JP2016209327A - 睡眠深度推定装置、睡眠深度推定方法、およびプログラム - Google Patents

睡眠深度推定装置、睡眠深度推定方法、およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】被験者の睡眠深度をより高い精度で推定することが可能な、新規かつ改良された睡眠深度推定装置を提供する。【解決手段】睡眠深度推定装置10は、生体の振動に応じてドップラーセンサ2により検出されたビート信号を一次元信号に変換する信号変換部と、一次元信号の周波数を推定する周波数推定部と、推定された一次元信号の周波数に対応する周期に相当する区間長を有する基準信号を一次元信号から切り出し、基準信号と周波数を有する正弦波との相関係数を算出することにより、一次元信号の基準時刻を推定する基準時刻推定部と、基準時刻を用いてビート信号の振動情報を特定する振動情報特定部と、特定された振動情報に基づいて生体の睡眠深度を推定する睡眠深度推定部と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、睡眠深度推定装置、睡眠深度推定方法、およびプログラムに関する。
近年、被験者の睡眠状態等の健康状態を判定するために、被験者の呼吸や体動などの振動を非接触で検出し、検出された振動情報に基づき睡眠深度を推定する技術が開発されている。例えば、下記特許文献1には、被験者が使用する寝具に備えつけられたエアパッドを介して被験者の振動を計測し、計測された信号から被験者の振動の周期を算出することにより被験者の睡眠深度を推定する技術が開示されている。また、下記特許文献2には、ドップラーセンサにより取得された被験者の振動を示すIQ信号(I:In−phase、Q:Quadrature−phase)について、IQ平面と呼ばれる二次元平面上における信号のノルムから振動の一周期ごとの波形の境界を特定することにより振動の周期を算出し、算出された振動の周期に基づいて被験者の睡眠深度を判定する技術が開示されている。
特開2006−263032号公報 特開2014−014708号公報
しかし、上記特許文献1においては、振動波形に含まれる微細な揺らぎをローパスフィルタにより減少させているため、微細な揺らぎを含む振動の波形は正確に抽出されていない。よって、呼吸の周期の乱れなどを含む睡眠状態の変化を捉えることは困難である。また、上記特許文献2においては、振動を示すIQ信号にノイズが重畳している場合、または、振動が連続的で切れ目なく生じている場合、振動の周期の区切りとなる振動の停止区間が検出されにくくなるので、推定される振動の周期の精度は低くなり、それに応じて推定される睡眠深度の精度も低くなる。そのため、微細な揺らぎを含む振動の周期を精度高く推定し、被験者の睡眠深度の推定精度を向上させることが望まれる。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、被験者の睡眠深度をより高い精度で推定することが可能な、新規かつ改良された睡眠深度推定装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、生体の振動に応じてドップラーセンサにより検出されたビート信号を一次元信号に変換する信号変換部と、上記一次元信号の周波数を推定する周波数推定部と、推定された上記一次元信号の周波数に対応する周期に相当する区間長を有する基準信号を上記一次元信号から切り出し、上記基準信号と上記周波数を有する正弦波との相関係数を算出することにより、上記一次元信号の基準時刻を推定する基準時刻推定部と、上記基準時刻を用いて上記ビート信号の振動情報を特定する振動情報特定部と、特定された上記振動情報に基づいて上記生体の睡眠深度を推定する睡眠深度推定部と、を備える、睡眠深度推定装置が提供される。
上記基準時刻推定部は、上記基準信号と上記正弦波との相関係数が最大となるときの上記正弦波の位相に基づいて上記基準時刻を推定してもよい。
上記基準時刻推定部は、上記基準時刻を推定する際に用いる上記基準信号の区間において過去に推定された複数の基準時刻を抽出し、抽出された上記複数の基準時刻の分布に基づいて上記基準時刻を特定してもよい。
上記振動情報特定部は、上記基準時刻における二次元ベクトルで表現された上記ビート信号のスカラー量を、上記ビート信号の振幅として特定してもよい。
上記振動情報特定部は、上記基準時刻における上記一次元信号の振幅を、上記ビート信号の振幅として特定してもよい。
上記振動情報特定部は、連続する2つの上記基準時刻の間隔を、上記ビート信号の周期として特定してもよい。
上記睡眠深度推定部は、上記生体の体動の振動情報に基づいて上記生体の睡眠深度を推定してもよい。
上記睡眠深度推定部は、上記生体の睡眠の継続時間に応じて上記生体の睡眠深度の推定条件を変更してもよい。
上記睡眠深度推定装置は、上記ビート信号からカットオフ周波数より大きい周波数の成分を減少させるフィルタ処理を行うフィルタ部をさらに備えてもよい。
上記フィルタ部の上記カットオフ周波数は1.5Hz以上であってもよい。
上記生体の振動は、上記生体の呼吸による振動を含んでもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、生体の振動に応じてドップラーセンサにより検出されたビート信号を一次元信号に変換するステップと、上記一次元信号の周波数を推定するステップと、推定された上記一次元信号の周波数に対応する周期に相当する区間長を有する基準信号を上記一次元信号から切り出し、上記基準信号と上記周波数を有する正弦波との相関係数を算出することにより、上記基準信号の基準時刻を推定するステップと、上記基準時刻を用いて上記ビート信号の振幅および周期を含む振動情報を特定するステップと、特定された上記振動情報に基づいて上記生体の睡眠深度を推定するステップと、を含む、睡眠深度推定方法が提供される。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、生体の振動に応じてドップラーセンサにより検出されたビート信号を一次元信号に変換する信号変換部と、上記一次元信号の周波数を推定する周波数推定部と、推定された上記一次元信号の周波数に対応する周期に相当する区間長を有する基準信号を上記一次元信号から切り出し、上記基準信号と上記周波数を有する正弦波との相関係数を算出することにより、上記基準信号の基準時刻を推定する基準時刻推定部と、上記基準時刻を用いて上記ビート信号の振幅および周期を含む振動情報を特定する振動情報特定部と、特定された上記振動情報に基づいて上記生体の睡眠深度を推定する睡眠深度推定部と、として機能させるための、プログラムが提供される。
以上説明したように本発明によれば、被験者の睡眠深度をより高い精度で推定することが可能である。
本発明の一実施形態に係る睡眠深度推定システムの概要を示す図である。 本発明の一実施形態に係る睡眠深度推定装置の構成例を示すブロック図である。 通過帯域の異なるフィルタによりフィルタ処理されたビート信号から変換された一次元信号の波形を比較する例を示す図である。 ビート信号のIQ平面における軌跡の一例を示す図である。 ビート信号のIQ平面における軌跡について第2変換部による変換処理を実施する例を示す図である。 本発明の一実施形態に係る基準時刻推定部による基準時刻の推定方法の一例を示す図である。 本発明の一実施形態に係る基準時刻推定部による基準時刻の特定方法の一例を示す図である。 本発明の一実施形態に係る深度判別部による睡眠深度の判別フローを示すフローチャートの一例を示す図である。 睡眠深度の推定結果を出力したグラフの一例を示す図である。 本発明の一実施形態に係る睡眠深度推定装置の動作例を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る睡眠深度推定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.睡眠深度推定システムの構成例>
図1は、本発明の一実施形態に係る睡眠深度推定システム1の概要を示す図である。図1を参照すると、睡眠深度推定システム1は、ドップラーセンサ2、および睡眠深度推定装置10を有する。
ドップラーセンサ2は、図1に示すように、例えば部屋の天井等に設置され、検出エリアである部屋の屋内に向けて、光、電磁波、または音波等の放射波を放射し、物体(例えば図1においては人物P)により反射された反射波を受信する。このとき、反射波の周波数は、物体の振動等の運動により生じるドップラー効果により、放射波の周波数から変化する。ドップラーセンサ2は、放射波の周波数と反射波の周波数との差分の周波数を有するビート信号を生成する。ドップラーセンサ2は直交検波方式を搭載してもよく、その場合、ドップラーセンサ2は、余弦波成分(I成分)および正弦波成分(Q成分)の2種類のビート信号を生成する。ドップラーセンサ2は、生成したビート信号を睡眠深度推定装置10に出力する。
なお、ドップラーセンサ2は、物体の振動が検出可能であれば任意の位置に設置可能である。また、図1に示した例では、ドップラーセンサ2は放射波の送信部と反射波の受信部とが一体となって構成されているが、ドップラーセンサ2は、送信部と受信部とを分離した構成により実現されてもよい。また、ドップラーセンサ2が放射する放射波は、物体の振動によりドップラー効果を生じさせることが可能であれば、任意の周波数帯の波であってもよい。例えば、呼吸の振動をドップラーセンサにより検知する場合、2.4GHz〜10.5GHz帯などの、呼吸の振動の変位と比較して波長が大きい波が用いられることが多い。しかし、本実施形態においては、呼吸等の振動の幅広い変位を対象として、かつ波形に含まれる微細なゆらぎを検出するために、24GHz帯などの準ミリ波やミリ波の帯域の波が用いられることが好ましい。
睡眠深度推定装置10は、ドップラーセンサ2から出力されたビート信号から被験者(例えば人物P)の振動情報を特定し、特定された振動情報に基づいて被験者の睡眠深度を推定する装置である。睡眠深度推定装置10は、例えば、ネットワーク上の一または複数の情報処理装置によって実現されてもよい。より具体的には、睡眠深度推定装置10は、サーバやPC(Personal Computer)等により実現されてもよい。ここで、本明細書において振動情報とは、例えば物体の振動波形から得られる振幅や周期を意味する。例えば、睡眠深度推定装置10は、人物Pの呼吸や体動等の振動から得られるビート信号から人物Pの振動情報を特定し、特定された振動情報を用いて人物Pの睡眠深度を推定することが可能である。睡眠深度推定装置10は、例えば、不図示の通信部を介して、推定した睡眠深度を有線または無線により外部装置等に送信することが可能である。これにより、例えば、上記外部装置において、睡眠深度について解析を行うことが可能となる。睡眠深度の解析により、例えば、人物Pの睡眠状態や睡眠時のストレス等を把握することが可能となる。なお、睡眠深度を用いた解析については、上記のような外部装置ではなく、睡眠深度推定装置10本体において行うことも可能である。
