JP2016503773A - ガス封入マイクロベシクル - Google Patents

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Abstract

リン脂質、および、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との混合物を含む、ガス封入マイクロベシクルを調製するための製剤。前記組成物を含む安定化層を有するガス封入マイクロベシクルは、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のみを含むマイクロベシクルと比較して、増加した安定性を示す。

Description

本発明は、新規のガス封入マイクロベシクル、それらの調製および診断方法および治療方法でのそれらの使用に関する。
近年での造影剤の急速な発展は、ヒトまたは動物の体の臓器および組織のコントラスト強調型イメージングならびにそれらの治療処置に有用である、多くの異なる組成物および製剤を生み出してきた。
あるクラスの造影剤(特に超音波コントラストイメージングに有用である)は、水性媒体中に分散したナノ−および/またはマイクロ−メートルのサイズの気泡の懸濁液を含む。ガスは、典型的に、例えば乳化剤、油類、増粘剤または糖類を含む安定化膜層内に、封入または被包される。これらの安定化された気泡(適切な生理学的溶液中に分散される)は、一般に、当技術分野において、様々な専門用語で呼ばれ、典型的にそれらの調製に用いられる安定化物質に依存し;これらの用語は、例えば、「マイクロスフェア」、「マイクロバブル」、「マイクロカプセル」または「マイクロバルーン」を含み、ここでは包括的に「ガス封入マイクロベシクル」(または「マイクロベシクル」)と呼ぶ。
特に興味深いのは、ガス封入マイクロベシクルの水性懸濁液であり、気体と液体の界面に配置された安定化両親媒性物質(典型的にリン脂質)を含む非常に薄いエンベロープ(膜)によって、ガスの気泡が気体/液体の界面に結合されている。これらの懸濁液は、粉末状の両親媒性物質、例えば凍結乾燥され予め形成されたリポソーム、または、凍結乾燥または噴霧乾燥された脂質溶液を、空気または他の気体と接触させ、そしてそれから、撹拌しながら水性担体と接触させて、ガス封入マイクロベシクルの懸濁液を生成することによって有利に調製され、それはそれから、好ましくはその調製後すぐに、投入することができる。ガス封入マイクロベシクルの水性懸濁液およびその調製の例は、例えば、US5,271,928、US5,445,813、US5,413,774、US5,556,610、5,597,549,US5,827,504、WO97/29783およびWO2004/069284に記載されていて、それらは、それらの全体で参照により本明細書中に援用される。安定化膜は、上記のリン脂質に加えて、脂肪酸のような他の両親媒性物質も含んでよい。例えば、Sonovue(登録商標)(Bracco Suisse S.A.により市販される超音波造影剤)は、膜形成安定化層として、リン脂質および脂肪酸の混合物を含む。
より最近では、臓器または組織の選択的なコントラスト強調型イメージングを可能にするために適切なターゲット特異的な構成要素が造影剤の製剤に用いられる、いわゆる「分子イメージング」に注目がされている。加えて、造影剤製剤の治療用途も、場合により分子イメージングと組み合わせて、説明されている。
ガス封入マイクロベシクルの製剤は、診断効果(例えば分子イメージングを介して)を改善するため、および/または、治療目的(例えば薬物輸送および/または超音波が仲介する血栓溶解)のための、いずれかのために好適に改変してよい。例えば、マイクロベシクルは、治療薬と、および/または、患者の体内の決定された標的に結合することが可能な特異的な構成要素(「標的リガンド」として知られる)と、(例えばそれらの、境界膜内の包含により)結合(associate)してよい。標的リガンドの例は、例えば血管新生、炎症または血栓形成などの発病過程中に臓器または組織により発現される特異的な受容体に結合することが可能な、ペプチド、タンパク質、抗体、アプタマーまたは炭水化物などを含む。
ここで、本出願人は、安定化層の処方に飽和および不飽和脂肪酸の混合物を含むことにより、リン脂質に基づくガス封入マイクロベシクルの特定の特徴を改善することが可能であることを見いだした。特に、前記の飽和/不飽和脂肪酸の混合物の存在は、驚くべきことに、安定化層を形成する処方において、各々の飽和または不飽和脂肪酸のうちの1つのみを含む対応するマイクロベシクルと比較して、ガス封入マイクロベシクルの安定性が増加することが観察された。
したがって、本発明の一態様は、生理的に許容できる液体担体中のガス封入マイクロベシクルの懸濁液に関し、前記マイクロベシクルは、リン脂質、飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸を含む安定化膜を有し、ここで、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との間のモル比は、2.5:1〜1:8である。
好ましくは、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との間のモル比は、1.5:1〜1:7.5であり、より好ましくは1:1〜1:6であり、さらにより好ましくは1:1.5〜1:4であり、特に好ましくは、1:2〜1:3のモル比である。
好ましい実施態様によれば、リン脂質と飽和/不飽和脂肪酸の混合物との間のモル比は、3:7〜4:1であり、好ましくは2:3〜7:3であり、さらにより好ましくは2.5:3〜3:2である。
好ましい実施態様では、前記懸濁液は、生体適合性ガスの存在下で、上記量でリン脂質および脂肪酸を含む製剤(好ましくは凍結乾燥された形態)を、生理的に許容できる液体担体と混合することにより得られる。
本発明の別の態様は、医薬製剤および生体適合性ガスを含む密封バイアルに関し、前記製剤は、上記で定義したリン脂質、飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸を含む。製剤は、場合により、薬学的に許容できる添加剤および/または賦形剤をさらに含む。好ましい実施態様では、前記製剤は、凍結乾燥された(凍結乾燥)形態である。
飽和および不飽和脂肪酸の混合物をリン脂質とともに含む本発明の製剤は、診断イメージングに有用、および/または、治療薬として有用な、ガス封入マイクロベシクルの製造に用いてよい。
本発明の製剤は、液体の懸濁液においてガスの気泡を安定化する層(安定化層)を形成するのに特に有用である。本製剤は、さらなる両親媒性物質を含んでよく、典型的に凍結乾燥された(凍結乾燥)製剤の形態であり、好ましくは、凍結乾燥添加剤を含む。本発明のガス封入マイクロベシクルは、生理的に許容できるガスの存在下で、前記製剤を、生理的に許容できる液体担体と混合することにより調製することができる。
脂肪酸
用語「脂肪酸」は、その意味の中に、相対的に長い脂肪族鎖、例えば10〜28個の炭素原子(C10〜C28)を含むカルボン酸を含む。脂肪族鎖は、好ましくは直鎖(直線)である。本発明に係る組成物において有用な脂肪酸は、好ましくはC10〜C24脂肪族鎖を含み、より好ましくはC14〜C22を含み、さらにより好ましくはカルボン酸基が末端のC16〜C20脂肪族鎖を含む。
脂肪酸は、飽和または不飽和(すなわち、1つまたは複数の不飽和、典型的に二重結合を含む)のいずれかであってよい。
飽和脂肪酸は、脂肪族鎖中に不飽和がない脂肪酸、例えば:カプリン酸(n−デカン酸)、ラウリン酸(n−ドデカン酸)、ミリスチン酸(n−テトラデカン酸)、パルミチン酸(n−ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n−オクタデカン酸)、アラキジン酸(n−エイコサン酸)、ベヘン酸(n−ドコサン酸)およびn−テトラコサン酸などを含む。好ましい飽和脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびアラキジン酸である。
