JP2016202096A - 加工液卵の作製方法及び加工液卵 - Google Patents
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Abstract
【課題】未殺菌液卵のつながり度に近い加工液卵を作製する方法及び加工液卵の提供。
【解決手段】加熱工程及び殺菌温度保持工程を有する加工液卵を作製する方法において、液卵を殺菌温度まで通電加熱する加熱工程30と、設定温度に加熱された液卵を殺菌温度に対して+0.5℃以内の範囲内で保持する殺菌温度保持工程40と、を含み、未殺菌液卵のつながり度に近い加工液卵を作製する方法。前記方法により作製された加工液卵。
【選択図】図1
【解決手段】加熱工程及び殺菌温度保持工程を有する加工液卵を作製する方法において、液卵を殺菌温度まで通電加熱する加熱工程30と、設定温度に加熱された液卵を殺菌温度に対して+0.5℃以内の範囲内で保持する殺菌温度保持工程40と、を含み、未殺菌液卵のつながり度に近い加工液卵を作製する方法。前記方法により作製された加工液卵。
【選択図】図1
Description
本発明は、加工液卵の作製方法及び加工液卵に関する。
液卵の殺菌方法については、従来、様々な方法が採用されている。例えば、一般生菌数を低減する目的で欧州を中心として、ホモゲナイズ処理した後に68℃やそれ以上の高温で殺菌処理するという方法が提案されている。また、一般的には、食中毒菌であるサルモネラを死滅させる条件である60℃で3.5分またはそれと同等以上の条件での殺菌が行われてきた。
ホモゲナイズ処理自体は物性に大きな影響を与えるものであるが、その処理をすることなく比較的低温の殺菌を行ったとしても、液卵は熱に対して変性しやすく、加熱により殺菌された液卵において、生卵と同じような物性(本発明において、「つながり度」という指標を設けた。なお、未殺菌液卵の値は通常90%以上であり、一般に販売されている殺菌全卵の値は1%以下である。)を有するものを作り出すことは、これまでの方法では難しかった。
液卵の殺菌工程は、主として、液卵を殺菌温度まで上げる加熱工程と、殺菌温度を一定時間保持する殺菌温度保持工程との2つの工程に区分される。これまで、加熱工程については、プレートやチューブラー等の温水による間接加熱が主に採用され、殺菌温度保持工程については、断熱材や温水ジャケットによる保温が主に採用されている。
加熱工程においては、プレートやチューブラー等による間接加熱であるため、温水の温度を目標加熱温度よりも高く(例えば1℃から2℃程度)設定しなければ、目標の殺菌温度に液卵温度を上昇させることはできなかった。そのため、プレートやチューブラーに接している液卵又は近傍の液卵は目標の殺菌温度よりも高い温度となってしまい、必要温度以上の過加熱状態となって、未殺菌液卵と同じような物性が得られない(つまり、卵のつながり度が低くなってしまう)という問題があった。
一方、殺菌温度保持工程においては、加熱してそのまま保持する場合には、保持配管からの放熱による液卵の温度低下が避けられないため、保持出口での殺菌温度を確保するために、保持中に低下する分だけ保持入口温度を高くする必要があった。そのため、当然必要温度よりは高くなり、過加熱状態となった。そこで、保持出口での温度低下を抑えるために、様々な対策がなされてきた。断熱材による保温の場合は、断熱材の材質や厚みを変えることで温度低下をある程度少なくすることができるが、その効果は十分ではなかった。また、温水ジャケットによる保温の場合は、温水温度を上げることにより保持出口での温度低下を小さくすることができるが、温水を殺菌温度よりも高くする(約1℃から2℃程度)ことが必要であり、そのため、配管に接している液卵又は近傍の液卵は殺菌温度よりも温度が高くなってしまい、必要温度以上の温度による過加熱状態となって、未殺菌液卵と同じような物性が得られない(つまり、卵のつながり度が低くなってしまう)という問題は解決できなかった。
