume Kit(Roche)、および循環核酸を抽出し、精製するのに適した他の市販キットなどの適切な方法およびキットも、市販されている。
一実施形態では、ステップa)の後、または任意選択により中間ステップで細胞が除去された後に得られる試料に含まれる全核酸が単離され、例えば、無細胞画分、それぞれに細胞除去画分から単離される。例えば、全体核酸を血漿または血清から単離することができ、細胞外核酸は、抽出したこれらの核酸の一部として含まれることになる。細胞が効率的に除去されると、単離された全体核酸は、主に細胞外核酸を含む、あるいは細胞外核酸からなるであろう。
少なくとも主に特異的標的核酸を単離することも、本発明の範囲に含まれる。標的核酸は、例えば、特定のタイプの細胞外核酸、例えば、mRNA、マイクロRNA、他のノンコーディング核酸、エピジェネティック修飾核酸、および他の核酸を含むDNAまたはRNAであってよい。例えば、標的細胞外核酸がDNAであって、非標的細胞外核酸がRNAであってもよく、またはその逆であってもよい。DNAまたはRNAの単離を特異的に目的とする標的特異性核酸単離方法も、先行技術でよく知られており、本明細書で何らかの詳細な説明をする必要性はない。一実施形態では、特異的に非標的核酸を破壊する適切な酵素、例えば、標的核酸がDNAの場合にはRNアーゼを、または標的核酸がRNAの場合にはDNアーゼを添加することにより、非標的核酸が破壊される。前記酵素は、溶解もしくは結合混合物に添加することができ、または細胞外核酸が固相に結合した後で添加することができる。それぞれの非標的核酸消化ステップを実施するための適切な実施形態は、先行技術でよく知られており、したがって、本明細書で何らかのさらなる説明をする必要性はない。DNAおよびRNAが固体支持体に結合している場合に実施可能な一実施形態では、標的核酸に対する選択的な溶出条件を主に、したがって選択的に固体支持体から標的核酸を回収するために適用する。一実施形態では、単離方法は、非標的核酸、例えば、RNAが結合しない条件下で、標的核酸、例えば、DNAが選択的に固相と結合する条件で使用される。適切な結合条件は先行技術でよく知られており、例えば、国際公開第95/21849号に記載されている。一実施形態では、非標的核酸は、適切な条件下で少なくとも一部の非標的核酸を固相に結合させ、その後、標的細胞外核酸を含む残存試料から固相に結合した非標的核酸を分離することにより除去される。これは、例えば、主に非標的核酸、例えば、DNAが固相に結合し、一方で非標的核酸、例えば、RNAが試料中に残り、別のステップでそこから回収される条件下で適切な固相を添加することにより達成できる。非標的核酸を標的核酸から選択的に除去するために適切な方法は、例えば、欧州特許第0880537号および国際公開第95/21849号に記載されている。これらの特許は参照により本明細書に組み込まれる。必要に応じ、前記非標的核酸をさらに使用してもよく、例えば、固相から溶出するなどのさらなる処理をしてもよい。しかし、それを廃棄してもよい。例えば、標的核酸の単離後にヌクレアーゼを使用して非標的核酸またはその残部を消化することも本発明の範囲に含まれる。
標的核酸という用語が、特定の種類の核酸、例えば、ある特定の疾患マーカーであることが既知の特異的細胞外核酸を意味してもよい。上記で考察したように、細胞外核酸の単離には、例えば、標的核酸の選択的単離を助ける適切なキャプチャープローブを使用することによって、それぞれの標的核酸を特異的に単離することを含めてもよい。
標的核酸という用語が、一定の長さを有する核酸、例えば、5000ntまたはそれ未満、2000ntまたはそれ未満、1000ntまたはそれ未満、900ntまたはそれ未満、800ntまたはそれ未満、700ntまたはそれ未満、600ntまたはそれ未満、500ntまたはそれ未満、400ntまたはそれ未満、または350ntまたはそれ未満の長さを有する核酸を意味してもよい。ある特定の最大サイズの標的核酸の単離は、本発明との関係において有利な場合がある。細胞外核酸は、通常、2000nt未満、1000nt未満、さらには多くの場合500nt未満のサイズを有することが知られている。本明細書に示したサイズ、サイズ範囲は、それぞれに鎖長を意味する。すなわち、二本鎖DNAなどの二本鎖核酸の場合、鎖長はbpを指す。ステップb)における小さい核酸の選択的単離は、単離核酸中で得られる細胞外核酸の部分を増やすことができる。本発明の安定化方法によって、特にゲノムDNAの放出の阻害および/または放出されたゲノムDNAの断片化の阻害に起因して、より小さい細胞外核酸集団からのこのような高分子量ゲノムDNAのより効率的な分離が可能となる。ゲノムDNAと細胞外核酸との間の実質的なサイズの差異が、本発明の安定化技術を使用して本質的に保存されるので、ゲノムDNAを、例えば、サイズ選択的核酸単離プロトコルを使って、より効率的に除去することができる。本明細書で記載のように安定化された試料中のゲノムDNA(通常10,000bpを超える)と細胞外核酸(通常1000nt/bp未満)との間のサイズの差異は、効果的な安定化に起因して通常は比較的大きいので、ある特定の標的長さの核酸を選択的に単離する既知の方法を使うことができる。したがって、一実施形態では、ステップb)は、5000ntまたはそれ未満、2000ntまたはそれ未満、1500ntまたはそれ未満、1000ntまたはそれ未満、900ntまたはそれ未満、800ntまたはそれ未満、700ntまたはそれ未満、600ntまたはそれ未満、または500ntまたはそれ未満の長さを有する標的核酸を選択的に単離すること含む。例えば、高分子量ゲノムDNAを除去することによって、それぞれの核酸のサイズ選択的単離を達成するのに適した方法は、従来技術では公知であり、したがってここで詳細な説明する必要性はない。標的サイズのDNAを単離する典型的方法は、ゲル中のDNAを分離し、所望のゲルバンド(単一または複数)を切り取り、その後ゲル断片(単一または複数)から標的サイズのDNAを単離することを含む。別の広く使われている技術には、ポリエチレングリコール系緩衝剤を用いたサイズ選択的沈殿法(LisおよびSchleif Nucleic Acids Res.1975 Mar;2(3):383−9))またはカルボキシル官能化ビーズ上への結合/沈殿法(DeAngelisら,Nuc.Acid.Res.1995,Vol 23(22),4742−3;米国特許第5,898,071号および同第5,705,628号、Beckman−Coulterにより商品化(AmPure XP;SPRIselect)および米国特許第6,534,262号)がある。さらに、陰イオン交換基を含む固体支持体の使用および可変pH値に基づくサイズ選択的単離方法が知られている。サイズ選択的単離法には、単離された細胞外核酸中の細胞内核酸の量を低減するためにさらなる機会も提供される。例えば、目的の標的細胞外核酸がDNAの場合、残存細胞を除去するために核酸抽出の開始前に、核酸単離ステップb)中のゲノムDNAの除去によって、血漿試料の個別の高重力遠心分離を補完する、あるいはそれを置き換えることも可能である。前記残存細胞から放出されるゲノムDNAは、特に、少なくとも1つの一級および/または二級カルボン酸アミドに加えてカスパーゼ阻害剤が使用される場合、本発明による安定化によって、大量に分解するのが防止され、その結果として、ステップb)でサイズ選択的核酸単離プロトコルを使うことにより、前記非断片化または断片化の少ないゲノムDNAを除去することができる。多くの臨床検査室が、このような高重力遠心分離を実施することができる遠心分離機または特に微量の残存細胞を除去するための他の手段を備えていないので、この選択肢は特にメリットがある。
さらに、例えば、細胞を残存する試料から分離した後で、細胞内核酸を含有する細胞から単離することができる。例えば、RNAを単離して、遺伝子発現分析に使用することができる。
次に、単離された核酸を、ステップc)で適切なアッセイおよび/または分析方法を使用して、分析および/またはさらに処理することができる。例えば、単離された核酸を、同定し、修飾し、少なくとも1つの酵素と接触させ、増幅し、逆転写し、クローン化し、配列決定し、プローブと接触させ、(それらの有無を)検出し、および/または定量化することができる。それぞれの方法は、従来技術で周知であり、細胞外核酸を分析するために、医療、診断および/または予後分野において一般的に適用されている(発明の背景技術中の詳細説明も参照)。したがって、細胞外核酸を、任意選択により全核酸、全RNAおよび/または全DNAの部分として単離した(上記参照)後に分析して、限定されない、多数の新生物疾患、特に様々な形態の癌などの前悪性腫瘍および悪性腫瘍を含む疾患状態の有無または重症度を特定することができる。例えば、単離された細胞外核酸は、限定されないが、無侵襲的出生前遺伝学的検査、それぞれにスクリーニング、疾患スクリーニング、病原体スクリーニング、腫瘍学、癌スクリーニング、初期段階の癌スクリーニング、癌療法モニタリング、遺伝子検査(遺伝子型判定)、感染症検査、傷害診断、外傷診断、移植医学、または多くの他の疾患を含む多くの適用分野で、診断および/または予後マーカー(例えば、胎児または腫瘍由来の細胞外核酸)を検出するために分析することができ、したがって診断および/または予後に関連する。一実施形態では、単離された細胞外核酸を分析して、疾患または胎児の特徴を同定し、および/または特徴付けする。したがって、上記で考察したように、本明細書で記載の単離方法は、ステップc)の核酸の分析および/または処理をさらに含むことができる。したがって、一実施形態では、単離された細胞外核酸をステップc)で分析して、疾患および/または胎児の少なくとも1つの特徴を同定し、検出し、スクリーニングし、モニターし、または除外する。
核酸の分析/追加の処理は、増幅技術、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、等温増幅、逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR)、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)、デジタルPCR、ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、質量分析、蛍光検出、紫外線分光法、ハイブリダイゼーションアッセイ、DNAもしくはRNA配列決定、制限分析、逆転写、NASBA、対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連鎖反応、ポリメラーゼサイクリングアセンブリ(PCA)、非対称ポリメラーゼ連鎖反応、指数関数後線形(linear after the exponential)ポリメラーゼ連鎖反応(LATE−PCR)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、ホットスタートポリメラーゼ連鎖反応、配列間特異的ポリメラーゼ連鎖反応(ISSR)、逆ポリメラーゼ連鎖反応、ライゲーション媒介ポリメラーゼ連鎖反応、メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(MSP)、多重ポリメラーゼ連鎖反応、ネステッドポリメラーゼ連鎖反応、固相ポリメラーゼ連鎖反応、またはこれらの任意の組合せを含むいずれかの核酸分析/処理方法を使用して実施することができるが、これらに限定されない。それぞれの技術は当業者に周知であり、したがって、ここでさらに説明する必要性はない。
