JP2016500984A - 二重振動板式ダイナミックマイクロホントランスデューサ - Google Patents

二重振動板式ダイナミックマイクロホントランスデューサ Download PDF

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Abstract

二重振動板式ダイナミック型マイクロホントランスデューサであって、とりわけ、プロフェッショナルレベルのダイナミック型マイクロホン性能を犠牲にしないで、音源/レシーバ近接効果の制御を可能にすることを特徴とする二重振動板式ダイナミック型マイクロホントランスデューサ。

Description

本願は、一般に、ダイナミックマイクロホントランスデューサに関する。本願は、特に、二重振動板(dual diaphragm)式ダイナミックマイクロホントランスデューサに関する。
〔関連出願の説明〕
本願は、2012年10月23日に出願された米国特許出願第13/658,506号の優先権主張出願であり、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
マイクロホン及び関連トランスデューサには幾つかの形式があり、例えば、種々の磁極応答パターン(カージオイド、スーパーカージオイド、無指向性等)を備えた状態で設計できるダイナミック型、クリスタル型、コンデンサ/キャパシタ型(外部付勢式及びエレクトレット)等がある。これらの形式の全てには、用途に応じてそれぞれの利点及び欠点がある。コンデンサマイクロホンは、極めて高い音響周波数に応答することができ、これらコンデンサマイクロホンは、通常、ダイナミックマイクロホンよりも極めて感度が高く、それにより、コンデンサマイクロホンは、静粛な又は遠く離れた音源に適するものになっている。かかる周波数応答が可能であるが、その理由は、コンデンサマイクロホントランスデューサの振動板がダイナミックモデルとは異なり、トランスデューサの音響空間内でこれら振動板に取り付けられたボイスコイルの質量を有していないことに起因して、かかるコンデンサマイクロホントランスデューサの振動板が典型的には、ダイナミックモデルの振動板よりも薄く且つ軽量に製作できることにある。他方、ダイナミックマイクロホンの利点のうちの1つは、かかるダイナミックマイクロホンが受動型であり、従って、動作するのに能動回路を必要としないということにある。したがって、ダイナミックマイクロホンは、一般に、頑丈であり、比較的安価であり、しかも水分/湿度の問題を受けにくい。ダイナミックマイクロホンは又、フィードバックが問題となる前に潜在的に高いゲインを示す。これら属性により、ダイナミックマイクロホンは、オンステージ使用にとって理想的である。
全ての指向性マイクロホントランスデューサ設計が対処しなければならない現象は、「近接効果(proximity effect)」と呼ばれている。近接効果は、マイクロホンが音源の近くで用いられている場合の低周波数(低音)応答の増強である。この応答の増強は、指向性マイクロホンがトランスデューサカプセルの後側からの音波をも又捕捉するということによって生じ、これは、音響通路又はポート内で遅延され、次に軸上(on-axis )で到来する音響エネルギーに加えられる。音源が比較的遠くに位置している場合、音響通路によって導入される位相のずれ(フェーズシフト)により、後ろから到来する音波は、主として、実質的に同一の音響レベルがマイクロホントランスデューサの前と後ろに到達したときに打ち消される。しかしながら、比較的密接して位置する音源の場合、逆二乗の法則の定めるところによれば、マイクロホントランスデューサの前のところの音響レベルが後ろのところの音響レベルよりも増大することになる。これにより、低周波数を打ち消す際のポートの効率が低下する。実際問題として言えば、マイクロホンの近くに位置したボーカリスト、スピーカー、楽器又は他の音源は、相当大きな量の低音応答を生じさせることになる。
近接効果を取り扱う代表的なストラテジーは、電気的にか又は機械的共振の増大によって機械的にかのいずれかで低周波数出力(高域通過)を減少させることである。1つの機械的ストラテジーは、追加のコンプライアンス素子、例えば第2の振動板を採用し、この振動板は、近接効果を制御するようリヤポート同調インピーダンスと直列に配置されるのが良い。しかしながら、かかる二重振動板式マイクロホントランスデューサは、サイズが小さいこと及びコンデンサマイクロホントランスデューサ内の音響空間が単純であることに鑑みて、コンデンサ型マイクロホン用途に限定されている。