不飽和脂肪酸は、1、2、3、4または5個の不飽和(特に二重結合)を脂肪族鎖中に含んでよい。好ましくは、不飽和は、シス−立体配置である。好ましくは、不飽和脂肪酸は、3個以下の不飽和、より好ましくは2個以下の不飽和を含み;特に好ましいものは、脂肪族鎖中に1つの不飽和を含む不飽和脂肪酸である。簡潔のために、不飽和脂肪酸は、以下において、アルキル鎖の炭素数および鎖における不飽和の位置で示すことがある;例えば、パルミトオレイン酸、すなわちシス−9−ヘキサデセン酸はC16、シス−Δ(または簡潔に:C16、Δ)と呼ばれる。不飽和脂肪酸の例は、例えば、デセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘキサデカジエン酸、オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、オクタデカテトラエン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサエン酸、ドコサジエン酸、ドコサトリエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸およびテトラコセン酸を含む。好ましい不飽和脂肪酸は、ミリストレイン酸(シス−9−テトラデセン酸)、パルミトオレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸)、サピエン酸(シス−6−ヘキサデセン酸)、オレイン酸(シス−9−オクタデセン酸)、リノール酸(シス−9,12−オクタデカジエン酸)、リノレン酸(シス−9,12,15−オクタデカトリエン酸)、ゴンド酸(シス−11−エイコセン酸)、シス−11,14−エイコサジエン酸、シス−5,8,11−エイコサトリエン酸、シス−8,11,14−エイコサトリエン酸、シス−11,14,17−エイコサトリエン酸、アラキドン酸(シス−8,11,14,17−エイコサテトラエン酸)およびエルカ酸(シス−13−ドコセン酸)を含み、パルミトオレイン酸、オレイン酸およびゴンド酸が特に好ましい。
飽和および不飽和脂肪酸の混合物は、好ましくは、最大で4個の炭素原子が異なるアルキル鎖長を有する酸;より好ましくは、それらのそれぞれの鎖長において、最大で2個の炭素原子、およびさらにより好ましくは最大で1個の炭素原子が異なる飽和および不飽和酸を含み;特に好ましくは、同じ長さのアルキル鎖を有する脂肪族飽和および不飽和酸(例えばパルミチン酸/パルミトオレイン酸、ステアリン酸/オレイン酸、アラキジン酸/ゴンドン酸など)を含む混合物である。
本出願人は、飽和/不飽和脂肪酸を2.5:1〜1:8のモル比で含む組成物を用いることにより、飽和(started)または不飽和脂肪族のみが同じ濃度で用いられたマイクロベシクルと比較して、増加した安定性を有するガス封入マイクロベシクルを調製することが可能であるということを見いだした。好ましくは、組成物における飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との間のモル比は、1.5:1〜1:7.5、より好ましくは1:1〜1:6、さらにより好ましくは1:1.5〜1:4であり、1:2〜1:3のモル比であることが特に好ましい。
リン脂質
本明細書において用いられる用語「リン脂質」は、最終的なマイクロバブル懸濁液での気体と水との境界界面に安定化膜層(典型的に単分子層の形態)を形成することが可能な、少なくとも1つのホスフェート基および少なくとも1個、好ましくは2個の、(C12〜C22)炭化水素鎖を含む両親媒性化合物を包含することが意図される。したがって、これらの物質は、当技術分野において「膜形成リン脂質」とも呼ぶ。
用語「リン脂質」は、単独で、または混合物としてのいずれかで用いることのできる、天然起源、半合成、または合成の産物を含む。
適切なリン脂質の例は、1個または好ましくは2個の(同じまたは異なる)脂肪酸残基との、およびリン酸との、グリセロールのエステルを含み、ここで、リン酸残基は、例えば、コリン(ホスファチジルコリン−PC)、セリン(ホスファチジルセリン−PS)、グリセロール(ホスファチジルグリセロール−PG)、エタノールアミン(ホスファチジルエタノールアミン−PE)、イノシトール(ホスファチジルイノシトール)のような親水性基に同様に結合される。脂肪酸残基を1つのみ有するリン脂質のエステルは、一般に、当技術分野において、リン脂質の「リゾ」形態、または「リゾリン脂質」と呼ばれる。リン脂質中に存在する脂肪酸残基は、一般に長鎖脂肪酸であり、典型的に12〜24個の炭素原子(好ましくは14〜22個)を含み;脂肪族鎖は1つまたは複数の不飽和を含んでよく、または好ましくは完全に飽和している。リン脂質に含まれる適切な脂肪酸の例は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸である。好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびアラキジン酸などの、飽和脂肪酸が用いられる。
リン脂質のさらなる例は、ホスファチジン酸、すなわち、グリセロール−リン酸と脂肪酸とのジエステル;スフィンゴミエリンのようなスフィンゴ脂質、すなわち、脂肪酸とのグリセロールジエステルの残基がセラミド鎖で置換されているホスファチジルコリンアナログ;カルジオリピン、すなわち、1,3−ジホスファチジルグリセロールと脂肪酸とのエステル;糖脂質、例えばガングリオシドGM1(またはGM2)またはセレブロシド;糖脂質;スルファチドおよびグリコスフィンゴリピドである。
天然起源のリン脂質の例は、天然レシチン(ホスファチジルコリン(PC)誘導体)、例えば、典型的に、大豆または卵黄レシチンである。
半合成のリン脂質の例は、天然起源のレシチンの部分的または全体的な水素化誘導体である。好ましいリン脂質は、ホスファチジルコリン、エチルホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールまたはスフィンゴミエリンの脂肪酸ジ−エステルである。
リン脂質の具体例は、例えば、ジラウロイル−ホスファチジル−コリン(DLPC)、ジミリストイル−ホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイル−ホスファチジル−コリン(DPPC)、ジアラキドイル−ホスファチジルコリン(DAPC)、ジステアロイル−ホスファチジル−コリン(DSPC)、ジオレオイル−ホスファチジルコリン(DOPC)、1,2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(エチル−DSPC)、ジペンタデカノイル−ホスファチジルコリン(DPDPC)、1−ミリストイル−2−パルミトイル−ホスファチジルコリン(MPPC)、1−パルミトイル−2−ミリストイル−ホスファチジルコリン(PMPC)、1−パルミトイル−2−ステアロイル−ホスファチジルコリン(PSPC)、1−ステアロイル−2−パルミトイル−ホスファチジルコリン(SPPC)、1−パルミトイル−2−オレイル−ホスファチジル−コリン(POPC)、1−オレイル−2−パルミトイル−ホスファチジルコリン(OPPC)、ジラウロイル−ホスファチジルグリセロール(DLPG)およびそのアルカリ金属塩類、ジアラキドイルホスファチジル−グリセロール(DAPG)およびそのアルカリ金属塩類、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)およびそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)およびそのアルカリ金属塩類、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)およびその金属塩類、ジオレオイル−ホスファチジルグリセロール(DOPG)およびそのアルカリ金属塩類、ジラウロイルホスファチジン酸(DLPA)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)およびそのアルカリ金属塩類、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)およびそのアルカリ金属塩類、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジアラキドイルホスファチジン酸(DAPA)およびそのアルカリ金属塩類、ジラウロイル−ホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジミリストイル−ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジル−エタノールアミン(DSPE)、ジオレイルホスファチジル−エタノールアミン(DOPE)、ジアラキドイルホスファチジル−エタノールアミン(DAPE)、ジリノレイルホスファチジル¬エタノールアミン、ジラウロイル−ホスファチジル−セリン(DLPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジアラキドイル−ホスファチジル−セリン(DAPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSP)、ジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSP)、ジラウロイル−ホスファチジルイノシトール(DLPI)、ジアラキドイルホスファチジルイノシトール(DAPI)、ジミリストホスファチジルイノシトールホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジオレオイル−ホスファチジルイノシトール(DOPI)である。
