JP2016508602A - 偏光選択性表面増強ラマン分光法 - Google Patents

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Abstract

偏光選択性表面増強ラマン分光法(SERS)は、偏光依存プラズモンモードを呈するためにSERSマルチマーとして配置された複数のナノフィンガー、並びに、刺激源とラマン検出器の一方または両方を備える。該刺激源は、該SERSマルチマーを刺激信号で照射し、該ラマン検出器は、該SERSマルチマーの近くにある検体によって放出されたラマン散乱信号を検出することができる。該ラマン散乱信号は、該偏光依存プラズモンモードによって決まるもしくは該プラズモンモードに関連する偏光状態を有し、及び/または、該刺激信号は、該偏光依存プラズモンモードに対応する偏光状態を有する。【選択図】図1

Description

関連出願の相互参照:なし
合衆国政府の助成による研究または開発に関する陳述:なし
未知の物質の検出及び識別(または少なくとも分類)は、長きにわたって高い関心事となっており、また、近年より重要になってきた。正確な検出及び識別(同定)を特に期待できる方法の中には種々の形態の分光法がある。分光法は、物質すなわち材料がある形態の電磁放射(たとえば可視光)で照射されたときに生じる吸収スペクトル、散乱スペクトル、及び発光スペクトルのうちの1以上を用いて該材料の分析、特性の解明、及び識別を行うために使用することができる。材料を照射することによって生じる吸収、散乱及び発光スペクトルは、該材料のスペクトル「指紋」を決定する。一般に、スペクトル指紋(指紋スペクトル)は、特定の材料の識別を容易にする該材料の特性である。最も有効な発光分光技術は、ラマン散乱に基づくものである。
散乱分光法は、比較的単純な無機化学化合物から複雑な生体分子に及ぶ種々の検体種(すなわち検体)を識別し、監視し及び特徴付けるための重要な手段である。種々のタイプ散乱分光法の中には、検体からの蛍光(すなわち蛍光放射)に起因するラマン散乱及び放射を利用する方法がある。一般に、散乱分光法は、検体を刺激するための信号(たとえば光ビーム)を利用し、該検体は、(該信号に応答して)該検体の(たとえば構成要素または分子)の特性に依存する応答信号または散乱信号または放射信号を生成する。(たとえばスペクトル分析を用いて)散乱信号または発光信号を検出して分析することによって検体を識別することができ、場合によっては、定量化することもできる。
以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照することによって、本明細書に記載されている原理にしたがう例の種々の特徴をより容易に理解することができる。図面において、同じ参照番号は、同じ構成要素を示している。
本明細書に記載されている原理に整合する1例による、偏光選択性表面増強ラマン分光(SERS)システムのブロック図である。 本明細書に記載されている原理に整合する1例による、図1に示されているSERSシステムの一部の断面図である。 本明細書に記載されている原理に整合する1例による、二量体として配置された2つのナノフィンガーを有するSERSマルチマーの上面図である。 本明細書に記載されている原理に整合する1例による、三量体として配置された3つのナノフィンガーを有するSERSマルチマーの上面図である。 本明細書に記載されている原理に整合する1例による、四量体として配置された4つのナノフィンガーを有するSERSマルチマーの上面図である。 本明細書に記載されている原理に整合する1例による、偏光選択性表面増強ラマン分光(SERS)システムのブロック図である。 本明細書に記載されている原理に整合する1例による、偏光選択性表面増強ラマン分光(SERS)の方法のフローチャートである。
いくつかの例は、添付の図面に記載されている特徴に加えて他の特徴を有しており、また、添付の図面に記載されている特徴に代えて他の特徴を有している。それらの特徴及び他の特徴については、添付の図面を参照して詳細に後述する。
本明細書に記載されている原理にしたがう例は、散乱分光法を用いて種々の検体を検出しまたは検知することを提供する。具体的には、本明細書に記載されている原理にしたがう例は、表面増強ラマン分光法によって検体を検出することを提供する。さらに、表面増強ラマン分光法による検出は、偏光選択性を用いて、ラマン散乱信号とバックグラウンドノイズ信号を区別することを提供することができる。たとえば、偏光選択性は、ラマン散乱信号と、蛍光バックグラウンド信号や迷光(stray ambient light)(ただしこれらには限定されない)を含む種々のバックグラウンドノイズ信号との区別を容易にすることができる。
種々の例によれば、ラマン分光法は、(たとえば、二量体や三量体など)ラマン増強基板の(またはその構造に関連する)偏光依存プラズモンモード(polarization-dependent plasmonic mode)を利用することができる。いくつかの例では、刺激信号の偏光と偏光依存プラズモンモードを整列(または整合)させることによって、ラマン散乱信号と(1以上の)バックラウンドノイズ信号とを区別するための偏光選択性を提供することができる。偏光の整列(または整合)は、たとえば、刺激信号と偏光依存プラズモンモードとの結合を強めることができる。他の例では、偏光選択性は、ラマン散乱信号の偏光状態に選択的に合致ないし適合させられるラマン検出器によって提供される。種々の例によれば、ラマン散乱信号の偏光状態は、偏光依存プラズモンモードによって決定されうる。さらに他の例では、上記刺激信号の偏光整列(または偏光整合)、並びにラマン散乱信号とのラマン検出器の偏光の上記選択的な合致(マッチング)を利用して、ラマン散乱信号とバックラウンドノイズ信号とを区別する。種々の例によれば、この区別は、ラマン散乱信号の信号対ノイズ(雑音)比を改善することができ、いくつかの例では、該比を大幅に改善することができる。
