JP2016197539A - リチウムイオン電池正極活物質およびその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン電池正極活物質およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】安定したカチオン交換構造を有するケイ酸鉄マンガンリチウム系の正極活物質等を提供することを目的とする。【解決手段】一般式Lix(FeaMnbZnc)SiO4(0<x≦2.5、a+b+c=1、0.1≦c≦0.5)で表され、空間群P21/nまたはPmn21の少なくともいずれか一方の結晶構造を母体構造とし、さらにFe/Mn/Znサイトの一部にLi原子が入り、Liサイトの一部にFe原子またはMn原子またはZn原子のいずれかが入ったカチオン交換構造を持つことを特徴とする、リチウムイオン二次電池用正極活物質。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質に関し、具体的には、カチオン交換構造を有する結晶構造のなかでも、エネルギー的に安定な結晶構造を有し、容量、エネルギー密度の増大が期待できるリチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。
近年、電子機器のモバイル化と高機能化に伴い、駆動電源である二次電池は最重要部品のひとつになっている。特に、リチウムイオン二次電池は、用いられる正極活物質と負極活物質の高い電圧から得られるエネルギー密度の高さから、従来のNiCd電池やNi水素電池に替わり、二次電池の主流の位置を占めるに至っている。
しかしながら、現在のリチウムイオン電池に用いられ、標準となっているコバルト酸リチウム(LiCoO)系正極活物質と黒鉛主体のカーボン系負極活物質の組み合わせによるリチウムイオン二次電池は、昨今の高機能高負荷電子部品の消費電力量を充分に供給することが困難になってきている。
また、レアメタルであるコバルトを用いているため、資源的制約が大きく、高価であり、価格安定性に課題がある。さらに、コバルト酸リチウムは、180℃以上の高温になると、多量の酸素を放出するため、異常発熱や電池の短絡により電池寿命が短くなる可能性がある。
そのため、コバルト酸リチウムよりも熱的安定性に優れる、ケイ酸鉄リチウム(LiFeSiO)やケイ酸マンガンリチウム(LiMnSiO)を始めとするポリアニオン系のケイ酸遷移金属リチウムが、資源面、コスト面、安全面を満たす材料として、注目を集めている。このケイ酸遷移金属リチウムは、組成式内にLiを2個保有しており、2電子反応による高容量を期待できる材料である。
正極材料としてのケイ酸鉄リチウムは、合成後、充放電を行うと、Liを1個分しか脱挿入することができず、Li2個分の高容量の実現が難しいことが知られている(たとえば非特許文献1)。これは2電子目の反応電位が4.8Vと高く(非特許文献2)、実際に電池セルの充放電を行うと、4.5V以上の高電位において電解液の分解を伴い、それ以上の充放電ができないことに起因する。一方で、1電子のみ反応するケイ酸鉄リチウムにおいては、初回の充電時にその結晶構造が変化することが知られている(たとえば、特許文献1、非特許文献1、3)。ケイ酸鉄リチウムを充電すると、一部のLiサイトからLiが脱離するが、この際、Fe原子が、もともとLi原子がいたLiサイトへ移動する。この結果、放電時には、従来のFeサイトにLiが挿入され、このようなカチオン交換構造となった後は、充放電によって、Liの脱挿入が安定して行われる。
一方、正極材料としてのケイ酸マンガンリチウムは、合成後、充放電を行うことで、その反応電位が1電子目も2電子目も4.5V以下であることから、Liを2個分脱挿入することができ、高容量を実現し得る材料であることが知られている。しかし、ケイ酸マンガンリチウムは初回の充電によって、結晶構造がアモルファス化し、2電子反応をサイクル特性良く行うことができない(非特許文献4)。
特許5298286号公報
Journal of Electrochemical Society,159(5) A525−A531(2012) Electrochemical Communications 8 (2006) 1292−1298 Journal of The American Chemical Society 2011,133,13031−13035 Chemistry of Materials 2010,22,5754−5761 J.Sol.Stat.Chem.,180(2007)1045−1050
特許文献1においては、ケイ酸鉄リチウムおよびケイ酸マンガンリチウムが記載されており、充電後の結晶構造のXRDパターンについても開示されている。しかし、マンガンを含むケイ酸マンガンリチウムやケイ酸鉄マンガンリチウムは、最初の充電の際にアモルファス化して、結晶構造を保持しないことが知られており、実際には、特許文献1の方法で、ケイ酸マンガンリチウムの良質なカチオン交換構造を安定的に形成することはできない。
