以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.本実施形態の手法
まず本実施形態の手法について説明する。特許文献1に開示されているように、被検体に光電トランスデューサー(光電センサー)を取り付け、取得した脈波信号(光電脈波信号、脈波情報)を解析して、心房細動等の不整脈を検査する手法が知られている。ここでの不整脈の検査とは、医師による診断のために、不整脈が疑われる箇所(期間、区間)を検出することである。
この光電脈波による検査は、心電計による検査と比較した場合、装置が簡便で装着が容易である、或いは図21(A)〜図22を用いて後述する腕時計形状等の装置を表皮に押し当てるだけでよく、装着負荷がすくないという利点がある。そのため、長時間検査が可能となり、不定期に起きる発症局面を捉える確率が高いといった長所を有する。
例えば、不整脈の1つとして、心房細動が知られている。心房細動とは心房がけいれん(部分的に興奮収縮)する異常であり、心室の収縮が不規則な間隔となる。このため、血液の流れがよどむこととなり、心房細動が長時間継続することで血栓ができやすくなって、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な症状の原因となることがある。
心房細動は初期段階では発症頻度が低く、例えば3日のうちで1回、数時間だけ心房細動の症状が出るといったことが起こりえる。その場合、発症期間とホルター心電図の装着期間が重複しない可能性もあり、心房細動の検出ができない。それに対して、脈波情報を測定する脈波測定装置(生体情報処理装置)は、3日〜10日程度の長期間装着も容易であるため、発症頻度の低い状態であっても心房細動を検出することが可能である。
また、心房細動では、患者が症状を自覚しない無症候性の心房細動が認められることがある。この場合、患者が積極的に心房細動に関する検査を受けることは考えにくく、場合によっては無自覚のまま症状が進行し、脳梗塞等の重篤な症状を引き起こすおそれがある。この場合にも、脈波情報を用いれば、長期間の装着が容易なため気軽にスクリーニング検査を受けられるという利点がある。
脈波情報から不整脈(心房細動)を検出する手法については後述するが、当該手法により直接的に求められるのは、各処理タイミングにおいて脈波異常期間と判定されたか否か(心房細動が疑われるか否か)である。しかし、心房細動の解析結果を閲覧する閲覧者からすれば、多角的に発症状況や発症原因を検証するためには、そのようなシンプルな情報だけでなく、より多様な情報が提示される方が望ましい。
例えば、心房細動には交感神経依存型心房細動(交感神経型不整脈)と迷走神経依存型心房細動(副交感神経型不整脈)という分類もあり、前者は日中や活動中に起こりやすく、後者は夜間や睡眠時に起こりやすいという傾向が見られる。つまり、脈波異常期間か否かという判定結果に対応付けて、ユーザーの行動情報を表示すれば、当該脈波異常期間で心房細動が発症していると医師により診断された際に、当該心房細動の要因を特定する(分類する)手がかりとして利用可能である。交感神経依存型心房細動と迷走神経依存型心房細動とでは有効な薬剤も異なるため、適切な分類ができれば治療方針の決定等にも有用である。
また、これ以外にも不整脈の要因は種々考えられるため、それらを特定する情報を提示することは有用である。従来のホルター心電計を用いた検査においても、何らかの形態で患者に行動メモを記入させる手法がとられていた。行動メモは、ユーザー自身がどの時間帯にどのような行動を取っていたかを記録したものであり、ユーザーが紙に記入を行うことで作成されてもよいし、ユーザーがホルター心電計等に備えられた操作部を操作することで作成されてもよい。今後は、ユーザーの保有するスマートフォン等で行動メモを作成する形態が広まる可能性もある。しかしいずれにせよ、従来手法ではユーザー自身が能動的に行動メモを作成することが前提であり、ユーザーの負担が大きく、実際には行動メモが作成されないケースも見られる。
本出願人は、そのようなユーザー負担も考慮し、種々のセンサー等からの情報を取得し、取得した情報に基づいて、不整脈の要因を特定するための情報を作成、表示する手法を提案する。このようにすれば、従来手法の行動メモに相当する情報を自動で作成することができ、且つ作成した情報をわかりやすい形態で閲覧者(医師)に提示することが可能となる。なお、本実施形態でも従来手法と同様に、ユーザーに行動メモの作成を行わせることは妨げられない。その場合、センサー等から取得した情報は、行動メモを補完する情報として用いることが可能である。
具体的には、本実施形態に係る生体情報処理システム200は、図1に示したように、脈波情報を取得する取得部210と、脈波情報の解析処理を行い、解析結果情報を生成する処理部230と、生成された解析結果情報を出力する出力部250を含む。そして、処理部230は、解析処理に基づいて検出された脈波異常期間を識別可能に表示するとともに、ユーザーの行動情報、心的状態情報、外部環境情報及び居場所情報の少なくとも1つを表示するための解析結果情報を生成する。
ここで、脈波情報とはユーザー(被検体、被験者)の脈波を表す情報であり、具体的にはユーザーにより装着される脈波センサー(光電センサ−)の出力に基づく情報である。また、脈波異常期間とは、脈波情報が正常状態とは異なる(異常状態である)ことが検出された期間であり、一例としては後述するように、脈波間隔のばらつきがおおきいことが検出された期間である。脈波異常期間の検出手法の詳細は後述する。
なお、処理部230は、測定期間内における循環器系の異常状態の判定を行うための脈波異常期間を、識別可能に表示するための解析結果情報を生成してもよい。つまり、脈波異常期間とは、循環器系の異常が疑われる期間であるか否かを表す情報であってもよい。さらに、循環器系の異常状態は、不整脈であってもよい。
光電センサー等の脈波センサーでは、例えば血管中の血流量の変動等を検出することができる。つまり、脈波情報の解析処理からは、血管系を中心とした循環器系の異常を検出することができ、本実施形態に係る解析結果情報では、循環器系の異常状態をわかりやすく閲覧者に提示することが可能になる。さらに、脈拍数や脈拍間隔等の情報を用いることで、ユーザーの脈が正常状態か否かの判定もできるため、循環器系の異常状態として不整脈を対象とすることが可能である。以下では、脈波異常期間は不整脈の判定を行うためのものであるとして、説明を行う。また後述するように、本実施形態における不整脈とは、狭義には心房細動である。
ユーザーの行動情報とは、ユーザーの行動を表す情報であり、例えば、ユーザーの活動種別や活動量を特定する情報である。活動種別としては、睡眠状態や覚醒状態等の種別が考えられる。また、覚醒状態を安静状態と運動状態に分類したり、運動状態をウォーキング、ランニング等、さらに細かく分類するような種別を設定してもよい。また、活動量情報としては、消費カロリーや酸素摂取量を用いてもよいし、厚生労働省の指針に見られる身体活動の強さを表すメッツを用いてもよい。メッツは、身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す情報である。
ユーザーの心的状態情報とは、ユーザーのメンタル活動を表す情報であり、例えばユーザーが感じているメンタルストレスの程度を表す指標値である。ユーザーの外部環境情報とは、ユーザーの外部(周囲)の環境の状態を表す情報であり、後述するように温度、気圧、外光、音等の種々の情報が含まれる。ユーザーの居場所情報とは、ユーザーが存在している(存在していた)場所を表す情報である。居場所情報は、例えば緯度経度等を用いた絶対値として表現されてよいがこれに限定されず、抽象化された情報であってもよい。例えば居場所情報は「自宅」、「職場」、「駅」、「アミューズメント施設」といった、ユーザーの存在する場所の属性を表す情報であってもよい。
このようにすれば、不整脈の要因の特定に有用な種々の情報を、脈波異常期間の検出結果とともに表示することが可能になる。そのため、医師が脈波異常期間の詳細情報等を参照し、当該脈波異常期間において不整脈を発症していると診断した際に、当該不整脈の要因の推定を容易にすること等が可能になる。
具体的には、処理部230は、ユーザーが睡眠状態か覚醒状態かを表す情報である行動情報を表示するための解析結果情報を生成してもよい。ここでの行動情報、すなわちユーザーが睡眠状態か覚醒状態かを表す情報は、交感神経型不整脈又は副交感神経型不整脈が脈波異常期間において発症しているかの判定用の情報である。
また、処理部230は、ユーザーのストレス情報である心的状態情報を表示するための解析結果情報を生成してもよい。ここでの心的状態情報、すなわちユーザーのストレス情報は、ストレス要因の不整脈が脈波異常期間において発症しているか否かの判定用の情報である。
ユーザーが感じるストレスと、不整脈とには密接な関係があることが知られている。そのため、不整脈がストレスに起因するものであると判定できれば、当該ストレスの要因を解消することで不整脈が快方に向かう可能性がある。ここでの心的状態情報とは、狭義にはユーザーに対するメンタルストレスを表す情報であり、一例としてはメンタルストレスの程度(大小)を表す情報とすればよい。
また、処理部230は、行動情報を表示するための解析結果情報を生成する場合に、脈波情報に基づいて当該行動情報を求めてもよい。また、心的状態情報を表示するための解析結果情報を生成する場合に、脈波情報に基づいて当該心的状態情報を求めてもよい。このようにすれば、行動情報、心的状態情報を脈波情報から求めることが可能になる。脈波情報から各情報を求める手法については後述する。
また、処理部230は、温度情報、気圧情報、外光情報、及び周囲音情報のうちの少なくとも1つの情報である外部環境情報を表示するための解析結果情報を生成してもよい。ここでの温度情報は、温度要因の不整脈の判定するための情報であってもよい。気圧情報は、気圧要因の不整脈を判定するための情報であってもよい。外光情報は、外光要因の不整脈を判定するための情報であってもよい。周囲音情報は、周囲音要因の不整脈を判定するための情報であってもよい。そして、ここでの外部環境情報、すなわち温度情報、気圧情報、外光情報及び周囲音情報のうちの少なくとも1つの情報とは、どのような外部環境を要因とした不整脈が脈波異常期間において発症しているかの判定用の情報である。
