JP2022063926A - 睡眠状態推定システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 複数の睡眠深度を含む睡眠状態を推定できる睡眠状態推定装置を提供する。【解決手段】 動物の睡眠中に取得した心拍間隔の変動の瞬時位相と、呼吸パターンの瞬時位相との間の瞬時位相差に基づいて算出した位相コヒーレンスを取得する位相コヒーレンス取得手段と、体動に関する体動情報を取得する体動情報取得手段、心拍に関する心拍情報を取得する心拍情報取得手段、又は呼吸に関する呼吸情報を取得する呼吸情報取得手段と、動物の睡眠中に取得した睡眠状態と、位相コヒーレンスと、体動情報、心拍情報又は呼吸情報とを含む基礎データベースに基づいて機械学習を用いることにより作成した睡眠状態推定モデルを内蔵した睡眠状態推定手段と、を含み、位相コヒーレンスと体動情報、心拍情報、及び呼吸情報から選ばれた1つ以上のデータと、を睡眠状態推定モデルに入力し、当該睡眠状態推定モデルからの演算結果に基づいて、前記動物の睡眠状態を推定する。【選択図】 図1
Description
本発明は、動物から取得した生体情報に基づいて、睡眠状態を推定する睡眠状態推定システムに関し、特に、動物の睡眠中に取得した心拍間隔の変動の瞬時位相と、前記心拍間隔の変動と同一時系列における前記動物の呼吸パターンの瞬時位相との間の瞬時位相差に基づいて算出した位相コヒーレンスに基づいて、睡眠状態を推定する睡眠状態推定システムに関する。
ヒトの睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠に大別され、睡眠中に約90分周期で繰り返すと言われている。客観的に眠りの質や量(睡眠周期や睡眠深度)を評価する為には、睡眠ポリグラフィが必要であり、医療機関での計測や医療機関から機器を借りてきて計測が行われるが、脳波や心電図、筋電図、眼電図などの複数のセンサが必要であり、取り扱いが煩雑である。また、複数のセンサを身体の各所に固定する必要があり、センサによる拘束で動きが制限されていた。睡眠中の無意識の動作によってセンサが外れる可能性もあり、センサが外れると信号が検出できず、状態を把握できない点でも問題があった。さらに、装置が大型であるため、個人で評価できるような指標ではなく、睡眠の質を個人が把握できる状況には至っていない。このため、個人が簡便にストレス状態や睡眠の質を把握できる生体計測手法とその装置が求められている。
特許文献1には、動物の睡眠中に取得した心拍間隔の変動の瞬時位相と、心拍間隔の変動と同一時系列における動物の呼吸パターンの瞬時位相との間の瞬時位相差に基づいて位相コヒーレンスを算出する位相コヒーレンス算出手段を含む睡眠状態測定装置が開示されており、心拍間隔の変動の瞬時位相と動物の呼吸パターンの瞬時位相との間の瞬時位相差に基づく位相コヒーレンスが、睡眠中の脳波におけるδ波と相関していることから、位相コヒーレンスを計測することにより、睡眠状態を測定することが開示されている。また、特許文献1では、シート型圧電センサを用いて、生体振動信号を検出し、生体振動信号から心拍間隔と呼吸パターン(実線)を取得し、さらに、呼吸性不整脈と呼吸パターンをヒルベルト変換し、解析信号から瞬時位相を求め、その位相差から位相コヒーレンスを算出することも開示されている。
睡眠は、大きくはレム睡眠とノンレム睡眠に分類されるが、ノンレム睡眠は、さらにステージIからIVまでの4段階に分類される。ステージI(まどろみ期、入眠期)は、うとうとした状態であり、α波のリズムが失われ、徐々に平坦化する。ステージIIは、ステージIよりは眠りが深い状態であり、睡眠紡錘波(spindle)とK複合波が出現する。ステージIIIは、かなり深い睡眠であり、δ波が20%以上50%未満を占める。ステージIVは、δ波が50%以上を占める段階であり、最も深い睡眠状態である。ノンレム睡眠のステージIII及びIVは、脳波が徐波を示すことから徐波睡眠とも呼ばれる。一方、レム睡眠は、覚醒時に似た低振幅速波パターンの脳波を示すのに、覚醒させるために徐波睡眠よりも強い刺激を必要とする深い睡眠状態であり、急速眼球運動を伴う。睡眠状態は、通常、約90分の周期(睡眠周期)で変動し、ステージIから徐々に睡眠が深くなり、その後、一旦睡眠が浅くなり、レム睡眠に移行する。ただし、睡眠時間にも影響し、睡眠の前半ではノンレム睡眠が優勢であり、後半はレム睡眠が優勢となることが多い。上記のように、脳波における周波数1~4Hzのδ波は、徐波睡眠において観察されることから、δ波を睡眠の深さの指標とすることができる。
特許文献1に記載の睡眠状態測定装置は、睡眠状態等を判定する判定機能として、算出した位相コヒーレンスを閾値と比較して、閾値よりも大きい場合は深い睡眠であると判定し、小さい場合は浅い睡眠と判定すること、位相コヒーレンスが閾値よりも大きい値だった時間で睡眠の品質を評価すること、位相コヒーレンスの変動の周期によって睡眠の品質を評価することが開示されている。また、複数の数値を設定し、段階的に睡眠の質を評価してもよいことは開示されている。しかし、睡眠状態は、上記のとおり、非常に複雑なものであり、睡眠ポリグラフィで検出したような睡眠深度に対応する睡眠状態を推定できる睡眠状態推定装置の要望が存在する。
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決することを目的とするものであり、実際の睡眠ポリグラフィで検出した睡眠状態のように、複数の睡眠深度を含む睡眠状態を推定できる睡眠状態推定装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明の睡眠状態推定システムは、動物の睡眠中に取得した心拍間隔の変動の瞬時位相と、前記心拍間隔の変動と同一時系列における前記動物の呼吸パターンの瞬時位相との間の瞬時位相差に基づいて算出した位相コヒーレンスを取得する位相コヒーレンス取得手段と、前記心拍間隔の変動と同一時系列における前記動物の体動に関する体動情報を取得する体動情報取得手段、前記心拍間隔の変動と同一時系列における心拍に関する心拍情報を取得する心拍情報取得手段、又は前記心拍間隔の変動と同一時系列における呼吸に関する呼吸情報を取得する呼吸情報取得手段と、動物の睡眠中に取得した睡眠状態と、前記睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、前記睡眠状態と同一時系列で測定した体動情報、心拍情報又は呼吸情報とを含む基礎データベースに基づいて機械学習を用いることにより作成した睡眠状態推定モデルを内蔵した睡眠状態推定手段と、を含み、前記睡眠状態推定手段は、前記位相コヒーレンス取得手段によって取得した前記位相コヒーレンスと、前記体動情報取得手段によって取得した前記体動情報、前記心拍情報取得手段によって取得した前記心拍情報、及び前記呼吸情報取得手段によって取得した前記呼吸情報から選ばれた1つ以上のデータとを前記睡眠状態推定モデルに入力し、当該睡眠状態推定モデルからの演算結果に基づいて、前記動物の睡眠状態を推定することを特徴とする。
さらに、上記睡眠状態推定システムにおいて、睡眠状態推定モデルは、睡眠状態と、前記睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、少なくとも前記睡眠状態と同一時系列で測定した体動情報とを入力することにより学習したものであり、前記睡眠状態推定手段は、前記位相コヒーレンス取得手段によって取得した前記位相コヒーレンスと、少なくとも前記体動情報取得手段によって取得した前記体動情報とを前記睡眠状態推定モデルに入力し、当該睡眠状態推定モデルからの演算結果に基づいて、前記動物の睡眠状態を推定するものであってもよく、前記体動情報は、体動の回数、単位時間あたりの体動の頻度、又は単位時間当たりの体動信号の積分値であってもよい。
さらに、上記睡眠状態推定システムにおいて、前記睡眠状態推定モデルは、睡眠状態と、前記睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、少なくとも前記睡眠状態と同一時系列で測定した心拍情報とを入力することにより学習したものであり、前記睡眠状態推定手段は、前記位相コヒーレンス取得手段によって取得した前記位相コヒーレンスと、少なくとも前記心拍情報取得手段によって取得した前記心拍情報とを前記睡眠状態推定モデルに入力し、当該睡眠状態推定モデルからの演算結果に基づいて、前記動物の睡眠状態を推定するものであってもよく、前記心拍情報は、心拍数、心拍数の変動係数、心拍数の偏差、心拍数の偏差の変動係数、心拍数の標準偏差、心拍数の標準偏差の変動係数、心拍間隔、心拍間隔の変動係数、心拍間隔の偏差、心拍間隔の偏差の変動係数、心拍間隔の標準偏差、心拍間隔の標準偏差の変動係数、心拍間隔の変動、心拍間隔の変動の変動係数、呼吸性不整脈、及び呼吸性不整脈の変動係数からなる群から選択された2つ以上のデータであってもよい。