適切なリン脂質は、それに、親水性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)が結合することにより修飾されたリン脂質をさらに含む。好ましいポリマー修飾リン脂質は、「ペグ化リン脂質」、すなわちPEGポリマーに結合したリン脂質を含む。ペグ化リン脂質の例は、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(「PE−PEG」と省略)、すなわち、親水性エタノールアミン部分が、可変の分子量(例えば300〜20000ダルトン、好ましくは500〜5000ダルトン)のPEG分子に結合したホスファチジルエタノールアミン、例えばDPPE−PEG(またはDSPE−PEG、DMPE−PEG、DAPE−PEGまたはDOPE−PEG)である。例えば、DPPE−PEG2000は、平均分子量が約2000であるPEGポリマーが結合しているDPPEを指す。
特に好ましいリン脂質は、DAPC、DSPC、DPPC、DMPA、DPPA、DSPA、DMPG、DPPG、DSPG、DMPS、DPPS、DSPS、DPPE、DSPE、DMPE、DAPE、エチル−DSPCおよびそれらの混合物である。最も好ましいのは、DSPG、DSPS、DSPE、DSPC、DAPCおよびそれらの混合物である。リン脂質の混合物(例えば、DPPEおよび/またはDSPE(ペグ化誘導体を含む)、DPPC、DSPCおよび/またはDAPCと、DSPS、DPPS、DSPA、DPPA、DSPG、DPPG、エチル−DSPCおよび/またはエチル−DPPCとの、混合物など)も用いることができる。
リン脂質は、飽和または不飽和脂肪酸の全体量に対するリン脂質のモル比は、3:7〜4:1、好ましくは2:3〜7:3、さらにより好ましくは2.5:3〜3:2である。
他の両親媒性物質
ガス封入マイクロベシクルの安定化膜を形成する組成物は、安定化層の形成にも寄与し得るさらなる両親媒性構成要素を含んでよく、例えば;ポリマーを有する脂質、例えばキチン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコール(PEG)、「ペグ化脂質」とも呼ばれる;スルホン化単糖類、二糖類、オリゴ糖類、または多糖類を有する脂質;コレステロール、コレステロール硫酸またはコレステロールヘミコハク酸;トコフェロールヘミコハク酸;エーテルまたはエステル結合脂肪酸を有する脂質;重合脂質;リン酸ジアセチル;リン酸ジセチル;セラミド類;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレン脂肪酸ステアレート)、ポリオキシエチレン脂肪族アルコール、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチル化ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールポリエチレングリコールリシノール酸、エトキシ化大豆ステロール類、エトキシ化ヒマシ油またはエチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)のブロックコポリマー;ステロール脂肪酸エステル(コレステロール酪酸、コレステロールイソ酪酸、コレステロールパルミチン酸、コレステロールステアリン酸、ラノステロール酢酸、エルゴステロールパルミチン酸、または植物ステロールn−酪酸を含む);糖酸のステロールエステル(コレステロールグルクロニド、ラノステロールグルクロニド、7−デヒドロコレステロールグルクロニド、エルゴステロールグルクロニド、コレステロールグルコン酸、ラノステロールグルコン酸、またはエルゴステロールグルコン酸を含む);糖酸とアルコールとのエステル(ラウリルグルクロニド、ステアロイルグルクロニド、ミリストイルグルクロニド、ラウリルグルコン酸、ミリストイルグルコン酸、またはステアロイルグルコン酸を含む);糖と脂肪酸とのエステル(スクロースラウリン酸、フルクトースラウリン酸、スクロースパルミチン酸、スクロースステアリン酸、グルクロン酸、グルコン酸またはポリウロン酸を含む);サポニン(サルササポゲニン、スミラゲニン、ヘデラゲニン、またはジギトキシゲニンを含む);グリセロールまたはグリセロールエステル(グリセロールトリパルミチン酸、グリセロールジステアリン酸、グリセロールトリステアリン酸、グリセロールジミリスチン酸、グリセロールトリミリスチン酸、グリセロールジラウリン酸、グリセロールトリラウリン酸、グリセロールジパルミチン酸を含む);長鎖アルコール(n−デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、またはn−オクタデシルアルコール;6−(5−コレステン−3β−イルオキシ)−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド;ジガラクトシルジグリセリド;6−(5−コレステン−3β−イルオキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド;6−(5−コレステン−3β−イルオキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシル−1−チオ−β−D−マンノピラノシド;;;1,2−ジオレイル−sn−グリセロール;1,2−ジパルミトイル−sn−3−スクシニルグリセロール;1,3−ジパルミトイル−2−スクシニルグリセロール;パルミトイルホモシステイン;アルキルアミンまたはアルキルアンモニウム塩(少なくとも1個の(C10〜C20)、好ましくは(C14〜C18)のアルキル鎖、例えば、N−ステアリルアミン、N,N’−ジステアリルアミン、N−ヘキサデシルアミン、N,N’−ジヘキサデシルアミン、塩化N−ステアリルアンモニウム、塩化N,N’−ジステアリルアンモニウム、塩化N−ヘキサデシルアンモニウム、塩化N,N’−ジヘキサデシルアンモニウム、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)を含む);第3級または第4級アンモニウム塩((C−C)アルキレン架橋を介してN−原子に結合した、1個または好ましくは2個の(C10〜C20)、好ましくは(C14〜C18)のアシル鎖、例えば、1,2−ジステアロイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DSTAP)、1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DPTAP)、1,2−オレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)、1,2−ジステアロイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(DSDAP)などを含む);およびそれらの混合物または組み合わせを含んでよい。
これらのさらなる両親媒性化合物は、存在するならば、可変量、例えば安定化層を形成する組成物の最大で25%(モル)、好ましくは最大で10%で存在してよい。
添加剤および賦形剤
ガス封入マイクロバブルの調製は凍結乾燥または噴霧乾燥の工程を含み得るので、凍結乾燥添加剤、例えば、凍結保護および/または溶解保護の効果を有する試薬および/または充填剤、例えばグリシンなどのアミノ酸;炭水化物、例えばスクロース、マンニトール、マルトース、トレハロース、グルコース、ラクトースまたはシクロデキストリンなどの糖、または、デキストラン、キトサンおよびその誘導体(例えば:カルボキシメチルキトサン、トリメチルキトサン)などの多糖類;またはポリエチレングリコールのようなポリオキシアルキレングリコールを製剤中に含むことは有利であり得る。例えば、凍結乾燥製剤の処方の場合、添加剤(例えばポリエチレングリコール)の量は、凍結乾燥製剤の合計量の約90%〜約99.99%(重量)に変化し得る。
