JP2016210692A - 害虫防除用油性懸濁剤組成物 - Google Patents

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隆士 岡田
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Abstract

【課題】 本発明の目的は、昆虫病原性微生物の7日以上の生存安定性を維持しながら、優れた分散安定性を保ち、水に希釈して散布することにより、効率的に害虫を防除することができる害虫防除用油性懸濁剤組成物を提供することにある。【解決手段】 (a)昆虫病原性微生物、(b)HLB値が11.0〜11.7の界面活性剤、及び(c)植物油を含有し、組成物全量に対して界面活性剤を0.2〜1.0重量%含有することを特徴とする害虫防除用油性懸濁剤組成物を提供する。【選択図】 なし

Description

本発明は、昆虫病原性微生物、界面活性剤及び植物油を含有することを特徴とする害虫防除用油性懸濁剤組成物に関する。
昆虫病原性微生物は、植物を加害する昆虫やダニ類に対する天敵類であり、例えば、メタリジウム(Metarhizium)属、レカニシリウム(Lecanicillium)属、ボーベリア(Beauveria)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属、ヒルステラ(Hirsutella)属又はノムラエ(Nomurae)属に属する天敵糸状菌を有効成分とする殺虫性微生物農薬が知られている。メタリジウム アクリジウム(Metharhizium acridum)を含有する殺虫性微生物農薬(水和剤)としては、商品名GREEN MUSCLE(BECKER UNDERWOOD社製)が市販されている。また、レカニシリウム(Lecanicillium)属に属する糸状菌を含有する殺虫性微生物農薬(水和剤)としては、商品名バータレック(KOPPERT社製)や商品名マイコタール(KOPPERT社製)が市販されている。
特許文献1には、ベーシロマイセス属等の糸状菌;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の界面活性剤;及び特定のエステル化合物を含有する農薬活性微生物製剤が安定した乳化状態と病害虫防除効果を有すると共に、植物に対する薬害のない高い生存安定性を示すことが記載されている。さらに、非特許文献1には、メタリジウム属菌;ヒマワリ油;及びイソパラフィンから成る製剤が、蚊の防除に有用であることが記載されている。しかしながら、これらは、本発明の害虫防除用油性懸濁剤組成物とは異なる。
特開2008−156332号
Parasites & Vectors 2014, 7:198
昆虫病原性微生物を有効成分とする微生物農薬を提供する際の最も重要な課題は有効成分である昆虫病原性微生物が長期間生存できる製品を提供することにある。一般的に微生物農薬は出荷から使用者に届くまでに最大で7日間要するので昆虫病原性微生物の有効量が7日間以上生存可能な微生物農薬の開発が希求されてきた。特に、害虫防除用油性懸濁剤組成物の場合には、昆虫病原性微生物と、界面活性剤及び有機溶媒の組み合わせによっては、有効成分である昆虫病原性微生物が急速に死滅するため、昆虫病原性微生物毎に、適切な製剤処方を見出す必要がある。
特に、昆虫病原性微生物として有用なメタリジウム(Metharizium)属に属する糸状菌を用いたときに、有効成分である本糸状菌の菌体又は胞子が7日間以上生存可能な製剤処方が希求されていた。
さらに、害虫防除用油性懸濁剤組成物中で、昆虫病原性微生物が長期間生存できても、水に希釈したときに分散安定性が保てないと実用に耐えないので、その面における改善も希求されていた。
上記のような状況下、本発明者らは、昆虫病原性微生物に、特定の界面活性剤と、特定の植物油を添加すると、昆虫病原性微生物の生存安定性が高く、水に希釈したときに安定した分散状態が得られ、且つ、高い害虫防除効果を示す害虫防除用油性懸濁剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、(a)昆虫病原性微生物、(b)HLB値が11.0〜11.7の界面活性剤、及び(c)植物油を含有し、組成物全量に対して界面活性剤を0.2〜1.0重量部含有することを特徴とする害虫防除用油性懸濁剤組成物に関する。
