JP2017108964A - 被検体情報取得装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】造影剤を用いた光音響トモグラフィーにおいて、コントラストの高い画像を取得できる装置を提供する。【解決手段】光源と、光源からの光が造影剤を含む被検体に照射されたときに発生する音響波を受信して電気信号に変換する音響波検出手段と、被検体に含まれる造影剤に由来する造影剤由来信号を被検体から検出する造影剤由来信号検出手段と、処理手段を有し、処理手段は、被検体内部の造影剤の濃度情報を取得し、濃度情報が所定の第一の閾値よりも低いときに受信された音響波から変換された電気信号と、濃度情報が第一の閾値よりも低いときに得られた造影剤由来信号の少なくともいずれかを用いて、被検体内部の造影剤の分布を示す画像データを生成することが可能だと判定する被検体情報取得装置を用いる。【選択図】図5

Description

本発明は、被検体情報取得装置に関する。
医療分野において、光を用いて生体などの被検体をイメージングする技術の一つとして、光音響トモグラフィー(PAT:Photoacoustic Tomography)が研究されている。光音響トモグラフィーを利用した光音響装置は、光源から生体に光を照射し、生体内で伝播・拡散したパルス光のエネルギーを吸収した生体組織から発生した音響波を検出する。そして、得られた信号に数学的解析処理(画像再構成処理)を施し、被検体内部の光学特性値に関連した情報を可視化する。これにより、初期音圧および光学特性値、ならびにそれらの分布を取得し、生体内の吸収体の分布や悪性腫瘍場所の特定などに利用できる。
PATにおいて、被検体内の光吸収体から発生する音響波の初期音圧P0はの数式(A)で表される。
P0=Γ・μa・Φ ・・・(A)
ここで、Γはグルナイゼン係数であり、体積膨張係数βと音速cの2乗の積を定圧比熱Cpで割ったものである。Γは被検体が決まれば、ほぼ一定の値を取る。μaは光吸収体の吸収係数である。Φは光吸収体の位置での光量、すなわち光吸収体に照射された光量であり、光フルエンスとも呼ばれる。
光音響装置は、被検体内の光吸収体で発生し、被検体表面まで伝播した音響波の初期音圧P0を検出する。この音圧の時間変化を測定し、バックプロジェクション法等の画像再構成手法を適用することで、初期音圧分布P0を算出できる。さらに、初期音圧分布P0をグルナイゼン係数Γで除することにより、μaとΦの積の分布、つまり光エネルギー密度分布を得られる。また、何らかの手法で被検体内の光量分布Φを求めれば、光エネルギー密度分布を光量分布Φで除することで吸収係数分布μaを得られる。
光音響トモグフラフィーを生体に適用する場合、血液中のヘモグロビンが近赤外光を良く吸収することを利用して、血液の空間分布を画像化できる。また、複数の波長の光を用いれば、酸素飽和度分布を画像化できる。近年、この原理を用いて、小動物の血管像のイメージングや、乳がん、前立腺がん、頸動脈プラークなどの腫瘍組織の診断への応用が研究されている。
また、被検体に、照射光への光学特性が既知の吸収体を造影剤として投与すると、その造影剤の存在量に応じた音響波を検出できる。これにより画像コントラストを改善して、特性情報の精度を向上させる試みもなされている。
特許文献1に記載の技術では、光音響信号計測により、光音響造影剤を投与して関心領域の信号が最大に達する時間が事前に決定される。そして、決定された時間で造影CTスキャンの撮影を実施される。
一般に腫瘍組織では、周囲から積極的に栄養や酸素の供給を受けるために、新生血管が盛んに形成される。しかしその反面、腫瘍組織の新生血管ではペリサイトなどの血管構造が未成熟である。その結果、新生血管では、通常の血管に比べて物質透過が起こりやすい(血管透過性が高い)特性があると考えられている。このような特性はEPR(Enhanced Permeability and Retention)効果と呼ばれる。
EPR効果を利用して腫瘍組織に到達した造影剤のイメージングをする場合、造影剤は静脈などを介して血中に投与され、血中を巡って体内を循環した後に、拡散等により新生血管を含む腫瘍組織へと到達する。そのため、血中造影剤濃度は、腫瘍組織への造影剤到達量に大きな影響を与える。
特表2014−520141号公報
EPR効果によって腫瘍組織に造影剤を効率的に到達させるためには、造影剤がある程度の時間の間、一定以上の血中濃度を保持する性質、すなわち、血中滞留性を有することが求められる。具体的には、造影剤が、血管壁などへの非特異的な付着や、腎臓や肝臓などによる排泄が、投与後即座には起こらない必要がある。一般に、血中滞留性を高めるためには、造影剤の大きさや表面電荷などを調整して材料物性を変化させることが行われる。具体的にはアルブミンやIgGなどの血清由来蛋白質や、ポリエチレングリコールなどの水溶性の合成高分子などを、体内動態を制御するためのキャリアとして選択することで、造影剤の血中滞留性が向上する。
造影剤の血中滞留性が向上すれば、EPR効果によって腫瘍組織に到達する造影剤量が増えるので、腫瘍組織の画像コントラストも向上する。しかし一方で、光音響信号取得時に多くの造影剤が血中に残存していると、画像コントラストが低下する原因ともなる。そのため、腫瘍組織に集積した造影剤を高いコントラストで画像化するためには、血中を循環している造影剤がなるべく少なくなった時点で本撮影を実施する必要がある。しかし、一方で造影剤を投与後に時間経過とともに腫瘍組織に集積した造影剤も減少するという課題も存在する。そこで、血中および腫瘍組織中の造影剤の存在量が適切なタイミングで本撮影を実施する必要がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、造影剤を用いた光音響トモグラフィーにおいて、コントラストの高い画像を取得することにある。
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、光源と、前記光源からの光が造影剤を含む被検体に照射されたときに発生する音響波を受信して電気信号に変換する音響波検出手段と、前記被検体に含まれる造影剤に由来する造影剤由来信号を前記被検体から検出する造影剤由来信号検出手段と、処理手段と、を有し、前記処理手段は、前記被検体内部の前記造影剤の濃度情報を取得し、前記濃度情報が所定の第一の閾値よりも低いときに受信された音響波から変換された前記電気信号と、前記濃度情報が前記第一の閾値よりも低いときに得られた前記造影剤由来信号の少なくともいずれかを用いて、前記被検体内部の前記造影剤の分布を示す画像データを生成することが可能だと判定することを特徴とする被検体情報取得装置である。
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、光源と、前記光源からの光が造影剤を含む被検体に照射されたときに発生する蛍光を受信して電気信号に変換する蛍光検出手段と、前記被検体に含まれる造影剤に由来する造影剤由来信号を前記被検体から検出する造影剤由来信号検出手段と、処理手段と、を有し、前記処理手段は、前記被検体内部の前記造影剤の濃度情報を取得し、前記濃度情報が所定の第一の閾値よりも低いときに、前記造影剤由来信号と前記電気信号の少なくともいずれかを用いて前記被検体内部の前記造影
剤の分布を示す画像データを生成することが可能だと判定する前記濃度情報が所定の第一の閾値よりも低いときに受信された蛍光から変換された前記電気信号と、前記濃度情報が前記第一の閾値よりも低いときに得られた前記造影剤由来信号の少なくともいずれかを用いて、前記被検体内部の前記造影剤の分布を示す画像データを生成することが可能だと判定することを特徴とする被検体情報取得装置である。
本発明によれば、造影剤を用いた光音響トモグラフィーにおいて、コントラストの高い画像を取得できる。
実施形態に係る、光音響装置を示す図 ICG―PEGの時系列的な血中濃度推移の一例を示す図 ICGの時系列的な血中濃度推移の一例を示す図 ICG―PEGとICG―HSAの時系列的な腫瘍集積率推移を示す図 実施形態に係る、被検体画像取得のフローを示す図 実施形態に係る、光音響装置の信号処理部を示す図 実施形態に係る、被検体情報取得装置を示す別の図
