JP2016216668A - プラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置 - Google Patents

プラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2016216668A
JP2016216668A JP2015105467A JP2015105467A JP2016216668A JP 2016216668 A JP2016216668 A JP 2016216668A JP 2015105467 A JP2015105467 A JP 2015105467A JP 2015105467 A JP2015105467 A JP 2015105467A JP 2016216668 A JP2016216668 A JP 2016216668A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
plasma
resin surface
gas
resin
resin material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015105467A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6544798B2 (ja
Inventor
沖野 晃俊
Akitoshi Okino
晃俊 沖野
秀一 宮原
Shuichi Miyahara
秀一 宮原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokyo Institute of Technology NUC
Original Assignee
Tokyo Institute of Technology NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokyo Institute of Technology NUC filed Critical Tokyo Institute of Technology NUC
Priority to JP2015105467A priority Critical patent/JP6544798B2/ja
Publication of JP2016216668A publication Critical patent/JP2016216668A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6544798B2 publication Critical patent/JP6544798B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract


【課題】本発明においては、樹脂表面の接着性、塗装性、印刷性などの性質を改善するために、高密度かつ低温のプラズマによって樹脂表面の性質を改質または復帰させるプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置を提供することを目的とする。
【解決手段】プラズマ生成用ガスに放電を生じさせることによってプラズマを発生させ、前記プラズマを前記プラズマ生成用ガスのガス流によって下流側へ搬送するとともに、当該プラズマと前記プラズマ生成用ガスとの混合ガスにエネルギーを与えて増強し、増強されたプラズマを樹脂材料に噴射して、前記樹脂材料の表面を改質することを特徴とするプラズマを用いた樹脂表面コントロール方法およびこの方法を用いたコントロール装置。