温度情報は、例えば脈波測定装置に含まれる温度センサーにより取得されものであり、厳密には温度センサーが設けられる装置内部の温度を表す。本実施形態では、この装置内部の温度を温度情報としてもよい。ただし温度情報はこれに限定されず、ユーザーの体表温度と、外気温との温度差情報であってもよい。ユーザーの体表温度とは、ユーザーの体温のうち、皮膚、詳しくは皮膚表面に対応する位置の温度を表す。また、外気温とは、ユーザーの外部(周辺)の大気の温度を表す。なお、図6を用いて後述するように、複数の装置内部の温度を用いることで、装置内部の温度から体表温度と外気温を推定することが可能である。つまり、ここでの体表温度と外気温とは、体表温度や外気温そのものを直接的に計測するものには限定されず、体表温度や外気温に対応すると判定された温度であってもよい。
また、気圧情報とは、ユーザーに作用する気圧を表す情報、もしくはユーザーがいる環境における気圧を表す情報である。例えば脈波測定装置が気圧センサー(圧力センサー)を含み、当該センサーの出力に基づいて気圧情報を求めてもよい。台風等の天候不良や標高の高い位置へ移動したことにより気圧が低くなると、健康状態が悪化する場合があることが知られている。つまり、気圧の変化(狭義には低下)はユーザーに負荷を与えるものであり、不整脈の要因となりうる。そのため、脈波異常期間と気圧情報の相関を調べることで、不整脈が気圧要因か否かの判定を行うことが可能である。
また、外光情報とは、ユーザーの周辺での光の状態を表す情報である。過剰に強い光、或いは明滅する光、或いは特定の色の光が照射されることで、ユーザーは頭痛や目まいといった体調不良を感じる可能性があり、光も不整脈の要因となりうる。ここでの外光情報とは、理想的にはユーザーに照射される光の情報とするとよいが、現実的にはユーザーの装着する脈波測定装置に照射される光の情報であってもよい。具体的には、脈波測定装置が照度センサーを有し、当該照度センサーの出力に基づいて外光情報を取得してもよい。或いは、広く用いられているカメラの撮像素子(光電センサー)の出力に基づいて外光情報を取得してもよい。
また、周囲音情報とは、ユーザーの周囲における音の情報である。騒音が健康被害をもたらすことは周知であるし、音の大きさ(例えばdBの数値)が大きくなくとも、特定の周波数帯域の音が人に不快感を与えることもあり、音も不整脈の要因となりうる。ここでの周囲音情報とは、理想的にはユーザーの耳に入射する音波の情報とするとよいが、現実的にはユーザーの装着する脈波測定装置で検出される音波の情報であってもよい。具体的には、脈波測定装置がマイク等の集音センサーを有し、当該マイク等の出力に基づいて周囲音情報を取得してもよい。
また、以上では脈波測定装置に種々の情報を取得するセンサーが搭載されるものとしたがこれには限定されず、他の機器で取得される情報を生体情報処理システム200が取得するものとしてもよい。例えば、ユーザーの使用するスマートフォン等の携帯端末装置に、上述した種々のセンサーが搭載され、対応する情報を取得するものであってもよい。
また、処理部230は、解析結果情報として、測定期間内における脈波波形、脈拍間隔波形、脈拍間隔分布情報の少なくとも1つを表示するための情報を生成してもよい。
ここで、脈波波形とは、脈波情報の波形であり、例えば脈波情報の時系列的な変化を表す波形である。具体的には、脈波波形とは脈波センサー出力のAC成分を表す波形であってもよい。また、脈拍間隔波形とは、脈拍間隔の時系列的な変化を表す波形である。脈拍間隔は、脈拍の1拍1拍の間隔を表す時間(例えば単位はmsec)である。例えば広く用いられる脈拍数(単位はrpm)に対して、脈拍間隔=(1000×60)/脈拍数という関係にある。
脈拍間隔分布情報とは、脈拍間隔のばらつきを表す情報である。図2を用いて後述するように、脈拍間隔分布情報は、第1の軸が時間軸であり、第2の軸に脈拍間隔に基づく値がプロットされる情報であってもよい。
また、処理部230は、解析結果情報として、測定期間内における脈波情報の測定の信頼度指標を表示するための情報を生成してもよい。
ここで、信頼度指標とは、脈波測定がどの程度信頼できるものであるかを表す情報である。信頼度指標は、一例としては数値情報であり、数値が大きいほど信頼でき(信頼度が高く)、数値が小さいほど信頼できない(信頼度が低い)ものとしてもよいし、この逆であってもよい。或いは、所与の数値に近いほど信頼度が高いものとしてもよく、信頼度指標の具体的な値と、信頼度の高低との関係は種々の変形実施が可能である。例えば、後述する図2のA3では、加速度情報の実効信号量に基づく情報を信頼度指標としているため、数値が大きいほど体動ノイズが大きく、信頼度は低いものとなる。一方、後述する図7では、数値が大きいほど信頼度が高いものとしている。
ここでの信頼度指標は、ユーザーの体動情報及びユーザーの装着状態情報の少なくとも一方に基づく情報であってもよい。体動情報に基づく情報とは、体動情報そのものであってもよいし、体動情報に対して何らかの処理を行った結果として得られる情報であってもよい。また、装着状態情報に基づく情報とは、装着状態情報そのものであってもよいし、装着状態情報に対して何らかの処理を行った結果として得られる情報であってもよい。また、装着状態情報とは、ユーザーの体に装着される測定装置の装着状態を表す情報であってもよい。ここでの測定装置は、例えば図21(A)〜図22を用いて後述するような脈波測定装置100である。図23(A)〜図23(C)等を用いて後述するように、本実施形態に係る生体情報処理システム100は、サーバーシステム等の装置により実現されてもよいし、脈波測定装置100により実現されてもよい。つまり、ここでの測定装置は、生体情報処理システム100が含まれる装置とは異なる装置を表すものであってもよいし、生体情報処理システム100が含まれる装置を表すものであってもよい。
また、処理部230は、解析結果情報として、脈波異常期間を表す表示オブジェクト(アイコン、マーク)を表示するための情報を生成してもよい。
また、処理部230は、解析結果情報として、脈波異常期間と、脈波異常期間以外の期間とを異なる画像表示態様で表示するための情報を生成してもよい。
異なる画像表示態様の具体例は種々考えられるが、例えば図2を用いて後述するように、点の形状を異なるものとしてもよい。図2では、脈波異常期間では、十字形状の点を用い、脈波異常期間以外の期間では白抜きの丸形状の点を用いている。或いは、脈波異常期間とそれ以外の期間で点の色を変更する、大きさを変更する、背景色を変更するといった変形実施も可能である。また、解析レポートを印刷する場合には実現が難しいが、所与の装置の表示部に表示を行う場合には、点や背景等を点滅表示することで、画像表示態様を変更してもよい。
また、処理部230は、脈波異常期間内の所与の区間での脈波波形及び脈拍間隔波形の少なくとも一方を表示するための第2の解析結果情報を生成してもよい。
2.解析結果情報の具体例
本実施形態の解析結果情報の詳細について説明する。なお、以下では解析結果情報に基づく表示画面を例にとって説明するが、解析結果情報は画面情報そのものであってもよいし、画面情報を生成可能な他の情報であってもよい。また、以下の画面は電子機器等の表示部に表示するものには限定されず、紙媒体等にプリントアウトされるものであってもよい。
なお、解析結果情報の作成の前段として、脈波情報、体動情報、及び上述した各情報のうち表示に必要な情報が取得され、且つそれらに基づいて第1のレート(例えば1秒に1回)で脈拍間隔が求められ、第2のレート(例えば20秒に1回)で、脈波異常期間か否かの判定結果、及び脈波測定の信頼度指標が求められているものとして以下の説明を行う。各情報を求める処理の詳細についてはシステム構成例と合わせて後述する。
2.1 行動情報を表示する画面例
不整脈の判定を行うための脈波異常期間を識別可能に表示するとともに、ユーザーの行動情報を表示する表示画面の具体例を図2に示す。図2は4行に分けて情報が表示されているが、各行の横軸は時間を表し、例えば1番上の行の12:00とは、所与の日における12時00分(或いは測定期間の開始から12時間00分経過後)を表す。つまり図2は、1行が1時間分のデータを表すことになり、図2全体で4時間という比較的長い期間での情報を表示できる。
図2では、各行の下部を用いて、脈拍間隔の時系列的な変化が点としてプロットされる。具体的には、図2の縦軸は、1タイミング前の脈拍間隔の値に対する、所与のタイミングでの脈拍間隔の値の比率を対数表示したものであってもよい。つまり、縦軸が0となる位置(図2では縦軸の中央の位置)に点がプロットされた場合、当該タイミングでの脈拍間隔は、前のタイミングの脈拍間隔と同じであったということになる。つまり、点が0に近い位置にプロットされるほど、脈拍間隔の変動が小さく、プロット位置がばらつくほど脈拍間隔の変動が大きいことを表すグラフとなる。つまりこれは、脈拍間隔分布情報を表示していることになる。
なお、ここでの「プロット」とは、複数の値の集合により規定される情報と、1つの値が1つの点(位置)に対応する空間とが与えられた場合に、当該集合に含まれる各値を、当該空間に対応付けて配置(表示)する処理に対応する。図2の例であれば、時系列に取得された1次元の値(スカラー)である脈拍間隔の比率情報の集合を、縦軸方向の対応する位置に配置する処理となる。或いは図2は、(比率情報,取得時刻)という2次元の値(2次元ベクトル)の集合を、時間軸及び比率情報軸から構成される2次元空間(平面)に配置する処理と考えてもよい。
図2の例では、脈拍間隔の分布情報は、第1の軸が時間軸であり、第2の軸に脈拍間隔に基づく値がプロットされる情報となる。図2の例では第1の軸が横軸であり、第2の軸が縦軸である。また、脈拍間隔に基づく値とは、上述したように1タイミング前の脈拍間隔に対する比率の対数となる。
このように、1タイミング前に対する比率を用いることで、ばらつきが小さければプロットされる点は所与の値(ここでは0)の位置に集中するし、ばらつきが大きければ広い範囲に分散することになる。つまり、プロットされる点の集中、分散の時系列的な変化を表示することができるため、閲覧者による不整脈の診断を容易にすることが可能である。
ここで、脈拍間隔の値はユーザー(患者)の状態により変動する性質を有する。例えば、ユーザーが睡眠状態や安静状態にあれば脈拍間隔は長くなるし、運動状態にあれば脈拍間隔は短くなる。睡眠状態から運動状態へ移行したことで脈拍間隔の値が変化したとしても、それは正常な反応であって不整脈によるものではない。つまり、脈拍間隔のばらつきには、ユーザーの状態変動によるもの(不整脈とは無関係のもの)と、不整脈によるものとの両方が含まれうる。脈拍間隔の値そのものをプロットすると、両方の要因によるばらつきまで表示することになるが、1タイミング前に対する比率を表示するものとすれば、より長期的な変動であるユーザーの状態変動によるばらつきの影響を抑止することが可能となる。