本発明によれば、昆虫病原性微生物の生存安定性を維持しながら、水に希釈可能な高い害虫防除効果を有する害虫防除用油性懸濁剤組成物を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられる、成分(a)の昆虫病原性微生物としては、例えば、メタリジウム(Metarhizium)属、レカニシリウム(Lecanicillium)属、ボーベリア(Beauveria)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属、ヒルステラ(Hirsutella)属又はノムラエ(Nomurae)属に属する天敵糸状菌の中から目的とする昆虫に応じて適宜選択することができる。その中でも、メタリジウム(Metharizium)属に属する天敵糸状菌を用いるのが望ましい。これら天敵糸状菌は、自然界から分離してもよいし、菌株保存機関等から購入してもよい。また、これら天敵糸状菌は菌体であっても、胞子であってもよい。
メタリジウム属に属する天敵糸状菌としては、例えば、メタリジウム アニソプリエ(Metharhizium anisopriae)、メタリジウム フラボビリデ(Metharhizium flavovirude)、メタリジウム シリンドロスポラエ(Metharhizium cylindrosporae)、メタリジウム アクリジウム(Metharhizium acridum)等が挙げられる。
レカニシリウム(Lecanicillium)属に属する天敵糸状菌としては、例えば、バーティシリウム レカニ(Verticillium lecanii)2aF43(寄託番号FERM AP-20983)が挙げられる。
ボーベリア属に属する天敵糸状菌としては、例えば、ボーベリア バシアーナ(Beauveria bassiana)、ボーベリア ブロンギアーニ(Beauveria brongniartii)等を挙げることができ、より具体的には、ボーベリア・バッシアナATCC74250株等が挙げられる。
ペシロマイセス(Paecilomyces)属に属する天敵糸状菌としては、例えば、ペシロマイセス・テヌイペス(Paecilomyces tenuipes)、ペシロマイセス・フモソロセウス(Paecilomyces fumosoroseus)、ペシロマイセス リナシナス(Paecilomyces tenuipes)等が挙げられ、より具体的には、ペシロマイセス・テヌイペス ATCC44818、ペシロマイセス・フモソロセウスATCC20874等が挙げられる。
ヒルステラ(Hirsutella)属に属する天敵糸状菌としては、例えば、ヒルステラ トンプソニ(Hirsutella thompsonii)等を挙げられ、ノムラエア属に属する天敵糸状菌としては、例えば、ノムラエ リレイ(Nomurae rileyi)等が挙げられる。
本発明においては、成分(b)のHLB値が11.0〜11.7の界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキセチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリナフチルメタンスルホン酸ジアルキルジメチルアンモニウムなどを用いることができる。中でも、このHLBを有するポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルから成る群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を用いるのが望ましく、このHLB値を有するポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルがさらに望ましい。なお、本発明において、界面活性剤のHLB値は、グリフィン(griffin)法で測定された値を意味する。
本発明組成物において、成分(c)の植物油としては、昆虫病原性微生物の生存安定性を阻害しない溶媒として機能するものであれば何れのものでもよく、例えば、大豆油、ナタネ油、トウモロコシ油、アマニ油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ヒマシ油、パーム油、アボガド油等が挙げられるが、大豆油、ナタネ油及びトウモロコシ油から成る群から選択される少なくとも一種が望ましい。
本発明の害虫を防除する方法においては、本発明組成物を施用する際に、必要により動力噴霧器、肩掛け噴霧器、ハンドスプレーヤー等の噴霧器を用い、害虫、害虫の生息場所、害虫から保護すべき植物等に散布する。また、施用に際して、天敵糸状菌に悪影響のない他の殺虫剤、殺ダニ剤や肥料、殺菌剤、植物生長調節剤等と混合して施用することもできる。
本発明組成物を用いて防除される害虫としては、例えば、等脚類、鞘翅目害虫、鱗翅目害虫、線虫類、腹足類、直翅目害虫、植物寄生性ダニ類、アザミウマ目害虫、双翅目害虫、膜翅目害虫、隠翅目害虫、シラミ目害虫、等翅目害虫、半翅目害虫、ワラジムシ類、ムカデ類、ヤスデ類などが挙げられる。本発明組成物は、特に農園芸作物および樹木などを土壌中で加害する害虫や、農園芸作物や樹木の種子を加害する害虫、農園芸作物および樹木の葉や果実を加害する害虫、例えば、前記線虫類、等脚類、鞘翅目害虫、鱗翅目害虫、腹足類、直翅目害虫、植物寄生性ダニ類、半翅目害虫などの防除に有効である。また、本発明組成物は、土壌に処理することにより、線虫類、土壌中に生息する害虫を防除できる。土壌への処理方法としては、土壌混和処理や土壌灌注処理等が挙げられる。各種害虫の具体例を以下に示す。
