JP2016221270A - 光音響装置 - Google Patents
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Abstract
Description
PATにおいて、被検体内における光吸収体から発生する音響波の初期音圧P0は下記(式I)で表すことができる。
P0=Γ・μa・Φ ・・・(式I)
第1および第2の光を発生する光源と、
造影剤を含有する被検体に前記光源からの前記第1の光を照射することで前記被検体から第1の音響波を発生させた後、前記造影剤を含有する前記被検体に前記光源からの前記第2の光を照射することで前記被検体内の前記造影剤を退色させるとともに、前記造影剤を退色させた後、前記被検体に前記光源からの前記第1の光を照射することで前記被検体から第2の音響波を発生させる照射部と、
前記第1の音響波を受信して第1の電気信号を出力するとともに、前記第2の音響波を受信して第2の電気信号を出力する受信部と、
前記第1の電気信号に基づいて前記被検体の第1の特性情報を取得するとともに、前記第2の電気信号に基づいて前記被検体の第2の特性情報を取得する取得部と、
を有する光音響装置を提供する。
素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。ただし、以下に記載されている詳細な計算式、計算手順などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
本発明の光音響装置には、被検体に近赤外線等の光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波を受信して、被検体情報を画像信号(画像データともいう)として取得する光音響効果を利用した装置を含む。また、被検体に近赤外線等の光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波を受信して、被検体情報を画像信号として取得することを光音響測定あるいはPAT(Photoacoustic Tomography)測定と称する。なお、説明の便宜のため、例えば図2等では、光が被検体に照射され、その照射に基づき音響波が受信され、その受信に基づきデジタル電気信号が取得されるまでの一連の処理を、適宜、光音響測定と称する場合もある。
光音響効果を利用した装置(光音響装置)の場合、取得される被検体情報とは、光照射によって生じた音響波の発生源分布を示す。あるいは、被検体内の初期音圧分布、あるいは初期音圧分布から導かれる光エネルギー吸収密度分布や吸収係数分布、組織を構成する物質の濃度分布を示す。物質の濃度分布とは、例えば、酸素飽和度分布、トータルヘモグロビン濃度分布、酸化・還元ヘモグロビン濃度分布、造影剤濃度分布などである。
また、複数位置の被検体情報である特性情報を、2次元または3次元の特性分布として取得してもよい。特性分布は被検体内の特性情報を示す画像信号として生成され得る。
本発明でいう音響波とは、典型的には超音波であり、音波、超音波と呼ばれる弾性波を含む。光音響効果により発生した音響波のことを、光音響波または光超音波と呼ぶ。音響検出器(例えば探触子)は、被検体内で発生または反射した音響波を受信する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光音響装置の実施例1を示すブロック図である。実施例1の光音響装置100(以下「装置100」と略称する)は、光源2、ミラー6、照射部8を有する。装置100は、さらに、探触子(受信部に対応する)22、信号収集部(取得部の一部に対応する)24、信号処理部(取得部の他の一部に対応する)26、表示部28を有する。なお、以下では、3つの光吸収体を定義して説明に用いる。すなわち、その3つの光吸収体は、以下のように定義する。すなわち、人工の光吸収体である造影剤14、造影剤14以外の光吸収体である非人工吸収体12(以下、「吸収体12」と略称する)、その両者を合わせた光吸収体である統合吸収体16(以下、「吸収体16」と略称する)とそれぞれ定義する。
光源2は、被検体20から音響波を発生させる際には、パルス光である光4を射出し、造影剤14を退色させる際には、光4とは異なるパルス光である光30を射出するものである。しかしこれに限られず、装置100は、光源2により光4が射出され、他の光源により光30が射出されるように構成しても良い。これについては後述する。光4の波長は、被検体20が生体の場合、この生体内の例えば吸収体12である血液や造影剤14などの光吸収体に吸収される特定の波長である。光4の時間的なパルス幅(パルスのオン時間、ハイレベルの時間幅)は、数ナノから数百ナノ秒オーダーのものが好ましい。なお、光4のパルス光のパルス間隔(ローレベルの時間幅)をオフ時間とする。光源2は、また、レーザ(レーザ装置)から構成されることが好ましい。しかしこれに限られず、レーザのかわりに発光ダイオードなどを用いることも可能である。光源2は、例えば、固体レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、または半導体レーザなど種々のレーザが適用可能である。