ここで、人物Pの振動から得られるビート信号には、人物Pの様々な運動に起因する信号が含まれ得る。例えば、人物Pの呼吸の振動のみならず、人物Pの体動や心拍などの振動もビート信号に含まれ得る。さらに、ドップラーセンサ2が生成したビート信号には、周囲の環境に起因するノイズ等も含まれ得る。そのため、例えば呼吸の振動を検出対象とする場合、呼吸の波形情報のみをビート信号から検出することが望ましい。
例えば、特開2006−263032号公報においては、呼吸の周期を検出するために、振動信号に対して、呼吸の周波数帯に相当する0.15〜0.30Hzのバンドパスフィルタによるフィルタ処理が施されている。しかしその場合、呼吸の一周期ごとに微細な揺らぎが生じている場合において、その揺らぎがバンドパスフィルタにより低減されてしまうため、微細な揺らぎを伴う振動を表現する波形を抽出することが困難となる。そのため、呼吸の周期の乱れなどを含む睡眠状態の変化等を検知することは困難である。
また、特開2014−014708号公報においては、IQ平面上におけるビート信号のノルムを算出し、ノルムが略ゼロとなる時刻を呼吸の吸い込みと吐き出しの切り替わり時として検出することにより、呼吸の周期が推定されている。しかし、例えばビート信号にノイズが多く重畳している場合や、呼吸の動作が切れ目なく連続的である場合、ノルムが略ゼロとなる時刻の検出が困難となる。そのため、呼吸の周期を誤って推定してしまう可能性がある。それに応じて、被験者の睡眠深度の変化等も誤って推定されてしまうおそれがある。
そこで、上記事情を一着眼点にして、睡眠深度推定装置10を創作するに至った。本発明の一実施形態に係る睡眠深度推定装置10は、微細な揺らぎを伴う被験者の呼吸の振動状態を精度高く推定することが可能であるので、睡眠深度の推定精度をさらに高めることができる。以下、一実施形態に係る睡眠深度推定装置10の構成についてより詳細に説明する。
<2.睡眠深度推定装置の構成例>
図2は、本発明の一実施形態に係る睡眠深度推定装置10の構成例を示すブロック図である。図2を参照すると、睡眠深度推定装置10は、呼吸推定部100、体動推定部200、および睡眠深度推定部300を含む。図示された睡眠深度推定装置10は、微細な揺らぎを伴う被験者の呼吸の振動情報、および被験者の体動の振動情報を推定し、推定された各振動情報に基づいて被験者の睡眠深度を推定することができる。以下、各構成の機能について説明する。
[2−1.呼吸推定部]
呼吸推定部100は、ビート信号取得部110、フィルタ部120、信号変換部130、周波数推定部140、基準時刻推定部150、および振動情報特定部160を含む。呼吸推定部100は、取得したビート信号を一次元信号に変換し、変換した一次元信号の周波数を推定し、推定された周波数からビート信号の周期を算出するための一次元信号における基準位置を推定する。そして、呼吸推定部100は、推定された基準位置を用いて、呼吸の振動の周期、または振幅を含む振動情報を特定する。特定された振動情報は、睡眠深度推定部300へ出力される。以下、呼吸推定部100に含まれる各機能の構成について説明する。
(ビート信号取得部)
ビート信号取得部110は、ドップラーセンサ2から出力されるビート信号D(t)を取得する。ドップラーセンサ2から出力されるビート信号D(t)はI成分とQ成分の2波の成分を有し、振幅をA(t)、波長をλ、時刻tにおけるドップラーセンサ2と対象物体(例えば図1に示された人物P)との距離をd(t)、初期位相をφ、直流成分をO、ノイズ成分をwとすると、ビート信号D(t)は、下記の数式1のように表現される。
Figure 2016209327
ビート信号取得部110は、取得したビート信号D(t)をフィルタ部120に出力する。また、ビート信号取得部110は、取得したビート信号D(t)を時系列に不図示の記憶部に記憶してもよい。睡眠時における呼吸の基本周波数は、約0.15〜0.30Hzと言われている。しかし、実際の呼吸の振動を表す信号は正弦波ではなく、複雑な波形を有している。そのため、微細な揺らぎを含む呼吸の周期を正確に抽出するために、サンプリング周波数は、少なくとも呼吸の基本周波数である0.30Hzの5倍以上である1.5Hz以上の周波数成分であることが好ましい。より具体的には、サンプリング周波数は、3Hz以上であることがさらに好ましい。ちなみに、折り返し歪みを抑制するためには、信号のサンプリングの前にナイキスト周波数以下の周波数成分を得るためのローパスフィルタを適用する必要がある。これは、信号からナイキスト周波数以上の成分をある程度除去しないと、波形の歪みにより適切な推定が難しくなるためである。いずれにせよ、呼吸の振動波形の抽出のためには、サンプリング周波数が1.5Hz以上である必要がある。そして、より正確に呼吸の周期を抽出するためには、サンプリング周波数を、3Hz〜20Hz程度に設定することが好ましい。これよりさらに高い周波数とすると、呼吸の周期の推定の精度が改善する可能性もある一方で、帯域が広がるに従い信号に重畳される雑音レベルも多くなる。そのため、サンプリング周波数を20Hzより高く設定しても、呼吸の周期の推定精度の改善以上に、処理量の増加によるデメリットが大きくなると考えられる。ただし、呼吸の周期の推定にとって有効である周波数成分がサンプリングできていれば、サンプリング周波数を高く設定することは、処理量が増加する以外に、周期の推定精度に影響を及ぼさない。なお、本実施形態においては、サンプリング周波数は20Hzである。
(フィルタ部)
フィルタ部120は、ビート信号取得部110が取得したビート信号D(t)に含まれる直流成分Oなどの低周波成分や、ノイズ成分wなどの高周波成分を減少または除去するフィルタ処理を実施し、フィルタ処理されたビート信号D(t)を信号変換部130に出力する。例えば、フィルタ部120は、ビート信号D(t)に含まれる直流成分Oを減少または除去するハイパスフィルタを備えてもよい。ビート信号D(t)の振幅が微弱である場合において、ビート信号D(t)に直流成分Oが含まれたまま不図示の増幅器等により増幅させると、直流成分Oも増幅される。そうすると、ビート信号D(t)のうち呼吸の振動に寄与する特徴を示す信号の波形のみを抽出することが困難である。そこで、ハイパスフィルタによって直流成分Oを減少または除去することにより、ビート信号D(t)のうち、呼吸の振動に寄与する特徴を示す信号の波形を適切に増幅させることが可能となる。上記のようなハイパスフィルタは、例えば睡眠深度推定装置10に備えられるフィルタ回路等のアナログフィルタによって実現されてもよいし、IIR(Infinite Impulse Response:無限インパルス応答)フィルタ等のデジタルフィルタによって実現されてもよい。また、フィルタ部120は、直流成分Oを特定して除去するように減算回路を配置するフィルタ回路によって直流成分Oを減少または除去してもよい。
また、フィルタ部120は、ビート信号D(t)に含まれるノイズ成分wを減少または除去するローパスフィルタを備えてもよい。ローパスフィルタは、例えばカットオフ周波数が1.5Hz以上であるローパスフィルタであってもよい。一般的に、睡眠時における呼吸の基本周波数は、上述したように、約0.15〜0.30Hzと言われている。しかし、被験者の呼吸は、被験者の睡眠状態によって、揺らぎが生じる。例えば、被験者の睡眠が浅い状態である場合、または発熱等により被験者の呼吸が不安定な場合は、呼吸に揺らぎが生じ得る。呼吸の揺らぎに起因する振動は、呼吸の基本周波数よりも高い周波数成分を有する。このような呼吸の揺らぎを正確に抽出するために、ローパスフィルタのカットオフ周波数を、呼吸の基本周波数よりも高い値(例えば5〜10倍以上)に設定することが好ましい。
図3は、通過帯域の異なるフィルタによりフィルタ処理されたビート信号D(t)から変換された一次元信号r(t)の波形を比較する例を示す図である。波形W0は、フィルタ処理がされていないビート信号D(t)から変換された一次元信号r(t)の波形である。波形W1は、通過帯域が0.15〜0.30Hzであるバンドパスフィルタによるフィルタ処理がされたビート信号D(t)から変換された一次元信号r(t)の波形である。波形W2は、通過帯域が3.0Hz以下であるローパスフィルタによるフィルタ処理がされたビート信号D(t)から変換された一次元信号r(t)の波形である。なお、波形W0〜W2で示される信号の位相は同一である。
領域R1において3つの波形を比較してみると、波形W2は波形W0と略同一の形状を示しているのに対し、波形W1は波形W0とは異なる形状を示している。また、波形W0の下限のピーク位置を示す時刻T1の位置について、波形W2の下限のピーク位置を示す時刻は時刻T1と略同一であるのに対し、波形W1の下限のピーク位置を示す時刻は時刻T1と乖離していることが分かる。つまり、通過帯域が0.15〜0.30Hzであるバンドパスフィルタによるフィルタ処理がされたビート信号D(t)から変換された一次元信号r(t)の波形W1は、単純な正弦波に近い波形であり、実際の呼吸の振動を正確に表現していないと言える。この場合、例えば、呼吸の振動に乱れが生じ得るレム睡眠状態を、波形W1を用いて推定することは困難である。一方、通過帯域が3.0Hz以下であるローパスフィルタによるフィルタ処理がされたビート信号D(t)から変換された一次元信号r(t)の波形W2は、波形W0からノイズが取り除かれた呼吸の振動の波形を示している。よって、カットオフ周波数を上記した1.5Hz以上の値である3Hzとするローパスフィルタは、ノイズを取り除きつつ、微細な揺らぎの成分を含む呼吸の振動を抽出することが可能である。しかし、上記のようなローパスフィルタから抽出された波形W2は単純な正弦波形ではないため、例えば特開2006−263032号公報に開示された手法では、呼吸の振動の周期を推定することは困難である。そのため、本発明は、後述する基準時刻推定部150等によって、微細な揺らぎの成分を含む呼吸の振動の周期を推定する。