等脚類としては、ダンゴムシ、ワラジムシなどが挙げられる。
鞘翅目害虫としては、ウエスタンコーンルートワーム(Diabrotica virgifera virgifera)、サザンコーンルートワーム(Diabrotica undecimpunctata howardi)等のコーンルートワーム類;ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)等のコガネムシ類;メイズウィービル(Sitophiluszeamais)、イネゾウムシ(Echinocnemus squameus)、アリモドキゾウムシ(Cylas formicarius)、イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus)、アルファルファタコゾウムシ(Hypera pastica)、アズキゾウムシ(Callosobruchuys chienensis)等のゾウムシ類;オキナワカンシャクシコメツキ(Melanotus okinawensis)、トビイロムナボソコメツキ(Agriotes ogurae fusciollis)、クシコメツキ(Melanotus legatus)等のハリガネムシ類;チャイロコメノゴミムシダマシ(Tenebrio molitor)、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)等のゴミムシダマシ類;ウリハムシ(Aulacophora femoralis)、キスジノミハムシ(Phyllotreta striolata)、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)等のハムシ類;ニジュウヤホシテントウ(Epilachna vigintioctopunctata)等のエピラクナ類;ナガシンクイムシ類;アオバアリガタハネカクシ(Paederus fuscipes)等が挙げられる。
鱗翅目害虫としては、ニカメイガ(Chilo suppressalis)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、ヨーロピアンコーンボーラー(Ostrinia nubilalis)、シバツトガ(Parapediasia teterrella)、ワタノメイガ(Notarcha derogata)、ノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)等のメイガ類;ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、トリコプルシア属、ヘリオティス属、ヘリコベルパ属等のヤガ類;モンシロチョウ(Pierisrapae)等のシロチョウ類;アドキソフィエス属、ナシヒメシンクイ(Grapholita molesta)、コドリンガ(Cydia pomonella)等のハマキガ類;モモシンクイガ(Carposina niponensis)等のシンクイガ類;リオネティア属等のハモグリガ類;リマントリア属、ユープロクティス属等のドクガ類;コナガ(Plutellaxylostella)等のスガ類;ワタアカミムシ(Pectinophora gossypiella)等のキバガ類;アメリカシロヒトリ(Hyphantria cunea)等のヒトリガ類、イガ(Tinea translucens)、コイガ(Tineola bisselliella)等のヒロズコガ類等が挙げられる。
線虫類としては、ミナミネグサレセンチュウ(Pratylenchus coffeae)、キタネグサレセンチュウ(Pratylenchus fallax)、チャネグサレセンチュウ(Pratylenchus loosi)、クルミネグサレセンチュウ(Pratylenchus vulnus)等のネグサレセンチュウ類;ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、ジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)等のシストセンチュウ類;キタネコブセンチュウ(Meloidogyne hapla)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)等のネコブセンチュウ類;イネシンガレセンチュウ(Aphelenchoides besseyi)、イチゴセンチュウ(Aphelenchoides fragarieae)等のアフェレンコイデス類;イシュクセンチュウ類;ワセンチュウ類;ピンセンチュウ類;ロンギドルス類;トリコドルス類;イチゴメセンチュウ;マツノザイセンチュウなどが挙げられる。