一実施形態では、単離または分析ステップb)およびc)のいずれかまたは両方は、試料を採集し、本発明の教示に従ってそれぞれに安定化した後、少なくとも1日から7日後までに行われる。本発明の方法を使用して、試料、特に血液試料、それぞれに試料に含有されている細胞外核酸集団が安定化されている適切な期間もまた上述されており、ここでも適用される。一実施形態では、単離ステップは、試料を採集し、本発明の方法により安定化した後、少なくとも1日後、少なくとも2日後、少なくとも3日後、少なくとも4日後、少なくとも5日後、または少なくとも6日後に実施される。一実施形態では、単離または分析ステップのいずれかまたは両方は、細胞含有生物試料を保存するために試料を凍結させずに、および/またはホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒド放出剤を使用せずに行われる。生物試料は、好ましくはEDTAのような抗凝固剤などの追加の添加剤と組み合せて、好ましくは上記で定義の式1に従う化合物である少なくとも1つの一級または二級カルボン酸アミドと接触させた後に安定化される。抗凝固剤は、好ましくは、血液または血液由来の試料を安定化する場合に使用される。それぞれに安定化された試料は、室温で取り扱うことができ、例えば、貯蔵および/または輸送することができる。上述のように、一実施形態では、1つのアポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤を安定化のために追加で使用する。
組成物
さらに、本発明の第3の態様では、生物試料の安定化に適する組成物であって、
a)好ましくは少なくとも1%の濃度の、少なくとも1つのカルボン酸アミドであって、一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択されるカルボン酸アミドと、
b)少なくとも1つの抗凝固剤と、
を含む、組成物が提供される。
上記で考察したように、それぞれの安定化組成物は、試料に含まれている細胞、転写物レベルおよび試料に含まれている細胞外核酸を安定化し、それによって細胞外核酸集団を実質的に保存し、それぞれに安定化することによって、細胞含有生物試料、特に全血、血漿および/または血清を安定化するのに特に効果的である。それぞれの安定化組成物によって、全血であるのが好ましい試料を、試料の質、それぞれにその試料に含有されている細胞外核酸集団の質を実質的に損なうことなく、室温で少なくとも2日間、好ましくは少なくとも3日間にわたって貯蔵、および/または取扱い、例えば、輸送することが可能となる。さらに、これにより、含まれる細胞のトランスクリプトームの遺伝子発現プロファイルが保存される。当然のことながら、安定化に可能な期間を全て利用することは必須ではなく、必要に応じてそれより早期に試料を処理することもできる。生物試料を安定化組成物と接触させることによって、室温であっても、試料を貯蔵、および/または取扱い、例えば、輸送を行った後に、試料に含まれている核酸を単離し、任意選択により分析および/または処理することができる。したがって、試料の採集または安定化と、核酸抽出との間の時間を、集団、それぞれに試料に含有されている細胞外核酸集団の組成に実質的に影響を与えずに変えることができる。特に、細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAによる希釈、それぞれに混入が低減される。さらに、含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルが安定化されるので、細胞内RNAを単離することができ、また、例えば、遺伝子発現の分析方法で使うことができ、さらに遺伝子発現プロファイリングに使用することができる。好ましくは、採集直後または採集中の試料を、安定化組成物と接触させる。また、安定化組成物には、本明細書に記載のさらなる安定化剤、例えば、アポトーシス阻害剤を含めることができ、アポトーシス阻害剤としてはカスパーゼ阻害剤が好ましい。
一級と二級カルボン酸アミドおよびアポトーシス阻害剤の適切で好ましい実施形態、ならびに細胞含有試料との混合時にそれぞれの化合物の適切で好ましい濃度は、安定化方法と共に上記で詳述されている。このことは上記開示で言及されており、それは安定化組成物に対しても適用される。前記化合物はアポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤(好ましい実施形態は、上述されており、それは上記開示で言及されている)と組み合わせて使用することもできる。さらに、記載されているように、三級アミドを組み合わせて使用することもできる。好ましくかつ適切な実施形態ならびに適切な濃度は上述され、また、上記開示で言及されており、その開示はここでも適用される。一実施形態では、安定化剤は、ブタンアミドおよびホルムアミドから選択される一級カルボン酸アミドである。ブタンアミドは非毒性であるので、特に好ましい。本明細書で記載のように、ブタンアミドは細胞外核酸集団の安定化に特に効果的である。一実施形態では、安定化剤としてホルムアミドが使用される。実施例で示されるように、ホルムアミドは、細胞外核酸集団ならびに含まれる細胞のトランスクリプトームの安定化に極めて効果的である。したがって、好都合にも、ホルムアミドは両方を安定化する目的に使用することができる。一実施形態では、一級カルボン酸アミドはプロパンアミドではない。
一実施形態では、組成物は少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくはポリエチレングリコールを追加で含む。分子量は、例えば、200〜20000Daの範囲であり得る。安定化組成物へのポリエチレングリコールの含有は、それが安定化される試料中に含まれる細胞の安定化を支援し、したがって、安定化に役立つために、有利である。
さらに、特に、安定化組成物が、全血、血漿または血清を安定化するために使用される場合、組成物がさらなる添加剤、例えば、キレート化剤などの抗凝固剤を含むことが好ましい。
本発明により提供される安定化組成物は、細胞含有生物試料を安定化し、したがって試料に含有されている有核細胞の、および好ましくはまた核細胞の、溶解および/または破壊を引き起こすことはない。したがって、安定化組成物は、それぞれの細胞および好ましくは細胞全般の細胞溶解を誘発または促進すると想定される濃度の添加物を含まない。安定化組成物は、例えば、実施例の項に記載のアッセイ方法によって測定されるように、試料に含まれている細胞の損傷を低減することができる。一実施形態では、特に、本明細書で記載の安定化組成物は、細胞含有生物試料中に含まれる細胞から試料の無細胞の部分へのゲノムDNAの放出を減らすことができる。さらに、特に、カスパーゼ阻害剤を含有する場合には、安定化組成物は、安定化試料中に存在する核酸、特に、ゲノムDNAの分解を減らすことができる。記載されているように、安定化組成物は、生物試料中に含まれる細胞外DNA集団への、安定化試料中に含まれる細胞由来のゲノムDNAの混入を減らすか、または防止することができる。好ましくは、安定化組成物は、生物試料中に含まれる細胞外核酸集団への、安定化試料中に含まれる細胞由来の細胞内核酸、特に、DNAおよびRNAの混入を減らすか、または防止することができる。好ましくは、安定化組成物は、タンパク質−DNAおよび/またはタンパク質−タンパク質架橋を誘発する架橋剤を含まない。特に、安定化組成物は、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、もしくはホルムアルデヒド放出剤または類似の架橋剤を含まない。さらに、本明細書で記載し、実施例で示されるように、一実施形態では、安定化組成物はトランスクリプトームの安定化をもたらす。
一実施形態では、安定化組成物は、言及した安定化剤および任意の添加剤、および任意の緩衝剤から本質的になる。安定化組成物は、試料を安定化し、したがって、試料に含まれる細胞の溶解および/または破壊を促進しない。安定化組成物は、例えば、実施例の項で記載のアッセイ方法によって測定できるように、試料に含まれている細胞の損傷を低減することができる。
組成物は、固体形態で提供することができる。このことは、例えば、安定化される生物試料が、その固体を溶解するための液体(例えば、細胞を含有する体液、培地中の細胞、尿など)を含有している場合、または液体、例えば、水を試料に添加してその固体を溶解する場合に、適切な選択肢となる。固体の安定化組成物を使用する利点は、固体が通常は化学的により安定であるということである。しかし、液体組成物を使用することもできる。液体組成物には、多くの場合、安定化される試料と素早く混合することができ、それによって、基本的には試料が液体の安定化組成物と接触してすぐに即時的な安定化効果を提供できるという利点がある。好ましくは、液体の安定化組成物中に存在する安定化剤(単一または複数)は、溶液中で安定なままであり、例えば、低溶解度の沈殿物を溶解するなどの使用者による前処理は必要ない。理由は、この種の前処理が安定化効率を変動させる危険性があるためである。
生物試料と混合した本発明による安定化組成物を含む混合物も、提供される。生物試料の適切で好ましい例、ならびに生物試料と混合される場合の安定剤(単一または複数)の適切な濃度は、安定化方法と共に上述されている。それは上記開示で言及され、その開示はここでも適用される。好ましくは、安定化組成物は、試料が、採集中にすぐに安定化されるように、試料採集装置に予め充填されている。一実施形態では、安定化組成物を、生物試料、好ましくは血液試料と、10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択される体積比で接触させる。少量の安定化組成物によって多量の試料を安定化することができることが、本発明の安定化組成物の特別な利点である。したがって、好ましくは、安定化組成物と試料の比は、1:2〜1:7、より好ましくは1:3〜1:5の範囲に含まれる。
使用
本発明の第3の態様による安定化組成物を使用して、細胞含有試料に含まれている細胞外核酸集団を安定化することができる。さらに、本発明の第3の態様による安定化組成物を、試料に含有されている細胞を安定化するために使用することもできる。上述のように、安定化組成物は、特に、崩壊細胞から生じるゲノムDNAが細胞から放出されるのを低減する。したがって、それぞれの使用も有利であり、本発明による教示によって提供される。さらに、本発明の第3の態様による安定化組成物を、含まれる細胞中の転写物レベルを安定化するために使用することもできる。
製造方法
また、本発明の第3の態様による組成物を製造する方法であって、組成物の成分は、好ましくは水溶液中で混合される、方法も提供される。
本発明の組成物はまた、試料採集装置、特に、採血アセンブリに組み込むこともでき、それにより、このような装置の新しい有用な型を提供する。このような装置には、通常、開口端および閉止端を有する容器が含まれる。容器は、好ましくは採血チューブである。容器のタイプは、採集される試料によっても変わり、他の適切な型式を、以下に記載する。
容器
さらに、本発明は、細胞含有生物試料、好ましくは血液試料を採集するための容器であって、
a)好ましくは少なくとも1%の濃度の、少なくとも1つのカルボン酸アミドであって、一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択されるカルボン酸アミドと、
b)少なくとも1つの抗凝固剤と、
を含む、容器を提供する。
細胞含有生物試料、好ましくは血液試料を採集するための容器は、本発明による安定化組成物を含むことができる。本発明による前述の成分または安定化組成物を含むそれぞれの容器、例えば、試料採集チューブを提供することには、試料がそれぞれの容器に採集されるときに素早く安定化されるという利点がある。安定化に使用される薬剤の使用および安定化組成物に関する詳細は上述され、上記開示で言及されており、その開示はここでも適用される。
一実施形態では、生物試料を受け入れ、採集するための採集容器であって、該容器は、
a)好ましくは少なくとも1%の濃度の、少なくとも1つのカルボン酸アミドであって、一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択されるカルボン酸アミドと、
b)少なくとも1つの抗凝固剤と、
を含む、採集容器が提供される。