けて構成されても良い。光源2は、複数の波長の光を切替て発振可能なものから構成されても良いし、または発振波長の異なる光源を複数設けて構成しても良い。装置100は、この場合に、光源2により波長毎にそれぞれ光音響測定を行うことで、波長によって異なる光学特性値分布を取得し、各光学特性値分布に基づいて酸素飽和度等を取得可能である。光源2は、複数の波長の光を切替て発振可能なものから構成される場合、発振する波長を変換可能な色素やOPO(Optical Parametric Oscillators)を用いたレーザから構成されても良い。
(1−τ・f)/f<7×10−4
・・・(式II)
領域(例えば血液中や細胞間質中は、水中と比較して粘度が高い領域である)では酸素の拡散速度が遅くなるため、粘度の低い領域と比較して長くなる。光30の光量は、最大許容露光量(Maxium Permissible Exposure;MPEと略すことがある)以下であり、かつ、なるべく大きいものが好ましい。これにより、造影剤14の光退色を効率良く進行させられる。
光学系36は、ミラー6および照射部8から構成される。ミラー6は、光源2から射出された光4、30を照射部8まで導く。照射部8は、レンズ等の光学部品から構成され、この導かれた光4,30を所望の光分布形状の光10に加工して被検体20に照射する。しかしこれに限られず、光学系36は、光源2から射出された光4、30を光源2から照射部8まで伝搬させて導光する光ファイバなどの光導波路から構成されても良い。すなわち、光学系36は、例えば、光4,30を反射するミラーや、光4,30を集光し或いは拡大してその形状を変化させるレンズ、光を拡散させる拡散板などから構成されても良い。しかしこれに限られず、このような光学部品は、光源2から発せられた光4,30を所望の形状に形成して被検体20に照射可能な種々のものを適用できる。なお、光4,30は、レンズで集光させるより、ある程度の面積に広げる方が生体への安全性ならびに診断領域を広げられるという観点で好ましい。
被検体20は、装置100を構成するものではないが、説明の便宜のためここで説明する。被検体20は、生体であり、例えば、人体や動物の乳房や指、手足などの診断の対象部位である。装置100は、人や動物の悪性腫瘍や血管疾患などの診断或いは化学治療の経過観察などに用いられても良い。
吸収体12は、生体由来の非人工のものであり、例えば、被検体20の内部に最初から存在する酸素化ヘモグロビンあるいは還元ヘモグロビンやそれらを含む多く含む血管などである。造影剤14は、被検体20の外部から投与された人工の光吸収体である。なお、造影剤14の換わりに、造影剤のような性質をもつものであって種々の人工の光吸収体が適用されても良い。造影剤14は、光30を吸収することにより自身が光退色する性質を有するものである。造影剤14は、例えば、有機色素等であって、人体に対する透過性が比較的高い近赤外波長領域の光を吸収する性質を有するものが好ましい。この近赤外波長
領域は、600nmから1300nmまでの波長領域である。造影剤14は、例えば、アジン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素であっても良い。あるいは、スチリル系色素、ピリリウム系色素、アゾ系色素、キノン系色素、テトラサイクリン系色素、フラボン系色素、ポリエン系色素、BODIPY(登録商標)系色素、またはインジゴイド系色素であっても良い。造影剤14は、また、インドシアニングリーン(ICG)、Alexa Fluor(登録商標)750などのAlexa Fluor(登録商標)系色素(Life Technologies Japan社製)であっても良い。あるいは、Cy(登録商標)系色素(GE Healthcare社製)、IR−783、IR−806、IR−820(Sigma Aldrich Japan社製)であっても良い。あるいは、IRDye 800CW(登録商標)、IRDye 800RS(登録商標)(LI−COR社製)、ADS780WSであっても良い。あるいは、ADS795WS、ADS830WS、ADS832WS(American Dye Source社製)、DyLight(登録商標)系色素(Thermo Fisher Scientific社製)であっても良い。あるいは、Hilyte Fluor(登録商標)系色素(AnaSpec社製)、またはDY(登録商標)系色素(Dyomics社製)であっても良い。吸収体16は、説明の便宜上、吸収体12および吸収体14をまとめたものと定義し、実際に存在するものは、吸収体12、14である。