腹足類としてはマイマイ、ナメクジなどが挙げられる。
直翅目害虫としては、ケラ、バッタ、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)、クロゴキブリ(Periplaneta fuliginosa)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)、トビイロゴキブリ(Periplaneta brunnea)、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)などが挙げられる。
ハシリダニ科のムギダニ(Penthaleus major)等、ホコリダニ科のシクラメンホコリダニ(Phytonemus pallidus)、チャノホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)等、シラミダニ科のシラミダニの一種(Siteroptes sp.)等、ヒメハダニ科のブドウヒメハダニ(Brevipalpus lewisi)等、ケナガハダニ科のナミケナガハダニ(Tuckerella pavoniformis)等、ハダニ科のアンズアケハダニ(Eotetranychus boreus)、ミカンハダニ(Panonychus citri)、リンゴハダニ(Panonychus ulmi)、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)等、ナガクダフシダニ科のマツフシダニ(Trisetacus pini)等、フシダニ科のミカンサビダニ(Aculops pelekassi)、トマトサビダニ(Aculops lycopersici)、チャノナガサビダニ(Acaphylla theavagrans)、ナシサビダニ(Epitrimerus pyri)、シトラスラストマイト(Phyllocoptruta oleivora)等、ハリナガフシダニ科のイヌツゲフシダニ(Diptacus crenatae)等、コナダニ科のムギコナダニ(Aleuroglyphus ovatus)、ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)、ロビンネダニ(Rhizoglyphus robini)等が挙げられる。
アザミウマ目害虫としては、ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ハナアザミウマ(Thrips hawaiiensis)、チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis)、ヒラズハナアザミウマ(Frankliniella intonsa)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、カキクダアザミウマ(Ponticulothrips diospyrosi)等が挙げられる。
双翅目害虫としては、アカイエカ(Culex pipiens pallens)、コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)等のイエカ類;Aedes aegypti、Aedes albopictus等のエーデス属;Anopheles sinensis等のアノフェレス属;ユスリカ類;イエバエ(Musca domestica)、オオイエバエ(Muscina stabulans)等のイエバエ類;クロバエ類;ニクバエ類;ヒメイエバエ類;タネバエ(Deliaplatura)、タマネギバエ(Delia antiqua)等のハナバエ類;マメハモグリバエ(Liriomyza trifolii)等のハモグリバエ類;ミバエ類;ショウジョウバエ類;チョウバエ類;ブユ類;アブ類;サシバエ類等が挙げられる。
膜翅目害虫としては、アリ類;アシナガバチ類;スズメバチ類;アリガタバチ類;カブラハバチ(Athalia rosae)等のハバチ類;チュウレンジハバチ(Arge pagana)等のミフシハバチ類等が挙げられる。
隠翅目害虫としては、ネコノミ(Ctenocephalides felis)、イヌノミ(Ctenocephalides canis)、ヒトノミ(Pulex irritans)等が挙げられる。
シラミ目害虫としては、コロモジラミ(Pediculus humanus corporis)、ケジラミ(Phthirus pubis)、ヒトジラミ等が挙げられる。
等翅目害虫としては、ヤマトシロアリ、イエシロアリなどが挙げられる。