さらに、上記睡眠状態推定システムにおいて、前記睡眠状態推定モデルは、睡眠状態と、前記睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、少なくとも前記睡眠状態と同一時系列で測定した呼吸情報とを入力することにより学習したものであり、前記睡眠状態推定手段は、前記位相コヒーレンス取得手段によって取得した前記位相コヒーレンスと、少なくとも前記呼吸情報取得手段によって取得した前記呼吸情報とを前記睡眠状態推定モデルに入力し、当該睡眠状態推定モデルからの演算結果に基づいて、前記動物の睡眠状態を推定するものであってもよく、前記呼吸情報は、呼吸数、呼吸数の変動係数、呼吸数の偏差、呼吸数の偏差の変動係数、呼吸数の標準偏差、呼吸数の標準偏差の変動係数、呼吸間隔、呼吸間隔の変動係数、呼吸間隔の偏差、呼吸間隔の偏差の変動係数、呼吸間隔の標準偏差、呼吸間隔の標準偏差の変動係数、及び単位時間当たりの鼾の回数からなる群から選択された2つ以上のデータであってもよい。
さらに、上記睡眠状態推定システムにおいて、前記睡眠状態推定モデルは、睡眠状態と、前記睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、少なくとも前記睡眠状態と同一時系列で測定した単位時間あたりの体動の頻度、心拍数、心拍数の標準偏差、呼吸数、及び呼吸数の標準偏差とを入力することにより学習したものであり、前記睡眠状態推定手段は、位相コヒーレンス、単位時間あたりの体動の頻度、心拍数、心拍数の標準偏差、呼吸数、及び呼吸数の標準偏差を前記睡眠状態推定モデルに入力し、当該睡眠状態推定モデルからの演算結果に基づいて、前記動物の睡眠状態を推定するものであってもよい。
さらに、上記睡眠状態推定システムにおいて、前記心拍情報又は前記呼吸情報は、睡眠中に取得した心拍情報又は呼吸情報の平均値で正規化された変動係数であることが好ましい。
本発明の睡眠状態推定システムは、δ波の振幅と相関関係がある心拍間隔の変動の瞬時位相と呼吸パターンの瞬時位相との瞬時位相差の位相コヒーレンスに加えて、同一時系列における動物の体動に関する体動情報、心拍に関する心拍情報、又は呼吸に関する呼吸情報を取得し、動物の睡眠中に取得した睡眠状態と、睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、睡眠状態と同一時系列で測定した体動情報、心拍情報又は呼吸情報とを含む基礎データベースに基づいて機械学習を用いることにより作成した睡眠状態推定モデルを用いて、より精度の高い睡眠状態を無拘束で推定することができる。この結果、僅かセンサ1枚で、医学的に確立している睡眠ポリグラフィ検査を用いた睡眠段階判別法に相当する結果を得ることができるとともに、睡眠に係る詳細なデータ、具体的には入眠・起床時間、深い睡眠時間とその割合、REM睡眠時間、WAKE(覚醒)時間、睡眠効率、睡眠周期等の睡眠に係る多くの情報を取得することができる。
[睡眠状態推定システム]
本発明の睡眠状態推定システム1は、図1に示すように、少なくとも情報取得部2及び情報処理部3を備えており、さらに睡眠状態推定システム1は、記憶部4、操作部5、及び出力部6を備えていてもよい。情報取得部2は、位相コヒーレンス取得手段22、体動情報取得手段23、心拍情報取得手段24、呼吸情報取得手段25の一つ又は複数を含んでおり、さらに、睡眠状態取得手段26を含んでいてもよく、さらに他の情報(画像、音声、温度等)を取得する手段を含んでいてもよい。情報処理部3は、睡眠状態推定手段31を含み、さらに、位相コヒーレンス算出手段32、体動情報算出手段33、心拍情報算出手段34、呼吸情報算出手段35の一つ又は複数を含んでいてもよく、さらに、睡眠状態推定モデル学習手段36を含んでいてもよい。睡眠状態推定システム1は、1台の装置で実現されてもよいし、ネットワーク等で接続された複数の装置又は部品で実現されてもよい。例えば、センサと、センサが接続された携帯情報端末(たとえば、携帯電話、スマートフォン等)と、携帯情報端末とネットワークを介して接続されたサーバとによって、センサを情報取得部2とし、携帯情報端末を情報処理部3の一部である各種情報算出手段及び位相コヒーレンス算出手段とし、サーバを睡眠状態推定手段31として、本発明の睡眠状態推定システム1を実現してもよい。なお、睡眠状態取得手段26及び睡眠状態推定モデル学習手段36は、睡眠状態推定システム1には必要な構成ではないが、睡眠状態測定システム1を睡眠状態推定モデル学習システムとして機能させる際に使用される。
本発明の睡眠状態推定システム1は、図1に示すように、少なくとも情報取得部2及び情報処理部3を備えており、さらに睡眠状態推定システム1は、記憶部4、操作部5、及び出力部6を備えていてもよい。情報取得部2は、位相コヒーレンス取得手段22、体動情報取得手段23、心拍情報取得手段24、呼吸情報取得手段25の一つ又は複数を含んでおり、さらに、睡眠状態取得手段26を含んでいてもよく、さらに他の情報(画像、音声、温度等)を取得する手段を含んでいてもよい。情報処理部3は、睡眠状態推定手段31を含み、さらに、位相コヒーレンス算出手段32、体動情報算出手段33、心拍情報算出手段34、呼吸情報算出手段35の一つ又は複数を含んでいてもよく、さらに、睡眠状態推定モデル学習手段36を含んでいてもよい。睡眠状態推定システム1は、1台の装置で実現されてもよいし、ネットワーク等で接続された複数の装置又は部品で実現されてもよい。例えば、センサと、センサが接続された携帯情報端末(たとえば、携帯電話、スマートフォン等)と、携帯情報端末とネットワークを介して接続されたサーバとによって、センサを情報取得部2とし、携帯情報端末を情報処理部3の一部である各種情報算出手段及び位相コヒーレンス算出手段とし、サーバを睡眠状態推定手段31として、本発明の睡眠状態推定システム1を実現してもよい。なお、睡眠状態取得手段26及び睡眠状態推定モデル学習手段36は、睡眠状態推定システム1には必要な構成ではないが、睡眠状態測定システム1を睡眠状態推定モデル学習システムとして機能させる際に使用される。
情報取得部2は、睡眠状態の推定に必要な情報を取得するものであり、動物を計測するためのセンサ及びセンサの情報を有線又は無線で入力する入力部を含む構成であってもよいし、すでに計測又は算出済みの情報が記録された他の記録媒体からの情報を有線又は無線で入力可能な入力部を含む構成であってもよい。すなわち、情報取得部2は、少なくとも情報を入力する入力部を備えており、場合によっては入力部と有線又は無線で接続された生体情報を計測するためのセンサを備えていてもよい。情報取得部2は、取得する情報によって、位相コヒーレンス取得手段22、体動情報取得手段23、心拍情報取得手段24、呼吸情報取得手段25、睡眠状態取得手段26等として機能する。
情報処理部3は、入力された情報を処理するものであり、例えば、コンピュータのCPU(中央処理装置)の演算処理機能を利用することができる。また、情報処理の中には、デジタル回路ではなくアナログ回路で実現することも可能である。例えば、情報処理として周波数フィルタを行う場合は、コンデンサや抵抗及びオペアンプ等で構成されたローパスフィルタ(LPF)やハイパスフィルタ(HPF)のアナログフィルタで実現してもよいし、CPUの演算処理機能によってフィルタリングを行なうデジタルフィルタで実現してもよい。情報処理部3は、情報処理の種類に応じて、デジタル回路とアナログ回路の両方を含んでいてもよいし、入力される情報がアナログであれば、アナログ-デジタル変換回路によってデジタル信号に変換してもよい。情報処理部3は、入力される情報によって必要となる機能又は処理が異なるが、処理する情報に応じて、睡眠状態推定手段31、位相コヒーレンス算出手段32、体動情報算出手段33、心拍情報算出手段34、呼吸情報算出手段35、睡眠状態推定モデル学習手段36等として機能する。