この点を考慮して、図2の例では、脈拍間隔の分布情報は、第1の軸が前記時間軸であり、第1のタイミングでの脈拍間隔に対する第2のタイミングでの脈拍間隔の比率情報が第2の軸にプロットされる情報としている。ただし、ユーザーの状態変動によるばらつきの影響を抑止できればよいため、第2の軸の値は比率情報に限定されるものではない。例えば、脈拍間隔の分布情報は、第1の軸が前記時間軸であり、第1のタイミングでの脈拍間隔に対する第2のタイミングでの脈拍間隔の差分情報が第2の軸にプロットされる情報としてもよい。なお、比率情報、差分情報は、それぞれ比率そのもの、差分そのものであってもよいし、比率や差分から求められる情報であってもよいし、比率や差分に対応する情報であってもよい。
また、第1のタイミング及び第2のタイミングは、それぞれ脈拍間隔の取得(算出)タイミング、或いは取得タイミングに基づいて決定されるタイミングであり、一例としては、後述する脈拍間隔算出区間のうちの1タイミング(例えば終点を表すタイミング)であってもよい。そして上述したように、比率情報や差分情報は、脈拍間隔の変動度合いをわかりやすく提示することを考慮したものであるから、狭義には第1のタイミングと第2のタイミングとは隣接するタイミングとなる。
図2の例では、A1に示したタイミングより前では、プロットされる点はほぼ0に近い位置で安定しており、医師はこの情報を閲覧すれば、当該期間では不整脈を発症していないと診断できる。なお、A2等に示すように、1タイミング前に対する脈拍間隔の変動が大きい点もみられるが、正常なユーザーでもこの程度のばらつきは見られるため問題とならない。
一方、A1に示したタイミングより後では、プロットされる点が大きくばらつき、そのばらつきに規則性も見られない。よって、医師は当該期間において不整脈の発症を疑うことになる。
以上では、不整脈によらない脈拍間隔の変動の影響を抑止するために、比率情報等を用いる手法を説明した。しかし、不整脈によらない脈拍間隔の変動も、ユーザーの脈の状態を表す重要な情報であるため、医師に提示することは有用と言える。つまり、ユーザーの状態変動による脈拍間隔の変動(不整脈とは無関係)と、不整脈による脈拍間隔のばらつきの両方を表示するという実施形態も十分考えられる。
脈拍間隔の比率情報や差分情報を用いることで、不整脈と関係しない脈拍間隔の変動の影響を抑止できるということは、言い換えれば比率情報等を用いた場合、ユーザーの状態変動による脈拍間隔の変動が表示に現れにくくなるということである。つまり、比率情報等を用いつつ、ユーザーの状態変動による脈拍間隔の変動まで表示したいのであれば、別途脈拍数や脈拍間隔の時系列的な変化を表示することが望ましい。
或いは、脈拍間隔に基づく値として、脈拍間隔の値そのものを用いてもよい。上述したように、脈拍間隔の値そのものには、ユーザーの状態変動による変動と不整脈によるばらつきの両方が含まれるため、脈拍間隔の値を用いることで、その両方を同時に表現することが可能である。つまり、脈拍間隔の分布情報を表示する際に用いられる「脈拍間隔に基づく値」とは、脈拍間隔の値そのものであってもよいし、比率情報や差分情報であってもよく、種々の変形実施が可能である。
このように、図2に示した表示とすることで、プロットされる点のばらつきの程度から、閲覧者は心房細動が発症しているか否かを推定可能である。しかし本実施形態では、生体情報処理システム200により脈波異常期間であるか否かを判定し、その判定結果を、よりわかりやすい(視認性の高い)形態で表示してもよい。
具体的には、処理部230は、解析結果情報として、脈波異常期間と、脈波異常期間以外の期間とを異なる画像表示態様で表示するための情報を生成する。異なる画像表示態様の具体例は種々考えられるが、例えば図2に示したように、点の形状を異なるものとしてもよい。図2では、脈波異常期間では、十字形状の点を用い、脈波異常期間以外の期間では白抜きの丸形状の点を用いている。
このように、脈波異常期間と、脈波異常期間以外の期間とで画像表示態様を変更すれば、当該画像表示態様(ここでは点の形状)により、容易に脈波異常期間か否かを区別することができ、医師の負担軽減が可能になる。図2の例であれば、A1のタイミング以降、少なくとも16:00までは心房細動が発症している可能性があるということが容易に理解できるため、医師は当該期間を対象として詳細なデータの閲覧を行うといった判断が可能となる。なお画像表示態様の変更として、脈波異常期間とそれ以外の期間で点の色を変更する、大きさを変更する、背景色を変更するといった変形実施も可能である。
また図2では、各行の上部(A7)を用いて、ユーザーの行動情報の時系列的な変化が表示される。ここでの行動情報は、ユーザーが睡眠状態、安静状態、ウォーキング状態、ランニング状態のいずれの状態かを表す活動種別情報である。なお、各状態の活動量は、睡眠状態<安静状態<ウォーキング状態<ランニング状態となることが想定されるため、図2に示したように、縦軸方向に活動種別に対応する活動量の大きさの順序で状態を並べることで、図2の行動情報は活動量情報という側面も有することになる。
なお、ここでの行動情報(活動種別情報)は、例えば脈波情報に基づいて求めることができる。具体的には、ユーザーの活動が活発になるほど、脈拍数が高くなることが知られているため、脈拍数と所与の閾値との比較処理等により、活動種別を判定できる。一例としては、脈拍数が第1の閾値以下であれば睡眠状態、第1の閾値より大きく第2の閾値以下であれば安静状態といった判定をしてもよい。ここでの安静状態とは、覚醒状態であって体動が少ない状態を表すものであるため、加速度情報等の体動情報を用いた場合、睡眠状態との識別が難しいことがある。その点、脈波情報は外部から見えないユーザーの内部的な活動や、メンタル活動も反映するため、睡眠状態と安静状態を精度よく判定することが可能である。また、後述するLF,HFといった自律神経活動情報を活動種別の判定に用いてもよい。或いは、脈波情報と体動情報の両方を用いて活動種別を判定してもよい。また、活動種別を、運動状態、日常生活状態、及び睡眠状態のように大まかに分類するように構成しても良い。ユーザーの行動判定は、脈波情報を用いる手法も含め、種々の手法が知られており、本実施形態ではそれらの手法を広く適用することができる。
このようにすれば、脈波異常期間の検出結果と行動情報とを関連づけて表示することが可能になり、例えば脈波異常期間で不整脈を発症していた場合に、当該不整脈が交感神経型か副交感神経型かを特定することが可能になる。睡眠状態では副交感神経が優位となるため、脈波異常期間(或いはその前後)で睡眠状態であると判定されていれば、不整脈は副交感神経型であると推測できる。一方、覚醒状態では交感神経が優位となるため、脈波異常期間(或いはその前後)で覚醒状態であると判定されていれば、不整脈は交感神経型であると推測できる。
図2の例であれば、この範囲における脈波異常期間は覚醒状態に対応するため、交感神経型の不整脈との推測が可能である。さらに、より長いスパンでの情報を閲覧した場合に、例えば他の脈波異常期間も覚醒状態に対応し、睡眠状態に対応する脈波異常期間が見られない(或いは覚醒状態に対応する脈波異常期間に比べて回数が少ない、期間が短い)ということがわかる場合であれば、交感神経型の不整脈の可能性が高いと判定することも可能である。
また、図2のA7では、図3(A)に示したように、縦軸を活動種別、横軸を時間軸としたグラフを用いたが、活動種別の表示はこれに限定されない。例えば、図3(B)に示したように、時間軸に沿ってバー状の表示オブジェクトを表示し、活動種別に応じてバーの色(或いは模様)を変更してもよい。或いは、図3(C)に示したように、時間軸に沿って活動種別を表すアイコンを表示してもよい。この場合、例えば図2のA7に示した位置に、図3(A)ではなく図3(B)や図3(C)の表示を行えばよい。また、行動情報の表示は、活動種別に応じてグラフの線種、線の色を変えるなど図3(A)〜図3(C)以外の変形実施も可能である。
また、図2のA3、A5に示したように、脈波異常期間を識別可能にする表示とともに、信頼度指標を表示してもよい。図2のA3が体動ノイズに関する信頼度指標の時系列的な変化を表す曲線であり、縦軸は体動ノイズの大きさを表す。ここでは、縦軸の上方向が体動ノイズが大きく、下方向が体動ノイズが小さいことを表す。具体的には、信頼度指標として、体動情報の実効信号量等を用いればよい。
これにより、A3の曲線の値が大きい(縦軸上方向に位置する)場合には、体動ノイズが大きく、脈波情報の測定の信頼度が低いということをわかりやすく提示することができる。そのため、A4に示した期間では、生体情報処理システム200では脈波異常期間であるとの判定が行われているが、そこでの脈拍間隔のばらつきは体動ノイズによるものである可能性を否定できない、といった判定を医師に行わせることができる。信頼度指標を表示することで、脈拍間隔の分布情報が大きくばらついている場合に、それが不整脈に起因するのか、ノイズに起因するのかという判定を医師が容易に行うことが可能になる。また、全ての脈波異常期間を同等に扱うのではなく、信頼度に応じて差を持たせることが可能になり、医師の負担をさらに軽減することが可能である。
また、図2のA5が装着状態情報に基づく情報であり、具体的には縦軸を脈波信号の実効値(脈波波形の振幅の実効値)を表すものとすればよい。これにより、A5の曲線の値が小さい(縦軸下方向に位置する)場合には、信号レベルが低く装着状態が不良であるため、脈波情報の測定の信頼度が低いということをわかりやすく提示することができる。具体的にはA4と同様に、A6の期間の信頼度が低いことを医師に容易に提示できる。
また、A4やA6のような、脈波異常期間と診断されているが信頼度が低い期間については、さらなる強調表示を行うことで、信頼度が高い区間との差別化を行ってもよい。一例としては図4に示したように、信頼度が低下している場面の背景色を変更してもよい。このようにすれば、背景色が変更されている部分については、脈波情報に基づく判定が誤っている可能性があることが視覚的に明らかとなる。よって、医師とすれば背景色が変更されていない部分(或いは、信頼度が高いことを表す背景色となっている部分)を対象として診断を行えばよく、情報の閲覧負担を軽減できる。
このようにすれば、解析結果情報により複数の脈波異常期間が表示された場合に、より信頼度の高い、すなわちノイズではなくユーザー自身に異常が発生していることが疑われる期間を優先的に診断に用いることができ、診断負担を軽減することが可能である。
2.2 変形例1(活動量情報、心的状態情報、外部環境情報、居場所情報)
また、脈波異常期間の判定結果とともに表示される情報は、上述したように種々考えられる。例えば、図5(A)に示したように、行動情報として活動量情報を表示してもよい。活動量情報は上述したように、消費カロリーや酸素摂取量、メッツ等の情報であり、定量的に取り扱う(数値化する)ことが可能である。図5(A)の横軸が時間軸、縦軸が活動量を表す軸である。図2のA7に示した行動情報のグラフを、図5(A)に変更することで、脈波異常期間と活動量の関係をわかりやすく表示することが可能になる。
