JP2016214183A - 脂質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、炭素数12〜18前後の高級脂肪酸を還元して得られる高級アルコールの誘導体は、界面活性剤として用いられている。アルキル硫酸エステル塩やアルキルベンゼンスルホン酸塩等は陰イオン性界面活性剤として利用されている。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルやアルキルポリグリコシド等は非イオン性界面活性剤として利用されている。そしてこれらの界面活性剤は、いずれも洗浄剤又は殺菌剤に利用されている。同じく高級アルコールの誘導体としてアルキルアミン塩やモノ又はジアルキル4級アミン塩等のカチオン性界面活性剤は、繊維処理剤や毛髪リンス剤又は殺菌剤に日常的に利用されている。また、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩は殺菌剤や防腐剤に日常的に利用されている。さらに、植物油脂はバイオディーゼル燃料の原料としても利用されている。
また本発明は、特定の炭素数の脂肪酸、又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させた形質転換体を提供することを課題とする。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)前記タンパク質(a)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつβ−ケトアシル−ACPシンターゼ活性(以下、「KAS活性」ともいう)を有するタンパク質
(c)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)前記タンパク質(c)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質
(e)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(f)前記タンパク質(e)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質
また本発明は、前記タンパク質(a)〜(f)に関する。
さらに本発明は、前記タンパク質(a)〜(f)のいずれか1つをコードする遺伝子に関する。
また本発明の形質転換体は、特定の炭素数の脂肪酸、又はこれを構成成分とする脂質の生産性に優れる。
また本明細書において、脂肪酸や脂肪酸を構成するアシル基の表記において「Cx:y」とあるのは、炭素原子数xで二重結合の数がyであることを表す。「Cx」は炭素原子数xの脂肪酸やアシル基を表す。
さらに本明細書において、塩基配列及びアミノ酸配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,vol.227,p.1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)前記タンパク質(a)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質(前記タンパク質(a)と機能的に均等なタンパク質)
(c)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)前記タンパク質(c)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質(前記タンパク質(c)と機能的に均等なタンパク質)
(e)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(f)前記タンパク質(e)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質(前記タンパク質(e)と機能的に均等なタンパク質)
KASは、脂肪酸合成経路においてアシル基の鎖長制御に関与する酵素である。植物の脂肪酸合成経路は葉緑体に局在する。葉緑体では、アセチル−ACPを出発物質とし、炭素鎖の伸長反応が繰り返され、最終的に炭素数16又は18のアシル−ACPが合成される。次いで、アシル−ACPチオエステラーゼ(以下、「TE」ともいう)の作用によってアシル−ACPのチオエステル結合が加水分解され、遊離の脂肪酸が生成する。
脂肪酸合成の第一段階では、アセチル−ACPとマロニルACPとの縮合反応により、アセトアセチルACPが生成する。この反応をKASが触媒する。次いで、β−ケトアシル−ACPレダクターゼによりアセトアセチルACPのケト基が還元されてヒドロキシブチリルACPが生成する。続いて、β−ヒドロキシアシル−ACPデヒドラーゼによりヒドロキシブチリルACPが脱水され、クロトニルACPが生成する。最後に、エノイル−ACPレダクターゼによりクロトニルACPが還元されて、ブチリルACPが生成する。これら一連の反応により、アセチル−ACPからアシル基の炭素鎖が2個伸長されたブチリルACPが生成する。以下、同様の反応を繰り返すことで、アシル−ACPの炭素鎖が伸長し、最終的に炭素数16又は18のアシル−ACPが合成される。
タンパク質がKAS活性を有することは、例えば、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結した融合遺伝子を、脂肪酸分解系が欠損した宿主細胞へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養し、宿主細胞内又は培養液中の脂肪酸組成の変化を常法により分析することで確認できる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結した融合遺伝子を宿主細胞へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養した後、細胞の破砕液に対し、各種アシル−ACPを基質とした鎖長伸長反応を行うことにより確認できる。
後述の実施例で示すように、前記タンパク質(a)(BKAS431)は、炭素数16の脂肪酸に対する基質特異性を有し、これを選択的に合成する。よって前記タンパク質(a)及び(b)は、KAS Iであると考えられる。
