以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、移動棚100の全体図、図2は、移動棚100の上面図、図3は、移動棚100に備えたアシスト装置1について説明するための説明図、図4は、移動棚100のアシスト装置1の構成を説明するための断面図、図5は、移動棚100のアシスト装置1の詳細を説明するための分解斜視図、図6は、移動棚100のアシスト装置1の詳細を説明するための斜視図、図7A〜7Dは、移動棚100のアシスト装置1の挙動を説明するための説明図、図8は、移動棚100の別実施形態に係るアシスト装置1について説明するための説明図である。
図1〜8に示す本発明の移動棚100は、車輪を設けることによって移動可能に設置された手動式の移動棚100であり、床面上に敷設された一対のレールに沿って手で押すなどして移動可能に構成され、重量の嵩む移動棚100であっても手動の軽い操作で移動可能にするために移動初期の操作をアシストする機能を備えたアシスト機能付移動棚100である。
以降では、レール110の敷設方向(長さ方向)を前後方向、前後方向に直交する方向を左右方向として説明する。また、操作部2の設けられた操作側を表側として説明する。
移動棚100は、底壁101と、天壁102と、仕切壁103と、両側壁104と、を有し、両側壁104間に所定の間隔で架けられた棚板105の前後方向の何れか一方から書籍等の収納物の出し入れが行われるよう構成されている。
底壁101には、左右両側端部に側部フレーム122が前後方向に沿って設けられるとともに、両側には、左右にそれぞれ2本ずつ車軸支持フレーム121が前後方向に沿って設けられている。
車軸支持フレーム121の前後方向一方側には、軸受部材を介して左右方向に延びる駆動回転軸124が回転自在に取付けられ、駆動回転軸124には、駆動側の車輪123がそれぞれ設けられている。
駆動回転軸124は、複数の車軸支持フレーム121と、一方の側部フレーム122との間を架け渡すようにして棚の左右方向に沿って回転自在に設けられ、駆動回転軸124の一端部には、一方の側部フレーム122側に設けられた側壁104の内部に設けられた、後に詳述するギア33が連結されている。
車軸支持フレーム121の前後方向他方側には、軸受部材を介して2つの従動回転軸126がそれぞれ回転自在に取付けられ、従動回転軸126には、従動側の車輪125がそれぞれ固定されている。
車輪123,125には、その外周端面の中央にガイド突起が周方向に連続して一体に形成されており、ガイド突起を、レール110の中央ガイド溝に挿入した状態で、レール110上に載置されている。
移動棚100の一方の側壁104には、移動初期の操作をアシストして、操作負担を軽減させるために、装置本体11、操作部2、クラッチ機構4及び動力伝達機構3などを備えるアシスト装置1を備えている。
アシスト装置1は、装置本体11、クラッチ機構4及び動力伝達機構3などが移動棚100の一方の側壁104内に取付けられ、操作部2だけが一方の側壁104の外方へ突出するように、側壁104に埋め込まれるようにして設けられている。
アシスト装置1の下部には、取付部12が設けられ、取付部12が移動棚100の底壁101に取付固定される。
操作部2は、装置本体11の表側に設けられた板状部材に取り付けられ、例えば、図示するようなレバーハンドル21(以降、「ハンドル21」とも記す。)を用いて構成される。
操作部2は、把手となるハンドル21を備え、ハンドル21の基端部21aが、後述するクラッチピンベース41の表側に突出して設けられた後述する連結部411の外周に取り付けられて、所定の回動範囲内で回動操作可能に構成されている。
図4に示すように、連結部411は、その内周面に軸受51,52の外輪が嵌合されて回動自在に設けられ、連結部411の内部の軸受51,52の内輪には後述する第1クラッチ部42に一体的に設けられた回転軸421が固定され、連結部411とは個別に回転軸421が回転自在に内嵌されている。
回転軸421は、中空状に形成され、その外周面に後に詳述するクラッチ機構4及びスプロケット31が固定されて、これらが一体的に回転するように構成されている。
本実施形態においては、4つの軸受51〜54によって回転軸421が支承されるように構成されており、例えば、軸受51〜54には、ボールベアリングなどが用いられる。