【選択図】 図2

Description

本発明は、プラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置に係り、プラズマを用いた樹脂表面の改質および復帰方法および樹脂表面の改質および復帰を行うための装置に関する。
従来、接着や塗装の前処理として物体の表面に何らかの前処理を施すことが行われており、近年においては、大気圧プラズマを用いた手法が広く使われ始めた。
特に、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などは接着剤などとの接着性が悪く、特許文献1に記載されているように、コロナ処理やプラズマ処理によって表面に極性官能基を導入し、親水化してぬれ性を高めることで接着性、塗装性、印刷性などを可能としていた。
特開2007−069469号公報
しかしながら、従来のコロナ処理装置やプラズマ処理装置においては、改質処理時の温度を適正に保つことが難しく、温度が高すぎると改質処理に長時間を要したり、熱によって樹脂材料自体が劣化・変質してしまうという問題点を有していた。
このため、コロナ処理やプラズマ処理における熱の問題を解決するために、印加するエネルギーを低下させることが試みられているが、エネルギーを低下させると生成されるプラズマの密度も低下していしまい十分な改質効果を得ることができなかった。
この他にも、実使用時において、一旦、改質してしまった樹脂材料の表面を再度、元の状態へ復帰させたいという要望があった。
ここで、本発明者等は、鋭意研究の結果、プラズマを用いて樹脂表面を処理する場合、その反応は、プラズマの接触による改質処理が進む反応と、加熱による改質処理が戻る反応とが同時に生じており、処理時の温度が高いほど改質処理が戻る反応の速度が増して、結果、改質処理に長時間を要したり、不適正な加熱によって目的とは異なる処理がなされていたことを見いだした。
そこで、本発明においては、樹脂表面の接着性、塗装性、印刷性などの性質を改善するために、上記の点を鑑みて、高密度かつ低温のプラズマによって樹脂表面の性質を改質または復帰させるプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するべく、本発明の第1の態様のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法は、プラズマ生成用ガスに放電を生じさせることによってプラズマの種を生成し、前記プラズマの種を前記プラズマ生成用ガスのガス流によって下流側へ搬送するとともに、当該プラズマの種と前記プラズマ生成用ガスとの混合ガスにエネルギーを与えて前記プラズマの種を増強して高密度プラズマを生成し、前記高密度プラズマを樹脂材料に接触させて、前記樹脂材料の表面を改質することを特徴とする。
このような、本発明の第1の態様のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法においては、プラズマの種を増強させることによって生成された高密度プラズマとすることで、高密度かつ低温なプラズマを用いた樹脂表面の改質処理が可能となり、低温なプラズマとすることで改質処理が戻る反応が生じることを抑制して高速に表面の改質を行うことを可能とする。
本発明の第2の態様のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法は、改質された前記樹脂材料の表面に対して、復帰処理を施して前記樹脂材料の表面を元の状態に復帰させることを特徴とする。
このような、本発明の第2の態様のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法においては、復帰処理を施すことによって、改質した樹脂表面の一部または全体を元の状態に復帰させたり、弱く復帰処置を施すことにより樹脂表面の改質の程度に強弱(以降、当該改質の程度の強弱を「傾斜」として説明する。)を設けることを可能とする。
本発明の第1の態様のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール装置は、プラズマ生成用ガスに対して放電を生じさせることによってプラズマの種を発生させるプラズマ発生室と、前記プラズマ発生室から前記プラズマの種およびプラズマ生成用ガスをガス流によって導入するとともに、高周波電流もしくはパルス電流を印加して前記プラズマの種を増強して高密度プラズマを生成するプラズマ増強室とを備え、前記プラズマ増強室から前記ガス流によって噴射される前記高密度プラズマを樹脂材料に接触させて、前記樹脂材料の表面を改質するように形成されていることを特徴とする。
このような、本発明の第1の態様のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール装置においては、プラズマ発生室とプラズマ増強室との2段階にて高密度プラズマを生成するように形成されていることにより高密度かつ低温なプラズマを生成することを可能とする。そして、この低温な高密度プラズマを用いることにより、改質時における改質処理が戻る反応が生じることを抑制して高速に樹脂表面の改質を行うことを可能とする。
本発明の第2の態様のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール装置は、改質された前記樹脂材料の表面を元の状態に復帰させる復帰手段を備えることを特徴とする。
このような、本発明の第2の態様のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール装置においては、復帰手段によって、改質した樹脂表面の一部または全部を元の状態に復帰させたり、改質程度に傾斜を設けることを可能とする。
本発明の第3の態様のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール装置は、生成される前記プラズマの種およびまたは前記高密度プラズマの温度を制御する温度制御手段が設けられていることを特徴とする。
このような、本発明の第3の態様のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール装置においては、樹脂表面の改質に適正な温度のプラズマを生成することを可能とし、プラズマの温度をコントロールして改質処理が進む反応の速度と改質処理が戻る反応の速度とを調整して樹脂表面の表面状態を精密にコントロールすることを可能とする。
本発明によれば、高密度かつ低温のプラズマによって樹脂表面の性質を改質または復帰させて樹脂表面の接着性、塗装性、印刷性などの性質を改善することが可能なプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置を提供することができる。
本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール装置の実施形態を示すブロック図 本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール装置のその他の実施形態を示すブロック図
以下に、本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置の詳しい実施形態について説明する。
本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法の実施形態は、プラズマ生成用ガスに放電を生じさせることによってプラズマの種を発生させ、当該プラズマの種をプラズマ生成用ガスのガス流によって下流側へ搬送するとともに、プラズマの種とプラズマ生成用ガスとの混合ガスにエネルギーを与えてプラズマの種を増強して高密度プラズマを生成し、高密度プラズマを樹脂材料に接触させて、当該樹脂材料の表面を改質するものである。