他の賦形剤または添加剤は、マイクロバブルの調製のための乾燥製剤中に存在してよいか、または、必ずしもマイクロバブルの安定化膜の形成に関与せずに(または部分的にのみ関与して)、その再構成に用いられる水性担体とともに添加してよいかの、いずれかである。これらは、pH調整剤、浸透圧調節剤、粘性強化剤、乳化剤、充填剤などを含み、従来の量で用いてよい。例えば、ポリオキシプロピレングリコールおよびポリオキシエチレングリコールなどの化合物、ならびにそれらの共重合体を用いることができる。粘性強化剤または安定剤の例は、直鎖および架橋のポリ−およびオリゴ‐糖類、糖類、およびポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーから選択される化合物である。
標的リガンド
本発明に係る組成物およびマイクロベシクルは、場合により標的リガンドを含んでよい。
用語「標的リガンド」は、その意味の中に、本発明の組成物のマイクロベシクルの、生体内の任意の生物学的または病理学的部位に対する標的活性(例えば選択的結合を含む)を有する、または促進することが可能な、任意の化合物、部分または残基を含む。標的リガンドが結合し得る標的は、組織、例えば、心筋組織(心筋の細胞および心筋細胞を含む)、膜質組織(内皮および上皮を含む)、薄膜、結合組織(間質組織を含む)または腫瘍;血塊;および受容体、例えば、ペプチドホルモン、神経伝達物質、抗原、補体断片、および免疫グロブリンの細胞表面受容体、および、ステロイドホルモンの細胞質受容体を含む。
標的リガンドは、合成、半合成、または天然起源であってよい。標的リガンドとしての役割を果たし得る材料または物質は、例えば、限定されないが、タンパク質(抗体、抗体フラグメント、受容体分子、受容体結合分子、糖タンパク質およびレクチンを含む);ペプチド(オリゴペプチドおよびポリペプチドを含む);ペプチド模倣薬;糖類(単糖類および多糖類を含む);ビタミン類;ステロイド類、ステロイドアナログ、ホルモン類、補助因子、生物活性剤および遺伝物質(ヌクレオシド、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを含む)を含む。
標的リガンドは、マイクロベシクルの他の構成要素と混合される化合物それ自体であってよく、または、マイクロベシクルの形成に用いられる両親媒性分子(典型的にリン脂質)と結合する化合物であってよい。
好ましい一実施態様では、標的リガンドは、マイクロベシクルの安定化膜を形成する両親媒性分子(例えばリン脂質)と、共有結合を介して結合してよい。そのような場合において、両親媒性分子上に存在すべき特異的な反応性部分は、それに結合する特定の標的リガンドに依存する。例として、標的リガンドがアミノ基を介して両親媒性分子に結合し得る場合は、両親媒性分子に関する適切な反応性部分は、イソチオシアネート基(チオカルバミド結合を形成する)、反応性エステル(アミド結合を形成する)、アルデヒド基(アルキルアミン結合に還元されるイミン結合の形成のため)などであってよく;標的リガンドがチオール基を介して両親媒性分子に結合し得る場合は、両親媒性分子に関する適切な相補反応性部分は、ハロアセチル誘導体またはマレイミド(チオエーテル結合を形成する)を含み;および、標的リガンドがカルボン酸基を介して両親媒性分子に結合し得る場合は、両親媒性分子に関する適切な反応性部分は、アミンおよびヒドラジド(アミド結合またはアルキルアミド結合を形成する)であってよい。所望の標的リガンドを共有結合するために、マイクロベシクルの膜を形成する両親媒性化合物の少なくとも一部分は、したがって適切な反応性部分を含み、そして、公知技術に従って、例えばマイクロベシクルの両親媒性の構成要素を含む分散にそれを加えることにより、相補機能性を含む標的リガンドがそれに結合される。好ましくは、両親媒性化合物は、上述のもののような親水性ポリマーを有する脂質、好ましくはペグ化リン脂質である。この場合において、標的リガンドは、親水性ポリマー上の適切な反応性部分に結合される。両親媒性化合物は、マイクロベシクルを調製する前に所望の標的リガンドと結合してよく、そうして得られた結合物をマイクロベシクルの調製に用いてよい。あるいは、マイクロベシクルの調製中に、標的リガンドがそれぞれの両親媒性化合物に結合されてよい。
代替の実施態様によれば、標的リガンドは、物理的および/または静電気相互作用を介してマイクロベシクルと適切に結合(associate)してもよい。例として、相補部分に対して高い親和性および選択性を有する機能性部分を両親媒性分子に導入してよく、一方で、相補部分が標的リガンドに結合する。例えば、アビジン(またはストレプトアビジン)部分(ビオチンに対して高い親和性を有する)が、リン脂質(またはペグ化リン脂質)に共有結合してよく、一方で、相補ビオチン部分は、適切な標的リガンド、例えばペプチドまたは抗体に取り込まれてよい。ビオチン標識化標的リガンドは、したがって、アビジン−ビオチン結合系を用いて、マイクロベシクルのアビジン標識化リン脂質と結合する。あるいは、リン脂質および標的リガンドの両方がビオチン部分を有してよく、そして続いて、アビジン(2つのビオチン部分を架橋することが可能な二官能性構成要素)を用いて、互いに結合する。リン脂質およびペプチドのビオチン/アビジン結合の例は、上記のUS6,139,819にも記載されている。あるいは、ファンデルワールス相互作用、静電気相互作用、および他の関連プロセスが、両親媒性分子に対する標的リガンドと関連し得て、または、結合し得る。
あるいは、リン脂質は、プロテインA、プロテインG、プロテインA/GまたはプロテインLなどの、免疫グロブリン(Ig)のFcドメインに対する特異的な結合に適切なタンパク質で修飾してよい。代替の実施態様によれば、標的リガンドは、マイクロベシクルを形成する構成要素と混合されて、最終的に、例えば国際特許出願WO98/18501または99/55383(両方とも参照により本明細書中に援用される)に記載のリポペプチドのようなマイクロベシクル構造に取り込まれる化合物であってよい。
あるいは、標的リガンドの対応する相補部分との相互作用が可能な適切な部分を有する化合物(脂質またはポリマー−修飾脂質)を含むマイクロベシクルが最初に製造され得て;その後に、所望の標的リガンドがマイクロベシクル懸濁液に添加されて、マイクロベシクル上の対応する相補部分に結合する。
マイクロベシクルが目的とし得る適切な特異的標的の例は、例えば、フィブリンおよび活性化された血小板上のGPIIbIIIa結合受容体である。フィブリンおよび血小板は、実際のところ一般に、「血栓」、すなわち血流中に形成され得て血管閉塞を生じる凝塊中に存在する。適切な結合ペプチドは、例えば、上記のUS6,139,819に記載されている。フィブリン−標的化に特異的なさらなる結合ペプチドは、例えば、国際特許出願WO02/055544に記載され、参照により本明細書中に援用される。
重要な標的の他の例は、不安定プラーク中の受容体、および腫瘍特異的な受容体、例えばキナーゼドメイン領域(KDR)およびVEGF(血管内皮成長因子)/KDR複合体を含む。KDRまたはVEGF/KDR複合体に適切な結合ペプチドは、例えば、国際特許出願WO03/74005およびWO03/084574に記載され、両方とも参照により本明細書中に援用される。
マイクロベシクルの調製
本明細書に係るマイクロベシクルは、当技術分野における任意の公知の方法に従って本発明の組成物から製造してよい。典型的に、製造方法は、好ましくは前記組成物を含む水性または有機の懸濁液の凍結乾燥(凍結乾燥させる)による、乾燥粉末化された物質(本発明の組成物を含む)の調製を含む。マイクロベシクルはそれから、気体存在下で穏やかに撹拌しながら、水性担体中で、凍結乾燥された調製物の再構成により得てよい。