とりわけ、プロフェッショナルレベルのダイナミックマイクロホン性能を犠牲にしないで、音源/レシーバ近接効果の制御を可能にする二重振動板式ダイナミック型マイクロホントランスデューサが要望されている。
一実施形態では、二重振動板式マイクロホントランスデューサがハウジングと、ハウジング内に支持されていて、音波を受け取るトランスデューサ組立体とを有する。トランスデューサ組立体は、磁石組立体と、磁石組立体に隣接して設けられている後面を備えた前側振動板と、磁石組立体に隣接して前側振動板の後面に対して反対側に設けられている後面を備えた後側振動板とを含む。前側振動板の前面は、音波をこの前面に当てるよう構成され、後面にはコイルが接続され、コイルは、磁石組立体の磁界と相互作用することができるようになっている。後側振動板の前面は、この前面に音波を当てるよう構成されている。トランスデューサ組立体は、ハウジングに設けられた少なくとも1つの空気通路を経てハウジング内の空洞と伝達関係にある内部音響空間を画定している。
別の実施形態では、ハウジングは、少なくとも1つの孔が設けられた共振器を更に有し、この共振器は、前側振動板の前面を覆って設けられている。
別の実施形態では、ハウジングは、前側振動板の前面から外方にずらされると共にこの前面に隣接して設けられた板状回折器(diffractor plate)を更に有する。
さらに別の実施形態では、前側振動板は、中央ドーム部分及び外側コンプライアンスリング部分を有し、前側振動板のコンプライアンスリング部分は、可変曲率半径を備えた断面輪郭形状を有する。
さらに別の実施形態では、後側振動板は、中央ドーム部分及び外側コンプライアンスリング部分を有し、後側振動板のコンプライアンスリング部分は、可変曲率半径を備えた断面輪郭形状を有する。
さらに別の実施形態では、前側振動板及び後側振動板は各々、中央ドーム部分及び外側コンプライアンスリング部分を有し、後側振動板の中央ドーム部分は、前側振動板の中央ドーム部分よりも小径である。
これら実施形態及び他の実施形態並びに種々の組み合わせ及び種々の観点は、以下の詳細な説明及び添付の図面から明らかであると共に完全に理解され、添付の図面は、本発明の原理を採用することができる種々の仕方を表す例示の実施形態を記載している。
単一振動板式ダイナミックマイクロホントランスデューサのトポロジーを示す略図であり、このトポロジーが、振動板の前面と振動板の後面との間の外部遅延距離D及び点線で示された音響経路を含む状態を示す図である。 本発明の1つ又は2つ以上の原理による二重振動板式ダイナミックマイクロホントランスデューサのトポロジーを示す略図であり、このトポロジーが前側振動板の前面と後側振動板の前面との間の外部遅延距離D及び点線で示された音響経路を含む状態を示す図である。 本発明の1つ又は2つ以上の原理による二重振動板式マイクロホントランスデューサの一実施形態の斜視図であり、トランスデューサの共振器の一部分を露出させるために板状回折器の一部分を切除して示す図である。 図3に示された二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態の立面図である。 図3に示された二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態の平面図である。 図3に示されていて、図5の断面線6‐6に沿って取った二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態の立面断面図である。 図6に示された断面の分解組立て図である。 図3に示された二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態の前側振動板の断面輪郭形状を示す図であり、振動板の環状コンプライアンスリングの可変曲率半径Rを示す図であり、Rが振動板の中心線から測定した半径の関数として変化していることを示す図である。 