本明細書に記載されている原理の例は、検体すなわち対象種の存在を検出または検知するために表面増強ラマン分光法(SERS)を利用する。ここで、使用できる他の形態の散乱分光法には、限定はしないが、表面増強コヒーレントアンチストークスラマン散乱(SECARS:surface enhanced coherent anti-stokes Raman scattering)、共鳴ラマン分光法、ハイパー(hyper)ラマン分光法、ラマン分光法の種々の空間的にオフセットした(spatiallyoffset)共焦点バージョン、並びに、プラズモン共鳴の直接観察(direct monitoring)が含まれる。SERSは、検体の検出及び識別を提供することができ、いくつかの例では検体の定量化を提供することができる。具体的には、種々の例にしたがって、表面に吸着したまたは該表面に密接に結び付いた検体をSERSによって検出または検知することができる。本明細書では、特定の限定のためにではなく説明を簡単にするために、別段の明示がない限り、散乱分光法をSERSベースの散乱分光法に関して説明する。
ラマン散乱光学分光法(本明細書では単にラマン分光法という)は、(光が)照射されている物質の内部構造による光子の非弾性散乱によって生成された散乱スペクトルまたは該スペクトルのスペクトル成分を利用する。非弾性散乱によって生成された応答信号(たとえばラマン散乱信号)に含まれるそれらのスペクトル成分は、検体の識別(これには限定されないが)を含む、検体種の物質特性(または材料特性)の決定を容易にすることができる。表面増強ラマン分光法(SERS)は、「ラマン活性」または「ラマン増強」表面を利用するラマン分光法の一形態である。SERSは、特定の検体種によって生成されたラマン散乱信号の信号レベルまたは信号強度を大幅に大きくすることができる。具体的には、いくつかの例において、ラマン増強表面は、ナノフィンガー(nanofinger)またはナノロッド(ただしこれらには限定されない)などのナノ構造の先端部に関連する領域を含んでいる。ナノフィンガーの先端部は、たとえば、(ラマン散乱信号の強度をさらに大きくすることにつながる)照明(照射)場(illumination field)を集中させ及び/またはラマン放射を増幅させるためのナノアンテナとして作用することができる。
SERSのいくつかの例では、複数のナノフィンガーを含むSERS表面は、検体からのラマン散乱信号の生成及び放射を増強するように構成される。具体的には、いくつかの例において、「ラマン増強」構成におけるナノフィンガー(たとえばナノフィンガーの先端部)を囲んでいる該ナノフィンガーに関連する電磁場は、検体からのラマン散乱を増強することができる。ラマン増強構成におけるナノフィンガー自体並びにナノフィンガーの先端部の相対的な位置は、増強されたラマン散乱を提供することができる。
本明細書における「ナノロッド」またはこれと等価な「ナノフィンガー」は、たとえば、長さの方向に対して垂直な面で切り取ったナノスケールの断面の寸法(たとえば幅)よりも大きな長さ(または高さ)を有する細長いナノスケール構造として定義される。いくつかの例では、該長さを、該ナノスケールの断面の寸法の数倍大きいものとすることができる。具体的には、ナノフィンガーの長さは一般に、該ナノフィンガーの幅よりもはるかに大きい(たとえば、長さは幅の約2〜3倍を超える)。いくつかの例では、該長さを、該断面の寸法(または幅)の5倍もしくは10倍より大きいものとすることができる。
たとえば、該幅を約40ナノメートル(nm)とすることができ、かつ、該高さを約400nmとすることができる。別の例では、ナノフィンガーの幅または直径を約100nmと200nmの間の大きさとすることができ、該長さを約500nmより大きいものとすることができる。たとえば、該幅を約130nm〜170nm(の範囲内の大きさ)とすることができ、かつ、該長さを約500nm〜800nm(の範囲内の大きさ)とすることができる。さらに別の例では、ナノフィンガーの基部(つけ根の部分)における幅の大きさを約20nmと約100nmの間とすることができ、該長さを約1マイクロメートル(μm)より大きいものとすることができる。別の例では、ナノフィンガーを、その基部の幅が約100nm〜約500nmの範囲内であり、該基部の長さを約0.5μm〜数μmの範囲内とすることができる、円錐形とすることができる。
種々の例において、複数のナノフィンガーを成長させることができ(すなわちアディティブ法によって生成することができ)、または、該複数のナノフィンガーをエッチングもしくはサブトラクティブ法によって作製することができる。たとえば、ナノフィンガーを、気相−液相−固相(VLS)成長プロセスを用いてナノワイヤとして成長させることができる。他の例では、ナノワイヤ成長は、(気相−固相(V−S)成長プロセスと溶液成長(solution growth)プロセスの一方を利用することができる。さらに他の例では、集束イオンビーム(focused ion beam:FIB)蒸着やレーザー誘起自己組織化(laser-inducedself assembly)(ただし、それらには限定されない)などの指向性もしくは誘導性の自己組織化(directedor stimulated self-organization)技術によって成長を達成することができる。別の例では、反応性イオンエッチング(reactive ion etching)(ただしこれには限定されない)などのエッチングプロセスを用いて、周囲の材料を除去してナノフィンガーを残すことによってナノフィンガーを作製することができる。さらに他の例では、インプリントリソグラフィー(ただしこれには限定されない)を含むさまざまな形態のインプリントリソグラフィー、並びに、マイクロ電気機械システム(MEMS)及びナノ電気機械システム(NEMS)の作製に用いられる様々な技術を、本明細書に記載されているナノフィンガー及び種々の他の要素の作製に適用することができる。
本明細書における「ナノ粒子」は、長さ、幅及び深さが実質的に同じ寸法を有するナノスケール構造として定義される。たとえば、ナノ粒子の形状を、円柱、球、楕円体、切子面のある球もしくは楕円体、または、立方体、八面体、十二面体、またはその他の多角形とすることができる。他の例では、ナノ粒子を実質的に不規則な3次元形状とすることができる。ナノ粒子の直径または寸法を、たとえば、約5nm〜約300nmの範囲内とすることができる。いくつかの例では、ナノ粒子の寸法を、約50nm〜約100nmの範囲内、または、約25nm〜約100nmの範囲内、または、約100nm〜約200nmの範囲内、または、約10nm〜約150nmの範囲内、または、約20nm〜約200nmの範囲内とすることができる。