また、LiMnSiOのカチオン交換構造について言及されている非特許文献5においては、1150℃という高い焼成温度から急冷することが必要であり、700℃ではカチオン交換構造への転換はうまく進まないことが示唆されている。
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、安定したカチオン交換構造を有するケイ酸鉄マンガンリチウム系の正極活物質等を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するため、出願人は、鋭意検討の結果、一般式Li(FeMnZn)SiO(0<x≦2.5、a+b+c=1、0.1≦c≦0.5)で表され、空間群P2/nまたはPmn2の少なくともいずれか一方の結晶構造を母体構造とし、さらにFe/Mn/Znサイトの一部にLi原子が入り、Liサイトの一部にFe原子またはMn原子またはZn原子のいずれかが入ったカチオン交換構造を持つことを特徴とする、リチウムイオン二次電池用正極活物質に関する発明に至った。
ここで、母体構造とは、非特許文献6のような空間群P2/nを持つ結晶構造や、非特許文献7のような空間群Pmn2を持つ結晶構造であるという意味ではなく、あくまでそれらの結晶構造を基とし、その原子の相対的な位置関係だけを述べているものであって、厳密な空間群の対称性を考慮した結晶構造について言及しているわけではない。
Journal of the American chemical society,2011,133,1263−1265. Electrochemistry Communications,7,156,2005.
空間群P2/nで表される結晶構造と、空間群Pmn2で表される結晶構造は、非常に近い関係にある。これら非特許文献6や非特許文献7に記載の結晶構造は、一般式LiFeMn(1−Y)SiO(0≦x≦2.5,0≦y≦1)で表される組成の物質を、焼成によって製造することで通常生成する安定的な結晶構造なので、本明細書では通常構造と呼ぶ。ここで、非特許文献8のように、ある焼成温度において、Yが1に近いとP2/nになり、Yが0に近いとPmn2となり、その間ではP2/nとPmn2の共存状態、あるいは固溶体状態になることが一般的であることが知られている。((非特許文献8)Journal of Materials Chemistry 2011,21,17823−17831)
しかし、実際の材料では必ずしも平衡状態は得られず、また結晶構造の差もわずかのため、X線回折による同定も困難であり、結晶構造を組成との関係で一義的に決定するのは難しい。また、正極活物質として実用に供する場合は、上記の範囲の組成であればどちらの結晶構造であっても同様に使用が可能なので、本発明ではこれらを厳密に区別せず、空間群P2/nまたはPmn2の少なくともいずれか一方の結晶構造を母体構造とするもの、と定義する。
一方、これらの通常構造に対し、Fe原子またはMn原子と、Li原子と、Zn原子とが、通常構造の位置から入れ替わった結晶構造を、カチオン交換構造と呼ぶ。ここで、Fe/Mn/Znサイトとは、通常構造でFe原子またはMn原子またはZn原子が存在する位置である。Liサイトとは、通常構造でLi原子が存在する位置である。
図1は、一般式LiFeMn(1−Y)SiOを例に取って、通常構造とカチオン交換構造の違いをわかりやすく図示したものである。なお、図1については、Feサイトを、本願発明に即してMnも含有しうるFe/Mnサイトとする。また、図1は、空間群Pmn2を持つ結晶構造を示すが、以下の説明は、空間群P2/nを持つ結晶構造についても同様である。空間群Pmn2を持つ結晶構造は、斜方晶を単位格子とし、単位格子中に16個の原子を持つ結晶構造である。
図1の(a)は通常構造を示す図、(b)はカチオン交換構造を示す図である。
(a)において、Aで示される原子がFe原子またはMn原子である。同様に、Bで示される原子がSi原子である。Cで示される原子がLi原子である。Oで示される原子がO原子である。
なお、図3〜5においても同様とする。
充電により、組成式上、約1個以上のLi原子が結晶構造内から脱離すると、空孔となったLiサイトにFe原子またはMn原子が移動する。
この状態から放電を行うと、Li原子が、Fe/Mnサイトにできた空孔に挿入される。この状態がカチオン交換構造、即ち図2(b)となる。
図1(b)中、ACは、Fe原子またはMn原子とLi原子の両者が配置しうることを示す。
図4は、空間群Pmn2の単位格子中には、a,b,c,dの4つのLiが存在することを示したものである。