特に、プラズマの種の発生においては、放電を開始するのに十分な高電圧であって発熱の少ないエネルギー供給が抑制された放電を生じさせることが好ましく、例えば、短パルス放電法やバリア放電法を用いることが好ましい。
また、プラズマの増強においては、エネルギーの供給量が多く制御性に優れた高周波電流またはパルス電流によって増強することが好ましい。
ここで、「プラズマの種」とは、プラズマ生成用ガスに対して上記の方法により放電を生じさせることで遇存電子を加速させて当該プラズマ生成用ガス中に生成された少量のプラズマのことである。そして、「高密度プラズマ」とは、当該プラズマの種とプラズマ生成用ガスとの混合ガスに対して上記方法によりエネルギーを与えることで、さらに励起されたプラズマの種により混合ガス中のプラズマ生成用ガスに起因する物質をプラズマ化した多量のプラズマのことであり、「高密度」は、混合ガス中に含まれるプラズマの密度が極めて高いことを表している。本発明においては、プラズマの種を生成した後に、当該プラズマの種を増強して高密度プラズマを生成するようにされているので、当該高密度プラズマの温度が上昇することを防ぎ、高密度かつ低温なプラズマを生成することができる。
樹脂材料としては、特に限定するものではないが、特に、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)または繊維強化プラスチック(FRP)などに対して行うことが有効である。
プラズマ生成用ガスとしては、例えば、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガスまたは水蒸気などから1種類または複数種類を適宜選択して混合して用いることができる。
また、本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法においては、生成されるプラズマの種および/または高密度プラズマの温度を細かく制御するようにしてもよい。プラズマの種および/または高密度プラズマの温度の制御方法としては、例えば、照射されるプラズマの温度もしくはプラズマが照射される樹脂表面の温度を測定し、得られた温度情報に応じて、適宜、プラズマ生成用ガス、プラズマの発生および増強に係る電極、放電室、筐体などを冷却・加温することによって行うことができる。
また、本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法においては、プラズマ照射を行った後に、水蒸気またはエタノール蒸気をはじめとする、表面を修飾する目的の気体、液体またはゾルなどに所定時間の間、当該樹脂表面を暴露するようにしてもよい。これにより、樹脂表面の改質効果をさらに向上させたり、暴露させる物質を適宜選択して所望の状態の樹脂表面を実現することができる。
さらに、本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法においては、改質された樹脂材料の表面に対して、復帰処理を施して改質処理が戻る反応を生じさせることにより樹脂材料の表面を元の状態に復帰させるようにされている。復帰処理としては、例えば、レーザー照射、フラッシュランプ照射などによる加熱処理や紫外線照射による紫外線処理などが挙げられる。
このとき、水蒸気またはエタノール蒸気などの改質促進物質中において樹脂表面に前記復帰処理を行うことにより改質処理が戻る反応が促進されて、極めて短時間で樹脂表面を元の状態へ復帰させることができる。
復帰処理においては、例えば、改質処理がなされた樹脂表面の全体を元の状態に復帰させるだけでなく、例えば、レーザー照射によって復帰箇所をパターン化したり、改質対象物の片面側や内面側のように樹脂材料の一部に対してフラッシュランプ照射を行って、当該一部のみを元の状態に復帰させるようにしてもよい。この他にも、復帰処理を行う部分やその程度をより細かく制御することによって、1つの樹脂表面上において、改質の程度に強弱(以降、当該改質の程度の強弱を「傾斜」として説明する。)を設けるようにしてもよい。
このような、本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法においては、予めプラズマの種を発生させてから当該プラズマの種を増強させることで高密度プラズマを生成するようにされているので、低温な高密度プラズマを生成することを可能とし、そして、低温な高密度プラズマによれば改質処理時における改質処理が戻る反応を抑制し効率よく改質処理が進む反応を生じさせることができるので改質が困難とされるPP、PEまたはFRPのような樹脂材料についても容易に表面改質を行って、接着性、塗装性および印刷性などを飛躍的に向上させることを可能とする。
さらに、本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法においては、復帰処理を施すようにされているので、例えば、誤って樹脂表面に施してしまった改質処理を元の状態へ復帰させたり、当該復帰処理を樹脂表面の一部に対して施すことにより、改質を行っている部分と改質を行っていない部分とを精密にパターン化したり、樹脂材料の片面側や内側面のように所定の一部分のみを元の状態へ復帰させたり、もしくは、改質状態に傾斜を設けるなどして次工程における接着処理、塗装処理もしくは印刷処理などに適した表面を容易に実現することができる。
上述のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法を実施するためのコントロール装置の実施形態を図1および図2を用いて以下に説明する。
本発明のプラズマを用いた樹脂表面Sのコントロール装置1は、図1に示すように、プラズマ生成用ガスを供給するガス供給部2と、ガス供給部2から供給されたプラズマ生成用ガスに対して放電を生じさせてプラズマの種を発生させるプラズマ発生室3と、プラズマ発生室3からプラズマ生成用ガスのガス流によって導入されたプラズマの種およびプラズマ生成用ガスの混合ガスを増強して高密度プラズマを生成するプラズマ増強室4とを備え、プラズマ増強室4から噴射さる高密度プラズマを樹脂材料Wに対して接触させて樹脂表面Sの改質を行うように形成されている。
ガス供給部2においては、1種類もしくは複数のプラズマ生成用ガスを、独立してもしくは混合してプラズマ発生室3に対して導入するように形成されている。
プラズマ発生室3においては、放電を開始するのに十分な高電圧であって発熱の少なく、エネルギー供給が抑制された放電を生じさせるように形成されていることが好ましく、例えば、短パルス放電方式やバリア放電方式の放電装置を用いることが好ましい。
プラズマ増強室4は、プラズマの種およびプラズマ生成用ガスからなる混合ガスに対してエネルギーを供給して当該プラズマの種を増強して高密度プラズマを生成することができるように形成されていればよく、例えば、エネルギーの供給量が多く制御性に優れた高周波電流もしくはパルス電流を用いたプラズマの増強を行うように形成されていることが好ましい。これによって、プラズマが過度に加熱されることがなく、比較的低温な高密度プラズマを生成することができる。高密度プラズマの温度は、樹脂材料のガラス転移点以下とされていることが好ましい。
なお、プラズマ発生室3およびプラズマ増強室4は、実施用においては、大気圧もしくは低気圧状態とされていることが好ましいが、特に限定するものではない。
このような、本発明のプラズマを用いた樹脂表面Sのコントロール装置においては、低温な高密度プラズマを用いた樹脂表面Sの改質を行うことが可能であり、このような低温な高密度プラズマによれば樹脂表面を不必要に加熱することがなく改質処理時における改質処理が戻る反応を抑制することができるので極めて高速に樹脂表面Sの接着性、塗装性および印刷性を向上させることができる。
その他の実施形態としては、図2に示すように、本発明のプラズマを用いた樹脂表面Sのコントロール装置1においては、図1に示すコントロール装置1に対して、さらに、生成されるプラズマの種およびまたは高密度プラズマの温度を制御するための温度制御手段5と、改質された樹脂表面Sを元の状態に復帰させる復帰手段6とを備える。