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状およびそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。よって、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
本発明は、被検体から伝搬する音響波を検出し、被検体内部の特性情報を生成し、取得する技術に関する。よって本発明は、被検体情報取得装置またはその制御方法、あるいは被検体情報取得方法や信号処理方法として捉えられる。本発明はまた、これらの方法をCPUやメモリ等のハードウェア資源を備える情報処理装置に実行させるプログラムや、そのプログラムを格納した記憶媒体としても捉えられる。
本発明の被検体情報取得装置は、被検体に光(電磁波)を照射し、光音響効果に従って被検体内または被検体表面の特定位置で発生して伝播した音響波を受信(検出)する、光音響トモグラフィー技術を利用した光音響装置を含む。このような被検体情報取得装置は、光音響測定に基づき被検体内部の特性情報を画像データ等の形式で得ることから、光音響イメージング装置とも呼べる。
光音響装置における特性情報とは、光照射によって生じた音響波の発生源分布、被検体内の初期音圧分布、あるいは初期音圧分布から導かれる光エネルギー吸収密度分布や吸収係数分布、組織を構成する物質の濃度分布を示す。具体的には、酸化・還元ヘモグロビン濃度分布や、それらから求められる酸素飽和度分布などの血液成分分布、あるいは脂肪、コラーゲン、水分、グルコース、メラニンの分布、さらに外部から投与した造影剤の集積や濃度分布などである。また、特性情報は、数値データとしてではなく、被検体内の各位置の分布情報として求めてもよい。すなわち、吸収係数分布や酸素飽和度分布などの分布情報を被検体情報としてもよい。光音響波に由来する特性情報は、被検体内部の物質に起因する機能の違いを示す機能情報とも呼べる。
本発明でいう音響波とは、典型的には超音波であり、音波、音響波と呼ばれる弾性波を含む。探触子等により音響波から変換された電気信号を音響信号とも呼ぶ。ただし、本明細書における超音波または音響波という記載は、それらの弾性波の波長を限定する意図で
はない。光音響効果により発生した音響波は、光音響波または光超音波と呼ばれる。光音響波に由来する電気信号を光音響信号とも呼ぶ。
本発明の装置は、人や動物の悪性腫瘍や血管疾患などの診断や、化学治療の経過観察などを主な目的とする。よって被検体としては、人体や動物などの生体の各部位(乳房、指、手、足など)が想定される。装置は、被検体内部にある光吸収体(血液中の酸化・還元ヘモグロビン、血液を多く含む血管、外部から導入した造影剤など)や、被検体表面の光吸収体(メラニン等の色素)を画像化する。
本発明でいう「本撮影」とは、光音響信号を取得する工程、および、取得した光音響信号を用いた再構成処理により被検体内部の造影剤の特性情報を画像化する工程を含む。さらに表示工程を含む場合もある。閾値判定を行うために取得した光音響信号を基に画像化を行う場合のように、閾値判定用に光音響信号を取得する工程が、結果的に本撮影の一部を構成することもあり得る。
<実施形態1>
(被検体情報取得装置)
図1を参照しながら本実施形態の装置構成を説明する。装置は、光源11、光学系13、音響波検出部17、信号収集部18、信号処理部19、表示装置20を有する。基本的な処理の流れとして、まず光源11から発せられた光12が光学系13を経由して、被検体15に照射される。被検体15は、投与された造影剤を含有している。音響波検出部17は、造影剤やその他の光吸収体101から発生した光音響波16を検出して電気信号に変換する。電気信号は、信号収集部18、信号処理部19などでの処理により特性情報に変換され、表示装置20に表示される。
(造影剤の循環)
本発明では、造影剤を投与した被検体から、循環血領域に存在する造影剤の濃度情報を取得する。本明細書において、循環血とは、通常の血管内に存在する血液という意味である。また通常の血管とは、通常の生体組織に血液を循環させる血管のことを指す。ここで、毛細血管や、腫瘍組織中に存在する新生血管等の血圧や血流パラメータは、通常の血管とは大きく異なる。そこで本明細書では、循環血と、毛細血管や新生血管中の血液とを区別する。循環血は、流速が比較的速いという特徴を持つ。これは、通常の血管の断面積が毛細血管や新生血管より広いためである。なお、本明細書中では、循環血領域のことを、単に血中または血管内という言葉で表すことがある。
図2、図3は、造影剤をワンショット投与されたヌードマウスから複数回採血を行って得られた造影剤濃度推移情報を示すグラフである。縦軸は血中の造影剤濃度、横軸は投与後の経過時間を示す。なお、横軸の開始時点は、造影剤投与後少し時間が経過し、造影剤が血中に行き渡ったタイミングである。
図2には、吸収体量として20ナノモル相当の造影剤をヌードマウスの尾静脈に投与した後の血中造影剤濃度の推移を示す。造影剤としては、シアニン系色素であるインドシアニングリーン誘導体を、合成高分子である分子量20kDaのポリエチレングリコール(PEG)に共有結合させたもの(以下、この造影剤を「ICG−PEG」と呼ぶ)を用いた。
一方、図3は、造影剤として低分子材料であるインドシアニングリーン(ICG:Indocyanine Green)を用いた場合の濃度推移を示す。図2と図3を比較すると、ICG−PEGの血中造影剤濃度は投与後20時間を超えてもμMレベルを維持しているが、ICGの濃度は投与5分後で2μMを下回る。これらの結果から、PEGの分
子構造は、ICGに対して極めて高い血中滞留性を付与することが分かる。
さらに、体内を循環した造影剤は、新生血管領域を含む腫瘍組織へと到達する。この時の循環血領域から腫瘍組織への造影剤の物質移動は、受容体への特異的な結合等が特に無い場合においては、組織への非特異的な吸着や拡散が支配的になると考えられる。このことから、造影剤が高い血中濃度を維持するような分子設計を行うことで、濃度勾配による物質拡散が有利に働く結果、造影剤の腫瘍集積性が高まると期待される。
(循環血領域の特定)
循環血領域を特定する方法を述べる。循環血領域特定の第一の方法として、光音響の本撮影を行う対象である、被検体内の関心領域(ROI:Region of Interest)の中から循環血領域を決定する方法がある。具体的には、光音響信号を解析して、ヘモグロビン(Hb)に代表される血液由来信号成分を取得することで、関心領域中の血管位置を特定できる。他には、超音波ドップラー法などの公知の方法によっても、関心領域中の循環血領域を決定できる。
循環血領域特定の第二の方法として、本撮影時のROIとは異なる観察領域を設ける方法がある。ここで「ROIとは異なる観察領域」とは、本撮影時のROIと同一ではない空間領域を指す。ただし「ROIとは異なる観察領域」が、本撮影時のROIの一部もしくは全部を含んでいても良い。観察領域としては、表在血管を含む被検体領域、例えば皮膚、眼、耳、頸動脈、マウスの尾静脈などが好適である。
(造影剤濃度の取得)
被検体の循環血領域の信号を測定することにより循環血中の造影剤の濃度情報を取得する方法を述べる。なお、循環血領域が予め分かっている場合、造影剤を投与後に循環血に対応する大静脈等から血液を採取して、その血液中に含まれる造影剤濃度を検出する手法も採用し得る。
造影剤濃度情報は、検出システムで取得される。検出システムは、光源と、循環血領域中における造影剤由来信号を取得する造影剤由来信号検出部と、取得した造影剤由来信号を造影剤濃度情報に変換する信号処理部とで構成される。造影剤由来信号検出部が造影剤由来信号を取得する方法は問わない。例えば、光音響信号や蛍光信号を用いる、光学的な検出手法が特に好適である。光音響信号から造影剤由来信号を取得する場合、音響波検出部が造影剤由来信号検出部を兼ねても良い。造影剤由来信号検出部は、本発明の造影剤由来信号検出手段に相当する。
一方、本撮影時のROIとは別の観察領域を設ける場合や、循環血中の造影剤の蛍光信号を取得する場合、音響波検出部とは別の造影剤由来信号検出部を設けても良い。また、実際に血液を採取して造影剤濃度を取得する場合、検出システムは、採血により取得した濃度の入力を受け付ける入力部や、自動的に血液を分析する機構と、信号処理部とで構成される。