半翅目害虫としては、ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)等のウンカ類;ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、タイワンツマグロヨコバイ(Nephotettix virescens)等のヨコバイ類;ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ミカンミドリアブラムシ(Aphis citricola)、ニセダイコンアブラムシ(Lipaphis pserudobrassicae)、ナシミドリオオアブラムシ(Nippolachnus piri)、コミカンアブラムシ(Toxoptera aurantii)、ミカンクロアブラムシ(Toxoptera ciidius)等のアブラムシ類;アオクサカメムシ(Nezara antennata)、ホソハリカメムシ(Cletus punctiger)、ホソヘリカメムシ(Riptortus clavetus)、チャバネアオカメムシ(Plautia stali)等のカメムシ類;オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)等のコナジラミ類;アカマルカイガラムシ(Aonidiella aurantii)、サンホーゼカイガラムシ(Comstockaspis perniciosa)、シトラススノースケール(Unaspis citri)、クワシロカイガラムシ(Pseudaulacaspis pentagona)、オリーブカタカイガラムシ(Saissetia oleae)、ミカンノカキカイガラムシ(Lepidosaphes beckii)、ルビーロウムシ(Ceroplastes rubens)、イセリヤカイガラムシ(Icerya purchasi)等のカイガラムシ類;グンバイムシ類;キジラミ類等が挙げられる。
ワラジムシ類としては、ワラジムシ(Porcellio scaber)、ホソワラジムシ(Porcellionides pruinosus)、オカダンゴムシ(Armadillidium vulgare)等が挙げられる。
ムカデ類としては、トビズムカデ(Scolopendra subspinipes mutilans)、アオズムカデ(Scolopendra subspinipes japonica)、アカズムカデ(Scolopendra subspinipes multidens)、ゲジ(Thereuopoda hilgendorfi)等が挙げられる。
ヤスデ類としては、ヤケヤスデ(Oxidus gracilis)、オビババヤスデ(Parafontarialaminata laminata)等が挙げられる。
また、これらの害虫から保護すべき植物としては、例えば、ミカン、リンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、イチジク、オウトウ等の果樹、茶及びナス、キュウリ、トマト、ホウレンソウ、キャベツ、パセリ等の蔬菜類、イチゴ、メロン、スイカ等の果物類、バラ、キク、カーネーション、サクラ、ツバキ等の花木類、ベゴニア等の観葉植物等が挙げられる。
本発明組成物に含まれる各成分の組成物中での配合重量割合(重量%)は、(a)の昆虫病原性微生物が0.01〜20重量%、望ましくは0.5〜20重量%、さらに望ましくは1〜15重量%であり、(b)の界面活性剤が0.01〜20重量%、望ましくは0.5〜10重量%であり、(c)の植物油が60〜99重量%、望ましくは75〜98重量%である。
本発明組成物は、上記構成成分の他、さらに、必要に応じて他構成成分若しくは残部として、昆虫病原性微生物の殺虫活性及び製剤特性を喪失させない範囲において、通常農薬に使用される副資材、例えば、昆虫病原性微生物の栄養源、固体担体、水、pH調整剤、凍結防止剤、酸化防止剤等を適宜添加することができる。
昆虫病原性微生物の栄養源としては、澱粉、ポテトエキス、寒天、糖類、窒素栄養源等が挙げられる。また、固体担体としては、珪藻土、消石灰、炭酸カルシウム、タルク、ホワイトカーボン、カオリン、ベントナイト、カオリナイト、セリサイト、クレー、炭酸ナトリウム、重曹、芒硝、ゼオライト、澱粉等が挙げられる。
これら副資材を添加する場合、その添加量は合計で、本発明組成物の全重量に対して、通常0.1〜50重量%、望ましくは0.5〜20重量%である。
本発明組成物の製造方法には、通常の農薬製剤の製造方法を適用することができる。例えば、(a)の昆虫病原性微生物と、(b)のHLB値が11.0〜11.7の界面活性剤及び(c)の植物油を、さらに必要に応じて他構成成分若しくは残部として各種副資材を混合することにより製造することができる。混合の際には、乳鉢・乳棒、薬さじ等を用いて混合することもできるし、例えば、リボンミキサー、ナウタミキサー等の混合機を用いて混合することもできる。
本発明組成物は、通常、害虫、害虫の生息場所又は害虫から保護すべき植物等に施用することにより使用される。害虫から保護すべき植物に施用する場合には、通常、本発明組成物を水で希釈した後、当該希釈液を当該植物の茎葉等に対して散布処理することにより使用することがよい。