いくつかの例では、ナノ粒子を、実質的に均質な構造とすることができる。たとえば、ナノ粒子をナノスケールの金属粒子(たとえば、金や銀や銅などのナノ粒子)とすることができる。他の例では、ナノ粒子を、(定義のとおり)実質的に不均質であるコアシェル構造とすることができる。たとえば、ナノ粒子は、第1の材料からなるコアを有することができ、該コアは、該第1の材料とは異なるものとすることができる第2の材料で覆われている。覆っている該第2の材料すなわちシェルを金属とすることができ、該第1の材料を導体または誘電体とすることができる。別の例では、たとえば、該第2の材料を誘電体とすることができ、該第1の材料を金属などの導体とすることができる。プラズモン(たとえば、表面プラズモンやバルクプラズモン)を支持することができるナノ粒子は、「プラズモニックナノ粒子」(またはプラズモンナノ粒子)と定義される。たとえば、金属ナノ粒子または金属クラッドナノ粒子(metal clad nanoparticle)はプラズモニックナノ粒子として機能することができる。
本明細書による定義では、「ナノスケール」は、約1000ナノメートル(nm)未満の寸法を意味する。たとえば、大きさが約5nm〜約300nmである構造もしくは粒子は、ナノスケール構造とみなされる。同様に、たとえば、約5nm〜100nmの開口寸法を有するスロットもナノスケール構造とみなされる。
さらに、本明細書で使用されている(名詞の前に付されている)「ある」という用語は、特許の分野におけるそれの通常の意味を有すること、すなわち、「1以上」を意味するものであることが意図されている。たとえば、本明細書では、「あるナノフィンガー」は、1以上のナノフィンガーを意味し、また、本明細書では、「ナノフィンガー」は、「(1以上の)ナノフィンガー」を意味する。また、本明細書では、「上部」、「下部」、「より上の」、「より下の」、「上へ」、「下へ」、「前部」、「後部」、「左」、「右」という用語はいずれも限定するためのものであることを意図していない。本明細書では、ある値に「約」という用語が付されているときは、別段の明示がある場合を除いて、その値を生じるために使用される装置の許容範囲内にある値、または、いくつかの例では、その値の±10%もしくは±5%もしくは±1%の範囲内にある値を意味している。さらに、本明細書の例は、例示に過ぎないことが意図されており、また、説明のために提示されたものであって、限定するために提示されたものではない。
図1は、本明細書に記載されている原理に整合する1例による、偏光選択性表面増強ラマン分光(SERS)システム100のブロック図である。図2は、本明細書に記載されている原理に整合する1例による、図1に示されているSERSシステム100の一部の断面図である。SERSシステム100は、SERSシステム100の近くにある検体を検出するように構成されている。たとえば、検体を、SERSシステム100を通って流れる流体中に浮かせて該流体によって運ぶ(もしくは支持する)ことができる。種々の例によれば、SERSシステム100は、刺激信号104(たとえば光ビーム)と検体の間の非弾性相互作用を通じてラマン散乱信号102を生成することによって検体を検出する。
より詳細に後述するように、種々の例によれば、SERSシステム100はさらに、ラマン散乱信号102とバックグラウンドノイズ信号106とを区別することができる。バックグラウンドノイズ信号を、たとえば、蛍光バックグラウンド信号と迷光のうちの1以上とすることができる。SERSシステム100は、偏光の違いを用いて、ラマン散乱信号102とバックグラウンドノイズ信号106を区別することができる。具体的には、SERSシステム100は、ラマン散乱信号102の偏光状態と、バックグラウンドノイズ信号の他の状態すなわち異なる偏光状態とを区別することができる。たとえば、ラマン散乱信号102は、直線偏光しているが、バックグラウンドノイズ信号(たとえば、蛍光バックグラウンドノイズ)は実質的に偏光していない場合がある。
図1及び図2を参照すると、偏光選択性SERSシステム100は、SERSセンシング基板(またはSERSセンシング基材)100を備えている。具体的には、図1は、SERSセンシング基板110とそれ以外の偏光選択性SERSシステム100の要素との関係を示しており、図2は、SERSセンシング基板110を備えるSERSシステム100の一部をより詳しく示している。図示のように、刺激信号104は、SERSセンシング基板110の方を向いた矢印として示されており、ラマン散乱信号102は、SERSセンシング基板110から離れる方を向いた矢印として示されている。
種々の例によれば、SERSセンシング基板110は、複数のナノフィンガー112を有している。図2に示されているように、ナノフィンガー112は、支持部114に取り付けられている端部の反対側にある自由端を有している。いくつかの例では、支持部114は、ナノフィンガー112を支持する基板(または基材)を備えることができる。いくつかの例では、ナノフィンガー112は固定端で支持部114にしっかりと取り付けられている。他の例では、ナノフィンガー112は、たとえば、介在する材料もしくは層を介して支持部114に間接的に取り付けられる。
種々の例において、ナノフィンガー112またはその一部分を、該ナノフィンガー112の近くにある検体を選択的に(または優先的に)捕捉もしくは保持するように構成することができる。たとえば、ナノフィンガー112の表面は検体を吸着または拘束することができる。いくつかの例では、ナノフィンガー112またはその一部分を、検体を選択的(または優先的に)に拘束するかまたは選択的に吸着するように機能化(機能付与)することができる。いくつかの例では、ナノフィンガー112は、(たとえばナノフィンガー112の運動によって)検体を能動的に捕捉または捕らえることができる。
いくつかの例によれば、ナノフィンガー112の先端部は、実質的に平坦な形状であるか、または丸みを帯びた(たとえばドーム形の)形状を有することができる。たとえば、ナノフィンガー112は、該ナノフィンガー112を作成するために使用されるプロセス(たとえば、VLS成長)から自然に形成される先端部を有することができる。他の例では、ナノフィンガー112の自由端に特定の形状を与えるために、該ナノフィンガーの先端部をさらに処理することができる。たとえば、化学機械研磨を用いてナノフィンガー112の先端部を平坦にすることができる。