造影剤由来信号を光音響信号に基づいて取得する具体的方法を述べる。造影剤の光吸収特性が、被検体内の他の構成物の光吸収特性と大きく異なる場合、造影剤由来の光音響信号の分離可能性が高くなる。その場合、光源から、造影剤が特徴的に吸収する波長の光を照射することで、造影剤由来信号(光音響信号)が得られる。この光音響信号を用いた画像再構成により、造影剤の分布情報が得られる。ここで得られる造影剤の空間的な分布情報を、被検体の可視光像と重ね合せることで、皮膚等の体表血管の空間位置におけるROI内の造影剤信号を取得できる。
一方、造影剤の光吸収特性と、被検体内の他の構成物の光吸収特性との違いが大きくない場合、造影剤由来信号を他の成分から分離する必要がある。その場合、複数の波長の光を被検体に照射して得られる複数系列の光音響信号を用いて、造影剤由来信号と他の光吸収体由来信号を分離する。分離対象の吸収体として、生体に内在するヘモグロビンやメラニンがある。以後、これら内在性の吸収体に由来する信号をヘモグロビン等由来信号と呼ぶ。ヘモグロビン等由来信号を分離する場合、互いに異なる複数の波長のそれぞれに由来する信号値と、ヘモグロビンの光吸収特性を用いた演算を行う。
この信号分離演算の際には、造影剤とヘモグロビンでは光吸収特性(波長吸収スペクトル)が異なることを利用して、2つの波長で得られた信号強度が比較される。例えば、造影剤とヘモグロビン等由来信号を検出し得る波長1と、ヘモグロビン等由来信号のみを検出し得る波長2で計測を行って、波長1から波長2を差し引く方法がある。また別の例として、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、造影剤の3成分に対応する3波長の光を照射し、連立方程式を立てて造影剤由来信号を抽出する方法がある。さらに別の一例として、ヘモグロビンおよび造影剤のそれぞれのスペクトル信号にSpectral Unmixing法などの解析手法を適用する方法がある。
複数波長での演算処理を行う場合、光量などの基本的なパラメータを波長間で規格化することが好ましい。さらに、光音響信号を再構成する場合には、各単位領域(ボクセルやピクセル)において、異なる波長で取得した複数の光吸収体分布信号を用いた演算処理を前述のように行って、ヘモグロビン等由来信号を除去する。その結果、造影剤由来信号に基づく空間分布情報を取得できる。
続いて、信号処理部が、造影剤由来信号を循環血中での造影剤濃度情報に変換する。そのために、予め、血中の造影剤濃度に対する信号強度情報を記憶モジュールにルックアップテーブル(LUT)や数式として格納しておくと良い。LUT作成の一例としては、造影剤を個体に投与したのち時系列的に循環血領域の信号取得と採血を行い、循環血中に含まれる造影剤の濃度変化と信号との対応関係を記録する。このように、造影剤由来信号の強度を時系列的に測定して造影剤濃度と対応付けることで、造影剤濃度と信号強度を対応付けたテーブルを作成できる。
LUT作成用の個体は、測定対象と同一個体であることが望ましい。ただし、測定対象と同種の別個体でも良い。また、複数の個体の情報に基づく統計的な値を用いてもよい。なお、濃度推移の個体差が大きい造影剤の場合、個体ごとにLUTを保持しておくことで、造影剤濃度が測定に適した値になる時間を推定できる。また、年齢、性別、体格、系統などに応じたテーブルを作成してもよい。さらに、既定のファントムや採取した血液などに規定量の造影剤を入れてその信号を取得する方法でも、造影剤濃度と信号強度の対応を示すLUTを作成できる。LUTを用いることで、システムの簡易化や処理時間の短縮が期待できる。ただし、数式を用いる方法でも構わない。なお、造影剤濃度情報を光音響信号に基づいて取得する場合、同じ光音響信号を特性情報取得のために用いてもよい。
(造影剤濃度情報の判定)
取得された循環血中での造影剤濃度に基づいて、本撮影への移行可否を判断する。具体的には、循環血中の造影剤濃度が所定の閾値を下回った場合に本撮影が実行される。この閾値は、腫瘍組織をコントラスト高く画像化できるかどうかにより定められる。造影剤投与ののち、循環血中の造影剤濃度は、血中クリアランス作用により時間経過とともに減少する(図2を参照)。このような血中濃度推移の傾向は、造影剤の構成材料によっても異なる。そのため、上記の所定の閾値も、造影剤ごとに設定される。
図4に、ICG−PEG(実線)およびICG−HSA(破線)の経時的な腫瘍集積率
の推移の一例を示す。なお、ICG−HSAは、シアニン系色素であるインドシアニングリーン誘導体を、ヒト血清由来アルブミン蛋白質(HSA)に共有結合させたものである。ここで、グラフの縦軸の腫瘍集積率(%ID/g)とは、投与した光吸収材料のうち腫瘍組織に集積した光吸収材料の割合を、組織1gあたりで算出したものである。
ICG−PEGもICG−HSAも、投与後徐々に腫瘍集積率が上昇していき、投与24時間後に10%ID/g以上に達する。これは造影剤がEPR効果により循環血から腫瘍組織へと移行したためだと考えられる。このような造影剤集積状況下で光音響測定を行った場合、造影剤投与前の光音響測定と比べて、2倍以上の光音響信号強度が得られる。なお、低分子化合物であるICGのみを造影剤として用いた場合、投与後24時間経過時点で、循環血中での造影剤の存在や、腫瘍組織中での造影剤集積は確認できない。
ここで、図2は血中造影剤濃度がピークに達した時点から開始していることを考慮したとしても、血中造影剤濃度は、投与から数時間後よりも24時間後の方が低下している。造影剤画像中のコントラストは、腫瘍に集積した造影剤量(濃度)に対する血中造影剤量(濃度)に影響されるため、投与から24時間後の方が高いコントラストの画像を得られる。これは、血中の造影剤よりも腫瘍に移行した造影剤のほうが抜けにくいためである。一方で投与後24時間を超えると、腫瘍集積率も徐々に低下していく。そのため、図4の例においては、投与後、略24時間が経過した時点が、本撮影のための光音響信号を取得する適切なタイミングだといえる。
(閾値の決定)
次に、造影剤濃度の所定の閾値を決定する方法を説明する。本実施例では、担がんマウスモデル腫瘍部での造影剤の腫瘍集積率と、その領域から得られる光音響信号との関係から、信号増強のゲインを設定する。例えば、腫瘍部での吸収係数を文献値に基づき0.11(/cm)と設定する。この場合に、造影剤投与後に、投与前の2倍の強度の信号を得る(+6dBのゲインを得る)ためには、およそ7%ID/gの腫瘍集積率が必要だと試算される。よって、このような腫瘍集積率を持つ造影剤であれば、信号強度を2倍以上に増強できる。言い換えると、造影剤の腫瘍集積率が7%ID/g以上のときに本撮影用の光音響信号を取得するとよい。
具体的な閾値決定法の一例を述べる。ここでは、皮下に腫瘍を移植したマウスモデルに対して20ナノモルの造影剤(ICG−PEG)を投与して、投与24時間後で10%ID/gの腫瘍集積率が得られた場合を想定する。この場合、標準的なサイズの腫瘍塊中での造影剤の平均集積濃度は、数μM程度となる。また文献等から、腫瘍組織中の血管密度は数%程度だと見積もられる。これらの数値と図2とから考えると、投与から24時間後に本撮影を実施するかどうかの判断基準となる造影剤濃度の閾値を、前記の腫瘍集積率(10%ID/g)とすることが好ましい。すなわち、投与後24時間で造影剤血中濃度が低下してこの閾値を下回った場合に本撮影が実施される。
さらに、ICG−PEG投与から略24時間が経過した時点における別の好適な閾値として、15%ID/g(血中濃度として5μM)を設定できる。血中濃度がこの閾値以下に低下した場合、本撮影によりコントラストの高い造影剤画像を生成できる。また、ICG−HSAもICG−PEGと同等の腫瘍集積率の経時変化を示すことから、同様な閾値を設定できる。
(閾値の別の例)
また、本撮影の可否判定用の閾値として、音圧比を用いることも可能である。ここで、造影剤投与後に血中濃度が最高値に達した時点で得られる音圧を最大音圧値とする。そして例えば、音圧値がこの最大値に対して約30%の値になった時点(増強度が−9dBに
なった時点)で本撮影を実施する。この場合の閾値は−9dBとなる。
また、腫瘍領域と循環血領域とを分けて音響信号を取得する場合には、両領域での造影剤由来信号の音圧比に基づいて判断を行ってもよい。例えば、両領域での造影剤濃度が同等になった時点で本撮影を行う場合、閾値は1倍(+0dB)と設定される。高コントラストな画像を得るためには、循環血中の造影剤濃度ができるだけ低く、かつ腫瘍領域に多くの造影剤が残留しているときに本撮影を行う。