酸素摂取量VO2は、例えば呼気の計測機器を用いることで測定することができる。酸素摂取量は、運動強度を表す指標値として利用できることが知られており、酸素摂取量そのものを活動量情報とすることができる。また、酸素摂取量から消費カロリーを求める手法も知られているため、求めた消費カロリーを活動量情報としてもよい。ただし、呼気の計測機器は大型であることが多いため、脈波情報を用いて活動量情報を求めてもよい。具体的には、酸素摂取量VO2と心拍数数HRとは相関があることが知られている。例えば、最大VO2をVO2m、安静時VO2をVO2rとし、安静時心拍数をHRr、最大心拍数をHRmとした場合に、下式(1)のような関係が知られている。ただし、下式(1)の左辺では分時酸素摂取量を用いている。
つまり、脈波情報から脈拍数を求めることができれば、当該脈拍数はユーザーに何らかの異常がない場合には心拍数HRに対応する(一致する)ため、上式(1)により酸素摂取量VO2を求めることができる。そのため、脈拍数から酸素摂取量や消費カロリーを求めて活動量情報とすることが可能である。
また、図5(B)に示したように、心的状態情報を表示してもよく、具体的にはストレス情報を表示してもよい。図5(B)の横軸が時間軸、縦軸がストレス強度を表す軸である。例えば、メンタルストレスにより脈拍数の数値が上昇することが知られている。よって、基準となる脈拍数(安静時脈拍数、最低脈拍数)に対する脈拍数の上昇度合いに基づいて、ストレス強度を推定することが可能である。その他、脈波情報等からストレス指標を求める手法は種々知られており、本実施形態ではそれらを広く適用可能である。
図2のA7を、図5(B)に変更することで、脈波異常期間とストレス情報との関係をわかりやすく表示できる。ストレスが大きい期間と、脈波異常期間との間に相関が認められる場合には、当該脈波異常期間に対応する不整脈はストレス要因であると推定できる。
また、脈波異常期間の判定結果とともに外部環境情報を表示してもよく、図5(C)では温度情報を表示する画面例を示している。ここでの温度情報は、上述したように体表温度と外気温の温度差情報であってもよい。
具体的には、脈波測定装置がユーザーの体表面との距離が異なる2点の温度を測定するものであってもよい。これは例えば、後述する図22の例であればケース部30に交差するZ軸方向(腕時計における文字盤部分に垂直な方向等)において異なる位置に複数の温度センサーを設ければよい。この場合、図22のZ軸正方向では、ユーザーの体表面、第1の温度センサー、第2の温度センサー、脈波測定装置と外部との境界面、という順に並ぶ位置関係となる。その場合、図6に示すように、Z軸方向では、ユーザーの体表温度T0と、外気温(狭義には上記境界面での温度)T3との間で温度勾配が生じ、第1,第2の温度センサーの出力は、そのうちの温度センサーの配置位置(Z軸での位置でありここではz1,z2)に応じた温度T1及びT2となる。つまり、T1とT2が検出された場合に、それらからZ軸方向での温度勾配(図6では線形性があることを仮定)を推定することで、体表温度T0と外気温T3を推定可能となる。なお、温度勾配については、熱収支等のモデルを用いて求めてもよく、その形式は線形関数に限定されず種々の変形実施が可能である。温度差情報は例えばT0−T3であるがこれには限定されない。
人体に対する負荷を考えた場合、単純に外気温が過剰に高い、過剰に低いという環境も負荷要因となりうるが、それ以上の負荷要因として外気温の急激な変化が挙げられる。例えば、冬の寒い時期に暖房が効いた部屋から屋外へ出た直後に脳出血が生じるケースが知られているが、そのような状況は心臓に対する負荷も同様に大きく、急激な温度変化は不整脈の要因となりうる。そして、外気温が急激に変化した場合には、緩やかに変化した場合(或いは変化からある程度時間が経過した場合)と比べて体表温度との差が大きいと考えられる。つまり、外気温そのものを用いる場合に比べて、体表温度との温度差情報を用いることで、温度によるユーザーへの負荷を適切に表すことが可能になり、不整脈が温度要因か否かの判定に有効である。
また、温度だけに限定されず、人には快適と感じる環境と、不快に感じる環境とがある。その基準には個人差があるが、いずれにせよ不快に感じる環境はユーザーに対する負荷となるため、不整脈の要因となりうるものである。また、単純な快不快とは関係なく、特定の環境が不整脈を引き起こすことも考えられる。例えば、ユーザー自身が不快に感じていないのに、特定の温度条件で不整脈の発症が見られるといったこともあり得る。そのため、外部環境を表す外部環境情報を取得しておき、当該外部環境情報と脈波異常期間との相関を調べることで、不整脈が外部環境要因によるものであるか否か、外部環境要因である場合に、具体的にどのような環境が要因となっているかを特定することが可能である。それにより、特定の外部環境を避けることで不整脈の発症を抑止する等の対応が可能となる。
図5(C)では温度情報を用いる例を示したため、横軸が時間軸、縦軸が温度(温度差、単位は例えば℃)を表す軸となったが、他の情報も同様に表示することが可能である。例えば、気圧情報であれば縦軸を気圧(単位は例えばPa)に変更すればよいし、外光情報であれば縦軸を照度(単位は例えばルクス)に変更すればよい。なお、気圧が低いことがユーザーへの負荷になると考えるのであれば、当該負荷を表す指標値、例えば気圧が低いほど値が大きくなる指標値を求め、当該指標値を縦軸にとってもよい。また、外光の明滅がユーザーへの負荷になると考えるのであれば、当該負荷を表す指標値、例えば明滅の回数が多かったり明滅の周波数が高い場合に値が大きくなる指標値を求め、当該指標値を縦軸にとってもよい。また、周囲音情報であれば縦軸を音量(単位は例えばdB)に変更すればよい。この場合も、特定の周波数帯域の音が問題となるのであれば、当該周波数帯域での音量だけを求めて縦軸に表示する等の変形実施が可能である。
また、図5(D)に示したように、脈波異常期間の判定結果とともに居場所情報を表示してもよい。なお、図5(D)では、縦軸は何らかの定量的な指標値の大きさを表すものではなく、単に居場所の属性を表すものとなっている。言い換えれば、縦軸の上方向に行くほど、ユーザーに対する負荷が大きいといったような関係にはなっていない。
GPS(Global Positioning System)や携帯電話の基地局情報を用いる等、ユーザーの現在位置を特定する手法は種々知られており、緯度や経度等を用いた位置情報の取得が可能である。そのため、特定の位置(緯度経度)と、当該位置がどのような属性を有する場所であるかを対応付ければ、ユーザーの居場所を特定可能である。例えば、広く用いられている地図情報では、どの位置にどのような建物、施設があるかがわかるため、そのような情報と、測定された位置情報(緯度経度)から、ユーザーの居場所情報を特定してもよい。なお、「自宅」、「職場」といった居場所は、ユーザーごとに異なるものであるため、何らかのインターフェースを用いてユーザー自身に入力させてもよい。
このようにすれば、脈波異常期間の発生と、そのときのユーザーの居場所とを関連づけることができる。特定の場所で脈波異常期間が発生しやすいという相関があれば、当該場所へ行くことを避けるといった対応が可能である。一例としては、職場にいるときに脈波異常期間が検出されやすければ、休職等の対応が効果的な可能性がある、といった判断が可能である。
なお、居場所情報の表示についても種々の変形実施が可能であり、例えば地図表示等に用いられるような2次元画像を用いて居場所情報を表してもよい。具体的には、所定時間間隔ごとに居場所を表す地図画像を作成し、図2のA7に示した領域に表示してもよいし、脈波異常期間が検出されたタイミングで居場所を表す地図画像を作成し、当該脈波異常期間との関係がわかるように図2のいずれかの領域に表示してもよい。
以上に示したように、脈波異常期間を識別可能に表示する情報とともに表示される情報は、図3(A)〜図3(C)や、図5(A)〜図5(D)、或いはその変形例のいずれの情報を用いてもよい。また、表示される情報は1つに限定されるものではなく、図3(A)〜図3(C)や、図5(A)〜図5(D)、或いはその変形例のうちの複数を表示することも可能である。
2.3 変形例2(脈波異常期間を識別可能に表示する他の例)
また、図3(A)〜図3(C)や図5(A)〜図5(D)に示した情報とともに表示されるのは、脈波異常期間が識別可能な情報であればよく、その形態は図2に限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る解析結果情報は図7に示した画面を表示する情報であってもよい。
図7の横軸は時間であり、B1の領域に信頼度指標の時系列的な変化、B2の領域に脈拍数の時系列的な変化を表示している。そして、B3の領域において、脈波異常期間と判定された期間に対応する範囲に表示オブジェクト(図7の例ではバー)を表示し、B10の領域に行動情報(活動種別情報であり、ここでは図3(C)に示したアイコン)を表示する。
図7の例であれば、表示対象の期間(例えば測定期間のうちの所与の1日)のうち、バーで示したB4〜B6の3回の脈波異常期間が検出されていることになり、閲覧者はバーの有無と、バーの横軸での位置により、どの期間で脈波異常期間が検出されたかを容易に理解可能である。つまり、表示オブジェクトの有無や形状、色彩等、当該表示オブジェクトに基づいて脈波異常期間とそれ以外の期間とを視覚的にわかりやすく表示することが可能になる。
なお、図7の例では信頼度指標を表示する際に、縦軸上方向が信頼度が高く、下方向が信頼度が低いものとしている。つまり、体動ノイズに基づく信頼度指標の場合、体動ノイズ量(例えば加速度情報の実効信号量)が大きいほど縦軸下方向に位置する関係になり、その点で図2の信頼度指標の表示とは異なる。このように、信頼度指標の表示手法は種々の変形実施が可能である。
図7では、脈波異常期間を表す表示オブジェクト(アイコン、マーク)の他に、脈拍数の時系列的な変化である脈拍数波形を表示している。また、脈拍数波形を脈拍間隔波形に変更にすることも可能である。
このようにすれば、脈波異常期間の判定結果だけでなく、脈波情報に基づくより詳細な情報を表示することが可能になる。よって、医師に対して脈波異常期間において真に不整脈が発症しているか否かを診断するための情報を提示することが可能になる。