いくつかの例では、ナノフィンガー112は半導体を含むことができる。たとえば、該半導体をドープされたもしくはドープされていない(すなわち実質的に真性の)シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)もしくはSiとGeの合金とすることができる。他の例では、該半導体は、ヒ化ガリウム(GaAs)、ヒ化ガリウムインジウム(InGaAs:ヒ化インジウムガリウムともいう)、窒化ガリウム(GaN)、もしくは他の種々のIII-V、II-VI、IV-VI族化合物半導体のうちの1以上を含むことができる。他の例では、ナノフィンガー112を、ポリウレタン、ポリ(tert-ブチルメタクリレート):P(tBMA):poly(tert-butyl methacrylate))、ポリメタクリル酸メチル(polymethylmethacrylate:PMMA)、ポリスチレン、ポリカーボネート、または関連するプラスチック(これらには限定されないが)などのプラスチックもしくはポリマーとすることができ、または、それらをプラスチックもしくはポリマーを含むことができる。さらに他の例では、ナノフィンガー112は、金、銀、白金、その他の貴金属、アルミニウム、銅、または2以上の金属の合金もしくは組み合わせ(これらには限定されないが)などの金属を含むことができる。
いくつかの例によれば、(たとえば図2に示されているように)ナノフィンガー112は、該ナノフィンガー112の(支持部114から)遠い方の端部すなわち自由端においてナノ粒子116を含むことができる(たとえば、該自由端はナノ粒子116で覆われている)。たとえば、ナノ粒子116を、ナノフィンガー112の先端部の近くでナノフィンガー112に取り付けることができる。いくつかの例では、ナノ粒子116の材料をナノフィンガー112の材料とは異なるものとすることができる。たとえば、ナノフィンガー112を半導体またはポリマーとし、一方、ナノ粒子116を金属とすることができる。これらの例のうちのいくつかでは、ナノ粒子116を、(たとえば機能化によって)ラマン散乱を増強するように及び/または検体の選択的な吸着を促進するように構成することができる。具体的には、いくつかの例では、ナノ粒子116は、ラマン増強に適した導電性材料を含むことができる。たとえば、ナノ粒子116を、金、銀、白金、その他の貴金属、アルミニウム、銅(これらには限定されないが)などの金属、並びに、それらの金属のうちの任意のもの同士の合金もしくは混合物またはそれらの金属のうちの任意ものもと別の金属との合金もしくは混合物とすることができ、または、ナノ粒子116は、それらの金属及び/または合金及び/または混合物を含むことができる。
いくつかの例では、ナノ粒子116は、導電性材料(導体)だけを実質的に含むことができる。たとえば、ナノ粒子116を金属のナノ粒子116とすることができる。他の例では、該導体(たとえば該金属)を用いてナノ粒子116の表面を形成することができる。たとえば、ナノ粒子116は、コアを囲んでいる金属シェル(金属のシェル)を含むことができ、この場合、該コアは、半導体や誘電体(これらには限定されないが)などの該シェルとは異なる材料で構成されている。
種々の例によれば、ナノフィンガー112は、ラマン増強構造である。具体的には、ナノフィンガー112全体と(支持部114から)遠い方の端部にあるナノ粒子116の一方または両方をラマン増強効果を奏するものとすることができる。たとえば、ナノ粒子116の導電性の表面(たとえば金属表面)は表面プラズモンを支持することができる。他の例では、ナノ粒子116はバルクプラズモンを支持することができる。同様に、種々の例において、ナノフィンガー112自体は、(たとえば、ナノフィンガー112が金属などの導電性材料であるか該材料を含んでいるときには)表面プラズモンとバルクプラズモンの一方または両方を支持することができる。たとえば、ナノフィンガー112は、ナノフィンガー112の全長に沿って、または、自由端の先端の近くに、金属の表面を有することができる。種々の例によれば、表面プラズモン及びバルクプラズモンの存在によって、ナノフィンガー112のラマン増強効果とナノ粒子116のラマン増強効果の一方または両方を提供することができる。
種々の例によれば、SERSセンシング基板110の複数のナノフィンガー112は、本明細書では「SERSマルチマー」118と呼ぶ規則的なグループ(または規則的な基)すなわち「マルチマー」(多量体)として配置される。種々の例によれば、SERSマルチマー118は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはより多くのナノフィンガー112のグループを含むことができる。2つのナノフィンガー112を有するSERSマルチマー118を「二量体」と呼ぶことができ、3つのナノフィンガー112を有するSERSマルチマー118を「三量体」と呼ぶことができ、4つのナノフィンガー112を有するSERSマルチマー118を「四量体」と呼ぶことができ、以下同様である。いくつかの例では、SERSマルチマー118のナノフィンガー112を、ナノフィンガー112の少なくとも自由端が、多角形(たとえば、二角形、三角形、四角形、五角形、六角形など)の頂点に配置されるように配列することができる。いくつかの例では、多角形を正多角形とすることができる。
図3Aは、本明細書に記載されている原理に整合する1例による、二量体として配置された2つのナノフィンガー112を有するSERSマルチマー118の上面図である。図3Bは、本明細書に記載されている原理に整合する1例による、三量体として配置された3つのナノフィンガー112を有するSERSマルチマー118の上面図である。図3Cは、本明細書に記載されている原理に整合する1例による、四量体として配置された4つのナノフィンガー112を有するSERSマルチマー118の上面図である。
種々の例によれば、SERSマルチマー118のナノフィンガー112を、互いに接触しているか、または、互いから離れているものとすることができる。たとえば、SERSマルチマー118中のナノフィンガー112の先端部自体またはナノフィンガー112の先端部にあるナノ粒子116を実質的に接触させることができ、または、それらを近接させて、それらが、約数ナノメートル以下の間隙(ギャップ)によって分離されるようにすることができる。さらに、SERSマルチマー118中のナノフィンガー112を、それらの先端部が互いに向かって傾くように傾けることができる。この傾けは、たとえば、ナノフィンガー112の先端部同士または該先端部にあるナノ粒子116同士の接触を容易にすることができる。