また、受信した音響波に基づいて光音響信号強度情報や画像を生成して閾値決定に利用してもよい。例えば、それらの信号や画像の強度比、差分、減少割合、絶対強度などを利用できる。また、循環血中の造影剤の存在を光音響測定以外の手法(例えば蛍光測定)で確認する場合にも同様に、測定値に基づき閾値を決定できる。この場合にも、造影剤の最高濃度に基づく基準値や、組織中での絶対濃度に対する信号強度比、差分、減少割合、絶対強度などを閾値として利用できる。
循環血中に高濃度の造影剤が存在すると、画像のコントラストが低下する。そこで上記のような閾値を設定しておき、血中造影剤濃度が閾値を下回ったことを確認して本撮影することで、腫瘍組織に集積する造影剤を効率的かつ高コントラストに画像化できる。
(第二の閾値判定)
ここまでは、設定する閾値が1個の場合について述べた。しかし、本撮影に入るための閾値を複数個設定してもよい。具体的には、先述の第一の閾値判定に先立って、造影剤投与直後に血中濃度が十分に増加していることを確認するための第二の閾値判定を実施する。
第二の閾値判定を実施することにより、造影剤血中濃度の上昇が起こったことを確認できる。さらに、造影剤投与が失敗したり、不十分だったりする場合や、被検体の個体差などの影響で投与直後に想定通りの血中造影剤濃度が得られない場合でも、そのことを把握可能になる。その結果、血中濃度が不十分であることによって生じる腫瘍組織への造影剤集積低下(画像コントラスト低下)の影響を抑制できる。第二の閾値判定の結果に応じて、本撮影を中止したり、造影剤を再投与させたりしてもよい。再投与が必要な場合、その旨を音声や画像等で提示することが好ましい。
図2や図4によれば、ICG−PEGの腫瘍集積率は、造影剤投与2〜6時間後の時点で10%ID/g以上(血中濃度として5μM以上)に達すると期待される。そこで、この値を第二の閾値として設定できる。そして、造影剤投与後に第二の閾値を上回り、かつ、第一の閾値を下回るという2回の閾値判定を満たすことで本撮影へと進むことになる。
(造影剤濃度推移を用いる方法)
さらに別の判定方法として、循環血中の造影剤濃度推移情報を取得して、既知造影剤濃度推移情報と比較する方法がある。既知造影剤濃度推移情報は、造影剤を個体に投与したのち時系列的に採血して、循環血中に含まれる造影剤の濃度変化を記録することで得られる。取得した濃度変化を時間と対応付けて、情報処理装置のメモリ等の記憶手段にLUTなどの形で格納しておく。LUT作成用の個体は、光音響測定対象と同一個体であることが望ましい。ただし別個体でも良い。また、複数の個体の時系列情報に基づく統計的な値を用いてもよい。また、年齢、性別、体格、系統などに応じたテーブルを作成してもよい。
循環血中の造影剤濃度推移情報と既知造影剤濃度推移情報とを比較する際には、既知造影剤濃度推移情報を時間の回帰関数などで近似すると、比較が容易になる。また好ましく
は、相互相関係数を用いて、両者の類似度合いを求めると良い。相互相関係数とは数式(B)で定義される比較群の類似度合を示す指標である。具体的な相互相関係数の算出の一例として、下記の方法がある。ここで血中濃度から得られた任意時刻での信号値情報(本発明における情報B)をX(X1、X2、X3、…)、前記任意時刻に対応してLUTから得られる信号値の時間推移情報(本発明における情報A)をY(Y1、Y2、Y3、…)とおく。このとき、両者の情報から、数式(B)の通り相互相関係数r(xy)を算出可能になる。
Figure 2017108964
上式は、XとYの情報のそれぞれの平均値からの差を算出して、両者の傾向からXとYの類似度を算出する方法である。両者の傾向がある場合には値は+1に、特定の傾向が無い場合には0に、反対に逆の傾向がある場合には−1にそれぞれ近付くことになる。相互相関係数を算出する際に、信号取得の関係で情報XとYとの時間推移情報にズレが発生する場合には、予め位相補償処理を行った上で両者の相互相関係数を求める操作を行っても構わない。この場合、相互相関係数の閾値として例えば、0.4を設定すれば、両者が0.4以上の相互相関係数を持つような信号あるいは単位領域は、十分に類似度が高いと判断できる。
造影剤濃度推移情報を用いれば、本撮影に入るタイミングを精度よく決定できる。類似度判定によって循環血中の造影剤が低下するタイミングを推測することによって、直前の閾値判定を省略することもできる。もちろん本撮影前に音圧強度を再度取得して、循環血中の造影剤濃度が十分に低下したことを実際に確認しても構わない。なお、投与後、比較的短い期間(例えば投与後3時間以内)の造影剤濃度推移をLUTと比較することで、造影剤血中濃度が本撮影に適したレベルまで低下するタイミングを推定することもできる。この推定されたタイミングを音声や画像により表示することも好ましい。これにより、被検者をいったん帰宅させて負担を軽減することも可能になる。
(本撮影タイミング)
本発明で例示したICG−PEGやICG−HSAに代表されるEPR型の造影剤の場合、造影剤投与後に腫瘍に対して十分な量の集積が見られる時間範囲内であれば、本撮影のタイミングを任意に設定できる。すなわち、腫瘍に集積した造影剤量が適正範囲内(例えば7%ID/g)に収まるような時間範囲内であれば、本撮影のための光音響信号取得はいつ開始してもよい。なお本実施例の造影剤の場合、典型的には、投与後、5時間経過後から80時間経過するまでの間に本撮影を行うと良い。ただし図4によれば、ICG−HSAは投与後48時間を過ぎると腫瘍での集積量が減少する。よって、ICG−HSAの場合は、投与後48時間以内の本撮影が望ましい。
ところで、投与してから本撮影までの時間が短すぎたり、長すぎたりすると、実際の利用上の制約が大きくなることが予想される。例えば、装置や施設使用上の制約や、被検者の負担の問題がある。そのような観点も含めて判断すると、一般的には、本撮影のための
光音響信号取得開始時間としては投与後48時間以内、より好ましくは投与後24時間以内程度が望ましい。同様に本撮影の可否判断をするための閾値設定も、造影剤投与後24時間以内程度で設定されることが望ましい。
(好ましい装置構成)
続いて、装置の各構成要素について詳細に説明する。
(光源)
被検体が生体の場合、光源からは、生体に含有される特定の成分(例えば血液や光音響用造影剤などの光吸収体)に吸収される特定の波長の光を照射する。光源としては、数ナノ秒〜数百ナノ秒オーダーのパルス光を発生可能なパルス光源が好ましい。光源としてはレーザが好ましい。ただし、発光ダイオードやフラッシュランプなども利用できる。レーザとして例えば、固体レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、半導体レーザを使用できる。なお、複数の光源や複数の射出端を用いることで、光の照射強度の向上、照射領域の拡大、照射分布の均一化などの効果が得られる。
また、光学特性値分布の波長による違いを測定するために、複数の波長の光を照射可能であることが好ましい。そのために、発振波長の互いに異なる複数の光源を用いる方法や、波長可変レーザを用いる方法がある。波長可変レーザとしては、発振する波長を変換可能な色素やOPO(Optical Parametric Oscillators)を用いたレーザ装置が好適である。
照射光の波長は、生体内で吸収されにくい700nm〜1100nmの領域が好ましい。ただし、比較的生体表面付近を測定する場合は、より広い波長領域(例えば400nm〜1600nm)を使用できる。光パルス同士の時間幅は、光吸収体に吸収エネルギーを効率に閉じ込めるために、熱・ストレス閉じ込め条件が当てはまる程度にすることが好ましい。典型的には1ナノ秒から200ナノ秒程度である。
(光学系)
光学系13としては、光を所望の光分布形状に加工しながら被検体に導くことができれば、どのような部材を用いてもかまわない。例えば、レンズ、ミラー、プリズムなどの光学部品、光ファイバなどの光導波路、光拡散板などが利用できる。
(造影剤)
本明細書で造影剤とは、主として、光音響信号分布のコントラスト(SN比)を改善する目的で、外部から被検体に投与される光吸収体を指す。ただし造影剤には、光吸収体そのもの以外に、体内動態を制御する材料を含み得る。体内動態を制御する材料として例えば、アルブミンやIgGなどの血清由来たんぱく質や、ポリエチレングリコールなどの水溶性の合成高分子がある。よって本発明書における造影剤には、光吸収体そのもの、光吸収体と他の材料とを共有結合させたもの、および、光吸収体とその他の材料を物理的な相互作用で保持させたものが含まれる。