位相コヒーレンス取得手段22は、すでに算出された位相コヒーレンスを有線又は無線で入力可能な入力部でもよいし、位相コヒーレンスを算出するために必要な情報を情報取得部2に入力し、その情報から位相コヒーレンス算出手段32によって算出した位相コヒーレンスを取得してもよい。位相コヒーレンス算出手段32は、各種の情報から位相コヒーレンスを算出する手段である。位相コヒーレンスを算出するためには、例えば、次のような情報を入力して算出することができる。A)情報取得部2に、同一時系列における心拍間隔の変動の瞬時位相と呼吸パターンの瞬時位相との瞬時位相差を入力し、情報処理部3の位相コヒーレンス算出手段32によって入力された瞬時位相差を用いて位相コヒーレンスを算出する。B)情報取得部2の心拍情報取得手段24及び呼吸情報取得手段25に、同一時系列における心拍間隔の変動の瞬時位相及び呼吸パターンの瞬時位相を入力し、情報処理部3が、両者の瞬時位相差を算出する瞬時位相差算出機能を有し、瞬時位相差算出機能によって両者の瞬時位相差を算出し、算出された瞬時位相差を用いて位相コヒーレンス算出手段32によって位相コヒーレンスを算出する。C)情報取得部2の心拍情報取得手段24及び呼吸情報取得手段25に、同一時系列における心拍間隔の変動及び呼吸パターンを入力(センサによる検出結果の入力を含む)し、情報処理部3の心拍情報算出手段34及び呼吸情報算出手段35が、それぞれ心拍間隔の変動の瞬時位相及び呼吸パターンの瞬時位相を算出し、算出された瞬時位相を用いて瞬時位相差算出機能及び位相コヒーレンス算出手段32によって位相コヒーレンスを算出する。D)情報取得部2の心拍情報取得手段24及び呼吸情報取得手段25に、心拍に関する情報を含んだ生体情報及び呼吸に関する情報を含んだ生体情報を入力(センサによる検出結果の入力を含む)し、情報処理部3の心拍情報算出手段34及び呼吸情報算出手段35が、心拍間隔算出機能及び呼吸パターン算出機能を有し、心拍間隔算出機能によって心拍の情報を含んだ生体情報から心拍間隔の変動を算出し、呼吸パターン算出機能によって呼吸パターンの情報を含んだ生体情報から呼吸パターンを算出し、その後、上記C)と同様の処理を行う。E)情報取得部2に、心拍に関する情報及び呼吸に関する情報の両方を含む生体情報を入力(センサによる検出結果の入力を含む)し、情報処理部3の心拍情報算出手段34及び呼吸情報算出手段35が、かかる生体情報から心拍の情報及び呼吸パターンの情報を算出し、検出又は算出した心拍の情報又は呼吸パターンの情報を用いてその後の処理をしてもよい。
位相コヒーレンスは、呼吸に伴う心拍間隔の変動の瞬時位相ψh(t)と呼吸パターンの瞬時位相ψr(t)とを算出し、これらの差(瞬時位相差)を算出し、算出された瞬時位相差を使用して算出される。心拍間隔の変動の瞬時位相ψh(t)は、心拍間隔のデータから呼吸に伴う心拍間隔変動の時間的変化(S(t))を算出し、心拍間隔変動の時間的変化(S(t))を下記式(1)で表されるヒルベルト変換により解析信号にすることによって算出できる。なお、式(1)及び式(2)のH[…]はヒルベルト変数であり、P.V.はコーシーの主値を意味する。
また、呼吸パターンの瞬時位相ψr(t)は、呼吸パターンの情報から、呼吸パターン時間的変化(R(t))を算出し、呼吸パターンの時間的変化(R(t))を下記式(2)で表されるヒルベルト変換することによって算出できる。
瞬時位相差Ψ(t)は、式(1)及び式(2)によって算出された心拍間隔の変動の瞬時位相ψh(t)及び呼吸パターンの瞬時位相ψr(t)を用いて、次の式(3)で算出できる。
Ψ(t)=ψh(t)-ψr(t)+2nπ (3)
ここで、nは-π≦Ψ≦πとなる適当な整数である。
Ψ(t)=ψh(t)-ψr(t)+2nπ (3)
ここで、nは-π≦Ψ≦πとなる適当な整数である。
位相コヒーレンスは、0~1の値をとり、心拍間隔の変動と呼吸パターンの瞬時位相差が一定の関係に近いほど1に近づき、瞬時位相差がランダムになるほど0に近づく。δ波の振幅が大きくなると位相コヒーレンス(λ)が1に近づき、δ波の振幅が小さくなると位相コヒーレンス(λ)が0に近づく傾向がある。また、安静リラックス時には位相コヒーレンスが1に近く、精神ストレスがかかると位相コヒーレンスが低下するので、心理ストレスを正規化した指標で推定することも可能である。
体動情報取得手段23は、すでに算出された体動情報を有線又は無線で入力可能な入力部でもよいし、各種センサによる検出結果を入力し、情報処理部3の体動情報算出手段33によって検出結果から算出した体動情報を取得してもよい。体動情報算出手段33は、各種の情報から体動情報を算出する手段であり、センサの種類又は入力される信号に応じて適宜適当な処理が選択される。体動情報は、機械学習に使用可能な要素であり、例えば、体動の回数、所定時間内における体動の頻度、所定時間内における体動信号の積分値等を含んでもよい。所定時間は、データ切り取りの単位であり、他の入力データにおける単位時間に合わせることが好ましく、例えば、10秒、20秒、30秒、40秒、50秒、1分等を設定してもよい。体動情報を取得するセンサとしては、例えば、圧電センサ等の振動センサ、加速度センサ、電磁波により体の動きを検知できる電磁波体動センサ等を使用することができる。振動センサで検出した生体振動信号は、通常、心臓の拍動による心弾動、呼吸による振動、体動、発声、外部環境等に基づく振動も含まれるため、体動情報算出手段33は、例えば、下限周波数が10Hz以上のハイパスフィルタ(HPF)又はバンドパスフィルタ(BPF)を通過させて、生体振動信号から体動に起因する振動信号を分離抽出する。体動に起因する振動信号について、例えば、算出した体動に起因する振動信号について、閾値として所定の強度を設定し、閾値を越えたピーク数をカウントして、体動情報として体動の回数を算出してもよいし、さらに所定時間を設定し、所定時間内における体動の回数をカウントして、体動情報として所定時間内における体動の頻度を算出してもよい。また、所定時間内における体動信号を積分して積分値を算出してもよい。
心拍情報取得手段24は、すでに算出された心拍情報を有線又は無線で入力可能な入力部でもよいし、各種センサによる検出結果を入力し、情報処理部3の心拍情報算出手段34によって算出した心拍情報を取得してもよい。心拍情報算出手段34は、各種の情報から心拍情報を算出する手段であり、センサの種類又は入力される信号に応じて適宜適当な処理が選択される。心拍情報は、機械学習に使用可能な要素であり、例えば、心拍数(HR)、心拍数の変動係数(CVHR)、心拍数の偏差(DHR)、心拍数の偏差の変動係数(CVDHR)、心拍数の標準偏差(SDHR)、心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)、心拍間隔(RRI)、心拍間隔の変動係数(CVRRI)、心拍間隔の偏差(DRRI)、心拍間隔の偏差の変動係数(CVDRRI)、心拍間隔の標準偏差(SDRRI)、心拍間隔の標準偏差の変動係数(CVSDRRI)、心拍間隔の変動(VRRI)、心拍間隔の変動の変動係数(CVVRRI)、心拍間隔の変動の瞬時位相(ψh(t))、呼吸性不整脈(RSA)、及び呼吸性不整脈の変動係数(CVRSA)等を含んでもよい。心拍情報の各データは、睡眠中に取得した全データの平均値で正規化した変動係数を使用することが好ましい。例えば、心拍情報として心拍数を睡眠状態推定モデル311に入力する場合は、取得した心拍数の全データの平均との比(各心拍数/平均値)を算出し、正規化された心拍数の変動係数を入力してもよい。心拍情報及び/又は呼吸情報を正規化することにより、測定対象の動物における個体差を埋めてより睡眠状態推定モデルの汎用性を高めることができ、また、測定精度が向上する。ただし、睡眠中の全データを取得して平均値を算出してから変動係数を算出するため、リアルタイムで睡眠状態を推定することができない。このため、変動係数ではなく生データ(心拍数、呼吸数等)を使用してリアルタイムの睡眠状態を算出してもよく、さらに後から変動係数を用いた睡眠状態を算出してもよい。心拍情報を取得するセンサとしては、例えば、心電図計測用センサ、脈波センサ、振動センサ等を使用することができる。心拍情報算出手段34は、例えば、心電図計測用センサで検出した心電図波形や脈波センサで検出した脈波から、必要に応じてノイズ(例:呼吸の成分等)を取り除き、各種の心拍情報を算出できる。また、振動センサで検出した生体振動信号は、通常、心臓の拍動による心弾動、呼吸による振動、体動、発声、外部環境等に基づく振動も含まれるため、心拍情報算出手段34は、例えば、0.5Hz~10Hzのバンドパスフィルタ(BPF)を通過させて、生体振動信号から心臓の拍動による心弾動を分離抽出する。さらに、分離抽出した心弾動に基づいて、各種の心拍情報を算出できる。