いくつかの例では、SERSセンシング基板110は、複数のSERSマルチマー118を含むことができる。たとえば、該複数のSERSマルチマー118は、数個の、または数十個の、または数百個の、またはより多くのSERSマルチマー118を含むことができる。たとえば、SERSマルチマー118を、支持基板114を挟んで互いから隔置することができる。他の例では、SERSマルチマー118を互いに隣接させるかもしくは接触させることができる(たとえば、第1のSERSマルチマー118のナノフィンガー112を隣にあるSERSマルチマー118のナノフィンガー112に接触させることができる)。種々の例によれば、複数のSERSマルチマー118が隔置されるときの隣合うSERSマルチマー118間の間隔を、一定(すなわち周期的な間隔)であるかまたは一定ではない(たとえば実質的にランダムな間隔)とすることができる。
具体的には、いくつかの例では、複数のSERSマルチマー118を、特定の規則的なパターンすなわち「配列」(アレイ)が繰り返すように配置することができる。小さな配列(たとえば束(bundle))と大きな配列の両方を含むSERSマルチマー118の配列は、線形配列すなわち1次元(1-D)配列または2次元(2-D)配列(たとえば直線状の配列や円形配列など)(これらには限定されないが)を含むことができる。たとえば、複数のSERSマルチマー118を1次元配列の行をなすように配置することができる。たとえば、SERSマルチマー118の複数の1次元配列または行を互いに隣接させて配置することによって、SERSマルチマー118の2次元直線状配列を形成することができる。偏光選択性SERSシステム100において、多角形配列や円形配列(これらには限定されないが)を含む他のさまざまな2次元配列を利用することができる。
種々の例によれば、SERSマルチマー118は、偏光依存プラズモンモードを示す(すなわち呈する)ように構成される。具体的には、SERSマルチマー118としてのナノフィンガー112の配置は、(1以上の)特定のもしくは選択されたプラズモンモードを支持(サポート)するように構成される。いくつかの例によれば、SERSマルチマー118の該特定のプラズモンモードを、該特定のプラズモンモードに選択的に(または優先的に)結合するように調整(または整列ないし適合)された特定の偏光状態を有する刺激信号104(たとえば入射照明信号)によって刺激(または活性化)することができる。種々の例によれば、この結果、SERSマルチマー118の特定のプラズモンモードは、該特定のプラズモンモードに整列(ないし整合もしくは適合)したまたは該特定のプラズモンモードによって決まる特定の偏光状態を有するラマン散乱信号102の放射もしくは散乱を促進することができる。ここで、「偏光依存プラズモンモード」は、該特定のプラズモンモードと、該刺激信号と該ラマン散乱信号の一方または両方の偏光状態との上記の整列(または整合)として定義される。
たとえば、図3Aに関連して、SERSマルチマー118の偏光依存プラズモンモードを理解することができる。図3Aに示されているように、SERSマルチマー118は、一対のナノフィンガー112及び取り付けられているナノ粒子116を含む二量体である。該二量体は、ナノ粒子116の各々の中心を通る長軸を有している。いくつかの例によれば、図示の二量体の配置ないし構造は、該二量体の長軸に沿って配向した双極子プラズモンモードを支持(サポート)することができる。たとえば、図3Aの両矢印は、双極子プラズモンモード(及び該二量体の長軸)の配向(向き)を示している。図3Bは、三量体であるSERSマルチマー118に関連付けることができる双極子プラズモンモードの可能性のある複数の例の配向(向き)を表すいくつかの両矢印を示している。たとえば、図3Bに示されているもの以外の双極子プラズモンモードも可能である。双極子プラズモンモードより高いモード次数を有するプラズモンモードが、特に、二量体よりも多くの要素(たとえばナノフィンガー112)を含むマルチマーにおいて可能である。
例示であって限定としてではない図3Aに示す二量体について検討すると、刺激信号104の入射電磁波は、該入射電磁波の電場ベクトルが該二量体の長軸に実質的に平行に配向している(実質的に平行である)場合には、双極子プラズモンモードに選択的に(または優先的に)結合して該モードを励起または刺激することができる。たとえば、直線偏光した電磁波(すなわち直線偏光光)は、該電磁波の伝搬方向に垂直な線を描く(または該線をたどる)電場ベクトルを有する。該電磁波の局所座標系で定義される該線及び該線の角度は、該電磁波の偏光状態を表している。該偏光状態が該二量体の長軸に整列している場合には、該電磁波の電場は、双極子プラズモンモードに結合して該モードを選択的に(または優先的に)刺激することができる。
SERSマルチマー118の偏光依存プラズモンモードは、選択的に(または優先的に)刺激または励起されるのに加えて、ラマン散乱信号の偏光状態を決定することもできる。たとえば、上記のように、図3Aに示されている二量体は、双極子プラズモンモードを支持することができる。そして、該双極子プラズモンモードは、検体との相互作用を通じてラマン散乱信号102を生成することができる。ラマン散乱信号102は、実質的に直線である偏光状態(すなわち直線偏光)を有し、かつ、該二量体の長軸の向きに対応(または合致)する向き(すなわち偏光角)を有することができる。類似の偏光状態依存性を、SERSマルチマー118に現れる他の偏光依存プラズモンモードに関連付けることができ、または、該プラズモンモードによって決定することができる。
図1を再び参照すると、偏光選択性SERSシステム100はさらに刺激源120を備えている。刺激源120は、SERSセンシング基板110のSERSマルチマー118に刺激信号104を当てる(または照射する)ように構成されている。いくつかの例では、SERSマルチマー118を照射するように構成された刺激源120によって提供される刺激信号104は、SERSマルチマー118の偏光依存プラズモンモードを選択的に(または優先的に)刺激するように偏光させられている。具体的には、所定の偏光状態にしたがって(または該偏光状態に合致するように)刺激信号104を偏光させることができる。該所定の偏光状態を、SERSマルチマー118の特定のプラズモンモードに選択的に(または優先的に)結合するように調整する(または整列ないし適合させる)ことができる。