また、脈波異常期間が識別可能な情報は他の変形実施も可能である。図8(A)、図8(B)が解析結果情報を表示した際の表示画面例であり、図8(A)は1回の検査結果から生成された情報に対応し、図8(B)は複数回の検査結果から生成された情報に対応する。すなわち処理部230は、第1の期間で取得された脈波情報の解析結果に対応する第1の情報と、第1の期間に比べて長い期間で取得された脈波情報の解析結果に対応する第2の情報とを生成し、出力部250は第1の情報と第2の情報を合わせて出力してもよい。
ここでの第1の期間とは狭義には1回の検査が行われた期間を表し、第2の期間とは複数回の検査が行われた期間を表す。また「1回の検査」とは、脈波測定装置100により連続的に脈波情報が取得される単位を表すものであり、例えば1回の検査に対応する第1の期間とは数日〜10日程度である。ただし、脈波測定装置100のバッテリー等の制約もあるため、1回の検査の中で脈波情報が取得されない空白期間があってもよい。当該空白期間は数分〜数時間程度であって第1の期間に対して十分短いものであり、数日〜数ヶ月といったスパンは想定されない。逆に、複数回の検査が行われる場合、各検査の間は数日(検査の効率や患者負担等を考慮すれば数週間)〜数ヶ月程度の空白期間があることになる。
このようにすれば、第1の情報を表示した場合には、図8(A)に示したようにより詳細な情報を提示することが可能になる。図8(A)では、点線で示した枠の有無や、その横軸での位置により、脈波異常期間を識別可能である。一方、第2の情報を表示した場合には、詳細な情報の表示が容易でないものの、検査結果の時系列的な変化といった患者の状態の概要を把握しやすい表示となる。図8(B)では縦線の有無やその位置により、脈波異常期間を識別可能である。第2の情報は、言い換えれば心房細動の発症履歴情報を表す情報である。つまり、閲覧者の望む情報の粒度に応じて、適切な情報を提示することが可能になる。なお、図8(B)は5回の検査結果をまとめて表示している画面であり、図8(A)はそのうちの5回目の検査結果の詳細を表示している画面である。
行動情報は、狭義には図8(A)の画面に表示することが想定される。図8(A)では、表示オブジェクト(点線の枠表示)により脈波異常期間を識別可能に表示し、それとともに図2のA7と同様に図3(A)に対応する行動情報の表示が行われている。また、図8(A)では、自律神経活動情報であるLF,HFと、AF割合を表示している。
LFとHFは、脈拍間隔の時系列的なデータを周波数変換することで求められる。周波数変換後のデータの、比較的低い周波数のピークがLFに対応し、比較的高い周波数のピークがHFに対応する。具体的には、それぞれのピークのパワーをLF,HFの値とすればよい。LFは脈拍間隔のゆっくりとした変化を表すものであり、主として交感神経の活動を反映したものとなる。それに対して、HFは脈拍間隔のLFよりも早い変化を表すものであり、主として副交感神経の活動を反映したものとなる。図8(A)の例であれば、HFの値、及びLF/HFの値の2つを求め、それぞれの値を時系列での脈波異常期間に関する解析結果と関連づけている。具体的には、横軸(時間)を共通として、表の中にHFとLF/HFの値をプロットしている。HFの値が大きければ副交感神経が優位であるし、LF/HFの値が大きければ交感神経が優位であると判定できる。
また、AF割合とは、信頼度指標の1つである。後述するように、脈拍間隔の時間変化のうち、一部の周波数帯域のパワーが所与の閾値Pthを超えるか否かに基づいて、脈波異常期間を検出することができる。ここでのAF割合とは、処理対象期間のうち、パワーがPthを超えた時間を表す情報であり、値が大きいほど(100%に近いほど)信頼度が高いことを表す。なおここでは、AF割合が所与の閾値(例えば50%)を超えた場合に、処理対象期間を脈波異常期間と判定している。つまりこの場合、脈波異常期間の判定指標と、信頼度指標の両方がAF割合ということになるため、後述する図17のような判定指標と信頼度指標を別々の経路で求める手法とは異なる変形例となる。
ここで、脈波異常期間を識別可能に表示するための解析結果情報とは、心房細動の連続発症時間情報を含む情報であると考えることができる。心房細動が継続して発症している時間は血栓のできやすさ、及び当該血栓により引き起こされる症状の重篤度に関係する。そのため、解析処理により心房細動が継続して発症している時間を表す連続発症時間情報を求め、当該情報を解析結果情報に含めることで、重要な情報を適切に閲覧者に提示することが可能になる。特に、図8(A)のような表示オブジェクトを用いて脈波異常期間を表示すれば、連続発症時間と日時との対応づけも容易である。
ただし、連続発症時間情報とは、連続発症時間を表す情報であればよく、具体的にはx分、或いはy時間といった情報であってもよい。連続発症時間が数分〜1時間程度であれば血栓ができにくく、5時間程度継続した場合に血栓ができやすいことが知られている。よって、1回或いは複数回の検査結果から取得された連続発症時間のうち、最大の時間を表す情報を連続発症時間情報としてもよい。この場合の連続発症時間情報は「連続発症時間:3時間」といったテキスト情報でもよいし、種々のグラフにより表現されたものであってもよい。
また、図8(B)の例では、横軸が検査日、縦軸が1日のうちでの時間を表す。この場合、1日(24時間)が上下方向の1本の線に対応することになり、表示画面全体としては、検査日の日数に対応するだけの線により全検査期間での脈波異常期間を表現できる。図8(B)の例では、脈波異常期間以外の期間では線を描画せず、脈波異常期間で線の描画を行っている。
また、図8(B)に示したように、心房細動の発症時間を累計した合計発症時間を表す情報を用いてもよい。具体的には脈波異常期間の累計時間を合計発症時間情報とすればよい。図8(B)のD1に示した折れ線グラフが合計発症時間情報の時系列での変化であり、ここでの合計発症時間情報は過去の検査も含めて累計処理を行ったものであり、D1の点のそれぞれが合計発症時間を表す。このようにすれば、折れ線の傾きにより病状の変化が容易に理解される。図8(B)の例であれば、ある程度大きい傾きが続いている1〜3回目の検査までは患者の状態がよくないのに対し、4回目5回目では傾きが非常に小さくなっており、病状が回復していることがわかる。
また、脈波異常期間の判定結果及び行動情報等の他に、解析結果情報は種々の情報を表示するものであってもよい。例えば、処理部230は、ユーザーに処方された薬を表す処方薬履歴情報が関連付けられた情報を含む解析結果情報を生成してもよい。図8(B)の例であれば、1〜5回目の各検査毎に処方された薬の種類(或いは名称)を、検査を表す枠の上部(D2)に表示している。図8(B)の例では、1回目2回目の検査後にはワルファリンが処方され、3〜5回目の検査後にはワルファリンに加えてβブロッカーが処方されている。
このようにすれば、処方した薬の履歴を検査結果画面から確認できるとともに、処方した薬により効果が出ているか(病状が回復し、脈波異常期間等が短くなっているか)を容易に判定することが可能になる。例えば、図8(B)の例では、1〜3回目までは改善がみられないため、ワルファリンの処方だけでは効果が十分でないと判定できる。また、3回目の検査後からβブロッカーが処方されたことで、その後の4,5回目の検査で改善がみられるため、βブロッカーが有効であると判定できる。
また、上述したように心房細動には患者に自覚症状がない場合がある。無症候性の心房細動では、患者が気づかないまま病状が悪化するおそれがあるため、単純な発症の有無だけでなく、当該発症を患者が自覚しているか否かという情報も重要である。そこで処理部230は、脈波測定装置100が操作された事を表すイベント情報が、脈波異常期間に関連付けられた情報を含む解析結果情報を生成してもよい。
この場合、解析結果情報の表示例が図9であり、E1に示した箇所に「イベントボタン」という項目が設けられている。この箇所でも横軸は時間で共通であり、ユーザーによる操作が行われた(イベントボタンが押下された)タイミングの位置に、縦線が表示される。図9の例であれば、検査中の6回の脈波異常期間のうち、2/9の18時頃の1回については自覚症状がなく、それ以外の5回については自覚症状があるということがわかる。
また、既に行った処置の効果を明確にするための表示を行ってもよい。処置とは例えば、カテーテルアブレーションであり、カテーテルアブレーションとは、心臓内にカテーテルを挿入し、当該カテーテルに電気を流すことで心臓の一部(例えば頻脈の原因となる部位)を焼灼する治療法である。
この場合の解析結果情報の表示例が、図10(A)、図10(B)である。閲覧者としては、カテーテルアブレーションの前後で症状が変化したか否かにより、効果を確認したいという要求があると考えられる。そのため、図10(B)に示した発症履歴情報を表示するとよい。図10(B)の例では2回目の検査と3回目の検査の間でカテーテルアブレーションが行われ、それにより病状が改善していることがわかる。なお、効果を確認するという意味では、図10(B)に示したように、発症履歴情報に対してカテーテルアブレーションが実行されたタイミングを表す情報を関連づけておくとよい。
2.4 変形例3(第2の解析結果情報)
上述してきた解析結果情報を用いることで、測定期間内における脈波異常期間が識別可能であるため、当該測定期間における不整脈の状況の概略を、医師に容易に把握させることが可能になる。つまり、測定期間が3日〜10日といった長期間であっても、どのようなタイミングで、或いはどのような頻度で不整脈が疑われるかを容易に把握でき、さらに不整脈の要因等を特定するための情報も併せて閲覧できるため、医師の負担を軽減することが可能になる。
しかし、不整脈の診断は医師により行われるべきであり、生体情報処理システム200による判定結果だけを提示するのは好ましくない。言い換えれば、生体情報処理システム200の出力(解析レポート等)では、医師が不整脈であるか否かの診断を行うに足るだけの詳細な情報も提示しなくてはならない。特に、脈波情報には体動ノイズ等の影響があり、心電図を用いた場合に比べて精度が劣るため、システムによる脈波異常の検出結果が適切か否かを確認するための画面表示等の必要性は大きい。
上述した解析結果情報は、図2であれば4時間、図7であれば24時間といった長期間にわたる情報を表示している。そのため、16Hzといったレートで取得される脈波情報や、1秒に1回取得される脈拍間隔(脈拍数)の時系列変化の細かい部分の表示には適さない。例えば、図2の脈拍間隔の表示は、1つ1つの点に着目するというよりは、その分布(ばらつき)の傾向を把握するためのものであるし、図7の脈拍数の表示は、ある程度間引いたものならざるを得ない。また、図2や図7にさらに高レートで取得される脈波波形を表示することは困難である。
そこで、上述してきた解析結果情報の他に、当該解析結果情報に比べて詳細な情報を表示するための第2の解析結果情報を生成してもよい。
