JP2016215214A - エレクトロスラグ溶接方法及びエレクトロスラグ溶接装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エレクトロスラグ溶接装置100は、溶接ワイヤ6に給電するコンタクトチップ5を有する溶接トーチ4と、摺動式銅当て金2と、溶接トーチ4及び摺動式銅当て金2を搭載した走行台車16と、溶融スラグ浴検出器13と、フラックス供給装置14と、フラックス供給制御装置15と、走行台車制御装置17とを備える。フラックス供給制御装置15は、コンタクトチップ5の先端から溶融スラグ浴7までの溶接ワイヤ6の長さLdが予め定めた長さとなるように、フラックスの供給を制御する。走行台車制御装置17は、基準電流値に対して溶接電流8が予め定めた関係となるように走行台車16の走行速度を制御する。そして、スラグ浴深さLsを予め定めた深さに保ちつつ溶接が行われる。
【選択図】図1
Description
溶込みに影響する要因としては、溶接電流、溶接電圧、ワイヤ突出し長などに加えて、エレクトロスラグ溶接ではスラグ浴深さがある。溶接電流、溶接電圧、ワイヤ突き出し長などは容易に管理できるパラメータであるが、スラグ浴深さを測定することは難しく、制御することが難しい。
以上、特許文献1と特許文献2に示す方法で摺動式当て金を用いたエレクトロスラグ溶接を行うと、スラグ浴深さが変化し、溶込みや溶接金属の機械的性質に影響を及ぼすため、溶接作業性が優れるものの、残念ながら長い溶接線の構造物溶接に適用不可能であった。
また、走行台車制御装置は、予め定めた関係として、溶接電流が基準電流値より大きくなると走行台車の走行速度を増大させ、溶接電流が基準電流値より小さくなると走行台車の走行速度を減少させるように制御することを特徴とすることができる。
さらに、スラグ浴検出器は、スラグ浴検出器の検出端子がスラグ浴と接触したときに溶接電圧を検知して、スラグ浴を検出することを特徴とすることができる。
そして、スラグ浴検出器は、検知した溶接電圧を、ウィービング周期の1/2〜2倍を時定数とするフィルタで処理して、スラグ浴を検出したか否かの判定を行うことを特徴とすることができる。
また、検出端子は、溶接トーチと連結されていることを特徴とすることができる。
さらに、スラグ浴検出器は、スラグ浴検出器の検出端子に直流電源から抵抗を通して電圧を印加し、検出端子がスラグ浴と接触したとき、検出端子の電圧が低下することによりスラグ浴を検出することを特徴とすることができる。
そして、スラグ浴検出器は、フォトセンサーを有し、スラグ浴の光を検出して、スラグ浴を検出することを特徴とすることができる。
また、フラックス供給装置は、ソレノイドにより駆動される弁によりフラックスを供給することを特徴とすることができる。
さらに、フラックス供給装置は、モータによって駆動されるスクリューによりフラックスを供給することを特徴とすることができる。
そして、基準電流値は、ワイヤ送給速度を変更した場合、ワイヤ送給速度と基準電流値との関係を示す予め定められた関数をもとに、自動的に変更されることを特徴とすることができる。
また、基準電流値は、溶接ワイヤの種別に応じて定められる関数により種別ごとに求められることを特徴とすることができる。
<溶接装置の構成>
まず、本実施の形態に係るエレクトロスラグ溶接装置100について説明する。図1は、本実施の形態に係るエレクトロスラグ溶接装置100の概略構成の一例を示す図である。図1において、矢印Zの示す方向を垂直方向(上下方向)の上方向とし、矢印Xの示す方向を板厚方向(左右方向)の右方向とするとともに、紙面に対して垂直に裏面より表面に向かう方向を水平横方向Yの手前方向とする。また、図2は、図1に示すエレクトロスラグ溶接装置100を矢印Tから見た図である。すなわち、図2は、エレクトロスラグ溶接装置100を上方より見下ろした図である。ただし、図2では、後述する溶接トーチ4、フラックス供給装置14、フラックス供給制御装置15、走行台車16、走行台車制御装置17等を省略している。
フラックス供給装置14は、溶融スラグ浴7にフラックス12を投入する。フラックス12は溶融して溶融スラグになるため、フラックス12を投入することにより、溶融スラグ浴7の量が増えることとなる。
フラックス供給制御装置15は、フラックス供給装置14の動作を制御し、溶融スラグ浴7に投入されるフラックス12の量を調整する。
走行台車制御装置17は、走行台車16の走行速度を増大させたり減少させたりして、走行台車16の動作を制御する。