呼吸情報取得手段25は、すでに算出された呼吸情報を有線又は無線で入力可能な入力部でもよいし、各種センサによる検出結果を入力し、情報処理部3の呼吸情報算出手段35によって算出した呼吸情報を取得してもよい。呼吸情報算出手段35は、各種の情報から呼吸情報を算出する手段であり、センサの種類又は入力される信号に応じて適宜適当な処理が選択される。呼吸情報は、機械学習に使用可能な要素であり、例えば、呼吸数(RR)、呼吸数の変動係数(CVRR)、呼吸数の偏差(DRR) 、呼吸数の偏差の変動係数(CVDRR)、呼吸数の標準偏差(SDRR) 、呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)、呼吸間隔(BI)、呼吸間隔の変動係数(CVBI)、呼吸間隔の偏差(DBI)、呼吸間隔の偏差の変動係数(CVDBI)、呼吸間隔の標準偏差(SDBI)、呼吸間隔の標準偏差の変動係数(CVSDBI)、及び単位時間当たりの鼾の回数、呼吸パターンの瞬時位相(ψr(t))等を含んでもよい。呼吸情報の各データは、睡眠中に取得した全データの平均値で正規化した変動係数を使用することが好ましい。例えば、心拍情報として呼吸数を睡眠状態推定モデル311に入力する場合は、取得した呼吸数の全データの平均との比(各呼吸数/平均値)を算出し、正規化された呼吸数の変動係数を入力してもよい。呼吸情報を取得するセンサとしては、例えば、呼吸センサ、心電図計測用センサ、脈波センサ、圧電センサ等の振動センサ、電磁波により胸郭の動きを検知できる電磁波呼吸センサ等を使用することができる。呼吸情報算出手段35は、例えば、呼吸センサで検出した呼吸パターンの時間変化の信号から、必要に応じてノイズ(例:いびき、寝言等に起因する信号)を取り除き、各種の呼吸情報を算出できる。また、心電図計測用センサで検出した心電図波形、脈波センサで検出した脈波、振動センサで検出した生体振動信号については、呼吸情報算出手段35は、例えば、上限周波数が1Hz以下のローパスフィルタ(LPF)又はバンドパスフィルタ(BPF)を通過させて、呼吸成分を分離抽出し、さらに、分離抽出した呼吸成分に基づいて、各種の呼吸情報を算出できる。
情報取得部2が情報取得手段として振動を計測する振動センサを含む場合、振動センサは、接触式でも非接触式でもよい。接触型の振動を計測するセンサの場合は、動物に直接又は間接的に接触させて配置することによって、心弾動図波形又は生体振動信号を検出することができる。心弾動図波形又は生体振動信号を検出するための接触型の振動を計測するセンサは、振動を発生する種々の生物に直接又は近傍に配置され、生物からの振動を検出し電気信号として出力できれば足りる。振動を計測するセンサとしては、圧電センサとしてピエゾ素子が好適に用いられるが、その他のセンサ、例えば高分子圧電体(ポリオレフィン系材料)を用いてもよい。ピエゾ素子の素材としては、例えば、多孔性ポリプロピレンエレクトレットフィルム(ElectroMechanical Film(EMFI))、またはPVDF(ポリフッ化ビニリデンフィルム)、またはポリフッ化ビニリデンと三フッ化エチレン共重合体(P(VDF-TrFE))、又はポリフッ化ビニリデンと四フッ化エチレン共重合体(P(VDF-TFE))を用いてもよい。圧電センサとしては、フィルム状であることが好ましい。さらに、圧電センサの場合、動物を拘束せずに心弾動図波形又は生体振動信号を取得することが可能であり、よりストレスフリーで測定できるので好ましい。ただし、圧電センサは、リストバンド、ベルト、腕時計、指輪、ヘッドバンド等に取り付けて、動物に装着してウェアラブルセンサとして利用することもできる。また、その他の種類の振動を計測するセンサとして、例えば、高感度の加速度センサを用いて、腕時計、携帯端末のように体と接触させて、あるいはベッド、椅子等の一部に加速度センサを設置して心弾動図波形又は生体振動信号を取得してもよいし、チューブ内の空気圧又は液体圧の変化を圧力センサ等で検知して、心弾動図波形又は生体振動信号を取得してもよい。さらに、振動を計測するセンサとして、マイクロ波等を用いた信号受発信に伴って非接触で心弾動図波形又は生体振動信号を取得できる非接触式のセンサを利用してもよい。マイクロ波としてはマイクロ波ドップラーセンサ、UWB(ウルトラワイドバンド)インパルスの反射遅延時間を測定し、対象物との距離を測定する受信波による心弾動図波形又は生体振動信号、マイクロ波以外の電磁波を用いて得られた心弾動図波形又は生体振動信号、LED光を使った反射又は透過光から得られる心弾動図波形又は生体振動信号、さらには、超音波の反射波から得られる心弾動図波形又は生体振動信号を使用してもよい。これらのマイクロ波等を用いたセンサは、小型化が可能であり、非接触かつ非拘束で信号を取得でき、遠隔から信号を取得できる。なお、加速度センサも小型化が可能である。
睡眠状態推定手段31は、睡眠状態推定モデル311を内蔵しており、図2(A)に示すように、情報取得部2によって取得した情報を入力データとして睡眠状態推定モデル311に入力し、当該睡眠状態推定モデル311からの演算結果に基づいて出力された動物の睡眠状態を推定結果として取得する。推定結果である睡眠状態は、必要に応じて出力部6を介して出力する。睡眠状態推定モデル311に入力する情報は、睡眠状態推定モデル311を作成する際に入力した情報であり、少なくとも位相コヒーレンス取得手段によって取得した位相コヒーレンスを含み、さらに、体動情報取得手段によって取得した体動情報、心拍情報取得手段によって取得した心拍情報、呼吸情報取得手段によって取得した呼吸情報、から選ばれた1つ以上のデータを含む。特に、睡眠状態推定モデル311は、位相コヒーレンス及び体動情報を入力して作成することが好ましく、さらに、位相コヒーレンスと体動情報とに加えて、2つ以上の心拍情報及び/又は2つ以上の呼吸情報を入力して作成してもよい。例えば、位相コヒーレンス(λ)、単位時間(20秒)あたりの体動の頻度(BM)、心拍数の変動係数(CVHR)、心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)、呼吸数の変動係数(CVRR)、呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)の6つのデータによって睡眠状態推定モデル311を作成した場合、睡眠状態推定手段31は、情報取得部2で取得した、及び/又は情報処理部3で算出した6つのデータを睡眠状態推定モデル311に入力し、出力された睡眠状態を取得する。
睡眠状態推定モデル311は、入力された位相コヒーレンスを含む複数のデータに基づいて、入力された複数のデータを取得した際の動物の睡眠状態がどの状態(覚醒状態、レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態又はその段階(N1,N2,N3,N4))かを演算して推定する情報(プログラム又はデータ構造)である。また、睡眠状態推定モデル学習手段36は、図2(B)に示すように、睡眠状態推定モデル311を作成する際に使用され、睡眠状態と、対応する位相コヒーレンスと、追加の入力データとを含む基礎データベース41に基づいて機械学習を用いることにより睡眠状態推定モデル311を作成する。すなわち、基礎データベース41に蓄積された睡眠状態と、対応する位相コヒーレンスと、追加の入力データとを含むビッグデータから、必要なデータを睡眠状態推定モデル311に入力し、学習させる。例えば、睡眠状態推定モデル学習手段36は、睡眠状態取得手段26で取得した睡眠状態と、睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスとを含み、さらに、睡眠状態と同一時系列で測定した体動情報取得手段によって取得した体動情報、心拍情報取得手段によって取得した心拍情報、呼吸情報取得手段によって取得した呼吸情報の1つ以上のデータとを睡眠状態推定モデル311に入力する。機械学習に用いられる学習方法の例としては、単純ベイズ分類器、ニューラルネットワーク、ディープラーニング、決定木、アンサンブル学習法、サポートベクターマシン、判別分析、最近傍法等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。機械学習に用いられるニューラルネットワークの例としては、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)や、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)や、長期・短期記憶(LSTM:Long Short-Term Memory)ニューラルネットワーク(LSTMを用いて再帰型ニューラルネットワークを改良したもの)等が挙げられる。睡眠状態の状態遷移傾向を捉えるためには、学習方法として再帰的な結合をもつニューラルネットワーク(CNN、LSTM)を用いることが好ましい。