適切な実施形態および濃度も、その方法と共に上述されており、上記開示で言及されている。一実施形態では、一級カルボン酸アミドは、ブタンアミドおよびホルムアミドから選択される。一実施形態では、容器は、試料が採集されるときに、得られる混合物中のアポトーシス阻害剤または2つまたはそれを超えるアポトーシス阻害剤の組み合わせの濃度が、少なくとも0.01μM、少なくとも0.05μM、少なくとも0.1μM、少なくとも0.5μM、少なくとも1μM、少なくとも2.5μMまたは少なくとも3.5μMから選択され、好ましくは0.01μM〜100μM、0.05μM〜100μM、0.1μM〜50μM、1μM〜40μM、1.0μM〜30μMまたは2.5μM〜25μMから選択される濃度範囲で存在するように、少なくとも1つのアポトーシス阻害剤を追加で含む。一実施形態では、容器は少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくは少なくとも1つのポリエチレングリコールを追加で含む。詳細は上述され、それは上記開示で言及されている。
予め充填される成分は、液体または乾燥形態で提供することができる。一実施形態では、安定化成分は、安定化組成物として提供される。乾燥形態は、例えば、安定化される生物試料が、固体を溶解するための液体(例えば、細胞を含有する体液、培地中の細胞、尿など)を含有している場合、または液体、例えば、水を試料に添加して固体を溶解する場合に、適切な選択肢となる。固体の安定化組成物を使用する利点は、固体が通常は液体よりも化学的に安定であるということである。一実施形態では、容器の内壁は、本発明の安定化組成物で処理/被覆される。前記組成物は、例えば、スプレー乾燥法を使用して内壁に塗布することができる。実質的に固体状態の保護組成物を得るために、安定化組成物に液体除去技術を施すことができる。液体除去条件は、分配した液体安定化組成物の元の量の少なくとも約50重量%、少なくとも約75重量%、または少なくとも約85重量%を除去するような条件であってよい。液体除去条件は、得られる組成物が、フィルム、ゲル、または他の実質的に固体の層もしくは非常に粘性の層の形態になるように十分な液体が除去されるような条件であってよい。例えば、その条件によって、実質的に固定されたコーティングを得ることができる(細胞含有試料(血液製剤試料が好ましい)と接触時に、再溶解するか、または別の方法で分散することができるコーティングが好ましい)。実質的に固体形態(例えば、1つまたはそれを超えるペレットの形態)の保護剤を実現するために、凍結乾燥または他の技術を用いることが可能である。したがって、液体除去条件は、想定している試料(例えば全血試料)との接触時に保護剤が試料中に分散し、試料中の成分(例えば細胞外核酸)を実質的に保存することになる物質を生成するような条件であってよい。液体除去条件は、実質的に結晶性がないか、もしくは周囲温度で実質的に固定されるのに十分に高い粘度を有するか、またはその両方である残存組成物を生成するような条件であってよい。
一実施形態では、液体組成物が使われる。液体組成物には、多くの場合、安定化される試料と素早く混合することができ、それによって、基本的には試料が液体の安定化組成物と接触してすぐに即時的な安定化効果を提供できるという利点がある。好ましくは、液体の安定化組成物中に存在する安定化剤(単一または複数)は、溶液中で安定なままであり、例えば、低溶解度の沈殿物を溶解するなどの使用者による前処理は必要ない。理由は、この種の前処理が安定化効率を変動させる危険性があるためである。
安定化組成物は、容器に採集される試料の量を安定化するために有効な量で、前記容器中に含まれる。一実施形態では、液体安定化組成物を、生物試料と、10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択される体積比で接触させる。少量の安定化組成物によって多量の試料を安定化することができることが、本発明の安定化組成物の特別な利点である。したがって、好ましくは、安定化組成物と試料の比は、1:2〜1:7、より好ましくは1:3〜1:5の範囲に含まれる。
一実施形態では、容器は排気される。排気は、好ましくは、一定体積の流体試料を内部に採取するのに効果的である。それによって、正確な量の試料が、容器に含まれる予め充填された量の安定化組成物と接触させられ、したがって、安定化が効果的に行われることが保証される。一実施形態では、容器は、開口端を有し、セプタムで封止されるチューブを含む。例えば、容器は、固体または液体形態いずれかの規定量の安定化組成物が予め充填されており、規定の真空が適用され、セプタムで封止される。セプタムは、標準のサンプリング付属品(例えばカニューレ等)と適合するように構築される。例えば、カニューレと接触する場合、真空によって所定量の試料が容器に採集される。それぞれの実施形態は、採血するのに特に有利である。適切な容器は、例えば、米国特許第6,776,959号に開示されている。
本発明の容器は、ガラス、プラスチックまたは他の適切な材料から製造することができる。プラスチック材料は、酸素不透過材料であってよく、または酸素不透過層を含んでもよい。あるいは、容器は、水透過性および空気透過性のプラスチック材料から製造することができる。本発明の容器は、好ましくは透明材料から製造される。適切な透明な熱可塑性材料の例には、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートが挙げられる。容器は、採集される生物試料の必要体積に従って選択される適切な寸法を有することができる。上述のように、好ましくは、容器は、大気圧未満の内圧まで排気される。このような実施形態は、全血などの体液を採集するのに特に適している。圧力は、好ましくは、所定体積の生物試料を容器に採取するように選択される。このような真空チューブに加えて、非真空チューブ、機械的分離チューブ、またはゲルバリアチューブも、特に血液試料を採集するための試料容器として使用することができる。適切な容器およびキャッピング装置の例は、米国特許第5,860,397号および米国特許出願公開第2004/0043505号で開示されている。細胞含有試料を採集するための容器として、さらなる採集装置、例えば、シリンジ、採尿装置または他の採集装置を使用することもできる。容器のタイプは、収集される試料のタイプによって変わる場合もあり、当業者なら適切な容器を利用することも可能である。
容器、それぞれに装置に、安定剤として上記で定義された少なくとも1つの式1に従う化合物が充填されるか、または予め充填されている場合に、有益な結果が得られる。好ましくはホルムアミドおよびブタンアミドから選択される上述の一級または二級カルボン酸アミドに加えて抗凝固剤が包含されるのが好ましい。抗凝固剤は、好ましくは、EDTAなどのキレート化剤である。さらに、容器に含まれている安定化組成物は、アポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤および任意の追加の添加物を含んでもよい。一実施形態では、容器に含まれている安定化組成物は、カスパーゼ阻害剤および抗凝固剤を含む。一実施形態では、安定化組成物は、上述の三級アミドを含む。
一実施形態では、容器は、開口上端、底部、およびその間に広がってチャンバを画定する側壁を有し、本発明による安定化剤および/または安定化組成物は、そのチャンバに含まれる。本発明の安定化剤および/または安定化組成物は、液体または固体形態で容器に含むことができる。一実施形態では、容器はチューブであり、底部は閉じた底部であり、容器はさらに、開口上端に蓋を含み、チャンバは減圧状態である。チャンバ内を減圧する利点は、上述した。好ましくは、蓋は、針またはカニューレで刺し通すことができ、減圧は、特定の体積の液体試料をチャンバ中に採取するように選択される。一実施形態では、チャンバは、特定の体積の液体試料をチャンバ中に採取するように選択された減圧下にあり、安定化組成物は、液体であり、安定化組成物と特定の体積の細胞含有試料の体積比が、10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択されるようにチャンバ内に配置される。関連する利点は、上述した。
好ましくは、容器は、患者からの採血用である。
採集方法
第5の態様では、本発明の第4の態様による容器のチャンバ中に患者から試料を直接採集するステップを含む方法が提供される。容器および試料に関する詳細は、上述した。それぞれの開示が参照される。一実施形態では、血液試料が採集され、それは、好ましくは患者から吸引される。
本明細書に開示の方法および組成物は、細胞外核酸を効果的に保存および単離すると同時に、生物試料に含まれている細胞から生じ、損傷細胞、それぞれに細胞溶解に起因して生物試料に入り込む可能性がある核酸、特に断片化ゲノムDNAと混ざり合う可能性を低減することができる。本発明の方法、ならびに組成物および開示装置(例えば採集容器)は、細胞外核酸の分解を低減し、さらに細胞溶解および/またはゲノム核酸、特に断片化ゲノムDNAの放出を低減し、それにより、試料に含有されている細胞外核酸へ細胞内核酸が混入されず、それぞれの混入が本発明の教示によってそれぞれに低減される。上記で考察したように、細胞外核酸と細胞内核酸、特に断片化ゲノムDNAとが相互に混ざり合うことにより、生物試料中の細胞外核酸の量の全ての測定精度が低下する可能性がある。上記で考察したように、本発明の重要な利点は、試料に含有されている細胞(特に、全血、血漿または血清の場合は白血球またはいくつかのタイプの白血球)および細胞外核酸の両方を本質的に同時に安定化する可能性があるということである。このことは、細胞外核酸の構造的完全性を維持しながら、ゲノムDNAなどの細胞内核酸が、試料の無細胞部分に放出されるのを防止し、さらには試料に含まれている目的の細胞外核酸(および関連するバイオマーカー)が希釈されるのを防止するのに役立つ。本明細書で考察したように、全血または血漿などの細胞含有生物試料を、安定化剤(単一または複数)と接触させることによって、細胞外核酸を単離する前に試料をある期間貯蔵することが可能となる。より好ましくは、細胞含有生物試料、例えば、血液または血漿を、ある場所(例えば、医療施設)で採取し、安定化剤(単一または複数)と接触させ、その後に、核酸の単離および検査工程のために、別の遠隔地(例えば、検査室)まで輸送することができる。さらに、本明細書で記載の安定化技術は、詳細に上述したように、細胞内核酸、特に、転写物レベルを安定化することを可能とする。本明細書で記載の方法と組成物を使って実現可能なトランスクリプトームの安定化は、さらに重要な利点である。一実施形態では、ホルムアミドがトランスクリプトームの安定化のために使用される。上述され、実施例で示されるように、ホルムアミドは、トランスクリプトームならびに細胞外核酸集団の安定化に極めて効果的である。さらに、細胞を試料から単離することができ、それにより、血液試料中の特定の細胞集団、例えば、腫瘍細胞、例えば、循環性腫瘍細胞などの分析が可能となる。利点と技術的効果は、詳細に前に詳述され、それは上記開示で言及されている。
さらに、本明細書で開示のように、安定化試薬および方法は、架橋試薬、例えばホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド放出剤などの使用を含む現状の既知の安定化試薬および方法に対する利点を提供する。理由は、本発明による試料の安定化にはこのような架橋試薬の使用を含まないからである。架橋試薬は、核酸分子間、または核酸とタンパク質との間で分子間または分子内共有結合を生じさせる。この効果が、複合生物試料から精製または抽出された後の、このように安定化され、部分的に架橋された核酸の回収の減少に繋がる可能性がある。例えば、全血試料中の循環核酸の濃度は、既に比較的低いので、このような核酸の収率をさらに低下させるどのような処置も、回避されるべきである。このことは、悪性腫瘍に由来する、または妊娠初期に発育中の胎児に由来する非常に希少な核酸分子を検出し分析する場合に、特に重要になる可能性がある。したがって、安定化組成物にホルムアルデヒド放出剤は含まれず、安定化するためにそれぞれに追加で使用されることはない。したがって、一実施形態では、安定化組成物にホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出剤などの架橋剤は含まれず、安定化するためにそれぞれに追加で使用されることはない。したがって、ここでは、安定化組成物は、核酸−核酸、核酸−タンパク質、特にタンパク質−DNAおよび/またはタンパク質−タンパク質架橋を誘発する架橋剤を含まない。特に、安定化組成物は、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、またはホルムアルデヒド放出剤を含まない。さらに、記載のように、安定化組成物は、好ましくは、例えば、カオトロピック塩などの細胞溶解を誘発するであろういかなる添加物も含まない。さらに、一実施形態では、本発明による安定化方法は、毒性作用物質として分類される添加物の使用を含まない。