なお、フィルタ部120を実現する上記のようなローパスフィルタのカットオフ周波数は、上述の通り1.5Hz以上が好ましく、より具体的には、3Hzとすることが好ましいが、呼吸に含まれるより微細な揺らぎを含む振動を抽出したい場合、カットオフ周波数は3Hzを超えてもよい。例えば、上記のカットオフ周波数は、10Hz〜20Hzの間に設定されてもよい。これにより、呼吸に含まれる微細な揺らぎを含む振動を示す信号の周期をより正確に推定することが可能である。ただし、カットオフ周波数が20Hzを超えると、呼吸の振動には微細な揺らぎのみならずノイズが多く含まれ得る。そのため、フィルタ部120を実現するローパスフィルタのカットオフ周波数は20Hz以下であることが好ましい。
(信号変換部)
信号変換部130は、フィルタ部120から出力されたビート信号D(t)を一次元信号r(t)に変換する。例えば、信号変換部130は、ビート信号D(t)のIQ平面における分布に基づいてビート信号D(t)を一次元の第1候補信号R(t)に変換する、第1変換部を有してもよい。また、信号変換部130は、ビート信号D(t)のIQ平面における位置の時間変化に基づいてビート信号D(t)を一次元の第2候補信号R(t)に変換する、第2変換部を有してもよい。さらに、信号変換部130は、上記の2つの変換部を有する場合、第1候補信号R(t)と第2候補信号R(t)の少なくともいずれかを用いることにより1次元信号r(t)を決定する信号決定部を有してもよい。以下、上述した各機能部について説明する。
−第1変換部
第1変換部は、例えば、ビート信号D(t)を表現する二次元ベクトルと、ビート信号D(t)の共分散行列の最大固有値に対応する固有ベクトルとの内積を算出することにより、ビート信号D(t)を第1候補信号R(t)に変換してもよい。つまり、第1変換部は、ビート信号D(t)を最大固有値に対応する主成分方向に射影した第1候補信号R(t)を得ることができる。具体的には、第1候補信号R(t)は、下記の数式2により算出されてもよい。
Figure 2016209327
ここで、b(t)はビート信号D(t)のI成分とQ成分を表現する二次元ベクトル、p(t)は、ビート信号D(t)の共分散行列の最大固有値に対応する固有ベクトルである。なお、ビート信号D(t)を表現する二次元ベクトルの原点は、例えばビート信号D(t)の分布に基づいて推定されてもよい。例えば、過去数秒〜数十秒におけるビート信号D(t)の軌跡の、IQ平面の原点からの最大位置および最小位置の中点が、原点であってもよい。また、最小二乗法等によりビート信号D(t)の軌跡を円や楕円として近似し、その近似した図形の中心点が原点であってもよい。また、フィルタ部120においてハイパスフィルタにより処理されたビート信号D(t)はIQ平面の原点に近接するので、IQ平面の原点が二次元ベクトルの原点であってもよい。
図4は、ビート信号D(t)のIQ平面における軌跡の一例を示す図である。図4に示されるグラフG1を参照すると、IQ平面上においてビート信号D(t)の軌跡Tr1が示されている。例えば、呼吸の振動の変位がドップラーセンサから放射される放射波の波長の1/10程度であるなど比較的小さい場合、ビート信号D(t)は、軌跡Tr1のような扁平な8の字の分布となることが多い。このような場合、例えば軌跡Tr1について主成分分析を行った場合、軸Pc1が示す第1主成分に対応する最大固有値は、他の主成分と比較して大きな値を示す。第1変換部は、ビート信号D(t)を第1主成分に射影することにより、第1候補信号R(t)を得ることができる。
なお、本実施形態に係る第1変換部は、軌跡Tr1について主成分分析等を行うことにより得られる固有値および固有ベクトルを用いてビート信号D(t)を第1候補信号R(t)に変換する。しかし、例えば、軌跡Tr1のような扁平な8の字の分布について、上記扁平方向の軸方向を抽出し、上記軸方向における信号の動きを抽出することが可能であれば、第1変換部は主成分分析以外の方法を用いてビート信号D(t)を第1候補信号R(t)に変換してもよい。
−第2変換部
第2変換部は、例えば、ビート信号D(t)のIQ平面における分布に基づいて推定される分布の中心からのビート信号D(t)の位置までの距離(振幅に相当)と、分布の中心を基準とするビート信号D(t)の回転角度の変化量との積を算出することにより、ビート信号D(t)を第2候補信号R(t)に変換してもよい。例えば、R(t)は、下記の数式3における連続関数(本実施形態においては、シグモイド関数)を利用した関数を用いて算出されてもよい。
Figure 2016209327
ここで、Amp(t)はビート信号D(t)の振幅、θ(t)はビート信号D(t)のIQ平面上における角度であり、θ’(t)は、角度θ(t)の単位時間の角度の変化量、または角度θ(t)の時間微分値である。また、a、b、およびcはいずれも定数であり、自由に設定可能である。
図5は、ビート信号D(t)のIQ平面における軌跡について第2変換部による変換処理を実施する例を示す図である。図5に示されるグラフG2を参照すると、軌跡Tr2上におけるビート信号D(t)について、振幅Amp(t)および角度θ(t)が示されている。振幅Amp(t)および角度θ(t)の変化量θ’(t)の積は、図5に示されている領域Av1の面積速度に相当する。この面積速度は、呼吸の振動の単位時間当たりの大きさに相当する。また、変化量θ’(t)は、呼吸の振動の方向(息の吸い込み、吐き出し)により正負の値を取るため、呼吸の振動の方向を表現できる。そのため、振幅Amp(t)と変化量θ’(t)の積により、呼吸運動の状態を的確に表現することが可能となる。
なお、振幅Amp(t)は、ビート信号D(t)のIQ平面における分布に基づいて推定される分布の中心からのビート信号D(t)の位置までの距離に相当し、また、角度θ(t)は、分布の中心を基準とするビート信号D(t)の回転角度に相当する。ここで、分布の中心とは、例えば図5に示した中心点C1を指す。ここで、ビート信号D(t)の分布の中心は、ビート信号D(t)の分布に基づいて推定されてもよい。例えば、過去数秒〜数十秒におけるビート信号D(t)の分布について、IQ平面の原点からの最大位置と最小位置との中間位置や、分布の中央に相当する位置が、ビート信号D(t)の分布の中心であってもよい。また、最小二乗法等によりビート信号D(t)の軌跡を円や楕円として近似し、その近似した図形の中心点が分布の中心であってもよい。また、フィルタ部120においてハイパスフィルタにより処理されたビート信号D(t)はIQ平面の原点に近接するように分布するので、IQ平面の原点がビート信号D(t)の分布の中心であってもよい。
−信号決定部
信号決定部は、例えば、第1候補信号R(t)または第2候補信号R(t)の一方を一次元信号r(t)と決定してもよい。また、信号決定部は、第1候補信号R(t)と第2候補信号R(t)とを統合させた信号を一次元信号r(t)と決定してもよい。
図4に示した呼吸の振動の変位が小さい場合のビート信号D(t)の軌跡Tr1においては、分布の中心からの角度θ(t)の変化量θ’(t)は、図4に示したビート信号D(t)の軌跡Tr2の場合と比較して、ノイズや量子化誤差の影響により精度が低くなる。つまり、呼吸の振動が小さい場合は、第2候補信号R(t)よりも、第1候補信号R(t)の方が、呼吸の振動の波形を正確に表現し得る。一方で、図5に示した呼吸の振動の変位が大きい場合のビート信号D(t)の軌跡Tr2においては、第1候補信号R(t)よりも、第2候補信号R(t)の方が、呼吸の振動の波形を正確に表現し得る。これは、主成分方向に射影される第1候補信号R(t)の波は呼吸の周期よりも短い周期(高周波)の振動を含んでしまうが、第2候補信号R(t)は、ビート信号D(t)の逐次的な変化を追いかけることにより得られるので、ビート信号D(t)の分布に起因する高周波成分を含まないためである。よって、呼吸の振動の変位が大きい場合は、第1候補信号R(t)よりも、第2候補信号R(t)の方が、呼吸の振動の波形を正確に表現し得る。
信号決定部は、第1候補信号R(t)または第2候補信号R(t)についてそれぞれ比較し、その比較結果に基づいて出力する一次元信号r(t)を決定してもよい。信号決定部は、例えば、どちらの候補信号を優先的に用いるかを決定するためのパラメータとして、評価値sを算出してもよい。評価値sは、例えば各候補信号の周波数の比較結果や、ビート信号D(t)の角度の変化量の偏差等の指標値から決定されてもよい。例えば、信号決定部は、上記のような指標値等について多次元のマッピングを行い、得られた分布に基づいて評価値sを算出してもよい。また、信号決定部は、機械学習等のデータ処理手法を用いて、上記のような指標値を入力することにより得られる出力結果を評価値sとして取得してもよい。
また、信号決定部は、例えば、一次元信号r(t)として一時刻前に一方の候補信号を選択したあとに他方の候補信号に切り替える場合、または、双方の候補信号を統合する場合、双方の候補信号の位相を整合させる必要がある。例えば、第1候補信号R(t)の位相φと第2候補信号R(t)の位相φは必ずしも一致しているとは限らない。そのため、信号決定部は、一方の候補信号の位相を他方の候補信号の位相に整合させる。これにより、一次元信号r(t)の信号の切り替え処理や、双方の候補信号の統合処理において、各候補信号の位相の不整合による波形の乱れを防ぐことができる。なお、本実施形態では、第1候補信号R(t)の位相を第2候補信号R(t)の位相に整合させる処理が実施される。例えば、一方の候補信号をヒルベルト変換により解析信号に変換し、解析信号と他方の候補信号とを積算させて得られる2つの信号の位相差を算出することにより、位相の整合処理を実施することが可能である。
さらに、信号決定部は、上記の位相の整合処理を実施した場合、双方の候補信号を統合する処理を実施してもよい。例えば、信号決定部は、上記のような評価値sを重みとして用いて算出された第1候補信号R1a(t)と第2候補信号R(t)との加重和を、一次元信号r(t)として決定することができる。
以上より、信号変換部130は、呼吸の振動の変位の大小にかかわらず適切な変換手法を選択することができる。信号変換部130によりビート信号D(t)から変換された一次元信号r(t)は、周波数推定部140に出力される。
(周波数推定部)
