JP2016216307A - 硫化物固体電解質の製造方法 - Google Patents

硫化物固体電解質の製造方法 Download PDF

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徳仁 近藤
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明子 中田
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Abstract

【課題】硫化リチウムを原料に用いない硫化物固体電解質の製造方法を提供する。【解決手段】リチウムアルコキシドと硫化リンとを原料として用いる硫化物固体電解質の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、硫化物固体電解質の製造方法に関する。
近年の移動通信、情報電子機器の発達に伴い、高容量かつ軽量なリチウム二次電池の需要が増加する傾向にある。室温で高いリチウムイオン伝導性を示す電解質のほとんどが液体であり、市販されているリチウムイオン二次電池の多くが有機系電解液を用いている。この有機系電解液を用いたリチウム二次電池では、漏洩、発火・爆発の危険性があり、より安全性の高い電池が望まれている。この要望に対し、有機系電解液の代わりにリチウムイオン伝導性の固体電解質を用いた全固体電池が開発されている。
全固体電池は、電解質の漏洩や発火が起こりにくいという特徴を有する。リチウムイオン伝導性の固体電解質として、硫化物固体電解質が検討されている。硫化物固体電解質は、硫化リチウム(LiS)及び硫化リン等の硫化物を原料として合成される(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、硫化リチウムは反応性に乏しく、反応に時間を要するため、固体電解質の製造費が高くなるという問題があった。
特開2005−228570号公報
本発明の目的は、硫化リチウムを原料に用いない硫化物固体電解質の製造方法を提供することである。
本発明によれば、以下の硫化物固体電解質の製造方法が提供される。
1.リチウムアルコキシドと硫化リンとを原料として用いる硫化物固体電解質の製造方法。
2.前記硫化リンが五硫化二リンである1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
3.前記リチウムアルコキシドと五硫化二リンを、66:33〜80:20(モル比)で混合する、2に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
4.前記リチウムアルコキシドがリチウムエトキシドである1〜3のいずれかに記載の硫化物固体電解質の製造方法。
5.前記原料をメカニカルミリングする工程を有する、1〜4のいずれかに記載の硫化物固体電解質の製造方法。
本発明によれば、硫化リチウムを用いずに硫化物固体電解質を製造することができる。
実施例1及び実施例3で得た硫化物固体電解質のX線回折スペクトルである。 実施例3で得た硫化物固体電解質の31P−NMRスペクトルである。 比較例1で得た生成物のX線回折スペクトルである。
以下、本発明の硫化物固体電解質の製造方法について説明する。尚、本願において、「硫化物固体電解質」とは一般に、硫黄元素を含み、室温で固体であり、イオン伝導性を有する物質と定義する。本発明においては、リチウム元素、硫黄元素、及びリン元素を含む硫化物固体電解質であることが好ましい。
また、硫化物固体電解質の状態を表す「ガラス」及び「ガラスセラミックス」は、次のように定義される。
即ち、「ガラス」とは、X線回折測定においてX線回折パターンが実質的に硫化物固体電解質原料由来のピーク以外のピークを示さないハローパターンである固体電解質をいう。尚、硫化物固体電解質原料由来のピークの有無は問わないものとする。
「ガラスセラミックス」とは、硫化物固体電解質由来のピークが観測される硫化物固体電解質をいう。尚、硫化物固体電解質原料由来のピークの有無は問わないものとする。即ち、ガラスセラミックスは、硫化物固体電解質由来の結晶構造を含み、一部が硫化物固体電解質由来の結晶構造であってもよいし、全部が硫化物固体電解質由来の結晶構造であってもよい。ガラスセラミックスは、例えば、ガラスを結晶化して得ることができる。
本発明の硫化物固体電解質の製造方法は、原料として、リチウムアルコキシドと硫化リンを用いることを特徴とする。従来、原料として多用されていた硫化リチウムに替えて、リチウムアルコキシドを使用することにより、硫化物固体電解質の製造時間を短縮することができる。
本発明で使用するリチウムアルコキシドは、下記式(1)で表される。
ROLi (1)
