JP2016215137A - 中空糸膜モジュールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、膜モジュールの形態としては、膜モジュール容積当たりの膜面積が平膜よりも大きな中空糸膜を用いた中空糸膜モジュールが用いられるようになってきている。さらに、処理能力向上などの観点から高流量タイプの中空糸膜モジュールが求められ、モジュールサイズは大きくなっている傾向がある。
ポッティング材に熱硬化性樹脂を使用する場合、熱硬化性樹脂は硬化が完了した時点で相当の硬さになっており、刃で押し切って端部を切断する方法では切断する際に相当量のせん断応力が加わる。そのため、モジュールケース内で熱硬化性樹脂との接着部分に剥離が生じ、膜モジュールとしての機能を損なう懸念や、硬い熱硬化性樹脂を切断することで刃の先端がこぼれやすくなり、刃の交換頻度が高くなるという問題がある。
また、チップソーや鋸刃を用いて削りながら切断する方法では、硬い樹脂でも容易に切断はできるものの、削りくず等が中空糸膜の開口部に詰まり、中空糸膜を閉塞させてしまう懸念や、削られる時の衝撃で中空糸膜とポッティング用樹脂の界面で剥離が生じ易いという問題もあった。
さらに、特開平6−63368号公報には、中空糸膜端部を開口させるために切断するポッティング部分に、切断容易な材料を用いる方法が提案されている。しかしながら、この方法では、2種類の樹脂を別々に注入しなければならず、生産性において問題があった。
したがって、高耐薬品性を備えた大容量モジュールを製造する為には、樹脂硬度の大きい熱硬化性樹脂を容易に切断し効率的に開口端面を得る工夫が必要である。
[1] 下記工程(a)〜(c)を含む、中空糸膜モジュールの製造方法。
(a)熱硬化性樹脂を用いて中空糸膜の端部を集束固定する、ポッティング工程
(b)前記工程(a)で得られた中空糸膜モジュールを電磁波で加熱する、熱処理工程
(c)前記工程(c)で得られた中空糸膜モジュールを切断する、切断工程
[2] 前記電磁波がマイクロ波である、[1]記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
[3] 前記熱硬化性樹脂の前記工程(b)前の硬度がASTM Shore D50以上100以下である、[1]又は[2]記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
[4] 前記工程(b)により、前記熱硬化性樹脂の硬度をASTM Shore D10以上50未満に調整する、[1]〜[3]の何れか一項に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
[5] 前記中空糸膜モジュールのサイズが内径20mm以上である、[1]〜[4]の何れか一項記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
電磁波を利用した加熱方法として、誘電加熱がある。誘電加熱とは、高周波交流電界中に被加熱物を置き、高周波(電磁波)の作用による被加熱物自体の発熱によって昇温する加熱方式のことである。誘電加熱は、プラスチック・木材・繊維・紙・食品・セラミックスなど私たちの生活に欠かせない様々な製品の加工分野で広く利用されている。本発明において、使用する電磁波の周波数が、1MHz〜300MHz程度のものを「高周波誘電加熱」、UHF帯などを使用するものを「マイクロ波(μWAVE)加熱」と定義する。この時、UHF帯とはマイクロ波の一部で0.3〜3GHzを指し、マイクロ波とは0.3〜300GHzを指す。
<中空糸膜モジュール>
一般に、中空糸膜モジュールは、中空糸膜、モジュールケース及びポッティング材にて構成される。
膜モジュールの備える分離膜としては、例えば、中空糸膜、平膜、チューブラー膜、スパイラル膜等が挙げられる。脱気性能の観点から、中空糸膜が好ましい。
本発明の中空糸膜モジュールを構成する中空糸膜の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド等が挙げられる。中空糸膜は、多孔質膜であっても非多孔質膜であってもよく、用途によって任意に選択できる。
本発明で使用するモジュールケースは、用途によって任意に選択できるが、耐熱性や耐溶剤性を有するものが好ましく、また加工性や価格の面から、樹脂製であることが好ましい。耐熱性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂などが挙げられる。
また、モジュールケースの形状は、円筒状に限定されず、用途によって任意に選択できる。
本発明の膜モジュール用ポッティング材(以下、単に「ポッティング材」という場合ある。)は、既知の熱硬化性樹脂による接着剤を用いることができる。例えば、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂は単独で、又は、混合して用いることができる。また、これら樹脂は中空糸膜やモジュールケースとの接着性や、耐熱性、耐薬品性を考慮して選択できるが、中でも硬化反応条件を幅広く選択できるポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
中空糸膜モジュールのポッティング部においては、ケースの中に熱硬化性樹脂が接着固定されていても、熱硬化性樹脂がむき出しになっていてもよい。
本発明は、下記工程(a)〜(c)を含む。
(a)熱硬化性樹脂を用いて中空糸膜の端部を集束固定する、ポッティング工程
(b)前記工程(a)で得られた中空糸膜モジュールを電磁波で加熱する、熱処理工程
(c)前記工程(c)で得られた中空糸膜モジュールを切断する、切断工程
<(a)ポッティング工程>
本発明における、ポッティング工程は既知の方法を用いることができる。
ポッティング工程において、中空糸膜端部を樹脂固定するときの樹脂注入方法は、中空糸膜とポッティング部をセットしたものを回転させ遠心力によって樹脂を注入する方法や、樹脂を落差による重力で注入する方法、シリンジ等を用いて圧入する方法等が挙げられるが、任意の樹脂注入法を用いることができる。