温度制御手段5としては、プラズマ増強室4から噴射される高密度プラズマの温度もしくは樹脂表面Sの温度を測定する温度測定手段と、温度測定手段によって検出された温度に応じてプラズマ生成用ガス、プラズマ発生室3およびプラズマ増強室4に設けられた電極もしくは、プラズマ発生室3およびプラズマ増強室4の筐体を冷却するための冷却手段と、温度測定手段からの情報に応じて冷却手段をコントロールする制御手段とを有し、生成された高密度プラズマもしくはプラズマが照射されている樹脂の表面温度を観測して樹脂表面Sの改質に適したプラズマ温度となるように冷却によって温度をコントロールするようにされている。なお、生成されるプラズマを加温したい場合には、冷却手段をOFF状態とするか、プラズマ発生室3またはプラズマ増強室4における電極に印加する電力を増加させることで熱を生じさせてプラズマを加温することができる。
復帰手段6としては、改質した表面に対して加熱処理や紫外線処理のような刺激を与えることによって復帰させるものであればよく、例えば、レーザー照射やフラッシュランプ照射による加熱処理手段や紫外線照射による紫外線処理手段などが挙げられる。
このような、本発明のプラズマを用いた樹脂表面Sのコントロール装置1においては、温度制御手段5によって、さらに低温な高密度プラズマもしくは加温された高密度プラズマとして樹脂表面Sの改質処理を行うことにより改質処理が進む反応の速度と改質処理が戻る反応の速度を調整して所望の樹脂表面を実現することを可能とする。また、復帰手段6によって、例えば、誤って樹脂表面Sに施してしまった改質処理を元の状態へ復帰させたり、当該復帰処理を樹脂表面Sの一部へ施すことにより、改質を行っている部分と改質を行っていない部分とを精密にパターン化したり、樹脂材料Wの片面側や内側面のように所定の一部分のみを元の状態へ復帰させたり、もしくは、改質状態に傾斜を設けるなどして次工程における接着処理、塗装処理もしくは印刷処理などに適した表面を容易に実現することができる。
以下に、本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法の実施例について説明する。
<実施例1>
実施例1においては、2枚のポリプロピレン板(以降、PP板と称する。)同士の一部を重ね合わせた状態でアクリル系接着剤にて接着した際の接着面と平行方向における引張りせん断接着強さについて検討した。なお、引張りせん断接着強さの測定は、JISK6850(接着剤−剛性被着材の引張りせん断接着強さ試験方法)に基づいて行った。
具体的には、本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法による改質処理を実施したPP板を用いた場合(サンプル1)と、当該改質処理を実施していないPP板を用いた場合(サンプル2)における引張りせん断接着強さを測定した。さらに、本発明の樹脂表面のコントロール方法による改質処理を実施したPP板に対して、加熱による復帰処理施した場合(サンプル3)の引張りせん断接着強さについても検討した。
樹脂表面のコントロール条件は、マルチガスプラズマジェット(PCT−DFMJ01、株式会社プラズマコンセプト東京社製)を用いて窒素100%、8L/minのガス流量にて生成されたプラズマを1分間照射した。また、サンプル3については、樹脂表面のコントロール方法を適用した後、ヒートガンにて100℃の温風を2分間照射した。
各試験に用いるPP板は、厚さ1.6mm±0.1mm、幅25mm±0.25mm、長さ100mm±0.25mmとし、試験片は2枚のPP板を重ね長さ12.5mm±0.25mmにて重ね合わせて接着したものを用いる。なお、接着剤の厚さは、0.2mmとする。
接着剤としては、2液式アクリル系接着剤(NS700M20;電気化学工業株式会社製)を用いた。
引張り試験は、試験片の両端部を重ね合わせ部分の端から50mm±1mm離してそれぞれつかみ具で対称的に固定し、油圧式引張り試験機(ServopulserEHF−FB1;島津製作所製)を用いて変位制御10mm/minにて接着面と平行方向への引張力を与えて、引張り破断時の荷重の記録を行った。得られた試験結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明の樹脂表面のコントロール方法による改質処理を施したサンプル1については8.0GPaにて破断し、当該改質処理を施さなかったサンプル2については2.9GPaにて破断した。この結果から、本発明の樹脂表面のコントロール方法による改質処理をPP板表面に施すことにより接着強度を格段に向上させることができるため、PP板のアクリル系接着剤による優れた接着性を実現することが可能であることが明らかとなった。
また、PP板に対して、本発明の樹脂表面のコントロール方法による改質処理を施した後に、ヒートガンにて加熱による復帰処理を施したサンプル3については6.0GPaにて破断した。この結果から、一旦、当該改質処理を施した樹脂表面を加熱によって元の状態に復帰させることが可能であることが明らかとなった。
<実施例2>
実施例2においては、ポリカーボネートにおいて本発明の樹脂材料のコントロール方法による改質処理を施した樹脂表面を加熱処理による復帰処理によって元の状態へ復帰させることが可能であるか否かについて検討を行った。
具体的には、ポリカーボネート板に対して、下記のA〜Cのプラズマ源を用いて、それぞれ改質処理を施したサンプルa〜サンプルcについて水の接触角を測定するとともに、その後、オートクレーブを用いてサンプルa〜サンプルcについて121℃20分間の加熱処理による復帰処理を施した後の水の接触角の測定を行った。得られた測定結果を表2に示す。表2において、改質処理前のポリカーボネート板における水の接触角を、ブランクとして示す。なお、プラズマは、下記の1〜3のプラズマ源およびプラズマ生成用ガスを用いて生成した。
A.マルチガスコロナプラズマ(PCT−MCP、株式会社プラズマコンセプト東京社製)にて窒素ガス100%のプラズマ生成用ガス(ガス流量30L/min)
B.マルチガスジェット(PCT−DFMJ01、株式会社プラズマコンセプト東京社製)にて窒素ガス100%のプラズマ生成用ガス(ガス流量8L/min)
C.リニア型高周波プラズマ(PCT−DFLA330、株式会社プラズマコンセプト東京社製)にてアルゴンガス99%+窒素ガス1%のプラズマ生成用ガス(ガス流量20L/min)
表2のブランクに示すように、改質処理を施す前のポリカーボネートの表面の水の接触角は、94.0°であった。本発明の樹脂表面のコントロール方法による改質処理を施すことにより、マルチガスコロナプラズマを用いたサンプルaにおいては水の接触角56.3°、マルチガスジェットを用いたサンプルbにおいては水の接触角37.0°、リニア型高周波プラズマを用いたサンプルcにおいては水の接触角49.7°であった。この結果から、当該改質処理を施すことにより、ポリカーボネート板の表面が親水化されていることがわかる。
また、サンプルa〜サンプルcに対して加熱による復帰処理を施すことにより、サンプルaにおいては水の接触角65.7°、サンプルbにおいては水の接触角45.3°、サンプルcにおいては水の接触角77.7°であった。この結果から、当該復帰処理を施すことにより、ポリカーボネート板の表面が元の状態である撥水性へと復帰する傾向にあることがわかった。つまり、ポリカーボネートにおいても、一旦、改質された樹脂表面を加熱することによって元の状態へ復帰させることができることが明らかとなった。
本発明のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
1 コントロール装置
2 ガス供給部
3 プラズマ発生室
4 プラズマ増強室
5 温度制御手段
6 復帰手段
W 樹脂材料
S 樹脂表面