図3に示された二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態の前側振動板の斜視図である。 図3に示された二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態の後側振動板の斜視図である。 共振器が設けられていない本発明の1つ又は2つ以上の原理に従って設計された例示のサンプルとしての二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態の境界要素シミュレーションから得られた外部遅延値D及びゲインファクタ値Gを示すグラフ図であり、ゲインファクタGが20log(|Pb/Pf|)として定められ、この場合、Pbが後側振動板の露出面に加わる平均圧力であり、Pfが前側振動板の露出面に加わる平均圧力であることを示す図である。 共振器が設けられていない本発明の1つ又は2つ以上の原理に従って設計された例示のサンプルとしての二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態の境界要素シミュレーションから得られた外部遅延値D及びゲインファクタ値Gを示すグラフ図であり、ゲインファクタGが20log(|Pb/Pf|)として定められ、この場合、Pbが後側振動板の露出面に加わる平均圧力であり、Pfが前側振動板の露出面に加わる平均圧力であることを示す図である。 2つの音源距離のところでの本発明の1つ又は2つ以上の原理に従って設計された例示のサンプルとしての二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態の周波数応答を示すグラフ図である。 2つの音源距離のところでの本発明の1つ又は2つ以上の原理に従って設計された例示のサンプルとしての二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態の周波数応答を示すグラフ図である。
以下の説明は、本発明の1つ又は2つ以上の特定の実施形態を本発明の原理に従って記載し、説明し、例示する。この説明は、本発明を本明細書に記載する実施形態に限定するものではなく、そうではなくて、当業者が本発明の原理を理解することができ、この理解により本発明の原理を本明細書に記載する実施形態だけでなく、本発明の原理に従って想到できる他の実施形態にも利用できるようにするように本発明の原理を説明し、教示するものである。本発明の範囲は、文言上又は均等論に基づいて添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に属すると言えるかかる全ての実施形態を含むものである。
注目されるべきこととして、明細書及び図面中、同一又は実質的に同じ要素は、同一の参照符号で示されている場合がある。しかしながら、場合によっては、これら要素は、異なる符号で示されている場合があり、これは、例えば、かかる表示がより明確な説明を容易にする場合である。加うるに、本明細書において説明される図面は、必ずしも縮尺通りには描かれておらず、幾つかの場合、或る特定の特徴を明確に示すために比率が誇張されている場合がある。かかる表示及び図面に関する運用は、必ずしも根源的な実体的目的を示唆するものではない。上述したように、明細書は、本明細書において教示される本発明の原理に従って全体として受け取られて解釈され、そして当業者にとって理解されるようになっている。
本発明の1つ又は2つ以上の原理に従って、二重振動板式ダイナミックマイクロホントランスデューサが本明細書において開示され、かかるトランスデューサは、或る特定の実施形態において、そしてとりわけ、音源/レシーバ近接効果及び基準音源近接状態での軸外し拒否(off-axis rejection)を制御する最適手段を備えた単一カプセル型プロフェッショナルレベル一方向マイクロホンを提供する。