本実施形態におけるシアニン系色素は、吸収極大波長におけるモル吸光係数が106M−1cm−1以上であることが好ましい。本実施形態におけるシアニン系色素の構造の例として下記一般式(1)乃至(4)で表わされるものが挙げられる。
18のアルキレン基を表す。 なお、式(1)において、 L21乃至L27は4員環乃
至6員環を形成していてもよい。式(1)において、R28は、−H、−OCH3、−NH2、−OH、−CO2T28、−S(=O)2OT28、−P(=O)(OT28)2、−CONH−CH(CO2T28)−CH2(C=O)OT28、−CONH−CH(CO2T28)−CH2CH2(C=O)OT28、及び−OP(=O)(OT28)2、のいずれかを表す。前記T28は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。式(1)において、R29は、−H、−OCH3、−NH2、−OH、−CO2T29、−S(=O)2OT29、−P(=O)(OT29)2、−CONH−CH(CO2T29)−CH2(C=O)OT29、−CONH−CH(CO2T29)−CH2CH2(C=O)OT29、及び−OP(=O)(OT29)2、のいずれかを表す。前記T29は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。
O3T901、PO3T901、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、または直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基を表す。前記T901は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。式(4)において、R91乃至R94は互いに独立に水素原子、または直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基を表す。式(4)において、A91、B91は、互いに独立に直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。式(4)において、L91乃至L97は互いに独立にCH、またはCR95である。前記R95は、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基、ハロゲン原子、ベンゼン環、ピリジン環、ベンジル基、ST902、または、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。前記T902は、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基、ベンゼン環、または、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。なお、式(4)において、L91乃至L97は4員環乃至6員環を形成していてもよい。式(4)において、R98は、−H、−OCH3、−NH2、−OH、−CO2T98、−S(=O)2OT98、−P(=O)(OT98)2、−CONH−CH(CO2T98)−CH2(C=O)OT98、−CONH−CH(CO2T98)−CH2CH2(C=O)OT98、及び−OP(=O)(OT98)2、のいずれかを表す。前記T98は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。式(4)において、R99は、−H、−OCH3、−NH2、−OH、−CO2T99、−S(=O)2OT99、−P(=O)(OT99)2、−CONH−CH(CO2T99)−CH2(C=O)OT99、−CONH−CH(CO2T99)−CH2CH2(C=O)OT99、及び−OP(=O)(OT99)2、のいずれかを表す。前記T99は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。
探触子22は、光4が被検体20の表面に照射されることにより被検体20の表面部及び内部で発生する音響波を検出する音響波検出器である。探触子22は、この音響波を自身が有する変換素子により受信し、その受信した音響波をアナログ電気信号に変換して信号収集部24に送出するものである。この変換素子は、圧電現象を用いたものである圧電素子(ピエゾ素子)、光の共振を用いたもの、容量の変化を用いたものなど、上記音響波を検出可能な種々のものが適用できる。探触子22は、複数の変換素子が1次元あるいは2次元に配置されたものが好ましい。探触子22は、このような複数の変換素子からなる
