JP2016202183A - アルツハイマー病研究を標的にしたグリア細胞システム - Google Patents

アルツハイマー病研究を標的にしたグリア細胞システム Download PDF

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【課題】アミロイドβタンパク質を産生するin vitro系実験モデルとしての成体脳に由来する培養aOPC(aOPC)の提供。【解決手段】成体脳由来OPC(aOPC)を線維芽細胞増殖因子の濃度調節下で培養することを特徴とする、アミロイドβ産生能を獲得したaOPCの製造方法、及び当該方法によって製造されたaOPC。【選択図】なし

Description

本発明は、アミロイドβタンパク質を産生するグリア細胞に関する。
中枢神経の主な構成成分として神経細胞やグリア細胞が知られているが、元来グリア細胞は神経細胞の補助的な役割または脳組織の構造を保つための接着細胞ととらえられてきた。しかし現在では様々な機能が知られるようになり、まだ未知な部分が多い脳を理解する上で重要な研究対象となっている。グリア細胞はアストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイトの3種類と考えられていたが、近年第4のグリア細胞であるオリゴデンドロサイト前駆細胞(oligodendrocyte precusor cell: OPC、NG2細胞などと称する)が発見された(非特許文献1:Nishiyama A (2007) Neuroscientist 13 62-76、非特許文献2:Stallcup WB (2002) J Neurocytol 31 423-435)。
OPCは細胞表面にNG2コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(NG2)が発現し、チロシンキナーゼ型受容体PDGFα受容体(PDGFRa)、転写因子olig2にも陽性であるため、それらは細胞のマーカーとされている。OPCは脳灰白質、白質全体に存在し、齧歯類脳細胞数の約5〜9%の割合を占め、生涯に渡って増殖することが知られている。また、OPCはオリゴデンドロサイトへ分化することが知られている。発達期には盛んに分化するが、成体期には分化の割合が減少する。このことから、成体期ではオリゴデンドロサイトの供給源としての役割のみならずOPC自体が何らかの機能を持つと予測されるが、現在その機能はほとんど明らかになっていない(非特許文献3:Nishiyama A, Komitova M, Suzuki R, Zhu X. (2009) Nat. Rev. Neurosci., 10, 9-22)。
従来、発達期以降成人(成体(以降本明細書において、ヒトのみに限定せず、成獣齧歯類等の発達期以降を成体と定義する))における脳細胞は増殖しないと考えられてきたが、近年神経幹細胞が成体脳内の特定部位(海馬歯状回、脳室下帯)において増殖し、特に海馬の神経幹細胞による神経細胞新生が認知・記憶に関連することが明らかになってきた(非特許文献4:Deng W, Aimone JB, Gage FH (2010) Nat. Rev. Neurosci., 11, 339-350)。アルツハイマー病(Alzheimer’s Diseae: AD)は不可逆な進行性の脳疾患で、記憶や思考能力がゆっくりと障害され日常生活の単純な能力さえも失われることから、神経幹細胞と AD の関連が研究されている。一方、OPCは脳各部位で増殖することから、脳の可塑性を担う役割も期待されるが、ADとの関連研究はまだ少ない。
OPCの機能がほとんど明らかになっていない原因、またADとの関連研究が少ない理由の一つとして、適切な実験モデル系が存在しないことが挙げられる。現在まで用いられてきた培養細胞は、胎児期または新生期由来であり、成体脳内に存在しているOPC、すなわち成体脳由来OPC(adult OPC: aOPC)との相違点等について十分な検討がなされていない。また、従来の培養系はOPCの性質を維持したまま培養できる期間が非常に短いものであった。本発明者はこれらの点を克服し、成体ラット脳各部位から培養aOPCを分離して性質を維持したまま長期培養することに成功した(特許文献1:特許第5122190号)。
認知症患者は世界で推定2400万人とされADは認知症の40~60%を占めることから、 ADの治療は世界各国において緊急に対処すべき課題と考えられている。ADの病理的特徴の一つとして老人斑が挙げられるが、その主要成分はアミロイドβタンパク質(Aβ)である。Aβは膜タンパク質βアミロイド前駆体タンパク質(APP)がセクレターゼにより切断を受けて細胞外へ放出するタンパク質である(図1)。ヒト老人斑には、C末断片が長く凝集性が強いAβ1-42が特に沈着しているが(非特許文献5:Iwatsubo T, Odaka A, Suzuki N, Mizusawa H, Nukina N, Ihara Y.(1994) Neuron. 13, 45-53.)、AD患者の大多数を占める孤発性ADにおけるAβ蓄積メカニズム、特にAβ1-42の異常産生メカニズムは未だ不明である(図1d)。
図1において、a)、 b)は、non-amyloidgenic pathwayを示す。a)APP はα-secretaseにより切断されて APPsαを産生し、細胞膜側の切断されたAPPC末端(APP-C83)は、γ-secretase により切断されて細胞外へp3を放出する。細胞内にはAPP-C59(別名AICD)が残る。b)APP はβ-secretaseによりβ’-siteを切断してAPPsβ’を産生し、細胞膜側の切断されたAPPC末端(APP-C89)はγ-secretase により切断されてβ’を放出する。c)は、amyloidgenic pathwayを示す。APPはβ-secretaseにより切断されてAPPsβを産生し、細胞膜側の切断されたAPPC末端(APP-C99) は、γ-secretaseにより切断されて細胞外へAβ1-40やAβ1-42を放出する。d)は、凝集性が高い Aβ1-42が多く産生されることにより病的異常が生ずることを示す。APPがβ-secretaseにより切断されて、細胞膜上にAPP-C99が残る。Aβの主な分子種であるAβ1-40、Aβ1-42は、γ-secretase活性によりAPP-C99が切断されて産生される。通常は、Aβ1-40がAβ1-42より多く産生されている(非特許文献6:Asami-Odaka A, Ishibashi Y, Kikuchi T, Kitada C, Suzuki N.(1995) Biochemistry. 15, 10272-10278.)。しかし、まだ十分に解明されていない何らかの異常に誘発されて、γ-secretaseが凝集性の高いAβ1-42を通常より多く産生した場合、その性質によりAβは凝集して老人斑を形成し、病的異常をもたらすと考えられている。
Aβ(特にAβ1-42)の沈着は最初期病変であること、Aβ凝集は神経細胞毒性があること、そして家族性ADの遺伝学的解析により見出された遺伝子異常がAβ(特にAβ1-42)の産生および蓄積を異常に促進することから、Aβ(特にAβ1-42)がADの発症に深く関与していると考えるアミロイド仮説が提唱されている。よって、Aβの異常産生のメカニズムはAD研究対象として重点領域となっている。特にAβ産生を担う細胞の実体、またそのメカニズムを明らかにすることはAD研究にとって中心課題の一つと考えられる。しかし、現状は十分な科学的根拠がないまま神経細胞が責任細胞であると信じられており、グリア細胞のAβ研究はあまり行なわれていない。実際、ラットの培養細胞を用いた研究においてAβの産生は神経細胞に多いが、アストロサイト、ミクログリアなどのグリア細胞も少量であるがAβを産生すると報告されている(非特許文献7: Fukumoto H, Tomita T, Matsunaga H, Ishibashi Y, Saido TC, Iwatsubo T. (1999) NeuroReport, 10, 2965-9)。また、新生期由来オリゴデンドロサイトはAβを産生すると報告されているが(非特許文献8:Skaper SD, Evans NA, Soden PE, Rosin C, Facci L, Richardson JC, Neurochem Res (2009) 34. 2243-2250)、オリゴデンドロサイト前駆細胞であるOPC、特に成体期のaOPCに関してAβ産生の研究はほとんど行われていない。また、細胞・動物モデルによるAβ産生メカニズムの研究は、その大多数が遺伝子の強制発現系を用いて行われてきた。しかしながらその弊害も多く指摘されており(非特許文献9: Saito T, Matsuba Y, Mihira N, Takano J, Nilsson P, Itohara S, Iwata N, Saido TC.(2014) Nat Neurosci.17, 661-663)、より実際の体内に近い、内在性タンパク質のみによるAβ産生モデルの確立が望まれてきた。
特許第5122190号