例えば図11に示したように、第2の解析結果情報は体動情報(加速度情報)、脈波波形、脈拍間隔波形の、20秒程度といった比較的短い期間での時間変化を表示する情報であってもよい。図11に示したように、表示対象の区間を20秒程度に限定することで、加速度波形、脈波波形、脈拍間隔波形の変化を詳細に(間引き等をせずに)表示することができる。なお、第2の解析結果情報で表示する脈波異常期間内の区間は20秒に限定されるものではなく、60秒等にしてもよく、種々の変形実施が可能である。
なお、図11に加速度波形を表示する例を示したように、処理部230は、第2の解析結果情報として、脈波異常期間内の所与の区間での体動情報及び装着状態情報の少なくとも一方を表示するための情報を生成してもよい。上述してきた解析結果情報では、信頼度指標として区間信頼度を用いることを想定しており、区間信頼度は例えば20秒等の所与の区間を対象として判定処理を行う。区間信頼度の詳細については、区間信頼度判定部227の説明の際に後述する。
つまり、解析結果情報では、20秒を1単位として、脈波測定の信頼度指標を表示することを想定しており、当該信頼度指標を求める際に用いられた体動情報や装着状態情報の詳細(例えば20秒の中での時系列変化)等の表示は特に考慮していない。しかし、対象区間での脈波測定が信頼できるものか否か、という判定についても、生体情報処理システム200の判定結果をそのまま用いるのではなく、閲覧者(医師)による確認作業が行われることが望ましい。
つまり第2の解析結果情報では、区間信頼度判定部227での判定結果を表示することは妨げられないが、信頼度判定に用いる、より詳細な情報を表示してもよい。具体的には、体動情報の波形そのものや、装着状態の指標値の波形そのものを表示するとよい。なお、装着状態の判定には、脈波情報の信号レベルを用いてもよい。そのため、図11等に示す脈波波形は、患者の不整脈を診断するための詳細情報という第1の側面と、信頼度を判定するための詳細情報という第2の側面の両方を有しうる情報である。
図12及び図13に他の第2の解析結果情報の例を示す。図12では第2の解析結果情報により表示される加速度波形を見れば、値の変動が大きいことがわかるため、体動ノイズによる影響を疑うことができる。また、図13では第2の解析結果情報により表示される装着状態情報(脈波波形)を見れば、信号レベルが非常に小さいため、装着不良の影響を疑うことができる。
このように、第2の解析結果情報を用いることで、脈波異常期間内の所与の区間を対象として、脈波波形や脈拍間隔波形等の詳細な情報を表示可能である。そのため、当該詳細な情報を用いることで脈波異常期間において本当に不整脈を発症しているか否かを、医師に診断させることが可能になる。
また、本実施形態では、上述した解析結果情報、第2の解析結果情報以外の情報を生成、表示してもよい。例えば、解析結果情報、第2の解析結果情報を含む生体情報処理システム200の出力の一例として、解析レポートを用いてもよい。解析レポートの作成タイミング、作成頻度等は種々の変形実施が可能であるが、ここでは1回の検査に対応する結果を表すレポート、すなわち3〜10日程度のデータを蓄積することで作成されるレポートである。
図14及び図15に、本実施形態による解析レポートの例を示す。解析レポートは、統計的概要、トレンドグラフ、エピソード波形、全波形の4項目から構成される。
統計的概要は、検査期間におけるユーザー(患者)の状態を表す代表的な統計量を示す項目である。例えば、図14に示したように脈拍数の平均値、最大値、最小値等を表示する。図14のように、最大脈拍数、最小脈拍数については、当該脈拍数が検出されたタイミング(月日、時分秒)を合わせて表示してもよい。また、心房細動(Af:Atrial fibrillation)の発症があったと判定された回数、合計時間、1回当たりの平均継続時間、最長継続時間等を表示する。最長継続時間については、当該心房細動の発症タイミング(発症開始タイミング、終了タイミング)を合わせて表示してもよい。
また、全波形は、図15に示したように、加速度波形、脈波波形、脈拍間隔波形、心房細動の発症状況(脈波異常期間の判定結果)を全検査期間にわたって表示したものである。
トレンドグラフが、本実施形態の解析結果情報に対応し、エピソード波形が第2の解析結果情報に対応する。ここでのエピソード波形とは、不整脈エピソードが疑われる脈波異常期間での、代表的な波形を表す情報であり、図11〜図13の1つ1つに対応する。
図14のトレンドグラフ(図7)からわかるように、測定期間内で複数の脈波異常期間が検出されることもあり、その結果、第2の解析結果情報は、複数のエピソード波形を表示するための情報となる。
その場合、複数のエピソード波形を時系列順に並べて表示し、医師は脈波異常期間の検出順序に従ってエピソード波形を閲覧するものとしてもよい。しかし、本実施形態では信頼度指標の算出を行っている。そのため、複数のエピソード波形のそれぞれについて、脈波測定の信頼度がどの程度であるかを推定できる。
信頼度が高いエピソード波形は、脈波異常期間の検出精度が高いことが想定されるため、患者自身の異常により脈波異常期間が検出されている可能性が高く、医師にとっては当該エピソード波形を閲覧することは不整脈の診断において有用である。一方、信頼度が低いエピソード波形は、患者自身に異常がないのにノイズにより脈波異常期間が検出されている(偽陽性である)可能性があり、当該エピソード波形の閲覧が不整脈の診断において有用でないおそれがある。
第2の解析結果情報に複数のエピソード波形が含まれる場合、それらを同等に扱うのではなく、信頼度に応じて表示の優先度に差を設けてもよい。具体的には、第1の脈波異常期間での信頼度指標が、第2の脈波異常期間での信頼度指標よりも高い場合に、処理部230は、第1の脈波異常期間での解析結果情報が、第2の脈波異常期間での解析結果情報に比べて優先的に表示されるように、第2の解析結果情報を生成する。
このようにすれば、より信頼度が高く、患者が真に不整脈であることが疑われる第1の脈波異常期間での解析結果情報(エピソード波形)が優先的に表示されるため、医師は不整脈の診断において有用な情報を優先的に閲覧することが可能になる。逆に、信頼度が低く偽陽性が疑われる第2の脈波異常期間での解析結果情報(エピソード波形)の優先度が下がるため、医師は不整脈の診断において有用でない可能性のある情報の閲覧を後回しにすること等が可能になる。
図14のトレンドグラフは図7に対応するものであり、この例では、信頼度指標のグラフからわかるように、B7の区間での信頼度は高いのに対して、B8の区間での信頼度は低い。この場合、B7に対応するエピソード波形(図11に対応)は図15のC1のように表示され、B8に対応するエピソード波形(図12に対応)は図15のC2のように表示する。すなわち、信頼度の高いB7に対応するエピソード波形が、先頭ページに近い位置に表示されることになる。なお、図13に対応するエピソード波形についても、信頼度が低いことになるため、図15のC3のようにより後ろに(劣後的に)表示すればよい。
また、「優先的に表示」とは、表示領域(表示サイズ)の大小によるものであってもよい。例えば処理部230は、第2の脈波異常期間での解析結果情報が、第1の脈波異常期間での解析結果情報に比べて縮小表示されるように、第2の解析結果情報を生成してもよい。このようにすれば、信頼度の高いエピソード波形が相対的に大きく表示され、信頼度の低いエピソード波形が相対的に小さく表示されるため、ユーザーはどのエピソード波形に着目すべきであるかを容易に理解可能である。
図15の例では、信頼度の低いエピソード波形(図15のC2,C3であり、図12、図13に対応)は、信頼度の高いエピソード波形(図15のC1であり図11に対応)に比べて、1/4のサイズに縮小されており、信頼度の高いエピソード波形の視認性が相対的に高くなっている。
3.システム構成例
次に本実施形態に係る生体情報処理システム200等の構成例を説明する。まず、生体情報処理システム200の具体的なシステム構成例を図16等を用いて説明し、その後、脈波測定装置100の外観例や、生体情報処理システム200を含むシステムの具体例について、図21(A)〜図23を用いて説明する。
3.1 生体情報処理システムの構成例
図1に示したように、本実施形態に係る生体情報処理システム200は、取得部210と、処理部230と、出力部250を含む。
取得部210は、脈波情報を取得する。例えば、図23(A)を用いて後述するように、本実施形態に係る生体情報処理システム200がサーバーシステムにより実現され、当該サーバーシステムが、ユーザーに装着される脈波測定装置100(生体情報検出装置)から脈波情報を取得する場合であれば、取得部210は、ネットワークを介して脈波測定装置との通信を行う通信部(脈波測定装置からの情報を受信する受信部)であってもよい。
この場合、取得部210は、脈波測定装置に含まれる脈波センサーからのセンサー情報を取得する。ここで脈波センサーは、脈波信号を検出するためのセンサーであり、例えば発光部と受光部とを含む光電センサー等が考えられる。光電センサーや、その他の形態のセンサー(例えば超音波センサー)等、脈波センサーは種々のセンサーにより実現できることが知られており、本実施形態の脈波センサーはそれらのセンサーを広く適用可能である。
処理部230は、取得部210が取得した脈波情報に基づいて、心房細動の解析処理を行い、解析結果に基づいて解析結果情報を生成する。この処理部230の機能は、各種プロセッサ(CPU等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
出力部250は、処理部230で生成された解析結果情報を出力する。出力部250の出力形態は種々考えられ、例えばネットワークを介して解析結果情報を他の機器に対して送信してもよい。この場合、出力部250は通信部により実現される。ここでのネットワークは、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)などにより実現することができ、有線・無線を問わない。或いは、出力部250は解析結果情報を印刷するものであってもよく、この場合、閲覧者は印刷された解析結果情報を紙媒体等で閲覧することになる。
処理部230において、種々の情報を表示するための解析結果情報を生成する処理とは、表示画面情報を生成する処理であってもよいし、印刷用データを生成する処理であってもよいし、画面表示用の情報(例えば各情報の配置関係を規定するHTMLファイル等)であってもよい。画面表示用の情報を生成するとは、一例としてはインターネット上に閲覧用のページ(例えばWebページ)を生成する処理であってもよい。