ハンドル21は、未操作状態において、鉛直方向に直立した姿勢となるように設けられ、ハンドル21の回転軸421の軸方向を回動中心として回動操作可能に構成されている。
尚、以降では、操作部2が未操作の状態で、ハンドル21の軸心が鉛直方向に直立した姿勢となる位置を「中立位置M」と定義して説明する。
ハンドル21の基端部21aの内部には、連結部411の径寸法よりも大径に形成された凹部22が設けられており、凹部22が連結部411の鍔部412に取付固定されることによりハンドル21が回動操作可能に構成されている。
ハンドル21は、後述する規制部443によって所定の回動範囲内で回動操作可能に構成されている。
動力伝達機構3は、駆動回転軸124の一端部に連結されたギア33と、第1クラッチ部42に一体的に設けられた回転軸421と連結されたスプロケット31と、当該スプロケット31及びギア33に架け渡された伝動チェーン32と、を備える。
動力伝達機構3は、車輪123の走行によって生じる車輪123の回転力が、駆動回転軸124を介してギア33に伝えられ、ギア33に架けられた伝動チェーン32を介してスプロケット31に伝達されるように構成される。
クラッチが接続されていない状態では、車輪123の回転力が伝達されたスプロケット31の回転とともに、回転軸421に固着されたクラッチ機構4の一部のみが連動して回転するように構成されている。
クラッチが接続された状態では、ハンドル21の操作によって生じた動力がスプロケット31から伝動チェーン32を介してギア33に伝達され、ギア33の回転に連動して駆動回転軸124が回転するように構成されている。
操作部2の回動操作により生じる動力が駆動回転軸124に伝達されることによって、駆動回転軸124が操作部2の回動方向と同一方向に回転して駆動側の車輪123が駆動される。
具体的には、ハンドル21を右回りに回動操作させると、クラッチ機構4を介してスプロケット31もハンドル21の回転方向と同様に右回りに回転し、スプロケット31に架けられた伝動チェーン32を介して駆動側の車輪123もハンドル21の回転方向と同方向に回転する。
同様にして、ハンドル21を左回りに回動操作させると、クラッチ機構4を介したスプロケット31及びスプロケット31に架けられた伝動チェーン32を介して駆動側の車輪123もハンドル21の回転方向と同方向に回転する。
スプロケット31と連結された回転軸421及び第1クラッチ部42も、スプロケット31の回動動作に伴って一体的に回転するように構成される。
図5に示すように、クラッチ機構4は、クラッチピンベース41と、第1クラッチ部42と、第1クラッチ部42と係合する第2クラッチ部43と、クラッチユニット44と、を備えてなり、この順番で表側から配置されて回転軸421に嵌め込まれて形成されている。
クラッチ機構4は、操作部2から駆動回転軸124へ動力が伝達される接続状態と、操作部2から駆動回転軸124へ動力が伝達されない接続解除状態と、を選択的に切り替え可能に構成されている。
クラッチ機構4の接続状態および接続解除状態の切り替えは、操作部2の回動操作によって行われる。
クラッチピンベース41は、アシスト装置1の一側方の最も表側に設けられ、正面視で略方形状の板状体で形成されており、2つの軸受51,52を介して回転軸421に取り付けられている。
クラッチピンベース41の表側には、ハンドル21の基端部21aが一体的に取り付けられ、回転軸421を中心として形成された略筒状の連結部411が設けられている。
連結部411は、クラッチピンベース41の中央部で表側に突出した形状に形成され、最も表側に設けられた鍔部412が、操作部2の凹部22に当接して一体的に取付けられている。
クラッチピンベース41は、連結部411に一体的に取付固定されていることにより、ハンドル21の回動操作に伴って回転軸421を中心に一体的に回動するよう構成されている。
この例では、クラッチピンベース41の下方に、端部が第1クラッチ部42側方向に向かって屈曲形成された屈曲部413が形成されており、回動動作したハンドル21を速やかに元の位置(中立位置M)に戻すため、屈曲部413には後述する復帰機構7が設けられている。
第1クラッチ部42(以降、「クラッチ板42」とも記す。)は、クラッチピンベース41より後側に若干の隙間を有して設けられている。