図1は、代表的な単一振動板式マイクロホントランスデューサ設計例のトポロジーを示しており、これは、教示目的で図2に示されている二重振動板式マイクロホントランスデューサのトポロジーと比較して示されている。図2は、二重振動板式ダイナミックマイクロホントランスデューサのより複雑なトポロジーを示している。図1の単一振動板モデルに示されているように、第1の音響コンプライアンスCaは、振動板の後ろで定められ、空洞の形態をした第2のコンプライアンスCbと音響的伝達状態にある。システムの音響的流れが図1に示された点線で表されている。このシステムの音響遅延Dは、振動板の前面と抵抗(R1)で表された二次同調ポートとの間の距離によって定められる。単一振動板式システムでは、距離Dによって定められた音波の外部遅延は、比較的短い。これと比較して、図2は、増大した外部遅延Dを備えたシステムを示すと共に二重振動板モデルの導入によって生じるフェーズシフトネットワークを通る「逆の」音響的流れを示している。これら複雑さ及び制約は、二重振動板設計のプロフェッショナルレベルの性能を達成するために計算に入れなければならない。とりわけ、外部遅延は、この設計例における適当な内部空洞容積を保持した状態で最小限にされるべきである。
本発明の1つ又は2つ以上の原理に従って、とりわけプロフェッショナルレベルの性能を達成する二重振動板式ダイナミックマイクロホントランスデューサが本明細書において開示される。特定の実施形態では、トランスデューサは、一様な全帯域幅(50Hz≦f≦15kHz)周波数応答、能動増幅(疑似電力)なしでの最適感度(音声用途に関し、S≧−56dBV/Pa)及び低出力インピーダンス(Zout≦300Ω)並びに所望の磁極パターン中の延長帯域幅拒否(例えば、カージオイド動作に関し、Δ≧25dB)を示す。直列リヤポートコンプライアンス要素を組み込んだ場合の利点に加えて、特定の実施形態は、近接効果の低減を示すと共に最適軸外し拒否のための同調可能な基準距離を有する。
全体として図3〜図7を参照すると、単一カプセル型二重振動板式ダイナミックマイクロホントランスデューサ30がハウジング32と、このハウジング内に支持されていて、音波を受け取るトランスデューサ組立体40とを有する。図6に示されているように、トランスデューサ組立体40は、磁石組立体41と、磁石組立体41に隣接して設けられた後面43を備える前側振動板42と、磁石組立体41に隣接して前側振動板42の後面43に対して逆に設けられた後面45を備える後側振動板44とを含む。前側振動板42の前面46は、音波をこの前面に当てるよう構成され、後面にはコイル47が接続されており、コイル47は、磁石組立体41の磁界と相互作用することができるようになっている。後側振動板44の前面48も又、音波をこの前面に当てるよう構成されている。トランスデューサ組立体40は、ハウジング32内に設けられた少なくとも1つの空気通路52を経てハウジング32内に設けられている空洞50と伝達状態にある内部音響ネットワーク空間を画定している。図示の実施形態では、4つの空気通路52がハウジング32内に具体化されている。
特定の実施形態の追加の観点を参照すると共に図6及び図7を参照すると、図示の特定の実施形態の磁石組立体41は、中央に設けられた磁石61を含み、その磁極は、ハウジング32の中央垂直軸線に沿って全体として垂直方向に配置されている。環状の底部磁石の磁極片62が磁石61から同心状に外方に配置され、この磁極片は、磁石61の上側部分の磁極と同一の磁極を有している。この実施形態では、頂部磁極片63が底部磁極片に隣接して上方に設けられ、この頂部磁極片は、磁石61の上側部分の磁極と逆の磁極を有している。この実施形態では、頂部磁極片63は、2つの小片から成るが、他の実施形態では、1つの磁極又は多くの磁極から成っていても良い。図6から理解できるように、前側振動板に音波が当たると、コイル47は、磁石組立体41及びその関連の磁界に対して動いて音波に対応した電気信号を発生させる。電気信号を図3〜図5に示されているようにコイル接続部及び関連の端子リード64を経て伝送するのが良い。
図6及び図7に記載された特定の実施形態に示されているように、前側振動板42は、前側振動板マウント66によりトランスデューサ組立体40に取り付けられている。後側振動板44は、後側振動板マウント67によりトランスデューサ組立体40に取り付けられている。後側振動板マウント67には少なくとも1つの孔68が設けられている。