Claims (5)

  1. プラズマ生成用ガスに放電を生じさせることによってプラズマの種を発生させ、
    前記プラズマの種を前記プラズマ生成用ガスのガス流によって下流側へ搬送するとともに、当該プラズマの種と前記プラズマ生成用ガスとの混合ガスにエネルギーを与えて前記プラズマの種を増強して高密度プラズマを生成し、
    前記高密度プラズマを樹脂材料に接触させて、前記樹脂材料の表面を改質することを特徴とするプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法。
  2. 改質された前記樹脂材料の表面に対して、復帰処理を施して前記樹脂材料の表面を元の状態に復帰させることを特徴とする請求項1に記載のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法。
  3. プラズマ生成用ガスに対して放電を生じさせることによってプラズマの種を生成するプラズマ発生室と、
    前記プラズマ発生室から前記プラズマの種およびプラズマ生成用ガスをガス流によって導入するとともに、高周波電流もしくはパルス電流を印加して前記プラズマの種を増強して高密度プラズマを生成するプラズマ増強室と
    を備え、
    前記プラズマ増強室から前記ガス流によって噴射される前記高密度プラズマを樹脂材料に接触させて、前記樹脂材料の表面を改質するように形成されていることを特徴とするプラズマを用いた樹脂表面のコントロール装置。
  4. 改質された前記樹脂材料の表面を元の状態に復帰させる復帰手段を備えることを特徴とする請求項3に記載のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール装置。
  5. 生成される前記プラズマの種およびまたは前記高密度プラズマの温度を制御する温度制御手段が設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のプラズマを用いた樹脂表面のコントロール装置。
JP2015105467A 2015-05-25 2015-05-25 プラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置 Active JP6544798B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015105467A JP6544798B2 (ja) 2015-05-25 2015-05-25 プラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015105467A JP6544798B2 (ja) 2015-05-25 2015-05-25 プラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016216668A true JP2016216668A (ja) 2016-12-22
JP6544798B2 JP6544798B2 (ja) 2019-07-17

