JP2016202079A - 気相制御栽培方法、気相制御栽培システムおよび被栽培物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 気相制御栽培システム10は、被栽培物Pの栽培がなされる栽培空間1と、被栽培物Pに対して供給する気体の種類、濃度ならびに供給方法を制御する気相制御手段2と、および栽培に必要な処理を行うための栽培管理手段3とからなる構成とする。かかる構成により本システム10では、栽培空間1において栽培される被栽培物Pに対して、栽培管理手段3によって被栽培物Pの栽培に必要な処理が行われつつ、気相制御手段2によって供給する気体の種類、濃度ならびに供給方法の制御が行われ、それにより被栽培物Pの一定の品質を向上させることができる。
【選択図】 図1
Description
〔2〕 前記気体として酸素が含まれており、その供給濃度は被栽培物の生長を抑制することのない程度の低濃度に制御されることを特徴とする、〔1〕に記載の気相制御栽培方法。
〔3〕 前記酸素濃度は15%以下であることを特徴とする、〔2〕に記載の気相制御栽培方法。
〔4〕 被栽培物が新芽作物(以下、「スプラウト」という。)であることを特徴とする、〔1〕ないし〔3〕のいずれかに記載の気相制御栽培方法。
〔6〕 スキャナー型粒状物外観測定装置を用いた測定による白度(入射光のない状態の反射光量を0、斜め45°から光を当てた時の酸化マグネシウム白色板の反射光量を100とし、サンプルの反射光量を数値化した尺度。以下同じ。)の根/茎比が0.5以上であることを特徴とする、〔5〕に記載の気相制御栽培方法。
〔7〕 〔1〕ないし〔6〕に記載の気相制御栽培方法により生産される、被栽培物。
〔9〕 前記酸素濃度は15%以下であることを特徴とする、〔8〕に記載の気相制御栽培システム。
〔10〕 被栽培物がスプラウトであることを特徴とする、〔8〕または〔9〕に記載の気相制御栽培システム。
〔12〕 〔8〕ないし〔11〕に記載の気相制御栽培システムにより生産される、被栽培物。
〔13〕 〔10〕または〔11〕に記載の気相制御栽培システムにより生産される、茎の色と根の色の相違が該システムによらない栽培のものよりも縮小していることを特徴とする、スプラウト。
(A)a*が低い。
(B)b*が低い。
(C)L*が高い。
(D)白度が高い。
〔15〕 〔10〕または〔11〕に記載の気相制御栽培システムにより生産されるスプラウトであって、スキャナー型粒状物外観測定装置を用いた測定による白度の根/茎比が0.5以上であることを特徴とする、スプラウト。
〔16〕 スプラウトの品質を色により評価する方法であって、スキャナー型粒状物外観測定装置により該スプラウトの根と茎の測定による白度を測定し、(根の白度/茎の白度)比によって評価することを特徴とする、スプラウト品質評価方法。
本発明の気相制御栽培方法は、供給する一または二以上の気体の種類、濃度および供給方法を制御することによって被栽培物の一定の品質を向上させるものであるが、具体的には、供給する気体たる酸素の濃度を被栽培物の生長を抑制することのない程度の低濃度に制御すること、すなわち、被栽培物における酸化反応が抑制される程度に低い酸素濃度にて酸素を供給することによって、被栽培物の生長を抑制することなく被栽培物の一定の品質を向上させる栽培方法である。
根:栽培経過において先端部に生じる、より細く、かつ、より濃色の部位
茎:根と子葉部分の間の、より太く、かつ、より淡色の部位
たとえば緑豆もやしの場合は、栽培3日目くらいから先端部に生じる細い着色部分が「根」、それより上方の、子葉部分を含まない太く白い部分が「茎」である。
(A)a*が低い。
(B)b*が低い。
(C)L*が高い。
(D)白度が高い。
研究テーマ
〔スプラウトの品質、生産効率を最適化する生産プロセス研究〕
1.目的
白く鮮度感のあるもやしの生産プロセスの確立
材料として緑豆もやしを選定し、根取り処理および漂白処理を用いず、酸素制御技術により白く鮮度感のあるもやしを生産、流通する技術の確立を、本研究の目的とした。
2.−1 栽培室栽培における酸素濃度の効果