トランスデューサ30は、全体としてトランスデューサ組立体40によって構成された内部音響ネットワークを有し、この内部音響ネットワークは、空洞50と音響的伝達状態にある。図6及び図7に示されているように、トランスデューサ組立体40と関連した内部空間ネットワークは、ハウジング32内に形成された空気通路52と音響的伝達状態にある。頂部磁極片63に設けられた少なくとも1つの孔が前側振動板42の後ろに位置する空間と全体としてトランスデューサ組立体40の磁石組立体41と関連した中央空間との間のこの音響伝達の一部の確立を容易にしている。音響抵抗72が頂部磁極片63の2つの小片相互間に設けられており、頂部磁極片63の孔を通過した音波が音響抵抗72に当たるようになっている。別の音響抵抗73が図6に示されているように、後側振動板マウント67と底部磁石の磁極片との間に設けられており、後側振動板マウント67の孔68を通過した音波が音響抵抗73に当たるようになっている。一実施形態では、第3の音響抵抗素子74がハウジング32内の空洞50の第1の部分76と第2の部分77との間に設けられている。
全体として図6に示されているように、トランスデューサ30は、これと関連した数個の内部音響空間を有し、かかる音響空間は、トランスデューサ組立体内の抵抗72,73相互間の全体的容積から成る一次空間、抵抗73と空気通路52の全体的終端部との間の全体的容積から成る二次空間、及び全体として空気通路52の終端部の後で抵抗74の上方の全体的容積から成る第1の部分76及び全体として抵抗74の下の容積から成る第2の部分77によって構成された空洞50から成る補助空間を含む。
全体として図3〜図7を参照し、特に図3を参照すると、図示の実施形態では、ハウジング32は、共振器82を有し、この共振器には少なくとも1つの孔83が設けられている。図示の実施形態では、ハウジング32は、板状回折器84を更に有し、この板状回折器は、本明細書において説明するようにトランスデューサ30の音響性能の実現を支援する。とりわけ、板状回折器84は、二重振動板設計により導入される音響スペース区分化に起因した半波長共振条件を補償する。また、この板状回折器は、外部遅延距離Dを減少させる。図3は、少なくとも1つの孔83を備えたトランスデューサ30の共振器82の一部分を露出させるよう切除された板状回折器84の一部分を示している。一部分が図3の孔83を通して見える前側振動板42は、孔83を通過した音波が前側振動板42の前面46に当たるよう共振器82に隣接して位置決めされている。
図4に示されているように、後側振動板44は、音波がこの後側振動板に当たることができるようハウジング32内に位置決めされている。図4及び図6に示されているように、後側振動板44の前面48は、ハウジング32の全体として中央に設けられた開放領域86に隣接して位置している。この形態によりハウジング32の空気通路52及び空洞50の形態に対して僅かな制約が課されるが、注目されるべきこととして、他の形態の採用が可能であって、本明細書において想定されており、かかる形態は、空洞をハウジングの一方の側に又はハウジングの外側部分周りに同心状に位置決めすることが挙げられるが、これには限定されない。
図8〜図10は、本発明の1つ又は2つ以上の原理による幾つかの実施形態に組み込まれた前側振動板42及び後側振動板44の観点を示している。二重振動板式ダイナミックマイクロホントランスデューサに関する概念と関連して、前側振動板42と後側振動板44の両方のコンプライアンスを既存の設計例と比較して増大させており、それにより図示の本明細書に示されている実施形態の基本システムの磁極内における上方へのずれが補償されている。したがって、薄い振動板材料が用いられることが好ましい。加うるに、図8に示されている前側振動板42の輪郭形状により例示されるように、振動板は又、好ましくは、振動板の外周部の剛性を増大させるよう可変曲率半径Rを有するコンプライアンスリング部分92を採用している。薄い振動板材料によりモード挙動音声周波数帯域幅中にシフトダウンすることができるので、多くの追加の特徴を振動板輪郭形状中に採用して潜在的なモード効果を是正するのが良い。例えば、振動板は、薄いPET、例えばマイラー(Mylar)又はホスタファン(Hostaphan)で構成するのが良い。一実施形態では、振動板は、35ゲージPETで作られる。しかしながら、これら原理に従って他のゲージ/厚さ及び他の材料も又採用することができる。振動板は、振動板のコンプライアンスリング部分92内に設けられた複数個のセレーション要素94を更に有するのが良い。