Nishiyama A (2007) Neuroscientist 13 62-76, Stallcup WB (2002) J Neurocytol 31 423-435 Nishiyama A, Komitova M, Suzuki R, Zhu X. (2009) Nat. Rev. Neurosci., 10, 9-22. Deng W, Aimone JB, Gage FH (2010) Nat. Rev. Neurosci., 11, 339-350 Iwatsubo T, Odaka A, Suzuki N, Mizusawa H, Nukina N, Ihara Y.(1994) Neuron. 13, 45-53. :Asami-Odaka A, Ishibashi Y, Kikuchi T, Kitada C, Suzuki N.(1995) Biochemistry. 15, 10272-10278.) Fukumoto H, Tomita T, Matsunaga H, Ishibashi Y, Saido TC, Iwatsubo T. (1999) NeuroReport, 10, 2965-9. Skaper SD, Evans NA, Soden PE, Rosin C, Facci L, Richardson JC. (2009) Neurochem Res., 34. 2243-2250 Saito T, Matsuba Y, Mihira N, Takano J, Nilsson P, Itohara S, Iwata N, Saido TC.(2014) Nat Neurosci. 17, 661-663
本発明は、強制発現系を用いず、内在性タンパク質のみでAβ(特にAβ1-42)を産生するin vitro系実験モデルとしての培養成体由来(aOPC)を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、成体脳由来OPC(aOPC)を線維芽細胞増殖因子の存在下で培養することにより、Aβ(特にAβ1-42)産生能を有する細胞を作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)aOPCを線維芽細胞増殖因子の濃度調節下で培養することを特徴とする、アミロイドβ産生能を獲得したaOPCの製造方法。
(2)アミロイドβがアミロイドβ1-42である(1)に記載の方法。
(3)線維芽細胞増殖因子がFGF2である(1)又は(2)に記載の方法。
(4)線維芽細胞増殖因子の濃度が0〜40ng/mlから選ばれる少なくとも2つの濃度である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)20ng/mlの濃度で第一の培養を行った後に、0ng/ml〜5ng/mlの濃度でさらに第二の培養を行うものである(4)に記載の方法。
(6)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法により得られる、アミロイドβ(特にアミロイドβ1-42)産生能を獲得したaOPC。
(7)前記(6)に記載の細胞を含む、認知症モデル細胞。
(8)認知症がアルツハイマー病である(7)に記載のモデル細胞。
(9)アミロイドβ(特にアミロイドβ1-42)産生のメカニズムを検討するための(6)〜(8)のいずれか1項に記載のモデル細胞。
(10)前記(6)〜(9)のいずれか1項に記載の細胞に候補物質を接触させてアミロイドβ(特にアミロイドβ1-42)を検出し、得られる検出結果を指標として認知症治療薬をスクリーニングする方法。
(11)認知症がアルツハイマー病である(10)に記載の方法。
本発明により、強制発現系を用いず、内在性タンパク質のみでAβ(特にAβ1-42)を産生する細胞の製造方法が提供される。本発明の方法により作製された細胞は、Aβを分泌することができる。従って、本発明の細胞は認知症のモデル細胞として極めて有用である。
Aβのプロセシングを示す図である 培養細胞の性質の結果を示す図である。 ウエスタンブロッティングの結果を示す図である。 ウエスタンブロッティングの結果を示す図である。 γ-secretase 活性を示す図である。 FGF2がタンパク発現に影響を与えることを示す図である。 生体内aOPCの性質を示す図である。 γ-secretase阻害剤の効果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2015-087764号明細書の全体を包含する。
1.本発明の概要
本発明者は、成体脳から由来するオリゴデンドロサイト前駆細胞(oligodendrocyte precusor cell: OPC、NG2細胞などと称する)(本明細書においては、成体脳由来OPC(adult OPC)をaOPCと称する)にfibroblast growth factor basic, human, recombinant (FGF2)を添加してその細胞を増殖させた後、添加するFGF2の濃度を変えることにより培養aOPCからアミロイドβタンパク質(Aβ)(特にAβ1-42)を産生させ、更にそのAβ産生能力(特にAβ1-42)はラット胎児由来神経培養細胞を上回ることを見出した。
生活環境の向上と医療の充実による高齢化が進み、老いに伴う認知症は増加の一途を辿っている。ADは認知症の主な疾患であり、その克服は世界的な問題となっている。本発明者は、培養aOPC(特許第5122190号)が AD に深く関与するAβ、特に Aβ1-42の産生増大、及び Aβ1-42/total Aβ比上昇を培養条件により引き起こすことを見出した。aOPCが、過剰発現系ではなく内在性タンパク質のみで Aβ 産生システムを保持することは本発明により見出された新たな知見であり、この知見は、培養条件を変えることにより AD 促進的にそれらのシステムが作動するというものである。従って、本発明の細胞は、研究が進んでいない孤発性 AD の研究などに今後大きく貢献するものである。
本発明者は、以前、ラット脳(成体ラット脳)より所定の分離方法で分離された細胞から、aOPCを調製し得るin vitro培養条件を見出した(特許第5122190号)。この条件によれば、(i) ほぼあらゆる月齢の成体ラット脳のほとんどの部位から、(ii) 簡便に、(iii) 高純度で大量に、(iv) 遺伝子操作を行わずに、(v) 無血清培地のみを用いて、aOPCを分離培養することができる。
さらに本発明者は、この培養法を用いて得られるaOPCを、FGF(特にFGF2)の添加条件(濃度条件)を変えて培養すると、培養された細胞は、強制発現系を用いる事なく、内在性タンパク質のみで検出可能なAβを産生すること、特に Aβ1-42の産生増大、及び Aβ1-42/total Aβ比上昇が生じることを見出した。従って、Aβ産生能を獲得した培養aOPCを用いて、その分化若しくは増殖、又はAβ(特に Aβ1-42)の検出を指標として、認知症治療・改善薬あるいは予防法を探索することができる。
2.Aβ産生能を獲得したaOPCの調製方法
本発明の細胞の製造方法は、前述した通り、aOPCをFGF存在下で培養する工程(培養工程)を含むことを特徴とする方法である。
(1)aOPCの調製
aOPCは、特許第5122190号に記載の方法により調製することができる。
例えば、哺乳動物の脳から採取した細胞懸濁液を密度勾配遠心処理し、遠心後白濁した中間細胞層を分離し(分離工程)、分離物を無血清培地中で培養する(培養工程)。
これにより、培養aOPCを得ることができる。
哺乳動物としては、限定はされないが、例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ブタ、イヌ、ネコ、サル、ヒツジ、ウシ、ウマ及びヒト等の哺乳類動物が挙げられ、中でも、ラット、マウス及びモルモット等の齧歯類(ネズミ目)動物が好ましく、より好ましくはラットである。また、本発明の方法を再生医療等の臨床に適用する場合はヒト由来の脳を使用することができる。本発明においては成体(特に成体ラット)の脳を使用することが好ましい。「成体」とは、胎児及び幼児ではなく既に性成熟した哺乳動物個体を意味し、例えばラット、マウスでは生後少なくとも4週を経過している個体、ブタでは生後少なくとも3〜4ヶ月を経過している個体、ヒトでは15歳以上の個体を意味する。
採取する脳組織(脳細胞)は、限定はされず、海馬、扁桃体、大脳皮質、嗅球、小脳、線条体、脳幹及び中枢神経の脊髄等からなる群より選択される少なくとも1種に由来する細胞が好ましく挙げられるが、中でも、精神病態に関与する重要な部位である海馬及び扁桃体並びに前頭葉がより好ましい。
(2)aOPCの培養
aOPCは、FGF2の存在下で培養する。
FGF2はbFGFとも呼ばれる成長因子の一種であり、細胞増殖、血管新生作用等幅広い機能が知られている。ヒトES細胞、iPS細胞などの培養において、FGF2は未分化状態を維持することができるため、培地に添加されることが多い。本発明においても、成体脳由来培養aOPCを未分化状態で増殖させるために、FGF2は培地中に添加する。
FGF2の培地中の濃度は、目的とする細胞数を採取できる限り、特に限定されるものではないが、例えば5ng/ml〜40ng/mlの範囲で調節する。さらに好ましくは20ng/mlである。
FGF2の濃度調節は以下のように行うことができる。
すなわち、細胞を培養容器中に約1×105〜6個/60mm dishとなるように調製して使用目的に合ったプレートおよび培養ディッシュ等、培養可能な容器に加え、培養を開始する(第一培養)。このときのFGF2の濃度は10〜20ng/mlである。次に、FGF2の濃度を変えて培養する(第二培養)。このときのFGF2の濃度は0〜40ng/ml 、好ましくは0ng/ml〜5ng/ml、さらに好ましくは0ng/ml〜1ng/mlである。本発明においては、FGF2を添加せずにFGF2濃度を0ng/mlとすることもできるが、0ng/mlとした場合(つまりFGF2が培地中に含まれない場合)であっても本発明においては「FGF2の濃度調節」の態様に含めることとする。
第一培養の培養時間は24〜48時間、好ましくは培養するディッシュ、あるいはプレートに細胞が均一に広がる状態である。
第二培養の培養時間は48時間以上、好ましくは4〜6日である。
本発明において、第一培養では10ng/ml〜20ng/mlのFGF2濃度で48時間(2日)培養し、第二培養では0 ng/ml〜5ng/mlでさらに6日培養することが好ましい。