特に好ましい態様および実施形態は、再度下記に記載される。
第1の態様では、本発明は、特に、細胞含有生物試料を少なくとも1つのカルボン酸アミドと接触させることによって試料を安定化する方法であって、該カルボン酸アミドは一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択される、方法に関する。好ましくは、細胞含有生物試料および少なくとも1つのカルボン酸アミドを含む得られた組成物は、少なくとも0.25%の濃度のカルボン酸アミドを含む。一実施形態では、安定化は、細胞内RNAの安定化をもたらし、および/または細胞含有試料に含まれる細胞外核酸集団が安定化される。本明細書で記載のように、本方法は、細胞溶解に基づかず、安定化が、タンパク質−核酸および/またはタンパク質−タンパク質架橋を誘発する架橋剤の使用を含まず、またホルムアルデヒド放出剤の使用を含まない。
一実施形態では、一級カルボン酸アミドと二級カルボン酸アミドから選択されるカルボン酸アミドは、式1:
(式中、R1は水素残基またはアルキル残基であり、R2は水素残基および直鎖または分岐鎖配置の1〜20原子の炭素鎖長の炭化水素残基から選択され、R3は水素残基であり、R4は酸素である)
を有する。
一実施形態では、細胞含有試料は、ホルムアミド、アセトアミド、プロパンアミドおよびブタンアミドからなる群より選択される少なくとも1つの一級カルボン酸アミド、好ましくはブタンアミドと接触させられる。別の実施形態では、細胞含有生物試料は、N−アルキルホルムアミド、N−アルキルアセトアミド、およびN−アルキルプロパンアミドからなる群より選択される、好ましくは、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミドおよびN−メチルプロパンアミドから選択される少なくとも1つの二級カルボン酸アミドと接触させられる。
一実施形態では、細胞含有生物試料を安定化する方法は、試料を少なくとも1つのカルボン酸アミドと接触させることを含み、カルボン酸アミドはホルムアミドであり、細胞含有生物試料およびホルムアミドを含む得られた組成物は、少なくとも、0.25%の濃度のホルムアミドを含み、安定化は細胞内RNAの安定化をもたらし、および/または細胞含有試料中に含まれる細胞外核酸集団が安定化され、前記方法は、細胞溶解に基づかず、安定化はタンパク質−核酸および/またはタンパク質−タンパク質架橋を誘発する架橋剤の使用を含まず、前記方法はホルムアルデヒド放出剤の使用を含まない。
一実施形態では、細胞含有生物試料を、一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択される少なくとも1つのカルボン酸アミドと接触させて得られる混合物は、前記カルボン酸アミドを、少なくとも0.1%、少なくとも0.25%、少なくとも0.5%、少なくとも0.75%、少なくとも1%、少なくとも1.25%、少なくとも1.5%、または少なくとも2%の濃度で含む。適切な濃度範囲も、上述した。一実施形態では、カルボン酸アミドはホルムアミドである。
一実施形態では、細胞含有試料は、血液試料であり、追加で抗凝固剤と接触させられる。
一実施形態では、細胞含有試料中に存在する核酸の分解は、安定化により低減される。特に、細胞内RNAが安定化される。好ましくは、試料に含まれる細胞中のトランスクリプトームおよび/または転写物レベルが安定化される。一実施形態では、c−fos、IL−1β、IL−8およびp53から選択される1つまたはそれを超えるマーカー遺伝子の転写物レベルが、安定化時に、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも48時間安定化される。一実施形態では、本方法は細胞含有試料に含まれる細胞外核酸集団を安定化するために適する。特に、試料中に含まれる細胞から試料の無細胞の部分へのゲノムDNAの放出が低減される。
一実施形態では、前記方法は、1つまたはそれを超える次の特徴を有する:
a)安定化は安定化試料から細胞の単離を可能とする;
b)細胞含有試料は血液試料であり、白血球が安定化される;
c)細胞の形態が保存される;
d)有核細胞の形態が保存される;
e)試料は血液試料であり、含まれるリンパ球および/または単球が安定化される;
f)細胞表面エピトープが保存される;および/または
g)細胞表面タンパク質が保存される。
一実施形態では、細胞含有試料は、安定化のために追加でアポトーシス阻害剤と接触させられる。好ましくは、アポトーシス阻害剤は、カスパーゼ阻害剤、より好ましくは汎カスパーゼ阻害剤である。適切なカスパーゼ阻害剤は上述され、それは上記開示で言及されている。
一実施形態では、細胞含有試料は、安定化のために、追加で少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーと接触させられる。好ましくは、ポリ(オキシエチレン)ポリマーは、ポリエチレングリコールである。詳細は上述され、それは上記開示で言及されている。
一実施形態では、本方法は、1つまたはそれを超える次の特徴を有する:
a)一級または二級カルボン酸アミドである少なくとも1つのカルボン酸アミドおよび任意の追加の添加物が安定化組成物に含まれ、安定化組成物と特定の体積の細胞含有試料との体積比が、10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択される;
b)安定化細胞含有試料は、核酸分析および/または検出方法に供される;
c)細胞内および/または細胞外核酸が安定化試料から単離され、単離核酸が分析および/または検出される;
d)安定化試料中に含まれる細胞が除去される;および/または
e)(i)安定化細胞含有生物試料、(ii)細胞が除去されている安定化試料および/または(iii)試料から除去された細胞、が貯蔵される。
一実施形態では、核酸が安定化試料から単離される。例えば、RNAが安定化試料中に含まれる細胞から単離できる。一実施形態では、細胞が安定化試料から除去され、好ましくは除去された細胞が分析され、および/または核酸またはタンパク質などの生体分子が除去された細胞から単離される。
一実施形態では、細胞含有試料は、少なくとも1つの式1:
(式中、R1は水素残基またはアルキル残基であり、R2およびR3は、同じまたは異なる直鎖または分岐鎖配置の1〜20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基であり、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基であり、好ましくはR4は酸素である)
に従う化合物の三級アミドとさらに接触させられる。式1に従う三級アミドは、カルボン酸アミドであってよい。それは、N,N−ジアルキルプロパンアミド、好ましくはN,N−ジメチルプロパンアミドであってよい。一実施形態では、式1に従う三級アミドは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロパンアミド、N,N−ジメチルブタンアミドからなる群より選択される。一実施形態では、細胞含有生物試料が少なくとも1つの式1に従う一級または二級カルボン酸アミド、好ましくはブタンアミド、および三級アミドならびに安定化のために使用される追加の任意の添加物と接触させられた後、得られた混合物は、
i)少なくとも0.1%、少なくとも0.25%、少なくとも0.5%、少なくとも0.75%、少なくとも1%、少なくとも1.25%または少なくとも1.5%の濃度;および/または
ii)0.1%〜30%、0.25%〜20%、0.5%〜15%、0.7%〜10%、0.8%〜7.5%、0.9%〜6%または1%〜5%の範囲の濃度の式1に従う三級アミドを含む。
第2の態様では、本開示は、生物試料から核酸を単離する方法であって、
a)第1の態様による方法により細胞含有試料を安定化するステップと、
b)該安定化試料から核酸を単離するステップと、
を含む、方法に関する。
一実施形態では、ステップb)は、細胞内核酸、好ましくは細胞内RNAを単離することを含む。特に、ステップb)は、安定化試料から細胞を除去すること、および除去された細胞から核酸を単離することを含んでもよい。
一実施形態では、ステップb)は、細胞外核酸を単離することを含む。特に、細胞が残存する試料から分離することができ、ステップb)で細胞外核酸が残存する試料から単離され、および/または細胞内核酸が除去された細胞から単離される。したがって、上述のように、本方法は、必要に応じ、細胞外および細胞内核酸を同時に単離可能とする。好ましくは、試料は血液である。
一実施形態では、単離核酸は、さらにステップc)で処理および/または分析され、好ましくは、
i)修飾される;
ii)少なくとも1つの酵素と接触させられる;
iii)増幅される;
iv)逆転写される;
v)クローン化される;
vi)配列決定される;
vii)プローブと接触させられる;
viii)検出される;
ix)定量される;
ix)同定される;および/または
x)遺伝子発現プロファイリング用に分析される。
第3の態様では、細胞含有生物試料の安定化に適する組成物であって、
a)好ましくは少なくとも1%の濃度の、少なくとも1つのカルボン酸アミドであって、一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択されるカルボン酸アミドと、
b)少なくとも1つの抗凝固剤と、
を含む、組成物が提供される。
少なくとも1つのカルボン酸アミドの適切で好ましい実施形態は、上述した。一実施形態では、組成物は、ホルムアミド、アセトアミド、プロパンアミドおよびブタンアミドからなる群より選択される少なくとも1つの一級カルボン酸アミドを含む。好ましくは、一級カルボン酸アミドは、ホルムアミドおよびブタンアミドから選択される。別の実施形態では、組成物は、N−アルキルホルムアミド、N−アルキルアセトアミド、およびN−アルキルプロパンアミドからなる群より選択される、好ましくは、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミドおよびN−メチルプロパンアミドから選択される少なくとも1つの二級カルボン酸アミドを含む。一実施形態では、抗凝固剤はキレート化剤、好ましくはEDTAである。
一実施形態では、組成物は、安定化のために、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーを含む。好ましくは、ポリ(オキシエチレン)ポリマーは、ポリエチレングリコールである。詳細は上述され、それは上記開示で言及されている。
一実施形態では、組成物は、細胞含有試料としての血液試料を安定化するためのものである。
一実施形態では、組成物は、第1の態様と共に上述の式1に従う少なくとも1つの三級アミドを含む。このような三級アミドは、例えば、ブタンアミドと組み合わせて使用することができる。
一実施形態では、組成物は少なくとも1つのアポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤、より好ましくは汎カスパーゼ阻害剤を含み、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤は、Q−VD−OPhおよびZ−Val−Ala−Asp(OMe)−FMKからなる群より選択され、カスパーゼ阻害剤は好ましくはQ−VD−OPhである。
一実施形態では、組成物は少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくはポリエチレングリコールおよびアポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤を追加で含む。