クラッチ板42は、この例では、円盤板状のギアであり、その中心には、前述したようにクラッチ機構4の回転軸421が前後方向に前側軸421a及び後側軸421bが筒状に延びて一体形成されている。
クラッチ板42は、クラッチ機構4の接続状態に関係なく、車輪123の回転力が伝達されたスプロケット31の回転に伴って一体的に回転するように構成されている。
クラッチ板42は、その外周に複数の歯部423が設けられ、隣接する歯部423間に係合溝部422が形成されている。
回転軸421の表側には、ハンドル21及びクラッチピンベース41が前側軸421aに取り付けられ、クラッチ板42よりも後側の後側軸421bには、第2クラッチ部43、クラッチユニット44及びスプロケット31が取り付けられている。
クラッチ板42は、ハンドル21及びスプロケット31とそれぞれ同心的に配置され、クラッチ機構4が接続状態にある時は、ハンドル21の回動操作に連動してハンドル21と一体的に回転するよう構成されている。
クラッチ板42は、係合溝部422と後述する第2クラッチ部43の係合突部437とが係合することによってクラッチが接続状態となり、この状態において、操作部2の回動動作に連動して回転するとともに、スプロケット31に架けられた伝動チェーン32を介して駆動側の車輪123を操作部2の回転方向と同方向に回転させるよう構成されている。
第2クラッチ部43は、第1揺動部としてのラチェット板431及び第2揺動部としてのラチェットピンベース436を備えて構成されている。
ラチェット板431は、高さ方向に長い板状体からなり、上部に形成された軸孔432にワッシャー432aを介して回転軸421が遊嵌状態で嵌め込まれて設けられている。
ラチェット板431は、表側のクラッチピンベース41と連動して動作するように、クラッチピンベース41と連結されて構成されている。
ラチェット板431の下方には、左右方向に長い第1横長孔433及び第2横長孔434の2つの横長孔が上下に並んで形成されており、その上部に丸孔435が形成されている。
第1横長孔433及び第2横長孔434は、回転軸421の中心に対して左右対称な形状に形成されている。
第1横長孔433は、第2横長孔434の上部に設けられており、その左右幅寸法が第2横長孔434よりも短い寸法となるように形成されている。
第1横長孔433及び第2横長孔434には、クラッチピンベース41からボルトなどの締結部材46,47が遊嵌状態で差し込まれることによって、ラチェット板431がクラッチピンベース41に取り付けられている。
第1横長孔433及び第2横長孔434の上下方向幅寸法は、締結部材46及び締結部材47の径寸法と同等或いは僅かに大きい寸法に設定されている。
第1横長孔433及び第2横長孔434がこのような関係で設けられることにより、ラチェット板431は、軸孔432に遊嵌された回転軸421を軸心として同角度の揺動範囲で回動するように構成される。
第1横長孔433に差し込まれた締結部材46は、操作部2の回動操作に対応した挙動をする軸として第1横長孔433の範囲内で移動可能となり、後に詳述するが、第1横長孔433は、第2揺動部436のラチェット板431に対する挙動を制御するものとなる。
第2横長孔434差し込まれた締結部材47は、第2横長孔434の範囲内で移動可能となり、クラッチピンベース41に対するラチェット板431の挙動を制御するものとなる。
ラチェット板431は、クラッチピンベース41の回動により締結部材47が第2横長孔434の端部に当接すると、クラッチピンベース41の回動動作に伴って同方向に回動するように構成されている。
即ち、ラチェット板431は、操作部2の回動操作によって回動動作に連動して回転軸421を中心として回動動作するように構成されている。
丸孔435には、ラチェット板431と後側に配置されるラチェットピンベース436とを連結するため、締結部材48が嵌め込まれるように設けられている。
ラチェット板431の中間には、左右側部を切り欠いて形成された括れ部431aが設
けられている。
ラチェット板431は、操作部2が未操作の場合に、ハンドル21の軸心が鉛直方向に直立した姿勢となる位置、即ち、中立位置Mに位置するように構成される。