FGF2は、培養培地に添加して所定濃度にしてもよく、所定量の培養液を含む培養容器中に所定濃度となるように添加してもよい。
培養に用いる培養容器は、aOPCが生着し得るものであればよく、限定はされない。例えば、ポリリジンコーティングした培養ディッシュが好ましく用いられるが、特に好ましいのはポリ-D-リジンでコーティングした培養ディッシュである。
本発明の方法に用い得る無血清培地としては、添加物を必須とする以外は、任意の神経細胞用培地及び各種抗生物質等を用いることができる。
ここで、添加物としては、効果的にaOPCを増殖し得るものであればよく、例えば、B27サプリメント、増殖因子及びアミノ酸から選ばれる1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。B27サプリメントは、例えば90%以上のaOPC高純度を達成することができ、特に好ましい。増殖因子としては、例えば血小板由来成長因子(Platelet derived growth factor)等を用いることができる。アミノ酸としては、限定はされないが、例えば、グルタミン酸(L-Glu)及びアスパラギン酸(L-Asp)等の興奮性アミノ酸を好ましく用いることができる。これら興奮性アミノ酸は、aOPCの生存率を有意に上昇させることができる。
神経細胞用培地としては、限定はされないが、例えば、Neurobasal-A(インビトロジェン社)、DMEM/F12(インビトロジェン社)等が好ましく用いられる。なお、必要に応じ、各種アミノ酸(例えば、L-グルタミン)を添加することが好ましい。
また抗生物質としては、限定はされないが、例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン及びファンギゾンの中から選択される2種以上を用いることができる。
培養温度は、例えば、36.5〜37.0℃で行うことが好ましい。また培養時間は、特に限定はされないが、適宜培地交換を行いながら(例えば2〜3日に一回、半分量あるいは全量交換)、培養細胞が培養容器内に一杯になった時点で一部を採取し、継代すればよい。
3.スクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法は、本発明の方法により得られる、Aβ産生能を獲得した培養aOPCに候補物質を接触させ、接触後、当該細胞から分泌されるAβを検出し、得られる検出結果を指標として認知症治療あるいは予防薬をスクリーニングする方法である。具体的には、Aβ産生能を獲得したaOPCの培養液中に候補物質をある一定期間添加し、その後に、このaOPCから分泌されるAβ(細胞外Aβ、特にAβ1-42)を測定し、評価する。候補物質を添加する一定期間は、例えば3〜10日程度であり特に限定はしない。
Aβの検出は、ウェスタンブロット(WesternBlotting: WB)、免疫沈降、ELISA、質量分析などを単独で、または適宜組み合わせて行うことができる。例えば、Aβの検出は、市販のAβを認識する抗体を用いた免疫WBを行う。
評価する候補物質としては、限定はされないが、天然又は人為的に合成された各種ペプチド、タンパク質(酵素や抗体を含む)、核酸(ポリヌクレオチド(DNA, RNA)、オリゴヌクレオチド(siRNA等)、ペプチド核酸(PNA)など)、低分子又は高分子有機化合物等を例示することができる。
本発明のスクリーニング方法により、Aβの分泌を抑えて認知症の治療に対して効果があると評価された物質は、ADなどの認知症等予防又は治療用薬剤、あるいは他薬剤との併用薬として使用できる。また、うつ病はADのリスクファクターであることから(Nihonmatsu-Kikuchi N, Hayashi Y, Yu XJ, Tatebayashi Y, J Alzheimers Dis 2012, 37 611-621)、うつ病治療期間中、あるいは限定はされないが寛解期、好ましくはうつ病既往歴を有する場合に、スクリーニングで見出した薬剤投与は、将来AD罹患率を減少させる可能性を検討出来る。限定はされないが将来的に発見されるAβの分泌により引き起こされる疾患全般について治療薬の開発を行うことができる。

以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<方法>
(1)aOPCの分離・培養
SD(CD) 雌ラット(8週齢以上)をペントバルビタール麻酔下(50mg/kg)断頭し、両側海馬を摘出した。Hibernate/B27注1)3mlにpapain (47.2U/ml, Worthington)を溶解し50mlチューブにフィルター濾過した後、メスで約0.5mm3に細かくミンチ状にした海馬を加えた。50ml チューブを恒温振とう槽で振とう(30℃、170rpm)した。振とう後、上清を捨て Hibernate/B27で2回洗浄したのち、Hibernate/B27 2mlを加えp1000マイクロピペッターで穏やかにピペッティングを行い、組織片を細かくした。細胞懸濁液をOptiprepグラジェント注2)に重層し、遠心分離(800g, 15min, 室温)した。
上清画分を取り出しNeurobasal-A/B27注3)4mlを加え、遠心分離(800g, 5min, 室温)して上清を捨て、Neurobasal-A/B27 12mlに懸濁した。0.01〜0.02% poly-D-lysine (135 kDa; Sigma)でコーティングした60mmディッシュ(corning) 3枚に細胞懸濁液各4mlを入れ、CO2インキュベーターに30〜60分清置後(37℃, 5% CO2)、p1000マイクロピペッターで穏やかにディッシュに接着した残さを剥がした。
アスピレーターで上清を除いた後、60mmディッシュ1枚当たりfibroblast growth factor basic, human, recombinant(Wakoあるいはpeprotec)(FGF2) 20ng/ml、最終メディウム量としてNeurobasal-A/B27 4mlに調整した。初代培養から2日間はメディウム交換を行わず、3日後以降は1日おきにメディウム交換を行った。継代は、初代培養から3週間以上経過し独立したコロニーの近接が確認されたときに行った。継代する細胞のコーティングには0.01〜0.02% poly-D-lysine を使用した。
注1: Hibernate/B27:Hibernate(Brainbits)に2% B-27supplyment(Life Technology), 0.5mM L-glutamine, 100IU/ml of penicillin and 100μg /ml of streptomycin(Hibernate 以外すべて Life Technology)を含む
注2:Optiprep グラジェント:Optiprep (Life Technology)をHibernate/B27に加え7, 9.4, 11.7, 16.4 (w/w) %を調製し、比重が重い順に各1mlを15mlチューブに重層させる。
注3:Neurobasal-A/B27:Neurobasal-A medium (Life Technology)に2% B-27supplyment, 0.5mM L-glutamine, 100 IU/ml of penicillin and 100 μg /ml of streptomycin を含む
(2)培養aOPC添加栄養因子の検討
初代培養終了後、FGF2(線維芽細胞増殖因子)(peprotech、Wako)、PDGFaa(血小板由来成長因子)(Wako)をそれぞれ20ng/ml添加し、細胞数の経時変化を計測した(初代培養から32、44、52、58日後(DIV))。細胞数の計測には、TC-10(Bio-Rad)を使用した。形態を観察するために、poly-D-lysineでコーティングしたカルチャースライド(BioCoatTM)に培養aOPCを撒き、FGF2、PDGFaa 各20ng/mlをディッシュで維持する場合と同様に添加した。2〜7日培養後、4%パラホルムアルデヒド/PBSで15分間固定した。0.5%Triton/PBSで5分処理し、PBSで洗浄した後3%BSA/0.05%Tween/TBS (T-TBS)で20分以上ブロッキングを行い、抗NG2抗体(ポリクローナル、millipore)(1:500) を4℃で一晩反応させた。1次抗体洗浄後、2次抗体Alexa488あるいはAlexa584を45分以上反応させ、共焦点レーザー顕微鏡で(LSM5 Exciter、LSM780(Ziss))撮影した。
(3)培養aOPCのタンパク発現
培養した継代3回目(P3)と11回目(P11)の培養aOPCを回収して-80℃で保存した。凍結培養細胞に、プロテアーゼインヒビターを加えたm-RIPA buffer (50mM Tris-HCl pH 8.0, 150mMNaCl, 1%NP-40, 0.25% Sodium deoxycholate, 1mM EGTA pH7.4)を加え、氷中でソニケーションを行ってから15 分間氷中に静置して遠心分離(15,000g, 15min, 4℃)後、上清を新たなチューブに移した。サンプルの一部は BCA法によるタンパク定量(Pierce BCA Protein assay kit, Thermo)を行い、タンパク量が1mg/ml になるようサンプルバッファで調整した。コントロールとして、成体ラット脳海馬と大脳皮質のm-RIPA buffer 抽出サンプルを用意した。ゲルに各レーン一定量(20〜40μg)になるようにサンプルを載せて電気泳動した後ウエット式ブロッティングを行い、ニトロセルロース膜にゲル 1枚当たり 150mA、40〜60分で転写した。
(4)ラット胎児神経細胞の分離・培養
高島らの以前の報告を参考に実験を行った。(Takashima et. al.,Neurosci Res. (1998) 31, 317-23.)