一実施形態では、組成物は、含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルを安定化することができ、および/または細胞含有試料中に含まれる細胞外核酸集団を安定化することができる。一実施形態では、組成物は、1つまたはそれを超える次の特徴を有する:
a)組成物は、細胞を安定化し、細胞含有生物試料中に含まれる細胞からその試料の無細胞の部分へのゲノムDNAの放出を低減させることができる;
b)組成物は、安定化試料中に含まれる細胞由来のゲノムDNAによる生物試料中に含まれる細胞外DNA集団の希釈を減らすことができる;
c)組成物は、安定化試料中に含まれる細胞由来の細胞内核酸による生物試料中に含まれる細胞外核酸集団の希釈を減らすことができる;
d)安定化組成物は、細胞溶解を誘発または促進するであろう濃度の添加物を含まない;
e)安定化組成物は、タンパク質−DNAおよび/またはタンパク質−タンパク質架橋を誘発する架橋剤を含まない;
f)安定化組成物は、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、またはホルムアルデヒド放出剤を含まない;
g)安定化組成物は、毒性作用物質を含まない;および/または
h)安定化組成物は、冷蔵をしないで、好ましくは室温で、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも2日〜3日間、少なくとも2日〜6日間、および/または少なくとも2日〜7日間から選択される期間、細胞含有生物試料中に含まれる細胞外核酸集団を安定化することができる。
一実施形態では、安定化組成物と血液試料の接触時に、c−fos、IL−1β、IL−8およびp53から選択される1つまたはそれを超えるマーカー遺伝子の転写物レベルが、安定化時に、少なくとも48時間安定化され、好ましくは安定化組成物と細胞含有試料との体積比が、10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択される。一実施形態では、試料は血液試料であり、白血球、好ましくはリンパ球の形態および/または細胞表面エピトープが保存される。
一実施形態では、安定化組成物は、生物試料との混合物として提供される。一実施形態では、安定化組成物は、生物試料との混合物として提供され、前記試料は1つまたはそれを超える次の特徴を有する:
a)生物試料は細胞外核酸を含む;
b)生物試料は全血である。
また、本発明は、第1の態様による安定化方法における第3の態様による組成物の使用にも関する。
第4の態様では、細胞含有生物試料、好ましくは血液試料を採集するための容器であって、
a)少なくとも1%の濃度の、少なくとも1つのカルボン酸アミドであって、一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択されるカルボン酸アミドと、
b)少なくとも1つの抗凝固剤と、
を含む、容器が提供される。
一実施形態では、容器は、ホルムアミド、アセトアミド、プロパンアミドおよびブタンアミドからなる群より選択される少なくとも1つの一級カルボン酸アミドを含む。好ましくは、一級カルボン酸アミドは、ホルムアミドおよびブタンアミドから選択される。別の実施形態では、容器は、N−アルキルホルムアミド、N−アルキルアセトアミド、およびN−アルキルプロパンアミドからなる群より選択される、好ましくは、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミドおよびN−メチルプロパンアミドから選択される少なくとも1つの二級カルボン酸アミドを含む。一実施形態では、抗凝固剤はキレート化剤、好ましくはEDTAである。
一実施形態では、容器は、安定化のために、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーをさらに含む。好ましくは、ポリ(オキシエチレン)ポリマーは、ポリエチレングリコールである。詳細は上述され、それは上記開示で言及されている。
記載されているように、容器は、本発明の第3の態様による組成物を含むことができる。したがって、一実施形態では、前述の化合物を組成物中に含めることができる。
第5の態様では、患者から生物試料、好ましくは血液を、本発明の第4の態様による容器のチャンバ内に直接に採集する、好ましくは吸引するステップを含む方法が提供される。
第6の態様では、本発明の第3の態様による組成物を製造する方法であって、組成物の成分が混合され、好ましくは溶液中で混合される、方法が提供される。
本発明は、本明細書に開示の例示的な方法および材料によって制限されず、本明細書に記載の方法および材料に類似のまたは等価な任意の方法および材料も、本発明の実施形態を実施または試験するのに使用することができる。数値範囲は、その範囲を規定する両端の数値を含む。本明細書に提示の見出しは、本明細書を全体として参照することによって読み取ることができる本発明の様々な態様または実施形態を限定するものではない。
本発明で使用する場合、用語の「溶液」は、特に、液体組成物、好ましくは水性の組成物を意味する。溶液は、1相だけからなる均質な混合物であってもよいが、溶液が、例えば、特に、安定化剤などの含有化学物質の沈殿物などの固体添加剤を含むことも本発明の範囲に含まれる。
本明細書でヌクレオチド(nt)を基準として示したサイズ、それぞれにサイズ範囲は、鎖長を意味し、したがって一本鎖および二本鎖分子の長さを表すために使用される。二本鎖分子では、前記ヌクレオチドは対を形成している。
一実施形態では、本方法の場合におけるある特定のステップを含むもの、または本組成物、溶液および/もしくは緩衝液の場合におけるある特定の成分を含むものとして本明細書に記載されている主題は、それぞれのステップまたは成分からなる主題を意味する。本明細書に記載の好ましい実施形態を選択し、組み合わせることが好ましく、好ましい実施形態のそれぞれの組み合わせから生じる特定の主題も、本開示に属する。
以下の実施例では、本発明の材料および方法を提供する。これらの実施例は、単に例示目的であり、いかなる様式であっても、本発明を制限するものと解釈されるべきでないことを理解されたい。
I.種々の一級および二級カルボン酸アミドの細胞レベルおよび転写物レベル安定化特性
1.材料と方法
選択された遺伝子(c−fos、IL−1β、IL−8、p53)由来の一定レベルの転写物により示される遺伝子転写物の安定化能力を有する試薬組成物を特定することができる試験システムおよび研究設備を確立した。以前の研究において、これらの転写物が貯蔵中に非常に不安定な転写物であると同定され、これらは採血後数分以内に誘発されるかまたは下方制御され(転写物の増加および減少)、したがって、選別目的では「最悪のケース」のマーカーとして選択された。
さらに、RNA調製プロトコルが転写物レベルの分析に対して与えうるいかなる影響も排除するために、試料安定化の[+]対照に使用したものと同じRNA調製技術を試料安定化の[−]対照および試験試料に対しても使用した。
血液を複数ドナーから複製EDTA血液チューブ(BD、試料安定化の[−]対照)および試料安定化の[+]対照として機能するPAXgene Blood RNA Tube(PreAnalytiX)に採取した。PAXgene Blood RNA Tubeは、細胞を溶解し、それにより遺伝子転写プロファイルを「凍結する」組成物を含む(本発明の背景技術の項も参照)。PAXgene Blood RNA Tubeは、遺伝子発現分析用に血液を安定化するためのものである。1つの目的は、転写物レベル安定化において、細胞溶解に基づかないPAXgene Blood RNA Tubeと同じまたは類似の性能を達成する安定化方法を見つけることであった。したがって、PAXgene Bloodに採取され、その結果、その中に含まれる安定化組成物で処理された試料を、実験設備における陽性対照として使用した。採血後直ちにEDTA血液試料の半分をRNA安定化試験溶液で処理し、血液試験試料を得た。1mlの安定化添加剤を9mlのEDTA血液に加えた。8〜10回チューブを反転させることにより、血液と安定化剤溶液を混合した。全血液チューブを室温で0、24および72時間インキュベートした。2時間のインキュベーションが、PAXgene Blood RNA TubeからRNAを単離するために必要な最小限の細胞溶解およびRNA沈殿時間であるため、インキュベーションなし(試験時点0時間)として定義されたPAXgene Blood RNA Tubeを2時間インキュベートした。インキュベーション後、PAXgene Blood RNA Tube試料を−20℃で凍結し、一方で、EDTA血液および安定化剤と混合したEDTA血液試料当たり2.5mlの一定分量を試験時点0時間または安定化期間後にPAXgene Blood RNA Tubeに移し、記載のようにチューブ反転により混合し、溶解のためにPAXgene Blood RNA Tube中で6時間インキュベートした後、−20℃で貯蔵した。
室温までチューブを解凍して平衡にした後、手引き書に記載のプロトコルに従ってPAXgene 96 Blood RNA Kit(QIAGEN)を用いてPAXgene Blood RNA Tube中に最終的に存在した全血液試料からRNA調製を行った。
UV分光法およびRIN計算(Agilent BioanalyzerのNanochip)を備えた小型化キャピラリーゲル電気泳動によりRNAの量(RNA収率)および質(RNA純度、RNA完全性)を測定した。
全RNA試料の転写物レベルを、反応へのテンプレート入力量に正規化したFOS、IL1B、IL8、およびTP53のモノプレックスアッセイを使ってリアルタイムRT−PCRにより分析した。転写物の量を反映している得られたCT値を直接比較した。室温での血液試料インキュベーションにより影響を受けない相対的転写物レベルを一定のCT値により表し、転写物の増加(例えば、遺伝子誘発による)をより低いCT値で、および転写物の減少(例えば、遺伝子抑制による)をより高いCT値で表した。
示されている場合には、血液スメアを顕微鏡により評価し、細胞完全性をフローサイトメトリー(FC)により評価して、細胞の形態を調査した。
2.試験したカルボン酸アミド
実施例1:ホルムアミドを使った安定化
血液を複数ドナーから複製EDTA血液チューブ(BD、試料安定化の[−]対照)および試料安定化の[+]対照として機能するPAXgene Blood RNA Tube(PreAnalytiX)に採取した。採血後直ちにEDTA血液試料の半分をRNA安定化試験溶液で処理し、血液試験試料を得た。詳細には、1mlの安定化添加剤(50%v/vのホルムアミド、5xMOPS緩衝液、pH5.5)を9mlのEDTA血液に加えた。血液の混合、インキュベーション、一定分量の血液試料のPAXgene Blood RNA Tubeへの移送、凍結、貯蔵およびRNA調製を上述のように行った。上述の材料と方法の項で記載したようにRNAを転写物レベル分析に供した。UV分光法およびRIN計算(Agilent BioanalyzerのNanochip)を備えた小型化キャピラリーゲル電気泳動によりRNAの量(RNA収率)および質(RNA純度、RNA完全性)を測定した。全RNA試料の転写物レベルを、反応へのテンプレート入力量に正規化したFOS、IL1B、IL8、およびTP53のモノプレックスアッセイを使ってリアルタイムRT−PCRにより分析した。転写物の量を反映している得られたCT値を直接比較した。室温での血液試料インキュベーションにより影響を受けない相対的転写物レベルを一定のCT値により表し、転写物の増加(例えば、遺伝子誘発による)をより低いCT値で、および転写物の減少(例えば、遺伝子抑制による)をより高いCT値で表した。血液スメアを顕微鏡により評価し、細胞完全性をフローサイトメトリー(FC)により評価して、細胞の形態を調査した。
RNAは、全試料から高収率で単離することができた。したがって、安定化によりその後のRNA単離が損なわれることがなかったことを確認した。全試料から調製されたRNAの純度は、高度に純粋なRNAの範囲であった(2.0〜2.2の範囲のA260/A280)。さらに、単離RNAのRNA完全性は高かった(8を超えるRIN)。