具体的には、ラチェット板431は、クラッチユニット44の上部に設けられたスプリング45に吊下げられるようにして、スプリング45がその上部に取り付けられ、ラチェット板431の後側面には、ウエイト72が取り付けられている。
クラッチピンベース41の復帰機構7と同様、ラチェット板431では、スプリング45及びウエイト72を用いて、ハンドル21の回動操作により回動したラチェット板431を中立位置Mに復帰させるよう構成されている。
ラチェットピンベース436は、逆三角形状の板状体からなり、その上下方向の略中央に丸孔439が形成されている。
図3に基づいて説明すると、例えば、ラチェットピンベース436は、左右幅方向中央を通る鉛直方向の軸を対称軸として、線対称な形状に形成されている。
丸孔439には、ラチェット板431からボルトなどの締結部材48が嵌め込まれて、ラチェット板431の下部に遊嵌した状態で取り付けられる。
これにより、ラチェットピンベース436は、締結部材48を中心としてラチェット板431に対して揺動動作するように構成されている。
丸孔439は、ラチェットピンベース436の左右幅方向において中央に配置され、丸孔439の中心がラチェットピンベース436の対称軸上に設けられて、ラチェットピンベース436の揺動中心となるよう設けられている。
丸孔439の下部には、縦に長い楕円形の縦長孔438が形成されており、縦長孔438には、クラッチピンベース41とラチェットピンベース436とを連結するための締結部材46が第1横長孔433を介して差し込まれている。
締結部材46は、第2揺動部436の挙動を制御する軸として設けられており、縦長孔438の範囲で移動可能に構成されている。
縦長孔438の左右幅寸法は、締結部材46が遊嵌可能な程度の締結部材46の径寸法と同等或いは僅かに大きい寸法に設定されている。
上述したように、ラチェットピンベース436は、締結部材46が第1横長孔433に嵌め込まれていることにより、左右方向の揺動範囲が制御されている。
ラチェット板431(第1揺動部)は、ラチェットピンベース436(第2揺動部)の揺動範囲を制御する揺動制御機構(第1横長孔433)を備えるので、ラチェット板431(第1揺動部)の揺動制御機構(第1横長孔433)によってラチェットピンベース436(第2揺動部)が適切な範囲で揺動するように設定することができる。
ラチェットピンベース436は、締結部材46が縦長孔438に差し込まれることにより、クラッチピンベース41の回動動作に伴って挙動し、締結部材48を中心として回動するように構成されている。
ラチェットピンベース436は、逆三角形状の上部で前方に突出するように形成された係合突部437がそれぞれラチェットピンベース436の左右両端部に設けられている。
当該ピンは、クラッチ機構4が組み立てられた状態で、ラチェット板431の左右の括れ部431aから前方に突出するように構成されている。
更に、係合突部437は、クラッチ板42の表側面よりも前方に突出して、クラッチ板42の歯部423に噛み込むような長さに設定されている。
ラチェット板431及びラチェットピンベース436の挙動については、後に詳述するものとする。
ラチェットピンベース436の後側には、略板状のクラッチユニット44が設けられている。
クラッチユニット44は、その上方にラチェット板431の上部に係合されたスプリング45を備え、クラッチユニット44の下方左右には、ハンドル21の回動範囲を設定する規制部443を設けるための孔441がそれぞれ形成されている。
規制部443は、例えば、ボルトなどの締結部材が孔441に取り付けられてなり、クラッチユニット44から前方方向にクラッチピンベース41の前面よりも表側方向に突出した長さに設定されている。
規制部443は、ハンドル21の回動範囲を規制するためのもので、クラッチユニット44の左右に設けられた規制部443の内側の範囲でハンドル21の回動操作が可能に形成されている。
規制部443は、移動棚100を移動させる際に、操作部2を握ったまま移動棚100を移動させ易い位置に操作部2を固定できるような位置に設けられており、この例では、操作部2を中立位置Mから、最大でR2=約35度まで回動可能とするよう設定されている。
クラッチピンベース41には、クラッチピンベース41が回動動作した後、速やかにハンドル21を元の位置(中立位置M)に戻すことができるように、屈曲部413に復帰機構7が設けられている。