また、前記タンパク質(c)(BKAS1082)及びタンパク質(e)(KKAS250)は後述の実施例で示すように、中鎖アシル−ACPに対する基質特異性を有する。よって前記タンパク質(c)〜(f)は、KAS IVであると考えられる。ここで前記タンパク質(c)のアミノ酸配列は、前記タンパク質(e)のアミノ酸配列と98.7%の同一性を有する。なお本明細書において「中鎖アシル−ACPに対する基質特異性」とは、KASが、主に炭素数4〜12のアシルACPを基質とし、炭素数14までの中鎖アシルACP合成の伸長反応を触媒することをいう。また本明細書において「中鎖」とは、アシル基の炭素数が6以上14以下であることをいう。
KASの基質特異性については、例えば、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にタンパク質をコードする遺伝子を連結した融合遺伝子を、脂肪酸分解系が欠損した宿主細胞へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養して、宿主細胞又は培養液中の脂肪酸組成の変化を常法により分析することで確認できる。また、上記の系に後述するTEを共発現させ、TE単独を発現させた場合の脂肪酸組成と比較することにより確認できる。また、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にタンパク質をコードする遺伝子を連結した融合遺伝子を、宿主細胞へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養した後、細胞の破砕液に対し鎖長伸長反応を行うことにより確認できる。
前記タンパク質(d)において、KAS活性の点から、前記タンパク質(c)のアミノ酸配列との同一性は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(d)として、前記タンパク質(c)のアミノ酸配列に、1又は数個(例えば1個以上86個以下、好ましくは1個以上57個以下、より好ましくは1個以上29個以下、さらに好ましくは1個以上12個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(f)において、KAS活性の点から、前記タンパク質(e)のアミノ酸配列との同一性は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましい。また、前記タンパク質(f)として、前記タンパク質(e)のアミノ酸配列に、1又は数個(例えば1個以上86個以下、好ましくは1個以上57個以下、より好ましくは1個以上29個以下、さらに好ましくは1個以上12個以下)のアミノ酸を欠失、置換、挿入又は付加したタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、例えば、アミノ酸配列をコードする塩基配列に変異を導入する方法が挙げられる。変異を導入する方法としては、部位特異的な変異導入法が挙げられる。具体的な部位特異的変異の導入方法としては、Splicing overlap extension(SOE)-PCR反応を利用した方法、ODA法、Kunkel法等が挙げられる。また、Site-Directed Mutagenesis System Mutan-SuperExpress Kmキット(商品名、タカラバイオ社)、Transformer TM Site-Directed Mutagenesisキット(商品名、Clonetech社)、KOD-Plus-Mutagenesis Kit(商品名、東洋紡社)等の市販のキットを利用することもできる。また、ランダムな遺伝子変異を与えた後、適当な方法により酵素活性の評価及び遺伝子解析を行うことにより目的遺伝子を取得することもできる。
(g)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA
(h)前記DNA(g)の塩基配列と85%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA
(i)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA
(j)前記DNA(i)の塩基配列と85%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA
(k)配列番号6で表される塩基配列からなるDNA
(l)前記DNA(k)の塩基配列と85%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA
前記DNA(j)において、KAS活性の点から、前記DNA(i)の塩基配列との同一性は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。また前記DNA(j)として、配列番号4で表される塩基配列において1又は数個(例えば1個以上256個以下、好ましくは1個以上171個以下、より好ましくは1個以上86個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
前記DNA(l)において、KAS活性の点から、前記DNA(k)の塩基配列との同一性は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。また前記DNA(l)として、配列番号6で表される塩基配列において1又は数個(例えば1個以上256個以下、好ましくは1個以上171個以下、より好ましくは1個以上86個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
TEは、KAS等の脂肪酸合成酵素によって合成されたアシル−ACPのチオエステル結合を加水分解し、遊離の脂肪酸を生成する酵素である。TEの作用によってACP上での脂肪酸合成が終了し、切り出された脂肪酸はトリアシルグリセロール等の合成に供される。そのため、宿主にKAS遺伝子とTE遺伝子を共導入することで、形質転換体の脂質の生産性、特に脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
本発明で用いることができるTEは、アシル−ACPチオエステラーゼ活性(以下、「TE活性」ともいう)を有するタンパク質であればよい。ここで「TE活性」とは、アシル−ACPのチオエステル結合を加水分解する活性をいう。