セレーション要素94は、振動板からの材料の細長い凹み又は切り欠きとして示されており、これらセレーション要素は、他の形態又は幾何学的形状を取ることもできる。前側振動板42に関し、材料のブランク(図示せず)を前側振動板のコイル取り付け平坦部97を覆って設けるのが良い。ブランクを任意適当な薄い材料、例えばポリエステルフィルム、例えばメリネックス(Melinex)で作ることができる。後側振動板44に関し、典型的なダイナミックマイクロホン振動板と比較してコンプライアンスの増大が所望の帯域幅要件及び最適軸外し拒否のための同調可能な基準距離を達成する上で望ましいということに検討が加えられた。また、特に後側振動板44が取り付け状態のコイルを備えていないので後側振動板44の質量に対しても検討が加えられた。図示の実施形態では、後側振動板のドーム部分98が前側振動板のドーム部分99の直径よりも小さな直径を有し、後側振動板にはコイルが取り付けられていないということにより、後側振動板は、コイルの取り付け部に対応するための平坦な部分を備えていない。
上述したように、板状回折器84は、二重振動板設計により導入される音響スペース区分化に起因して半波長共振状態を補償する。これは、板状回折器84が前側振動板42について同様な効果を生じさせ、両方の振動板の応答が追従することができるようにすることによって達成される。板状回折器84は又、有利には、外部遅延距離Dを減少させる。高周波性能に関する修正が板状回折器84に対する僅かな改造により可能である。一般に、かかる改造は、直列放射イナータンス並びに外部遅延距離Dを変動させる。板状回折器84の外径が増大すると、共振器孔83のイナータンスと直列の状態にある放射イナータンスが増大し、それにより共振器の共振周波数が低くなる。これは、高周波応答を減少させる(f≧10kHz)と共に外部遅延を僅かに減少させる。しかしながら、半波長共振条件が再び現れる最小外径が存在する。図3〜図7に示された実施形態においてハウジング32のネック部分102により定められる板状回折器84の高さは、同様な効果を有する。高さが増大すると、直列放射イナータンスが減少し、外部遅延が増大する。逆も又真である。
二重振動板式ダイナミックマイクロホントランスデューサは、好ましくは、前側振動板42と後側振動板44の両方と関連した低い放射イナータンスと最小外部遅延との間の均衡を図る。境界要素(BE)数値シミュレーションツールを用いて本発明の1つ又は2つ以上の原理に従って設計されたサンプルとしての二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態(前側振動板42の前面46が実質的に露出されるよう共振器83を備えていない)の振動板に加わる放射インピーダンスを特徴付けた。後側振動板の放射イナータンスは、表1に示されているようにほぼ一定であることが判明した。多数の周波数(f≦1kHz)をシミュレートし、後側振動板の受ける放射イナータンスは、前側振動板の受けた放射イナータンスのほぼ2倍であることが判明した。前側振動板は、シミュレーション中、露出されている(共振器が設けられていない)ので、従って、前側振動板は、表面積が所与である場合、可能な限り最も低い放射イナータンスを示す。
表1:放射イナータンス(Lr)境界要素シミュレーションがトランスデューサ(共振器なし)について結果的に得られる。通常の速度が課され(νs=1.0e-4m/s)、振動板表面積Sd=4.39e-42であった。周波数は、ka<1に限定された。

Figure 2016500984
図11a及び図11bは、本発明の1つ又は2つ以上の原理に従って設計された例示のサンプルとしての二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態(共振器なし)の境界要素シミュレーションから得られた外部遅延値D及びゲインファクタ値Gを示すグラフ図である。これらグラフ図中、ゲインファクタGは、20log(|Pb/Pf|)として定められ、この場合、Pbは、後側振動板の露出面に加わる平均圧力であり、Pfは、前側振動板の露出面に加わる平均圧力である。
これらのグラフ図に示されているように、外部遅延パラメータは、周波数が変化してもほぼ一定であり(D≒0.0283m)であり、最終的には、f>5kHzで急落する。