復帰機構7は、屈曲部413の下部から鉛直方向下方へ突設して設けられた復帰用ウエイト71を備える。
復帰用ウエイト71は、中立位置Mにある場合にハンドル21と同一鉛直線上に配置されるよう設けられ、例えば、ハンドル21が回動操作された後、ハンドル21を掴んでいた手が離されるなどすると、復帰用ウエイト71の自重によって、ハンドル21が回動操作されていた方向とは逆方向にクラッチピンベース41が回動し、クラッチピンベース41を中立位置Mに復帰させるよう構成されている。
操作部2を中立位置Mに向かって復帰させる復帰用ウエイト71が設けられるので、復帰用ウエイト71の自重によって自動的に操作部2を中立位置Mに位置させることができ、操作部2を手動で中立位置Mに戻す必要がなくなり、操作の手間が省ける。
尚、復帰用ウエイト71の重量は、操作部2及びクラッチピンベース41の重量に合わせて適宜設定するとよい。
更に、上述した基本構成に加えてスプロケット31の回転動作をロックするためのロック機構8を備えた構成とするのであってもよい。
ロック機構8は、操作部2の基端部21aの前面側に設けられたロック操作部材81と、回転軸421の中空部内で前後方向に移動可能に挿通された押出棒82と、押出棒82の他端が当接するロック部材83と、を備え、ロック操作部材81の押引操作などによって動作するように構成される。
図示するように、クラッチユニット44には、プランジャー442が前方に突出して設けられており、当該プランジャー442の先端部が、最も表側に配されたクラッチピンベース41の裏面の部品に当接するように構成されている。
例えば、操作部2が中立位置Mに位置する場合に、プランジャー442の先端部がクラッチピンベース41の裏面の部品に形成された溝に嵌るような構成とすることで、未操作時に操作部2を中立位置Mに保持することが可能となる。
ロック操作部材81は、その後端部が、回転軸421の中空部に向かって突出して、押出棒82の先端部に取付けられるよう形成されている。
ロック部材83は、板状の背板部832と、背板部832の下部に設けられた突起部831と、を備えてなる。
ロック部材83は、押出棒82によって背板部832が押圧されていない場合に、突起部831がスプロケット31の歯部に噛み込んだ状態で配設され、背板部832が押出棒82によって最も後側まで押圧されると、突起部831も同様に後側方向に移動してスプロケット31の歯部に噛み込まないように構成されている。
具体的には、ロック操作部材81が後側に押込まれると、ロック操作部材81によって押出された押出棒82がロック部材83を最も後側まで圧接することにより、スプロケット31と突起部831が離間してスプロケット31の回転動作が可能なロック解除状態となるよう構成される。
一方、ロック操作部材81が摘まむなどされて引張操作されると、ロック操作部材81の引張操作に応じて押出棒82が前側に移動して背板部832から離間し、ロック部材83がスプロケット31側に移動して、スプロケット31の歯部に突起部831が噛み込んでスプロケット31の回転動作がロックされるロック状態となるように構成される。
駆動回転軸124の回転を許容する状態或いは許容しない状態を切り替えるロック機構8を備えるので、ロック機構8によって予め駆動回転軸124の回転を許容しない状態に切り替えておけば、使用者が必要に応じて移動棚100を移動させないように設定することができ、誤って操作部2が回動操作などされてしまった場合であっても、駆動回転軸124の回転が許容されないため、徒に移動棚100が動いてしまうことがない。
以下では、ハンドル21の回動動作に連動して動作するクラッチ機構4及び動力伝達機構3の挙動について図7に基づいて説明する。
図7A〜図7D(a)は、ハンドル21操作により変動するクラッチピンベース41の挙動を示しており、図7A〜図7D(b)は、図7A〜図7D(a)におけるクラッチ機構4の挙動を示している。
図7Aの状態では、ハンドル21は中立位置Mに位置しており、クラッチピンベース41、第1クラッチ部42及び第2クラッチ部43の全てが中立位置Mに位置している。
この状態では、クラッチ機構4は接続解除状態にある。