具体的には、Umbellularia californicaのTE(GenBank AAA34215.1);Cuphea calophylla subsp.mesostemonのTE(GenBank ABB71581);Cinnamomum camphoraのTE(GenBank AAC49151.1);Myristica fragransのTE(GenBank AAB71729);Myristica fragransのTE(GenBank AAB71730);Cuphea lanceolataのTE(GenBank CAA54060);Cuphea hookerianaのTE(GenBank Q39513);Ulumus americanaのTE(GenBank AAB71731);Sorghum bicolorのTE(GenBank EER87824);Sorghum bicolorのTE(GenBank EER88593);Cocos nuciferaのTE(CnFatB1:Jing et al.BMC Biochemistry 2011,12:44参照);Cocos nuciferaのTE(CnFatB2:Jing et al.BMC Biochemistry 2011,12:44参照);Cuphea viscosissimaのTE(CvFatB1:Jing et al.BMC Biochemistry 2011,12:44参照);Cuphea viscosissimaのTE(CvFatB2:Jing et al.BMC Biochemistry 2011,12:44参照);Cuphea viscosissimaのTE(CvFatB3:Jing et al.BMC Biochemistry 2011,12:44参照);Elaeis guineensisのTE(GenBank AAD42220);Desulfovibrio vulgarisのTE(GenBank ACL08376);Bacteriodes fragilisのTE(GenBank CAH09236);Parabacteriodes distasonisのTE(GenBank ABR43801);Bacteroides thetaiotaomicronのTE(GenBank AAO77182);Clostridium asparagiformeのTE(GenBank EEG55387);Bryanthella formatexigensのTE(GenBank EET61113);Geobacillus sp.のTE(GenBank EDV77528);Streptococcus dysgalactiaeのTE(GenBank BAH81730);Lactobacillus brevisのTE(GenBank ABJ63754);Lactobacillus plantarumのTE(GenBank CAD63310);Anaerococcus tetradiusのTE(GenBank EEI82564);Bdellovibrio bacteriovorusのTE(GenBank CAE80300);Clostridium thermocellumのTE(GenBank ABN54268);Cocos nuciferaのTE(CnFatB3:Jing et al.BMC Biochemistry 2011,12:44参照、配列番号7、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号8);Nannochloropsis oculataのTE(配列番号9、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号10);Nannochloropsis gaditanaのTE(配列番号11、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号12);Nannochloropsis granulataのTE(配列番号13、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号14);Symbiodinium microadriaticumのTE(配列番号15、これをコードする遺伝子の塩基配列:配列番号16)、等が挙げられる。また、これらと機能的に均等なタンパク質として、上述したいずれかのTEのアミノ酸配列と50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質も用いることができる。あるいは、上述したいずれかのTEのアミノ酸配列に1又は数個(例えば1個以上147個以下、好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上59個以下、さらに好ましくは1個以上30個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加され、かつTE活性を有するたタンパク質も用いることができる。
前記TEの中でも、Umbellularia californicaのTE、Cocos nuciferaのTE、Cinnamonum camphorumのTE、Elaeis guineensisのTE、Cuphea種のTE、Nannochloropsis oculataのTE、Nannochloropsis gaditanaのTE、Nannochloropsis granulataのTE、Symbiodinium microadriaticumのTE、これらのTEのアミノ酸配列と50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつTE活性を有するタンパク質、又はこれらのTEのアミノ酸配列に1又は数個(例えば1個以上147個以下、好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上59個以下、さらに好ましくは1個以上30個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加され、かつTE活性を有するタンパク質が好ましい。
これらのTE及びそれらをコードする遺伝子の配列情報等は、例えば、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information,NCBI)などから入手することができる。
例えば、Umbellularia californica由来のTEは炭素数12のアシル基に基質特異性を有し、生成する遊離脂肪酸は主にラウリン酸(C12:0)などの炭素数12の遊離脂肪酸である。また、Cinnamonum camphorum及びCocos nuciferaのTEは炭素数14のアシル基に基質特異性を有し、生成する遊離脂肪酸は主にミリスチン酸(C14:0)などの炭素数14の遊離脂肪酸である。また、Escherichia coli K-12株のTEは、炭素数16又は18のアシル基に基質特異性を有し、生成する遊離脂肪酸は主にパルミチン酸(C16:0)、パルミトレイン酸(C16:1)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)などの炭素数16又は18の遊離脂肪酸である。