殺菌条件を、50〜60℃で2時間〜3.5分とすることで、未殺菌液卵に近いつながり度の加工全卵を作製する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法は、低温度で長時間又は高温度で短時間という条件の範囲で殺菌することを意味している。著者らは、一般的に用いられているサルモネラの殺菌条件である60℃3.5分以上に限りなく近い条件、すなわち高温度で短時間の条件で殺菌し、且つ、未殺菌液卵と同じようなつながり度を有する殺菌された液卵の作製方法を検討してきたが、本件の実質的な目標とする殺菌条件である59℃10分以上の条件においても、加熱工程及び殺菌温度保持工程での殺菌温度の正確な温度管理がなされないと、液卵の熱によるダメージが多くなるため、未殺菌液卵と同じようなつながり度を得ることは難しかった。
そこで、本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、種々検討した結果、割卵した液卵を設定温度に対して+0.5℃以内の正確な温度管理を実現することで、未殺菌液卵と同等又は近いつながり度が得られることを見出し、本発明に至ったものである。本発明は、より未殺菌液卵、すなわち生卵に近い加工液卵を作製する方法及び加工液卵を提供することを主目的とする。
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
本発明にかかる殺菌された加工液卵の作製方法は、加熱工程及び殺菌温度保持工程を有する加工液卵を作製する方法において、殺菌温度まで通電加熱する加熱工程と、殺菌温度で保持する殺菌温度保持工程と、を含み、液卵の温度を殺菌温度に対して+0.5℃以下の範囲内で制御することを特徴とする。
加熱工程において、通電加熱を使用することで液卵が均一に加熱されるため、目標の殺菌温度に確実に加熱することができ、間接加熱のように殺菌温度以上の過加熱状態になることを防止することができる。そのため、過加熱状態による液卵のつながり度の低下を抑えることができる。また、殺菌温度保持工程において、殺菌温度に対して+0.5℃以内に維持することによって、同様の殺菌温度に対してより高い温度(過加熱状態)に加熱・保持された液卵と比較してつながり度の高い加工液卵を得ることができる。なお、「殺菌温度」とは、殺菌において必要とされる加熱温度であり、殺菌保持工程の出口温度のことである。通常、殺菌保持工程を通じてこの殺菌温度を得るためには、殺菌保持工程の入口温度を出口温度よりも高い温度になるように設定する。液卵でなされる「殺菌」とは、すべての微生物を対象とするものではなく、食中毒菌であるサルモネラを死滅させる条件でなされるものをいう。また、「つながり度」とは、「ガラスビーカー300ccに沸騰水300gを入れ、スパーテル(アズワン「ラボランスプーン210mm」)にて5回転/10秒間の速度で撹拌して、5秒後に水に対して5%重量の加工液卵を5秒間で流し入れて加工液卵を凝固させた後、20分間静置した時の上澄み液のセル厚(光路長)10mmに対する波長600nmの光の透過率」をいう。なお、未殺菌液卵の値は通常90%以上であり、一般に販売されている殺菌全卵の値は1%以下である。
また、さらに好ましくは、殺菌温度に対して+0.3℃以内に保持するとよい。かかる範囲内に維持することによって、さらに、つながり度の高い殺菌された加工液卵を作製することができる。
また、本発明にかかる殺菌された加工液卵の作製方法において、前記の殺菌温度保持工程は、液卵を直接通電加熱して保持することを特徴とするものであってもよい。通電加熱によって液卵全体を均一の温度に保持することができるので、間接加熱のように配管に接している液卵又はその近傍の液卵部分が過加熱状態になることを防止でき、部分的に殺菌温度より高い液卵が発生することが低減される。また、放熱による液卵の温度低下に対して素早く出力調整が行なうことができるため、細かい温度制御が可能となり、より均一な温度保持が可能となる。
本発明にかかる殺菌された加工液卵の作製方法において、前記殺菌温度保持工程は、保持配管を直接通電加熱することで保持することを特徴とするものであってもよい。液卵の温度を一旦殺菌温度まで上げて、殺菌温度と同じ温度の保持配管内で保持すれば、液卵の温度が低下することはない。保持配管を直接通電加熱することで、保持配管からの放熱による温度低下に対して細かい出力調整が行われ、保持配管が殺菌温度と同じ温度に調整される。このため、より均一な温度保持が可能となる。