予想通り、4つの選択されたマーカー遺伝子由来の転写物の相対的レベルは、PAXgene Blood RNA Tube中で安定なままであり、安定化剤を加えなかったEDTAチューブ中では変化した(エクスビボで、FOS、IL8の転写物遺伝子誘発/増加およびIL1B、TP53の転写物遺伝子抑制/減少)。安定化剤ホルムアミドと混合したEDTA血液試料は、血液試料貯蔵期間にわたる不変のまたは極小さな最小限の変化のCT値で表される安定化発現レベルを示した。したがって、ホルムアミドは、転写物レベル、およびしたがって血液試料中に含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルの安定化に極めて効果的である。結果を図1〜4に示す。
未処理EDTA血液および室温で3日間までインキュベートした、安定化添加剤と混合したEDTA血液(試験溶液)において、無傷の白血球を検出した(図5参照)。これは、安定化添加剤が、WBCに対し溶解作用を示さなかったことを示した。上述のように、血液をBD EDTAチューブに直接採取し、複製試料を未処理([+]対照[EDTA])のままで保持するか、または試験溶液(最終濃度5%v/vのホルムアミドおよび0.5xMOPS緩衝液[pH5.5])で処理した。試料の採集と処理の直後に、一定分量の血液をインキュベーションなしに分析し(0時間試料)、残りの試料を顕微鏡による細胞完全性分析の前に室温で1日および3日間(24時間および72時間試料)インキュベートした。血液スメアを40xに拡大し、顕微鏡画像を取得して細胞完全性を評価した。単一WBCを含む画像部分をデジタルで拡大し、無傷の細胞の存在を実証した。未処理EDTA血液試料([+]対照(EDTA))は、無傷の細胞を含む血液試料の陽性対照として機能した。各図中の白色矢じりで示したのは、赤血球(無核細胞)に取り囲まれたWBC(有核細胞)である。
顕微鏡による分析で得られた結果は、フローサイトメトリーを使った細胞完全性の分析により実証された。FCは、未処理EDTA血液および室温で3日間までインキュベートした、安定化添加剤と混合したEDTA血液(試験溶液)において、無傷のWBCの存在を示した(図6参照)。未処理および処理試料の血液インキュベーションの結果、リンパ球および単球は溶解による影響を受けなかった。より長期の貯蔵で、好中性顆粒球(granulocte)の一部に溶解が起こったように見えた。しかし、ゲノムDNAの放出が依然として効率的に防止されているので(下記IIの項の実施例を参照されたい)、FCプロファイルで認められる差異は他の理由を有するであろう。しかし、より長い安定化期間中に全ての白血球を等しく良好に安定化させることができるとは限らない。しかし、無傷の細胞が検出されており、検出された細胞集団は、特定の(certail)診断用途、例えば、リンパ球の分析を狙った用途に対しては重要である。
実施例1で行われた実験は、ホルムアミドは転写物レベルの安定化、したがって、血液試料中のトランスクリプトームの安定化に効果的であることを示す。RNAを良好な収率およびRT−PCR分析に適する純度で単離することができた。さらに、細胞を安定化試料から単離することができた。
実施例2:アセトアミドを使った安定化
EDTA血液試料を未処理のまま保持するか、または採血後直ちに8%w/vのアセトアミドと混合した。PAXgene RNA血液チューブ中の採集血液試料はこの場合も対照として機能した。材料と方法の項で記載のように、室温で1日間のインキュベーション後に、試料の取扱いおよび複製チューブなしの、および複製チューブ由来の血液試料からのRNA単離を行った。材料と方法の項で記載のように、全RNA試料の転写物レベルを、反応へのテンプレート入力量に正規化したFOS、IL1B、IL8、およびTP53のモノプレックスアッセイを使ったリアルタイムRT−PCRにより分析した。結果を図7〜10に示す。転写物の量を反映している得られたCT値を直接比較した。室温での血液試料インキュベーションにより影響を受けない相対的転写物レベルを一定のCT値により表し、転写物の増加(例えば、遺伝子誘発による)をより低いCT値で、および転写物の減少(例えば、遺伝子抑制による)をより高いCT値で表した。図から分かるように、一級カルボン酸アミドのアセトアミドも転写物レベルの安定化に極めて効果的であった。
実施例3:N−メチルアセトアミドを使った安定化
実施例2で記載のように試料を調製し処理したが、血液試料および安定化剤を含む組成物中の2%(w/v)のN−メチルアセトアミドを安定化剤として使用した。結果を図11〜14に示す。図から分かるように、二級カルボン酸アミドのN−メチルアセトアミドは、3日間まで転写物レベルの安定化に効果的であった。
実施例1〜3は、種々の一級および二級カルボン酸アミドが、血液試料中の細胞の遺伝子転写プロファイルの安定化に極めて効果的であることを示す。
II.種々の一級および二級カルボン酸アミドを使った血液試料中の細胞外核酸集団の安定化
材料と方法
種々の一級および二級カルボン酸アミドの、細胞含有生物試料、この場合は全血試料を安定化する能力を単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて試験した。下記実施例から分かるように、一級および二級カルボン酸アミドは、血液試料を効率的に安定化することが明らかになり、特に、安定化血液試料中に含まれる細胞からのゲノムDNAの放出を抑制することが明らかになった。このように、カルボン酸アミドは、細胞外核酸集団を安定化することができた。さらに、一級および二級カルボン酸アミドをカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用することにより、好都合にも、達成された安定化効果が改善されたことが見出された。それぞれの組み合わせにより長期の安定化効果が得られ、さらに、異なるドナーから採取された血液試料で達成された安定化効果の変動がより小さいことが示された。このことは、それが、細胞外核酸集団を保存する血液試料に対する均一で信頼性の高い安定化方法を提供するので、重要な利点である。
採血および安定化
ドナーから採取した血液を、10mlのK2 EDTAチューブ(BD)に採取した。4.5mlのそれぞれ採取した血液を0.9mlの種々の安定化溶液と混合した(下記の試験した安定化溶液の詳細に関する実施例を参照)。
安定化された全ての血液試料を、条件および試験時点毎に3通り準備した。時点0(基準)において、安定化溶液と血液を混合した直後に血漿を生成し、循環細胞外DNAを抽出した。残りの安定化血液試料を、室温で3日間および6日間貯蔵した。
基準対照としてEDTA安定化血液試料(追加の添加物を加えずにK2 EDTAチューブに採取した)を、同様に3日間および6日間貯蔵した。さらに、実施例に示されている場合、カスパーゼ阻害剤およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAA)を含む安定化溶液を比較に含めた(前記安定化溶液を血液試料に加えた場合に得られる混合物の最終濃度:7.2mg/ml K2 EDTA、1μM キノリン−Val−Asp−CH2−OPH(カスパーゼ阻害剤)および5%DMAA)(未公開の国際出願PCT/EP2012/070211号および同PCT/EP2012/068850号を参照)。本明細書で試験されたDMAA安定化試料は、常に、さらにカスパーゼ阻害剤を含んだ。カスパーゼ阻害剤を含まないDMAA含有安定化溶液は、その後の実施例で試験しなかった。
細胞外核酸の単離および分析
血液含有チューブを4回反転させることによって、安定化された血液試料および安定化されていない(EDTA)血液試料から血漿を生成した。その後、チューブを1900xg、4℃で10分間遠心分離した。血漿画分2.5mlを、新しい15mlのfalconチューブに移し、16,000xg、4℃で10分間、遠心分離した。メーカーの取扱説明書に従って、QIAamp循環核酸キット(QIAGEN)を使用して細胞外核酸を単離するために、2mlのそれぞれに清澄化された血漿を使用した。
18SリボソームDNAの異なる断片長:
18SリボソームDNA:66bpアンプリコン
18SリボソームDNA:500bpアンプリコン
を標的とする2つの異なるqPCRアッセイを使って単離細胞外DNAを分析した。
gDNA検量線に従って、個々の試料のサイクル閾値(threshhold)を溶出液中のgDNAの量に変換した。貯蔵時点のgDNA量を、同じドナー由来の時間ゼロgDNAレベルと比較し、図中の倍数増加として示す。特に、貯蔵後の血液試料の血漿画分中の500bp断片の増加は、白血球の溶解/破壊の指標である。したがって、放出された500bpDNAの量が少ないほど、安定化方法の性能は良い。
結果
後に記載の実施例に対応する図は、18S rRNA遺伝子の異なるアンプリコン長さを使った場合の、異なる安定化溶液での時点0に対するDNAの増加(倍数変化)を示す。バーは、条件および試験時点毎の3通りの試料の平均を示す。
実施例4:カスパーゼ阻害剤を含まない場合と含む場合の、ホルムアミドを使った安定化
実施例4では、血液試料の安定化のために、異なる濃度のホルムアミドを単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用した。分析の狙いは18S rDNAの増加を分析することにより決定される細胞外核酸集団の安定化であった。IIの材料と方法の項で記載のように試料の安定化および処理を行った。
カスパーゼ阻害剤を含まない安定化溶液
カスパーゼ阻害剤を含まない安定化溶液には、種々の濃度のホルムアミドおよびEDTAを含めた。これらの安定化溶液を血液試料に添加すると、次の血液/安定化溶液混合物中の最終濃度が得られた:
7.2mg/mlのK2 EDTAおよび種々の濃度のホルムアミド(詳細は図を参照)。
カスパーゼ阻害剤を含む安定化溶液
これらの安定化溶液には、種々の濃度のホルムアミド、カスパーゼ阻害剤およびEDTAを含めた。これらの安定化溶液を血液試料に添加すると、次の血液/安定化溶液混合物中の最終濃度が得られた:
7.2mg/mlのK2 EDTA、1μMのキノリン−Val−Asp−CH2−OPH(カスパーゼ阻害剤)および種々の濃度のホルムアミド(詳細は図を参照)。
図15〜18は、異なるドナー由来の血液に対し得られた安定化結果を示す。図15〜18は、ホルムアミド単独またはカスパーゼ阻害剤と組み合わせたホルムアミドを使って達成された結果を比較している。図から分かるように、種々の濃度のホルムアミド単独で、ホルムアミド安定化試料中の18S rDNAの増加を著しく低減したことから分かるように、効果的に細胞外核酸集団を安定化した。しかし、異なるドナーの間で安定化の有効性の変動が認められた。ホルムアミドに加えてカスパーゼ阻害剤を使用した場合には、このような変動は生じなかった。したがって、ホルムアミドをカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用することが好ましい。
図19〜21は、異なるドナー由来の血液に対し得られた安定化結果を示し、この場合、血液試料をカスパーゼ阻害剤と組み合わせた種々の濃度のホルムアミドを使って安定化した(詳細は図を参照)。したがって、使用する安定化溶液には、ホルムアミドおよびカスパーゼ阻害剤を含めた。図から分かるように、種々の濃度のホルムアミドを使って均一な安定化結果が得られた。
実施例5:アセトアミドとカスパーゼ阻害剤を使った安定化
実施例5では、血液試料を安定化するために、種々の濃度のアセトアミドをカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用した。分析の狙いは18S rDNAの増加を分析することにより決定される細胞外核酸集団の安定化であった。IIの材料と方法の項で記載のように試料の安定化および処理を行った。
安定化溶液には、種々の濃度のアセトアミド、カスパーゼ阻害剤およびEDTAを含めた。これらの安定化溶液を血液試料に添加すると、次の血液/安定化溶液混合物中の最終濃度が得られた:
7.2mg/mlのK2 EDTA、1μMのキノリン−Val−Asp−CH2−OPH(カスパーゼ阻害剤)および種々の濃度のアセトアミド(詳細は図を参照)。