前記KAS遺伝子に加えて前記TE遺伝子も導入した形質転換体も、常法により作製できる。
前記微生物は原核生物、真核生物のいずれであってもよく、エシェリキア(Escherichia)属の微生物やバシラス(Bacillus)属の微生物等の原核生物、酵母や糸状菌等の真核微生物を用いることができる。なかでも、脂肪酸の生産性の観点から、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、赤色酵母(Rhodosporidium toruloides)、又はモルチエレラ・エスピー(Mortierella sp.)が好ましく、大腸菌がより好ましい。
前記微細藻類としては、遺伝子組換え手法が確立している観点から、クラミドモナス(Chlamydomonas)属の藻類、クロレラ(Chlorella)属の藻類、ファエオダクティラム(Phaeodactylum)属の藻類、又はナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属の藻類が好ましく、ナンノクロロプシス属の藻類がより好ましい。
前記植物体としては、種子に脂質を高含有する観点から、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、西洋アブラナ(Brassica napus)、アブラナ(Brassica rapa)、ココヤシ(Cocos nucifera)、パーム(Elaeis guineensis)、クフェア、ダイズ(Glycine max)、トウモロコシ(Zea mays)、イネ(Oryza sativa)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、クスノキ(Cinnamomum camphora)、又はヤトロファ(Jatropha curcas)が好ましく、シロイヌナズナがより好ましい。
本発明で好ましく用いることができる発現用ベクターとしては、pUC系ベクター(タカラバイオ社製)、pBluescript(pBS) II SK(-)(Stratagene社製)、pSTV系ベクター(タカラバイオ社製)、pET系ベクター(タカラバイオ社製)、pGEX系ベクター(GEヘルスケア社製)、pCold系ベクター(タカラバイオ社製)、pHY300PLK(タカラバイオ社製)、pUB110(Mckenzie,T.et al.,(1986),Plasmid 15(2);p.93-103)、pBR322(タカラバイオ社製)、pRS403(ストラタジーン社製)、pMW218/219(ニッポンジーン社製)、pRI系ベクター(タカラバイオ社製)、pBI系ベクター(クロンテック社製)、IN3系ベクター(インプランタイノベーションズ社製)、pUC19(タカラバイオ社製)、P66(Chlamydomonas Center)、P-322(Chlamydomonas Center)、pPha-T1(Yangmin Gong,Xiaojing Guo,Xia Wan,Zhuo Liang,Mulan Jiang,“Characterization of a novel thioesterase(PtTE)from Phaeodactylum tricornutum”,Journal of Basic Microbiology,2011 December,Volume 51,p.666-672.参照)、及びpJET1(コスモ・バイオ社製)が挙げられる。本発明において、宿主としてシロイヌナズナを用いる場合、pRI系ベクター又はpBI系ベクターが好ましく用いられる。
また、目的のタンパク質をコードする遺伝子が組み込まれたことを確認するための選択マーカーの種類も、使用する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができる選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、ビアラフォス耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子、及びハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。さらに、栄養要求性に関連する遺伝子の欠損等を選択マーカー遺伝子として使用することもできる。
また、形質転換方法は、使用する宿主の種類に応じて常法より適宜選択することができる。形質転換方法としては、カルシウムイオンを用いる形質転換方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、エレクトロポレーション法、LP形質転換方法、アグロバクテリウムを用いた方法、パーティクルガン法等が挙げられる。
大腸菌を宿主として用いる場合、形質転換体の培養は、例えば、LB培地又はOvernight Express Instant TB Medium(Novagen社)で、30〜37℃、0.5〜1日間培養することができる。
また、シロイヌナズナを宿主として用いる場合、形質転換体の培養は、例えば、土壌で温度条件20〜25℃、白色光を連続照射又は明期16時間・暗期8時間等の光条件下で1〜2か月間栽培することができる。
藻類を宿主として用いる場合、培地は天然海水又は人工海水をベースにしたものを使用してもよいし、市販の培養培地を使用してもよい。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上のため、培地に、窒素源、リン源、金属塩、ビタミン類、微量金属等を適宜添加することができる。培地に接種する形質転換体の量は適宜選択することができ、生育性の点から培地当り1〜50%(vol/vol)が好ましい。培養温度は、藻類の増殖に悪影響を与えない範囲であれば特に制限されないが、通常、5〜40℃の範囲である。また藻類の培養は、光合成ができるよう光照射下で行うことが好ましい。また藻類の培養は、光合成ができるように二酸化炭素を含む気体の存在下、又は炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩を含む培地で行うことが好ましい。なお形質転換体の培養は、通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養のいずれでもよく、通気性の向上の観点から、振とう培養が好ましい。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)前記タンパク質(a)のアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質