多次元配列素子から構成されることで、同時に複数の場所で音響波を検出することができ、検出時間を短縮できると共に、被検体20の振動などによる再構成画像信号への影響を低減できる。
信号収集部24は、アナログ/デジタルコンバータ(以下、「ADC」と称する)、増幅器などで構成される。このADCは、探触子22から送出されるアナログの電気信号を入力し、このアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換し、このデジタル電気信号を増幅器へ送出するものである。この増幅器は、ADCから送出されたデジタル電気信号を所定の利得で増幅し、その増幅したデジタル信号を信号処理部26に送出する。しかしこれに限られず、信号収集部24は、FPGA(Field Programmable Gate Array)チップ等から構成されても良い。信号収集部24は、探触子17から送出されるアナログ電気信号が複数ある場合は、それらのアナログ電気信号を同時にパラレル処理できることが好ましい。信号処理時間の短縮が図れるとともに、画像信号を形成するまでの時間を短縮できるからである。
信号処理部26は、信号収集部24から送出されるデジタル電気信号を順次格納する記憶部と、その格納されているデジタル電気信号を読み出し、その読み出したデジタル電気信号に対して画像再構成処理を行うことで画像信号を生成する再構成部とを有する。信号処理部26は、さらに、温度補正部を有しても良い。温度補正部は、被検体20内の造影剤14が光退色させられる場合に、光30が被検体20に照射されることで被検体20の温度の上昇を、光30の照射エネルギー量から測定する。温度補正部は、その測定値に基づいてデジタル電気信号、画像信号、或いは表示部28により表示される表示画像の画像特徴量である輝度値、コントラストや、或いは強度、デジタル電気信号等を補正する。信号処理部26は、さらに、差分演算を行う演算部を有する。
信号は、各画素値或いは画像特徴量等が2次元状、或いは3次元状に規定されて形成されるものである。この画像特徴量は、輝度値、或いはコントラスト値等であっても良い。この差分演算は、一方の画像信号である1回目の光音響測定に基づく画像信号のある座標の輝度値から、他方の画像信号である2回目の光音響測定に基づく画像信号の座標であって、上記一方の画像信号のある座標と同一の座標の輝度値を減算するものである。この差分演算は、この減算結果に基づいて差分値を取得するものである。差分演算は、さらに、その差分を取る処理を全座標について行うものである。しかしこれに限られず、この差分演算は、以下のものでも良い。すなわち、上記一方の画像信号が形成される前段のメモリに格納されているデジタル電気信号と、上記他方の画像信号が形成される前のメモリに格納されているデジタル電気信号(画像信号の基となる信号)との差分を取るものである。また、1回目の光音響測定の際に取得されたデジタル電気信号のうち造影剤14に起因する信号成分は、1回目の光音響測定と2回目の光音響測定との間のデジタル電気信号の減少分に相当する。よって、この造影剤14に起因する信号成分を取得する方法は、例えば、上記減少分のうち一定値以上の部分を取得するものでも良い。この一定値は、適宜ユーザーにより任意に定められるようにしても良い。
表示部28は、信号処理部26から送出される画像信号を入力し、その画像信号に基づき人間が視認可能な表示画像を形成する。表示部28は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、LEDディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。しかしこれに限られず、表示部28は、装置100とは別体として設けられても良い。
装置100は、上記1回目の光音響測定と2回目の光音響測定との間で光30の照射を被検体20に対して行うことで被検体20内の造影剤14の光退色を行う。被検体20は、この場合、光30の照射により自身の温度が上昇する。その温度上昇は、少なくとも被検体20の音速cおよび体積膨張係数βを増大させる。グルナイゼン係数Γは、この場合、音速cおよび体積膨張係数βの増大に基づいて増大する。