(式中、Rはアルキル基である。)
Rが示すアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等の直鎖アルキル基,イソプロピル基、t-ブチル基等の分岐アルキル基,シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。炭素数は1〜12が好ましく、1〜4がさらに好ましい。
なかでも、Rがエチル基であるリチウムエトキシドが好ましい。
リチウムアルコキシドは、例えば、金属リチウムとアルコールの反応により合成することができる。リチウムアルコキシドは、アルコール溶液として市販されているものを使用してもよい。
硫化リンとしては、P(三硫化二リン)、P(五硫化二リン)等が挙げられる。好ましくは、五硫化二リンである。
硫化リンは、工業的に製造され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。
本発明では、上述したリチウムアルコキシドと硫化リンを混合し、反応させることにより硫化物固体電解質を製造する。
リチウムアルコキシドと硫化リンの混合比は、使用する化合物の組成を考慮して適宜調整することができる。例えば、硫化リンとして五硫化二リンを用いた場合、リチウムアルコキシドと五硫化二リンをモル比で66:33〜80:20で混合することが好ましい。
尚、出発原料には、上述したリチウムアルコキシドと硫化リンの他に、臭化リチウム、塩化リチウム等を添加してもよい。
原料の混合及び反応は、例えば、メカニカルミリング(MM)法、溶融急冷法、炭化水素系溶媒中で原料を接触させる方法(WO2009/047977)、炭化水素系溶媒中で原料を接触させる手段と粉砕合成手段とを交互に行う方法(特開2010−140893)、溶媒中で原料を接触させる工程の後に粉砕合成工程を行う方法(PCT/JP2012/005992)によって実施できる。
上記方法のうち、本発明ではMM法が好ましい。
MM法は、原料を所定量混合し、機械的なエネルギーを与えることにより硫化物固体電解質を得る方法である。
機械的なエネルギーを与える方法は特に問わないが、例えば、回転ボールミル、転動ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル等の各種ボールミルを用いることができる。
例えば、リチウムアルコキシドと硫化リンを所定量乳鉢にて混合し、上述したボールミル等を使用して所定時間反応させることにより、硫化物固体電解質が得られる。
上記原料を用いたMM法は、室温で反応させることができる。そのため、原料の熱分解が起らず、仕込み組成の硫化物固体電解質を得ることができるという利点がある。
また、MM法では硫化物固体電解質の製造と同時に、微粉末化できるという利点もある。
MM法の条件としては、例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
また、ボールミルのボールは異なる径のボールを混合して使用してもよい。
また、MM処理の際のミル内の温度を調整してもよい。
MM処理時の原料温度は、室温から200℃まで必要に応じて加熱してもよい。
MM法で得られる硫化物固体電解質は、硫化物ガラスであるか、又は、硫化物ガラスの一部がガラスセラミックス化した状態である。該状態の硫化物固体電解質のガラスセラミックス化を促進させるため、焼成処理してもよい。これにより、硫化物固体電解質の電気伝導性を向上できる場合がある。
焼成温度は、例えば130℃〜360℃であり、150℃〜250℃が特に好ましい。焼成時間は、ガラスセラミックスが生成する条件であれば特に限定はなく、瞬時であっても長時間であっても構わない。また、焼成温度までの昇温パターンについても特に限定はない。
また、炭化水素系溶媒中で原料を接触させる手段と粉砕合成手段とを交互に行う方法も好ましい。本方法の粉砕合成手段としては、ビーズミル等を用いることができる。ビーズミルとしては、例えば、アシザワ・ファインテック株式会社製の湿式微粉砕機(スタンダードミルスターミルLMZ、スタンダードミルスターミルLME他)、株式会社シンマルエンタープライゼス製の湿式媒体攪拌ミル(ダイノーミル)、ビューラー株式会社製の高性能横型ビーズミル(Centex,MicroMedia他)、寿工業株式会社製のナノ分散機(ウルトラアペックスミル)、日本コークス工業株式会社製の湿式メディア粉砕機(SCミル、SC−Lミル他)、浅田鉄工株式会社の湿式連続分散機(ピコグレンミル)が挙げられる。
炭化水素系溶媒、原料を接触させる手段(反応槽)等については、例えば、特開2010−140893号公報を参照できる。
実施例1
(1)リチウムエトキシド粉末の調製