図22〜23は、異なるドナー由来の血液に対し得られた安定化結果を示し、この場合、血液試料を種々の濃度のアセトアミド(詳細は図を参照)およびカスパーゼ阻害剤を使って安定化した。図から分かるように、種々の濃度のアセトアミドを含む試験安定化組成物は、アセトアミド(acetamnide)安定化試料中の18S rDNAの増加を著しく低減したことから分かるように、効果的に細胞外核酸集団を安定化した。
実施例6:アプロパンアミドとカスパーゼ阻害剤を使った安定化
実施例6では、血液試料を安定化するために、種々の濃度のプロパンアミドをカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用した。分析の狙いは18S rDNAの増加を分析することにより決定される細胞外核酸集団の安定化であった。IIの材料と方法の項で記載のように試料の安定化および処理を行った。
安定化溶液には、種々の濃度のプロパンアミド、カスパーゼ阻害剤およびEDTAを含めた。これらの安定化溶液を血液試料に添加すると、次の血液/安定化溶液混合物中の最終濃度が得られた:
7.2mg/mlのK2 EDTA、1μMのキノリン−Val−Asp−CH2−OPH(カスパーゼ阻害剤)および種々の濃度のプロパンアミド(詳細は図を参照)。
図24は、種々の濃度のプロパンアミド(詳細は図を参照)およびカスパーゼ阻害剤を使って血液を安定化した場合に得られた安定化結果を示す。図から分かるように、種々の濃度のプロパンアミドを含む試験安定化組成物は、プロパンアミド安定化試料中の18S rDNAの増加を著しく低減したことから分かるように、効果的に細胞外核酸集団を安定化した。
実施例7:カスパーゼ阻害剤を含まない場合と含む場合の、ブタンアミドを使った安定化
実施例7では、血液試料の安定化のために、種々の濃度のブタンアミドを単独でまたはカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用した。分析の狙いは18S rDNAの増加を分析することにより決定される細胞外核酸集団の安定化であった。IIの材料と方法の項で記載のように試料の安定化および処理を行った。
カスパーゼ阻害剤を含まない安定化溶液
カスパーゼ阻害剤を含まない安定化溶液には、種々の濃度のブタンアミドおよびEDTAを含めた。これらの安定化溶液を血液試料に添加すると、次の血液/安定化溶液混合物中の最終濃度が得られた:
7.2mg/mlのK2 EDTAおよび種々の濃度のブタンアミド(詳細は図を参照)。
カスパーゼ阻害剤を含む安定化溶液
これらの安定化溶液には、種々の濃度のブタンアミド、カスパーゼ阻害剤およびEDTAを含めた。これらの安定化溶液を血液試料に添加すると、次の血液/安定化溶液混合物中の最終濃度が得られた:
7.2mg/mlのK2 EDTA、1μMのキノリン−Val−Asp−CH2−OPH(カスパーゼ阻害剤)および種々の濃度のブタンアミド(詳細は図を参照)。
図25〜29は、異なるドナー由来の血液に対しブタンアミドを含む安定化溶液を使って得られた安定化結果を示す。図25および26は、ブタンアミド単独またはカスパーゼ阻害剤と組み合わせたブタンアミドを使って達成された結果を比較している。図から分かるように、種々の濃度のブタンアミド単独で、ブタンアミド安定化試料中の18S rDNAの増加を著しく低減したことから分かるように、効果的に細胞外核酸集団を安定化した。しかし、異なるドナーの間で安定化の有効性の変動が認められた。ブタンアミドに加えてカスパーゼ阻害剤を使用した場合には、このような変動は生じなかった。したがって、ブタンアミドをカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用することが好ましい。図27〜29は、異なるドナー由来の血液に対し得られた安定化結果を示し、この場合、血液試料をカスパーゼ阻害剤と組み合わせた種々の濃度のブタンアミドを使って安定化した(詳細は図を参照)。したがって、使用する安定化溶液には、ホルムアミドおよびカスパーゼ阻害剤を含めた。図から分かるように、種々の濃度のブタンアミドを使って均一な安定化結果が得られた。
実施例8:N−メチルホルムアミドとカスパーゼ阻害剤を使った安定化
実施例8では、血液試料を安定化するために、種々の濃度のN−メチルホルムアミドをカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用した。分析の狙いは18S rDNAの増加を分析することにより決定される細胞外核酸集団の安定化であった。IIの材料と方法の項で記載のように試料の安定化および処理を行った。
これらの安定化溶液には、種々の濃度のN−メチルホルムアミド、カスパーゼ阻害剤およびEDTAを含めた。これらの安定化溶液を血液試料に添加すると、次の血液/安定化溶液混合物中の最終濃度が得られた:
7.2mg/mlのK2 EDTA、1μMのキノリン−Val−Asp−CH2−OPH(カスパーゼ阻害剤)および種々の濃度のN−メチルホルムアミド(詳細は図を参照)。
図30は、種々の濃度のN−メチルホルムアミド(詳細は図を参照)およびカスパーゼ阻害剤を使って血液を安定化した場合に得られた安定化結果を示す。図から分かるように、種々の濃度のN−メチルホルムアミドを含む試験安定化組成物は、N−メチルホルムアミド安定化試料中の18S rDNAの増加を著しく低減したことから分かるように、効果的に細胞外核酸集団を安定化した。
実施例9:N−メチルアセトアミドとカスパーゼ阻害剤を使った安定化
実施例9では、血液試料を安定化するために、種々の濃度のN−メチルアセトアミドをカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用した。分析の狙いは18S rDNAの増加を分析することにより決定される細胞外核酸集団の安定化であった。IIの材料と方法の項で記載のように試料の安定化および処理を行った。
これらの安定化溶液には、種々の濃度のN−メチルアセトアミド、カスパーゼ阻害剤およびEDTAを含めた。これらの安定化溶液を血液試料に添加すると、次の血液/安定化溶液混合物中の最終濃度が得られた:
7.2mg/mlのK2 EDTA、1μMのキノリン−Val−Asp−CH2−OPH(カスパーゼ阻害剤)および種々の濃度のN−メチルアセトアミド(詳細は図を参照)。
図31は、種々の濃度のN−メチルアセトアミド(詳細は図を参照)およびカスパーゼ阻害剤を使って血液を安定化した場合に得られた安定化結果を示す。図から分かるように、種々の濃度のN−メチルアセトアミドを含む試験安定化組成物は、N−メチルアセトアミド安定化試料中の18S rDNAの増加を著しく低減したことから分かるように、効果的に細胞外核酸集団を安定化した。
実施例4〜9は、本発明の、すなわち、一級または二級カルボン酸アミドを含む安定化溶液が、非安定化EDTA血液と比較して、室温で3日間の貯蔵後に放出されるDNA量の著しい低下を示すことを実証する。図から分かるように、全ての試験安定化剤は、細胞外核酸集団に対する少なくとも3日間の安定化効果を達成した。さらに、多くの安定化溶液で、6日間までおよびさらに長期間の安定化効果が観察された。さらに、実施例は、試験カルボン酸アミドがカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用された場合、全てのカルボン酸アミドで安定化効果が改善可能であったことを示す。追加でカスパーゼ阻害剤を含む安定化溶液は、少なくとも6日間の長期安定化効果を達成した。さらに、複数の異なるドナーから得た血液試料に対し本発明の安定化溶液を試験した場合、一級または二級カルボン酸アミドとカスパーゼ阻害剤の組み合わせで達成される安定化効果は、達成された安定化効果の変動がより小さいことが明らかになった。このように、これらのカルボン酸アミドをカスパーゼ阻害剤と組み合わせて使用した場合に、安定化が著しく改善された。

Claims (44)

  1. 細胞含有生物試料を、少なくとも1つのカルボン酸アミドと接触させることによって前記試料を安定化するための方法であって、前記カルボン酸アミドが一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択され、好ましくは、前記細胞含有生物試料および少なくとも1つの前記カルボン酸アミドを含む得られた組成物が少なくとも0.25%の濃度の前記カルボン酸アミドを含む、方法。
  2. 前記安定化が、細胞内RNAの安定化をもたらし、および/または前記細胞含有試料に含まれる細胞外核酸集団が安定化される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記方法が細胞溶解に基づかず、前記安定化が、タンパク質−核酸および/またはタンパク質−タンパク質架橋を誘発する架橋剤の使用を含まず、またホルムアルデヒド放出剤の使用を含まない、請求項1または2に記載の方法。
  4. 一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択される前記カルボン酸アミドが、式1:
    を有し、式中、R1は水素残基またはアルキル残基であり、R2は水素残基および直鎖または分岐鎖配置の1〜20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基から選択され、R3は水素残基であり、R4は酸素である、請求項1〜3の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  5. 前記細胞含有試料が、ホルムアミド、アセトアミド、プロパンアミドおよびブタンアミドからなる群より選択される少なくとも1つの一級カルボン酸アミド、好ましくはブタンアミドと接触させられる、請求項1〜4の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  6. 前記細胞含有生物試料が、N−アルキルホルムアミド、N−アルキルアセトアミド、およびN−アルキルプロパンアミドからなる群より選択される、好ましくは、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミドおよびN−メチルプロパンアミドから選択される少なくとも1つの二級カルボン酸アミドと接触させられる、請求項1〜5の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  7. 前記細胞含有生物試料を、一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択される少なくとも1つの前記カルボン酸アミドと接触させて得られる混合物が、前記カルボン酸アミドを、少なくとも0.1%、少なくとも0.25%、少なくとも0.5%、少なくとも0.75%、少なくとも1%、少なくとも1.25%、少なくとも1.5%、または少なくとも2%の濃度で含む、請求項1〜6の1項またはそれより多くの項、特に請求項5または6に記載の方法。
  8. 前記細胞含有試料が血液試料であり、追加で抗凝固剤と接触させられる、請求項1〜7の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  9. 前記細胞含有試料中に存在する核酸の分解が、前記安定化により低減される、請求項1〜8の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  10. 細胞内RNAが安定化される、請求項1〜9の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  11. 前記試料に含まれる細胞中のトランスクリプトームおよび/または転写物レベルが安定化される、請求項1〜10の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  12. c−fos、IL−1β、IL−8およびp53から選択される1つまたはそれを超えるマーカー遺伝子の転写物レベルが、安定化時に、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも48時間安定化される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記細胞含有試料中に含まれる細胞外核酸集団を安定化するために適する、請求項1〜9の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  14. 前記試料中に含まれる細胞から前記試料の無細胞の部分へのゲノムDNAの放出が低減される、請求項13に記載の方法。