さらに、本発明にかかる殺菌された加工液卵の作製方法において、前記殺菌温度保持工程は、保持配管を、水よりも比熱が小さく、かつ、熱伝導率が小さい熱媒体、例えば、空気等の雰囲気下で保持することを特徴とするものであってもよい。熱媒体の比熱が小さいので、熱量に対して温度コントロールが容易であり、水と比較して容易に殺菌温度と同じ温度にすることができる。また、熱媒体の熱伝導率が小さいので、仮に熱媒体の温度が高くなった場合でも、水と比較して液卵に必要以上の熱が伝わらず、過加熱状態になりにくい。このため、均一な温度保持が可能となる。
さらに、本発明にかかる殺菌された加工液卵の作製方法において、前記殺菌温度保持工程は、前記保持配管を大気圧より低い圧力を有する空間の雰囲気内で配置してなることを特徴とするものであってもよい。保持配管を低圧の雰囲気内で保持することで、外部への放熱を低減させることが可能となり、より均一な温度保持が可能となる。勿論、真空に近づく程、効果は高くなる。
さらに、本発明にかかる殺菌された加工液卵の作製方法において、前記の殺菌温度保持工程が59.0℃以上59.5℃以下で10分以上保持する殺菌工程を有することを特徴とするものであってもよい。本発明によれば、殺菌工程における液卵の温度を殺菌温度に対して0.5℃以内又は0.3℃以内の範囲で制御できるので、液卵が過加熱状態になりにくく、未殺菌液卵のつながり度に近い加工液卵を得ることができる。
さらに、本発明にかかる上述した作製方法によって作製された加工液卵は、つながり度が30%以上、すなわち、ガラスビーカー300ccに沸騰水300gを入れ、スパーテルにて5回転/10秒間の速度で撹拌して、5秒後に水に対して5%重量の加工液卵を5秒間で流し入れて加工液卵を凝固させた後、20分間静置した時の上澄み液のセル厚(光路長)10mmに対する波長600nmの光の透過率が30%以上である未殺菌液卵に近い状態の加工液卵を得ることができる。
本発明にかかる加工液卵の作製方法によれば、未殺菌液卵のつながり度に近い加工液卵を作製する方法及び加工液卵を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。なお、特許請求の範囲及び明細書において、「液卵」とは、割卵し、卵黄と卵白を混合した状態で、殺菌工程を行っていないものを指し、「加工液卵」とは、殺菌工程を終えた状態のものを指す。また、「つながり度」とは、ガラスビーカー300ccに沸騰水300gを入れ、スパーテル(アズワン「ラボランスプーン210mm」)にて5回転/10秒間の速度で撹拌して、5秒後に水に対して5%重量の加工液卵を5秒間で流し入れて加工液卵を凝固させた後、20分間静置した時の上澄み液のセル厚(光路長)10mmに対する波長600nmの光の透過率で表したものである。すなわち、透過率が高いほど、水の中で卵が凝集していることになり、つながり度が高いものとなる。
(実施形態)
実施形態にかかる加工液卵の作製方法のフローチャートが図1に示されている。本実施形態にかかる殺菌された加工液卵の作製方法は、主として、殻付卵を割卵する割卵工程10、卵黄と卵白を混合して液卵を作製する液卵作製工程20、前記液卵を所定の殺菌温度まで加熱する加熱工程30、液卵を殺菌温度で保持し、殺菌する殺菌温度保持工程40、殺菌された液卵を冷却する冷却工程50を有する。
実施形態にかかる加工液卵の作製方法のフローチャートが図1に示されている。本実施形態にかかる殺菌された加工液卵の作製方法は、主として、殻付卵を割卵する割卵工程10、卵黄と卵白を混合して液卵を作製する液卵作製工程20、前記液卵を所定の殺菌温度まで加熱する加熱工程30、液卵を殺菌温度で保持し、殺菌する殺菌温度保持工程40、殺菌された液卵を冷却する冷却工程50を有する。
割卵工程10は、特に限定するものではなく、従来から使用されている割卵機器を使用することができる。