この単位格子からの2個のLiの抜け方には、対称性を考慮しても、aとb、aとc、aとd、の3通りの組み合わせが存在する。
P2/nの空間群を持つ結晶構造とは、図1(a)のPmn2の、Fe/MnサイトとSiサイトがなすa軸に平行な列の原子を取り囲む、O原子の四面体の向きが周期的に変化した構造である。よってP2/nの単位格子は斜方晶とは異なり、軸の異なる単斜晶で長周期構造を持つが、原子の配列としては非常に近い関係にあることがわかる。
図1(a)に示す通常構造は、Si−O結合による四面体(図2に破線で記載)とFe/Mn−O結合による四面体(図1に不記載)が連なった鎖部分と、Li−O結合による四面体(図1に不記載)が連なった鎖部分で構成される。図1(a)において、Fe原子またはMn原子が存在する位置をFe/Mnサイト、Li原子が存在する位置をLiサイトと呼ぶこととする。すなわち、通常構造では、Fe/MnサイトにFe原子またはMn原子が、LiサイトにLi原子が入った構造を取っている。なお図1における、それぞれ各原子とO原子が作る四面体については、図での説明を明快にするため、Si−O結合による四面体のみ記載している。
空間群Pmn2を母体とする構造では、Liサイトのみで構成される副格子とは、図1(a)でCで示されるサイト、または図1(b)でACで示されるサイトのみを考慮し、他のサイトの原子は無いものとみなす格子のことを言う。その状態では、図2(b)のようにCがa軸と平行に紙面左手前から右奥に並ぶ、Liサイト鎖I(10)とLiサイト鎖II(20)で構成される副格子である。
ここで、第一近接とは、前記Liサイト鎖I(10)(またはLiサイト鎖II(20))の鎖の前後に隣接した原子(またはサイト)、またはLiサイト鎖I(10)とLiサイト鎖II(20)の鎖間で隣接した原子(またはサイト)を示す。
これを図4上で見ると、Liサイト上の原子a、b、c、dについて、aに対してはbとdが、bに対してはaとcが、cに対してはbとdが、dに対してはaとcが、それぞれ第一近接であることを示す。よって、例えばaがLi原子である場合は、bとdはLi原子ではなくFe原子またはMn原子であり、cはLi原子になる。また例えばbがLi原子である場合は、aとcはFe原子またはMn原子で、dはLi原子になる。これを言い換えると、Pmn2構造においては、単位格子内で略長方形をなす4つのLiサイトのうち、第一近接原子は略長方形の隣接する頂点であり、Li原子とFe原子またはMn原子は隣接した配置を取る。また、第二近接原子は、Li原子同士が、またはFe原子同士(またはMn原子同士)が、それぞれ略長方形の対角線を組むように配置されることになる。
空間群P2/nを母体とする構造においては、図3のように、図3のCで示されるLiサイトの列が波打つ格好になるため、前記の略長方形とは異なる不等辺な矩形になり、原子間距離も変わってくるが、Liサイトのみで構成される副格子を考慮したとき、そのLiサイトの相対位置関係は、Pmn2構造と同様であるので、Liサイト鎖I(10)内(またはLiサイト鎖II(20)内)で隣接した原子(またはサイト)、またはLiサイト鎖I(10)とLiサイト鎖II(20)の鎖間で隣接した原子(またはサイト)が第一近接である。同様に矩形格子を当てはめれば、第一近接原子は矩形の隣接する頂点であり、Li原子とFe原子またはMn原子が隣接した配置を取り、第二近接原子は、Li原子同士が、またはFe原子同士(またはMn原子同士)が、それぞれ矩形の対角線を組むように配置される。なお、P2/nでは単位格子がPmn2と異なるため、図3ではLiサイト鎖が図2のPmn2のLiサイト鎖と対応することがわかるように、結晶の向きを調整して記載している。このため図3には軸を示していない。
なお、ここで述べた「原子間距離」とは、Liサイトのみで構成される副格子のサイト間の距離であり、サイトが空孔であって実際には原子が存在しない場合も含んでいる。
図5(a)および図5(b)は、図1(a)および図1(b)に示す構造を簡略化し、二次元的に表した概念図である。なお、実際には、酸素と結合して四面体を構成しているが、図示は省略する。
ここで、図5(a)で示す通常構造では、Li鎖が1次元的に配列していることがわかる(枠線)。
これに対して、図5(b)で示すカチオン交換構造では、Li鎖が2次元的に配列していることがわかる(枠線)。Li鎖の2次元化が、構造の安定化に寄与しているものと考えられる。
出願人は、上述したような電気化学的な手法や、高温による焼成法などを用いることなく、Li鎖を2次元化し、構造を安定化させるカチオン構造を発現するに至ったものである。