記憶部4は、情報取得部2で取得した情報や、情報処理部3で算出した結果、判定機能で判定した結果などを記憶することができ、基礎データベース41を有している。基礎データベース41は、ビッグデータとして、動物の睡眠中に取得した睡眠状態と、前記睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、前記睡眠状態と同一時系列で測定した体動情報、心拍情報及び/又は呼吸情報とが格納されている。さらに、基礎データベース41には、測定対象となる動物の種類、性別、年齢、身長、体重などの身体情報や、測定日の日付、睡眠時間、就寝時刻、起床時刻、季節などの時間情報、測定場所の気温、湿度、天気、騒音などの環境情報を含んでいてもよい。基礎データベース41に格納されている個々の睡眠状態と、その状態に対応する位相コヒーレンスと、各種の体動情報、心拍情報及び/又は呼吸情報とは、睡眠状態推定モデル311の学習に使用される。さらに、身体情報、時間情報、及び/又は環境情報も特徴変数として睡眠状態推定モデル311に入力してもよい。また、身体情報、時間情報、及び/又は環境情報に応じて複数の睡眠状態推定モデル311を作成してもよく、例えば、年代別(10代、20代、30~50代)成人男性を対象とする睡眠状態推定モデル、昼間に睡眠した場合の睡眠状態推定モデル、最低気温が25度以上の熱帯夜における睡眠状態推定モデル等を作成し、睡眠状態を推定する測定対象の状況に応じて睡眠状態推定モデルを変更してもよい。
操作部5は、使用者が睡眠状態測定装置1を操作するためのスイッチ、タッチパネル、ボタン、つまみ、キーボード、マウス、音声入力用マイク等の操作端子が設けられている。また操作部5には、操作内容等を表示するディスプレイが設けられていてもよい。出力部6は、推定した睡眠状態を出力してもよいし、取得した各種情報を出力してもよい。出力部6としては、結果を画像で表示するディスプレイ、結果を紙で出力するプリンター、結果を音声で出力するスピーカー、結果を電子情報で出力する有線又は無線の出力端子などを使用することができる。なお、出力部6としてのディスプレイを操作部5におけるタッチパネルや操作内容等を表示するディスプレイと兼用させる構成であってもよい。
図3(A)は、睡眠状態推定システム1の一実施態様における睡眠状態推定処理のフローチャートである。S1において、睡眠状態推定システム1は、情報取得部2によって位相コヒーレンス及び睡眠状態推定モデル311に入力する同一時系列のデータを取得する。S2において、睡眠状態推定手段31は、位相コヒーレンス及び取得したデータを睡眠状態推定モデル311に入力する。S3において、睡眠状態推定モデル311は、入力された位相コヒーレンス及びデータから、最も確率の高い動物の睡眠状態を演算する。S4において、睡眠状態推定モデル311は、演算の結果、最も確率の高かった睡眠状態を入力された位相コヒーレンス及びデータを測定した時の動物の睡眠状態であると推定して出力する。
図3(B)は、睡眠状態推定システム1の他の実施態様における睡眠状態推定処理のフローチャートである。S11において、睡眠状態推定システム1は、振動センサで検出した動物の生体振動信号を取得する。S12において、情報処理部3は、取得した生体振動信号から各種情報を算出する。体動情報算出手段33は、生体振動信号から体動情報を算出し、心拍情報算出手段34は、生体振動信号から心拍情報として少なくとも心拍間隔の変動の瞬時位相を算出し、呼吸情報算出手段35は、生体振動信号から呼吸情報として少なくとも呼吸パターンの瞬時位相を算出する。S13において、位相コヒーレンス算出手段32は、心拍情報算出手段34及び呼吸情報算出手段35で算出した心拍間隔の変動の瞬時位相と呼吸パターンの瞬時位相とから、それらの瞬時位相差の位相コヒーレンスを算出する。S14において、算出した心拍情報及び呼吸情報を睡眠中のデータの全部の平均値で正規化する。正規化処理は、情報処理部2において実行され、基礎データベース41に格納された睡眠中の全データから平均値を算出し、算出した平均値により心拍情報及び呼吸情報を正規化する。その後、S15において、睡眠状態推定手段31は、位相コヒーレンス及び正規化したデータを睡眠状態推定モデル311に入力する。S16において、睡眠状態推定モデル311は、入力された位相コヒーレンス及びデータから、最も確率の高い動物の睡眠状態を演算する。S17において、睡眠状態推定モデル311は、演算の結果、最も確率の高かった睡眠状態を入力された位相コヒーレンス及びデータを測定した時の動物の睡眠状態であると推定して出力する。
[実施例1]単純ベイズ分類器によるモデル
本実施例では、単純ベイズ分類器に基づいて学習させた睡眠状態推定モデルを用いて睡眠状態を推定した。学習時及び推定時における入力データは、下記1-1(図5)では位相コヒーレンス(λ)のみであり、下記1-2(図6)では位相コヒーレンス(λ)及び単位時間(20秒)あたりの体動の頻度(BM)の2データであり、下記1-3(図7)では位相コヒーレンス(λ)、単位時間(20秒)あたりの体動の頻度(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、及び呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)の4データであり、下記1-4(図8)では位相コヒーレンス(λ)、単位時間(20秒)あたりの体動の頻度(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)、及び心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)の5データであり、下記1-5(図9)では位相コヒーレンス(λ)、単位時間(20秒)あたりの体動の頻度(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)、心拍数の変動係数(CVHR)、及び心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)の6データである。
本実施例では、単純ベイズ分類器に基づいて学習させた睡眠状態推定モデルを用いて睡眠状態を推定した。学習時及び推定時における入力データは、下記1-1(図5)では位相コヒーレンス(λ)のみであり、下記1-2(図6)では位相コヒーレンス(λ)及び単位時間(20秒)あたりの体動の頻度(BM)の2データであり、下記1-3(図7)では位相コヒーレンス(λ)、単位時間(20秒)あたりの体動の頻度(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、及び呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)の4データであり、下記1-4(図8)では位相コヒーレンス(λ)、単位時間(20秒)あたりの体動の頻度(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)、及び心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)の5データであり、下記1-5(図9)では位相コヒーレンス(λ)、単位時間(20秒)あたりの体動の頻度(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)、心拍数の変動係数(CVHR)、及び心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)の6データである。
図4は、睡眠状態推定モデルに入力する入力データの一例である。図4(A)は、睡眠状態の時系列のグラフであり、縦軸のWKは覚醒状態(起きている状態)、REMはレム睡眠状態、N1はノンレム睡眠のステージI、N2はノンレム睡眠のステージII、N3はノンレム睡眠のステージIII及びIVの状態を指し、横軸は時間(分)である。図4(A)では、約180分の時点で就寝し、その後、短時間N1、N2状態となった後、一度覚醒し、すぐに段階的にN3まで至り、N2、REM状態を周期的に移行している。図4(B)は、心拍情報の時系列のグラフであり、心拍数の変動係数(CVHR)及び心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)であり、それらはそれぞれの平均値で除して、平均値が1となるように正規化している。図4(C)は、呼吸情報の時系列のグラフであり、呼吸数の変動係数(CVRR)及び呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)であり、それらはそれぞれの平均値で除して、平均値が1となるように正規化している。図4(D)は、位相コヒーレンス(λ)の時系列のグラフであり、位相コヒーレンスは0~1の値をとり、δ波の振幅が大きくなると位相コヒーレンス(λ)が1に近づき、δ波の振幅が小さくなると位相コヒーレンス(λ)が0に近づく傾向がある。図4(E)は、体動(BM)の時系列のグラフであり、20秒毎に体動信号を積分して得られた体動の頻度である。