(c)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)前記タンパク質(c)のアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質
(e)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(f)前記タンパク質(e)のアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質
<3>前記タンパク質(a)又は(b)をコードする遺伝子が、下記DNA(g)又は(h)からなる遺伝子である、前記<1>又は<2>項記載の方法。
(g)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA
(h)前記DNA(g)の塩基配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、の同一性を有する塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA
<4>前記タンパク質(a)及び(b)がKAS Iである、前記<1>〜<3>のいずれか1項記載の方法。
<5>前記タンパク質(d)が、前記タンパク質(c)のアミノ酸配列に、1又は数個、好ましくは1個以上86個以下、より好ましくは1個以上57個以下、さらに好ましくは1個以上29個以下、特に好ましくは1個以上12個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<1>項記載の方法。
<6>前記タンパク質(c)又は(d)をコードする遺伝子が、下記DNA(i)又は(j)からなる遺伝子である、前記<1>又は<5>項記載の方法。
(i)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA
(j)前記DNA(i)の塩基配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、の同一性を有する塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA
<7>前記タンパク質(c)及び(d)がKAS IVである、前記<1>、<5>及び<6>のいずれか1項記載の方法。
<8>前記タンパク質(f)が、前記タンパク質(e)のアミノ酸配列に、1又は数個、好ましくは1個以上86個以下、より好ましくは1個以上57個以下、さらに好ましくは1個以上29個以下、特に好ましくは1個以上12個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<1>項記載の方法。
<9>前記タンパク質(e)又は(f)をコードする遺伝子が、下記DNA(k)又は(l)からなる遺伝子である、前記<1>又は<8>項記載の方法。
(k)配列番号6で表される塩基配列からなるDNA
(l)前記DNA(i)の塩基配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、の同一性を有する塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA
<10>前記タンパク質(e)及び(f)がKAS IVである、前記<1>、<8>及び<9>のいずれか1項記載の方法。
<11>前記宿主が微生物又は植物、好ましくはシロイヌナズナ、である、前記<1>〜<10>のいずれか1項記載の方法。
<12>アグロバクテリウムを用いて前記タンパク質(a)〜(f)のいずれかをコードする遺伝子を宿主としてのシロイヌナズナに導入し、前記形質転換体を作製した、前記<11>項記載の方法。
<13>形質転換体が生産した脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質をシロイヌナズナの種子から採取する、前記<12>項記載の方法。
<14>TEをコードする遺伝子、好ましくは中鎖アシル−ACPに対する基質特異性を有するTEをコードする遺伝子、が前記宿主にさらに導入されている、前記<1>〜<13>のいずれか1項記載の方法。
<15>前記TEが、Umbellularia californicaのTE、Cocos nuciferaのTE、Cinnamonum camphorumのTE、Elaeis guineensisのTE、Cuphea種のTE、Nannochloropsis oculataのTE、Nannochloropsis gaditanaのTE、Nannochloropsis granulataのTE、及びSymbiodinium microadriaticumのTEからなる群より選ばれる少なくとも1種のTEである、前記<14>項記載の方法。
<17>宿主に前記タンパク質(a)〜(f)のいずれかをコードする遺伝子を導入する、形質転換体の製造方法。
<18>前記タンパク質(a)〜(f)のいずれかをコードする遺伝子を宿主に導入し、得られた形質転換体の脂質の生産性を向上させる、宿主の脂質生産性の向上方法。
<19>前記タンパク質(a)〜(f)のいずれかをコードする遺伝子を宿主に導入し、得られた形質転換体が生産する脂質中の脂肪酸組成を改変する、宿主が生産する脂質中の脂肪酸組成を改変する方法。
<21>前記タンパク質(a)又は(b)をコードする遺伝子が、前記DNA(g)又は(h)からなる遺伝子である、前記<16>〜<20>のいずれか1項記載の形質転換体又は方法。
<22>前記タンパク質(a)及び(b)がKAS Iである、前記<16>〜<21>のいずれか1項記載の形質転換体又は方法。
<23>前記タンパク質(d)が、前記タンパク質(c)のアミノ酸配列に、1又は数個、好ましくは1個以上86個以下、より好ましくは1個以上57個以下、さらに好ましくは1個以上29個以下、特に好ましくは1個以上12個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<16>〜<19>のいずれか1項記載の形質転換体又は方法。
<24>前記タンパク質(c)又は(d)をコードする遺伝子が、前記DNA(i)又は(j)からなる遺伝子である、前記<16>〜<19>及び<23>のいずれか1項記載の形質転換体又は方法前記<1>又は<5>項記載の方法。