即ち本願発明は、一般式Li(FeMnZn)SiO(0<x≦2.5、a+b+c=1、0.1≦c≦0.5)で表され、空間群P2/nまたはPmn2の少なくともいずれか一方の結晶構造を母体構造とし、さらにFe/Mn/Znサイトの一部にLi原子が入り、Liサイトの一部にFe原子またはMn原子またはZn原子のいずれかが入ったカチオン交換構造を持つ、リチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。
また、このようなカチオン交換構造においては、Liサイトのみで構成される副格子上で、Li原子の第一近接サイトにはFe原子またはMn原子またはZn原子のいずれかが入ることを特徴とする。
なお、Feおよび/またはMnの一部に代えて、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Moの少なくともいずれかが置換されていてもよい。
また、本願発明は、窒素吸着ブルナウアー・エメット・テーラー(BET)多点法による比表面積から、下記式(1)によって求められる面積相当径(以下「面積相当径」とする)が50nm以下であることを特徴とする、上記正極活物質に関する。
式(1):(面積相当径)=6/{(電極活物質の真密度)×(比表面積)}
また、本願発明は、集電体と、前記集電体の少なくとも片面に、前記正極活物質を含む正極活物質層とを有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極に関する。
さらに本願発明は、前記二次電池用正極と、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを有し、リチウムイオン伝導性を有する電解質中に、前記正極と前記負極と前記セパレータとを設けたことを特徴とするリチウムイオン二次電池に関する。
くわえて本願発明は、少なくともリチウム源、鉄源、マンガン源、シリコン源、および亜鉛源を用いて前駆体粒子を得る工程と、
前記前駆体粒子を焼成することにより、正極活物質を得る工程と、
前記正極活物質の表面を炭素で被覆する工程と、
前記炭素被覆された正極活物質を再度焼成する工程と、
を具備することを特徴とする、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
本発明により、電気化学的な手法や、高温による焼成法などを用いることなく、Liを2次元化し、構造を安定化させるカチオン構造を発現することができる。このようなカチオン交換構造は、その後の充放電においても安定した結晶構造を維持するため、サイクル特性に優れた二次電池を得ることができる。
空間群Pmn2を持つ結晶構造を示す図で、(a)は通常構造を示す図、(b)はカチオン交換構造を示す図。 空間群Pmn2を母体とする通常構造、および、そのLiサイト鎖IとLiサイト鎖IIで構成される副格子を示す図。 空間群P2/nを母体とする通常構造、および、そのLiサイト鎖IとLiサイト鎖IIで構成される副格子を示す図。 空間群Pmn2であるLiFeSiOの結晶構造単位格子、およびその4つのLiサイト(a,b,c,d)を示す図である。 図2に示す構造を簡略化し、(a)通常構造、(b)カチオン交換構造、をそれぞれ二次元的に表した概念図。 非水電解質二次電池30を示す図。 微粒子製造装置1を示す概略図。
(正極活物質)
本願発明の正極活物質にかかるケイ酸系マンガンリチウムは、一般式Li(FeMnZn)SiO(0<x≦2.5、a+b+c=1、0.1≦c≦0.5)で表される。
ここで、(FeMnZn)SiOにおけるZnの組成比としては、0.1≦c≦0.5であることが好ましい。0.1を下回ると、Znが少なすぎるため、Li鎖を2次元化することが難しくなる。また、0.5を上回ると、結晶構造を保てなくなる可能性があるので好ましくない。
ここで、Feおよび/またはMnの一部を、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Moの少なくともいずれかが置換されていてもよい。このような元素を添加することで、結晶構造を安定化させて、サイクル寿命の向上を見込むことができ、さらに実容量の増大や電位の向上によるエネルギー密度の増大を見込むことができる。
また、本願発明の上記活物質粒子は、窒素吸着ブルナウアー・エメット・テーラー(BET)多点法による比表面積から、下記式(1)によって求められる面積相当径(以下「面積相当径」とする)が50nm以下であることが好ましい。
式(1):(面積相当径)=6/{(電極活物質の真密度)×(比表面積)}
本願発明にかかる、Znを添加した正極活物質は、このように粒径(面積相当径)が小さい点においても有利な特徴がある。面積相当径が50nmを上回ると、初期放電容量が低くなり、二次電池としての十分な性能を発揮できない。