被検体が生体の場合、安全性や生体透過性の観点から、照射光としては近赤外光(波長600nm〜900nm)が好ましい。よって造影剤には、少なくとも近赤外波長領域に光吸収特性を有する材料を用いる。例えば、インドシアニングリーンに代表されるシアニン色素(シアニン系化合物)や、金や鉄酸化物に代表される無機化合物がある。
シアニン系化合物は、吸収極大波長におけるモル吸光係数が10−1cm−1以上であることが好ましい。シアニン系化合物の構造の例として下記一般式(1)乃至一般式(4)で表わされるものが挙げられる。
Figure 2017108964
一般式(1)において、R201乃至R212は互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、SO201、PO201、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、または直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基を表す。前記T201は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。一般式(1)において、R21乃至R24は互いに独立に水素原子、または直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基を表す。一般式(1)において、A21、B21は、互いに独立に直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。一般式(1)において、L21乃至L27は互いに独立にCH、またはCR25である。前記R25は、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基、ハロゲン原子、ベンゼン環、ピリジン環、ベンジル基、ST202、または、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。前記T202は、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基、ベンゼン環、または、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。なお、一般式(1)において、L21乃至L27は4員環乃至6員環を形成していてもよい。一般式(1)において、R28は、−H、−OCH、−NH、−OH、−CO28、−S(=O)OT28、−P(=O)(OT28、−CONH−CH(CO28)−CH(C=O)OT28、−CONH−CH(CO28)−CHCH(C=O)OT28、及び−OP(=O)(OT28、のいずれかを表す。前記T28は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。一般式(1)において、R29は、−H、−OCH、−NH、−OH、−CO29、−S(=O)OT29、−P(=O)(OT29、−CONH−CH(CO29)−CH(C=O)OT29、−CONH−CH(CO29)−CHCH(C=O)OT29、及び−OP(=O)(OT29、のいずれかを表す。前記T29は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。
Figure 2017108964
一般式(2)において、R401乃至R412は互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、SO401、PO401、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、または直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基を表す。前記T401は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。一般式(2)において、R41乃至R44は互いに独立に水素原子、または直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基を表す。一般式(2)において、A41、B41は、互いに独立に直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。一般式(2)において、L41乃至L47は互いに独立にCH、またはCR45である。前記R45は、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基、ハロゲン原子、ベンゼン環、ピリジン環、ベンジル基、ST402、または、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。前記T402は、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基、ベンゼン環、または、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。なお、一般式(2)において、L41乃至L47は4員環乃至6員環を形成していてもよい。一般式(2)において、R48は、−H、−OCH、−NH、−OH、−CO48、−S(=O)OT48、−P(=O)(OT48、−CONH−CH(CO48)−CH(C=O)OT48、−CONH−CH(CO48)−CHCH(C=O)OT48、及び−OP(=O)(OT48、のいずれかを表す。前記T48は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。一般式(2)において、R49は、−H、−OCH、−NH、−OH、−CO49、−S(=O)OT49、−P(=O)(OT49、−CONH−CH(CO49)−CH(C=O)OT49、−CONH−CH(CO49)−CHCH(C=O)OT49、及び−OP(=O)(OT49、のいずれかを表す。前記T49は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。
Figure 2017108964
一般式(3)において、R601乃至R612は互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、SO601、PO601、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、または直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基を表す。前記T601は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。一般式(3)において、R61乃至R64は互いに独立に水素原子、または直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基を表す。一般式(3)において、A61、B61は、互いに独立に直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。一般式(3)において、L61乃至L67は互いに独立にCH、またはCR65である。前記R65は、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基、ハロゲン原子、ベンゼン環、ピリジン環、ベンジル基、ST602、または、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。前記T602は、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基、ベンゼン環、または、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。なお、一般式(3)において、L61乃至L67は4員環乃至6員環を形成していてもよい。一般式(3)において、R68は、−H、−OCH、−NH、−OH、−CO68、−S(=O)OT68、−P(=O)(OT68、−CONH−CH(CO68)−CH(C=O)OT68、−CONH−CH(CO68)−CHCH(C=O)OT68、及び−OP(=O)(OT68、のいずれかを表す。前記T68は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。一般式(3)において、R69は、−H、−OCH、−NH、−OH、−CO69、−S(=O)OT69、−P(=O)(OT69、−CONH−CH(CO69)−CH(C=O)OT69、−CONH−CH(CO69)−CHCH(C=O)OT69、及び−OP(=O)(OT69、のいずれかを表す。前記T69は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。