対やサーミスタ等の測温端子を被検体20に刺入して測定する方法がある。非侵襲的な測定方法は、例えば、MRIやマイクロ波CTやラジオメトリ等を使用して測定する方法である。本実施例の上記温度上昇の測定方法は、光30のエネルギーから、被検体20に吸収されるエネルギーと、吸収された分から損失するエネルギーとを見積もり、被検体20の温度上昇を測定するものである。この測定方法は、具体的には、エネルギーの保存に関する微分方程式を解くことにより温度上昇を求めるものである。光30を照射した場合の被検体20の温度上昇は、被検体20の密度ρ、熱容量Cp、被検体20が吸収したエネルギーEa’からなる以下の式3で表わされる。
ΔT=Ea’/(ρCp)・・・(式3)
また、被検体20が吸収したエネルギーEa’は、光吸収体の吸収係数μaおよび光吸収体の位置での光量Φからなる以下の式4で表される。
Ea’=μa・Φ ・・・(式4)
でデジタル電気信号に変換された後、信号処理部26に送出される。そして、送出されたデジタル電気信号が信号処理部26内のメモリに順次格納され、ステップS8に移行する。
演算が全座標について行われ、その比較演算結果が信号処理部26内のメモリに格納され、ステップS22に移行する。しかしこれに限られず、ステップS20では、比較演算の換わりに、1回目の光音響測定に基づく画像信号と2回目の光音響測定に基づく画像信号との差異を反映可能な種々の演算が適用されても良い。例えば、1回目の光音響測定に基づく画像信号の画像特徴量が2回目の光音響測定に基づく画像信号の画像特徴量で除されるようにしても良い。ステップS22で、この全座標における差分値に基づき画像再構成が行われることで、画像信号が形成され、フローを終了する。この場合、この画像信号は、被検体20内部の造影剤14の含有量の減少量に基づいた画像信号であり、延いては実質的に造影剤14由来の音響波のみに基づく画像信号である。また、この画像信号は、吸収体16に基づいた画像信号である1回目の光音響測定に基づく画像信号から、2回目の光音響測定に基づく画像信号の信号成分を除いたものである。すなわち、この画像信号は、実質的に吸収体12のみからの音響波に基づくものである。しかしこれに限られず、温度補正処理が必要のない場合、上記温度補正処理のステップを省略するように装置100が構成されても良い。温度補正処理が必要のない場合とは、例えば、光30の照射によって被検体20の温度が上がりにくい例えば寒冷な環境で装置100を使用する場合、信号処理速度を高めたい場合、あるいは光30の強度が比較的小さい場合等である。
これにより、実質的に吸収体12であるヘモグロビン等のみからの光音響波に基づく画像信号成分から形成される画像信号と、実質的に造影剤14のみからの光音響波に基づく画像信号成分から形成される画像信号とを区別して取得できる。このため、後者の画像信号は、例えば、造影剤14を多く取り込む癌等の被検体20内での位置をより正確に示すものである。癌等の存在位置の輝度値等が特に強調されたものだからである。
また、光30の照射に基づき被検体20の温度が上昇することによって、2回目の光音響測定に基づく画像信号成分への影響を低減することで、上記双方の画像信号をより高精度に取得可能である。
装置100を使用するに当たっては、例えば、以下のようにした。すなわち、光源2は、パルスレーザ光である光4を被検体20であるサンプルに照射する。そして、探触子22が有する変換素子である圧電素子は、その照射によりサンプルから発生した音響波をアナログの電気信号に変換してそれを信号収集部24に送出する。そして、信号収集部24が有する高速プリアンプは、その送出されたアナログの電気信号を増幅するとともにデジタル電気信号に変換し、信号処理部26に送出する。そして、デジタル電気信号の状態を観測するために準備したデジタルオシロスコープは、その送出されたデジタル電気信号を入力して、そのデジタル電気信号の状態を表示するようにした。
、増幅されて形成されたデジタル電気信号を入力して、その入力に基づきデジタル電気信号の状態を表示するものである。光源2は、ガラス容器の外からパルスレーザ光4をポリスチレン製キュベットに照射するようにした。また、フォトダイオードは、デジタルオシロスコープとともに実験用に設けられ、このデジタルオシロスコープにトリガー信号を送出するものである。デジタルオシロスコープは、このトリガー信号を入力し、その入力に基づいてデジタル電気信号の入力を開始する。このフォトダイオードは、パルスレーザ光4がポリスチレン製キュベットに照射されることのより発生する散乱光の一部を検出し、その検出に基づきトリガー信号を送出する。デジタルオシロスコープは、32回平均表示モードとし、パルスレーザ光4の照射回数を32回とし、その32回の照射に基づくデジタル電気信号を取得するようにした。そして取得した32回の照射に基づくデジタル電気信号の平均値を算出するようにした。
これにより、装置100の性能を評価できるとともに装置100が取得するデジタル電気信号の状態を見て取ることができる。