図4の各データは、次のようにして算出した。図4(A)は睡眠ポリグラフィ検査を用いて国際的に使用されている睡眠段階判定基準に基づいて判定した睡眠段階である。20秒毎の心電図(ECG)及び呼吸流速計で計測した呼吸波形のデータから位相コヒーレンス、心拍数、心拍数の標準偏差、呼吸数、呼吸数の標準偏差を求めた。体動は生体振動信号(BCG)から求めており、BCGの生信号の2×標準偏差を閾値としてこれを上回る信号のみを20秒毎に積算して算出した。これらを10秒ずらしながら睡眠時間全域に亘って計算した。睡眠ポリグラフィ検査における睡眠段階は30秒エポック(区間)で判定されているので、全ての計測データは30秒間隔で線形補間した。補間した心拍数、心拍数の標準偏差、呼吸数及び呼吸数の標準偏差については、それぞれ睡眠中の全データの平均値を算出し、心拍数の変動係数(CVHR)=心拍数/心拍数の平均値、心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)=心拍数の標準偏差/心拍数の標準偏差の平均値、呼吸数の変動係数(CVRR)=呼吸数/呼吸数の平均値、及び呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)=呼吸数の標準偏差/呼吸数の標準偏差の平均値の式により、各変動係数を算出して正規化した。
算出した入力データを単純ベイズ分類器により、Leave-one-out法で被験者毎に睡眠段階を推定した。推定精度は、線形重み付き一致度ならびにCohen’s kappa係数で評価した。ここで、線形重み付き一致度とは、完全に一致した場合だけではなく、一致していない場合も考慮した一致度であり、本実施例では一次の重み付けとし、k段階の推定で、推定結果がi段階、真値がj段階のとき 重み係数は1―|i-j|/(k-1)となる。つまり、5段階の睡眠状態(WK、REM、N1、N2、N3)について、推定結果(推定した睡眠状態)と真値(実測の睡眠状態)とが一致(i=j)していれば1、1段階(|i-j|=1)ずれていれば3/4(0.75)、2段階(|i-j|=2)ずれていれば1/2、3段階(|i-j|=3)ずれていれば1/4、4段階(|i-j|=4)ずれていれば0となる。また、Cohen’s Kappa係数κは、推定結果(推定した睡眠状態)と真値(実測の睡眠状態)の一致度を評価する指標であり、κ=(Po-Pe)/(1-Pe)(ただし、Po:観測された重み付け一致度の割合、Pe:偶然一致する割合)で算出される。評価の指標としては、次のとおりである。
κ<0:ほとんど一致していない(poor)
0<κ≦0.2:わずかに一致(slight)
0.2<κ≦0.4:一応一致(fair)
0.4<κ≦0.6:中程度一致(moderate)
0.6<κ≦0.8:実質的に一致(substantial)
0.8<κ:完全一致(perfect)
κ<0:ほとんど一致していない(poor)
0<κ≦0.2:わずかに一致(slight)
0.2<κ≦0.4:一応一致(fair)
0.4<κ≦0.6:中程度一致(moderate)
0.6<κ≦0.8:実質的に一致(substantial)
0.8<κ:完全一致(perfect)
1-1 位相コヒーレンスを入力
図5(A)は、睡眠状態の実測値であり、図5(B)は、位相コヒーレンス(λ)のみを入力データとして学習させた睡眠状態推定モデルに対して位相コヒーレンスを入力した時の推定結果であり、図5(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。対応表は、推定結果を行、真値を列とした表であり、左上から右下の対角線上のセルは、推定結果と真値とが一致しているセルであり、該当するデータ数が記載されている。つまり、推定結果がWKで実測値もWKであれば、一番左上のセルに該当し、推定結果がWKで実測値がREMであれば、その右側のセルに該当する。図5(C)に示すとおり、一致率は84.3%であり、Cohen’s Kappa係数は0.410と中程度一致の評価となった。
図5(A)は、睡眠状態の実測値であり、図5(B)は、位相コヒーレンス(λ)のみを入力データとして学習させた睡眠状態推定モデルに対して位相コヒーレンスを入力した時の推定結果であり、図5(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。対応表は、推定結果を行、真値を列とした表であり、左上から右下の対角線上のセルは、推定結果と真値とが一致しているセルであり、該当するデータ数が記載されている。つまり、推定結果がWKで実測値もWKであれば、一番左上のセルに該当し、推定結果がWKで実測値がREMであれば、その右側のセルに該当する。図5(C)に示すとおり、一致率は84.3%であり、Cohen’s Kappa係数は0.410と中程度一致の評価となった。
1-2 位相コヒーレンス及び体動を入力
図6(A)は、睡眠状態の実測値であり、図6(B)は、位相コヒーレンス(λ)及び体動(BM)を入力データとして睡眠状態を学習させた睡眠状態推定モデルに対し、位相コヒーレンス及び体動を入力した時の推定結果であり、図6(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図6(C)に示すとおり、一致率は85.3%であり、Cohen’s Kappa係数は0.498と中程度一致の評価となった。このように、少なくとも位相コヒーレンス及び体動を入力することにより、睡眠状態の一致度及び信頼性が高くなる。
図6(A)は、睡眠状態の実測値であり、図6(B)は、位相コヒーレンス(λ)及び体動(BM)を入力データとして睡眠状態を学習させた睡眠状態推定モデルに対し、位相コヒーレンス及び体動を入力した時の推定結果であり、図6(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図6(C)に示すとおり、一致率は85.3%であり、Cohen’s Kappa係数は0.498と中程度一致の評価となった。このように、少なくとも位相コヒーレンス及び体動を入力することにより、睡眠状態の一致度及び信頼性が高くなる。
1-3 位相コヒーレンス、体動、呼吸数及び呼吸数の標準偏差を入力
図7(A)は、睡眠状態の実測値であり、図7(B)は、位相コヒーレンス(λ)、体動(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、及び呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)を入力データとして睡眠状態を学習させた睡眠状態推定モデルに対し、位相コヒーレンス、体動、呼吸数の変動係数、及び呼吸数の標準偏差の変動係数を入力した時の推定結果であり、図7(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図7(C)に示すとおり、一致率は89.3%であり、Cohen’s Kappa係数は0.639と実質的に一致の評価となった。
図7(A)は、睡眠状態の実測値であり、図7(B)は、位相コヒーレンス(λ)、体動(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、及び呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)を入力データとして睡眠状態を学習させた睡眠状態推定モデルに対し、位相コヒーレンス、体動、呼吸数の変動係数、及び呼吸数の標準偏差の変動係数を入力した時の推定結果であり、図7(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図7(C)に示すとおり、一致率は89.3%であり、Cohen’s Kappa係数は0.639と実質的に一致の評価となった。
1-4 位相コヒーレンス、体動、呼吸数、呼吸数の標準偏差及び心拍数の標準偏差を入力
図8(A)は、睡眠状態の実測値であり、図8(B)は、位相コヒーレンス(λ)、体動(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)、及び心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)を入力データとして睡眠状態を学習させた睡眠状態推定モデルに対し、位相コヒーレンス、体動、呼吸数の変動係数、呼吸数の標準偏差の変動係数、及び心拍数の標準偏差の変動係数を入力した時の推定結果であり、図8(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図8(C)に示すとおり、一致率は89.2%であり、Cohen’s Kappa係数は0.565と中程度一致の評価となった。