図7Bの状態は、例えば、ハンドル21が逆時計回り、即ち、矢印の方向に僅かに回動された状態であり、この状態において、クラッチ機構4は接続解除状態から接続状態に切り替えられる。
この時、図7B(a)に示すように、ハンドル21の回動動作に応じて、クラッチピンベース41が逆時計回りに、R1=約3度傾く。
図7B(b)に示すように、ラチェット板431は、クラッチピンベース41に設けられた締結部材46,47が第1横長孔433及び第2横長孔434内で移動するのみで中立位置Mに位置しているが、ラチェットピンベース436は、クラッチピンベース41と連結された締結部材46によって操作部2の回動方向に押され、クラッチピンベース41の傾きに連動して、丸孔439に嵌合された締結部材48を回動中心として紙面に向かって右上がりに傾く。
クラッチピンベース41の傾きに連動して右上がりに傾いたラチェットピンベース436は、紙面向かって右側に設けられた係合突部437がクラッチ板42の歯部423に嵌り込むことにより、クラッチが接続状態となる。
クラッチが接続されると、ハンドル21の操作によって生じる動力が、動力伝達機構3を介して駆動側の車輪123に伝達される。
更にハンドル21が逆時計回りに回動されると、ラチェット板431は、クラッチピンベース41に設けられた締結部材46及び締結部材47がそれぞれラチェット板431の第2横長孔433及び第2横長孔434の右端部に当接して回動方向に押され、クラッチピンベース41の回動に合わせてラチェット板431が回動する。
この時、クラッチ板42の係合溝部422に嵌り込んだラチェットピンの係合突部437は、係合溝部422に係合された状態のままでハンドル21の回動動作に応じて回動移動する。
続いて、図7Cの状態は、更にハンドル21が逆時計回りに回動された状態であり、この状態では、クラッチピンベース41がR2=約35度まで回動されてクラッチピンベース41の側部が規制部443に当接しており、ハンドル21のこれ以上の回動動作が規制される。
この時点では、クラッチは接続状態のままである。
図7Dの状態は、クラッチピンベース41が規制部443に当接した状態のまま(R2=約35度)で移動棚100の移動を続けた状態であり、この状態では、移動棚100が移動することにより回転する車輪123の回転動作に連動してクラッチ板42が回転し続けている。
ラチェットピンベース436の係合突部437が係合溝部422に係合している状態でクラッチ板42が矢印方向に回転し続けていると、係合突部437がクラッチ板42の回転に伴って同一方向に引っ張られ、且つラチェット板431及びラチェットピンベース436にも同一方向へ引っ張られる力がかかる。
この時、クラッチピンベース41が矢印方向に移動することはないため、クラッチ板42の回転方向にラチェット板431及びラチェットピンベース436が引っ張られることにより、回転軸421及び締結部材46,47,48が略一列に並び、ラチェット板431及びラチェットピンベース436のそれぞれに対する姿勢が図7Aに示すものと同様の初期状態に近づき、ラチェットピンベース436の係合突部437がクラッチ板42の係合溝部422に嵌り込んだ状態から押し出されるように自動的に外れる方向に動く。
ラチェットピンベース436の係合突部437がクラッチ板42の係合溝部422から外れることにより、クラッチの接続が解除されて接続状態から接続解除状態に切り替わる。
係合突部437とクラッチ板42との係合が解除される、即ち、クラッチが接続解除状態になると、ハンドル21の操作により生じる動力は動力伝達機構3に伝わらず、当然、駆動側の車輪123にハンドル21の操作により生じる動力が伝達されることもない。
移動棚100がこのように構成されることにより、移動棚100を移動させる初動時にハンドル21を把持して回動操作することにより、クラッチ機構4が接続状態となって容易に移動棚100を移動させることが可能となり、クラッチ機構4が接続解除状態となった後も、ハンドル21を把持したまま移動棚100を移動させる方向へ押すことによって、移動棚100を移動させることができる。
ハンドル21が未操作状態では、係合突部437及びラチェット板431は係合せず、第1クラッチ部42及び第2クラッチ部43は接触することもなくクラッチの接続が解除された状態となっている。