そして、出力部250は、表示画面情報により規定される表示画面を、端末装置の表示部に表示する表示処理部であってもよい。例えば、本実施形態に係る生体情報処理システム200を含む装置が表示部を有し、当該表示部に表示画面を表示するものであってもよいし、生体情報処理システム200を含む装置とは異なる端末装置の表示部に表示画面を表示するものであってもよい。或いは、出力部250は、印刷用データを印刷装置に対して送信するものであってもよい。或いは、出力部250は、生体情報処理システム200を含む装置とは異なる端末装置からの要求に基づいて、画面表示用の情報を送信する送信部(通信部)であってもよい。この場合、画面表示用の情報を用いた具体的な画面表示については、当該画面表示用の情報を受信した端末装置側で行えばよい。一例としては、端末装置から生体情報処理システム200に対して、Webブラウザを用いてWebページの閲覧要求があった場合に、処理部230は当該閲覧要求に対応したWebページの情報を返信し、端末装置のWebブラウザが当該Webページの情報を解釈し、表示部に表示する形態が考えられる。ただし、端末装置と生体情報処理システム200との情報の送受信は、Webブラウザを用いたものには限定されず、例えばネイティブアプリを利用してもよい。
図16に生体情報処理システム200を含むシステムの詳細な構成例を示す。ただし、生体情報処理システム200は図16の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。図16の例では、生体情報処理システム200の取得部210は、脈波センサー110を含む脈波測定装置100から、脈波情報を取得する。
処理部230は、不整脈(心房細動)の解析処理を行う解析処理部220と、解析結果情報を生成する解析結果情報生成部240を含む。
図17が、解析処理部220の詳細な構成例である。図17に示したように、解析処理部220は、検出信号記憶部221と、体動ノイズ低減処理部222と、脈拍間隔算出部223と、判定指標算出部224と、ノイズ量指標算出部225と、信号量指標算出部226と、区間信頼度判定部227を含む。
検出信号記憶部221は、取得部210が取得した情報を記憶する。ここでは取得部210が脈波情報の他に、ユーザーの体動を表す体動情報(狭義には加速度情報)を取得することを想定しており、検出信号記憶部221は、脈波情報と体動情報を記憶する。例えば、体動情報は脈波測定装置100に含まれる加速度センサーからの情報である。
体動ノイズ低減処理部222は、検出信号記憶部221から脈波信号と体動信号を取得し、脈波信号に対して体動ノイズの低減処理を行う。体動ノイズ低減処理部222は例えば適応フィルター処理等により実現できる。なお、上述したように本実施形態では信頼度指標を用いることから、体動ノイズの除去を行わず、その結果として不整脈が誤検出された(偽陽性となった)場合であっても、当該検出結果の表示優先度を下げることが可能である。そのため、本実施形態での体動ノイズ低減処理部222は必須の構成ではなく、省略することも可能である。
脈拍間隔算出部223は、脈波情報に基づいて脈拍間隔を求める。脈波波形に対するノイズの影響が小さければ、脈波波形のピーク間隔等を脈拍間隔とすることが可能である。しかし通常は脈波波形はそこまできれいな波形とならないため、ある程度の期間での脈波情報を対象とした周波数解析処理により、脈拍間隔を求めるとよい。一例としては、脈拍間隔算出部223は、体動ノイズ低減処理部222において体動ノイズ成分が低減された脈波情報について、サンプリング毎にフレームを切り出し、短時間での周波数解析(STFT(Short-Time Fourier transform)解析)により周波数スペクトルを算出する。そして、脈拍間隔算出部223は、算出した周波数スペクトルに基づいて、フレーム毎に脈拍間隔に相当するパラメータを算出する。
ここでのフレームは、例えば4秒程度の期間とすればよい。本実施形態では、この脈拍間隔を求める対象となる4秒等のフレームを、脈拍間隔算出区間とも表記する。なお、以下の説明では脈拍間隔算出期間を4秒とし、当該期間を1秒ずつずらしていくことで、脈拍間隔を1秒に1回求めるものとするが、脈拍間隔算出期間の長さや、脈拍間隔を求めるレートについては種々の変形実施が可能である。求めた脈拍間隔は、判定指標算出部224に出力される。
判定指標算出部224は、脈拍間隔に基づいて、不整脈(心房細動)が発症しているか否か、具体的には脈波異常期間であるか否かを判定する判定指標を求める。図18(A)、図18(B)は、心電RR間隔の変動を示す波形信号について、1フレームにおいて0.01Hzから0.2Hzの帯域で周波数解析を行い、ピーク周波数とパワーとを対数変換して表したグラフである。図18(A)が心房細動を発症していない場合、図18(B)が心房細動を発症している場合のグラフである。
図18(A)、図18(B)からわかるように、心電RR間隔を用いた場合には、心房細動の発症の有無により回帰直線の切片と傾きが変化するため、当該切片及び傾きから心房細動を判定可能である。よって、判定指標算出部224では、脈拍間隔の変動を表す波形信号を対象としてピーク周波数とパワーとを対数変換して表したグラフを求め、当該グラフの切片と傾きを求めて判定指標としてもよい。当該判定指標と、正常状態の切片等、心房細動発症時の切片等を比較することで脈波情報に異常が見られる脈波異常期間であるか否か、具体的には心房細動が発症しているか否かを判定することが可能である。なお、判定指標算出部224では、切片と傾きを指標値とするのではなく、当該切片等に基づく判定結果(心房細動が発症しているか否かの判定結果)を出力してもよい。
或いは、脈拍間隔の時間変化のうち、一部の周波数帯域のパワーを算出してもよい。心房細動を発症しているときには、発症していないときに比べて、上記パワーが数倍に増加して有意差が見られる。従って、このパワー変化により心房細動を判定してもよい。
また、心房細動の発症時には、脈拍間隔の時系列的な変動が大きくなることが知られている。よって、分散値や標準偏差等の統計量を求めるような変形実施を行ってもよく、さらにその場合、脈拍間隔そのものの統計量ではなく、1タイミング前の脈拍間隔との変化量(差分或いは比率)の統計量を求めてもよい。このように、判定指標算出部224での処理は種々の変形実施が可能である。以下では、判定指標算出部224から、脈波異常期間であるか否かの判定結果が出力されるものとして説明を行う。
ノイズ量指標算出部225は、脈波情報に含まれるノイズの程度を表すノイズ量指標を求める。具体的には、ノイズ量指標算出部225は、検出信号記憶部221から体動情報(加速度情報)を取得し、当該体動情報に基づいて、体動ノイズの程度を表す指標値を求めればよい。さらに具体的には、体動ノイズ量としては、加速度センサーの3軸の加速度量の所定の帯域のパワーを用いることができる。
信号量指標算出部226は、脈波情報に含まれる信号量(信号レベル)を表す信号量指標を求める。信号量指標算出部226は、単純には脈波信号の振幅レベル(実効信号量等)を信号量指標として求めればよい。解析処理部220は、ノイズ量指標算出部225と信号量指標算出部226の両方を含むものには限定されず、いずれか一方を含むものであってもよい。
また、処理部230(狭義には処理部230の解析処理部220)は、ユーザーの体動情報及び脈波情報の少なくとも一方に基づいて、測定期間内の各区間での信頼度指標を求める区間信頼度判定部227を含む。
区間信頼度判定部227は、例えば、加速度センサーの各軸の加速度波形から、所定の帯域をデジタルフィルタによって抽出し実効値を求め、各軸ごとの脈計測への影響度に応じた係数を乗じて加算する、等の手法により、ノイズ量指標に基づく信頼度指標を求めることができる。ここでの所与の帯域とは、例えば0.5〜2[Hz]であり、これは脈拍の周波数帯域と重複する可能性のある帯域に対応する。また、信号量指標に基づく信頼度指標については、脈波信号の実効信号量を用いればよい。
なお、ここでの区間信頼度判定の対象となる測定期間内の各区間の長さは、例えば20秒程度の長さである。この場合、区間信頼度判定部227では、ノイズ量指標算出部225から出力される20秒間の体動情報(加速度信号)の実効信号量、及び信号量指標算出部226から出力される20秒間の脈波情報の実効信号量に基づいて、当該20秒の期間における信頼度(区間信頼度)を判定する。
処理部230の解析結果情報生成部240は、判定指標算出部224から出力される判定指標と、区間信頼度判定部227から出力される信頼度指標とに基づいて、解析結果情報を生成する。解析結果情報の詳細については上述したとおりである。
また、図16の例では、出力部250は他の提示装置300に対して、解析結果情報を出力している。つまり図16は、上述したようにネットワーク等を介して解析結果情報を送信する例である。提示装置300では、出力部250から取得した解析結果情報を、閲覧者に対して提示する。狭義には提示装置300は表示部を含み、当該表示部に解析結果情報を表示すればよい。
図19に本実施形態の生体情報処理システム200の解析処理部220で行われる処理を説明するフローチャートを示す。この処理が開始されると、まず取得部210が取得したログデータを読み込む(S101)。ここでのログデータとは、例えば3〜10日といった1回の測定期間全体における脈波情報や体動情報が蓄積されたデータであり、S101ではそのうちの1データを読み込む処理を行えばよい。
次に、ログデータに対する処理が終了したかを判定する(S102)。例えば、ログデータの先頭からシーケンシャルに処理を行っておき、未処理のデータが残っているか否かを判定すればよい。未処理のデータがない場合(S102でNo)には解析処理部220での処理を終了し、解析結果に基づいて表示用の解析結果情報を生成する処理に移行する。
未処理のデータがある場合(S102でYes)には、S103以降の処理を行う。具体的には、まず体動ノイズ低減処理部222で体動ノイズの低減処理を行う(S103)。体動ノイズ低減処理は、例えば上述したようにフィルター処理により実現できる。
そして、体動ノイズ低減後の脈拍情報が、脈拍間隔算出区間の分だけ蓄積されたか否かを判定する(S104)。脈拍間隔算出区間は例えば4秒であるため、4秒分の情報が蓄積された場合に、S104の判定がYesとなる。例えば、脈波情報のサンプリングレートが16Hzであれば、4秒分の情報とは64個のデータである。S104でNoの場合には、S101に戻り次のログデータの読込を行う。なお、上述したように脈拍間隔算出区間は1秒ずらして設定してもよい。その場合、S104の処理では、4秒分のデータを0から蓄積する必要はなく、3秒分については既に蓄積されているデータを流用可能である。つまり、S104は、1秒に1回Yesと判定されることになる。