図12a及び図12bは、2つの音源距離(rf=0.6096m及びrf=1.8288m)のところでの本発明の1つ又は2つ以上の原理に従って設計された例示のサンプルとしての二重振動板式マイクロホントランスデューサ実施形態の周波数応答を示すグラフ図である。このサンプルの後側振動板コンプライアンスは、基準距離rf=1.8mのところで軸外し拒否(θ=180°)を最適化するようになっていた。図示のように、サンプルは、rf=0.6096mのところでの近い近接音源と比較して音源距離rf=1.8288mのところで向上したLF拒否(f≦200Hz)を示す。
これら結果によって実証されているように、とりわけ、音源/レシーバ近接効果及び基準音源近接状態での軸外し拒否を制御する最適手段を備えた単一カプセル型プロフェッショナルレベル一方向マイクロホンが達成された。
本開示内容は、この技術による種々の実施形態をどのように構成して用いるかについて説明するものであり、本発明の真の、意図した、しかも公正な範囲及び精神を限定するものではない。上述の説明は、網羅的であることを意図しておらず、或いは、開示した形態素のものに限定されるものではない。上述の教示に照らして改造又は変形が可能である。実施形態は、説明した技術の原理及びその実用的用途の最適な説明を提供すると共に当業者が種々の実施形態において、しかも計画した特定の用途に合うよう種々の改造を加えた状態でこの技術を利用することができるように選択されると共に記載されている。かかる改造例及び変形例は全て、特許請求の範囲に記載された本発明が公正に、法上、そして均等論的に受ける広さに従って解釈されたときに、特許を受けるためのこの出願の係属中に補正できる特許請求の範囲に記載された本発明及びその均等例の全てにより定められる実施形態の範囲内にある。

Claims (22)

  1. 二重振動板式マイクロホントランスデューサであって、
    ハウジングと、
    前記ハウジング内に支持されていて、音波を受け取るトランスデューサ組立体と、を有し、
    前記トランスデューサ組立体は、
    磁石組立体と、
    前記磁石組立体に隣接して設けられていて、前面及び後面を備えた前側振動板であって、この前側振動板の前面は音波を該前面に当てるよう構成され、この前側振動板の後面にはコイルが接続され、それにより、前記コイルが前記磁石組立体の磁界と相互作用することができるようになっている、前記前側振動板と、
    前面及び後面を備えた後側振動板であって、この後側振動板の後面は、前記磁石組立体に隣接して前記前側振動板の前記後面に対して反対側に設けられ、この後側振動板の前面は、該前面に音波を当てるよう構成されている、前記後側振動板と、を有し、
    前記トランスデューサ組立体は、内部音響空間を画定し、
    前記ハウジングは、前記内部音響空間と該ハウジング内に設けられた空洞との音響伝達を確立する少なくとも1つの空気通路を有する、トランスデューサ。
  2. 前記ハウジングは、前記前側振動板の前記前面を覆って設けられた共振器を更に有し、この共振器には、少なくとも1つの孔が設けられている、請求項1記載のトランスデューサ。
  3. 前記ハウジングは、前記前側振動板の前記前面から外方にずらされると共に該前面に隣接して設けられた板状回折器を更に有する、請求項1記載のトランスデューサ。
  4. 前記前側振動板は、中央ドーム部分及び外側コンプライアンスリング部分を有する、請求項1記載のトランスデューサ。
  5. 前記前側振動板の前記コンプライアンスリング部分は、可変曲率半径を備えた断面輪郭形状を有する、請求項4記載のトランスデューサ。
  6. 前記後側振動板は、中央ドーム部分及び外側コンプライアンスリング部分を有する、請求項1記載のトランスデューサ。
  7. 前記後側振動板の前記コンプライアンスリング部分は、可変曲率半径を備えた断面輪郭形状を有する、請求項6記載のトランスデューサ。
  8. 前記前側振動板及び前記後側振動板は、それぞれ、中央ドーム部分及び外側コンプライアンスリング部分を有し、前記後側振動板の前記中央ドーム部分は、前記前側振動板の前記中央ドーム部分よりも小径である、請求項1記載のトランスデューサ。
  9. 二重振動板式マイクロホントランスデューサであって、