好ましくは、例えば国際特許出願WO2004/069284に記載のように、リン脂質および脂肪酸の混合物を含む組成物は、水非混和性有機溶媒(例えば分岐または直鎖アルカン、アルケン、シクロ−アルカン、芳香族炭化水素、アルキルエーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、パーフルオロ化炭化水素またはそれらの混合物)と水とのエマルション中に、好ましくは溶解保護剤(前にあげたものなど、特に炭水化物、糖アルコール類、ポリグリコール、ポリオキシアルキレングリコールおよびそれらの混合物)と混合して撹拌下で分散され得る。エマルションは、リン脂質および脂肪酸の存在下で、水性媒体および溶媒を、当技術分野で知られている任意の適切なエマルション発生技術(例えば、超音波処理、振とう、高圧均質化、ミクロ混合、膜乳化、高速撹拌または高剪断混合など)に供することにより得てよい。そのように得られたマイクロエマルション(リン脂質および脂肪酸により(および場合により他の両親媒性膜形成化合物および/または添加剤により)、包囲され安定化された溶媒の微小滴を含む)は、それから、従来の技術に従って凍結乾燥され、凍結乾燥物質が得られる。
乾燥または凍結乾燥された産物は、一般に、粉末またはケーク形状であり、所望のガスと接触して(典型的にバイアル中で)保管してよい。産物は、適切な生理的に許容できる水性液体担体(典型的に注射可能)中で容易に再構成可能であり、生体適合性ガスの存在下で穏やかに懸濁液を撹拌すると、ガス封入マイクロバブルの懸濁液を形成する。適切な生理的に許容できる液体担体は、滅菌水、水溶液、例えば生理食塩水(注射用の最終産物が低張でないように有利に平衡されてよい)、または、1または複数の浸透圧調節物質、例えば塩または糖類、糖アルコール類、グリコールまたは他の非イオン性ポリオール物質(例えばグルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)、キトサン誘導体、例えばカルボキシメチルキトサン、トリメチルキトサンまたはゲル化化合物、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルスターチまたはデキストランの溶液である。
ガス
任意の生体適合性ガス、ガス前駆体またはそれらの混合物を用いて、本発明のマイクロベシクルを形成してよい(以降、「マイクロベシクル形成ガス」としても特定される)。用語「生体適合性ガス」(またはガス前駆体)は、関連のある診断または治療用途の通常の用量で、患者にいかなる重大な副作用または毒性作用も生じない、任意のガス(またはその前駆体)を含む。
ガスは、例えば、空気;窒素;酸素;二酸化炭素;水素;亜酸化窒素;一酸化窒素;希ガスまたは不活性ガス、例えばヘリウム、アルゴン、キセノンまたはクリプトン;低分子量の炭化水素(例えば最大で7個の炭素原子を含む)、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタンまたはイソペンタンなどのアルカン、シクロブタンまたはシクロペンタンなどのシクロアルカン、プロペン、ブテンまたはイソブテンなどのアルケン、または、アセチレンなどのアルキン;エーテル;ケトン;エステル;ハロゲン化ガス、好ましくはフッ素化ガス、例えばまたはハロゲン化、フッ素化またはパーフルオロ化低分子量炭化水素(例えば、最大で7個の炭素原子を含む);または前述の任意の混合物を含んでよい。ハロゲン化炭化水素が用いられる場合、好ましくは、前記化合物中の少なくとも一部、より好ましくは全ての、ハロゲン原子は、フッ素原子である。
フッ素化ガス、特にパーフルオロ化ガスが好ましい。フッ素化ガスは、少なくとも1つのフッ素原子、例えばフッ素化炭化水素(1つまたは複数の炭素原子およびフッ素を含む有機化合物);六フッ化硫黄;フッ素化、好ましくはパーフルオロ化ケトン、例えばパーフルオロアセトン;およびフッ素化、好ましくはパーフルオロ化エーテル、例えばパーフルオロジエチルエーテルなどを含む物質を含む。好ましい化合物は、パーフルオロ化ガス、例えばSFまたはパーフルオロカーボン(パーフルオロ化炭化水素)、すなわち、全ての水素原子がフッ素原子により置換されている炭化水素であり、例えばEP 0554 213(参照により本明細書中に援用される)に記載のように、特に安定したマイクロバブル懸濁液を形成することが知られている。
用語「パーフルオロカーボン」は、飽和、不飽和、および環状パーフルオロカーボンを含む。生体適合性の、生理的に許容できるパーフルオロカーボンの例は:パーフルオロアルカン、例えばパーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン(例えばパーフルオロ−n−ブタン、場合によりパーフルオロ−イソブタンのような他の異性体との混合で)、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサンまたはパーフルオロヘプタン;パーフルオロアルケン、例えばパーフルオロプロペン、パーフルオロブテン(例えばパーフルオロブト−2エン)またはパーフルオロブタジエン;パーフルオロアルキン(例えばパーフルオロブト−2−イン);およびパーフルオロシクロアルカン(例えばパーフルオロシクロブタン、パーフルオロメチルシクロブタン、パーフルオロジメチルシクロブタン、パーフルオロトリメチルシクロブタン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロメチルシクロペンタン、パーフルオロジメチルシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロシクロヘプタン)である。好ましい飽和パーフルオロカーボンは、例えば、CF、C、C、C、C10、C12およびC12を含む。
任意の上記のガスの混合物を任意の比率で用いることも有利であり得る。例えば、混合物は、従来のガス、例えば窒素、空気または二酸化炭素、および、安定したマイクロバブル懸濁液を形成するガス、例えば六フッ化硫黄または上記のパーフルオロカーボンを含んでよい。適切なガス混合物の例は、例えばWO94/09829に見ることができ、参照により本明細書中に援用される。以下の組み合わせが特に好ましい:ガス(A)および(B)の混合物であって、ガス(B)は前に説明したものの中から選択されるフッ素化ガス(それらの混合物を含む)であり、(A)は、空気、酸素、窒素、二酸化炭素またはそれらの混合物から選択される。ガス(B)の量は、混合物全体の約0.5%〜約95%(v/v)、好ましくは約5%〜80%で表されてよい。
特に好ましいガスは、SF、C、C10またはそれらの混合物であり、場合により、空気、酸素、窒素、二酸化炭素またはそれらの混合物との混合である。
特定の状況では、ガス状物質の前駆体(すなわち、インビボでガスに変換されることが可能な物質)を含むことが望ましくあり得る。好ましくは、ガス状前駆体およびそれから得られるガスは、生理的に許容できる。ガス状前駆体は、pH活性化、光活性化、温度活性化などがされてよい。例えば、特定のパーフルオロカーボンを、温度活性化されたガス状前駆体として用いてよい。これらのパーフルオロカーボン、例えばパーフルオロペンタンまたはパーフルオロヘキサンは、室温(または薬剤が生産および/または保管される温度)よりも高いが体温よりも低い、液体/気体相転移温度を有し;したがって、それらは液体/気体相転移を受けて、ヒト体内でガスに変換される。
マイクロベシクルに結合(associate)する薬剤または構成要素
本発明に係るマイクロベシクルは、場合により、マイクロベシクル構造中に含まれ、またはそれと結合しているかのいずれかの、診断薬および/または治療薬をさらに含んでよい。
用語「診断薬」は、その意味の中に、患者の内部領域をイメージングするための方法、および/または、患者における疾患の存在または不存在を診断するための方法と、組み合わせて用いてよい任意の化合物、組成物または粒子を含む。特に、本発明の組成物においてマイクロベシクル中に取り込まれ、または結合する診断薬は、診断技術(磁気共鳴イメージング、X線、特にコンピューター断層撮影、光学イメージング、核イメージングまたは分子イメージングを含む)と組み合わせてイメージング強調を可能にし得る任意の化合物、組成物または粒子である。適切な診断薬の例は、例えば、マグネタイトナノ粒子、ヨード化合物、例えばIomeprol(登録商標)、または常磁性イオン複合体、例えば疎水性ガドリニウム複合体である。