本発明組成物を害虫、害虫の生息場所又は害虫から保護すべき植物等に施用する際の施用量は、昆虫病原性微生物の菌体又は胞子の量で、通常1000m2当たり、1010〜1018CFU/mlであり、望ましくは1012〜1016CFU/mlである。
以下に本発明における望ましい態様の一例を記載するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
(1)(a)昆虫病原性微生物、(b)HLB値が11.0〜11.7の界面活性剤、及び(c)植物油を含有し、組成物全量に対して界面活性剤が0.2〜1.0重量%含有することを特徴とする害虫防除用油性懸濁剤組成物。
(2)(a)の昆虫病原性微生物がメタリジウム(Metharizium)属に属する糸状菌である(1)に記載の組成物。
(3)(a)のメタリジウム(Metharizium)属に属する糸状菌が、メタリジウム アニソプリエ(Metharhizium anisopriae)、メタリジウム フラボビリデ(Metharhizium flavovirude)、メタリジウム シリンドロスポラエ(Metharhizium cylindrosporae)及びメタリジウム アクリジウム(Metharhizium acridum)から成る群から選択される少なくとも一種である(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)(b)の界面活性剤が、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルから成る群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含む(1)〜(3)に記載の組成物。
(5)植物油が大豆油、ナタネ油及びトウモロコシ油から成る群から選択される少なくとも一種の植物油を含む(1)〜(4)に記載の組成物。
(6)(1)〜(5)に記載の組成物を、害虫、その生息場所又は害虫から保護すべき植物に処理することを特徴とする害虫の防除方法。
次に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
予備試験(好適な溶媒の選抜試験)
本試験は、植物病原性微生物の保存に好適な溶媒を選択することを目的とする。供試溶媒を第1表に示す。
インディカ米を水に15時間浸漬した後、オートクレーブで45分間蒸煮した。この米(以下、培地)にメタリジウム アニソプリエを接種した後、26℃、10日間培養した。培地に供試溶媒を注ぎ入れた。供試溶媒中に分散したメタリジウム アニソプリエの胞子数を血球計算盤で計数して、供試溶媒中の胞子粒子数が1.0×1010個/mlになるように調製した(以下「調製液」と称する)。調製液を供試溶媒で108倍希釈した液又は希釈していない液0.1mlをポテト−デキストロース寒天培地(ポテトエキス末0.4%, ブドウ糖2%, 寒天1.5%, pH5.6)に均一に塗布し、26℃、3〜5日間培養した。寒天培地に生育したコロニーの数を計数し、調製液1ml当りの菌数を算出した。この値を0日目の供試溶媒中に含まれるメタリジウム アニソプリエの生菌数(CFU=Colony Forming Unit:コロニー形成単位)とした。希釈していない液を塗布した寒天培地でコロニーがない場合に生菌数がゼロと判断した。調製液は5℃で保存して、7日目、28日目、41日目にもCFUを算出した。結果を第1表に示す。
試験の結果から、大豆油、ナタネ油及びトウモロコシ油中において、メタリジウム アニソプリエ生菌数は41日目後まで大きく減少しなかったので、植物油が溶媒として好適であることが、判明した。
Figure 2016210692
実施例1(メタリジウム アニソプリエ油性懸濁剤組成物の分散安定性評価試験1)
インディカ米を水に15時間浸漬した後、オートクレーブで45分間蒸煮した。この米(以下、培地)にメタリジウム アニソプリエを接種した後、26℃、10日間培養した。培地に植物油を注ぎ入れた後、植物油中に分散した胞子数を血球計算盤で計数して、植物油中の胞子数が1.0×1010個/mlになるように植物油を加えて、調製液を調製した。調製液1mlの質量を計量して、界面活性剤が1重量%含有するようになるように上記調製液と混合して、本発明組成物を得た。なお、界面活性剤としては、HLB値が異なる4種のポリオキシエチレンヒマシ油を用いた。
分散安定性評価試験を実施するために、試験管に本発明組成物1mlに対して3度硬水(CaCl2/2H2O 0.452g、Mgcl2/6H20 0.464g、蒸留水10L) 100mlを入れて、試験管の口をポリ塩化ビニリデンフィルムで覆い30回倒立してふりまぜた。次いで、20℃の恒温機に設置し、所定時間後に油状物分離性の観察を行った。結果を第2表に示す。なお、第2表中の油状物分離性評価の指標は、油状物が分離しなかった場合を○で、分離した場合を×とした。