周波数推定部140は、信号変換部130から出力された一次元信号r(t)の有する周波数を推定する。例えば、周波数推定部140は、呼吸周期の大きな揺らぎに合わせるために、一次元信号r(t)と参照信号との位相差、および位相差の時間変化に基づいて一次元信号r(t)の周波数を推定する、第1周波数推定部を有してもよい。また、周波数推定部140は、第1周波数推定部により推定された推定周波数に対応する周期に相当する区間長を有する比較信号を一次元信号r(t)から切り出し、比較信号と上記の区間長を有する一次元信号r(t)との相関係数を算出することにより一次元信号r(t)の周波数を推定する、第2周波数推定部を有してもよい。以下、第1周波数推定部により推定された一次元信号r(t)の周波数を第1推定周波数と、また、第2周波数推定部により推定された一次元信号r(t)の周波数を第2推定周波数と呼称する。
−第1周波数推定部
第1の周波数推定部は、例えば、時刻tにおける一次元信号r(t)と、参照信号とを積算し、積算された信号の低周波成分を、ローパスフィルタ等を用いて抽出することにより、一次元信号r(tk)と参照信号との位相差ψ(tk)を算出する。ここでは参照信号として、位相変化による周期推定を容易とするため、位相とその時間変化をパラメータにもつ正弦波、または余弦波が用いられる。その場合、参照信号は、時刻tk−1に推定された周波数f(tk−1)を有する正弦波、あるいは余弦波の信号である。そして、第1の周波数推定部は、位相差ψ(tk)と、時刻tk−1に算出された位相差ψ(tk−1)との変化分を算出する。位相差の時間変化分ψ(tk)−ψ(tk−1)は、一次元信号r(t)の周波数の変化によって生じたものと仮定して、第1周波数推定部は、参照信号の周波数f(tk−1)に、位相差の時間変化分ψ(tk)−ψ(tk−1)に相当する周波数を加算して、第1推定周波数f(tk)を出力する。
なお、上記位相差の時間変化分が所定の閾値以上であった場合、周波数のフィードバック値が大きく見積もられやすいため、第1推定周波数f(tk)が振動を伴って収束しないといった問題がある。そのため、参照信号の周波数f(tk−1)に加算する周波数の値は、位相差の時間変化分ψ(tk)−ψ(tk−1)に相当する周波数に、1未満の係数を積算した値でもよい。これにより、比較的短い時間でf(t)が収束することが可能である。
また、算出された第1推定周波数f(tk)が所定の周波数帯域に存在しない場合、参照信号の周波数f(tk−1)を、第1推定周波数f(tk)として出力してもよい。ここで所定の周波数帯域とは、例えば、本実施形態においては、呼吸運動の周期に相当する周波数帯域を意味する。
−第2の周波数推定部
第2の周波数推定部は、入力された一次元信号r(t)の相関分析を行うことにより、第1の周波数推定部により得られた第1推定周波数f(tk)より局所的な変化に対して精度の高い第2推定周波数f(tk)を推定する。まず、第2周波数推定部は、一次元信号r(t)から、時刻tk−Tから時刻tkまでの区間を切り出し、これを比較信号として扱う。Tは、先に推定された第1の周波数f(tk−1)に対応する周期である。次に、第2周波数推定部は、切り出された比較信号を用いて、相関係数を算出する。相関係数の算出範囲は、tk−2Tからtk−Tの範囲を含むことが好ましい。そして第2周波数推定部は、上記の算出範囲において、区間長Tを有する一次元信号r(t)と、比較信号との相関係数R(τ)が最大となるタイムラグτmaxを算出する。このとき、第2周波数推定部は、τ=τmaxのときの相関係数R(τmax)を不図示の記憶部に記憶してもよい。第2周波数推定部は、相関係数算出範囲において算出される相関係数が最大となるときのタイムラグτmaxから、第2推定周波数f(t)を算出する。例えば、第2推定周波数f(t)は、タイムラグτmaxの逆数であってもよい。
−判定部
周波数推定部140は、上述した2つの推定された周波数について、いずれの周波数を用いるかを判定する判定部を有してもよい。例えば、判定部は、2つの推定された周波数の差が所定の閾値以内であるかに基づいて、いずれの周波数を推定周波数f(t)として用いるかを判定してもよい。また、第2周波数推定部で算出されたタイムラグτmaxの値に基づいて、第1推定周波数f(tk)と第2推定周波数f(t)のいずれの周波数を用いるかを判定してもよい。
以上より、周波数推定部140は、おおよその周波数を推定できる第1周波数推定部と、イレギュラーな変動には追従することが困難であるが、波形の局所的な変化を検出することにより周波数を推定する第2周波数推定部とのどちらを用いるかを判定部により判定することにより、微細な揺らぎを多く含む波形の周波数を、1回の呼吸ごとに高い精度で推定することができる。周波数推定部140により推定された推定周波数f(t)は、基準時刻推定部150に出力される。
(基準時刻推定部)
基準時刻推定部150は、推定周波数f(t)に基づいて一次元信号r(t)の基準時刻を推定し、推定した基準時刻を、ビート信号D(t)または一次元信号r(t)の少なくともいずれかとともに振動情報特定部160に出力する。具体的には、基準時刻推定部150は、推定周波数f(t)に対応する周期に相当する区間長を有する基準信号を一次元信号r(t)から切り出し、基準信号と推定周波数f(t)を有する正弦波との相関係数を算出することにより、一次元信号r(t)の基準時刻を推定する。ここで基準時刻とは、本明細書においては、一次元信号r(t)の一周期ごとの波形について、各波形の類似する波形のうち、波形のピークを示す時刻などの共通する特徴を持った時刻を意味する。また、基準時刻は、例えば波形の極小値を示す位置に相当する時刻でもよいし、r(t)=0となるときの時刻でもよい。
図6は、本発明の一実施形態に係る基準時刻推定部150による基準時刻の推定方法の一例を示す図である。図6に示されるグラフG3には、一次元信号OS1、および正弦波RS1が示されている。ここで、基準時刻推定部150は、時刻tにおける一次元信号r(t)の基準時刻RT1を推定する。まず、基準時刻推定部150は、推定周波数f(t)に対応する周期T(t)に相当する区間長を有する基準信号BS1(破線部)を一次元信号OS1から切り出す。このとき、区間の終端はtである。次に、基準時刻推定部150は、推定周波数f(t)を有する正弦波RS1と基準信号BS1との相関係数を、上記区間において算出する。例えば、基準時刻推定部150は、上記区間において正弦波RS1の時刻tにおける任意の初期位相をφ(t)とし、時刻tにおける位相を変化させ、正弦波RS1と基準信号BS1の相関係数が最大となるときの正弦波RS1の位相を特定する。このときの正弦波RS1の位相は、例えば正弦波RS1を解析信号に変換することにより、容易に特定可能である。ここで特定される位相をφRmax(t)とすると、基準時刻RT1は、t−T(φ(t)/2π)となる。ただし、φ(t)=φRmax(t)−φ(t)である。例えば、初期位相φ(t)=0の場合は、グラフG3に示されるように、正弦波RS1のピークにあたる位相を示す時刻が基準時刻RT1となる。これにより、一次元信号r(t)の基準時刻RT1を得ることができる。なお、基準時刻推定部150は、推定した基準時刻RT1を不図示の記憶部に記憶してもよい。
また、基準時刻推定部150は、基準時刻を推定する際に用いた上記のような基準信号の区間Tにおいて過去に推定された複数の基準時刻を抽出し、抽出された複数の基準時刻の分布に基づいて基準時刻を特定してもよい。例えば、基準時刻推定部150は、基準時刻の推定を実施した時刻tを終点とする区間Tの範囲内において過去に推定された基準時刻を不図示の記憶部から抽出し、各基準時刻の分布を取得してもよい。抽出された各基準時刻の分布は、単位区間で仕切られるヒストグラムにおいて表現されてもよい。
図7は、本発明の一実施形態に係る基準時刻推定部150による基準時刻の特定方法の一例を示す図である。図7に示されているグラフG4には、一次元信号OS1が示されている。ここで、時刻tk−1において推定された基準時刻RT3が、t、tk−2、およびtk−3において推定された基準時刻RT2とずれることが生じる。つまり、基準時刻推定部150において推定される基準時刻は必ずしも正確ではなく、誤差を含むことも考えられる。そのため、基準時刻推定部150は、推定した複数の基準時刻の分布から、基準時刻を統計的に特定してもよい。
具体的には、まず、基準時刻推定部150は、tを終点とする基準信号の区間T内において推定された基準時刻の情報を、不図示の記憶部から抽出する。例えば、基準時刻推定部150は、t−Tからtまでの区間において推定処理が実施された時刻t、tk−1、tk−2、tk−3、・・・における各基準時刻の情報を記憶部から抽出し、抽出された各基準時刻に基づくヒストグラムH1を作成する。そして、基準時刻推定部150は、作成したヒストグラムH1をもとに、時刻tにおける基準時刻を特定してもよい。例えば、基準時刻推定部150は、ヒストグラムH1の最頻値M1を示す基準時刻を、時刻tにおける基準時刻として特定してもよい。また、基準時刻推定部150は、区間T内において推定された基準時刻の平均値を算出し、平均値を中心とし、任意の分散値を有するガウス関数とヒストグラムH1とを乗算することにより得られる新たなヒストグラムの最頻値における基準時刻を、時刻tにおける基準時刻として特定してもよい。また、基準時刻推定部150は、最頻値に限定されず、平均値および中間値などの確率分布を代表する値を用いて、時刻tにおける基準時刻を特定してもよい。
(振動情報特定部)
振動情報特定部160は、推定された基準時刻を用いてビート信号D(t)(または一次元信号r(t))の振動情報を特定する。ここで、本明細書において振動情報は、例えば、ビート信号D(t)の周期や振幅を含む。
例えば、振動情報特定部160は、基準時刻推定部150で推定された連続する2つの基準時刻の間隔をビート信号D(t)の周期として特定する。これにより、呼吸の振動の周期を、一周期ごとに特定することが可能である。
また、振動情報特定部160は、基準時刻推定部150で推定された基準時刻における呼吸の振動を表す信号の振幅を、ビート信号D(t)の振幅として特定してもよい。例えば、振動情報特定部160は、基準時刻における二次元ベクトルで表現されたビート信号D(t)のスカラー量を、ビート信号D(t)の振幅として特定してもよい。ここで、スカラー量は、例えば、図5で示した中心C1とビート信号D(t)までの距離に相当する振幅Amp(t)の値であってもよい。