出願人は、もやし製造現場での予備試験において、栽培中の酸素濃度を低く制御することにより根の褐変が抑制されることを見出した。すなわち、密閉度の異なる2つの栽培室で、同一の栽培方法で緑豆もやしを栽培したところ、密閉度を高くして酸素濃度が低くなった状態で栽培したもやしの方が、白度が上がることが観察された。以下に試験概略を記す。
i)栽培室
密閉度を特に高めない、従来どおりの栽培を行う栽培室を通常室とした(以下、「28号室」ともいう)。一方、各所空隙を塞ぎ密閉度を高めた栽培室を「高密閉室」とした(以下、「35号室」ともいう)。
ii)もやし栽培
それぞれの室で、通常の栽培方法(通常栽培)で、緑豆もやしを栽培した。なお通常栽培とは、「浸漬処理した被栽培物原料をコンテナに積層し、当該コンテナを密閉した栽培室に納めて、酸素濃度制御をすることなく、室温、散水量、散水温度のみを制御して栽培する」栽培方法である。
30分毎にモニタリングし、3時間毎の移動平均値を算出した。
iv)栽培後もやしの色調評価
もやしの色調を色彩計で計測し、L*値、a*値、b*値を、出願人が独自に開発した計算式に当てはめ、もやしの白さの指標としての「色彩計評価値」を算出した。なお、この指標では、数値が5に近いほど白く見えるという評価となる。
図2は、実施例2.−1における酸素濃度の推移を示すグラフである。また、図3は、実施例2.−1における色彩計評価値の比較を示すグラフである。図示するように、密閉度を高めた35号室の酸素濃度は、栽培2日目から6日目の間、16%を下回るほどに低下した。その後は、生長活動が低下したこともあって酸素濃度は次第に上昇した。しかし、色彩計評価値は、通常栽培が3.2だったのに対して、低酸素栽培の35号室品では3.9であり、白さが強くなった。このことから、活発な生長期間に酸素濃度が制限されることが、白さの改善につながったものと考えられた。
2.−2−(1) 試験方法
栽培現場で行われている栽培台車によるもやしの高密度栽培の効率性を評価するため、個体間相互作用を無視することのできる低密度栽培との比較を企図した(なお、栽培台車による試験については、4.でも述べる)。低密度栽培系として、1個体(1粒播種)栽培系(試験管栽培およびポット栽培)を構築し、栽培基礎データ(生長速度、酸素消費速度等)を取得した。
図5は、実施例2.−2における1個体栽培系(試験管栽培)での生長速度および酸素消費速度を示すグラフである。また、図6は現場栽培台車での高密度栽培系の生長速度および酸素消費速度を示すグラフ、図7は1個体栽培系での比生長速度と比酸素消費速度を算出したグラフ、図8は生長速度と酸素消費速度の有効係数を算出したグラフである。図7は図5に示した結果に基づき、比生長速度と比酸素消費速度を算出しグラフ化、図8は図7に示した結果に基づき、栽培台車栽培(高密度栽培)の有効係数を算出しグラフ化したものである。
そこで、低酸素濃度(5%)において、見かけ上酸素濃度一定環境でのもやしの生長特性解析試験を、1粒播種ポット栽培系で実施した。酸素濃度5%栽培と20%栽培では、5%栽培の方が20%栽培より最大値が低かったが、もやし重量増加は両者ほぼ同じであり、酸素濃度を変化させても生長挙動の差が小さいことが確認された。
以上述べた研究経過について、まとめる。
3.−1 酸素制御栽培の可能性について
個体間相互作用のない1個体栽培系を構築したことで、比生長速度、比酸素消費速度を求めることができた。これにより、「有効係数」で現場栽培台車での高密度栽培の効率性を評価することができた。その結果、高密度栽培において生長速度の有効係数はほぼ1を保っているが、酸素消費速度はずっと1を下回っていることが判明した。この結果は、高密度栽培では酸素消費量は生長の律速要因にならず、生長を阻害しない酸素濃度領域を選択して栽培し得るということを示唆している。実際、酸素濃度20%および5%濃度でのポット栽培試験の結果、生長曲線に大きな差はなく、したがって酸素制御栽培が実際上可能であることを確認することができた。
低酸素濃度(5%)でのポット栽培試験により、根が明らかに白いということが官能評価として観察された。1個体ずつの白さを客観的に数値化、評価する方法について、さらに検討することとした。
4.−1 試験栽培台車の製作
気相(酸素)制御栽培の現場レベルでの効果を確認するため、試験栽培台車を製作した。