まず、溶融スラグ浴7の深さLsを一定にするための第1の要件について説明する。
フラックス供給制御装置15は、溶融スラグ浴検出器13が溶融スラグ浴7を検出していない場合、すなわち、摺動式銅当て金2の上部に設置された溶融スラグ浴検出器13が溶融スラグ浴7の上面に接触していない場合には、フラックス12を投入するようにフラックス供給装置14を制御する。一方、フラックス供給制御装置15は、溶融スラグ浴検出器13が溶融スラグ浴7を検出している場合、すなわち、摺動式銅当て金2の上部に設置された溶融スラグ浴検出器13が溶融スラグ浴7の上面に接触している場合には、フラックス12の投入を停止するようにフラックス供給装置14を制御する。このように、フラックス供給装置14は、溶融スラグ浴検出器13が溶融スラグ浴7を検出するようにフラックス12を投入し、溶融スラグ浴7の深さLsを調整する。
図3−1〜図3−3は、溶融スラグ浴7の深さ、溶接ワイヤ6の長さ、溶接電流8、溶込み幅の相関関係を示す図である。ここで、図3−1〜図3−3に示すように、ドライエクステンションLdが予め定めた長さに制御された状態において、溶融スラグ浴7の深さLsが、Ls1>Ls2>Ls3と変化すると、溶接ワイヤ6が溶融スラグ浴7に浸漬している長さ(以下、ウェットエクステンションLwと称する)は、ほぼ比例してLw1>Lw2>Lw3と変化し、溶込み幅Lmは、Lm1<Lm2<Lm3と変化する。一方、溶接電流8の値をIwとすると、溶接電流Iwとワイヤ送給速度Vwとの関係は、次の数1式のように表される。
次に、溶融スラグ浴検出器13の構成について詳細に説明する。図4は、溶融スラグ浴検出器13の構成例を示す図である。
図4に示すように、本実施の形態に係る溶融スラグ浴検出器13は、検出端子18、差動増幅器19、接触判定基準信号設定器20、比較器21を有し、検出端子18は導電性金属である銅からなり、一般には水冷されている。検出端子18は、溶融スラグ浴7に接触すると溶接電圧の一部の電圧を検出する。
接触判定基準信号設定器20は、検出端子18が溶融スラグ浴7に接触したときに検出する電圧の半分程度の電圧を、基準信号として出力する。例えば、図5に溶融スラグ浴7表面の溶接電圧分布の一例を示すが、検出端子18は通常6ボルト(電圧の単位:V)程度の溶接電圧を検出するので、例えば、基準信号としてはその半分の約3Vの電圧に設定される。検出端子18が溶融スラグ浴7に接触していないときは、溶接電圧が検出端子18にかからないので、検出端子18の電圧は0Vである。
この誤検知を防止するため、溶融スラグ浴検出装置13は、差動増幅器19の後にフィルタ回路22が設置され、フィルタ回路22により処理をした溶接電圧をもとに溶融スラグ浴7を検出したか否かの判定を行うこととしても良い。図7は、図4に示す溶融スラグ浴検出装置13にフィルタ回路22を設けた構成例を示す図である。フィルタ回路22は、溶接トーチ4の揺動周期程度、すなわち周期の1/2から2倍程度の時定数をもったフィルタ回路22とすることが望ましい。
次に、溶融スラグ浴検出器13の他の構成例について説明する。図11及び図12は、溶融スラグ浴検出器13の他の構成例を示す図である。
図11に示す例では、溶融スラグ浴検出器13は、検出端子18、直流電源23、抵抗24、差動増幅器19、フィルタ回路22、接触判定基準信号設定器20、比較器21を有している。直流電源23は、例えば100V〜200V程度の電源であり、この直流電源23の出力は、抵抗24を通して検出端子18に接続される。ここで抵抗24の値は、例えば20kΩ〜500kΩである。
この方法によれば、検出端子18と溶融スラグ浴7とが接触していないときの検出端子18の電圧は100V〜200Vであるのに対して、検出端子18と溶融スラグ浴7とが接触しているときの検出端子18の電圧は3V〜12Vとなり、両電圧の差が大きいので、信頼性のある動作が期待される。
次に、フラックス供給装置14の構成について詳細に説明する。図13−1及び図13−2は、フラックス供給装置14の構成例を示す図である。
図13−1に示すように、本実施の形態に係るフラックス供給装置14は、ソレノイド27が矢印28のように往復動することにより、回転軸29を中心として、弁30が矢印31のように回転し、フラックス供給ノズル32が開閉する。この動作により、フラックスホッパー33のフラックス12が溶融スラグ浴7に供給される。
次に、フラックス供給装置14の他の構成例について説明する。図14は、フラックス供給装置14の他の構成例を示す図である。