また、振動情報特定部160は、基準時刻における一次元信号r(t)の振幅を、ビート信号D(t)の振幅として特定してもよい。例えば、信号変換部130以降の処理においてビート信号D(t)が保持されず、一次元信号r(t)の情報が保持されている場合、振動情報特定部160は、一次元信号r(t)の振幅から、ビート信号D(t)の振幅を特定してもよい。このとき、振動情報特定部160は、一次元信号r(t)をヒルベルト変換により解析信号に変換し、解析信号と、解析信号の共役信号との積により、ビート信号D(t)の振幅を特定してもよい。これにより、一次元信号r(t)から振幅に係る振動情報を特定することが可能である。また、振動情報特定部160は、特定された振幅を対数変換してもよい。これにより、ドップラーセンサと被験者との距離の変化による振幅の変化の影響(S/N比や量子化誤差など)を低減させることが可能である。
呼吸推定部100は、振動情報特定部160により特定された振動情報を、睡眠深度推定部300へ出力する。ここで、特定された振動情報は呼吸一周期ごとに変化する情報であるため、例えば、振動情報は、ドップラーセンサ2のサンプリング周波数(3Hz以上)よりも低い頻度で睡眠深度推定部300へ出力されてもよい。本実施形態においては、呼吸推定部100は、1Hzの頻度で振動情報を睡眠深度推定部300へ出力する。
以上より、呼吸推定部100は、ドップラーセンサ2から出力されたビート信号D(t)から、被験者の呼吸の振動に係る振動情報(周期や振幅)を推定することができる。特に、呼吸推定部100は、微細な揺らぎを含む呼吸の振動を表す波形の基準位置を推定することにより、呼吸の振動の周期をより正確に推定することが可能である。
[2−2.体動推定部]
体動推定部200は、ドップラーセンサ2から出力されたビート信号D(t)から被験者の体動に係る振動情報を推定し、推定した振動情報を睡眠深度推定部300へ出力する。ここで、体動とは、例えば被験者の寝返りや手足の動きなどを意味する。また、体動に係る振動情報は、例えば、体動の振幅量を含む。
体動推定部200は、まず、ドップラーセンサ2から出力されたビート信号D(t)を取得する。なお、体動推定部200は、呼吸推定部100においてビート信号D(t)を取得したビート信号取得部110から取得してもよい。
次に、体動推定部200は、取得したビート信号D(t)について、ハイパスフィルタやバンドパスフィルタによりフィルタ処理を行う。例えば、ドップラーセンサ2が24GHzの放射波を用いて睡眠中の寝返り等の体動を検出する場合、体動推定部200は、通過帯域が5〜20Hzのバンドパスフィルタを用いることにより、体動を検出することができる。この場合、体動推定部200は、バンドパスフィルタによるフィルタ処理がされたビート信号D(t)のノルムを、体動の振幅量として抽出してもよい。
また、体動推定部200は、バンドパスフィルタによる処理がされたビート信号D(t)について、バンドパスフィルタの通過帯域の上限カットオフ周波数よりも低いサブサンプリング処理を実施してもよい。例えば、体動推定部200は、上限カットオフ周波数が20Hzであるバンドパスフィルタを用いたフィルタ処理がされたビート信号D(t)について、5Hzのサブサンプリング処理を実施してもよい。この場合、ナイキスト周波数である2.5Hzよりも大きい周波数成分が2.5Hz以下の成分として折り返される。しかし、体動推定部200はビート信号D(t)の振幅のみを抽出するので、折り返しにより発生する雑音の影響は受けない。そのため、体動推定部200は、より低いサブサンプリング周波数を用いてサブサンプリング処理を実施することにより、体動の振動情報の推定処理の負荷を低減させることができる。
また、体動推定部200は、抽出した振幅の単位時間当たりの積算値を振幅量として推定してもよい。また、体動推定部200は、上記の積算値を対数変換したものを振幅量として推定してもよい。上記の対数変換を実施することにより、体動推定部200は、微細な体動の差異を強調することができる。信号の強度はセンサと被験者との距離の二乗に反比例して変化するが、対数変換を実施することにより、信号の強度は、上記距離と線形に変化する。これにより、体動推定部200は、センサと被験者との距離による振幅量への影響を低下させることができる。例えば、8畳間の家屋において睡眠深度推定システム1を適用させる場合、被験者とセンサの距離は約2.5〜5mとなるため、対数変換により、信号の強度の減衰率を50%程度に抑えることが可能である。
体動推定部200により推定された振幅量を含む振動情報は、睡眠深度推定部300へ出力される。ここで、推定された振動情報は時間変化する値であるが、例えば、体動推定部200は、呼吸の振動の周波数よりも高い頻度で振動情報を睡眠深度推定部300へ出力してもよい。より具体的には、体動推定部200は、呼吸推定部100の出力頻度である1Hzの頻度で振動情報を睡眠深度推定部300へ出力してもよい。このとき、体動推定部200による出力のタイミングが、呼吸推定部100による出力のタイミングと同期してもよい。これにより、後述する睡眠深度推定部300は、同一のタイミングに推定された呼吸および体動の振動情報に基づいて、被験者の睡眠深度を推定することが可能となる。
[2−3.睡眠深度推定部]
睡眠深度推定部300は、特徴量算出部310、モデル選択部320、および深度判別部330を含む。睡眠深度推定部300は、呼吸推定部100から取得した被験者の呼吸の振動情報、または体動推定部200から取得した被験者の体動の振動情報の少なくともいずれかを用いて、被験者の睡眠深度を推定する。この場合、睡眠深度は所定の区間ごとに推定され、上記の所定の区間の大きさは、特に限定されないが、本実施形態においては、Rechtschaffen, A. and Kales, A.“A Manual of Standardized Terminology, Techniques and Scoring System for Sleep Stage of Human Subjects, Washington Public Health Service U.S. Government Printing Office, Washington, D.C.(1968)に記載された、国際的な睡眠深度判定基準である「R&K法」にのっとり、30秒とする。この30秒の区間をエポックと呼称する。
(睡眠深度について)
まず、睡眠深度推定部300が推定する睡眠深度について説明する。睡眠深度とは、生体の睡眠の状態により分別される睡眠の深さを意味する。睡眠段階は、例えば、上述したR&K法によれば、覚醒、レム睡眠、およびノンレム睡眠の状態に区別可能である。さらに、ノンレム睡眠の状態については、例えば、軽睡眠および深睡眠の状態に区別可能である。本実施形態においては、睡眠深度は4段階に分けて推定するが、他の実施形態においては睡眠深度の段階数について特に限定されない。例えば、他の実施形態において睡眠深度は、覚醒と睡眠の2段階であってもよいし、ノンレム睡眠をさらに細分化したものであってもよい。これらの睡眠深度に応じて、睡眠中の被験者の脳の活動状態や自律神経の活性度、および骨格筋の緊張状態もしくは弛緩状態が変化する。これらの変化は、例えば、被験者の体動の大きさ、呼吸の周期の速さや揺らぎ、または呼吸の振幅の揺らぎ等の特徴に現れる。そのため、睡眠深度推定部300は、上記の特徴について解析を行うことにより、被験者の睡眠深度を推定することができる。以下、睡眠深度推定部300に含まれる各機能の構成について説明する。
(特徴量算出部)
特徴量算出部310は、被験者の睡眠深度を推定するために用いる特徴量を算出する。ここで、特徴量とは例えば以下の特徴量を含み得る。
−体動に関する特徴量bm
体動に関する特徴量bmは、被験者の寝返りなどの体動の大きさを示す特徴量である。bmは、睡眠または覚醒の状態、および、レム睡眠またはノンレム睡眠の状態を判別するために用いられる。例えば、bmの値が低い場合は、体動が小さいので、被験者は睡眠状態であると考えられる。特徴量算出部310は、1秒ごとに1つ得られる体動の振動情報に含まれる振幅量から、bmを算出する。具体的には、特徴量算出部310は、1エポックに含まれる30個の振幅量の平均値を当該エポックにおけるbmとして算出してもよい。
−呼吸の振幅に関する特徴量cv
呼吸の振幅に関する特徴量cvは、呼吸における吸い込みや吐き出しの大きさの揺らぎを示す特徴量である。cvは、睡眠または覚醒の状態、および、軽睡眠または深睡眠の状態を判別するために用いられる。例えば、cvの値が低い場合は、呼吸が安定であるので、被験者は睡眠状態であると考えられる。特徴量算出部310は、1秒ごとに1つ得られる呼吸の振動情報に含まれる振幅から、cvを算出する。具体的には、特徴量算出部310は、1エポックに含まれる30個の振幅の平均値及び標準偏差を算出し、標準偏差を平均値で割ることにより得られる値をcvとして算出してもよい。
−呼吸の周期の長さに関する特徴量resp
呼吸の周期の長さに関する特徴量respは、呼吸の周期の長短を示す特徴量である。respは、軽睡眠または深睡眠の状態を判別するために用いられる。例えば、respの値が低い場合は、呼吸の周期が短いので、被験者はノンレム睡眠のうち睡眠が浅いとされる軽睡眠であると考えられる。特徴量算出部310は、1秒ごとに1つ得られる呼吸の振動情報に含まれる周期から、respを算出する。具体的には、特徴量算出部310は、1エポックに含まれる30個の周期の平均値を算出し、平均値を係数αで割ることにより得られる値をrespとして算出してもよい。ここで、係数αは、被験者の呼吸の周期に合わせて変動する値でもよいし、固定値であってもよい。例えば、係数αは、被験者の睡眠時における呼吸の周波数の平均値であってもよい。これにより、個人差によるrespの値のばらつきを抑制することが可能である。また、係数αを固定値として用いる場合、係数αは、0.2〜0.5程度の値としてもよい。
−呼吸の周期の揺らぎに関する特徴量resp_ave
呼吸の周期の揺らぎに関する特徴量resp_aveは、呼吸の周期の揺らぎの大きさを示す特徴量である。resp_aveは、レム睡眠またはノンレム睡眠の状態を判別するために用いられる。例えば、resp_aveの値が低い場合は、呼吸の周期の揺らぎが小さいので、被験者はノンレム睡眠の状態であると考えられる。特徴量算出部310は、あるエポックにおいて算出されたrespと1エポック前において算出されたrespとを比較することにより算出する。具体的には、まず、特徴量算出部310は、あるエポックにおいて算出されたrespと1エポック前において算出されたrespとの差分の二乗を算出し、連続する所定数のエポックにおいて算出された上記の差分の二乗の平均値をresp_aveとして算出してもよい。上記の所定数は、過去数分程度の呼吸の周期の揺らぎを捉えるために、例えば10であってもよい。