液卵作製工程20は、卵黄と卵白を混合する工程である。液卵作製工程では、卵黄と卵白をポンプとストレーナ又はフィルターを通過させてこれらが混合された液卵の状態にする。フィルターは、卵殻やカラザ等を除去するために使用する。使用するポンプ、ストレーナ又はフィルターは特に限定するものではない。使用するフィルターの例としては、パンチング式又はスリット式であってもよい。また、ポンプは、液卵に与えるせん断の少ない容積形ポンプを使用することが好ましい。例えば、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ、サインポンプ又はホースポンプ等を挙げることができる。このフィルター及びポンプを通過させることで、特に撹拌工程を経ることなく、卵黄と卵白は混合され、液卵を作製することができる。さらに、別途撹拌工程を設けてもよいが、液卵にせん断力が加わるので、撹拌工程はない方が好ましい。
加熱工程30は、本発明の殺菌温度まで加熱する工程であり、液卵を直接通電加熱することで加熱される。通電加熱で液卵を加熱することで、直接液卵を加熱するので、間接加熱のように配管等に接している部分又はその近傍部分のみが過加熱状態になったり、加熱のばらつきにより過加熱状態になったりすることが防止され、より安定して、且つ、迅速に殺菌温度まで加熱することができる。通電加熱は、図2に示すように、通電加熱装置100を使用して加熱される。液卵を搬送する加熱流路に断面中空の加熱用の管状部材60が設けられている。管状部材60は、絶縁体からなる管部材61に複数のリング状の電極62が間隔を設けて配置されている。この複数の電極は隣接する電極と一対であり、それぞれ隣接する一対の電極が逆極性となるように電源から高周波電流が供給され、液卵を直接通電して加熱することができる。なお、液卵の物性に対する影響が小さいと判断される40℃程度までの加熱は、温水による間接加熱を用いて行ってもよい。
殺菌温度保持工程40は、加熱された液卵を所定の時間、設定温度に対して+0.5℃以内又は+0.3℃以内の範囲で温度を保持する工程である。従来は、図4に示す間接加熱で殺菌温度を保持していたため、管内の内周壁近傍と中心とでは加工液卵の温度にばらつきが大きく、内周壁近傍では過加熱状態が発生し、均一に温度を保持させることが困難であった。本実施形態における殺菌温度保持工程40は、保持配管44を前述した加熱工程の通電加熱装置100と同様の通電加熱装置を使用して液卵を直接通電加熱することで温度を保持する。通電加熱により液卵を保持することによって、液卵自体を均一に加熱するので、間接加熱のように保持配管44に接している液卵部分が過加熱状態になることを防止できる。また、放熱による液卵の温度低下に対して素早く出力調整が行われるため、細かい温度制御が可能となり、より均一な保持が可能となる。これにより、図3に示す殺菌温度保持工程40の殺菌温度保持装置41の入口42と出口43の液卵の温度差を0.5℃以内又は0.3℃以内にすることができ、液卵を均一な保持温度に調整することができる。
加工液卵の保持出口温度の目標とする殺菌温度を59.0℃とした場合における、以下の加熱方式と温度保持方式による加熱出口(保持入口)温度と保持出口温度の加工液卵の温度の差を有する工程及びそれぞれの工程におけるつながり度の例を表1に示す。
工程1.間接加熱+断熱材保持 2.4℃
工程2.通電加熱+断熱材保持 2.2℃
工程3.間接加熱+温水ジャケット保持 1.1℃
工程4.通電加熱+温水ジャケット保持 0.9℃
工程5.通電加熱+請求項5に相当する保持の例 0.2℃
工程1.間接加熱+断熱材保持 2.4℃
工程2.通電加熱+断熱材保持 2.2℃
工程3.間接加熱+温水ジャケット保持 1.1℃
工程4.通電加熱+温水ジャケット保持 0.9℃
工程5.通電加熱+請求項5に相当する保持の例 0.2℃
このように通電加熱+本発明の請求項3、請求項4による通電加熱の保持、または、通電加熱+本発明の請求項5、請求項6、請求項7による保持を行なうことによって、他の加熱方法、温度保持方法の組み合わせと比較して、0.2℃と極端に温度差を小さくすることができる。なお、加熱工程と殺菌温度保持工程において、加熱工程は通電加熱を行った場合において、断熱材による保温、温水ジャケットによる保温、本発明による保温の殺菌温度保持工程における温度の推移を示したグラフを図5に示す。