Family

ID=57580435

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015105467A Active JP6544798B2 (ja) 2015-05-25 2015-05-25 プラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6544798B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2022016559A (ja) * 2018-08-02 2022-01-21 株式会社Fuji 大気圧プラズマ発生装置

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08279495A (ja) * 1995-02-07 1996-10-22 Seiko Epson Corp プラズマ処理装置及びその方法
JPH1116696A (ja) * 1997-06-25 1999-01-22 Seiko Epson Corp 大気圧プラズマ生成方法および装置並びに表面処理方法
JP2002008894A (ja) * 2000-06-27 2002-01-11 Matsushita Electric Works Ltd プラズマ処理装置及びプラズマ点灯方法
JP2005196980A (ja) * 2003-12-26 2005-07-21 Arios Inc 大気圧プラズマ源
JP2005268170A (ja) * 2004-03-22 2005-09-29 Sharp Corp プラズマ処理装置
JP2007258096A (ja) * 2006-03-24 2007-10-04 Seiko Epson Corp プラズマ処理装置
JP2012033457A (ja) * 2010-07-02 2012-02-16 Hitachi High-Tech Instruments Co Ltd プラズマ処理装置
WO2012176829A1 (ja) * 2011-06-21 2012-12-27 富士フイルム株式会社 ポリエステルフィルムと水系分散液との密着性向上方法、ポリエステルフィルムの製造方法