以上の4つの特徴量は、深度判別部330に出力される。なお、例えば、bm、cv、resp、およびresp_aveについて、算術平均を用いて平均値が算出されているが、例えば、算出される平均値は、移動平均や指数平滑化平均であってもよい。また、平均値の代わりに、中央値や最頻値などが用いられてもよい。また、cvの算出に用いられる標準偏差の代わりに、振幅値の最大および最小の差、振幅値の第3四分位点と第1四分位点の差などが用いられてもよい。また、respは、1エポックに含まれる複数の周期について、周波数スペクトルのパワーや振幅を重みとした加重平均である平均パワー周波数の逆数による求まる値であってもよい。また、resp_aveは、1エポックに含まれる複数の周期について、周波数スペクトルのパワーや振幅を重みとした加重分散から求まる値であってもよい。
一方、以下で説明する2つの特徴量は、深度判別部330において睡眠深度を判別するために用いられるモデルをモデル選択部320において決定するために用いられる。ここで、レム睡眠の状態、軽睡眠の状態、および深睡眠の状態を、睡眠状態と総称する。
−睡眠継続時間slp_et
睡眠継続時間slp_etは、過去の所定期間において、被験者の睡眠状態の継続時間を示す特徴量である。slp_etは、覚醒状態(または被験者の睡眠深度を推定していない状態)から睡眠状態であると推定された時点を起点とする、睡眠状態が継続している時間を指す。なお、所定期間とは、被験者の睡眠状態に基づいて決定してもよいし、固定値であってもよい。例えば、所定期間は、4時間=14400秒であってもよい。ここで、例えば睡眠状態が途切れて覚醒状態に変化した場合、slp_etは、上記起点から覚醒状態に変化した時刻までの時間としてもよい。また、覚醒状態に変化した後に第1の所定時間以内に再び睡眠状態に変化した場合、覚醒状態であった時間は、睡眠継続時間としてslp_etに加算されてもよい。第1の所定時間は特に限定されないが、覚醒状態が直後の睡眠状態に影響を及ぼさない程度の時間であることが好ましく、例えば、1時間であってもよい。また、覚醒状態から睡眠状態に変化した後に第2の所定時間以内に再び覚醒状態に変化した場合、slp_etの値は0にリセットされてもよい。第2の所定時間は特に限定されないが、一時的な眠気による睡眠状態と判別するのに必要な時間であることが望ましく、例えば、10分であってもよい。第1の所定時間および第2の所定時間は、被験者の睡眠の特性や被験者の健康状態等に応じて、自由に変更可能である。
−睡眠深度積算時間sum_rem、sum_light、sum_deep
睡眠深度積算時間sum_rem、sum_light、およびsum_deep(以下、3つの睡眠深度積算時間を総称する場合は、sumsと呼称する)は、過去の所定期間において発生した、被験者のレム睡眠、軽睡眠、および深睡眠の状態の各々の積算時間を示す特徴量である。sumsの各々の値は、1エポック単位で判定される各睡眠状態に基づいて決定されてもよい。例えば、あるエポックにおいてレム睡眠であると推定された場合、sum_remに30秒が加算される。
特徴量算出部310は、深度判別部330による睡眠深度の特定結果のフィードバックを受けることにより、slp_etおよびsumsを更新する。そして、特徴量算出部310は、更新されたslp_etまたはsumsをモデル選択部320へ出力する。なお、詳しくは後述するが、深度判別部330による睡眠深度の特定処理を実施する前段階として深度判別部330において用いられるモデルについて学習を行う場合は、特徴量算出部310は、PSG(PolySomnoGraphy:睡眠ポリグラフ検査)などの他の睡眠深度測定手法により得られる睡眠深度の正解値に基づいてslp_etおよびsumsを更新してもよい。更新されたslp_etまたはsumsがモデル選択部320へ出力されることにより、slp_etまたはsumsに基づいて選択された他のモデルについての学習も行うことができる。また、slp_etおよびsumsは、睡眠深度の特定結果のフィードバックと、睡眠深度の正解値との二つの手法を並行して用いることにより更新されてもよい。この場合、二つの手法により更新されたslp_etおよびsumsの値が二つの手法の間で乖離している場合、一方の手法により得られた値を他方の手法により得られた値に反映させてもよい。また、二つの手法の間において得られた値が乖離している場合、その二つの値の差分をモデル選択部320へ反映させてもよい。モデル選択部320は、上記の差分を用いて、後述する判別モデルに含まれる各パラメータの値を最適化することができる。
なお、slp_etおよびsumsの単位は特に限定されないが、本実施形態においては、slp_etおよびsumsの単位は、秒とする。
(モデル選択部)
モデル選択部320は、被験者の睡眠の継続時間や各睡眠深度における積算時間に応じて、睡眠深度の推定条件を変更する。例えば、モデル選択部320は、深度判別部330による睡眠深度の特定処理に用いられる判別モデルを、slp_etまたはsumsの少なくともいずれかに基づいて決定してもよい。判別モデルは、bm、cv、resp、およびresp_aveを独立変数として入力し、各段階の睡眠深度を推定するための目的変数を得るのに用いられる判別行列Mおよび補正ベクトルbを有する。判別行列Mおよび補正ベクトルbのパラメータは、例えば、上述したPSGなどの他の睡眠深度測定手法により得られる睡眠深度の正解値を教師データとする教師付学習や半教師付学習等の手法を用いて決定されてもよい。また、判別行列Mおよび補正ベクトルbのパラメータは、教師なし学習に基づくクラス分けが実施された後に、教師付学習により最適化されてもよい。各パラメータの最適化に用いられる教師付学習のアルゴリズムは、公知のアルゴリズムであってもよい。
ここで、睡眠の深さに基づく呼吸や体動の変化の傾向は、睡眠継続時間に依存すると言われている。そのため、モデル選択部320は、睡眠継続時間を示すslp_etや、各睡眠深度における睡眠深度積算時間sumsに基づいて、最適と考えられる判別モデルを選択し、深度判別部330に出力する。例えば、モデル選択部320は、睡眠の初期、中期および後記に合わせて、3種類の判別モデルを備えてもよい。具体的には、睡眠の初期に用いられる判別モデル、睡眠の中期に用いられる判別モデル、および睡眠の後期に用いられる判別モデルのインデックスをそれぞれ1、2、および3とすると、モデル1、モデル2、およびモデル3において用いられる判別行列Mおよび補正ベクトルbは、以下の数式4〜6のように表される。
Figure 2016209327
Figure 2016209327
Figure 2016209327
モデル選択部320は、例えば、slp_etと所定の閾値を比較することにより判別モデルを選択してもよい。例えば、slp_et<7000の場合、モデル選択部320はモデル1を選択し、7000≦slp_et<14000の場合、モデル選択部320はモデル2を選択し、14000≦slp_etの場合、モデル選択部320はモデル3を選択してもよい。これにより、睡眠継続時間に応じて、判別モデルを選択することが可能である。
また、モデル選択部320は、sumsと所定の閾値を比較することにより判別モデルを選択してもよい。例えば、sum_rem+sum_light+sum_deep<7000である場合、モデル選択部320はモデル1を選択してもよい。また、sum_rem+sum_light+sum_deep≧7000であって、(sum_rem+sum_light)×0.75<sum_deepである場合、モデル選択部320はモデル2を選択してもよい。また、sum_rem+sum_light+sum_deep≧7000であって、(sum_rem+sum_light)×0.75≧sum_deepである場合、モデル選択部320はモデル3を選択してもよい。これにより、各睡眠深度の積算時間に応じて、判別モデルを選択することが可能である。つまり、被験者の睡眠の深さに応じて判別モデルを選択することが可能となる。
モデル選択部320は、選択したモデルを深度判別部330に出力する。なお、数式4〜6に示した各判別モデルの判別行列Mおよび補正ベクトルbに含まれるパラメータの値は、あくまで本実施形態において用いられる値の一例であり、パラメータの値は、上述したように、教師付学習等のアルゴリズムを用いて適宜変更され得る。なお、本実施形態においては、判別モデルの数は3としたが、他の実施形態において判別モデルの数は特に限定されない。また、本実施形態においては、判別モデルは睡眠継続時間や各睡眠深度の積算時間に応じて選択されたが、例えば、被験者の健康状態、疾病の種類、年齢層、または性別等に応じてモデルが構築されてもよい。また、判別モデルのパラメータは、被験者ごとに決定されてもよい。また、本実施形態においては、モデル選択部320は、slp_etまたはsumsのいずれか1つを用いて判別モデルを選択したが、slp_etとsumsの双方に基づいて判別モデルを選択してもよい。例えば、モデル選択部320は、ニューラルネットワーク等の機械学習を用いて、選択すべき判別モデルを決定してもよい。
(深度判別部)
深度判別部330は、特徴量算出部310から出力された特徴量、およびモデル選択部320により選択された判別モデルを用いて、被験者の睡眠深度を判別する。例えば、深度判別部330は、bm、cv、resp、およびresp_aveの各特徴量を独立変数として、判別モデルに含まれる判別行列Mおよび補正ベクトルbを用いて、線形判別分析を行うことにより、被験者の睡眠深度を判別してもよい。
まず、深度判別部330は、上記の4つの特徴量を含む特徴ベクトルvを、以下の数式7のように定義する。
Figure 2016209327
ただし、添え字tは、時刻を表す。また、睡眠深度を判別するのに用いる判別ベクトルdを、以下の数式8のように定義する。
Figure 2016209327
ここで、WとSは、覚醒状態と睡眠状態との判別に寄与する変数であり、RとNRは、レム睡眠とノンレム睡眠との判別に寄与する変数であり、DとLは、深睡眠と軽睡眠との判別に寄与する変数である。モデル選択部320において選択されたモデルのインデックスを示す数字をmodel_idxとすると、判別ベクトルdは、以下の数式9を用いて算出される。
Figure 2016209327