いくつかの例では、刺激源120は、レーザー(これには限定されないが)などの光源を含むことができる。たとえば、該光源(からの光)を直線偏光させる(すなわち、該光源は直線偏光状態を有する)ことができる。いくつかの例によれば、刺激源120はさらに、刺激信号120の偏光状態を回転させるかその他のやり方で調整して、SERSマルチマー118の特定のプラズモンモードに整列(または整合)させるための偏光子を備えることができる。いくつかの例では、該偏光子は選択可能な偏光状態を有することができる(すなわち偏光状態を選択可能である)。種々の例によれば、該選択可能な偏光状態を、SERSマルチマー118の偏光依存プラズモンモードに対応(または合致もしくは整列)しかつ該モードを選択的に(または優先的に)励起ないし刺激する偏光状態を有する刺激信号104を生成するように構成することができる。たとえば、該偏光子を、刺激信号104の直線偏光を円偏光に変換する4分の1波長板とすることができる。該偏光子はさらに、たとえば、調節可能なまたは選択可能な偏光角を有する直線偏光子であって、該偏光角に対応(または合致)する直線偏光状態を有する刺激信号104を生成するための直線偏光子を備えることができる。使用できる直線偏光子には、二色性偏光子、薄膜誘電体コーティング及び関連するビームスプリッティング(thin-film dielectric coating and related beam-splitting。たとえば、複屈折結晶)偏光子、及び、ワイヤグリッド偏光子もしくはスリット−偏光子(slit-polarizer)(これらには限定されないが)が含まれる。
いくつかの例では、該偏光子は、回転可能な偏光を提供することができる(すなわち偏光を回転させることができる)。たとえば、2分の1波長板を用いて(たとえば、直線偏光した刺激信号104の)偏光を回転させることができる。該回転可能な偏光は、複数の偏光角間を回転する刺激信号104の直線偏光状態を提供することができる。具体的には、第1の時刻において、該直線偏光状態の回転は、SERSマルチマー118の偏光依存プラズモンモードに実質的に対応(または合致ないし整列)し、かつ、たとえば、該プラズモンモードを選択的に(または優先的に)励起する刺激信号104の第1の偏光状態を経るすなわち示す(呈する)ことができる。第2の時刻において、該直線偏光状態は、該第1の偏光状態に実質的に垂直な第2の偏光状態を経るすなわち示す(呈する)ことができる。該第1の偏光状態に垂直な該第2の偏光状態は、SERSマルチマー118の偏光依存プラズモンモードに対応(または合致ないし整列)しておらず、そのため、該プラズモンモードを励起できないものでありうる。いくつかの例によれば、該第1の偏光状態と該第2の偏光状態における偏光依存プラズモンモードの励起の違いは、該偏光依存プラズモンモードの励起に関連するラマン散乱信号と、該偏光依存プラズモンモードの励起に実質的に関連しないバックグラウンドノイズ信号との区別を容易にすることができる。他の例によれば、該第1の偏光状態と該第2の偏光状態を用いる類似の励起の相違を、回転可能な偏光とは対照的に選択可能な偏光状態を有する偏光子によって提供することができる。
図1に示されているように、偏光選択性SERSシステム100はさらに、ラマン検出器130を備えている。種々の例によれば、ラマン検出器130は、SERSセンシング基板110のSERSマルチマー118の近くにある検体によって放出されたラマン散乱信号102を検出するように構成されている。ラマン散乱信号102は、偏光依存プラズモンモードに関連する、または、該プラズモンモードによって決定される偏光状態を有する。いくつかの例では、ラマン検出器130は、ラマン散乱信号102の偏光状態と(該偏光状態とは異なる)バックグラウンドノイズ信号の偏光状態とを区別するように構成されている。
いくつかの例では、ラマン検出器130は、偏光弁別器及び分光計を備えている。分光計は、ラマン散乱信号102のスペクトルを検出して測定するように構成されている。偏光弁別器は、ラマン散乱信号102(これには限定されないが)を含む受信した信号の可能性のあるさまざまな偏光を選択的に識別(または区別)するように構成されている。具体的には、偏光弁別器は、SERSマルチマー118の偏光依存プラズモンモードによって決まるラマン散乱信号102の偏光状態に対応(または合致ないし整列)する偏光状態の偏光識別機能を提供するように構成されている。
いくつかの例では、偏光弁別器は、選択可能な偏光状態を提供するように構成されている。たとえば、偏光弁別器を、特定の偏光角を有する直線偏光状態を処理する(たとえば通過させる)ように構成することができる。いくつかの例では、偏光弁別器は、回転可能な偏光状態を処理するように構成される。たとえば、偏光弁別器は、複数の偏光状態を経る(たとえば複数の偏光状態が順に提供されるように偏光状態を回転させる)直線偏光子を備えることができる。いくつかの例では、偏光弁別器は、ラマン散乱信号102の偏光状態の主成分と該主成分に直交する該偏光状態の成分の一方または両方を選択的に(または優先的に)受け取るように構成されている。たとえば、偏光弁別器は、直交する2つの偏光状態、すなわち、主成分に対応する偏光状態と、該主成分に直交する成分に対応するもう1つの偏光状態、を選択的に(または優先的に)処理することができる。いくつかの例によれば、第1の偏光状態と第2の偏光状態における偏光依存プラズモンモードの検出間の違いは、偏光依存プラズモンモードの放射に関連するラマン散乱信号と、偏光依存プラズモンモードの励起に実質的に関連しないバックグラウンドノイズ信号との区別を容易にすることができる。
いくつかの例では、偏光弁別器は、刺激源120の偏光子を備えるかまたは該偏光子を実質的に共有する。たとえば、該光源は刺激信号104を生成することができ、生成された該信号は該偏光子を通過する。その後、SERSマルチマー118において生成されたラマン散乱信号102を、たとえば、該偏光子を通過させ、(たとえばビームスプリッターによって)刺激信号104から分離して、該分光計へと送ることができる。
図4は、本明細書に記載されている原理に整合する1例による、偏光選択性表面増強ラマン分光(SERS)システム200のブロック図である。図示のように、偏光選択性SERSシステム200は、マルチマー(多量体)として配置ないし構成された複数のナノフィンガー210を備えている。種々の例によれば、それぞれのナノフィンガー210は、自由端においてSERS−増強ナノ粒子212を有している。該マルチマーは、偏光依存プラズモンモードを示す、すなわち呈するように構成されている。いくつかの例では、ナノフィンガー210とSERS−増強ナノ粒子212は、偏光選択性SERSシステム100に関して上記したナノフィンガー112とナノ粒子116に実質的に類似している。さらに、いくつかの例では、該マルチマーは、偏光選択性SERSシステム100に関して上記したSERSマルチマー118に実質的に類似している。