用語「治療薬」は、その意味の中に、任意の治療用途において、例えば、患者における疾患の処置(診断、予防、軽減、疼痛緩和または治療を含む)のための方法において、用いてよい任意の物質、組成物または粒子、ならびに、インビトロおよび/またはインビボで生物学的効果を与えることが可能な、またはそのような効果を与える要因となる、任意の物質を含む。治療薬は、したがって、患者における任意の病理学的状態(病弊、苦痛、疾患病変または損傷を含む)の治療において、ならびに、任意のそのような病理学的状態の予防(例えばワクチン接種)において、用いることが可能な任意の化合物または物質を含む。治療薬の例は、薬剤、製剤、生物活性剤、細胞傷害性の薬剤、化学療法薬、放射線治療薬、タンパク質、天然または合成のペプチド(オリゴペプチドおよびポリペプチドを含む)、ビタミン類、ステロイド類、および遺伝物質(ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドおよびプラスミドを含む)である。
また、本発明のマイクロベシクルは、他の構成要素(例えば、リポソームまたはミセルなど)と結合(associate)してもよい。前記構成要素は、マイクロベシクルと一緒に単純に混合してよく、または、マイクロベシクルの安定化膜との物理的および/または化学的相互作用を介して、例えば、共有結合、静電気的またはイオン的相互作用、ファンデルワールス相互作用、疎水性または親水性相互作用を介して、集合体を形成してよい。これらの結合したマイクロベシクル組成物およびその製剤の例は、例えば、米国特許第6,258,378号および国際特許出願WO2005/063305およびWO2005/063306に開示され、全て参照により本明細書中に援用される。マイクロベシクルと結合し得る、または結合する、これらの構成要素は、同様に、任意の上記の標的リガンド、診断薬または治療薬を有してよく、したがって、前記構成要素を介してマイクロベシクルと結合する。例えば、マグネタイトナノ粒子は、前記粒子を安定化させてそれらを水溶液中に分散させておくために(例えば、US5,545,395に記載され、参照により本明細書中に援用される)、それをマイクロベシクルと結合させるために、前述したものなどの荷電両親媒性物質と混合してよい。あるいは、ガドリニウム複合体は、例えば欧州特許EP 804 251(参照により本明細書中に援用される)に記載される適切なミセル形成化合物と混合してよく、そして、形成されたミセルはマイクロベシクルと結合し得る。同様に、治療薬は、ミセル懸濁液またはリポソーム懸濁液として調製してよく、それ自体が、マイクロベシクルと結合してよい。
製剤キットおよび投与
本発明に係るマイクロベシクルは、好ましくは乾燥粉末形状で保管され、それ自体を、2つの構成要素の診断および/または治療キット(好ましくは注射による投与用)に有利にパッケージしてよい。キットは、好ましくは、選択された生体適合性ガスと接触して凍結乾燥組成物を含む第一の容器と、生理的に許容できる水性担体を含む第二の容器とを含む。適切な担体の例は、水、典型的には滅菌され、発熱物質を含まない水(凍結乾燥産物の中間体において出来る限り汚染を防ぐため)、生理食塩水などの水溶液(注射用最終産物が低張とならないように有利に平衡し得る)、または、1つまたは複数の浸透圧調節物質の水溶液、例えば、塩類または糖類、糖アルコール類、グリコールまたは他の非イオン性ポリオール物質(例えばグルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)である。前記の2つの構成要素キットは、2つの別々の容器または二室式容器を含んでよい。前者の場合では、容器は、好ましくは従来のセプタム−密封バイアルであり、ここで、凍結乾燥された残留物を含むバイアルは、セプタムで密封され、それを通して担体液体が、場合により事前充填されたシリンジを用いて注入され得る。そのような場合では、第二の構成要素の容器として用いられるシリンジは、それから、造影剤を注入するためにも用いられる。後者の場合では、二室式容器は、好ましくは二室式シリンジであり、そして、凍結乾燥物が再構成されて、それから適切に混合され、または穏やかに振とうされた時点で、造影剤を注入するために容器を直接用いることができる。
本発明のマイクロベシクルは、様々な診断技術および/または治療技術(特に超音波および磁気共鳴を含む)において用いられ得る。
診断技術は、ガス封入マイクロベシクルの使用が動物(ヒトを含む)の体の一部または一部分の視覚化を強調することを可能にする任意の方法(前臨床および臨床の研究目的のためのイメージングを含む)を含む。様々なイメージング技術を超音波の適用に用いてよく、例えば、基礎的かつ調和的なBモードイメージング、パルスまたは転相イメージングおよび基礎的かつ調和的なドップラーイメージングを含み;必要に応じて三次元イメージング技術を用いてよい。
本発明に係るマイクロベシクルは、典型的に、患者のkgあたり、約0.01〜約1.0μLの気体濃度で投与してよく、例えば、それらの各組成物、撮像する組織または臓器、および/または、選択したイメージング技術に依存する。この一般的な濃度範囲は、もちろん、特定のイメージング用途に応じて(例えば、色彩ドップラーまたは電源パルス反転などにおいて、非常に低い投与量でシグナルを観測することができる場合)、変化し得る。
可能な他の診断イメージング用途は、シンチグラフィー、光イメージング、およびX線イメージング(X線位相コントラストイメージングを含む)を含む。
治療技術は、患者の治療(上記に定義)の任意の方法を含み、それは、それ自体としての使用(例えば超音波が仲介する血栓溶解)、または、治療薬と組み合わせた(例えば遺伝子治療またはワクチンとしての使用において、例えば、選択した部位または組織への生体活性化合物の送達のため)、ガス封入マイクロベシクルの使用のいずれかを含み、および、単独で、または様々な物理的方法(例えば超音波が仲介する送達を含む)による特定の活性化の際の、いずれかで、インビトロおよび/またはインビボで、生物学的効果を与えることが可能であり、または、そのような効果を与える要因となる。
本発明に係るマイクロベシクルは、典型的に、患者のkgあたり、約0.01〜約5.0μLの気体濃度で投与することができ、例えば、それらの各組成物、治療下の対象のタイプ、治療される組織または臓器、および/または、適用される治療方法に依存する。
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために役立つ。
材料
Figure 2016503773
マイクロベシクルの寸法および濃度は、Coulter counter Multisizer3(口径:30μm)により決定する。
以下の実施例での調製における番号付けは、頭字語NxXnを用いて、リン脂質の様々な組み合わせを特定する。ここで:
−Nは、組成物が、飽和脂肪酸のみを含むか(1)、不飽和脂肪酸のみを含むか(2)、または2つの混合を含むか(3以上、ここで、3よりも大きい数は、2つの脂肪酸の間の異なるモル比を特定する)を特定する番号であり、
−xは、脂肪酸の鎖長を特定する文字であり(a=C16;b、b’、b"=C18;c、c’=C20;ここで、b’(およびc’)およびb"は、それぞれ、2個または3個の不飽和を有する不飽和脂肪酸を特定する);
−Xは、リン脂質のタイプを特定する文字(大文字)であり(A=DSPC、B=DSPG、C=DSPS、D=DPPCおよびE=DAPC);および
−nは、異なる調製におけるリン脂質の同程度の相対的モル量を特定する別の数字である。
例えば、3b’A1は、C18脂肪酸(b)の1/2.5(モル)の混合物(N=3)(52%(モル)の相対的な量(n=1)でDSPC(X=A)を有する、2個の不飽和(x=b’)を含む不飽和酸)を特定し;同様に、3aC1は、C16脂肪酸(x=a)の1/2.5(モル)の混合物(N=3)(52%(モル)の相対的な量(n=1)でDSPS(X=C)を有する)を特定する。
実施例1(比較)
飽和または不飽和脂肪酸を含む、マイクロベシクルの調製
15.6mgのDSPC(52%(モル))および4.4mgのパルミチン酸(45.5%(モル))を、THF中で混合し、60℃で蒸発させて、25℃にて真空下(0.2mbar)で一晩乾燥させ;残渣を、シクロオクタン(1.6mL)中に70℃で、透明の均質溶液が得られるまで溶解させた。
DSPE−PEG2000(2.6mg)を200μLの蒸留水と混合した。加熱(50℃)および混合の後、透明のミセル溶液が得られ、蒸留水中10%(w/v)のPEG4000の20mLの溶液に添加される。
高スピードのホモジナイザーPolytron(9’000rpmで1分)を用いた撹拌下で、有機相を水相に添加する。得られたエマルションを、80℃で穏やかな撹拌下に1時間置き、室温まで冷却した。エマルションを、PEG 4000 10%(w/v)の溶液で2回希釈し、DIN4Rバイアル中に分取した(バイアルあたり0.5mLのエマルション)。バイアル中のエマルションを凍結乾燥し、C10/空気の混合物(35%〜65%)をバイアル中に導入した。バイアルを−50℃で1時間凍結させ(Telstar凍結乾燥機)、それから、−25℃および0.2mbarで12時間、凍結乾燥させた。それから、バイアルの内容物を、穏やかな撹拌下で0.9%のNaCl(1mL)中に再分散させて、ガス封入マイクロベシクルの懸濁液を得た。