図9、10は、試験栽培台車の外観図(それぞれ正面、背面)である。また、図11は図9等の試験栽培台車におけるモニタリング箇所を示す平面視説明図、図12は循環ファンの位置付けを示す側面視の説明図である。これらに 図示するように当試験栽培台車は、通常もやしの栽培に使用する栽培台車をもとに、チェーンブロックを使用して脱着が可能な上蓋をかぶせて開閉できる構造とし、側面は取り外し可能な蓋を備えた構造として台車自体を密閉系としたものである。
栽培台車を栽培室に設置し、気相制御しないで8日間栽培した場合と、酸素濃度を5%に制御して栽培した場合とで、栽培挙動を比較した。いずれも、栽培期間は8日間とした。
中国産緑豆120kgを浸漬処理して試験栽培台車内に仕込み、室温23℃の栽培室内に当台車を置いて栽培開始した。1日8回散水により、気相制御しないで栽培した。散水は、3時間おきに、13本の散水管の両端から内側に向かい2本ずつ時間をずらして行った。1回当りの延べ散水時間は約20分である。台車内雰囲気の酸素および二酸化炭素濃度は自動モニタリング測定により測定した。また、もやし充填層内の酸素、二酸化炭素およびエチレン濃度は、あらかじめ台車内に差し込んだチューブよりサンプリングして、前二者は酸素/二酸化炭素濃度計(ダンセンサー社製チェックメイト)により、エチレンはガスクロマトグラフィー装置により分析した。
酸素制御栽培は、酸素制御しない栽培と同様に中国産緑豆120kgを仕込み、室温23℃、1日8回散水で栽培開始した。25時間目以降、酸素濃度を5%に制御して栽培した。酸素濃度の制御は、台車内雰囲気の酸素濃度をモニタリングしながら窒素ガスを導入することにより行った。
酸素濃度5%制御栽培(4.−2−(2))の試験結果を示す。気相制御しない栽培(4.−2−(1))をコントロールとし、その試験結果と対比した。
4.−2−(3)−a) 気体濃度変化
図13は、各栽培方法における台車内雰囲気の各気体濃度測定結果を示すグラフである。図示するように、コントロールにおける台車内雰囲気の酸素濃度は、呼吸により栽培時間約100時間で15%程度に低下したが、その後徐々に上昇した。また、二酸化炭素濃度は、約100時間で4%程度まで上昇し、その後徐々に低下した。一方、酸素濃度5%制御栽培における台車内雰囲気の酸素濃度は、平均酸素濃度5.2%で推移した。また、二酸化炭素濃度は、約100時間で7%前後まで上昇、その後低下した。
図14は、各栽培方法におけるもやしの新鮮重量推移を示すグラフである。図示するように、重量変化は酸素濃度条件に関わらず同じように増加していた。すなわち、酸素濃度5%制御栽培による特段の収量減少は認められなかった。
酸素濃度5%制御栽培のもやしを7日目に室出しして、コントロールのもやしと色調を比較した。測定したもやしは各5本である。色調測定に用いたスキャナー型粒状物外観測定装置は、グレインスキャナー(株式会社サタケ製、型式RSQI 10A)である。グレインスキャナーは通常、米の白さを白度として測定するために用いられている。ここで「白度」とは、JISやISOのハンター白色度とは異なり、米の白さを表わすために考案された指標である。
4.−3−(1) 試験方法
試験栽培台車を用い、酸素濃度2%にてもやし栽培を行った。栽培期間は10日間(室だしは栽培9日目)である。栽培条件は、酸素濃度を2%とした他は、酸素濃度5%制御栽培の栽培方法および試験方法(4.−2−(2))と同様である。また、測定項目についても同様である。
図18は、酸素濃度2%制御栽培における台車内雰囲気の各気体濃度測定結果を示すグラフである。また、図19は酸素濃度2%制御栽培を含む各栽培方法におけるもやしの新鮮重量推移を示すグラフ、図20は同じくもやしの色調測定結果を示すグラフ、そして図21はグレインスキャナー各測定値から算出した根/茎比を示すグラフである。
製作した試験栽培台車およびグレインスキャナーを用いた検討により、酸素濃度を5%や2%に制御したもやしの栽培方法では、コントロールと比較して、根が白くなることを実証することができた。なお、白さを評価する指標として、今回考案した白度の根/茎比の有効性を確認することができた。
2…気相制御手段
3…栽培管理手段
10…気相制御栽培システム
P…被栽培物
Claims (16)