(5)栄養因子 FGF2 濃度を変えた培養aOPCの培養条件
細胞を継代し FGF2 20ng/mlで2日間培養した後、FGF2 濃度 0, 1, 5, 20 40ng/mlで6日間培養した。培養液を 15mlチューブに回収し遠心分離(800g, 5min, 室温)した後、上清を別のチューブに移し、免疫沈降を行うまで-80℃で保存した。接着している培養細胞は、冷却PBS(-)を用いて2回洗浄しセルスクレーパーで回収した。遠心分離(800g, 5min, 4℃)した後、上清を捨てWB用にサンプルを調製するまで、-80℃で保存した。
(6)細胞外Aβの検出
-80℃に保存した培養上清を氷上で解凍した。各培養上清3.6mlにプロテアーゼインヒビター(Protease inhibitor cocktail, Sigma)(1:100)、Aβアミロイド前駆体タンパク質(APP)認識抗体22C11 (Millipore) 2μg、及びAβ認識抗体1-40(MBL) 2μg、Aβ認識抗体1-42(MBL) 2μgまたは4G8(Millipore) 50μgを加え、Protein A/G Plus Agarose (Pierce) 20μlを添加して 4℃下ローテーターで一晩チューブを撹拌した。
免疫複合体溶液をPierce Classic IP Kitに付属しているカラムに通した(1,000g, 1min, 4℃)(以下、遠心分離は同様の条件)後、1x TBS 600μlを加えアガロースを洗浄し、さらに200μlで洗浄を行った。1x Conditioning Buffer 100μlを加えて遠心した後、新たな1.5ml チューブにカラムを移し、付属の5x sample bufferをキットのプロトコールに従い2x sample bufferに調整して 50μlを、カラム内のアガロースレジンに加えた。100℃で5分加熱した後、遠心分離でサンプルを溶出した。
Aβの検出は WB 法で行った。15%ゲル(SuperSep Ace, Wako)に免疫沈降サンプル各 5μl を泳動した。コントロールペプチドは Amyloid β-Protein (Human, 1-40) (ペプチド研究所)、Amyloid β-Protein (Human, 1-42) (ペプチド研究所)を使用した。ウエット式ブロッティングを行い、ニトロセルロース膜にゲル1枚当たり150mA、36分で転写した。ブロッキングは1%BAS/TBSTで行い、検出抗体は Beta Amyloid, Rodent Specific Monoclonal Antibody, clone: M3.2 (1:2,000)(Biolegend)、Aβ認識抗体 1-40(1:2,000)、1-42(1:2,000)(MBL)を用いた。
(7)細胞外 Aβ ELISA
Sun らの以前の報告を参考に実験を行った(Sun et. al., Neurobiol Aging. (2002) 23, 195-203.)。
(8)細胞内タンパク質の発現
上記(3)と同様の方法でサンプルを調製した。使用した抗体はPS1(Millipore), BACE1(Calbiochem), Aph-1(Santa Cruz), Nicastrin(Sino Biological Inc.), Pen-2(invitrogen), Notch(Santa Cruz), cleaved Notch(Cell Signaling), β-arrestin-2(Cell Signaling), PDGFRa(Santa Cruz), NG2(Millipore), APP22C11(Millipore), anti-APP C (Sun X, Cole GM, Chu T, Xia W, Galasko D, Yamaguchi H, Tanemura K, Frautschy SA, Takashima A.(2002) Neurobiol Aging, 23, 195-203.)
<結果>
(1)第一培養における培養aOPCの性質
初代培養後、培養aOPCを長期に渡って維持しアッセイに使用するために、栄養因子の検討を行った。胎児期あるいは新生期由来培養OPCには、栄養因子としてPDGFaaが使用されてきた (Lillien & Raff., 1990)。しかし、初代培養aOPCあるいは継代した培養aOPCの増殖に対してPDGFaaは適していなかった(図2a)。一方、FGF2は培養aOPCの細胞数を増やし、さらには濃度依存的に細胞数を増加させていた(図2b)。
形態を観察すると、FGF2存在下で細胞体からプロセスを2本以上伸ばし、多方向へ樹状にプロセスが伸展していた(図2c左上)。一方、PDGFaa存在下でプロセスは2極性を示していた(図2c右上)。FGF2存在下の培養aOPCは、図2c下段左の生体内OPC(成体のみならず胎児期あるいは新生期OPC)と同様の形態を示し(Gallo et al., 2008)、PDGFaa存在下の培養aOPCは、胎児期あるいは新生期由来培養OPCと同様の形態を示していた(Lillien& Raff., 1990)。BDNF(脳由来栄養因子)、NGF(神経栄養因子)、NT-3、CNTF(毛様体神経栄養因子)、EGF(上皮成長因子)についても検討を行ったが、それらは培養aOPCを十分に増殖させることができず、aOPCの性質を維持することができなかった。
以上のことから、FGF2は、生体内の形態を維持した培養aOPCを増殖させることができるため、第一培養はFGF2存在下で行った。
第一培養における培養aOPCの性質をより明らかにするために、OPCマーカー(NG2、PDGFRα、olig2、Sox10、nestin、CNPase)の発現をWB法により調べた(図2d)。その結果、培養aOPCは同タンパク量の成体ラット組織よりOPCマーカーの発現量が多く、培養aOPC がaOPCを反映した性質を持つことを示していた。
図2において、各パネルは以下の通りである。
(a)初代培養後に、FGF2、PDGFaaをそれぞれ単独で20ng/ml添加した場合の細胞数を計測した。培養後32、44、52、58日(DIV32、44、52、58)の細胞数を比較したところ、FGF2添加は、PDGFaa添加と比較して有意に細胞数が増加していた(***p< 0.0001、** p< 0.001、* p< 0.005)。
(b) FGF2濃度を変えて aOPC培養細胞を培養し、LDHアッセイを行った。FGF2濃度依存的に吸光度が高くなっていたことから、aOPC培養細胞の増殖にはFGF2濃度が関係している。
(c)上段:NG2抗体で免疫化学染色したaOPC培養細胞。左:FGF2存在下、右PDGFaa存在下。白線は20μm。下段:参考資料。左:生体内OPCの3Dイメージ、右:胎児期あるいは新生期由来のOPC培養細胞の写真
(d) ラット組織、培養 aOPCの WB: 左レーンから成体ラット脳組織海馬(HP)、大脳皮質(Co)、小脳(Ce)、培養aOPC継代3回(P3)、継代11回(P11)、検出抗体は各種OPCマーカー 上段からNG2(Millipore)、PDGFRa(Santa Cruz)、olig2(Millipore)、Sox10(Millipore)、nestin(Millipore)、CNPase(Millipore)。
(2)Aβの産生
培養aOPCの細胞数を増加させるFGF2濃度を変え、細胞内に存在するAPPの発現をWB法により調べた(図3a)。その結果、FGF2濃度に依存せず培養aOPCはAPPを発現し、0ng/ml FGF2では細胞内APP 量が増加していた(対20ng/ml FGF2, p <0.03)。
APPはα-またはβ-secretaseにより切断されて細胞外に可溶性APP(APPs)を放出することから、培養液中APPsの存在をAPP特異的22C11モノクローナル抗体による免疫沈降法とWB法を用いて調べた(図3b)。その結果、APPsは細胞外へ放出されるが、FGF2濃度よる顕著な変化はほとんど認められなかった。
α-またはβ-secretaseにより切断されたAPPはC末端断片が細胞膜上でさらにγ-secretaseによる切断を受ける。特に、β-secretaseによる切断を受けた APP C 末端断片(APP-C99)はγ-secretaseにより切断されてAβを産生することからAD発症に深く関与すると考えられている。Aβは細胞外へ放出されることから、培養液中Aβの存在を
Aβの主な分子種Aβ1-40、Aβ1-42のポリクローナル抗体で免疫沈降後、げっ歯類特異的Aβ抗体M3.2を用いてWB 法で調べた(図3c)。
その結果、Aβの主な分子種Aβ1-40、Aβ1-42が検出され、これらの発現はFGF2低濃度(0または1ng/ml)において顕著であった。LDHアッセイによる生細胞数の定量とELISAによるAβ1-40、Aβ1-42の定量を同時に行ったところ(図3d)、FGF2 低濃度時に単位細胞数当たりのAβ1-40、Aβ1-42産生量が高く、FGF2濃度依存的にそれらの産生量は減少し、WB法で得られた結果を支持するものであった。
さらに、ラット胎児由来培養神経細胞とELISAデータを比較した場合、0ng/ml FGF2における培養aOPCのAβ1-42産生量は5倍以上高かった(図3d中央)。更に、Aβ総産生量(本発明において、Aβ1-40 と Aβ1-42産生量を合算したことを示す)に対する凝集性が高いAβ1-42産生量の割合(Aβ42 ratio)においては、0ng/ml、1ng/ml FGF2添加で4倍以上高かった(図3d右)。1ng/ml FGF2は、培養神経細胞よりAβ1-40産生量が少ないものの(図3d左)、Aβ1-42を約2.7倍量産生したことから、0ng/ml FGF2と同程度まで示す高いAβ42 ratioを示した。また、5ng/ml FGF2以上の高濃度においては、培養神経細胞よりやや多いか同程度のAβ42 ratioが認められた。
次にAβ1-40のC末端を特異的に検出する抗体であるAβ認識抗体1-40を用いて培養液中Aβ1-40の免疫沈降を行い、同じ抗体を用いてWB 法で調べた(図3e)。その結果、FGF2低濃度でAβ1-40 コントロールペプチドと同じ位置にバンドが検出され、これまでの結果を支持するデータが得られた。