次に、深度判別部330は、算出された判別ベクトルdに基づいて、被験者の睡眠深度を判別する。具体的には、深度判別部330は、判別ベクトルdに含まれる各変数の値を比較することにより、被験者の4段階の睡眠深度を判別する。
図8は、本発明の一実施形態に係る深度判別部330による睡眠深度の判別フローを示すフローチャートの一例を示す図である。まず、深度判別部330は、被験者が覚醒しているか、または睡眠しているかを判別する(S401)。具体的には、深度判別部330は、覚醒状態に寄与する変数Wと、睡眠状態に寄与する変数Sとを比較することにより、被験者が覚醒状態であるか、または睡眠状態であるかを判別する。ここで、WおよびSは、体動に関する特徴量bm、および呼吸の振幅に関する特徴量cvを用いて算出される変数である。例えば、覚醒状態は、睡眠状態と明確に被験者の状態が異なるため、覚醒状態においては、被験者の体動や呼吸が大きくなることが知られている。そのため、深度判別部330は、体動の振幅が大きく、呼吸の振幅の揺らぎが大きい場合、被験者は覚醒状態であると判別することができる。ここで、W>Sである場合(YES)、深度判別部330は、被験者は覚醒状態であると判別する(S402)。一方、ステップS401においてW≦Sである場合(NO)、深度判別部330は、被験者が睡眠状態であるとして、次のステップS403へ進む。
深度判別部330は、次に、被験者がレム睡眠状態であるか、またはノンレム睡眠状態であるかを判別する(S403)。具体的には、深度判別部330は、レム睡眠状態に寄与する変数Rと、ノンレム睡眠状態に寄与する変数NRとを比較することにより、被験者がレム睡眠状態であるか、またはノンレム睡眠状態であるかを判別する。ここで、RおよびNRは、体動に関する特徴量bm、および呼吸の周期の揺らぎに関する特徴量resp_aveを用いて算出される変数である。例えば、レム睡眠状態は、被験者の自律神経がノンレム睡眠状態よりも乱れているため、レム睡眠状態においては、被験者の体動が大きくなったり、呼吸間隔が乱れるということが知られている。そのため、深度判別部330は、体動の振幅および呼吸の周期の揺らぎ大きい場合、被験者はレム睡眠状態であると判別することができる。ここで、R>NRである場合(YES)、深度判別部330は、被験者はレム睡眠状態であると判別する(S404)。一方、ステップS403においてR≦NRである場合(NO)、深度判別部330は、被験者がノンレム睡眠状態であるとして、次のステップS405へ進む。
深度判別部330は、次に、被験者が軽睡眠状態であるか、または深睡眠状態であるかを判別する(S405)。具体的には、深度判別部330は、軽睡眠状態に寄与する変数Lと、深睡眠状態に寄与するDとを比較することにより、被験者が軽睡眠状態であるか、または深睡眠状態であるかを判別する。ここで、LおよびDは、呼吸の振幅に関する特徴量cv、および呼吸の周期の長さに関する特徴量respを用いて算出される変数である。例えば、深睡眠においては呼吸が安定しているため、呼吸の周期および振幅の揺らぎは小さくなる。そのため、深度判別部330は、呼吸の周期および振幅の揺らぎが小さい場合、被験者は深睡眠状態であると判別することができる。ここで、L>Dである場合(YES)、深度判別部330は、被験者は軽睡眠状態であると判別する(S406)。一方、ステップS405においてL≦Dである場合(NO)、深度判別部330は、被験者が深睡眠状態であると判別する(S407)。以上のように、深度判別部330は、特徴量算出部310において算出された、被験者の呼吸や体動から得られる特徴量、およびモデル選択部320において選択されたモデルを用いることにより、被験者の睡眠状態を時系列に判別することができる。
図9は、睡眠深度の推定結果を出力したグラフの一例を示す図である。図9には、睡眠深度の推定結果の時系列変化を示すグラフPh1が示されている。グラフPh1は被験者の睡眠深度の変化を、覚醒状態、レム睡眠状態、軽睡眠状態、および深睡眠状態の4段階において示している。睡眠深度推定部300は、深度判別部330において推定された被験者の睡眠状態について、例えば1エポック(30秒)ごとに出力してもよい。また、睡眠深度推定部300は、各エポックにおいて推定された被験者の睡眠状態を不図示の記憶部に記憶させ、事後的に出力してもよい。
なお、本実施形態において睡眠深度推定部300は、4段階の睡眠深度を推定するが、睡眠深度の段階数については特に限定されない。例えば、睡眠深度推定部300は、覚醒状態と睡眠状態の2段階の睡眠深度を推定してもよいし、覚醒状態、レム睡眠状態、および4つのノンレム睡眠状態の、計6段階の睡眠深度を推定してもよい。この場合、睡眠深度推定部300は、段階数等に応じて、睡眠深度を推定するのに用いる判別ベクトルの変数の数を設定してもよい。これにより、多段階の睡眠深度を推定することが可能である。
以上のような睡眠深度推定装置10の構成によって、微細な揺らぎを伴う被験者の呼吸および体動の振動情報をドップラーセンサ2により取得されたビート信号D(t)から推定し、さらに得られた振動情報をもとに、被験者の睡眠深度を推定することが可能である。特に、睡眠深度推定装置10は、例えば、レム睡眠状態等の睡眠状態にみられる呼吸の乱れにより変化する呼吸の周期の揺らぎを推定できるため、被験者の睡眠深度をより精度高く推定することが可能となる。
<3.睡眠深度推定装置の動作例>
次に、本発明の一実施形態に係る睡眠深度推定装置10の動作例について説明する。図10は、本発明の一実施形態に係る睡眠深度推定装置10の動作例を示すフローチャートである。
まず、呼吸推定部100のビート信号取得部110、および体動推定部200は、ドップラーセンサ2から出力されたビート信号D(t)を取得する(S501)。呼吸推定部100は、取得したビート信号D(t)から、被験者の呼吸振幅や呼吸周期などの振動情報を推定する(S502)。また、体動推定部200は、取得したビート信号D(t)から、被験者の振幅量などの体動に関する振動情報を推定する(S503)。ステップS501〜S503については、呼吸および体動に関する振動情報の推定処理を継続する場合、これらの処理は繰り返し実施される。
次に、特徴量算出部310は、呼吸および体動に関する振動情報から、睡眠深度を推定するのに用いる特徴量を算出する(S504)。続いて、モデル選択部320は、睡眠継続時間および各睡眠深度の積算時間に基づいて、睡眠深度を推定するのに用いる判別モデルを選択する(S505)。そして、深度推定部は、上記の特徴量および判別モデルを用いて、被験者の睡眠深度を判別する(S506)。
<4.ハードウェア構成例>
以上、本発明の一実施形態に係る睡眠深度推定装置10の動作例について説明した。上述した睡眠深度推定装置10の情報処理は、ソフトウェアと、睡眠深度推定装置10との協働により実現される。以下では、本発明の実施形態に係る睡眠深度推定装置10のハードウェア構成を説明する。
図11は、本発明の実施形態に係る睡眠深度推定装置10のハードウェア構成例を示すブロック図である。図11を参照すると、睡眠深度推定装置10は、CPU(Central Processing Unit)901と、ROM(Read Only Memory)902と、RAM(Random Access Memory)903と、ホストバス904と、を備える。また、睡眠深度推定装置10は、ブリッジ905と、外部バス906と、インタフェース907と、入力装置908と、出力装置909と、ストレージ装置910と、ドライブ911と、ネットワークインタフェース912と、を備える。
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って睡眠深度推定装置10内の動作全般を制御する。また、CPU901は、マイクロプロセッサであってもよい。なお、CPU901は、睡眠深度推定装置10内の動作全般またはその一部を制御する。例えば、CPU901は、ROM902は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM903は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス904により相互に接続されている。
ホストバス904は、ブリッジ905を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス906に接続されている。なお、必ずしもホストバス904、ブリッジ905および外部バス906を分離構成する必要はなく、1つのバスにこれらの機能を実装してもよい。
入力装置908は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。睡眠深度推定装置10のユーザは、当該入力装置908を操作することにより、睡眠深度推定装置10に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置909は、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED装置およびランプなどの表示装置を含む。さらに、出力装置909は、スピーカ及びヘッドホンなどの音声出力装置を含む。出力装置909は、例えば、再生されたコンテンツを出力する。具体的には、表示装置は再生された映像データ等の各種情報をテキストまたはイメージで表示する。一方、音声出力装置は、再生された音声データや表示装置に表示されたテキストデータ等を音声に変換して出力する。
ストレージ装置910は、本発明の実施形態に係る睡眠深度推定装置10におけるデータ格納用の装置である。ストレージ装置910は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読み出し装置および記憶媒体に記憶されたデータを削除する削除装置などを含んでも良い。ストレージ装置は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)で構成される。このストレージ装置910は、CPU901が実行するプログラムや各種データを格納する。なお、ストレージ装置910は、不図示の記憶部の機能を実現する。
ドライブ911は、記憶媒体用リーダライタであり、睡眠深度推定装置10に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ911は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体96に記録されている情報を読みだして、RAM903に出力する。また、ドライブ911は、リムーバブル記憶媒体96に情報を書き込むこともできる。