また、SiOの一部を他のアニオンにより置換させることもできる。例えば、遷移金属の酸である、チタン酸(TiO)やクロム酸(CrO)、バナジン酸(VO、V)、ジルコン酸(ZrO)、モリブデン酸(MoO、Mo24)、タングステン酸(WO)、等々であり、あるいはホウ酸(BO)やリン酸(PO)による置換である。ケイ酸イオンの一部をこれらのアニオン種により置換することにより、Liイオンの脱離と挿入の繰り返しによる結晶構造変化の抑制と安定化に寄与し、サイクル寿命を向上させる。また、これらのアニオン種は、高温においても酸素を放出し難いので、発火につながることもなく安全に用いることができる。
正極活物質は、表面に炭素被覆を有することが好ましい。さらに、炭素被覆を有する正極活物質の粉体導電率が10−3S/cm以上であることが好ましい。正極活物質の粉体導電率が10−3S/cm以上であれば、正極に使用された際に十分な導電性を得ることができる。また、炭素被覆を有する正極活物質中の炭素の含有量が1.5重量%以上であることが好ましい。炭素の含有量が1.5重量%以上であれば、粉体導電率も高くなり、正極活物質を正極に使用する際に十分な導電性を得ることができる。
(正極活物質を用いた二次電池用正極)
本願発明の正極活物質は、非水電解質二次電池用正極に使用される正極活物質として使用可能である。正極活物質を用いて非水電解質二次電池用正極を形成するには、正極活物質の粉末に対して、必要に応じてさらにカーボンブラックなどの導電助剤を加えると共に、ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデン、ポリイミドなどの結着剤、ブタジエンゴムなどの分散剤、カルボキシメチルセルロースほかセルロース誘導体などの増粘剤を加え水系溶媒か有機溶媒中に加えてスラリーとしたものを、アルミニウムを95重量%以上含むアルミニウム合金箔などの集電体上に、片面ないしは両面に塗布し、焼成して溶媒を揮発乾固する。これにより、集電体上に正極活物質を含む活物質層を有する、非水電解質二次電池用正極が得られる。
正極活物質の粒径が小さい場合、スラリーの塗布性や集電体と活物質層との密着性、集電性を上げるために、正極活物質を、スプレードライ法により炭素源等と造粒してもよい。造粒した二次粒子の塊は概略1〜20μm程度の大きな塊になるが、これによりスラリー塗布性が向上して、電池電極の特性と寿命もさらに良好となる。スプレードライ法に用いるスラリーは水系溶媒または非水系溶媒のいずれも用いることができる。
さらに、正極活物質を含むスラリーをアルミニウム合金箔等の集電体上に塗工形成した正極において、活物質層形成面の集電体表面粗さとして日本工業規格(JIS B 0601−1994)に規定される十点平均粗さRzが0.5μm以上であることが望ましい。形成した活物質層と集電体との密着性に優れ、Liイオンの挿入脱離に伴う電子伝導性および集電体までの集電性が増し、充放電のサイクル寿命が向上する。
(非水電解質二次電池)
本実施の形態の正極を用いた高容量な二次電池を得るには、従来公知の負極活物質を用いた負極や電解液、セパレータ、電池ケース等の各種材料を、特に制限なく使用することができる。
図6は、非水電解質二次電池30を示す断面図である。本実施の形態の非水電解質二次電池30は、正極33、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極35、およびセパレータ37から構成される。正極33、負極35およびセパレータ37は、セパレータ37−負極35−セパレータ37−正極33の順に積層配置される。また、正極33が内側になるように巻回して極板群が構成され、電池缶41内に挿入される。正極33は正極リード43を介して正極端子47に接続され、負極35は負極リード45を介して電池缶41に接続される。以上により、非水電解質二次電池30内部で生じた化学エネルギーを電気エネルギーとして外部に取り出し得るようになる。電池缶41内には、リチウムイオン伝導性を有する電解質31が、極板群を覆うように充填される。電池缶41の上端(開口部)には、環状の絶縁ガスケットを介して、封口体39が取り付けられる。封口体39は、円形蓋板とその上部の正極端子47からなり、その内部に安全弁機構を内蔵する。以上により、非水電解質二次電池30が製造される。