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08279495A (ja) * 1995-02-07 1996-10-22 Seiko Epson Corp プラズマ処理装置及びその方法
JPH1116696A (ja) * 1997-06-25 1999-01-22 Seiko Epson Corp 大気圧プラズマ生成方法および装置並びに表面処理方法
JP2002008894A (ja) * 2000-06-27 2002-01-11 Matsushita Electric Works Ltd プラズマ処理装置及びプラズマ点灯方法
JP2005196980A (ja) * 2003-12-26 2005-07-21 Arios Inc 大気圧プラズマ源
JP2005268170A (ja) * 2004-03-22 2005-09-29 Sharp Corp プラズマ処理装置
JP2007258096A (ja) * 2006-03-24 2007-10-04 Seiko Epson Corp プラズマ処理装置
JP2012033457A (ja) * 2010-07-02 2012-02-16 Hitachi High-Tech Instruments Co Ltd プラズマ処理装置
WO2012176829A1 (ja) * 2011-06-21 2012-12-27 富士フイルム株式会社 ポリエステルフィルムと水系分散液との密着性向上方法、ポリエステルフィルムの製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2022016559A (ja) * 2018-08-02 2022-01-21 株式会社Fuji 大気圧プラズマ発生装置
JP7200337B2 (ja) 2018-08-02 2023-01-06 株式会社Fuji 大気圧プラズマ発生装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP6544798B2 (ja) 2019-07-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kusano et al. Water-cooled non-thermal gliding arc for adhesion improvement of glass-fibre-reinforced polyester
US11384420B2 (en) Method and device for promoting adhesion of metallic surfaces
JP2009533551A5 (ja)
Adhikari et al. Correlation between helium atmospheric pressure plasma jet (APPJ) variables and plasma induced DNA damage
CN105949836A (zh) 一种栅控等离子体引发气相聚合表面涂层的装置及方法
JP2009010263A (ja) 基板接合装置
JP2016016429A (ja) レーザを用いた部材の接合方法
JP2010095595A5 (ja)
JP2016216668A (ja) プラズマを用いた樹脂表面のコントロール方法およびコントロール装置
Oldham et al. Highly uniform activation of carbon fiber reinforced thermoplastics by low-temperature plasma
KR102020527B1 (ko) 저온 플라즈마 처리
KR101899177B1 (ko) 필름 표면 처리 방법 및 장치
JP4936276B2 (ja) 窒化処理装置
JP2012256501A (ja) プラズマ生成用ガスおよびプラズマ生成方法並びにこれにより生成された大気圧プラズマ
KR20140063519A (ko) 필름 표면 처리 방법 및 장치
WO2010058648A1 (ja) マイクロプラズマを用いた表面改質処理方法及び接合方法
JP4558306B2 (ja) 表面改質方法および該表面改質方法で改質した樹脂材
JP6510774B2 (ja) フィルム表面処理方法及び装置
CN108707427A (zh) 一种基于传热介质的材料粘合方法和装置
JP2014147867A (ja) 樹脂皮膜の形成方法及び樹脂皮膜の形成システム
WO2020170567A1 (ja) 樹脂接合体の製造方法
JP6883838B2 (ja) 被処理体を修飾する方法及び被処理体を修飾する装置
JPWO2019117092A1 (ja) シクロオレフィンポリマーと金属の接合方法、バイオセンサの製造方法、および、バイオセンサ
JP2015081401A (ja) 布帛表面の加工方法
JP2014124898A (ja) グラフェンフィルム、グラフェンロールフィルム及びグラフェンロールフィルムの転写方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180511

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190116

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190219

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190418

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190514

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190613

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6544798

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250