  15. 以下の特徴:
    a)前記安定化が、安定化された前記試料から細胞の単離を可能とする;
    b)前記細胞含有試料が血液試料であり、白血球が安定化される;
    c)細胞の形態が保存される;
    d)有核細胞の形態が保存される;
    e)前記試料が血液試料であり、含まれるリンパ球および/または単球が安定化される;
    f)細胞表面エピトープが保存される;および/または
    g)細胞表面タンパク質が保存される、
    のうちの1つまたはそれより多くを有する、請求項1〜14の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  16. 前記細胞含有試料が、安定化のために追加でアポトーシス阻害剤と接触させられる、請求項1〜15の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  17. 前記アポトーシス阻害剤が、カスパーゼ阻害剤、好ましくは汎カスパーゼ阻害剤である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記細胞含有試料が、好ましくはポリエチレングリコールである少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマーと追加で接触させられる、請求項1〜17の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  19. 以下の特徴:
    a)一級または二級カルボン酸アミドである少なくとも1つの前記カルボン酸アミドおよび任意の追加の添加物が安定化組成物に含まれ、前記安定化組成物と特定の体積の前記細胞含有試料との体積比が、10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択される;
    b)安定化された前記細胞含有試料が、核酸分析および/または検出方法に供される;
    c)細胞内および/または細胞外核酸が安定化された前記試料から単離され、単離された前記核酸が分析および/または検出される;
    d)安定化された前記試料中に含まれる細胞が除去される;および/または
    e)(i)安定化された前記細胞含有生物試料、(ii)細胞が除去されている安定化された前記試料および/または(iii)前記試料から除去された細胞、が貯蔵される、
    のうちの1つまたはそれより多くを有する、請求項1〜18の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  20. 細胞が、安定化された前記試料から除去され、好ましくは除去された細胞が分析され、および/または核酸またはタンパク質などの生体分子が、除去された細胞から単離される、請求項1〜19の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  21. RNAが、安定化された前記試料中に含まれる細胞から単離される、請求項1〜20の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  22. 前記細胞含有試料が、式1:
    に従う化合物である少なくとも1つの三級アミドとさらに接触させられ、式中、R1は水素残基またはアルキル残基であり、R2およびR3は、同じまたは異なる直鎖または分岐鎖配置の1〜20原子の炭素鎖長を有する炭化水素残基であり、R4は、酸素、硫黄またはセレン残基であり、好ましくはR4は酸素である、請求項1〜21の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  23. 以下の特徴:
    a)式1に従う前記三級アミドが、カルボン酸アミドである;
    b)式1に従う前記三級アミドが、N,N−ジアルキルプロパンアミド、好ましくは、N,N−ジメチルプロパンアミドである;
    c)式1に従う前記三級アミドが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロパンアミド、N,N−ジメチルブタンアミドからなる群より選択される、
    のうちの1つまたはそれより多くを有する、請求項22に記載の方法。
  24. 前記細胞含有生物試料が、少なくとも1つの式1に従う一級または二級カルボン酸アミドおよび三級アミドならびに安定化のために使用される追加の任意の添加物と接触させられた後、得られた混合物が、
    i)少なくとも0.1%、少なくとも0.25%、少なくとも0.5%、少なくとも0.75%、少なくとも1%、少なくとも1.25%または少なくとも1.5%の濃度;および/または
    ii)0.1%〜30%、0.25%〜20%、0.5%〜15%、0.7%〜10%、0.8%〜7.5%、0.9%〜6%または1%〜5%の範囲
    の濃度の式1に従う前記三級アミドを含む、請求項22または23に記載の方法。
  25. 生物試料から核酸を単離するための方法であって、
    a)請求項1〜24の1項またはそれより多くの項に記載の方法により細胞含有試料を安定化するステップと、
    b)安定化された前記試料から核酸を単離するステップと、
    を含む、方法。
  26. ステップb)が、細胞内核酸、好ましくは細胞内RNAを単離することを含む、請求項25に記載の方法。
  27. 安定化された前記試料から細胞を除去するステップ、および除去された前記細胞から核酸を単離するステップを含む、請求項26に記載の方法。
  28. ステップb)が、細胞外核酸を単離することを含む、請求項25〜27の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  29. 細胞が、残存する試料から分離され、ステップb)において、細胞外核酸が、前記残存する試料から単離され、および/または細胞内核酸が、除去された前記細胞から単離される、請求項25〜28の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  30. 前記試料が血液である、請求項25〜29の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  31. 単離された前記核酸が、さらなるステップc)で処理および/または分析され、好ましくは、
    i)修飾される;
    ii)少なくとも1つの酵素と接触させられる;
    iii)増幅される;
    iv)逆転写される;
    v)クローン化される;
    vi)配列決定される;
    vii)プローブと接触させられる;
    viii)検出される;
    ix)定量される;
    ix)同定される;および/または
    x)遺伝子発現プロファイリング用に分析される、
    請求項25〜30の1項またはそれより多くの項に記載の方法。
  32. 細胞含有生物試料の安定化に適する組成物であって、以下:
    a)少なくとも1%の濃度の、少なくとも1つのカルボン酸アミドであって、前記カルボン酸アミドが、一級カルボン酸アミドおよび二級カルボン酸アミドから選択される、カルボン酸アミドと、
    b)少なくとも1つの抗凝固剤と、
    を含む、組成物。
  33. 一級および二級カルボン酸から選択される少なくとも1つの前記カルボン酸アミドが、請求項4、5または6に記載される特徴を有する、請求項32に記載の組成物。
  34. 前記抗凝固剤がキレート化剤、好ましくはEDTAである、請求項32または33に記載の組成物。
  35. 前記細胞含有試料が血液試料である、請求項32〜34の1項またはそれより多くの項に記載の組成物。
  36. 請求項22または23に記載される少なくとも1つの三級アミドを含む、請求項32〜35の1項またはそれより多くの項に記載の組成物。
  37. 少なくとも1つのアポトーシス阻害剤、好ましくはカスパーゼ阻害剤、より好ましくは汎カスパーゼ阻害剤を含み、好ましくは前記汎カスパーゼ阻害剤が、Q−VD−OPhおよびZ−Val−Ala−Asp(OMe)−FMKからなる群より選択され、前記カスパーゼ阻害剤が、好ましくはQ−VD−OPhである、請求項32〜36の1項またはそれより多くの項に記載の組成物。
  38. 含まれる細胞の遺伝子転写プロファイルを安定化することができ、および/または細胞含有試料中に含まれる細胞外核酸集団を安定化することができる、請求項32〜37の1項またはそれより多くの項に記載の組成物。
  39. 以下の特徴:
    a)前記組成物は、細胞を安定化し、前記細胞含有生物試料中に含まれる細胞から前記試料の無細胞の部分へのゲノムDNAの放出を低減させることができる;
    b)前記組成物は、安定化された試料中に含まれる細胞由来のゲノムDNAによる前記生物試料中に含まれる細胞外DNA集団の希釈を減らすことができる;
    c)前記組成物は、安定化された前記試料中に含まれる細胞由来の細胞内核酸による前記生物試料中に含まれる前記細胞外核酸集団の希釈を減らすことができる;
    d)安定化組成物は、添加物を、前記添加物が細胞溶解を誘発または促進する濃度で含まない;
    e)前記安定化組成物は、タンパク質−DNAおよび/またはタンパク質−タンパク質架橋を誘発する架橋剤を含まない;
    f)前記安定化組成物は、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、またはホルムアルデヒド放出剤を含まない;
    g)前記安定化組成物は毒性作用物質を含まない;
    h)前記安定化組成物は、冷蔵せずに、好ましくは室温で、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも2日〜3日間、少なくとも2日〜6日間、および/または少なくとも2日〜7日間から選択される期間、前記細胞含有生物試料中に含まれる細胞外核酸集団を安定化することができる;および/または
    i)前記安定化組成物は、少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)ポリマー、好ましくはポリエチレングリコールを含む、
    のうちの1つまたはそれより多くを有する、請求項32〜38の1項またはそれより多くの項に記載の組成物。
  40. 前記安定化組成物と血液試料との接触時に、c−fos、IL−1β、IL−8およびp53から選択される1つまたはそれを超えるマーカー遺伝子の転写物レベルが、安定化時に、少なくとも48時間安定化され、好ましくは、前記安定化組成物と前記細胞含有試料との体積比が、10:1〜1:20、5:1〜1:15、1:1〜1:10および1:2〜1:5から選択される、請求項32〜39の1項またはそれより多くの項に記載の組成物。
  41. 前記試料が血液試料であり、白血球、好ましくはリンパ球の形態および/または細胞表面エピトープが保存される、請求項32〜40の1項またはそれより多くの項に記載の組成物。
  42. 前記安定化組成物が、生物試料との混合物として提供される、請求項41に記載の組成物。
  43. 前記安定化組成物が、生物試料との混合物として提供され、前記試料が、以下の特徴:
    a)前記試料は細胞外核酸を含む;
    b)前記試料は全血である、
    のうちの1つまたはそれより多くを有する、請求項32〜42の1項またはそれより多くの項に記載の組成物。
  44. 請求項1〜24の1項またはそれより多くの項に記載の安定化方法における、請求項32〜43の1項またはそれより多くの項に記載の組成物の使用。
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