本発明において、熱処理工程は、電磁波(例えば、マイクロ波)で実施する。電磁波(例えば、マイクロ波)を利用した加熱は、コンロなどによる加熱に比べ、容器に入ったものであっても内部から、均一に急速加熱することができる。これは、電磁波が、被加熱物の水分子を振動・回転させることで、被加熱部を昇温させることができるためと考えられる。したがって、切断前にポッティング材を電磁波で熱処理することにより、短時間かつ均一に加温することが可能となる。それにより、ポッティング材の硬度が下がり、切断後の開口端面を効率的に形成させることができる。
つまり、熱処理工程に電磁波を用いると、短時間で均一に加温できる為、作業性も良く硬度が下がった状態で切断時の負荷を小さくすることが可能である。その結果、中空糸膜の開口端部も滑らかに切断できるとともに、剥離、リークのない中空糸膜モジュールを生産性良く製造できる。
したがって、開口端面がガラス状になることを防ぎ、ポッティング材を効率的に切断するためには、切断時の硬度を下げて切断負荷を抑える必要がある。
前記方法により中空糸膜端部を目止めし、集束固定した後ポッティングする個所に所定量の熱硬化性樹脂を注入すると、次第に硬化反応が進み、流動性がなくなり、熱硬化性樹脂は硬化物となって、膜を介した一次側と二次側を密に仕切る部材として機能する。その後、この熱硬化性樹脂は、中空糸膜の開口端面を形成するために中空糸膜とともに切断する。
本発明は、切断工程の前に、後述する電磁波による熱処理工程を有することを特徴とする。
(硬度測定方法)
ポッティング材の熱処理工程前の硬度は、以下の方法で実施した。
まず、エポキシ樹脂成分(a)として、p−アミノフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER630」)、エポキシ樹脂成分(b)として、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂(東レ・ファインケミカル(株)製「フレップ60」)、エポキシ樹脂成分(c)として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER828」)、硬化剤として、芳香族ポリアミン系硬化剤(エアープロダクスジャパン(株)製「アンカミンLVS」)を表1に示す配合で混合、脱泡し、ポッティング材用のエポキシ樹脂組成物を調製した。次いで、該エポキシ樹脂組成物を2mm厚のスペーサを液密に挟んだ一対のガラス板間に注入して、エポキシ樹脂組成物からなる未硬化の樹脂板を作製し、これを40℃で4時間加温して硬化させた。その後、室温で一晩放置し、硬化した樹脂板を50mm×10mm×2mmにカットし、試験片とした。この試験片に硬度計を刺し、樹脂の硬度(ASTM Shore D)を測定した。
また、ポッティング材の熱処理工程後の硬度は、前記工程で得た試験片を熱処理(マイクロ波で、2450MHz×60秒処理)した後、前記同様に測定した。
下記仕様にて中空糸膜モジュールを作製した。
中空糸膜:三層複合膜(気体透過性の均質層と、該均質層を挟み込む多孔質支持層とか
らなる三菱レイヨン製の気体透過性複合膜)
モジュールケース:内径φ63mm、長さ212mm
モジュールケース材質:ポリエチレン
ポッティング材:エポキシ樹脂 樹脂注入量78mL/片端
(表1記載の配合比で調製したエポキシ樹脂組成物を使用)
樹脂硬度:マイクロ波加熱前 ASTM Shore D72
ポッティング部切断前 ASTM Shore D28
三層膜構造の中空糸膜(三菱レイヨン製MHF200SD)を用いて中空糸膜束を集束固定し、モジュールケース内に挿入した。そして、遠心型のポッティング注入装置にてエポキシ樹脂をモジュールケース端部に注入し硬化させ、片端ずつポッティング部を得た。ポッティング後、室温で一日間静置し、樹脂を硬化させた。その後、マイクロ波で2450MHz×60秒加温し、ポッティング部のエポキシ樹脂を熱処理した。
その後、ギロチン刃を用いて、ポッティング端部を切断し、中空糸膜の開口端面を形成した(切断時ASTM Shore D28)。この時、切断時に温度センサーでポッティング部の表面温度を測定したところ、中心部まで温度斑なく、加温されていた。
これにより得られた中空糸膜モジュールの開口端面は、中空糸膜が潰れることなく切断されており、また、ポッティング材とモジュールケース内面の剥離も確認できなかった。
熱処理工程しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュールを作成した。
しかし、ポッティング工程後、ポッティング部をギロチン刃で切断しようとしたところ、ポッティング部の硬度が大きく切断できなかった(切断時ASTM Shore D72)。
マイクロ波による熱処理の代わりに、熱風乾燥(80℃の乾燥機へ60分投入)したこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜モジュールを作成した。
しかし、ポッティング工程後、ポッティング部をギロチン刃で切断したところ、開口端面がガラス状(脆性破壊)になっていた(切断時ASTM Shore D49)。
以上より、本発明を用いることで、中空糸膜の潰れや、ポッティング材とモジュールケース内面の剥離を抑制し、リークのない中空糸膜モジュールを効率的に(歩留まりよく)製造することができた。
Claims (5)
- 下記工程(a)〜(c)を含む、中空糸膜モジュールの製造方法。
(a)熱硬化性樹脂を用いて中空糸膜の端部を集束固定する、ポッティング工程
(b)前記工程(a)で得られた中空糸膜モジュールを電磁波で加熱する、熱処理工程
(c)前記工程(c)で得られた中空糸膜モジュールを切断する、切断工程 - 前記電磁波がマイクロ波である、請求項1記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
- 前記熱硬化性樹脂の前記工程(b)前の硬度がASTM Shore D50以上100以下である、請求項1又は2記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
- 前記工程(b)により、前記熱硬化性樹脂の硬度をASTM Shore D10以上50未満に調整する、請求項1〜3の何れか一項に記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
- 前記中空糸膜モジュールのサイズが内径20mm以上である、請求項1〜4の何れか一項記載の中空糸膜モジュールの製造方法。
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