本実施の形態に係る正極を用いた二次電池は、容量が高く、良好な電極特性が得られるが、二次電池を構成する非水溶媒を用いる電解液に、フッ素を含有する非水溶媒を用いるか、または添加すると、充放電による繰り返しを経ても容量が低下し難く長寿命となる。例えば、特にはシリコン系の高容量な負極活物質を含む負極を用いる場合には、Liイオンのドープ・脱ドープによる大きな膨張収縮を抑制するために、電解液にフッ素を含有するか、フッ素を置換基として有する非水溶媒を含む電解液を用いることが望ましい。フッ素含有溶媒は充電時、特に初めての充電処理の際のLiイオンとの合金化によるシリコン系皮膜の体積膨張を緩和するので、充放電による容量低下を抑制することができる。フッ素含有非水溶媒にはフッ素化エチレンカーボネートやフッ素化鎖状カーボネートなどを用いることができる。フッ素化エチレンカーボネートにはモノ−テトラ−フルオロエチレンカーボネート(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、FEC)が、フッ素化鎖状カーボネートにはメチル2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート、エチル2,2,2−トリフルオロエチルカーボネートなどがあり、これらを単一または複数併用して電解液に添加して用いることができる。フッ素基はシリコンと結合し易く強固でもあるので、Liイオンとの充電合金化による膨張の際にも皮膜を安定化させ膨張の抑制に寄与することができるとみられる。
(本願発明にかかる正極活物質の製造方法)
まず、ケイ酸鉄マンガンリチウムの前駆体を焼成する。ケイ酸鉄マンガンリチウムの前駆体は、火炎加水分解や熱酸化などの反応過程を含む製造方法、例えば噴霧燃焼法により合成される。
次に、得られた前駆体を炭素源と混合し、不活性ガス雰囲気中で焼成する。前駆体粒子に含まれる非晶質な化合物や酸化物形態の混合物が、焼成によりケイ酸鉄マンガンリチウム系の結晶形態の化合物に変化し、正極活物質が得られる。
さらに、正極活物質の表面を炭素で被覆することが好ましいため、正極活物質を炭化水素ガスの雰囲気下でアニールすることが好ましい。
(噴霧燃焼法による前駆体粒子の製造方法)
噴霧燃焼法により前駆体粒子を製造する微粒子製造装置1の例を図7に示す。反応容器11には、微粒子合成ノズル9が配置され、燃焼ガス供給部5、支燃性ガス供給部7、及び原料溶液供給部3が接続される。燃焼ガス供給部5、支燃性ガス供給部7、及び原料溶液供給部3からはそれぞれ、可燃性ガス、エア、原料溶液等が、微粒子合成ノズル9から生じる火炎中に供給される。また、反応容器11内で生成された排気中の前駆体粒子15が、フィルタ13により回収される。
噴霧燃焼法は、塩化物などの原料気体を供給する方法や、気化器を通して原料液体または原料溶液を供給する方法により、支燃性ガスと可燃性ガスとともに構成原料を火炎中へ供給し、構成原料を反応させ、目的物質を得る方法である。噴霧燃焼法として、VAD(Vapor−phase Axial Deposition)法などが好適な例として挙げられる。これらの火炎の温度は、可燃性ガスと支燃性ガスの混合比や、さらに構成原料の添加割合によって変化するが、通常1000〜3000℃の間にあり、特に1500〜2500℃程度であることが好ましく、さらに1500〜2000℃程度であることがより好ましい。火炎温度が低温であると、火炎中での反応が完了する前に、微粒子が火炎の外へ出てしまう可能性がある。また、火炎温度が高温であると、生成する微粒子の結晶性が高くなりすぎ、その後の焼成工程において、安定相であるが、正極活物質としては好ましくない相が生成しやすくなってしまう。
また、火炎加水分解法は、火炎中で構成原料が加水分解される方法である。火炎加水分解法では、火炎として酸水素火炎が一般に用いられる。可燃性ガスとして水素ガスが、支燃性ガスとして酸素ガスが供給された火炎の元に正極活物質の構成原料を含む溶液と、火炎原料(酸素ガスと水素ガス)を同時にノズルから供給して目的物質を合成する。火炎加水分解法では、不活性ガス充填雰囲気中、ナノスケールの極微小な、主として非晶質からなる目的物質の微粒子を得ることができる。
また、熱酸化法とは、火炎中で構成原料が熱酸化される方法である。熱酸化法では、火炎として炭化水素火炎が一般に用いられる。可燃性ガスとして炭化水素系ガスが、支燃性ガスとして空気が供給された火炎の元に、構成原料と火炎原料(例えば、プロパンガスと酸素ガス)を同時にノズルから供給しながら目的物質を合成する。炭化水素系ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどのパラフィン系炭化水素ガスや、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィン系炭化水素ガスを使用できる。
(前駆体粒子を得るための構成原料)
本実施の形態の前駆体粒子を得るための構成原料は、少なくともリチウム源、鉄源、マンガン源、シリコン源、亜鉛源である。さらに、必要に応じて他の元素の添加原料を用いてもよい。原料が固体の場合は、粉末のまま供給するか、液体に分散して、または溶媒に溶かして溶液とし、気化器を通じて、火炎に供給する。原料が液体の場合には、気化器を通じるほかに、供給ノズル前に加熱または減圧およびバブリングによって蒸気圧を高めて気化供給することもできる。特に、リチウム源、鉄源、マンガン源、シリコン源の混合溶液を、直径20μm以下の霧状の液滴にて供給することが好ましい。