Figure 2017108964
一般式(4)において、R901乃至R908は互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、SO901、PO901、ベンゼン環、チオフェン環、ピリジン環、または直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基を表す。前記T901は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。一般式(4)において、R91乃至R94は互いに独立に水素原子、または直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基を表す。一般式(4)において、A91、B91は、互いに独立に直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。一般式(4)において、L91乃至L97は互いに独立にCH、またはCR95である。前記R95は、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基、ハロゲン原子、ベンゼン環、ピリジン環、ベンジル基、ST902、または、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。前記T902は、直鎖もしくは分岐の炭素数1乃至18のアルキル基、ベンゼン環、または、直鎖もしくは分
岐の炭素数1乃至18のアルキレン基を表す。なお、一般式(4)において、L91乃至L97は4員環乃至6員環を形成していてもよい。一般式(4)において、R98は、−H、−OCH、−NH、−OH、−CO98、−S(=O)OT98、−P(=O)(OT98、−CONH−CH(CO98)−CH(C=O)OT98、−CONH−CH(CO98)−CHCH(C=O)OT98、及び−OP(=O)(OT98、のいずれかを表す。前記T98は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。一般式(4)において、R99は、−H、−OCH、−NH、−OH、−CO99、−S(=O)OT99、−P(=O)(OT99、−CONH−CH(CO99)−CH(C=O)OT99、−CONH−CH(CO99)−CHCH(C=O)OT99、及び−OP(=O)(OT99、のいずれかを表す。前記T99は、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子のいずれかを表す。
シアニン系化合物の例としては、インドシアニングリーン、ベンゾトリカルボシアニン構造を有するSF−64、化学式(i)乃至化学式(v)で表わされる化合物が挙げられる。
Figure 2017108964
また、上記シアニン系化合物は、芳香環がスルホン酸基、カルボキシル基、または、リン酸基で置換されていても良い。また、芳香環以外の部分に、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基が導入されていても良い。
(造影剤投与部)
造影剤投与部は、被検体外部から被検体内部へ造影剤を投与する。原則として、造影剤投与部での投与操作完了時間が、後述する循環血由来信号の判別処理を行う際の起点となる。造影剤投与部は、被検体へ静脈等を介して造影剤を投与できれば、どのようなものでもよい。例えば、既存のインジェクションシステムやインジェクタなどが利用できる。造影剤投与部は、投与操作が完了した時間を後述の信号処理部に伝える。投与方法は特に限定されず、例えばボーラス投与でも良い。なお、造影剤投与を手動で行う場合には造影剤投与部は省略される。ちなみに、図1では造影剤投与部の記載を省略している。
(音響波検出部)
音響波検出部17は、被検体から伝播する音響波を検出し、アナログの電気信号に変換する変換素子を備えた探触子である。変換素子としては例えば、圧電現象を用いたもの、光の共振を用いたもの、容量の変化を用いたものを使用できる。また、複数の変換素子が1次元あるいは2次元に配置された探触子を用いることが好ましい。これにより同時に複数の場所で音響波を検出できるので、検出時間の短縮や、被検体振動の影響の低減に貢献できる。また、お椀状や半球状の支持体の内壁に変換素子を配置してもよい。これにより、各変換素子の指向軸(受信感度の高い方向)が集まる高解像度領域を形成できる。音響波検出部は、本発明の音響波検出手段に相当する。
また装置は、音響波検出部17を任意位置に移動させるための、ステッピングモータやステージなどの駆動手段を備えることが好ましい。これにより、被検体を様々な方向から測定できるので、再構成に用いる情報量が増えて画質が向上する。
(信号収集部)
信号収集部18は、音響波検出部が出力したアナログ電気信号に対し、増幅処理やデジタル変換処理を行う。信号収集部は、典型的には増幅器、A/D変換器、FPGA(Field Programmable Gate Array)チップなどで構成される。信号収集部が出力したデジタル電気信号は、信号処理部19に送信され、記憶手段である記憶モジュール19eに蓄積される。
(信号処理部)
信号処理部19は、信号処理部内部または外部の記憶モジュールに蓄積されたデジタル信号を用いて、循環血中の造影剤濃度情報を取得する。循環血中の造影剤濃度情報は、上述のように、光音響信号や、再構成を行った後の吸収体の空間情報などから算出できる。また信号処理部19は、算出された循環血中の造影剤濃度情報の閾値判定を行い、所定の値を下回っていることを確認することで本撮影の実施を判断する。信号処理部は、本発明の処理手段に相当する。
また、図7に示すように、造影剤信号を測定するための観察部位41(例えば体表血管)を設定する場合には、信号を取得するための検出システム21をさらに設けても良い。信号処理部19は、その他各種の演算を実行できる。
信号処理部19の構成としては、プロセッサを備えソフトウェアに従って動作する情報処理装置、例えばPCやワークステーションが好適である。ソフトウェアは、信号処理モジュール19a、信号判別モジュール19b、信号画像化モジュール19cを含む。信号処理部の構成例を図6に示して説明する。
信号処理モジュール19aは、取得した光音響信号を記憶モジュール19eから読み出して、内在性のヘモグロビン等由来信号を分離して、造影剤由来の信号成分(造影剤信号情報)を取得する。信号分離の際には、複数波長による光音響測定の結果を用いて演算処理を行うと良い。例えば、2波長計測で、ヘモグロビン等由来信号をサブトラクション等
で除去する方法がある。また、3波長計測で、酸素・還元ヘモグロビン、造影剤の3成分の演算を行う方法がある。また、多波長計測で、最小二乗法等を用いたカーブフィッティングから造影剤の分率を演算する方法がある。さらに、ヘモグロビン等の内在性の信号成分情報や信号分布情報等から、造影剤濃度を取得するための循環血領域を決定しても良い。
信号判別モジュール19bは、記憶モジュール19eに保存されたLUTを参照して、循環血中の造影剤信号情報に基づいて造影剤濃度情報を算出する。続いて造影剤濃度が所定の閾値以下かどうかを判定する。なお、循環血中の造影剤濃度情報を取得するために被検体内ROI由来の光音響信号を用いる場合には、造影剤濃度が閾値以下の場合に、取得済みの光音響信号を再構成に利用してもよい。さらに、通信モジュール19dに判定した結果を送信して、判定結果を外部に通知してもよい。さらに投与部からの投与完了の信号を受けてタイムカウントを開始して、通信モジュール19dが判定結果の通知に加えて本撮影のための光音響信号の取得開始の予測時刻を通知してもよい。