図3Aは、実施例3における退色前後のデジタル電気信号の減少量を光30の照射エネルギー量で規格化したものを示す図である。造影剤14は、滅菌水にICGを溶解させ、1mm吸光セルによる吸光度測定において吸収極大での吸光度が0.4程度となるように調製したものである。その造影剤14は、10Hz、約20ナノ秒のパルス幅のパルス光またはLED連続光が照射されるようにした。そして装置100の操作者は、その照射前後で造影剤14から発生する音響波を変換素子により変換して形成されたアナログ電気信号を測定した。照射前後でのアナログ電気信号の減少量を測定し、その減少量をその光の照射量で規格化し、比較したものを示すものである。図3Aは、この結果、パルス光よりもLEDによる連続光の方が照射前後でのデジタル電気信号の減少量が大きく、造影剤14を光退色させるに当たり連続光が適していることを示すものである。
よって、装置100の光30を出力する光源を、連続光を出力可能なLEDから構成することで、光退色効果を増大させることができる。これにより、実質的に造影剤14のみの音響波に基づく画像信号の取得精度が向上し、延いては、そこに現れる癌等に由来する画像信号の輝度値等の精度が向上する。
図3Bは、実施例4における退色前後のデジタル電気信号の減少量を照射エネルギー量で規格化した図である。造影剤14は、滅菌水へICGを溶解させ、1mm吸光セルによる吸光度測定で吸収極大での吸光度が0.4程度となるように調製して構成したものである。その造影剤14は、10Hz、約20ナノ秒のパルス幅のパルス光が照射されるようにした。照射したパルス光の波長は、それぞれ、710、780、810nmである。そして装置100の操作者は、それらの波長毎における照射前後で造影剤14から発生する音響波を変換素子により変換して形成されたアナログ電気信号を測定した。図3Bは、それらの波長毎における照射前後でのアナログ電気信号の減少量を測定し、その減少量をその光の照射エネルギー量で規格化し、比較したものである。その結果、ICGの吸収スペクトル(黒線)とアナログ電気信号の減少量(白丸)は重なり合う傾向にあることが確認された。光源2は、この場合、造影剤14の光退色を行うに当たり、造影剤14の吸収極大付近の波長のレーザ光を照射可能なものが好ましいことが示された。なお、吸収極大での波長は、吸収極大波長とも称する。
ことを確認した。本図では、光30の照射前のデジタル電気信号の振動中心からの振幅は、照射後のそれよりも大きいものである。なお、デジタル電気信号に変換する前のアナログ電気信号についても同様のことが言える。
図4は、本発明の実施の形態に係る光音響装置の実施例5を示すブロック図であり、図1に対応する部分には同一の番号を付して必要のない限り説明を省略する。また実施例1と類似する構成については四百番台の番号を付すとともにその十の位および一の位に共通番号を付して、必要のない限り説明を省略する。実施例5の光音響装置400(以下「装置400」と略称する)は、光4および光30の発生源をそれぞれ光源402と光源401とに分けた点が装置100と異なるものである。光源402は、光4のみを射出するものであり、光源401は、光30のみを射出するものである。照射部408は、被検体20の側面から照射するものである。これにより、装置100により光30が照射されるときに比べて、被検体20に対してその深さ方向(Z方向)にムラなくかつ全体的に照射光411を照射できる。このため、造影剤14は、被検体20に対する深さ方向についてまんべんなく光退色される。照射光411は、照射部8と同様な構成の照射部408により、光30が広げられて形成されるものである。照射部408は、また、被検体20の側面に沿ってZ方向に移動可能に構成しても良い。これにより、光30から形成される光411を、被検体20に対してよりムラなくかつ全体的に照射可能である。また、照射部408、照射部410、並びに探触子22を移動可能にすることで、より高精度に光音響測定および光退色を行うことが可能である。照射部408は、また、被検体20の周囲に沿って、円を描くように移動しながら連続的に或いは断続的に光411を照射するようにしても良い。そして、光411が、被検体20の周囲全体に照射されるようにしても良い。これにより、造影剤14の光退色の効率が上がり、より高精度に光音響測定および光退色を行うことが可能である。なお、装置400は、照射部408と被検体20との相対移動を行いながら、上記の処理を行うようにしても良い。その他は、装置100と同様である。