図8(A)は、睡眠状態の実測値であり、図8(B)は、位相コヒーレンス(λ)、体動(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)、及び心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)を入力データとして睡眠状態を学習させた睡眠状態推定モデルに対し、位相コヒーレンス、体動、呼吸数の変動係数、呼吸数の標準偏差の変動係数、及び心拍数の標準偏差の変動係数を入力した時の推定結果であり、図8(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図8(C)に示すとおり、一致率は89.2%であり、Cohen’s Kappa係数は0.565と中程度一致の評価となった。
1-5 位相コヒーレンス、体動、呼吸数、呼吸数の標準偏差、心拍数の標準偏差及び心拍数を入力
図9(A)は、睡眠状態の実測値であり、図9(B)は、位相コヒーレンス(λ)、体動(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)、心拍数の変動係数(CVHR)、及び心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)を入力データとして睡眠状態を学習させた睡眠状態推定モデルに対し、位相コヒーレンス、体動、呼吸数の変動係数、呼吸数の標準偏差の変動係数、心拍数の変動係数、及び心拍数の標準偏差の変動係数を入力した時の推定結果であり、図9(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図9(C)に示すとおり、一致率は89.4%であり、Cohen’s Kappa係数は0.659と実質的に一致の評価となった。このように、入力データを位相コヒーレンス(λ)、体動(BM)、呼吸数(RR)、呼吸数の標準偏差、心拍数(HR)、及び心拍数の標準偏差という6データとすることにより、一致率及び信頼性を極めて高くすることができた。
図9(A)は、睡眠状態の実測値であり、図9(B)は、位相コヒーレンス(λ)、体動(BM)、呼吸数の変動係数(CVRR)、呼吸数の標準偏差の変動係数(CVSDRR)、心拍数の変動係数(CVHR)、及び心拍数の標準偏差の変動係数(CVSDHR)を入力データとして睡眠状態を学習させた睡眠状態推定モデルに対し、位相コヒーレンス、体動、呼吸数の変動係数、呼吸数の標準偏差の変動係数、心拍数の変動係数、及び心拍数の標準偏差の変動係数を入力した時の推定結果であり、図9(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図9(C)に示すとおり、一致率は89.4%であり、Cohen’s Kappa係数は0.659と実質的に一致の評価となった。このように、入力データを位相コヒーレンス(λ)、体動(BM)、呼吸数(RR)、呼吸数の標準偏差、心拍数(HR)、及び心拍数の標準偏差という6データとすることにより、一致率及び信頼性を極めて高くすることができた。
[実施例2]長期・短期記憶ニューラルネットワークによるモデル
本実施例では、長期・短期記憶(LSTM:Long Short-Term Memory)ニューラルネットワークに基づいて学習させた睡眠状態推定モデルを用いて睡眠状態を推定した。LSTMニューラルネットワークは、短期記憶と長期記憶とを関連させることにより、長期依存を学習できるようにしたモデルである。本実施例のLSTMの構造は、入力層としてsequence input、中間層としてLSTM3層、出力層として5段階(WK、REM、N1、N2、N3)分類出力とし、LSTMは双方向形、各LSTM層には64個の隠れユニットを設定した。学習時には、図4で算出したECGに基づく位相コヒーレンス(λ)、呼吸数の変動係数(RR)、呼吸数の標準偏差の変動係数、心拍数の変動係数(HR)、及び心拍数の標準偏差の変動係数と、BCGに基づく体動(BM)を睡眠状態と関連付けて入力した。
本実施例では、長期・短期記憶(LSTM:Long Short-Term Memory)ニューラルネットワークに基づいて学習させた睡眠状態推定モデルを用いて睡眠状態を推定した。LSTMニューラルネットワークは、短期記憶と長期記憶とを関連させることにより、長期依存を学習できるようにしたモデルである。本実施例のLSTMの構造は、入力層としてsequence input、中間層としてLSTM3層、出力層として5段階(WK、REM、N1、N2、N3)分類出力とし、LSTMは双方向形、各LSTM層には64個の隠れユニットを設定した。学習時には、図4で算出したECGに基づく位相コヒーレンス(λ)、呼吸数の変動係数(RR)、呼吸数の標準偏差の変動係数、心拍数の変動係数(HR)、及び心拍数の標準偏差の変動係数と、BCGに基づく体動(BM)を睡眠状態と関連付けて入力した。
2-1 ECGに基づくデータを入力
図10(A)は、睡眠状態の実測値であり、図10(B)は、上記LSTMニューラルネットワークに基づいて学習させた睡眠状態推定モデルに対し、ECGに基づく位相コヒーレンス、呼吸数の変動係数、呼吸数の標準偏差の変動係数、心拍数の変動係数、及び心拍数の標準偏差の変動係数と、BCGに基づく体動(BM)を入力した時の推定結果であり、図10(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図10(C)に示すとおり、一致率は96.9%であり、Cohen’s Kappa係数は0.927と完全一致の評価となった。このように、LSTMニューラルネットワークに基づいて学習させたモデルにおいても睡眠状態の推定が可能であった。
図10(A)は、睡眠状態の実測値であり、図10(B)は、上記LSTMニューラルネットワークに基づいて学習させた睡眠状態推定モデルに対し、ECGに基づく位相コヒーレンス、呼吸数の変動係数、呼吸数の標準偏差の変動係数、心拍数の変動係数、及び心拍数の標準偏差の変動係数と、BCGに基づく体動(BM)を入力した時の推定結果であり、図10(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図10(C)に示すとおり、一致率は96.9%であり、Cohen’s Kappa係数は0.927と完全一致の評価となった。このように、LSTMニューラルネットワークに基づいて学習させたモデルにおいても睡眠状態の推定が可能であった。
2-2 BCGに基づくデータを入力
図11(A)は、睡眠状態の実測値であり、図11(B)は、上記LSTMニューラルネットワークに基づいて学習させた睡眠状態推定モデルに対し、生体振動信号(BCG)から取得した位相コヒーレンス、体動、呼吸数の変動係数、呼吸数の標準偏差の変動係数、心拍数の変動係数、及び心拍数の標準偏差の変動係数を入力した時の推定結果であり、図11(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図11(C)に示すとおり、一致率は88.8%であり、Cohen’s Kappa係数は0.740と実質的に一致の評価となった。このように、ECGに基づくデータを使用して学習したモデルに対し、他の手段(BCG)から取得したデータを入力しても睡眠状態の推定が可能であった。本実施例の結果によれば、学習した睡眠状態推定モデルがあれば、振動センサで取得した生体振動信号から、睡眠状態の推定が可能であることが確認された。
図11(A)は、睡眠状態の実測値であり、図11(B)は、上記LSTMニューラルネットワークに基づいて学習させた睡眠状態推定モデルに対し、生体振動信号(BCG)から取得した位相コヒーレンス、体動、呼吸数の変動係数、呼吸数の標準偏差の変動係数、心拍数の変動係数、及び心拍数の標準偏差の変動係数を入力した時の推定結果であり、図11(C)は、その推定結果と真値(実測値)との対応表である。図11(C)に示すとおり、一致率は88.8%であり、Cohen’s Kappa係数は0.740と実質的に一致の評価となった。このように、ECGに基づくデータを使用して学習したモデルに対し、他の手段(BCG)から取得したデータを入力しても睡眠状態の推定が可能であった。本実施例の結果によれば、学習した睡眠状態推定モデルがあれば、振動センサで取得した生体振動信号から、睡眠状態の推定が可能であることが確認された。
1 睡眠状態測定システム
2 情報取得部
3 情報処理部
4 記憶部
5 操作部
6 出力部
22 位相コヒーレンス取得手段
23 体動情報取得手段
24 心拍情報取得手段
25 呼吸情報取得手段
26 睡眠状態取得手段
31 睡眠状態推定手段
32 位相コヒーレンス算出手段
33 体動情報算出手段
34 心拍情報算出手段
35 呼吸情報算出手段
36 睡眠状態推定モデル学習手段
41 基礎データベース
311 睡眠状態推定モデル