信号画像化モジュール19cは、取得した光音響信号を用いて画像再構成を行い、被検体内部の画像データを生成する。画像再構成アルゴリズムとしてはトモグラフィー技術で通常用いられる手法が利用できる。例えば、タイムドメインあるいはフーリエドメインでの逆投影、フーリエ変換法、ユニバーサルバックプロジェクション法、フィルタードバックプロジェクション法、デコンボリューション法、逐次再構成法、逆問題解析法などである。なお、フォーカスした音響波検出部を用いれば、画像再構成をしなくとも画像生成が可能である。
なお画像再構成のタイミングは、上記のように信号判別モジュール19bによる処理後でも良い。また、先に信号画像化モジュール19cで画像再構成を行って光吸収体の空間分布情報を取得しておき、続いて、各単位領域の信号に対して信号処理モジュール19a、信号判別モジュール19bによる処理を行っても良い。なお、信号処理部19を造影剤投与部と連動させて、造影剤投与と、音響波取得および造影剤の血中濃度推移の計測とを同期させることが好ましい。
なお、上記のモジュール区分は一例である。信号処理部は、各モジュールが行う工程を実行できるものであれば、形式は問わない。すなわち信号処理部は、ソフトウェアや処理回路により、信号収集部が出力したデジタル信号から循環血由来の造影剤信号成分を判別し、閾値判定を行うものであれば良い。
(表示装置)
表示装置20は、信号処理部から出力される画像データを表示する。例えば液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTなどが利用される。表示装置は、本発明の装置本体とは別に提供されても良い。
(被検体情報取得方法)
信号処理部19が行う処理を、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
処理(1)(ステップS501):装置を起動する工程
まず被検体のセッティングを行い、装置を起動する。
処理(2)(ステップS502):造影剤を投与する工程
造影剤投与部で、被検体内に吸収体を含有する造影剤を投与する。循環血領域を設定するために血液由来成分の信号を取得する場合には、本工程の造影剤投与前に被検体の光音響計測を実施しても良い。
処理(3)(ステップS503):循環血中の造影剤濃度情報の取得を行う工程
本ステップでは、装置は所定のタイミングで循環血領域での造影剤信号情報を計測して、造影剤濃度情報を取得する。上述のように、信号計測には光学的な手法(例えば光音響計測や蛍光計測)を始めとした様々な手法を利用できる。
本ステップには、同期用のタイムカウントを開始する工程を含めることが好ましい。タイムカウントは、投与後の循環血中での造影剤濃度の目安を得るために行われる。循環血中に投与された造影剤濃度は、吸収や排泄により経時的に減少するので、造影剤濃度と投与後経過時間との間には密接な関係がある。そこで投与後のタイムカウントを行うことで、循環血中の造影剤濃度推移情報をLUTから参照できる。タイムカウントは、循環血中の信号を被検体のうち測定対象とは異なる部位(被検体の表在血管など)から取得する場合にも利用できる。
また、造影剤を投与して規定の時間で造影剤由来信号を計測する場合には、装置の操作者や被検体に対して本撮影のための光音響信号取得の計測を開始するタイミングを通知したり、装置を連動させて自動で計測を開始させたりするために、タイムカウントを利用できる。例えば、一般的なインジェクションシステムを用いる場合、造影剤投与の完了時にインジェクションシステムから光音響装置にトリガ信号を送り、タイムカウントを開始させる。その後は、通信モジュール19dおよび記憶モジュール19eがタイムカウントを管理する。なお、再構成画像を用いて循環血中の造影剤濃度情報を取得する場合には、本ステップ中での光音響測定後に再構成処理が行われる。
処理(4)(ステップS504):循環血中の造影剤濃度情報の閾値を判定する工程
本ステップでは、本撮影実施の可否を判定するために、所定のタイミングで得られた循環血中の造影剤濃度情報が所定の値(閾値)以下かどうかを判定する。閾値の判定は本撮影の前に少なくとも1回以上行われる。なお、経時的に複数回の判定を行って、最終的に閾値以下であることを確認した上で本撮影に移行してもよい。具体的には、投与後の比較的早い時間帯に、循環血中に造影剤が確実に入ったかどうかを判定してもよい。さらに、造影剤濃度変化の個体別の特徴を把握するために、比較的早い時間帯(例えば投与後3時間以内)に複数回の濃度測定を行っても良い。
この場合の閾値判定の一例として次のような方法を挙げることができる。造影剤投与後に、最高濃度に達した時点での循環血領域における音圧信号を、実測もしくは計算により算出しておく。そして、循環血領域での造影剤由来の音圧信号を測定し、両者の音圧比のゲインが所定の値を下回っていれば、循環血中の造影剤量は十分低下していると判定して本撮影に進む。この場合に30%まで低下していることが必要であれば、ゲインの閾値を−9dBに設定する。さらに、造影剤投与前に被検体の循環血領域から取得した光音響波の音圧を測定しておくことで、生体由来の信号を補正した上で造影剤由来信号を取り出せる。
また、閾値判定の別の例として、蛍光等の本撮影とは異なる検出器を備えて、そこで測定した信号強度を判定する方法もある。具体的には循環血の観察領域(表在血管、皮膚等)を設定しておいて、投与後に造影剤信号を任意のタイミングで取得する。取得した信号強度と造影剤濃度との関係をLUTから参照することで、循環血中での造影剤濃度を取得する。例えば予め設定した閾値が5μMであれば、循環血中の造影剤濃度がその閾値を下回っていれば、濃度は十分低下していると判定して本撮影に進む。
さらに、本撮影を行うための閾値を複数設定することも可能である。具体的には、循環血中の造影剤濃度が閾値を下回ることを判定する第一の閾値Aに加えて、第二の閾値Bをさらに設定する。第二の閾値Bに基づく判定は、第一の閾値Aに基づく判定に先立って行
われる。具体的には、第二の閾値Bを用いて、造影剤が確実に投与されて循環血中の造影剤濃度が任意の値を上回ったことが判定される。この場合には第二の閾値Bの判定が第一の閾値Aを判定する工程に移行するための前提条件となる。
また、閾値判定は、必ずしも第一の閾値を下回ったことを直接確認しないで本撮影に移行する場合もあり得る。要するに本撮影の光音響信号を取得する時点(あるいは取得直前)に行われる必要はない。具体的には、循環血中での造影剤の濃度推移情報が既知であれば、任意の時間での造影剤濃度情報に基づいて、本撮影のタイミングとして想定される時点における、循環血中での推定造影剤濃度を算出できる。このように算出された推定造影剤濃度が、本撮影開始可否判定の閾値を下回っていれば、必ずしも第一の閾値を下回ったことを確認せずとも予定通りのタイミングで本撮影が行われる。
一例として、循環血中での造影剤の濃度推移情報をLUTとして記憶モジュール19eで記憶しておき、そのデータを参照して閾値判定を実施する方法がある。その際には、タイムカウントに応じて想定される濃度情報を、閾値として設定できるようにしてもよい。この場合、任意の時間で計測された造影剤濃度が閾値以下と判断されれば、本撮影時には規定以下の血中濃度が実現できていると判断できる。このように、任意の時間における判定を可能とすることで、撮影のための拘束時間の低減や処理時間の短縮が期待できる。
また別の例としては、任意の時間での造影剤濃度情報を取得して、LUTに記憶させた造影剤濃度推移情報に対してフィッティングすることで、閾値を下回る造影剤濃度を達成する時間を算出できる。一般に、循環血中にワンショット投与された造影剤濃度は、体内を循環して極大点に達した後に、図2、図3のように指数関数的に減少していく。
そこで、予め造影剤由来信号強度の時間推移情報を指数関数としてLUTに記憶させておいて、投与後任意の時間で取得した被検体中の信号強度にフィッティングすることによって、濃度が所定の値を下回る時間を算出できる。なお、時間推移情報は、時間に対する関数式の形式でも構わない。例えば、投与後の関数フィッティングによって、次の数式(C)のような、最大信号強度に対する相対値推移の時間の関数Y(t)が得られたとする。
Y(t) = 0.7Exp(−0.04t) …(C)
(ただし、tは時間の単位で表現されるもの)
ここで、最大信号強度に対して30%低い強度を閾値に設定したとすると、造影剤投与から24時間後に本撮影を行えば、血中に存在する造影剤濃度が閾値を下回ることが予想できる。さらに、予測だけでなく、実際に循環血中の信号強度を測定して閾値判定を行ってから本撮影を実施しても構わない。