<25>前記タンパク質(c)及び(d)がKAS IVである、前記<16>〜<19>、<23>及び<24>のいずれか1項記載の形質転換体又は方法。
<26>前記タンパク質(f)が、前記タンパク質(e)のアミノ酸配列に、1又は数個、好ましくは1個以上86個以下、より好ましくは1個以上57個以下、さらに好ましくは1個以上29個以下、特に好ましくは1個以上12個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<16>〜<19>のいずれか1項記載の形質転換体又は方法。
<27>前記タンパク質(e)又は(f)をコードする遺伝子が、前記DNA(k)又は(l)からなる遺伝子である、前記<16>〜<19>及び<26>のいずれか1項記載の形質転換体又は方法。
<28>前記タンパク質(e)及び(f)がKAS IVである、前記<16>〜<19>、<26>及び<27>のいずれか1項記載の形質転換体又は方法。
<29>前記宿主が微生物又は植物、好ましくはシロイヌナズナ、である、前記<16>〜<28>のいずれか1項記載の形質転換体又は方法。
<30>アグロバクテリウムを用いて前記タンパク質(a)〜(f)のいずれかをコードする遺伝子を宿主としてのシロイヌナズナに導入し、前記形質転換体を作製した、前記<29>項記載の形質転換体又は方法。
<31>TEをコードする遺伝子、好ましくは中鎖アシル−ACPに対する基質特異性を有するTEをコードする遺伝子、が前記宿主にさらに導入されている、前記<16>〜<30>のいずれか1項記載の形質転換体又は方法。
<32>前記TEが、Umbellularia californicaのTE、Cocos nuciferaのTE、Cinnamonum camphorumのTE、Elaeis guineensisのTE、Cuphea種のTE、Nannochloropsis oculataのTE、Nannochloropsis gaditanaのTE、Nannochloropsis granulataのTE、及びSymbiodinium microadriaticumのTEからなる群より選ばれる少なくとも1種のTEである、前記<31>のいずれか1項記載の形質転換体又は方法。
<34>前記<33>項記載のタンパク質のいずれか1つをコードする遺伝子。
ここで、本実施例で用いるプライマーの塩基配列を表1に示す。
ココヤシ固形胚乳を液体窒素で凍結した後、マルチビーズショッカー(安井器械製)を用いて破砕した。破砕した固形胚乳にフェノール/クロロホルム、及び50mM Tris-HCl(pH9)を添加して混合し、7500rpmで10分間遠心操作を行い、上清を回収した。回収した上清に再度同様のフェノール/クロロホルム処理を行った。上層を回収し、これに対してエタノール沈殿操作を行い、そこに含まれる核酸成分を精製した。
RNA成分の精製のために、RNeasy Plant Mini Kit(Qiagen,Valencia,California製)を用いた。エタノール沈殿後の核酸ペレットに、1M DTTを1/100容量添加したRLT Bufferを加えてボルテックスしたものを、QIA shredder spin columnにアプライした。以降はキット添付のマニュアルに従って操作を行い、最終的に脱イオン水(dH2O)でココヤシ由来のtotal RNAを溶出した。
得られたRNA溶液に対し、DNaseI(サーモサイエンティフィック社製)をバッファーとともに添加し、1時間37℃にて処理を行った。その後、フェノール/クロロホルム処理及びエタノール沈殿処理を行い、ココヤシ胚乳由来RNA溶液を調製した。
続いて、PrimeScript II 1st strand cDNA Synthesis Kit(商品名、タカラバイオ社製)を用いて、得られたRNAからココヤシのcDNAを調製した。
アメリカのSierra Seed Supply社より入手したカリフォルニアベイの種子を液体窒素で凍結した後、乳鉢と乳房を用いて破砕した。破砕した組織からFruit Mate(商品名、タカラバイオ社製)及びNucleoSpin RNA plant(商品名、タカラバイオ社製)を用いてRNAを抽出した。
続いて、PrimeScript II 1st strand cDNA Synthesis Kit(商品名、タカラバイオ社製)を用いて、得られたRNAからカリフォルニアベイのcDNAを調製した。
花王和歌山工場内より採取したクスノキの種子を液体窒素で凍結した後、乳鉢と乳房を用いて破砕した。破砕した組織からFruit Mate(商品名、タカラバイオ社製)及びNucleoSpin RNA plant(商品名、タカラバイオ社製)を用いてRNAを抽出した。
続いて、PrimeScript II 1st strand cDNA Synthesis Kit(商品名、タカラバイオ社製)を用いて、得られたRNAからクスノキのcDNAを調製した。
PowerPlant DNA Isolation Kit(商品名、MO BIO Laboratories社製,USA)を用いて、茨城県潮来市で採取したアブラナ及び栃木県益子町で採取したアブラナからそれぞれゲノムDNAを抽出した。
茨城県潮来市で採取したアブラナのゲノムDNAをテンプレートとし、DNAポリメラーゼPrimeSTAR(商品名、タカラバイオ社製)、並びに表1に示すプライマーNo.1(配列番号22)及びプライマーNo.2(配列番号23)を用いてPCRを行い、Napin遺伝子のプロモーターを増幅した。
また、栃木県益子町で採取したアブラナのゲノムDNAをテンプレートとし、DNAポリメラーゼPrimeSTAR(商品名、タカラバイオ社製)、並びに表1に示すプライマーNo.3(配列番号24)及びプライマーNo.4(配列番号25)を用いてPCRを行い、Napin遺伝子のターミネーターを増幅した。
増幅を確認したPCR産物をテンプレートとし、Napin遺伝子のプロモーターは表1に示すプライマーNo.5(配列番号26)及びプライマーNo.6(配列番号27)を、Napin遺伝子のターミネーターは表1に示すプライマーNo.3(配列番号24)及びプライマーNo.7(配列番号28)を用いて、それぞれ再度PCRを行った。このようにして、Napin遺伝子のプロモーター配列の断片(配列番号17)と、Napin遺伝子のターミネーター配列の断片(配列番号18)をそれぞれ作製した。