2 情報取得部
3 情報処理部
4 記憶部
5 操作部
6 出力部
22 位相コヒーレンス取得手段
23 体動情報取得手段
24 心拍情報取得手段
25 呼吸情報取得手段
26 睡眠状態取得手段
31 睡眠状態推定手段
32 位相コヒーレンス算出手段
33 体動情報算出手段
34 心拍情報算出手段
35 呼吸情報算出手段
36 睡眠状態推定モデル学習手段
41 基礎データベース
311 睡眠状態推定モデル
Claims (9)
- 動物の睡眠中に取得した心拍間隔の変動の瞬時位相と、前記心拍間隔の変動と同一時系列における前記動物の呼吸パターンの瞬時位相との間の瞬時位相差に基づいて算出した位相コヒーレンスを取得する位相コヒーレンス取得手段と、
前記心拍間隔の変動と同一時系列における前記動物の体動に関する体動情報を取得する体動情報取得手段、前記心拍間隔の変動と同一時系列における心拍に関する心拍情報を取得する心拍情報取得手段、又は前記心拍間隔の変動と同一時系列における呼吸に関する呼吸情報を取得する呼吸情報取得手段と、
動物の睡眠中に取得した睡眠状態と、前記睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、前記睡眠状態と同一時系列で測定した体動情報、心拍情報又は呼吸情報とを含む基礎データベースに基づいて機械学習を用いることにより作成した睡眠状態推定モデルを内蔵した睡眠状態推定手段と、を含み、
前記睡眠状態推定手段は、前記位相コヒーレンス取得手段によって取得した前記位相コヒーレンスと、前記体動情報取得手段によって取得した前記体動情報、前記心拍情報取得手段によって取得した前記心拍情報、及び前記呼吸情報取得手段によって取得した前記呼吸情報から選ばれた1つ以上のデータと、を前記睡眠状態推定モデルに入力し、当該睡眠状態推定モデルからの演算結果に基づいて、前記動物の睡眠状態を推定することを特徴とする睡眠状態推定システム。 - 前記睡眠状態推定モデルは、睡眠状態と、前記睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、少なくとも前記睡眠状態と同一時系列で測定した体動情報とを入力することにより学習したものであり、
前記睡眠状態推定手段は、前記位相コヒーレンス取得手段によって取得した前記位相コヒーレンスと、少なくとも前記体動情報取得手段によって取得した前記体動情報とを前記睡眠状態推定モデルに入力し、当該睡眠状態推定モデルからの演算結果に基づいて、前記動物の睡眠状態を推定することを特徴とする請求項1に記載の睡眠状態推定システム。 - 前記体動情報は、体動の回数、単位時間あたりの体動の頻度、又は単位時間当たりの体動信号の積分値であることを特徴とする請求項2に記載の睡眠状態推定システム。
- 前記睡眠状態推定モデルは、睡眠状態と、前記睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、少なくとも前記睡眠状態と同一時系列で測定した心拍情報とを入力することにより学習したものであり、
前記睡眠状態推定手段は、前記位相コヒーレンス取得手段によって取得した前記位相コヒーレンスと、少なくとも前記心拍情報取得手段によって取得した前記心拍情報とを前記睡眠状態推定モデルに入力し、当該睡眠状態推定モデルからの演算結果に基づいて、前記動物の睡眠状態を推定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の睡眠状態推定システム。 - 前記心拍情報は、心拍数、心拍数の変動係数、心拍数の偏差、心拍数の偏差の変動係数、心拍数の標準偏差、心拍数の標準偏差の変動係数、心拍間隔、心拍間隔の変動係数、心拍間隔の偏差、心拍間隔の偏差の変動係数、心拍間隔の標準偏差、心拍間隔の標準偏差の変動係数、心拍間隔の変動、心拍間隔の変動の変動係数、呼吸性不整脈、及び呼吸性不整脈の変動係数からなる群から選択された2つ以上のデータであることを特徴とする請求項4に記載の睡眠状態推定システム。
- 前記睡眠状態推定モデルは、睡眠状態と、前記睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、少なくとも前記睡眠状態と同一時系列で測定した呼吸情報とを入力することにより学習したものであり、
前記睡眠状態推定手段は、前記位相コヒーレンス取得手段によって取得した前記位相コヒーレンスと、少なくとも前記呼吸情報取得手段によって取得した前記呼吸情報とを前記睡眠状態推定モデルに入力し、当該睡眠状態推定モデルからの演算結果に基づいて、前記動物の睡眠状態を推定することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の睡眠状態推定システム。 - 前記呼吸情報は、呼吸数、呼吸数の変動係数、呼吸数の偏差、呼吸数の偏差の変動係数、呼吸数の標準偏差、呼吸数の標準偏差の変動係数、呼吸間隔、呼吸間隔の変動係数、呼吸間隔の偏差、呼吸間隔の偏差の変動係数、呼吸間隔の標準偏差、呼吸間隔の標準偏差の変動係数、及び単位時間当たりの鼾の回数からなる群から選択された2つ以上のデータであることを特徴とする請求項6に記載の睡眠状態推定システム。
- 前記睡眠状態推定モデルは、睡眠状態と、前記睡眠状態と同一時系列で測定したデータから算出した位相コヒーレンスと、少なくとも前記睡眠状態と同一時系列で測定した単位時間あたりの体動の頻度、心拍数、心拍数の標準偏差、呼吸数、及び呼吸数の標準偏差とを入力することにより学習したものであり、
前記睡眠状態推定手段は、位相コヒーレンス、単位時間あたりの体動の頻度、心拍数、心拍数の標準偏差、呼吸数、及び呼吸数の標準偏差を前記睡眠状態推定モデルに入力し、当該睡眠状態推定モデルからの演算結果に基づいて、前記動物の睡眠状態を推定することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の睡眠状態推定システム。 - 前記心拍情報又は前記呼吸情報は、睡眠中に取得した心拍情報又は呼吸情報の平均値で正規化された変動係数である請求項4乃至8の何れか1項に記載の睡眠状態推定システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020172333A JP2022063926A (ja) | 2020-10-13 | 2020-10-13 | 睡眠状態推定システム |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2020172333A JP2022063926A (ja) | 2020-10-13 | 2020-10-13 | 睡眠状態推定システム |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2022063926A true JP2022063926A (ja) | 2022-04-25 |
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ID=81378663
Family Applications (1)
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JP2020172333A Pending JP2022063926A (ja) | 2020-10-13 | 2020-10-13 | 睡眠状態推定システム |
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JP (1) | JP2022063926A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115486833A (zh) * | 2022-08-22 | 2022-12-20 | 华南师范大学 | 呼吸状态检测方法、装置、计算机设备以及存储介质 |
WO2024071166A1 (ja) * | 2022-09-29 | 2024-04-04 | 日東電工株式会社 | ロボット |
-
2020
- 2020-10-13 JP JP2020172333A patent/JP2022063926A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN115486833A (zh) * | 2022-08-22 | 2022-12-20 | 华南师范大学 | 呼吸状态检测方法、装置、计算机设备以及存储介质 |
WO2024071166A1 (ja) * | 2022-09-29 | 2024-04-04 | 日東電工株式会社 | ロボット |
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