一方、HRPによる発色をしたWB用メンブレンをX線フィルムに長時間暴露(long exposure)したとき、5、20ng/ml FGF2でAβ1-40の下にバンドが検出された(*)。Aβ1-40のC末端抗体(Aβ認識抗体1-40)で検出され、Aβ1-40よりも分子量が小さいバンドは、α-secretaseとγ-secretaseによる切断を受けたp3、あるいはβ’切断とγ-secretase による切断を受けた産物(Aβx-40、いずれもnon-amyloidgenicな産物、図1参照)と考えられ、しかもFGF2 濃度依存的に増加していた。よって、FGF2 濃度の変化はAPPに対するγ-secretaseの切断様式を変える可能性が考えられる。即ち、FGF2が低濃度(0、1 ng/ml)時において、γ-secretaseはβ-secretaseによる切断を受けたamyloidgenicな APP C 末端断片(APP-C99)をより好んで切断する傾向にあり、一方、FGF2が高濃度(5 ng/ml 以上)時において、non-amyloidgenicなAPP C末断片(APP-C83やAPP-C89など)をより好んで切断する可能性を示唆している。
(3)α-、β-secretase に切断されたAPP C末断片の細胞内発現
FGF2 濃度の変化によるAPPプロセッシング変化についてさらに検討を行うため、細胞内APP C末断片(APP-Cxx)を調べるためWB 法を行った(Fig. 2f)。0ng/ml FGF2において、non-amyloidgenicなα-secretaseによるα-切断されたAPP (APP-C83)及び(その上部に)おそらくβ-secretaseによるβ’サイトで切断された(β-secretase 活性は BACE1 による)APP(APP-C89)の蓄積が確認された。
これらnon-amyloidgenic なAPP-C83及びAPP-C89は、0 ng/ml FGF2よりは少ないものの、1、5 ng/ml FGF2においても検出され、FGF2濃度依存的に減少した。一方、β-secretaseによるβ-切断を受けた amyloidgenic なAPP C末断片 (APP-C99)は、0ng/ml FGF2において少なかったが、FGF2濃度が高くなるに伴いバンドが強く検出された。これらの結果は、FGF2が低濃度(0、1ng/ml)であるとき、γ-secretaseは、amyloidgenicな APP C末端断片(APP-C99)をより特異的に好んで切断するという上記の発見を支持した。
一方、α-secretase活性の責任分子はまだ十分に解明されていないため、本発明ではnon-amyloidgenic pathway 産物を産生する際に作用するα-secretaseを探索することができる。amyloidgenic pathwayを回避するために、α-secretaseを活性化する作用はAD治療薬になると考えられ、α-secretaseの探索は治療薬の開発にも繋がる。
図3において、各パネルは以下の通りである。
a) ラット組織、培養aOPCの WB:左レーンから成体ラット脳組織大脳皮質(Cx)、海馬(HP)、以降 FGF2 濃度を変えた培養aOPC。
0、1、5、20、40 ng/ml、検出抗体は 22C11。
b) 培養aOPC外液を22C11で免疫沈降し22C11 抗体で検出したWB:左レーンから、培養aOPC外液FGF2 濃度 0、1、5、20ng/ml。
c) 培養aOPC外液をAβ1-40 抗体またはAβ1-42抗体で免疫沈降しAβ1-40、Aβ1-42を認識できるM3.2 抗体で検出したWB:左レーンから、培養aOPC外液をAβ1-40抗体で免疫沈降したFGF2濃度0、1、5、20ng/ml。以降はAβ42抗体で免疫沈降、右から2 レーンはヒトAβコントロールペプチドAβ42(h1-42)、Aβ40(h1-40)。各濃度 12nM、ペプチドの検出抗体は 4G8。
d) FGF2濃度を変えた培養aOPC(0、1、5、10、20、40ng/ml)の細胞外液中に放出される左:Aβ1-40、中央:Aβ1-42 を ELISA で定量。左レーン青いカラムは胎児由来神経細胞の初代培養。右:左:Aβ1-40 と 中央:Aβ1-42産生量を合算したAβ総生産量に対するAβ1-42の割合
e) 培養aOPC外液をAβ1-40 抗体で免疫沈降しAβ1-40抗体で検出したWB:左レーンから、培養aOPC外液をAβ1-40抗体で免疫沈降したFGF2濃度0、1、5、 20 ng/ml。以降Aβ1-40コントロールペプチド(12、60及び120 pM、並びに1.2、12及び120 nM)、上段は X 線フィルム5分、下段は4時間感光。
f) FGF2濃度を変えたラット胎児由来神経細胞と培養aOPC(0、1、5、20、40ng/ml)をAPP C末端抗体で検出したWB:左レーンからラット胎児由来神経細胞FGF2濃度0、1、5、20、40ng/ml、培養aOPCFGF2濃度0、1、5、20、40 ng/ml、APP-C99、 APP-C83。左上矢印:APP-C99バンド位置検出抗体はanti-APP C
(4)β-、γ-secretaseの発現
FGF2 濃度の変化は Aβ の産生量を変えたことから、β-、γ-secretase の細胞内発現をWB 法により調べた(Fig.3)。β-secretase 活性は BACE1 によるが、培養aOPCにはBACE1 が発現し、FGF2 濃度の増加により上昇傾向があるものの変化はほとんど認められなかった(図4)。γ-secretase 活性は PS1、Pen-2、Aph-1、Nicastrin の複合体によるが、培養aOPCにはこれらすべての発現が認められ、成体ラット組織海馬、大脳皮質と単位タンパク量当たりに含まれるγ-secretase 複合体よりもその発現量は多いかまたは同程度であった(図4)。一方、FGF2 濃度増加に伴いPen-2、Aph-1の発現量は増加する傾向にあったが、顕著な変化はなかった。また、他のγ-secretase 構成分子についても有意な変化は認められなかった。以上のことから、本発明は、強制発現をせずとも、β-、γ-secretase活性の詳細なメカニズムを検討できる有力なツールになると考えられる。
その一例としてβ-arrestin2の新たな発見を紹介する。Aph-1 関連タンパク質β-arrestin2 は AD ヒト死後脳において増加し、培養細胞を用いた強制発現あるいはサイレンシング実験によりγ-secretase の活性を上げて Aβ産生に関与していることが報告されている。本発明では、FGF2 濃度上昇に伴い Aβ の産生は減少するが、β-arrestin2 の発現量は増加していた。よって、従来 Aβ 産生のメカニズムは神経細胞を中心に研究されてきたが、成熟脳に由来する強制発現をしていない野生型aOPCの培養系においては必ずしも神経細胞と同様のメカニズムで Aβ を産生していないことを示唆していると考えられる
図4において、各パネルは以下の通りである。
ラット組織、培養aOPCのWB:左レーンから成体ラットCx、HP。以降 FGF2の濃度を変えた培養aOPC0、1、5、20、40 ng/ml。各レーン20 μg。検出抗体は上段からBACE1、PS1全長(PS1 full)、PS1 N末端断片(PS1 NTF)、PS1 C末端断片(PS1 CTF)、Pen-2、Aph-1、Nicastrin、β-arrestin2 。
(5)Notch の切断
γ-secretaseはAPPのみならず50種類以上の基質を切断することが知られている。しかしながら、γ-secretaseを構成する遺伝子のノックアウトや阻害剤を用いた研究においてその大部分はNotchノックアウト様のフェノタイプを示すことから、Notchが最も重要な基質と考えられている。Notchは細胞外領域で切断され、細胞膜上に残るC末端は細胞膜領域で切断を受けた後さらにγ-secretaseにより切断されて細胞質内にNICD(Notch intracellular domain)を放出する。OPCにおけるNotchシグナル活性化の意義は十分に解明されていないが、一般的に神経幹(前駆)細胞系においては、細胞分化を抑制し、未分化で増殖性の状態を保つと考えられている。また、強制発現系実験では、γ-secretase活性が上昇すると、NICD産生とAβ産生がともに増加することが知られている一方で、aOPCの内在性タンパク質で実際に作動しているメカニズムについては未だに不明である。
そこで成体ラット海馬培養aOPCにおけるNotchと NICD(cleaved Notch)の発現について検討したところ、FGF2 濃度の増加に伴いNotchの発現量が増えNICD 量が増加していた(図5a)。即ち、FGF2 濃度変化により細胞外に放出されるAβ産生量はNICD産生量とは逆の動態を示していた(図5a, b)。FGF2 濃度変化は細胞の増殖あるいは生存能に影響を与えてNotch発現量やシグナル量を変化させていると考えられる。培養aOPCはγ-secretaseの基質選択性やNotchリガンドとNotchシグナル産生を検討することも可能である
以上の結果を総合的に判断して、培養成体ラットaOPCではAPPの切断に関し以下のような事が生じていると考えられる。FGF2低濃度(特に0 ng/ml)において、細胞外Aβがより多く検出され、細胞内においてAPP-C83/APP-C89の蓄積が検出されたのは、α-、β-secretaseは活性を持ちAPPを切断するが、γ-secretaseはAPP-C83/APP-C89よりもAPP-C99をより選択的に切断するため、Aβ産生が増加していると考えられる。さらに、aOPCは、FGF2低濃度(特に0 ng/ml)時に、凝集性の高いAβ1-42をより多く産生する。
FGF2濃度増加に伴い、細胞外で検出されるAβは低下し、Aβより分子量が小さいバンドが検出され、さらに細胞内APP-C99がより多く検出されるのは、以下の理由が考えられる。1)基質であるAPPの発現量が低下したため、Aβ産生が低下した、2)APP-C99に対するγ-secretaseの基質選択性が低下したためにAβ産生が低下し、APP-C83/APP-C89に対するγ-secretase活性が相対的に高くなった、つまりnonamyloidgenic pathway嗜好性が増加した、3)顕著な発現量変化はないが、β-secretaseの活性が低下した。