また、液卵自体に直接通電加熱するのではなく、保持配管44を直接通電加熱することで保持してもよい。保持配管44を直接通電加熱することで、保持配管の放熱による温度低下に対して細かい出力調整が行われ、保持配管が殺菌温度と同じ温度に調整されるため、より均一な保持が可能となり、容易に殺菌温度保持装置41の入口42と出口43の液卵の温度差を0.5℃以内又は0.3℃以内にすることができる。
さらに、殺菌温度保持装置41全体を容器45内に配置して水よりも比熱が小さく、且つ、熱伝導率が小さい物質を容器内に充填し、殺菌温度保持装置41を比熱が小さく、且つ、熱伝導率が小さい物質の雰囲気下に配置することによって液卵の温度を保持してもよい。比熱が水より小さく、且つ、熱伝導率が小さい物質、例えば空気等を殺菌温度保持工程40の熱媒体として使用することで、熱媒体の比熱が小さいので、水と比較して容易に殺菌温度と同じ温度にすることができる。さらに、熱媒体の熱伝導率が小さいので、仮に熱媒体の温度が高くなった場合でも、水と比較して液卵に必要以上の熱が伝わりにくく、過加熱状態になりにくい。このため、より均一な保持が可能となり、さらに容易に殺菌温度保持装置41入口42と出口43の液卵の温度差を0.5℃以内又は0.3℃以内にすることができる。なお、水より比熱が小さく、且つ、熱伝導率が小さい物質としては、空気を使用するとよい。
さらに、殺菌温度保持工程41全体を大気圧より低い圧力を有する空間の雰囲気内で配置してなるものであってもよい。殺菌温度保持工程41を低圧の雰囲気内で保持することで、外部への放熱を減少させることが可能となり、より均一な保持が可能となる。これにより、さらに容易に殺菌温度保持装置41の入口42と出口43の液卵の温度差を0.5℃以内又は0.3℃以内にすることができ、さらに液卵を均一な保持温度に調整することができる。勿論、真空に近づく程、効果は高くなるため、真空下で保持することが好ましい。
これら上記の殺菌温度保持工程40は、それぞれ任意に組み合わせて使用してもよい。なお、前述した実施形態では、比熱の小さい物質、熱伝導率の小さい物質又は真空下の雰囲気下に保持配管44を配置したが、保持配管44を二重管にして外管をそれぞれの雰囲気にしてもよい。
冷却工程50は、殺菌後の液卵を冷蔵温度(8℃以下)まで冷却する工程である。冷却方法は、特に限定するものではないが、液卵に与えるせん断力が小さいものが好ましい。冷却された液卵はそのまま冷蔵保管または冷凍保管することができる。
(発明を実施するための最良の形態)
殻付卵を割卵してタンクに入れた後に、ロータリーポンプ(大同メタル工業株式会社製)で液卵を輸送し、目の大きさが0.2mmのスリットフィルター(SAF8000 SANOVO社製)を通過させて濾過を行った。その後、通電加熱装置としてジュール加熱装置(株式会社フロンティアエンジニアリング社製)を使用して加熱を行い、殺菌温度保持工程は、保持箱内を断熱材で密封し、保持箱内部にヒーターとファンを設置し、ヒーターで空気を温め、ファンで箱内部の空気を循環させて均一な雰囲気温度となるようにしてそれぞれ10分間保持を行った。
(実施例)
実施例1として殺菌保持入口温度が58.2℃で殺菌保持出口温度が58.0℃、実施例2として殺菌保持入口温度が59.2℃で殺菌保持出口温度が59.0℃、実施例3として殺菌保持入口温度が59.3℃で殺菌保持出口温度が59.0℃、実施例4として殺菌保持入口温度が59.5℃で殺菌保持出口温度が59.0℃となるように保持を行った。
殻付卵を割卵してタンクに入れた後に、ロータリーポンプ(大同メタル工業株式会社製)で液卵を輸送し、目の大きさが0.2mmのスリットフィルター(SAF8000 SANOVO社製)を通過させて濾過を行った。その後、通電加熱装置としてジュール加熱装置(株式会社フロンティアエンジニアリング社製)を使用して加熱を行い、殺菌温度保持工程は、保持箱内を断熱材で密封し、保持箱内部にヒーターとファンを設置し、ヒーターで空気を温め、ファンで箱内部の空気を循環させて均一な雰囲気温度となるようにしてそれぞれ10分間保持を行った。