図5は、本発明の実施の形態に係る光音響装置の実施例6を示すブロック図であり、図1に対応する部分には同一の番号を付して必要のない限り説明を省略する。また実施例1と類似する構成については五百番台の番号を付すとともにその十の位および一の位に共通番号を付して、必要のない限り説明を省略する。なお、図5の522として示される探触子は、図6の切断線AA’での切断部端面を示すものである。本実施例の光音響装置500(以下、「装置500」と略称する)は、探触子522の構成に特徴を有する。探触子522は、複数の変換素子532、保持体534を有する。保持体534は、略球冠形状に形成されており、その略球冠形状に沿って複数の変換素子532を保持している。変換素子532は、それぞれ最も受信感度の高い方向が集中するように保持されている。本実施例では、複数の変換素子532のそれぞれの最も受信感度の高い方向は、保持体534の略球冠形状の曲率中心を含む領域に向かうものである。変換素子532のアナログ電気信号の出力端は、それぞれ信号配線と接続されている。変換素子532のそれぞれが出力したアナログ電気信号は、それぞれ信号配線が共通接続されて構成される信号線536により合成されるとともに、その信号線536を介して信号収集部24へと送出される。その後の信号処理等は各実施例と同様である。しかしこれに限られず、変換素子532のそれぞれが出力したアナログ電気信号は、それぞれ信号配線が共通接続されて構成される信号線536により合成されずにパラレルに別々の信号として各別に信号収集部24へと送出されるようにしても良い。
向)に光を照射するが、本実施例では、照射部508は、探触子522側から光を照射する(図5の−Z方向に光を照射する)ものである。駆動装置すなわち位置制御部538は、探触子522を移動させるものである。位置制御部538は、例えば、探触子522を螺旋状に移動させるようにし、照射部508は、その螺旋移動により自身が移動する螺旋軌道上の位置であって、光を照射するための任意の位置で光10を照射するようにしても良い。探触子522と一体化されている照射部508は、この場合、位置制御部538による螺旋移動に伴って音響波受信位置(光照射位置)毎に光10を照射しても良い。変換素子532は、この照射に基づく音響波を受信してアナログ電気信号に変換して信号収集部24に送出するようにしても良い。これにより、探触子522と被検体20との間に音響マッチング液が設けられているとき、探触子522の移動に起因する音響マッチング液の揺れに基づく音響波ノイズを低減可能に構成できる。
図7は、実施例7における1回目の光音響測定に基づく画像、2回目の光音響測定に基づく画像、およびその差分の画像を示す図である。
造影剤14は、滅菌水にICGを終濃度1mMとなるように溶解させ、調製したものである。吸収体12は、マウスから採血した血液と滅菌水を体積比で1:1となるように混合させ、調製したものである。吸収体16は、マウスから採血した血液と前記造影剤14を体積比で1:1となるように混合させ、調製したものである。
装置100は、20Hz、約7ナノ秒のパルス幅の光4が照射されるものを使用した。測定容器は、容量1.5mlのマイクロチューブで、サンプル容量は約100μlであった。
装置100の操作者は、吸収体12および吸収体16の1回目の光音響測定を実施し、再構成画像を得た。次に、吸収体12および吸収体16は、光30を10分間照射されるようにした。引き続いて、装置100の操作者は、吸収体12および吸収体16の2回目の光音響測定を実施し、再構成画像を得た。最後に操作者は、1回目の光音響測定に基づく画像と、2回目の光音響測定に基づく画像からOsirix Software(オープンソース)を用いて差分画像を作製した。
図7Aは、この結果、吸収体12(血液のみ)では退色がほとんど起こらないため、1回目と2回目の光音響測定に基づく画像での差分はほとんど観察できないことを示すものである。一方で、図7Bは、吸収体16(血液と造影剤14の混合体)では造影剤14が退色するため、造影剤14の光退色量に応じた差分画像の輝度値が観察できることを示すものである。
よって、造影剤14と血液が混在する場合においても、造影剤14と血液からの光音響信号を区別できることが示された。
AT撮像情報(画像信号)との差分を得ることで、光退色前後での造影剤14からのデジタル電気信号から、その減少量に基づくデータを取得することができる。つまり、各実施例の光音響装置によってヘモグロビン等の吸収体12由来のデジタル電気信号と造影剤14由来のデジタル電気信号とを区別できるものである。これにより、造影剤14が存在する部位である例えば癌を有する部位を特定可能である。例えば、癌は、癌でない部位に比べてより多くの酸素を必要とするため、自身が新たに形成する新生血管により、より多くの血液を取り込むことでより多くの造影剤14を取り込むものだからである。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