S104でYesの場合、蓄積された脈拍間隔算出区間分の脈波情報に基づいて、脈拍間隔を算出する(S105)。具体的な算出手法は上述したとおりである。S105の処理は、S104でYesと判定されるレートと同レートで実行されるため、脈拍間隔は例えば1秒に1つ求められることになる。
次に、信頼度を判定する判定区間分だけのデータが蓄積されたかを判定する(S106)。ここでの判定区間は例えば20秒であるため、S106は20秒に1回Yesと判定され、それ以外ではNoと判定される。Noの場合には、S101に戻り次のログデータの読込を行う。
S106でYesの場合には、まず判定区間分だけ蓄積された脈拍間隔に基づいて、脈波異常期間か否かの判定を行う(S107)。脈拍間隔は例えば1秒に1回求められているため、判定指標算出部224は、20個(判定区間の端点での脈拍間隔の取り扱いによっては図11等に示すように21個)の脈拍間隔の時系列的な変化を用いて、上述した手法により判定を行えばよい。
また、区間信頼度判定部227は、20秒分の脈波情報、体動情報に基づいて、区間信頼度を判定する(S108)。S108の処理後は、S101に戻り次のログデータの読込を行う。
図19に示した処理を行うことで、脈拍間隔を1秒に1回求めるとともに、脈波異常期間に関する判定結果、及び区間信頼度を20秒に1回求めることができる。また、脈拍間隔を変換すれば脈拍数を求めることができるため、脈拍数についても1秒に1回のレートで求められる。
なお、4秒の脈拍間隔算出区間を1秒ずつずらして設定する、すなわち3秒分については重複を許して設定することで、1秒に1回脈拍間隔を算出する手法を説明したが、脈波異常期間を判定する判定区間についても、同様の処理が可能である。図19のフローチャートでは、判定結果を求める際に20秒を判定区間とする例を示し、判定結果は20秒に1回求められるものとしたが、当該判定区間をx秒ずつずらして設定することで、x秒に1回判定結果を求めることができる。ここでのx秒は、脈拍間隔の算出と同様に1秒としてもよいし、2秒、5秒、10秒等の長さとしてもよい。
このように、判定区間の重複を認める場合、1つの脈拍間隔の値が、複数の判定区間に対応するという状況になる。具体例を図20に示す。図20では判定区間が20秒、上記xが10秒であり、脈拍間隔が1秒に1回算出されるものとしている。なお、ここでは判定区間の終点での脈拍間隔の値は、当該判定区間では利用しない例を示しているため、20秒の判定区間に含まれる脈拍間隔の値は20個としている。図20では、第1の判定区間Z1と、その次の第2の判定区間Z2を設定するが、脈拍間隔のうちのRR11〜RR20については、Z1とZ2の両方に含まれる。つまり、Z1から求められる脈波異常期間の判定結果R1と、Z2から求められる脈波異常期間の判定結果R2は、ともにRR11〜RR20に基づく情報である。
この場合、RR11〜RR20に基づく脈波異常期間の判定結果としては、R1とR2のいずれか一方を用いてもよい。しかし、RR11〜RR20に対応する情報が複数求められているのであるから、その複数の情報を総合してもよい。一例としては、RR11〜RR20に対応する区間での判定結果を、R1とR2の論理和、論理積、多数決等を用いて決定してもよい。また、図20ではx=10としたが、xをより小さくすれば、1つの脈拍間隔の値が、より多数の判定区間に対応することになる。例えば、x=1であれば1つの脈拍間隔の値が20個の判定区間に対応するため、20通りの判定結果の論理和、論理積、多数決等を用いて、当該1つの脈拍間隔についての判定結果を求めればよい。判定区間の長さやxの長さについては、上述したように他の変形実施も可能である。
また、判定区間をx秒ずつずらして設定してもよい点は、信頼度指標(区間信頼度)を求める場合も同様である。その場合、脈波異常期間の判定結果と、区間信頼度とで同様の設定を行う必要はないため、判定区間の長さや、判定区間を設定する際にずらす幅であるxを、それぞれ異なる値に設定してもよい。
3.2 脈波測定装置等の具体例
図21(A)〜図22に脈波情報を収集する脈波測定装置100(ウェアラブル装置)の外観図の一例を示す。本実施形態のウェアラブル装置はバンド部10とケース部30とセンサー部40を有する。ケース部30はバンド部10に取り付けられる。センサー部40は、ケース部30に設けられる。
バンド部10はユーザーの手首に巻き付けてウェアラブル装置を装着するためのものである。バンド部10はバンド穴12、バックル部14を有する。バックル部14はバンド挿入部15と突起部16を有する。ユーザーは、バンド部10の一端側を、バックル部14のバンド挿入部15に挿入し、バンド部10のバンド穴12にバックル部14の突起部16を挿入することで、ウェアラブル装置を手首に装着する。なお、バンド部10は、バックル部14の代わりに尾錠を有する構成としてもよい。
ケース部30は、ウェアラブル装置の本体部に相当するものである。ケース部30の内部には、センサー部40や不図示の回路基板等のウェアラブル装置の種々の構成部品が設けられる。即ち、ケース部30は、これらの構成部品を収納する筐体である。
ケース部30には発光窓部32が設けられている。発光窓部32は透光部材により形成されている。そしてケース部30には、フレキシブル基板に実装されたインターフェースとしての発光部が設けられており、この発光部からの光が、発光窓部32を介してケース部30の外部に出射される。
ウェアラブル装置は、図23(A)等に示すようにユーザーの手首に装着され、当該装着された状態で脈波情報(広義には生体情報)の計測が行われる。
次に、本実施形態に係る生体情報処理システム200を実現する具体的な装置の例について説明する。本実施形態に係る生体情報処理システム200は、例えばサーバーシステムであってもよい。この場合の例が図23(A)であり、サーバーシステムである生体情報処理システム200は、ネットワークNEを介して脈波測定装置100と接続され、当該脈波測定装置100から脈波情報を取得する。ユーザーが装着するウェアラブル装置(脈波測定装置100)は、小型軽量となる必要があるため、バッテリーや装置内部の処理部の処理性能、或いはデータの記憶容量に制約が大きい。それに対して、サーバーシステムはリソースの制約が比較的小さいため、脈波情報の解析処理や解析結果情報の生成処理を高速で行ったり、より多くのデータ(脈波情報、或いは解析結果情報)を保持することが可能である。
なお、生体情報処理システム200は脈波測定装置100で収集された脈波情報を取得可能であればよいため、脈波測定装置100と直接的に接続されるものに限定されない。例えば、図23(B)に示したように、脈波測定装置100が他の処理装置400と接続され、生体情報処理システム200は当該処理装置400とネットワークNEを介して接続される形態であってもよい。この場合の処理装置400としては、例えば脈波測定装置100を装着するユーザーが使用するスマートフォン等の携帯端末装置が考えられる。そして、脈波測定装置100と処理装置400との接続は、ネットワークNEと同様のものを利用してもよいが、短距離無線通信等を利用することも可能である。
また、本実施形態に係る生体情報処理システム200はサーバーシステムではなく、スマートフォン等の処理装置(狭義には携帯端末装置)により実現されてもよい。この場合の構成例が図23(C)である。スマートフォン等の携帯端末装置は、サーバーシステムに比べれば処理性能や記憶領域、バッテリー容量に制約があることが多いが、近年の性能向上を考慮すれば、十分な処理性能等を確保可能となることも考えられる。よって、処理性能等の要求が満たされるのであれば、図23(C)に示したようにスマートフォン等を本実施形態に係る生体情報処理システム200とすることが可能である。
さらにいえば、端末性能の向上、或いは利用形態等を考慮した場合、脈波測定装置100が本実施形態に係る生体情報処理システム200を含む実施形態も否定されない。この場合、取得部210は、同一装置内の脈波センサー110からの情報を受信(取得)することになる。脈波測定装置100に生体情報処理システム200が搭載される場合、当該生体情報処理システム200では、大量のユーザーを対象としたデータ解析、保存等に対する要求は低く、脈波測定装置100を使用する1又は少数のユーザーを対象とすればよい。つまり、脈波測定装置100の処理性能等でもユーザーの要求を満たす可能性は十分考えられる。
つまり本実施形態の手法は、脈波情報を取得する取得部210と、脈波情報の解析処理を行い、解析結果情報を生成する処理部230と、生成された解析結果情報を出力する出力部250、を含む生体情報処理装置(生体情報解析装置、生体情報測定装置、生体情報検出装置)に適用できる。上述してきたように、生体情報処理装置の処理部230は、解析処理に基づいて検出された脈波異常期間を識別可能に表示するとともに、ユーザーの行動情報、心的状態情報、外部環境情報及び居場所情報の少なくとも1つを表示するための解析結果情報を生成する。
また、以上ではサーバーシステム、処理装置400、脈波測定装置100のいずれか1つの装置により生体情報処理システム200が実現されるものとしたがこれに限定されることもない。例えば、脈波情報の取得、脈波情報の解析処理、解析結果情報の生成処理及び出力処理が、複数の装置の分散処理により実現されてもよい。具体的には、サーバーシステム、処理装置400、脈波測定装置100のうちの少なくとも2つ以上の装置により生体情報処理システム200が実現されてもよい。或いは、図16の提示装置300のように、他の装置が生体情報処理システム200の処理の一部を行ってもよく、本実施形態に係る生体情報処理システム200は種々の装置(或いは装置の組み合わせ)により実現が可能である。
また、本実施形態の手法は、脈波情報を取得する処理を行い、脈波情報の解析処理を行って、解析処理に基づいて検出された脈波異常期間を識別可能に表示するとともに、ユーザーの行動情報、心的状態情報、外部環境情報及び居場所情報の少なくとも1つを表示するための解析結果情報を生成する解析結果情報の生成方法(解析結果情報の製造方法)に適用することもできる。
このような生成方法(製造方法)を用いることで、脈波異常期間を表示することで不整脈が疑われる期間を視覚的にわかりやすい形態で表示するとともに、当該不整脈の要因を特定する手がかりとなる情報を、脈波異常期間に関連づけて閲覧者(医師)に提示することが可能になる。
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また生体情報処理システム等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。