ネットワークインタフェース912は、例えば、他の装置に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。また、ネットワークインタフェース912は、無線LAN(Local Area Network)対応通信装置、LTE(Long Term Evolution)対応通信装置、またはブルートゥース通信装置であってもよい。また、ネットワークインタフェース912は、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。なお、ネットワークインタフェース912は、不図示の通信部の機能を実現する。
以上、睡眠深度推定装置10のハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。かかる構成は、実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更され得る。
<5.まとめ>
ここまで、図1〜図11を用いて、本発明の一実施形態について説明した。本発明の一実施形態によれば、睡眠深度推定装置10は、取得したビート信号から被験者の呼吸の振動情報、および体動の振動情報を推定し、推定された各々の振動情報を用いて被験者の睡眠深度を推定する。特に、睡眠深度推定装置10は、被験者の呼吸に含まれる微細な揺らぎを伴う振動について、正弦波との相関を算出することにより、呼吸の振動の周期を精度高く推定することが可能である。これにより、睡眠深度推定装置10は、呼吸の周期の乱れを生じさせるレム睡眠など、呼吸の振動について異なる特徴を有する各段階の睡眠深度を推定することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、睡眠深度推定装置10は、ドップラーセンサ2から出力されるビート信号をリアルタイムで取得し、並行して解析する動作を実施していたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、他の実施形態に係る睡眠深度推定装置は、一度取得した信号を記憶部に保存し、推定処理を実施したい際に記憶部から再度信号を取り出して解析を行ってもよい。これにより、過去に取得したビート信号についてまとめて解析を行うことが可能となる。
また、上記実施形態では、被験者がドップラーセンサ2による検知が可能なエリアに存在していることが想定されていたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、被験者が椅子やベッドなどの位置にいる場合にのみドップラーセンサが被験者を検知することができるように、ドップラーセンサが設置されてもよい。これにより、解析対象となる被験者を限定することが可能となる。また、睡眠深度推定装置は、被験者の有無や被験者による歩行などの大きな活動を検知する手段を組み合わせてもよい。これにより、被験者が睡眠しているなど限られた状態にある場合にのみ推定処理を実施することが可能となる。
また、睡眠深度推定装置10および睡眠深度推定システム1は、他の装置やシステム等に組み込まれて構成されてもよい。例えば、睡眠深度推定装置またはドップラーセンサは、テレビ等の家電機器や空調機、医療介護機器、およびベッドなどの寝具に組み込まれてもよい。さらに、睡眠深度推定装置は、推定した睡眠深度に係る情報を、上記のような他の装置の制御のために用いてもよい。例えば、睡眠深度推定装置は被験者の睡眠深度に応じて、空調機の空調の温度や風量などを調節してもよいし、テレビの電源を制御してもよい。
また、上記実施形態では、睡眠深度推定装置10は被験者の睡眠深度を推定したが、本発明は係る例に限定されない。例えば、睡眠深度推定装置は、被験者の心的ストレスを推定してもよい。この場合、例えば他の手段を用いて推定された被験者の心的ストレスを教師データとして判別学習を実施することにより、睡眠深度推定装置はビート信号を用いて被験者の心的ストレスを推定することが可能となる。なお、上述した他の手段とは、例えば、唾液に含まれるアミラーゼの検査や、心拍の周波比(高周波成分および低周波成分の比率)を用いる手段が含まれる。また、睡眠深度推定装置は、人間のみならず、動物などの生体に関する睡眠深度を推定してもよい。
また、上記実施形態では、ドップラーセンサ2と睡眠深度推定装置10とが睡眠深度推定システム1を構成していたが、本発明は係る例に限定されない。例えば、ドップラーセンサ2と睡眠深度推定装置10とが一体となった睡眠深度推定装置または睡眠深度推定システムが提供されてもよい。
また、本明細書の睡眠深度推定装置10の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、睡眠深度推定装置10の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
また、睡眠深度推定装置10に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上記の睡眠深度推定装置10の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
1 睡眠深度推定システム
2 ドップラーセンサ
10 睡眠深度推定装置
100 呼吸推定部
110 ビート信号取得部
120 フィルタ部
130 信号変換部
140 周波数推定部
150 基準時刻推定部
160 振動情報特定部
200 体動推定部
300 睡眠深度推定部
310 特徴量算出部
320 モデル選択部
330 深度判別部

Claims (13)

  1. 生体の振動に応じてドップラーセンサにより検出されたビート信号を一次元信号に変換する信号変換部と、
    前記一次元信号の周波数を推定する周波数推定部と、
    推定された前記一次元信号の周波数に対応する周期に相当する区間長を有する基準信号を前記一次元信号から切り出し、前記基準信号と前記周波数を有する正弦波との相関係数を算出することにより、前記一次元信号の基準時刻を推定する基準時刻推定部と、
    前記基準時刻を用いて前記ビート信号の振動情報を特定する振動情報特定部と、
    特定された前記振動情報に基づいて前記生体の睡眠深度を推定する睡眠深度推定部と、
    を備える、睡眠深度推定装置。
  2. 前記基準時刻推定部は、前記基準信号と前記正弦波との相関係数が最大となるときの前記正弦波の位相に基づいて前記基準時刻を推定する、請求項1に記載の睡眠深度推定装置。
  3. 前記基準時刻推定部は、前記基準時刻を推定する際に用いる前記基準信号の区間において過去に推定された複数の基準時刻を抽出し、抽出された前記複数の基準時刻の分布に基づいて前記基準時刻を特定する、請求項1または2に記載の睡眠深度推定装置。
  4. 前記振動情報特定部は、前記基準時刻における二次元ベクトルで表現された前記ビート信号のスカラー量を、前記ビート信号の振幅として特定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の睡眠深度推定装置。
  5. 前記振動情報特定部は、前記基準時刻における前記一次元信号の振幅を、前記ビート信号の振幅として特定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の睡眠深度推定装置。
  6. 前記振動情報特定部は、連続する2つの前記基準時刻の間隔を、前記ビート信号の周期として特定する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の睡眠深度推定装置。
  7. 前記睡眠深度推定部は、前記生体の体動の振動情報に基づいて前記生体の睡眠深度を推定する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の睡眠深度推定装置。
  8. 前記睡眠深度推定部は、前記生体の睡眠の継続時間に応じて前記生体の睡眠深度の推定条件を変更する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の睡眠深度推定装置。
  9. 前記ビート信号からカットオフ周波数より大きい周波数の成分を減少させるフィルタ処理を行うフィルタ部をさらに備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の睡眠深度推定装置。
  10. 前記フィルタ部の前記カットオフ周波数は1.5Hz以上である、請求項9に記載の睡眠深度推定装置。
  11. 前記生体の振動は、前記生体の呼吸による振動を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の睡眠深度推定装置。
  12. 生体の振動に応じてドップラーセンサにより検出されたビート信号を一次元信号に変換するステップと、
    前記一次元信号の周波数を推定するステップと、
    推定された前記一次元信号の周波数に対応する周期に相当する区間長を有する基準信号を前記一次元信号から切り出し、前記基準信号と前記周波数を有する正弦波との相関係数を算出することにより、前記基準信号の基準時刻を推定するステップと、
    前記基準時刻を用いて前記ビート信号の振幅および周期を含む振動情報を特定するステップと、
    特定された前記振動情報に基づいて前記生体の睡眠深度を推定するステップと、
    を含む、睡眠深度推定方法。
  13. コンピュータを、
    生体の振動に応じてドップラーセンサにより検出されたビート信号を一次元信号に変換する信号変換部と、
    前記一次元信号の周波数を推定する周波数推定部と、
    推定された前記一次元信号の周波数に対応する周期に相当する区間長を有する基準信号を前記一次元信号から切り出し、前記基準信号と前記周波数を有する正弦波との相関係数を算出することにより、前記基準信号の基準時刻を推定する基準時刻推定部と、
    前記基準時刻を用いて前記ビート信号の振幅および周期を含む振動情報を特定する振動情報特定部と、
    特定された前記振動情報に基づいて前記生体の睡眠深度を推定する睡眠深度推定部と、
    として機能させるための、プログラム。
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