Claims (15)
- 第1および第2の光を発生する光源と、
造影剤を含有する被検体に前記光源からの前記第1の光を照射することで前記被検体から第1の音響波を発生させた後、前記造影剤を含有する前記被検体に前記光源からの前記第2の光を照射することで前記被検体内の前記造影剤を退色させるとともに、前記造影剤を退色させた後、前記被検体に前記光源からの前記第1の光を照射することで前記被検体から第2の音響波を発生させる照射部と、
前記第1の音響波を受信して第1の電気信号を出力するとともに、前記第2の音響波を受信して第2の電気信号を出力する受信部と、
前記第1の電気信号に基づいて前記被検体の第1の特性情報を取得するとともに、前記第2の電気信号に基づいて前記被検体の第2の特性情報を取得する取得部と、
を有する光音響装置。 - 前記取得部は前記第1の電気信号に基づいて画像信号を形成することにより前記第1の特性情報である第1の画像信号を取得するとともに、前記第2の電気信号に基づいて画像信号を形成することにより前記第2の特性情報である第2の画像信号を取得する請求項1に記載の光音響装置。
- 前記取得部は前記第1および第2の画像信号に基づいて前記第1の画像信号のうち退色する前の前記造影剤から発生した音響波に起因する信号成分に基づく第3の画像信号をさらに取得する請求項2に記載の光音響装置。
- 前記取得部は前記第1の画像信号と前記第2の画像信号との差異に基づいて前記第3の画像信号を取得する請求項3に記載の光音響装置。
- 前記取得部は前記第1の画像信号の画像特徴量と前記第2の画像信号の画像特徴量との比較演算を行うことにより前記第3の画像信号を取得する請求項4に記載の光音響装置。
- 前記比較演算は差分演算である請求項5に記載の光音響装置。
- 前記取得部は前記第1の画像信号の画像特徴量と前記第2の画像信号の画像特徴量との比に基づいて前記第3の画像信号を取得する請求項4に記載の光音響装置。
- 前記照射部は前記第2の光を照射することにより、活性酸素種の発生および前記被検体における光照射部位の温度上昇のうち少なくとも一方を生じさせるものである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光音響装置。
- 前記第2の光の波長は前記造影剤の極大吸収波長より50nmだけ短い波長から前記極大吸収波長より50nmだけ長い波長までの範囲内の波長である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光音響装置。
- 前記第2の光はパルス光であり、
前記第2の光のパルス間隔は前記造影剤の三重項励起状態緩和時間よりも短い時間である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光音響装置。 - 前記第2の光のパルス間隔は0.7ミリ秒以下である請求項10に記載の光音響装置。
- 前記第2の光のパルス幅の値をτとするとともに前記第2の光の周波数の値をfとすると、前記τおよびfが下記式(II)を満たす請求項10または11に記載の光音響装置
。
(1−τ・f)/f<7×10−4 ・・・(式II) - 前記受信部は前記第1及び第2の音響波を受信してそれぞれ前記第1及び第2の電気信号を出力する複数の変換素子と、前記複数の変換素子を保持するとともに略球冠形状の保持体とを有し、
前記照射部は前記受信部と一体化される請求項1乃至12のいずれか1項に記載の光音響装置。 - 前記取得部は前記第1及び第2の電気信号をデジタル変換することによりそれぞれ第1および第2のデジタル電気信号を生成するとともに、前記第1および第2のデジタル電気信号に基づいてそれぞれ前記第1及び第2の特性情報を取得し、
前記第2の光が前記被検体に照射されることにより前記被検体の温度が上昇するときに、前記被検体の温度が上昇しないときの前記第2のデジタル電気信号または前記第2の特性情報の値に近づくように、前記第2の光の照射による前記被検体の温度の上昇量に基づいてそれぞれ前記第2のデジタル電気信号または前記第2の特性情報を補正する温度補正部をさらに有する請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光音響装置。 - 前記温度補正部は前記第2のデジタル電気信号または前記第2の特性情報を補正するにあたり、照射された前記第2の光のエネルギー量に基づいた前記被検体の温度上昇により変化した前記被検体の音速および体積膨張係数を前記温度上昇がないときの前記被検体の音速および体積膨張係数に近づくように補正する請求項14に記載の光音響装置。
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