同程度のモル量の他の飽和および不飽和脂肪酸でパルミチン酸を置き換えることにより(以下の表1に示す)、上記の調製を繰り返した。
Figure 2016503773
実施例2
飽和および不飽和脂肪酸の混合物を含むマイクロベシクル
パルミチン酸を飽和脂肪酸(約13%(モル);1.5〜1.8mg)および不飽和脂肪酸(約32.5%(モル);3.7〜4.4mg)を含む同程度のモル量(約45.5%)の混合物で置き換えることにより(以下の表2に示す)、実施例1の調製1aを繰り返し、18.2〜18.5mgのDSPC(飽和酸の量と合わせて20mg)および3.0mgのDSPE−PEG2000と混合した。
Figure 2016503773
実施例3
飽和または不飽和脂肪酸を含むマイクロベシクルと比較した、飽和/不飽和脂肪酸の混合物を含むマイクロベシクルの安定性
実施例1および実施例2で調製したマイクロベシクルの安定性を、上記で定義した培養培地中で、37℃にて24時間にわたって測定した。各調製の2つのバイアルを1mLの培養培地中に再分散させて、サンプルを、i)再構成直後に、および、ii)37℃において静止状態下でのインキュベーションの24時間後に、Coulter Counterにより特徴付けた。(再構成後に測定された最初の量に対して)残存するマイクロベシクルの割合を、以下の表3に報告する。
Figure 2016503773
上記の表から推測できるように、飽和および不飽和脂肪酸の混合物(約1:2.5のモル比)は、同じモル量の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のみを含むマイクロベシクルと比較して、増加した安定性のマイクロベシクルを提供する。
実施例4
エイコセン酸に対して様々なモル比のアラキジン酸を有するマイクロベシクルの調製および安定性測定
不飽和脂肪酸に対する飽和脂肪酸のモル比を表4に示すように変化させたが(飽和+不飽和脂肪酸の合計モル量は約45.5%モルで一定に維持しながら)、実施例2の調製3cを繰り返した(残りの構成要素はDSPC(52%モル)およびDSPE−PEG2000(2.5%モル)である)。
得られたマイクロベシクルの培養培地中での安定性を、上記に説明したとおりに決定し、アラキジン酸またはエイコセン酸のみを有するマイクロバブルの安定性と比較した(調製1cおよび2c、各脂肪酸の合計量は約45.5%モル)。結果を以下の表4に報告する。
Figure 2016503773
上記の表から推測できるように、2.5/1〜1/7.3モルの飽和/不飽和脂肪酸の混合物を含むマイクロバブルに関して、安定性の増加が見られる。
実施例5
パルミトオレイン酸に対して様々なモル比のパルミチン酸を有するマイクロベシクルの調製および安定性測定
不飽和脂肪酸に対する飽和脂肪酸のモル比を表5に示すように変化させたが(飽和+不飽和脂肪酸の合計モル量は約45.5%モルで一定に維持しながら)、実施例2の調製3aを繰り返した(残りの構成要素はDSPC(52%モル)およびDSPE−PEG2000(2.5%モル)である)。
マイクロベシクルの培養培地中での安定性を、上記に説明したとおりに決定し、パルミチン酸またはパルミトオレイン酸のみを有するマイクロバブルの安定性と比較した(調製1aおよび2a、各脂肪酸の合計量は45.5%モル)。結果を以下の表5に報告する。
Figure 2016503773
上記の表から推測できるように、1.5/1〜1/7.3モルの飽和/不飽和脂肪酸の混合物を含むマイクロバブルに関して、安定性の増加が見られる。
実施例6
飽和/不飽和脂肪酸の混合物および変化する量のホスファチジルコリンを有するマイクロベシクル
以下の表6に示すように、脂肪酸混合物のモル量に対してDSPCのモル量を変化させたが(飽和/不飽和脂肪酸のモル比は1:2.5で一定に維持しながら)、実施例2の調製3aを繰り返した。各調製に関するモル数の合計(DSPC+パルミチン酸+パルミトオレイン酸)は、約45μモルで一定に維持した。
得られたマイクロベシクルの培養培地中での安定性を、上記に示すように決定した。結果を以下の表6に報告する。
Figure 2016503773
上記の表から推測できるように、飽和および不飽和脂肪酸の混合物に対するリン脂質のモル量が約1/3〜約2/1である場合、マイクロベシクルは増加した安定性を有する。
実施例7
飽和/不飽和脂肪酸の混合物と結合したホスファチジルグリセロールを含むマイクロベシクル
ホスファチジルコリン(DSPC)をホスファチジルグリセロール(DSPG)で置き換えたが、調製1a、2a(実施例1)および3a(実施例2)を繰り返した。得られたマイクロベシクルの安定性を上述のように決定した。結果を以下の表7に報告する。
Figure 2016503773
上記の表から推測できるように、飽和/不飽和脂肪酸の混合物は、同じモル量の飽和または不飽和脂肪酸のみを含む組成物と比較した場合、ホスファチジルグリセロールを含むマイクロベシクルにも増加した安定性を提供する。
実施例8
飽和/不飽和脂肪酸の混合物と結合したホスファチジルセリンを含むマイクロベシクル
ホスファチジルグリセロール(DSPG)をホスファチジルセリン(DSPS)で置き換えたが、実施例7を繰り返した。マイクロベシクルの安定性を上述のように決定した。結果を以下の表8に報告する。
Figure 2016503773
上記の表から推測できるように、飽和/不飽和脂肪酸の混合物は、同じモル量の飽和または不飽和脂肪酸のみを含む組成物と比較した場合、ホスファチジルセリンを含むマイクロベシクルにも増加した安定性を提供する。
実施例9
飽和/不飽和脂肪酸の混合物と結合したホスファチジルコリンを含むマイクロベシクル
ホスファチジルグリセロール(DSPG)をホスファチジルコリン(DPPC)で置き換え、脂肪酸をステアリン酸およびオレイン酸で置き換えたが、実施例7を繰り返した。得られたマイクロベシクルの安定性を上述のように決定した。結果を以下の表9に報告する。
Figure 2016503773
上記の表から推測できるように、飽和/不飽和脂肪酸の混合物は、同じモル量の飽和または不飽和脂肪酸のみを含む組成物と比較した場合、ホスファチジルコリンを含むマイクロベシクルにも増加した安定性を提供する。
実施例10
飽和/不飽和脂肪酸の混合物と結合したホスファチジルコリンを含むマイクロベシクル
DPPCをDAPCで置き換えたが、実施例9を繰り返した。得られたマイクロベシクルの安定性を上述のように決定した。結果を以下の表10に報告する。
Figure 2016503773
上記データは、飽和/不飽和脂肪酸の混合物が、同じモル量の飽和または不飽和脂肪酸のみを含む組成物と比較した場合に、ホスファチジルコリンを含むマイクロベシクル(異なる脂肪酸鎖を有する)に増加した安定性を提供することを裏付ける。
実施例11
飽和および不飽和脂肪酸の混合物を含むマイクロベシクルのインビボ超音波イメージング
調製1aA1(DSPCおよびパルミチン酸−PA)に従って調製されたガス封入マイクロベシクルを、調製3aA1(DSPC+パルミチン酸およびパルミトオレイン酸の混合物−PA/POA)に従って調製されたマイクロベシクルと、インビボ(ラット腎臓)でのそれらのそれぞれの灌流能に関して比較した。
マイクロベシクル製剤のそれぞれの灌流能を、15L8線形変換器を具備するSiemens Sequoia 512スキャナー(Siemens Medical Systems,Issaquah,WA)を用いて行われる超音波イメージングにより評価した。
低音響出力(MI 0.25)でCadence Pulse Sequencing(CPS)モードを用いて間欠的な筋イメージング(Intermittent muscle imaging)を行ない、その後、マイクロベシクル製剤の投与(無作為注入)の後に、ラットの腎臓中でマイクロベシクルのウォッシュイン/ウォッシュアウトを行なった。