- 供給する一または二以上の気体の種類、濃度および供給方法を制御することによって、該被栽培物の一定の品質を向上させる、気相制御栽培方法。
- 前記気体として酸素が含まれており、その供給濃度は被栽培物の生長を抑制することのない程度の低濃度に制御されることを特徴とする、請求項1に記載の気相制御栽培方法。
- 前記酸素濃度は15%以下であることを特徴とする、請求項2に記載の気相制御栽培方法。
- 被栽培物が新芽作物(以下、「スプラウト」という。)であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の気相制御栽培方法。
- 前記品質向上が漂白処理によらない前記スプラウトの根の白色化であることを特徴とする、請求項4に記載の気相制御栽培方法。
- スキャナー型粒状物外観測定装置を用いた測定による白度(入射光のない状態の反射光量を0、斜め45°から光を当てた時の酸化マグネシウム白色板の反射光量を100とし、サンプルの反射光量を数値化した尺度。以下同じ。)の根/茎比が0.5以上であることを特徴とする、請求項5に記載の気相制御栽培方法。
- 請求項1ないし6に記載の気相制御栽培方法により生産される、被栽培物。
- 被栽培物の栽培がなされる栽培空間と、該被栽培物に対して供給する気体の種類、濃度ならびに供給方法を制御する気相制御手段と、および栽培に必要な処理を行うための栽培管理手段とからなり、該被栽培物の一定の品質を向上させることのできる気相制御栽培システムであって、該気体として酸素が含まれており、その供給濃度は被栽培物の生長を抑制することのない程度の低濃度に制御されることを特徴とする、気相制御栽培システム。
- 前記酸素濃度は15%以下であることを特徴とする、請求項8に記載の気相制御栽培システム。
- 被栽培物がスプラウトであることを特徴とする、請求項8または9に記載の気相制御栽培システム。
- 前記品質向上が漂白処理によらない前記スプラウトの根の白色化であることを特徴とする、請求項10に記載の気相制御栽培システム。
- 請求項8ないし11に記載の気相制御栽培システムにより生産される、被栽培物。
- 請求項10または11に記載の気相制御栽培システムにより生産される、茎の色と根の色の相違が該システムによらない栽培のものよりも縮小していることを特徴とする、スプラウト。
- 請求項10または11に記載の気相制御栽培システムにより生産されるスプラウトであって、該システムによらない栽培のものと比較して、スキャナー型粒状物外観測定装置による根の測定値が、下記(A)〜(D)の少なくともいずれかに該当することを特徴とする、スプラウト。
(A)a*が低い。
(B)b*が低い。
(C)L*が高い。
(D)白度が高い。 - 請求項10または11に記載の気相制御栽培システムにより生産されるスプラウトであって、スキャナー型粒状物外観測定装置を用いた測定による白度の根/茎比が0.5以上であることを特徴とする、スプラウト。
- スプラウトの品質を色により評価する方法であって、スキャナー型粒状物外観測定装置により該スプラウトの根と茎の測定による白度を測定し、(根の白度/茎の白度)比によって評価することを特徴とする、スプラウト品質評価方法。
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JPS63192327A (ja) * | 1987-02-05 | 1988-08-09 | 株式会社 ほくさん | もやしの栽培方法 |
JP2003325040A (ja) * | 2002-05-08 | 2003-11-18 | Taishi Shokuhin Kogyo Kk | 糖分の高いもやしおよびその栽培方法 |
JP2013188233A (ja) * | 2008-12-09 | 2013-09-26 | Naoshi Monma | もやし育成システムにおけるエチレンガス濃度の制御機構 |
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2015
- 2015-04-22 JP JP2015087975A patent/JP2016202079A/ja active Pending
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