Figure 2016210692
実施例2(メタリジウム アニソプリエ油性懸濁剤組成物の分散安定性評価試験2)
実施例1と同様の方法で、界面活性剤含有量が1重量%で、HLB値が12.0前後の界面活性剤を用いた本発明組成物と、比較組成物の分散安定性評価試験を行った。分散安定性評価は、所定時間後の油状物分離性と、乳濁液の均一性にて行い、評価結果を第3表に示した。なお、第3表中の油状物分離性評価の指標は、油状物が分離しなかった場合を○で、分離した場合を×とし、均一性評価の指標は、均一な場合を○、不均一な場合を×とした。
Figure 2016210692
実施例3(メタリジウム アニソプリエ油性懸濁剤組成物の分散安定性評価試験3)
植物油として大豆油を用い、界面活性剤として2種類のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(HLB値が11.0又は11.5)を用い、界面活性剤の含有量が0.8、1又は10重量%である本発明組成物を調製し、実施例2と同様の方法で、分散安定性評価試験を行い、結果を第4表に示した。なお、分散安定性評価の指標は、実施例1と同様とした。
Figure 2016210692
実施例4(メタリジウム アニソプリエの油性懸濁剤組成物中での生存期間)
植物油として大豆油を用い、界面活性剤として2種類のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(HLB値が11.0又は11.5)を用い、界面活性剤の含有量が0.2、0.4、0.6、0.8、1.0又は10重量%である油性懸濁剤組成物を調製し、予備試験と同様の方法で、各油性懸濁剤組成物に含まれる生菌数を算出した。結果が示すように、界面活性剤として2種類のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(HLB値が11.0又は11.5)を用い、界面活性剤の含有量が0.2、0.4、0.6、0.8、1.0重量%である油性懸濁剤組成物を調製した場合14日間は生存可能であることが明らかとなった。
Figure 2016210692
実施例5(本発明組成物のミカンキイロアザミウマ殺虫試験)
本発明組成物として、実施例3の試験No.2及びNo.5の組成物を調製した。また、比較のため、実施例3において大豆油を含み、かつ界面活性剤を含まない組成物と、大豆油と界面活性剤を含まない組成物を調製した。調製した各組成物10mlを3度硬水1Lにて100倍希釈して供試薬剤とした。供試薬剤100ml又は3度硬水100mlをワグネルポット1/5000aに入れた滅菌土に潅注処理した。滅菌土に水分が行渡った後、表層1cmから滅菌土を採取して、供試土壌とした。蓋付き容器(SPL #3 10050、直径50×高さ15 mm)に供試土壌とミカンキイロアザミウマ第一蛹20頭を導入した。供試虫を導入後26℃の恒温機で飼育した。導入7日後に羽化した生存成虫数と死亡個体数(成虫及び蛹)を計数して、ミカンキイロアザミウマの死亡率を算出し、結果を第6表に示した。
Figure 2016210692
本発明の害虫防除用乳剤組成物は、昆虫病原性微生物の生存安定性を維持しながら、優れた分散安定性を保つので、水に希釈して散布することにより、効率的に害虫を防除することができる。

Claims (6)

  1. (a)昆虫病原性微生物、(b)HLB値が11.0〜11.7の界面活性剤、及び(c)植物油を含有し、組成物全量に対して界面活性剤を0.2〜1.0重量%含有することを特徴とする害虫防除用油性懸濁剤組成物。
  2. (a)の昆虫病原性微生物がメタリジウム(Metharizium)属に属する糸状菌である請求項1に記載の組成物。
  3. (a)のメタリジウム(Metharizium)属に属する糸状菌が、メタリジウム アニソプリエ(Metharhizium anisopriae)、メタリジウム フラボビリデ(Metharhizium flavovirude)、メタリジウム シリンドロスポラエ(Metharhizium cylindrosporae)及びメタリジウム アクリジウム(Metharhizium acridum)から成る群から選択される少なくとも一種である請求項2に記載の組成物。
  4. (b)の界面活性剤が、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルから成る群から選択される少なくとも一種の界面活性剤を含む請求項1に記載の組成物。
  5. 植物油が大豆油、ナタネ油及びトウモロコシ油から成る群から選択される少なくとも一種を含む請求項1に記載の組成物。
  6. 請求項1に記載の組成物を、害虫、その生息場所又は害虫から保護すべき植物に処理することを特徴とする害虫の防除方法。
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