図示のように、偏光選択性SERSシステム200はさらに、偏光子222を備える刺激源220と、偏光弁別器232を備えるラマン検出230の一方または両方を備えている。種々の例によれば、偏光子222を備える刺激源220は、制御可能な偏光状態を有する刺激信号を生成するように構成される。この場合、制御可能な偏光状態を有する刺激信号は、該マルチマーの偏光依存プラズモンモードに対応(または合致ないし整列)する偏光状態でもって該マルチマーに当たる(該マルチマーを照射する)ように構成される。種々の例によれば、偏光弁別器232を備えるラマン検出230は、該マルチマーの近くにある検体によって放出されたラマン散乱信号を検出するように構成される。具体的には、ラマン検出器230は、ラマン散乱信号の偏光状態を選択的に(または優先的に)受け取り、及び、該ラマン散乱信号の偏光状態とは異なる偏光状態を有するバックグラウンドノイズ信号を受け入れない(すなわち拒絶する)かもしくは実質的に受け入れないように構成される。
いくつかの例では、刺激源220は、偏光選択性SERSシステム100に関して上記した刺激源120に実質的に類似する。具体的には、刺激源220はさらに、刺激信号を生成するための光源224(たとえばレーザー)を備えることができる。いくつかの例では、ラマン検出器230は、偏光選択性SERSシステム100に関して上記したラマン検出器130に実質的に類似する。具体的には、ラマン検出器230はさらに、ラマン散乱信号を検出して測定するための分光計234もしくは他の装置を備えることができる。
いくつかの例では、刺激源の偏光子222と偏光弁別器232の一方または両方は回転可能な偏光子を備えることができる。いくつかの例では、回転可能な偏光子は、刺激源220とラマン検出器230の両方によって共有される。たとえば、図4に示されているように、回転可能な偏光子を、偏光子222と偏光弁別器232の両方として機能するように、刺激信号とラマン散乱信号の両方を捕えて(インターセプトして)偏光させるように配置することができる。図4にさらに示されているように、システム200はさらに、刺激信号とラマン散乱信号を分離し、さらに、該ラマン散乱信号を分光計234に向けて送るように構成されたビームスプリッター240を備えることができる。(不図示の)別の例では、偏光子222を、光源224とビームスプリッター240の間に配置することができ、一方、偏光弁別器232は、ビームスプリッター240と分光計234の間に配置される。この構成では、刺激信号の偏光と偏光の弁別を互いに独立に制御することができる。他の例によれば、ビームスプリッター240を使用しない他の構成も可能である。
いくつかの例では、該マルチマーを二量体とすることができ、この場合、該二量体は、該二量体の長軸に実質的に整列した偏光依存プラズモンモードを示す(呈する)ように構成されている。いくつかの例では、バックグラウンドノイズ信号は、実質的に偏光していない(すなわち非偏光の)蛍光信号でありうる。いくつかの例では、バックグラウンドノイズ信号は迷光(stray ambient light)でありうる。さらに他の例では、バックグラウンドノイズ信号は、蛍光信号と迷光の組み合わせでありうる。
図5は、本明細書に記載されている原理に整合する1例による、偏光選択性表面増強ラマン分光(SERS)の方法300のフローチャートである。図示のように、偏光選択性SERSの方法300は、SERS基板(またはSERS基材)に刺激信号を当てる(または照射する)ステップ310を含む。種々の例によれば、SERS基板は、マルチマーとして配置ないし構成された複数のナノフィンガーを備える。それぞれのナノフィンガーは、該ナノフィンガーの自由端にSERS−増強ナノ粒子を備えることができる。該自由端を、たとえば、支持部(または支持台)に取り付けられている該ナノフィンガーの端部に対して実質的に反対側にあるものとすることができる。
種々の例では、照射された該マルチマーは、偏光依存プラズモンモードを示す(呈する)ように構成されている。いくつかの例では、SERS基板を照射するステップ310は、偏光した刺激信号すなわち特定の偏光状態を有する刺激信号を放出するステップを含む。たとえば、該特定の偏光状態を、該マルチマーに整列(または整合ないし適合)した偏光状態とすることができる。該マルチマーの偏光依存プラズモンモードに選択的に(または優先的に)結合するために、または、該プラズモンモードを選択的に(または優先的に)刺激(たとえば励起)するために、偏光した刺激信号でSERS基板を照射するステップ310を用いることができる。マルチマーが二量体の場合には、刺激信号の偏光状態を、たとえば、該二量体の長軸の向きに対応(または合致)する所定の偏光角を有する直線偏光状態とすることができる。
いくつかの例では、SERS基板を、偏光選択性SERSシステム100に関して上記したSERSセンシング基板110に実質的に類似のものとすることができる。具体的には、それらのナノフィンガーとSERS−増強ナノ粒子を、上記したSERSセンシング基板110のナノフィンガー112とナノ粒子116にそれぞれ実質的に類似のものとすることができる。同様に、いくつかの例では、照射されるマルチマーを、偏光選択性SERSシステム100に関して上記したSERSマルチマー118に実質的に類似のものとすることができる。
偏光選択性SERSの方法300はさらに、該マルチマーの近くにある検体によって放出されたラマン散乱信号を検出するステップ320を含む。いくつかの例では、ラマン散乱信号を検出するステップ320は、該マルチマーの偏光依存プラズモンモードに関連する、または、該プラズモンモードによって決まる偏光状態のラマン散乱信号(または該プラズモンモードによって決まるラマン散乱信号の偏光状態)と、(該偏光状態とは)異なる偏光状態を有するバックグラウンドノイズ信号とを選択的に識別(ないし区別)する。いくつかの例では、ラマン散乱信号を検出するステップ320を、偏光選択性SERSシステム100に関して上記したラマン検出器130に実質的に類似する検出器を用いて実行することができる。具体的には、ラマン散乱信号を検出するステップ320は、たとえば、上記の偏光弁別器に実質的に類似する偏光弁別器によって提供される偏光弁別を利用することができる。いくつかの例では、放射された刺激信号が偏光されており、検出するステップ320が偏光状態を選択的に識別するという両方の点において、SERS基板を照射するステップ310とラマン散乱信号を検出するステップ320の両方で偏光が利用される。