(実施例)
実施例1として殺菌保持入口温度が58.2℃で殺菌保持出口温度が58.0℃、実施例2として殺菌保持入口温度が59.2℃で殺菌保持出口温度が59.0℃、実施例3として殺菌保持入口温度が59.3℃で殺菌保持出口温度が59.0℃、実施例4として殺菌保持入口温度が59.5℃で殺菌保持出口温度が59.0℃となるように保持を行った。
(比較例)
比較例1として殺菌保持入口温度が59.7℃で殺菌保持出口温度が59.0℃、比較例2として、殺菌保持入口温度が60.1℃で、殺菌温度で殺菌保持出口温度が59.0℃、比較例3として殺菌保持入口温度が62.0℃で殺菌保持出口温度が60.3℃となるように保持を行った。
比較例1として殺菌保持入口温度が59.7℃で殺菌保持出口温度が59.0℃、比較例2として、殺菌保持入口温度が60.1℃で、殺菌温度で殺菌保持出口温度が59.0℃、比較例3として殺菌保持入口温度が62.0℃で殺菌保持出口温度が60.3℃となるように保持を行った。
こうして得られた加工液卵は、以下の条件にてつながり度を測定した。
測定条件:
ガラスビーカー300ccに沸騰水300gを入れ、スパーテル(アズワン「ラボランスプーン210mm」)にて5回転/10秒間の速度で撹拌して、5秒後に水に対して5%重量の加工液卵を5秒間で流し入れて加工液卵を凝固させた後、20分間静置した時の上澄み液のセル厚(光路長)10mmに対する波長600nmの光の透過率を、分光光度計(GENESYS 10S UV−Vis(Thermo Scientific社製))を用いて測定した。測定した結果を表2に示す。
測定条件:
ガラスビーカー300ccに沸騰水300gを入れ、スパーテル(アズワン「ラボランスプーン210mm」)にて5回転/10秒間の速度で撹拌して、5秒後に水に対して5%重量の加工液卵を5秒間で流し入れて加工液卵を凝固させた後、20分間静置した時の上澄み液のセル厚(光路長)10mmに対する波長600nmの光の透過率を、分光光度計(GENESYS 10S UV−Vis(Thermo Scientific社製))を用いて測定した。測定した結果を表2に示す。
以上の測定結果によれば、実施例1においては、つながり度は82.6%であり、実施例2においては、つながり度は71.8%であり、実施例3においては、つながり度は51.0%であり、実施例4においては、卵のつながり度は34.6%であり、比較例1及び比較例2においては、つながり度は16.7%であり、比較例3においては、つながり度は0.3%であった。このことより、本件の目標とする殺菌温度である59.0℃に保持出口温度を設定し、且つ、保持入口温度と保持出口温度の差が0.5℃以下となるように設定することで、つながり度の高い加工液卵を得ることができ、さらに保持入口温度と保持出口温度の差が0.3℃以下となるように設定することで、特に良好な結果が得られることがわかる。また、比較例1及び比較例2の0.5℃を超える温度変化を有する殺菌温度保持では、つながり度に明らかな低下が見られた。また、実施例1のように保持出口温度を58.0℃まで下げるとさらに高いつながり度が得られ、比較例3のように一般に販売されている殺菌液卵において従来から行われてきた殺菌温度条件では、つながり度は0.3%と小さな値となり、本実験形態において再現することができた。比較例及び実施例を比較してみると、本件の目標とする殺菌条件と同等の一定の保持殺菌温度と保持時間において、本実施形態における殺菌温度+0.5℃以下、さらに殺菌温度+0.3℃以下の温度変化による殺菌温度保持によれば、より良好な品質が得られる殺菌が可能となった。このことから、保持出口温度を59.0℃に設定した場合には、保持入口温度を59.2℃〜59.5℃に設定することが好ましく、より好ましくは59.2℃〜59.3℃である。保持出口温度58.0℃に設定した場合には、58.2±0.1℃が好ましい。