また、FGF2濃度変化は、γ-secretaseの発現量に顕著な変化を誘導せず、AβとNICD産生量の相関関係から判断して、γ-secretaseの活性に大きな変化を与えないと考えられる。しかしながら、その基質特異性は、少なくともAPP切断経路を見る限り、FGF2濃度変化によって顕著に変化していたことから、本発明はそれら機序、意義、治療法のスクリーニングに有用と考えられる。
図5において、各パネルは以下の通りである。
a) 基質によるγ-secretase 活性の違い:上段はγ-secretaseにより細胞外へ放出された Aβの検出結果を示す。FGF2 濃度を変えた培養 aOPC(0、1、5、20、40ng/ml)の細胞外液を抗体4G8で免疫沈降をしてM3.2で検出した WB;中段は細胞内に放出されたNotch C末端断片であるNICD(cleaved Notch)の検出;下段は細胞内に発現しているNotch 全長。
b) 基質によるγ-secretase活性の模式図:培養aOPCはFGF2濃度依存的に細胞数が増加する。一方FGF2 濃度が変化しても、異なる基質でγ-secretase 活性が認められる。
<考察>
成体ラット海馬培養aOPCは、Aβ の前駆体である APP を発現していた(図3a)。その発現量はFGF2濃度の低下により増加し、ラット脳と同等又はそれ以上であった。
一方でα-またはβ-secretaseにより切断され細胞外へ放出されるAPPs は、FGF2濃度による顕著な変化は認められなかった(図3b)。γ-secretase各コンポーネントの発現量もまたFGF2濃度変化による大きな影響を受けていなかった(図4)。しかしながら、FGF2シグナルは、培養aOPCのγ-secretaseが産生したNotchシグナル(NICD 産生能)、Aβ産生能、Aβ42 ratio、またnon-amyloidgenic pathwayに深く関与していた。
これらの結果は、本発明の培養aOPCシステムが、1)遺伝子変異導入もしくは関連遺伝子を強制発現させることなく、Aβを産生するγ-secretaseが活性化されるシステムを持つこと、2)また、生理的条件変化によりNotchシグナルやAβ産生を調節することが可能であること、3)一方で実際考えられているより、内在性のγ-secretaseの制御機構が複雑であることを示唆している。
1991 年にアミロイドカスケード仮説が提唱されて以降、Aβ 産生は発症のメカニズム解明、AD 治療薬の開発の観点から非常に関心が高い研究課題であり、多くの研究者が研究に取り組み、多くの製薬会社は様々な観点から開発を行ってきたが、残念ながら決定的な治療法は未だ生み出されていない。
これまで Aβ 産生は神経細胞が主と考えられてきたが、神経細胞以外のグリア細胞もまたAβ産生可能である1)。しかしながら、本発明を除いて現在まで検討されてきたのは、胎児または新生児由来の初代培養グリア細胞であり、成体脳に由来するオリゴデンドロサイト系譜細胞(NG2陽性またはolig2陽性である細胞を示す)に関する検討は、本発明が初めてである。
また、家族性ADにおいて Aβ産生に関連する遺伝子変異が発見されたことから、Aβ産生のメカニズムは、関連遺伝子の変異をヒト神経芽細胞腫由来の増殖細胞などに導入したin vitro 系、あるいはマウスに導入したトランスジェニックマウスなどの in vivo系を用いて研究されてきた。これらの人工的モデル系の問題点は様々ある。例えば過剰発現(内在性の何倍ものヒト型タンパク質の発現)や、ADの割合として僅かな家族性遺伝子変異を導入した実験モデル(ADの95%は弧発性)が大半を占める点などは常に指摘されてきた問題である。さらに、過剰発現させるために選択する神経細胞特異的プロモーターの妥当性もまた検討課題である。
本発明は、成体脳に由来する増殖可能な培養aOPCを用いて、性質維持を制御可能にした培養条件(無血清培地)の下で、遺伝子発現等の人工的発現システムを使用せずに、内在性タンパク質によるAβを産生するメカニズムを検討できる、新規実験モデルである。
実験モデルとして十分である根拠は、(i)Aβ産生能力が十分あること、(ii)Aβ産生にかかわるβ-、γ-secretaseを発現しWB 法による検出が可能であること、(iii)発達期ではなく成体期由来の脳細胞を使用すること、(iv)増殖可能であり実験に十分なサンプル量が確保できること、(v)遺伝的操作がないことから、弧発性ADのモデルになること、(vi)FGF2 以外にも様々な Aβ 産生条件をスクリーニングできること、などが挙げられる。 また、成体由来の培養aOPCがAβを産生し、生理的環境下に存在するFGF2濃度変化がβ-、γ-secretaseの発現量に大きく影響せずAβ産生に影響を与えることは、aOPC機能の点から見ても全く新規の発明である2)。本発明を用いることによって、今後新たな科学的原理が明らかにできる可能性がある。
AD 治療薬のターゲットとして、γ-secretase活性を抑制してAβ産生量を低下させるγ-secretase阻害薬が開発されてきたが、生命活動に重要なNotchシグナルまで阻害することが副作用と考えられ問題となっている3)。しかし、成体脳由来培養aOPCを用いた本発明では、FGF2の濃度が1ng/ml 以下ではAβ産生量が増加し、Aβ42 ratioが胎児由来培養神経細胞より約4倍高くなる。一方、Notch 切断(=NICD 産生能)はFGF2が20ng/ml以上でより活性化される新規知見を得ており、γ-secretase阻害薬がNotchシグナル抑制により副作用をもたらすと現在考えられていることについては、再検討・評価に発展する可能性がある。
Aβ リガンドを使った PET 研究では、Aβ 産生は AD 診断時前後にピークを迎えその後脳内では減少すると考えられている。今回 Aβ 産生の条件として用いた FGF2 は、ADヒト死後脳において増加していると報告されているが 4), 5)、診断前の FGF2 の脳内変化はまだ明らかになっていない。本研究は、診断前の超早期における脳内変化についてFGF2の検討が今後重要であることを示している。
また、FGF2 の持続的低下あるいは乱高下を引き起こす環境は、aOPCによる Aβ 産生を通じて神経変性を誘導するイニシエーションファクターになり、弧発性 AD の促進要因になる可能性がある。FGF2 の乱高下はADのリスクファクターである脳損傷やボクサー脳などで生じる可能性がある。
FGF2 低下は、うつ病・うつ状態と相関するとされ、うつ病はADのリスクファクター6)であることから、うつ病脳内変化はAD発症前段階の脳を知る上で重要な手掛かりに繋がり、うつ病死後脳において、OPCマーカーolig2の密度が低下している点からも7)、OPCはうつ病治療のターゲットにもなり得ると考えられる。これまでのうつ病治療薬は、モノアミンを回復させることが主な作用点であったが、投薬期間が長く寛解までに時間がかかる、またはその途中再燃する確率が高いことなど、十分な治療効果を得ているとは言いがたい状況であった。本アッセイ系は、FGF2を始めとする脳内物質の変化に対するOPCの反応とそのメカニズムを解析し、OPCの状態を正常に戻す、あるいはOPCが失った機能を補填する等の新たな治療薬を探索することが可能である。以上のことから、本発明においては、神経細胞のみならずグリア細胞もまた AD あるいはうつ病研究の対象にすることが治療薬開発のブレイクスルーになることを提唱する。
実施例1中の参考文献
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培養aOPCは大量に得ることができるため、マイクロアレイによる遺伝子発現解析やタンパク質発現を確認することができる。本発明者は、培養aOPCを用いてタンパク質発現の検討を行い、Plexin B3が新たなaOPCマーカー候補になり得る可能性を見出した。その知見をin vivo研究へフィードバックしたところ、Plexin B3陽性細胞がolig2陽性であり、且つ分裂細胞である新たなaOPCサブタイプとして実際に生体内において存在していることを明らかにした。Plexin B3はタイプI膜タンパク質でsemaphorin 受容体のPlexin A-DサブファミリーのうちBファミリーに属している。SemaphorinやPlexinはがん細胞に発現していることから、グリオーマ等がん研究の観点でアプローチされてきたが1)、Plexin B3に関しては報告が少ない2)。培養aOPCは、Plexin B3を発現する新たな解析システムであり、Plexin B3のタンパク質発現がFGFシグナルに調節されていることを明らかにし、さらにはPlexin B3発現細胞がAD研究の点からも注目すべき対象であることを示した。
<方法>
(1)培養aOPCにおけるPlexin B3発現
実施例1の方法(3)に従い、P3と P11の培養aOPCを回収してサンプルを調製し、Plexin B3のタンパク発現についてWB法を行い、成体ラットHP、 Co、 Ceと比較した。検出抗体はPlexin B3 (R&D)を用いた。
(2)FGFシグナルとPlexin B3発現変化
FGF2濃度変化とPlexin B3発現量の関連を調べるために、実施例1と同様の方法で、FGF2の濃度を変えた培養aOPCを準備し、実施例1の方法(3)と同様にサンプル調製を行った。さらに、FGF受容体阻害剤である PD173074 (Calbiochem)(50nM、500nM)を24時間添加し、細胞を回収後、実施例1の方法(3)と同様にサンプル調製を行った。調製したサンプルを用いて、WB法によりPlexin B3の検出を行った。検出抗体はPlexin B3 (R&D)を用いた。
(3)培養aOPCのPlexin B3の免疫化学染色
実施例1の方法(2)と同様に、培養aOPCをpoly-D-lysineでコーティングしたカルチャースライド(BioCoatTM)に撒いて2-7日培養を行い、固定した後免疫化学染色を行った。使用した一次抗体はPlexin B3 (R&D)、NG2 (Millipore)、olig2(Millipore)。2次抗体は、Hoechst、Alexa488、Alexa594、Alexa647。画像は、共焦点レーザー顕微鏡で(LSM5 Exciter、LSM780(Ziss))撮影した。