関心領域(AOI)内のコントラストエコパワー振幅を定量化するために設計された社内開発ソフトウェア(Bracco Suisse SA,Geneva,Switzerland)を用いて、マイクロベシクル灌流の定量分析を行なった。AOIにおけるコントラスト強調は、相対的なエコパワーの値(rms)(選択AOI中のマイクロベシクルの数に比例する)として表された。rms値に基づいて、ラット腎臓における最大強度(Imax、注射後最大30秒)および後期強調(注射後5分および10分)を評価した。マイクロベシクルの持久性を、後期(5分および10分)に測定したrms値とImax値との比の割合で、正規化値として決定した。
Figure 2016503773
上記の結果から推測されるように、本発明に係るマイクロベシクル(飽和および不飽和脂肪酸の混合物を有する)は、同じモル量の飽和脂肪酸のみを含むマイクロベシクルと比較して、注射から5分後および10分後に増加した持久性を示す。

Claims (25)

  1. 生理的に許容できる液体担体中のガス封入マイクロベシクルの懸濁液であって、
    前記マイクロベシクルは、リン脂質、飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸を含む安定化膜を有し、
    前記飽和脂肪酸と前記不飽和脂肪酸との間のモル比が2.5:1〜1:8である、
    マイクロベシクルの懸濁液。
  2. 請求項1に記載の懸濁液であって、
    前記モル比が1.5:1〜1:7.5である、
    懸濁液。
  3. 請求項2に記載の懸濁液であって、
    前記モル比が1:1.5〜1:4である、
    懸濁液。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の懸濁液であって、
    前記の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸は、C10〜C28脂肪族鎖を含むカルボン酸である、
    懸濁液。
  5. 請求項4に記載の懸濁液であって、
    前記飽和脂肪酸は、カプリン酸(n−デカン酸)、ラウリン酸(n−ドデカン酸)、ミリスチン酸(n−テトラデカン酸)、パルミチン酸(n−ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n−オクタデカン酸)、アラキジン酸(n−エイコサン酸)、ベヘン酸(n−ドコサン酸)、n−テトラコサン酸およびそれらの混合物から選択される、
    懸濁液。
  6. 請求項4または5に記載の懸濁液であって、
    前記不飽和脂肪酸は、デセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘキサデカジエン酸、オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、オクタデカテトラエン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサエン酸、ドコサジエン酸、ドコサトリエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、テトラコセン酸およびそれらの混合物から選択される、
    懸濁液。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の懸濁液であって、
    前記懸濁液中のリン脂質と飽和/不飽和脂肪酸の混合物との間のモル比が3:7〜4:1である、
    懸濁液。
  8. 請求項7または8に記載の懸濁液であって、
    前記リン脂質は、ホスファチジルコリン、エチルホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリンおよびそれらの混合物から選択される、
    懸濁液。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の懸濁液であって、
    前記ガス封入マイクロベシクルが、標的リガンドおよび/または治療薬をさらに含む、
    懸濁液。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の懸濁液であって、
    前記ガスがフッ素化ガスを含む、
    懸濁液。
  11. 請求項1から10のいずれかに記載のガス封入マイクロベシクルの懸濁液であって、
    診断方法または治療処置での使用のための、
    懸濁液。
  12. 密封バイアルであって、
    a)リン脂質、飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸を含む、医薬製剤、
    ここで、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との間のモル比は2.5:1〜1:8である;および、
    b)生体適合性ガス、
    を含む、
    密封バイアル
  13. 請求項12に記載のバイアルであって、
    飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との間のモル比が1.5:1〜1:7.5である、
    バイアル。
  14. 請求項13に記載のバイアルであって、
    飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との間のモル比が1:1.5〜1:4である、
    バイアル。
  15. 請求項12から14のいずれかに記載のバイアルであって、
    前記の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が、C10〜C28脂肪族鎖を含むカルボン酸である、
    バイアル。
  16. 請求項15に記載のバイアルであって、
    前記飽和脂肪酸は、カプリン酸(n−デカン酸)、ラウリン酸(n−ドデカン酸)、ミリスチン酸(n−テトラデカン酸)、パルミチン酸(n−ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n−オクタデカン酸)、アラキジン酸(n−エイコサン酸)、ベヘン酸(n−ドコサン酸)、n−テトラコサン酸およびそれらの混合物から選択される、
    バイアル。
  17. 請求項15または16のいずれかに記載のバイアルであって、
    前記不飽和脂肪酸は、デセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘキサデカジエン酸、オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、オクタデカテトラエン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサエン酸、ドコサジエン酸、ドコサトリエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、テトラコセン酸およびそれらの混合物から選択される、
    バイアル。
  18. 請求項13から17のいずれかに記載のバイアルであって、
    製剤中のリン脂質と前記の飽和/不飽和脂肪酸の混合物との間のモル比が、3:7〜4:1である、
    バイアル。
  19. 請求項18に記載のバイアルであって、
    前記リン脂質が、ホスファチジルコリン、エチルホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリンおよびそれらの混合物から選択される、
    バイアル。
  20. 請求項1から19のいずれかに記載のバイアルであって、
    前記製剤が、標的リガンドおよび/または治療薬をさらに含む、
    バイアル。
  21. 請求項1から20のいずれかに記載のバイアルであって、
    前記製剤が、凍結乾燥した形態である、
    バイアル。
  22. 請求項1から21のいずれかに記載のバイアルであって、
    前記製剤が、薬学的に許容できる添加剤および/または賦形剤をさらに含む、
    バイアル。
  23. 請求項22に記載のバイアルであって、
    前記添加剤が凍結乾燥剤である、
    バイアル。
  24. 請求項1から23のいずれかに記載のバイアルであって、
    前記ガスがフッ素化ガスを含む、
    バイアル。
  25. ガス封入マイクロベシクルの懸濁液の調製のための製剤キットであって、
    請求項1から24のいずれかに記載のバイアル、および、生理的に許容できる水性担体を含む容器を含む、
    製剤キット。
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