いくつかの例では、偏光選択性SERSの方法300はさらに、刺激信号の偏光状態と、ラマン散乱信号の偏光状態を選択可能に識別するために使用される偏光弁別器の偏光状態との一方または両方を回転させるステップを含む。いくつかの例では、ラマン散乱信号を検出するステップ320は、ラマン散乱信号の偏光状態の主成分と該主成分に実質的に直交する成分の両方を検出するステップを含む。たとえば、該主成分と該直交する成分との違いを用いて、ラマン散乱信号を選択可能に検出することができる。
以上、SERSマルチマーの偏光依存プラズモンモードを利用する偏光選択性SERSシステム及び偏光選択性SERSの方法の例を説明した。上記の例は、本明細書に開示されている原理を表す多くの特定の例のうちのいくつかの単なる例示であることを理解されたい。当業者が、特許請求の範囲によって画定される範囲から逸脱することなく他の多くの構成を容易に考え出すことができることは明らかである。

Claims (15)

  1. 偏光選択性表面増強ラマン分光(SERS)システムであって、
    偏光依存プラズモンモードを呈するためにSERSマルチマーとして配置された複数のナノフィンガーを有するSERSセンシング基板と、
    前記SERSマルチマーを刺激信号で照射するための刺激源と、
    前記SERSマルチマーの近くにある検体によって放出されたラマン散乱信号を検出するためのラマン検出器
    を備え、
    前記ラマン散乱信号は、前記偏光依存プラズモンモードに関連する偏光状態を有し、
    前記刺激信号が、前記SERSマルチマーの前記偏光依存プラズモンモードを選択的に刺激するように偏光されることと、前記ラマン検出器が、前記ラマン散乱信号の偏光状態と該偏光状態とは異なるバックグラウンドノイズ信号の偏光状態とを区別することができることとのいずれかまたは両方を含む、システム。
  2. 前記SERSマルチマーの前記ナノフィンガーは、該ナノフィンガーの自由端においてSERS−増強ナノ粒子を有し、前記自由端は、前記SERSセンシング基板の支持面に取り付けられた端部の反対側にある、請求項1のシステム。
  3. 前記ナノ粒子は、前記検体を選択的に吸着するように機能化された金属表面を有する、請求項2のシステム。
  4. 前記SERSマルチマーは二量体であり、前記偏光依存プラズモンモードと前記ラマン散乱信号の偏光状態の両方が、前記二量体の長軸に実質的に整列している、請求項1のシステム。
  5. 前記バックグラウンドノイズ信号は、蛍光バックグラウンド信号と迷光の一方または両方を含む、請求項1のシステム。
  6. 前記刺激源は、前記刺激信号を生成するために選択可能な偏光状態を有する偏光子を備え、前記刺激信号は、前記SERSマルチマーの前記偏光依存プラズモンモードに対応しかつ該プラズモンモードを選択的に励起する偏光状態を有する、請求項1のシステム。
  7. 前記検出器は、前記ラマン散乱信号の偏光状態の主成分と該主成分に直交する前記偏光状態の成分との一方または両方を選択的に受け取るための偏光弁別器を備える、請求項1のシステム。
  8. 偏光選択性表面増強ラマン分光(SERS)システムであって、
    マルチマーとして配置された複数のナノフィンガーであって、該ナノフィンガーは、自由端においてSERS−増強ナノ粒子を有し、該マルチマーは偏光依存プラズモンモードを呈することからなる、複数のナノフィンガーと、
    刺激源とラマン検出器の一方または両方
    を備え、
    前記刺激源は、制御可能な偏光状態を有する刺激信号を生成するための偏光子を備え、前記刺激信号は、前記偏光依存プラズモンモードに対応する偏光状態で前記マルチマーを照射するためのものであり、
    前記ラマン検出器は、前記マルチマーの近くにある検体によって放出されたラマン散乱信号を検出するためのものであり、
    前記ラマン検出器は、前記ラマン散乱信号の偏光状態を選択的に受け取り、かつ、該偏光状態とは異なる偏光状態を有するバックグラウンドノイズ信号を受け入れない偏光弁別器を備えることからなる、システム。
  9. 前記刺激源の前記偏光子と前記偏光弁別器との一方または両方が、回転可能な偏光子を備える、請求項8のシステム。
  10. 前記回転可能な偏光子が、前記刺激源と前記ラマン検出器によって共有される、請求項9のシステム。
  11. 前記マルチマーが二量体であり、該二量体が、該二量体の長軸に実質的に整列した偏光依存プラズモンモードを呈する、請求項8のシステム。
  12. 前記バックグラウンドノイズ信号が、実質的に非偏光の蛍光信号を含む、請求項8のシステム。
  13. SERS基板を刺激信号で照射するステップであって、前記SERS基板は、マルチマーとして配置された複数のナノフィンガーを含み、該ナノフィンガーは、支持部に取り付けられた前記ナノフィンガーの端部の反対側にある自由端にSERS−増強ナノ粒子を有し、前記照射されたマルチマーは偏光依存プラズモンモードを呈することからなる、ステップと、
    前記マルチマーの近くにある検体によって放出されたラマン散乱信号を検出するステップ
    を含む、偏光選択性表面増強ラマン分光(SERS)の方法であって、
    前記刺激信号が、前記マルチマーの前記偏光依存プラズモンモードを選択的に刺激するように偏光されることと、
    前記検出されたラマン散乱信号が、前記偏光依存プラズモンモードに関連する偏光状態を有し、前記検出されたラマン散乱信号は、該偏光状態とは異なる偏光状態を有するバックグラウンドノイズ信号から選択的に区別されること、
    との一方または両方を含むことからなる、方法。
  14. 前記刺激信号の偏光状態と、前記ラマン散乱信号の偏光状態を選択可能に区別するために使用される偏光弁別器の偏光状態との一方または両方を回転させるステップをさらに含む、請求項13の方法。
  15. 前記バックグラウンドノイズ信号が、実質的に非偏光の蛍光信号を含む、請求項13の方法。
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