(4)成体ラット脳の免疫組織染色用サンプルの作成
成体ラット(4週令以上)に50mg/kg Bromodeoxyuridine (BrdU) を腹腔内投与し、8時間以上経過した後50mg/kgソムノペンチル麻酔下でPBSによる脱血を行い、さらに冷却した4% パラホルムアルデヒド/PBSで灌流固定を行った。断頭後脳を取り出し、4% パラホルムアルデヒド/PBSで後固定を行い、30%スクロースで脱水後Tissue-Tek OCT compound 4583 (Sakura Finetechnical Co)を使用して包埋した。-80℃で凍結した脳組織はクライオスタットで20〜40μmの厚みにスライスして、スライドガラス(Matsunami)に張り上げた。張り上げたスライドガラスは、染色するまで乾燥させないように-80℃で保存する。
(5)成体ラット脳におけるPlexin B3の免疫組織染色
Plexin B3とBrdUの共染色を行う場合、前処理を行う。サンプルを1NHClで氷上10分インキュベートした後、2NHClで室温10分、さらに37℃で20分処置をした。PBSで洗浄後、0.1Mホウ酸バッファーで室温12分インキュベートして0.05%Tween/PBS(PBS-T)で10分3回洗浄を行った(以上BrdUを染色する場合の前処理)。抗原を賦活するために、TRS pH9(Dako)で65℃、30分処理し、PBS-Tで10分3回洗浄を行った。以降洗浄はPBS-TあるいはT-TBSで行った。Image-IT FX Signal Enhancer(Thermo)を室温で30分処理した後、10分3回洗浄を行った。3%BSA/T-BSTで1時間以上ブロッキングした後、1次抗体を4℃あるいは室温で一晩以上反応させる。1次抗体は ラットBrdU (Serotec)、Plexin B3 (R&D)、M3.2(Biolegend)、NG2(Millipore)を使用した。2次抗体には、Alexa488、Alexa594、Alexa647、 Hoechst、TOPRO-3を使用した。細胞数を計測するために、共焦点レーザー顕微鏡で(LSM5 Exciter、LSM780(Ziss))撮影した。細胞数計測8,000<。FGF2濃度の違いによる陽性細胞数の割合を比較するために、全細胞核数に対する染色細胞の割合を算出した(陽性割合=陽性細胞数/全細胞核数)。
<結果>
(1)aOPCにおけるPlexin B3発現
第一培養の性質をさらに明らかにするためにWB法を行った過程で、培養aOPC にPlexin B3が発現していることを見出した(図6(a)左。第一培養を免疫化学染色すると、Plexin B3強陽性細胞(矢頭)と弱陽性細胞(矢印)が存在し、両細胞は全てolig2陽性であったことから、それらはOPCであることが示された(図6(a)右)。第一培養におけるPlexin B3強陽性細胞の割合は1.07±0.27%、そのうちPlexin B3強陽性/ NG2強陽性は0.20±0.01%、Plexin B3強陽性/ NG2弱陽性は0.86±0.33%であり、90%以上はPlexin B3弱陽性/ NG2強陽性が占めていた。
第一培養の条件であるFGF2濃度を変えると、Plexin B3の発現量はFGF2濃度低下により著しく増加していた(図6(b)左)。この結果は、FGF2がPlexin B3タンパク質発現に関与している可能性を示したことから、FGF2がもたらすFGFシグナルとPlexin B3の関係を検討するために、FGF受容体阻害剤であるPD173074を培養aOPCに添加した。
その結果、Plexin B3発現量は阻害剤の濃度依存的に増加し(図6(b)右)、FGFシグナルにより調節されていることを示していた。
次に、FGF2を除いた細胞(0ng/ml FGF2)を用いて、Plexin B3の免疫化学染色を行った(図6(c))。その結果、Plexin B3強陽性細胞の割合は29.5±6.92%であり(c:下段、矢印、矢頭)、第一培養(20ng/ml FGF2)と比較して約30倍増加していた(p <0.003)。そのうちPlexin B3強陽性/ NG2強陽性は8.13±1.52%(矢頭)、Plexin B3強陽性/ NG2弱陽性は28.5±5.49%(矢印)であり、これらも第一培養と比較してそれぞれ有意に増加していた(p <0.002、p <0.003)。その一方で、Plexin B3弱陽性/NG2強陽性の割合は21.1±1.94%に低下していた(p <1x10-5)。さらに、Plexin B3強陽性細胞は弱陽性と比較してAPPの蛍光強度が強い傾向を示した。以上のことから、FGF2はPlexin B3の発現を調節するとともに、APPの発現量にも影響を与えていると考えられる。
図6において、各パネルは以下の通りである。
(a) 左:ラット組織、培養 aOPCの WB: 左レーンから成体ラット脳組織海馬(HP)、大脳皮質(Co)、小脳(Ce)、培養aOPC継代3回(P3)、継代11回(P11)、検出抗体はPlexin B3。
右:培養 aOPC 免疫化学染色: Merged(重ね合わせ像)、Plexin B3 (緑)、NG2(赤)、olig2(灰色)、Nu(核:青)。矢頭はPlexin B3強染色細胞、矢印はPlexin B3弱染色細胞を示す。白線は20μm。
(b)培養aOPCをPlexin B3抗体で検出したWB:左:左レーンから成体ラット脳組織大脳皮質(Co)、海馬(HP)、FGF2濃度を変えた培養aOPC 0、1、5、20、40 ng/ml。右:左レーンから成体ラット脳組織大脳皮質(Co)、海馬(HP)、Cont; 20ng/mlFGF2で培養、 ContにPD173074を50nM、500nM添加。各レーン20 μg。
(c) 20ng/ml、0ng/ml FGF2 で培養したaOPCの免疫化学染色: Merged(重ね合わせ像)、Enlarged(Merged一部画像を拡大)、Plexin B3 (緑)、NG2(赤)、APP(灰色)、Nu(核:青)。矢頭:Plexin B3強陽性/NG2強陽性細胞、矢印: Plexin B3強陽性/ NG2弱陽性細胞。白線は20μm。
(2)in vivo Plexin B3陽性細胞
培養aOPC細胞が生体内の現象を的確に再現し、研究の有効な手段であることを明らかにするためには、培養aOPC細胞を用いて得られた結果をin vivo研究で確認する必要がある。培養aOPCにはPlexin B3が発現していたことから、in vivo Plexin B3陽性aOPCの存在について検討を行った。OPCの特徴は、olig2陽性で増殖可能であることが挙げられる。生体内で増殖可能であることを検討するために、増殖細胞に取り込まれるBrdUを予め投与した成体ラット脳を用いて、Plexin B3の免疫組織染色を行った(図7(a))。その結果、神経細胞より直径が小さくPlexin B3陽性且つolig2陽性細胞が脳全体に存在していた。またこれらPlexin B3陽性細胞の一部はBrdUと共染色されることから(図7(a)矢印)、Plexin B3陽性細胞は増殖可能であることが明らかになった。以上より、Plexin B3はolig2陽性で増殖可能なOPCのマーカーの一つであると考えられる。
(3)in vivo aOPCにおけるAPP発現
実施例1および図6で示したように、培養aOPCにはAPPが発現していた。このことから、in vivo aOPCにおけるAPP発現を検討するために、成体ラット脳組織を用いて免疫組織染色を行った(図7(b))。Plexin B3強陽性(矢印)またはNG2強陽性細胞(矢頭)であるaOPCは、APPあるいはその一部であるAβを認識するM3.2抗体陽性であったことから、生体内においてもaOPCはAPP を発現していた。
図7において、各パネルは以下の通りである。
(a)BrdUを投与した成体ラット脳組織の免疫組織染色:Plexin B3 (緑)、BrdU(赤)、Nu(核:灰色)、Merged(重ね合わせ像)、矢印:Plexin B3強陽性細胞。白線は20μm。
(b) 成体ラット脳組織の免疫組織染色:Plexin B3(赤)、NG2(灰色)、AβあるいはAPP認識抗体M3.2(緑)、Nu(核:青)、Merged(重ね合わせ像)。矢印:Plexin B3強陽性細胞、矢頭:NG2強陽性細胞。白線は10μm。
<考察>
培養aOPCを用いることによって、成体ラット脳内にPlexin B3を発現するaOPCサブタイプが存在していることが明らかになった。本発明者は正常ヒト死後脳の免疫組織染色を行い、Plexin B3陽性かつOPC様形態を示す細胞をすでに見出している。このことは、培養aOPCが生体内OPCの性質を反映し且つヒト研究への応用も可能なことを示し、研究ツールとして有効であることを証明していると考えられる。
生体内Plexin B3強陽性細胞はBrdUを取り込むことから、自己増殖作用があるaOPCである一方、NG2強陽性aOPCからも由来する可能性が高い。その理由の一つは、培養aOPCにおいて、FGF2濃度低下によりPlexin B3強陽性/NG2強陽性、あるいはPlexin B3強陽性/ NG2弱陽性の割合が有意に増加すること、特に0ng/ml FGF2で培養したとき、Plexin B3強陽性細胞において細胞体のNG2蛍光強度が低下し、プロセスの一部のみ共染色されている遷移像らしき細胞(図6c)がよく観察されるからである。生体内においても、Plexin B3強陽性aOPCは、脳内環境に依存してNG2強陽性aOPCから発生していると考えられる。
FGF2濃度低下により、培養aOPCのPlexin B3発現とその細胞数が増加し、Plexin B3強陽性細胞におけるAPP蛍光強度はNG2強陽性細胞より強くなっていた(図6)。APPはAβ前駆タンパク質であることから考えると、Plexin B3強陽性細胞は、実施例1で示したFGF2濃度低下がAβ産生を増加させることに対して寄与している可能性が高いと考えられる。以上より、これまで十分に研究されていないPlexin B3の生体内の役割、aOPCにおけるその機能等、今後さらに培養aOPCを用いて生体内機能と疾患(例えば、Aβ産生)との関連を明らかにできると考えられる。