リチウム金属のエタノール溶液(リチウムエトキシドとして6.26質量%)を真空引きしながら80℃のオイルバスで加熱することで乾固させることにより、リチウムエトキシド粉末を得た。
(2)硫化物固体電解質の製造
上記(1)で得たリチウムエトキシド粉末(EtOLi)とPを出発原料に用いた。窒素雰囲気下のグローブボックス中で、EtOLiとPを80対20(モル比)で含む混合物を約1gと、粒径10mmφのジルコニア製ボール10個とを、45mLのアルミナ製容器に入れて密閉した。それを遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型式P−7)にて大気中、室温(25℃)にて回転速度を370rpmとし、3時間メカニカルミリング処理した。
得られた泥炭色粘性粉末を、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、脱水ヘプタン(和光純薬製)で分散して回収した。回収物を室温(25℃)で真空乾燥して乾粉にした後、さらに、100℃で5時間真空乾燥し、粉末状の硫化物固体電解質を得た。
(3)硫化物固体電解質の評価
得られた硫化物固体電解質を、不活性ガス(窒素)雰囲気下、20MPaで加圧してペレットに成形した。ペレットの両面に電極としてカーボンを乗せ、再度、錠剤成形機にて加圧することにより、伝導度測定用の成形体(直径約10mm、厚み約1mm)を作製した。
この成形体について、交流二端子法により測定した電気伝導度は室温(25℃)にて5.7×10−7Scm−1であった。
実施例1及び後述する実施例3で得た、硫化物固体電解質のX線回折(XRD)スペクトルを図1に示す。X線回折スペクトルから、Li硫化物ガラスセラミックスの存在が確認された。
実施例2
実施例1で製造した粉末状の硫化物固体電解質を、真空下、200℃で2時間焼成処理した。冷却後、実施例1と同様にして伝導度を測定したところ、電気伝導度は室温(25℃)にて3.2×10−6Scm−1であった。
実施例3
EtOLiとPの混合比率を66対33(モル比)とした以外は、実施例1と同様にして硫化物固体電解質を製造した。硫化物固体電解質のXRDスペクトルにはLi硫化物ガラスセラミックスに帰属されるピークが検出された(図1参照)。
実施例3で得た固体電解質の31P−NMRスペクトルを図2に示す。31P−NMR測定によりPS 3−構造の存在が確認された。
比較例1
硫化リチウムとPを出発原料に用いた。窒素雰囲気下のグローブボックス中で、硫化リチウムとPを75対25のモル比に調整した混合物を約1gと、粒径10mmφのジルコニア製ボール10個とを、45mLのアルミナ製容器に入れて密閉した。それを遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型式P−7)にて大気中、室温(25℃)にて回転速度を370rpmとし、5時間メカニカルミリング処理して、粉末状の生成物を回収した。
比較例1で得た生成物のX線回折スペクトルを図3に示す。XRDスペクトルではLiS由来のピークのみが確認されたことから、原料のLiSが残留していることが確認された。また、硫化物固体電解質が含むLi硫化物ガラスセラミックス等のピークは検出されなかった。
本発明の硫化物固体電解質の製造方法は、原料として硫化リチウムを使用する従来の製造方法よりも短時間で硫化物固体電解質を製造できる。従って、硫化物固体電解質の製造費用を低減できる。

Claims (5)

  1. リチウムアルコキシドと硫化リンとを原料として用いる硫化物固体電解質の製造方法。
  2. 前記硫化リンが五硫化二リンである請求項1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  3. 前記リチウムアルコキシドと五硫化二リンを、66:33〜80:20(モル比)で混合する、請求項2に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  4. 前記リチウムアルコキシドがリチウムエトキシドである請求項1〜3のいずれかに記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  5. 前記原料をメカニカルミリングする工程を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の硫化物固体電解質の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110526224A (zh) * 2019-08-26 2019-12-03 浙江工业大学 一种五硫化二磷粉体的机械球磨合成方法

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