増幅したこれらの遺伝子断片をそれぞれMighty TA-cloning Kit(商品名、タカラバイオ社製)で処理した後、pMD20-Tベクター(商品名、タカラバイオ社製)にライゲーション反応により挿入した。このようにして、Napin遺伝子のプロモーター領域を導入したプラスミドpPNapin1、及びNapin遺伝子のターミネーター領域を導入したpTNapin1をそれぞれ構築した。
増幅したPCR産物は、Mighty TA-cloning Kit(商品名、タカラバイオ社製)を用いて処理した後、pMD20-Tベクターにライゲーション反応により挿入し、プラスミドpPNapin2及びプラスミドpTNapin2をそれぞれ構築した。プラスミドpPNapin2を制限酵素SalIとNotIで、プラスミドpTNapin2を制限酵素SmaIとNotIでそれぞれ処理し、SalIとSmaIで処理したpRI909ベクター(タカラバイオ社製)にライゲーション反応で連結し、プラスミドp909PTnapinを構築した。
また、前記p909PTnapin-Sをテンプレートとし、表1に示すプライマーNo.16(配列番号37)及びプライマーNo.17(配列番号38)を用いて、p909PTnapin-Sの直鎖状断片を増幅した。
NCBIのGene Bankで開示された形質転換用ベクターpYW310(ACCESSION NO.DQ469641)の配列を参考に、Streptomyces hygroscopicus由来のホスフィノトリシンアセチル転移酵素をコードするビアラフォス耐性遺伝子(Bar遺伝子、配列番号20)をGene Script社の提供する受託合成サービスを利用して取得した。
合成したBar遺伝子をテンプレートとし、PrimeSTAR、並びに表1に示すプライマーNo.18(配列番号39)及びプライマーNo.19(配列番号40)を用いてPCRを行い、Bar遺伝子を増幅した。一方、pRI909をテンプレートとし、PrimeSTAR、並びに表1に示すプライマーNo.20(配列番号41)及びプライマーNo.21(配列番号42)を用いてPCR反応を行い、pRI909ベクターからカナマイシン耐性遺伝子を除いた領域を増幅した。これらの遺伝子断片断片をNdeI及びSpeIで処理し、ライゲーション反応で連結して、ベクターpRI909が本来保持するカナマイシン耐性遺伝子をBar遺伝子に置換したプラスミドpRI909Barを構築した。
合成したNapinプロモーターをテンプレートとし、表1に示すプライマーNo.22(配列番号43)及びプライマーNo.23(配列番号44)を用いてPCRを行い、Napinプロモーターを増幅した。また、プラスミドpRI909Barをテンプレートとし、表1に示すプライマーNo.24(配列番号45)及びプライマーNo.25(配列番号46)を用いてPCRを行い、pRI909Barの直鎖状断片を増幅した。さらに、プラスミドp909CTEをテンプレートとし、表1に示すプライマーNo.26(配列番号47)及びプライマーNo.27(配列番号48)を用いてPCRを行い、CTE-Tnapin配列を増幅した。これらの遺伝子断片を、調製例4と同様にIn-fusion反応を行い、プラスミドp909Pnapus-CTE-Tnapinを構築した。
同様に、表1に示すプライマーNo.32(配列番号53)とプライマーNo.33(配列番号54)を用いてBKAS1082をコードする遺伝子断片(配列番号4)を増幅し、p909Pnapus-BKAS431-TnapinのBKAS431遺伝子をBKAS1082遺伝子に代えた、p909Pnapus-BKAS1082-TnapinをIn-fusion反応により構築した。
さらに、クスノキ種子由来cDNAをテンプレートとし、表1に示すプライマーNo.34(配列番号55)とプライマーNo.35(配列番号56)を用いてPCRを行い、KKAS250をコードする遺伝子断片(配列番号6)を増幅した。そして、p909Pnapus-BKAS431-TnapinのBKAS431遺伝子をKKAS250遺伝子に代えた、p909Pnapus-KKAS250-TnapinをIn-fusion反応により構築した。
、インプランタイノベーションズ社によるシロイヌナズナの形質転換受託サービスにより、前記プラスミドp909CTEを用いて、CTE遺伝子を導入したシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana,Colombia株)の形質転換体を得た。得られたシロイヌナズナの形質転換体(WT::CTE)、及び野生型シロイヌナズナ(WT)を、22℃、蛍光灯照明を用いて明期24時間(約4000ルクス)の条件で育成した。約2ヶ月の栽培の後、種子を収穫した。
前記プラスミドp909Pnapus-BKAS431-Tnapin、p909Pnapus-BKAS1082-Tnapin、及びp909Pnapus-KKAS250-Tnapinを導入したアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)GV3101株を用い、p909CTEを導入したシロイヌナズナWT::CTEに対して形質転換操作を行った。播種後1.5ヶ月程度育成したシロイヌナズナの花序を切除後6-7日間育成して再形成された花序に各プラスミドを導入したアグロバクテリウムを感染させた。
アグロバクテリウム感染処理後1-2か月程度育成して得られた種子を、MS寒天培地(100μg/mLクラフォラン、7μg/mLビアラフォスを含む)に播種し、形質転換体(WT::CTE::BKAS431、WT::CTE::BKAS1082、WT::CTE::KKAS250)を選抜した。選抜した形質転換体を22℃、蛍光灯照明を用いて明期24時間の条件で育成し、約2ヶ月の栽培の後、種子を収穫した。
得られた各シロイヌナズナ種子を、マルチビーズショッカー(安井器械社製)で粉砕した。この粉砕物に、7-ペンタデカノン(0.5mg/mLメタノール)20μL(内部標準)と酢酸20μLを添加したクロロホルム0.25mL、及びメタノール0.5mlを加え、十分に攪拌し、15分間静置した。さらに、1.5%KCl 0.25mLとクロロホルム0.25mLを添加して十分に攪拌し、15分間静置した。室温、1500rpmで5分間遠心分離を行った後、下層部分を採取し、窒素ガスで乾燥した。
乾燥したサンプルに、0.5N水酸化カリウム−メタノール溶液100μLを加え、70℃で30分間恒温することによりトリアシルグリセロールを加水分解した。さらに、3‐フッ化ホウ素メタノール錯体溶液を0.3mL添加して乾燥物を溶解し、80℃で10分間恒温することにより脂肪酸のメチルエステル化処理を行った。その後、飽和食塩水0.2mLとヘキサン0.3mLを添加して十分に攪拌し、30分間静置した。脂肪酸のメチルエステルが含まれるヘキサン層(上層部分)を採取し、下記条件のガスクロマトグラフィ(GC)分析に供した。