    音源からの音波を通すことができる少なくとも1つの孔を備えた共振器を有するハウジングと、
    前記ハウジング内に支持されていて、前記音波を受け取るトランスデューサ組立体と、を有し、
    前記トランスデューサ組立体は、
    磁石組立体と、
    前記磁石組立体に隣接して設けられていて、前面及び後面を備えた前側振動板であって、この前側振動板の前面は前記ハウジングの前記共振器に隣接して設けられ、この前側振動板の後面にはコイルが接続され、それにより、前記コイルが前記磁石組立体の磁界と相互作用することができるようになっている、前記前側振動板と、
    前面及び後面を備えた後側振動板であって、この後側振動板の後面は、前記磁石組立体に隣接すると共に該磁石組立体に向いた状態で設けられている、前記後側振動板と、を有し、
    前記ハウジングは、前記前側振動板の後ろに位置した空間と該ハウジング内に設けられた空洞との音響伝達を確立する少なくとも1つの空気通路を有する、トランスデューサ。
  10. 前記ハウジングは、前記前側振動板の前記前面から外方にずらされると共に該前面に隣接して設けられた板状回折器を更に有する、請求項9記載のトランスデューサ。
  11. 前記前側振動板は、中央ドーム部分及び外側コンプライアンスリング部分を有する、請求項9記載のトランスデューサ。
  12. 前記前側振動板の前記コンプライアンスリング部分は、可変曲率半径を備えた断面輪郭形状を有する、請求項11記載のトランスデューサ。
  13. 前記後側振動板は、中央ドーム部分及び外側コンプライアンスリング部分を有する、請求項9記載のトランスデューサ。
  14. 前記後側振動板の前記コンプライアンスリング部分は、可変曲率半径を備えた断面輪郭形状を有する、請求項13記載のトランスデューサ。
  15. 前記ハウジング内の前記空洞は、音響的抵抗素子を介して2つの部分に分離されている、請求項9記載のトランスデューサ。
  16. 二重振動板式マイクロホントランスデューサであって、
    前側部分及び後側部分を備えたハウジングであって、このハウジングの前側部分は、音源からの音波を通すことができる少なくとも1つの孔を備えた共振器を有し、このハウジングの後側部分内には空洞が形成されている、前記ハウジングと、
    前記ハウジング内に支持されていて、前記音波を受け取るトランスデューサ組立体と、を有し、
    前記トランスデューサ組立体は、
    磁石組立体と、
    前記磁石組立体に隣接して設けられていて、前面及び後面を備えた前側振動板であって、この前側振動板の前面は前記ハウジングの前記共振器に隣接して設けられ、この前側振動板の後面にはコイルが接続され、それにより、前記コイルが前記磁石組立体の磁界と相互作用することができるようになっている、前記前側振動板と、
    前面及び後面を備えた後側振動板であって、この後側振動板の後面は、前記磁石組立体に隣接すると共に該磁石組立体に向いた状態で設けられている、前記後側振動板と、を有し、
    前記ハウジングは、前記前側振動板の後ろに位置した空間と前記ハウジングの前記後側部分内に設けられた空洞との音響伝達を確立する少なくとも1つの空気通路を有する、トランスデューサ。
  17. 前記ハウジングの前記前側部分は、前記共振器から外方にずらされると共に該共振器に隣接して設けられた板状回折器を更に有する、請求項16記載のトランスデューサ。
  18. 前記前側振動板は、中央ドーム部分及び外側コンプライアンスリング部分を含む円板形状を有する、請求項9記載のトランスデューサ。
  19. 前記前側振動板の前記コンプライアンスリング部分は、可変曲率半径を備えた断面輪郭形状を有する、請求項18記載のトランスデューサ。
  20. 前記後側振動板は、中央ドーム部分及び外側コンプライアンスリング部分を含む円板形状を有する、請求項16記載のトランスデューサ。
  21. 前記後側振動板の前記コンプライアンスリング部分は、可変曲率半径を備えた断面輪郭形状を有する、請求項20記載のトランスデューサ。
  22. 前記ハウジングの前記後側部分内の前記空洞は、音響的抵抗素子を介して2つの部分に分離されている、請求項16記載のトランスデューサ。
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