リチウム源としては、塩化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、臭化リチウム、リン酸リチウム、硫酸リチウムなどのリチウム無機酸塩、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、ナフテン酸リチウムなどのリチウム有機酸塩、リチウムエトキシドなどのリチウムアルコキシド、リチウムのβ―ジケトナト化合物などの有機リチウム化合物、酸化リチウム、過酸化リチウム、などを用いることができる。なお、ナフテン酸とは、主に石油中の複数の酸性物質が混合した異なるカルボン酸の混合物で、主成分はシクロペンタンとシクロヘキサンのカルボン酸化合物である。
鉄源としては、塩化第二鉄、シュウ酸鉄、酢酸鉄、硫酸第一鉄、硝酸鉄、水酸化鉄、2−エチルヘキサン酸第二鉄、ナフテン酸鉄等を用いることができる。さらに、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、アセチルアセトネート、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの鉄の有機金属塩や、酸化鉄なども条件により使用される。
マンガン源としては、塩化マンガン、シュウ酸マンガン、酢酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、オキシ水酸化マンガン、2−エチルヘキサン酸第二マンガン、ナフテン酸マンガン、ヘキソエートマンガン等を用いることができる。さらに、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、アセチルアセトネート、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などのマンガンの有機金属塩、酸化マンガンなども条件により使用される。
シリコン源としては、四塩化ケイ素、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、二酸化ケイ素や一酸化ケイ素またはこれら酸化ケイ素の水和物、オルトケイ酸やメタケイ酸、メタ二ケイ酸等の縮合ケイ酸、テトラエチルオルトシリケート(テトラエトキシシラン、TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(テトラメトキシシラン、TMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルトリシロキサン(OMTSO)、テトラ−n−ブトキシシラン、等々を用いることができる。
亜鉛源としては、塩化亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、水酸化亜鉛、2‐エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛や、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、アセチルアセトネート、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの亜鉛の有機金属塩や、酸化亜鉛などを用いることができる。より好ましくは、塩化亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、水酸化亜鉛、2‐エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛である。
また、ケイ酸鉄マンガンリチウムのケイ酸の一部を他のアニオンにより置換する場合は、アニオン源として、遷移金属の酸化物、ホウ酸、リン酸の原料を加える。
例えば、酸化チタン、亜チタン酸鉄や亜チタン酸マンガンなどの亜チタン酸金属塩、チタン酸亜鉛やチタン酸マグネシウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩、酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム、酸化クロム、クロム酸塩や二クロム酸塩、酸化マンガン、過マンガン酸塩やマンガン酸塩、コバルト酸塩、酸化ジルコニウム、ジルコン酸塩、酸化モリブデン、モリブデン酸塩、酸化タングステン、タングステン酸塩、ホウ酸や三酸化二ホウ素、メタホウ酸ナトリウムや四ホウ酸ナトリウム、ホウ砂などの各種ホウ酸塩、亜リン酸、オルトリン酸やメタリン酸などのリン酸、リン酸水素2アンモニウム、リン酸2水素アンモニウムなどのリン酸水素アンモニウム塩などを、それぞれ所望のアニオン源と合成条件に応じて用いることができる。