従来は、加熱工程は、温水加熱等の間接加熱であったため、温水温度を殺菌温度よりも1℃から2℃程度高く設定しなければ目的とする殺菌温度に温度を上昇させることはできなかった。そのため、配管に接している液卵又はその近傍の液卵が過加熱状態となってしまい、その品質に影響を与えていた。また、過加熱状態の部分が発生するために温度のばらつきも大きく、均一に温度を上昇させることが困難であった(図4)。そこで、通電加熱の直接加熱を採用することにより、ばらつきが少なく均一に加熱することが可能となった。
しかしながら、加熱工程で均一に加熱できるようになっても、殺菌温度保持工程において、断熱材による保温、温水ジャケットによる保温を行った場合は、ばらつきや放熱による温度低下が大きく、目的とする殺菌温度をクリアさせるためには保持入口と保持出口の温度差を大きくせざるをえなかった。
本発明の保持方法により、加熱工程で均一に加熱した上で保持入口と保持出口の温度差を少なくすることができるため、過加熱状態を低減させたことにより品質に対する影響の小さい液卵の殺菌が可能となった(図5)。
本発明の保持方法により、加熱工程で均一に加熱した上で保持入口と保持出口の温度差を少なくすることができるため、過加熱状態を低減させたことにより品質に対する影響の小さい液卵の殺菌が可能となった(図5)。
上述した実施の形態で示すように、加工液卵の作製方法及び加工液卵として産業上利用可能である。
10…割卵工程、20…液卵作製工程、30…加熱工程、40…殺菌温度保持工程、41…殺菌温度保持装置、42…入口、43…出口、44…保持配管、50…冷却工程、58…保持出口温度、60…管状部材、61…管部材、62…電極、100…通電加熱装置
Claims (9)
- 加熱工程及び殺菌温度保持工程を有する加工液卵を作製する方法において、
殺菌温度まで通電加熱する加熱工程と、
設定温度で保持する殺菌温度保持工程と、を含み、
液卵の温度を殺菌温度に対して+0.5℃以下の範囲内で制御することを特徴とする殺菌された加工液卵の作製方法。 - 請求項1記載の加工液卵の作製方法において、
前記液卵の温度を殺菌温度に対して+0.3℃以下の範囲内で制御することを特徴とする請求項1記載の殺菌された加工液卵の作製方法。 - 前記殺菌温度保持工程は、前記液卵を直接通電加熱して保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の殺菌された加工液卵の作製方法。
- 前記殺菌温度保持工程は、保持配管を直接通電加熱して保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の殺菌された加工液卵の作製方法。
- 前記殺菌温度保持工程は、保持配管を水よりも比熱が小さく、且つ、熱伝導率の小さい物質の雰囲気下で保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の殺菌された加工液卵の作製方法。
- 水よりも比熱が小さく、且つ、熱伝導率の小さい物質は、空気であることを特徴とする請求項5に記載の殺菌された加工液卵の作製方法。
- 前記殺菌温度保持工程は、前記保持配管を大気圧より低い圧力を有する空間の雰囲気内で配置してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の殺菌された加工液卵の作製方法。
- さらに、前記殺菌温度保持工程が液卵を59.0℃以上59.5℃以下で10分以上殺菌する殺菌工程を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の殺菌された加工液卵の作製方法。
- 請求項1から8のいずれか1項に記載の作製方法で作製された加工液卵。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015089128A JP2016202096A (ja) | 2015-04-24 | 2015-04-24 | 加工液卵の作製方法及び加工液卵 |
Applications Claiming Priority (1)
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-
2015
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