上述したように、第2クラッチ部43は、操作部2の回転軸421に対して揺動可能に取り付けられた第1揺動部431と、第1揺動部431の揺動軸に対して揺動可能に取り付けられ、操作部2の回動操作に対応した挙動をする軸により挙動が制御された第2揺動部436と、を備え、第2揺動部436は、その端部に係合突部437を備え、揺動軸を中心に揺動することにより、係合突部437が第1クラッチ部42の係合溝部422に係合するよう形成されるので、第2揺動部436が第1揺動部431の揺動軸を中心にして揺動し、第2揺動部436が第1揺動部431とは独立して揺動動作することにより、第2揺動部436の係合突部437が第1クラッチ部42の係合溝部422に係合して、クラッチ機構4を接続状態に切り替えることができる。
このような構成により、操作部2を僅かに操作するだけで第2揺動部436の係合突部437を第1クラッチ部42の係合溝部422に係合させることができるので、迅速にクラッチ機構4を接続状態に切り替えることができる。
複数の係合溝部422および係合突部437は、移動時の第1クラッチ部42の回転方向でのみ係合突部437が係合溝部422に係合するラチェット機構を構成している。
ハンドル21の回動範囲は、ハンドル21を回転させて操作端で固定させた状態で移動棚100を移動させやすい角度、例えば、中立位置Mから最大で、R2=40度以下の範囲に設定されることが好ましい。
即ち、規制部443は、表側から見て中立位置Mを基準にして、R2=40度以下の範囲となるよう設けられることが好ましく、このように設定することで、操作部2の回動範囲を使用者の扱いやすい角度範囲に設定することができる。
このように構成すると、操作部2を所定の回動範囲まで回動操作するだけで、第1クラッチ部42及び第2クラッチ部43を離間させる簡単な構成で、自動的にクラッチの接続状態を切り替えられるようになる。
操作部2の回動範囲を規制する規制部443を備え、操作部2が規制部443まで回動操作されると、第1クラッチ部42の更なる回転によって第2揺動部436が同方向に回転し、操作部2の回動操作に対応した挙動をする軸が停止していることにより、第2揺動部436の係合突部437が第1クラッチ部42の係合溝部422から押し出され、係合突部437および係合溝部422の係合が解除されて接続解除状態に切り替わるので、操作部2が規制部443まで回動操作することにより、操作部2の回動操作によって係合していた係合溝部422及び係合突部437の係合を自動的に解除することができ、クラッチ機構4の接続を解除するにあたり手間がかからない。
上述では、クラッチピンベース41に設けた復帰機構7の復帰用ウエイト71が、屈曲部413の下方に設けられるように説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、図8に示すように、クラッチピンベース41の屈曲部413の上部に復帰用ウエイト73が設けられた構成とするのであってもよい。
上述したように、ラチェット板431にウエイト72及びスプリング45が設けられていると、ラチェット板431が中立位置に戻り易くなるため好ましいが、この構成に限定されるものではなく、何れか一方のみを設けた構成、或いは何れも設けない構成とするのであってもよい。
例えば、ラチェット板431の荷重が下方に偏った形状に形成されている場合などには、上述したようなウエイトを必ずしも設ける必要はないし、ウエイト72やスプリング45を設けずとも中立位置Mに戻るように構成されている場合には特に何れも必要ない。
また、速やかに中立位置Mに戻すためまたは中立位置Mに保持するための何れか一方或いは両方を目的として設けられる復帰機構7は、クラッチピンベース41及びラチェット板431に設けられるだけでなく、ラチェットピンベース436に設けられるのであってもよいし、その何れかにのみ設けられるよう構成するのであってもよい。
上述では、軸受51〜54を用いて回転軸421の回転動作がなされるように説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、無給油ブッシュなどを用いるのであってもよいし、アシスト装置1や移動棚100の規模に応じて適宜選択すればよい。
上述した操作部2は、上述したものに限定されず、その他の形状のものが採用されるものであってもよく、少なくとも第1クラッチ部42及び第2クラッチ部43が係合されることによって接続状態及び接続解除状態が切り替えできるように構成されているのであればよい。