さらに別の例としては、造影剤が循環血中に投与された直後の濃度変化割合(増加、あるいはクリアランスによる減少)を算出する。その変化割合を、LUTに記憶させた造影剤濃度推移情報の変化割合と比較することで、閾値判定を行う最適なタイミングを取得できる。具体的には、造影剤濃度を複数回算出して、その傾きの大きさに応じて閾値判定のタイミングを設定できる。
また別の例としては、信号強度の時間推移を複数のパターンのテーブルとしてLUTに記憶させておいて、任意の時間に循環血領域での信号強度の推移から実際の信号強度推移と最も近しいパターンを参照する方法がある。これにより、個体差による変化に対応した、精度の高い予測が可能になる。
具体的には、任意の時間間隔で、造影剤の循環血由来信号を測定して推移情報を取得す
る。この推移情報と、予めLUTに記憶させておいた複数の記憶推移情報とを比較し、最も類似度が高い記憶推移情報から最適な閾値判定のタイミングや本撮影開始時間を取得する。その際、両者の相互相関係数(r)が予め設定した閾値(例えばr>0.9)を超えた記憶推移情報を採用する方法が好適である。なお、最も類似度が高い記憶推移情報を選択する代わりに、複数の記憶推移情報を参照して、複数の本撮影タイミングを提示したり、時間的に幅を持った本撮影タイミングを提示したりしてもよい。
処理(5)(ステップS505):被検体中の関心領域の本撮影と画像化を行う工程
本工程では、光源からの光照射、変換素子による光音響波の検出、信号処理部による画像データ生成が行われる。また、表示装置が画像データを表示しても良い。表示の際には、3次元画像データの場合、すべての信号値が画像化できる方向の最大輝度値を投影したMIP(Maximum Intensity Projection)表示が好適である。ただし、他の表示法でも構わない。
以上の処理フローにより、循環血中の造影剤濃度が事前に規定した所定濃度以下であることを本撮影前に判定することによって、本撮影で腫瘍組織をコントラスト高く画像化できる。その結果、診断に有益な情報を提供できる。
本発明の造影剤は、光音響測定だけでなく蛍光測定での利用も検討されている。したがって、造影剤の分布を示す画像データを生成する際に、光音響信号の代わりに蛍光信号を用いてもよい。その場合、本発明の被検体情報取得装置は、蛍光測定に適した光を照射可能な励起用の光源や、フォトダイオードなどで構成される蛍光検出手段を備える。なお、循環血領域の特定、造影剤由来信号の検出、造影剤濃度情報の取得などに関しては、光音響波を用いる部分を除けば、上記実施形態と同様の構成で実現できる。
11:光源,17:音響波検出部,19:信号処理部

Claims (15)

  1. 光源と、
    前記光源からの光が造影剤を含む被検体に照射されたときに発生する音響波を受信して電気信号に変換する音響波検出手段と、
    前記被検体に含まれる造影剤に由来する造影剤由来信号を前記被検体から検出する造影剤由来信号検出手段と、
    処理手段と、
    を有し、
    前記処理手段は、
    前記被検体内部の前記造影剤の濃度情報を取得し、
    前記濃度情報が所定の第一の閾値よりも低いときに受信された音響波から変換された前記電気信号と、前記濃度情報が前記第一の閾値よりも低いときに得られた前記造影剤由来信号の少なくともいずれかを用いて、前記被検体内部の前記造影剤の分布を示す画像データを生成することが可能だと判定する
    ことを特徴とする被検体情報取得装置。
  2. 前記処理手段は、前記被検体の循環血領域における前記造影剤由来信号の強度に基づいて前記濃度情報を取得する
    ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
  3. 前記循環血領域は、前記画像データが生成される関心領域であり、
    前記音響波検出手段は、前記造影剤由来信号検出手段を兼ねており、前記関心領域から発生する前記音響波に基づいて前記造影剤由来信号を検出することにより前記濃度情報を取得する
    ことを特徴とする請求項2に記載の被検体情報取得装置。
  4. 前記処理手段は、前記濃度情報を取得するために用いた前記造影剤由来信号を、前記画像データの生成にも用いる
    ことを特徴とする請求項3に記載の被検体情報取得装置。
  5. 前記処理手段は、前記被検体からの採血の結果に基づいて前記濃度情報を取得する
    ことを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。
  6. 前記造影剤由来信号検出手段は、前記造影剤に由来する蛍光信号を検出する蛍光検出手段である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の被検体情報取得装置。
  7. 前記造影剤由来信号の強度と前記濃度情報の対応を示すルックアップテーブルまたは数式を格納した記憶手段をさらに有し、
    前記処理手段は、前記ルックアップテーブルまたは数式を参照して前記濃度情報を取得する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の被検体情報取得装置。
  8. 前記ルックアップテーブルまたは数式は、前記被検体と同一または同種の被検体を用いた複数回の光音響測定の結果に基づいて作成される
    ことを特徴とする請求項7に記載の被検体情報取得装置。
  9. 前記処理手段は、前記濃度情報が、前記第一の閾値よりも高い値から前記第一の閾値を下回る値になった場合に、前記画像データの生成が可能だと判定する
    ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
  10. 前記処理手段は、前記造影剤が前記被検体に投与された後の前記濃度情報が、所定の第二の閾値よりも低い値から前記第二の閾値よりも高い値になった場合に、前記第一の閾値に関する判定を行う
    ことを特徴とする請求項9に記載の被検体情報取得装置。
  11. 前記被検体と同一または同種の被検体に前記造影剤を投与したときの前記造影剤濃度の推移を示す既知造影剤濃度推移情報を格納した記憶手段をさらに有し、
    前記処理手段は、前記被検体内部の前記濃度情報の推移を、前記既知造影剤濃度推移情報と比較することにより、前記第一の閾値を用いた判定を行うのに適した時間を推定することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
  12. 前記処理手段は、前記被検体内部の腫瘍に集積した前記造影剤の分布を示す画像データを生成するものであり、
    前記第一の閾値は、前記被検体の腫瘍に集積した前記造影剤の濃度と、前記被検体の循環血領域に存在する前記造影剤の濃度とに基づいて決定される
    ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
  13. 前記造影剤は、ICG−PEGまたはICG−HSAである
    ことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。
  14. 前記処理手段は、前記第一の閾値に関する判定を、前記造影剤の投与から略24時間が経過した時点で行うものであり、
    前記第一の閾値は、15%ID/gである
    請求項13に記載の被検体情報取得装置。
  15. 光源と、
    前記光源からの光が造影剤を含む被検体に照射されたときに発生する蛍光を受信して電気信号に変換する蛍光検出手段と、
    前記被検体に含まれる造影剤に由来する造影剤由来信号を前記被検体から検出する造影剤由来信号検出手段と、
    処理手段と、
    を有し、
    前記処理手段は、
    前記被検体内部の前記造影剤の濃度情報を取得し、
    前記濃度情報が所定の第一の閾値よりも低いときに受信された蛍光から変換された前記電気信号と、前記濃度情報が前記第一の閾値よりも低いときに得られた前記造影剤由来信号の少なくともいずれかを用いて、前記被検体内部の前記造影剤の分布を示す画像データを生成することが可能だと判定する
    ことを特徴とする被検体情報取得装置。
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