カラム:DB1-MS(J&W Scientific,Folsom,California)
分析装置:6890(Agilent technology,Santa Clara,California)
カラムオーブン温度:150℃保持0.5分→150〜320℃(20℃/分昇温)→320℃保持2分
注入口検出器温度:300℃
注入法:スプリットモード(スプリット比=75:1)
サンプル注入量:5μL
カラム流速:0.3ml/min コンスタント
検出器:FID
キャリアガス:水素
メイクアップガス:ヘリウム
一方、CTE遺伝子とBKAS431遺伝子を導入した形質転換体WT::CTE::BKAS431では、形質転換体WT::CTEと比べて、C16:0脂肪酸量とC18:n脂肪酸量が増加した。しかし、C12:0脂肪酸量とC14:0脂肪酸量が減少した。
さらに、CTE遺伝子とBKAS1082遺伝子を導入した形質転換体WT::CTE::BKAS1082、並びにCTE遺伝子とKKAS250遺伝子を導入した形質転換体WT::CTE::KKAS250では、形質転換体WT::CTEと比べて、C12:0脂肪酸量が増加し、C16:0脂肪酸量が減少した。
BLASTプログラム(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)によるホモロジーサーチを用いて、前記BKAS431、BKAS1082及びKKAS250の同定を行った。
その結果、BKAS431はKAS Iとしてアノテーションされた。前述のように、KAS Iはアシル−ACPを炭素数16まで伸長させる。これは、前記表2に示した、BKAS431遺伝子を導入することでC16:0脂肪酸量が増加した結果と一致する。
一方、BKAS1082及びKKAS250はKAS IIとしてアノテーションされた。なお、前述のように、KAS IIは炭素数16のアシル−ACPを炭素数18のアシル−ACPへ変換する反応を触媒する酵素である。しかしこのアノテーションの結果は、BKAS1082遺伝子又はKKAS250遺伝子を導入することでC12:0などの中鎖脂肪酸量が増加するという、前記表2に示す結果とは一致しない。これらの結果は、植物のKASについての従来の知見が不十分であり、中鎖脂肪酸の生成に関与するKAS IV遺伝子がほとんど同定されていないためと考えられる。
Claims (10)
- 下記タンパク質(a)〜(f)のいずれかをコードする遺伝子を宿主に導入して得た形質転換体を培養して脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)前記タンパク質(a)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつβ−ケトアシル−ACPシンターゼ活性を有するタンパク質
(c)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)前記タンパク質(c)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつβ−ケトアシル−ACPシンターゼ活性を有するタンパク質
(e)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(f)前記タンパク質(e)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつβ−ケトアシル−ACPシンターゼ活性を有するタンパク質 - アシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子が前記宿主にさらに導入されている、請求項1記載の製造方法。
- 前記宿主が植物である、請求項1又は2記載の製造方法
- 前記宿主がシロイヌナズナである、請求項3記載の製造方法。
- 宿主に下記タンパク質(a)〜(f)のいずれかをコードする遺伝子を導入して得られた形質転換体。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)前記タンパク質(a)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつβ−ケトアシル−ACPシンターゼ活性を有するタンパク質
(c)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)前記タンパク質(c)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつβ−ケトアシル−ACPシンターゼ活性を有するタンパク質
(e)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(f)前記タンパク質(e)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつβ−ケトアシル−ACPシンターゼ活性を有するタンパク質 - アシル−ACPチオエステラーゼをコードする遺伝子が前記宿主にさらに導入されている、請求項5記載の形質転換体。
- 前記宿主が植物である、請求項5又は6記載の形質転換体
- 前記宿主がシロイヌナズナである、請求項7記載の形質転換体。
- 下記タンパク質(a)〜(f)。
(a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)前記タンパク質(a)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつβ−ケトアシル−ACPシンターゼ活性を有するタンパク質
(c)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)前記タンパク質(c)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつβ−ケトアシル−ACPシンターゼ活性を有するタンパク質
(e)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(f)前記タンパク質(e)のアミノ酸配列と85%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつβ−ケトアシル−ACPシンターゼ活性を有するタンパク質 - 請求項9記載のタンパク質のいずれか1つをコードする遺伝子。
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