また、ハンドル21は、未操作状態において、その端部側が上方に位置した、鉛直方向に直立した姿勢となるように設けられるよう図示したが、ハンドル21の端部側が下方に位置するように設けられるのであってもよい。
更に、図示したハンドル21は、その端部が移動棚100の方向へ屈曲した形状となっているが、これに限定されるものではなく、屈曲部を設けない棒状のハンドルによって構成されるのであってもよい。
また、上述では、2つの締結部材46,47が遊嵌状態で第1横長孔433及び第2横長孔434差し込まれた構成として説明したが、1つの締結部材46及びそれが遊嵌される第1横長孔433を設けた構成とするのであってもよいし、ハンドル21の操作によってラチェット板431が揺動するにあたって充分な強度を確保できるように構成されるのであればこの限りではない。
更に、少なくともラチェットピンベース436がクラッチピンベース41の回動動作に伴って挙動するように構成されるのであれば、第1横長孔433を設けることなく、ラチェットピンベース436がクラッチピンベース41と直接連結されるように締結部材46を設けた構成とするのであってもよい。
ロック機構8は、上述では、スプロケット31の歯部に噛み込む様に説明したが、この形態に限定されるものではない。
例えば、スプロケット31に設けられた孔にロック部材83が差し込まれることによって、スプロケット31の供回りを防止するように構成されるのであってもよい。
また、移動棚100は、ロック機構8を備えた構成である方が好ましいが、これは必須の構成ではない。
以上説明したように、車輪123を設けることによって移動可能に設置されたものであって、所定の回動範囲内で回動操作可能に構成された操作部2と、車輪123に設けられ、操作部2の回動操作により生じる動力が伝達されて、操作部2の回動方向と同一方向に回転する駆動回転軸124と、操作部2から駆動回転軸124へ動力が伝達される接続状態と、操作部2から駆動回転軸124へ動力が伝達されない接続解除状態と、を選択的に切り替え可能に構成され、操作部2の回動操作により、接続解除状態および接続状態を切り替えられるクラッチ機構4と、を備え、接続解除状態にある場合に、操作部2が回動操作されると、接続状態に切り替わり、更に操作部2が所定の回動範囲まで回動操作されると、接続解除状態に切り替わるので、操作部2の回動操作のみでクラッチ機構4が接続解除状態から接続状態に切り替えられ、更に、操作部2が所定の位置まで回動操作されると接続状態から接続解除状態に切り替えられるため、特別な操作等を必要とすることなく自動的にクラッチ機構4の状態を切り替えることができる。
クラッチ機構4を接続解除状態から接続状態に切り替えることによって、駆動回転軸124へ動力が伝達されて女性や子供のような腕力の弱い使用者であっても手動で容易に移動させることができるようになる。
また、操作部2が所定の回動範囲まで回動操作されて接続状態から接続解除状態に切り替わることによって、初動時のみ機械機構によって容易に移動棚100を動かすことができ、その後は機械機構に頼ることなく人の力或いは慣性力で移動棚100を移動させる構成であるため、使用者が移動棚100の移動速度を調整して移動させることができ、更に、操作部2を握ったまま移動棚100を移動させることができる構成であるため、操作性にも優れている。
クラッチ機構4は、第1クラッチ部42および第2クラッチ部43を備え、第1クラッチ部42は、複数の係合溝部422を有し、第2クラッチ部43と一体的に回動可能に形成され、第2クラッチ部43は、係合溝部422と係合する係合突部437を有し、操作部2と一体的に回動可能に形成され、係合溝部422および係合突部437が係合することにより接続状態に切り替えられるので、操作部2を回動させるだけで第1クラッチ部42の係合溝部422と第2クラッチ部43の係合突部437とが係合する簡単な構成により、クラッチ機構4の接続状態及び接続解除状態を切り替えることができる。
以上説明した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において具体的構成などを適宜変更設計できることは言うまでもない。