実施例2中の参考文献
1. Li X, Lee AY. (2010 ) J Biol Chem., 285, 32436-32445
2. Worzfeld T, Rauch P, Karram K, Trotter J, Kuner R, Offermanns S. (2009) Mol Cell Neurosci., 42, 372-81.
実施例1では、培養aOPCが細胞外へAβを放出することを示した。これまで一般に行われてきたAβ産生を検討するin vitroシステムは、APP、γ-secretase等を大量に強制発現させるか、家族性アルツハイマー病遺伝子変異を導入した培養神経細胞であり、γ-secretase阻害効果や治療薬評価に使用されてきた1)。γ-secretase阻害剤であるDAPTは、従来研究によりAβとNICD産生を同時に抑制することが知られている。従来型によるシステムで見出されたγ-secretase阻害剤DAPTが、当該培養aOPCのAβ産生システムに及ぼす影響について検討を行った。
<方法>
実施例1の方法(5)と同様に、第一培養で2〜4日間培養した後、FGF2 濃度 0、1、5、20、40ng/ml で4日以上培養し、γ-secretase阻害剤 (3,5-Difluorophenylacetyl)- Ala-Phg-OBut (DAPT)(ペプチド研究所)100nMを1日おきに2回添加した。最終添加から24時間後に培養液を回収し、800g x5分遠心した後上清を回収して実験に使用するまで-80℃に保管した。細胞外Aβの検出は、実施例1の方法(6)と同様の方法で行った。培養液を回収した細胞は、実施例1の方法(2)と同様に細胞数を計測し、実施例1の方法(3)と同様にWB法のサンプルを調製した。
<結果と考察>
実施例1に示したFGF2濃度変化によるAβ産生について、γ-secretase阻害剤DAPTの効果を検討した(図8(a)(b))。0ng/ml FGF2に対し、1、5、20ng/ml FGF2は有意にAβ産生量が低下し、実施例1で示した結果を再現していた(*p<0.01)。また、DAPTを添加した群においても同様のFGF2濃度による有意なAβ産生量低下を示した(*p<0.01)。一見すると、DAPT添加群ではAβ産生が低下しているようにみえるが、DAPT添加は細胞数を減少させる傾向があるため、WBの結果を培養上清回収時に計測した細胞数で補正した。その結果、0、1ng/ml FGF2においてDAPT添加はAβ産生量に影響を与えていなかった(図8(a)(b)の左)。一方、DAPTは5ng/ml以上のFGF2濃度でAβ産生を有意に抑制した(#p<0.001)。
他のγ-secretase基質であるNotchに関しても同様に、実施例1で示したようにFGF2濃度依存的にNICD産生が増加し、DAPT非存在下あるいは存在下各群で同様の結果を得た(*p<0.005)。DAPTは、40ng/ml FGF2においてNICD産生に対する抑制効果を示したが(#p<0.0001)、それ以外のFGF2低濃度側ではその効果が認められなかった(図8(a)(b)の右)。まとめると、FGF2高濃度時においては、Aβ、NICD産生に対してDAPTは有効であったが、FGF2低濃度時においては、γ-secretase阻害作用は認められなかった(図8(c))。
既存のγ-secretase阻害剤には、本発明のスクリーニング系においてAβ分泌阻害効果が認められなかったことから、培養aOPCは、強制発現せずに細胞自体がもつ生体に近い環境下でAβを産生させ、その産生を抑制する新規治療薬の開発と、細胞への副作用を検討する新規アッセイ系になることが示された。
図8において、各パネルは以下の通りである。
(a) FGF2濃度を変えた培養aOPC(0、1、5、20ng/ml)と各濃度にγ-secretase阻害剤100nM DAPTを添加した細胞外液中に放出されるAβと細胞内NotchのWB:左図:培養aOPC外液をAβ1-40で免疫沈降しAβ1-40を認識できるM3.2 抗体で検出した:左レーンから、FGF2濃度0、1、5、20ng/ml、100nM DAPTを添加したFGF2濃度0、1、5、20ng/ml。右から2 レーンはヒトAβコントロールペプチドAβ42(h42)、Aβ40(h40)。各濃度 12nM、ペプチドの検出抗体は 4G8。右図:上段は細胞内に発現しているNotch 全長、下段は細胞内に放出されたNotch C末端断片であるNICD(cleaved Notch)の検出。各レーン20μg。
(b)上記(a)の定量:左図: Aβ産生量を細胞数で補正し、0ng/ml FGF2におけるAβ産生量を100%とした時の各条件におけるAβ産生量の割合。DAPT(-)あるいはDAPT(+)における0ng/ml FGF2と各群FGF2濃度を比較した(*p<0.01)。DAPTは、5ng/ml以上のFGF2濃度でAβ産生を抑制した(#p<0.001)。
右図:NICD産生量をNotch発現量で補正し(NICD/Notch full)、40ng/ml FGF2におけるNICD/Notch fullを100%とした時の各条件における割合。DAPT(-)あるいはDAPT(+)における40ng/ml FGF2と各群FGF2濃度を比較した(*p<0.005)。DAPTは、40ng/ml FGF2のみでNICD産生を抑制した(#p<0.0001)。
(c)培養aOPCに対するDAPTの効果を示す模式図:左:Aβ産生条件では、DAPTの効果が認められない。右:NICD産生条件では、DAPTの効果が認められる。
実施例3中の参考文献
1. De Strooper B, Vassar R, Golde T. (2010) Nat Rev Neurol., 6, 99-107

Claims (11)

  1. 成体脳由来のOPCを線維芽細胞増殖因子の濃度調節下で培養することを特徴とする、アミロイドβ産生能を獲得した成体脳由来OPCの製造方法。
  2. アミロイドβがアミロイドβ1-42である請求項1に記載の方法。
  3. 線維芽細胞増殖因子がFGF2である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 線維芽細胞増殖因子の濃度が0〜40ng/mlから選ばれる少なくとも2つの濃度である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 20ng/mlの濃度で第一の培養を行った後に、0〜5ng/mlの濃度でさらに第二の培養を行うものである請求項4に記載の方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法により得られる、アミロイドβ産生能を獲得した成体脳由来OPC。
  7. 請求項6に記載の細胞を含む、認知症モデル細胞。
  8. 認知症がアルツハイマー病である請求項7に記載のモデル細胞。
  9. アミロイドβ産生のメカニズムを検討するための請求項5〜7のいずれか1項に記載の細胞。
  10. 請求項6〜9のいずれか1項に記載の細胞に候補物質を接触させてアミロイドβを検出し、得られる検出結果を指標として認知症治療薬をスクリーニングする方法。
  11. 認知症がアルツハイマー病である請求項10に記載の方法。
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