図14に示す例では、フラックス供給装置14において、モータ34によって駆動されるスクリュー35の回転により、フラックスホッパー33からフラックス12が押し出され、図示していない経路を経て、溶融スラグ浴7へと供給される。
次に、実験結果を示し、本実施の形態における実施例について説明する。なお、本実施の形態はこの実施例に限定されるものではない。
図1に示すエレクトロスラグ溶接装置100において、1.6mmφの溶接ワイヤ6を用い、ワイヤ送給速度15.4m/min、溶接電圧42V、基準電流値380Aの条件で、板厚60mmの20°V開先溶接を行った。なお、チップ母材距離を45mmとした。また、スラグ浴深さ25mmで溶接を開始した。エレクトロスラグ溶接が安定してから、スラグ浴制御しない場合(従来法)と本実施の形態にてスラグ浴を制御する場合との比較結果を図15に示す。ここで、本実施の形態での結果を実施例、従来法での結果を比較例として示す。
Claims (12)
- エレクトロスラグ溶接において、
コンタクトチップ先端からスラグ浴までの溶接ワイヤの長さが予め定めた長さとなるようにフラックスを供給し、
基準電流値に対して溶接電流が予め定めた関係となるように溶接トーチと摺動式当て金とを搭載した走行台車の走行速度を調整し、
スラグ浴深さを予め定めた深さに保ちつつ溶接を行うエレクトロスラグ溶接方法。 - 溶接ワイヤに給電するコンタクトチップを有する溶接トーチと、摺動式当て金と、
前記溶接トーチ及び前記摺動式当て金を搭載した走行台車と、走行台車制御装置と、
スラグ浴検出器と、フラックス供給装置と、フラックス供給制御装置とを備え、
前記スラグ浴検出器は、前記コンタクトチップの先端から予め定めた長さの位置にスラグ浴が上昇してきた場合にスラグ浴を検出し、
前記フラックス供給制御装置は、前記コンタクトチップの先端からスラグ浴までの溶接ワイヤの長さが前記予め定めた長さとなるように、前記スラグ浴検出器がスラグ浴を検出した場合にはフラックスの供給を停止し、当該スラグ浴検出器がスラグ浴を検出していない場合にはフラックスの供給を行うように前記フラックス供給装置を制御し、
前記走行台車制御装置は、ワイヤ送給速度に応じて定められた基準電流値に対して溶接電流が予め定めた関係となるように前記走行台車の走行速度を制御し、
スラグ浴深さを予め定めた深さに保ちつつ溶接を行うエレクトロスラグ溶接装置。 - 前記走行台車制御装置は、前記予め定めた関係として、前記溶接電流が前記基準電流値より大きくなると前記走行台車の走行速度を増大させ、当該溶接電流が当該基準電流値より小さくなると当該走行台車の走行速度を減少させるように制御すること
を特徴とする請求項2に記載のエレクトロスラグ溶接装置。 - 前記スラグ浴検出器は、当該スラグ浴検出器の検出端子がスラグ浴と接触したときに溶接電圧を検知して、スラグ浴を検出すること
を特徴とする請求項2に記載のエレクトロスラグ溶接装置。 - 前記スラグ浴検出器は、検知した前記溶接電圧を、ウィービング周期の1/2から2倍を時定数とするフィルタで処理して、スラグ浴を検出したか否かの判定を行うこと
を特徴とする請求項4に記載のエレクトロスラグ溶接装置。 - 前記検出端子は、前記溶接トーチと連結されていること
を特徴とする請求項4に記載のエレクトロスラグ溶接装置。 - 前記スラグ浴検出器は、当該スラグ浴検出器の検出端子に直流電源から抵抗を通して電圧を印加し、当該検出端子がスラグ浴と接触したとき、当該検出端子の電圧が低下することによりスラグ浴を検出すること
を特徴とする請求項2に記載のエレクトロスラグ溶接装置。 - 前記スラグ浴検出器は、フォトセンサーを有し、スラグ浴の光を検出して、スラグ浴を検出すること
を特徴とする請求項2に記載のエレクトロスラグ溶接装置。 - 前記フラックス供給装置は、ソレノイドにより駆動される弁によりフラックスを供給すること
を特徴とする請求項2に記載のエレクトロスラグ溶接装置。 - 前記フラックス供給装置は、モータによって駆動されるスクリューによりフラックスを供給すること
を特徴とする請求項2に記載のエレクトロスラグ溶接装置。 - 前記基準電流値は、ワイヤ送給速度を変更した場合、当該ワイヤ送給速度と当該基準電流値との関係を示す予め定められた関数をもとに、自動的に変更されること
を特徴とする請求項2に記載のエレクトロスラグ溶接装置。 - 前記基準電流値は、前記溶接ワイヤの種別に応じて定められる前記関数により当該種別ごとに求められること
を特徴とする請求項11に記載のエレクトロスラグ溶接装置。
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