これらの原料を同一反応系に火炎原料と共に供給して前駆体粒子を合成する。生成した前駆体粒子は、排気中からフィルタで回収することができる。また、以下のように芯棒の周囲に生成させることもできる。反応器の中にシリカやシリコン系の芯棒(種棒とも呼ばれる)を設置し、これに吹き付けている酸水素火炎中やプロパン火炎中に火炎原料と共にリチウム源、鉄源、マンガン源、シリコン源を供給し、加水分解または酸化反応させると、芯棒表面に主にナノメートルオーダーの微粒子が生成付着する。これらの生成微粒子を回収し、場合によってはフィルタやふるいに掛けて、不純物や凝集粗大化した部分を除く。このようにして得られた前駆体粒子は、ナノスケールの極微小な粒径を持ち、主として非晶質である微粒子からなる。
本実施の形態に係る前駆体粒子の製造方法である噴霧燃焼法は、製造できる前駆体粒子が、非晶質であり、粒子の大きさも小さい。さらに、噴霧燃焼法では、従来の水熱合成法や固相法に比べて、短時間で大量の合成が可能であり、低コストで均質な前駆体粒子を得ることができる。
本発明においては、前駆体粒子を還元剤と混ぜて焼成することで、正極活物質を得ることができる。本実施の形態における前駆体とは、焼成することで、ケイ酸鉄マンガンリチウムの結晶を得ることができる材料である。特に、本実施の形態における前駆体は、鉄やマンガンの価数が3価でありアモルファスであるが、還元剤と混ぜて焼成することで鉄やマンガンの価数が3価から2価に変化する。前駆体粒子の組成は、化学量論的組成を満足することが望ましい。
また、前駆体粒子の形状が略球形であり、粒子の平均アスペクト比(長径/短径)が、1.5以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。なお、粒子が略球形であるとは、粒子形状が幾何学的に厳密な球形や楕円球形であることまでは意味せず、わずかな突起部があっても粒子の表面がおおむね滑らかな曲面で構成されていればよい。
これら前駆体粒子を2θ=10〜60°の範囲の粉末法X線回折を測定すると、ほとんど回折ピークを有しないか、有したとしても回折ピークが小さく幅の広い回折角を示す。すなわち、前駆体粒子は、結晶子の小さい微粒子または小さな単結晶の集まった多結晶微粒子で構成されるか、これら微粒子の周囲に非晶質成分が存在する微結晶形態である。
本実施の形態の噴霧燃焼法では、火炎中で炭素は燃焼するので、得られた前駆体粒子には、炭素が含まれない。仮に炭素成分が混入したとしても、ごく微量であり、正極に使用する際の導電助剤となるほどの量ではない。
(正極活物質の製造)
噴霧燃焼法により得られた、前駆体粒子をさらに炭素源と混合した後に、不活性ガス充填雰囲気下で焼成する。この際、前駆体粒子に含まれる非晶質な化合物や酸化物形態の混合物が、焼成により主にポリアニオン系のケイ酸鉄マンガンリチウム系の結晶形態の化合物に変化する。
また、不活性ガス充填雰囲気下では、焼成時に炭素源が燃焼してしまうこと、正極活物質が酸化してしまうことを防ぐことができる。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素ガスなどを使用することができる。焼成後の生成物の導電性を高めるために、ポリビニルアルコールなどの多価アルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロースなどのポリマー、ショ糖などの糖類、カーボンブラックなどの導電性炭素を、炭素源として焼成前に前駆体粒子に加えて焼成する。ポリビニルアルコールは、焼成前の前駆体粒子のバインダとしての役割を果たすうえ、焼成中に鉄やマンガンを良好に還元できるので、特に好ましい。
温度300〜900℃と処理時間0.5〜10時間の組み合わせによる焼成条件により、適宜所望の結晶性と粒径の焼成物を得ることができる。高温や長時間の焼成による過大な熱負荷は粗大な結晶粒を生成させ得るので回避すべきであり、所望の結晶性または微結晶性のケイ酸鉄マンガンリチウムが得られる程度の加熱条件で、結晶子の大きさを極力小さく抑制できる焼成条件が望ましい。さらに、炭化水素ガスでのアニール前の焼成温度を400〜700℃程度に設定し、炭化水素ガスでのアニール後の焼成温度をアニール完了前の温度より高い600〜900℃に設定することがより好ましい。炭化水素ガスでアニールして活物質表面に炭素被覆を形成すると、粒径が粗大化を抑制しつつカチオン交換構造への変化を促進できるためである。
上述した通り、LiMnSiOにかかる従来技術においては、カチオン交換構造を得るには1150℃という高い焼成温度から急冷することが必要であったところ、Znを添加する本願発明においては、より低温で、かつ急冷なしに作成することが可能である。また、その後の塩酸による酸処理や、水への浸漬といった化学処理も必要としない。
(炭化水素ガスによるアニール)
焼成により正極活物質を形成した後、炭化水素ガスでアニールして、正極活物質の表面に炭素被覆を形成する。
アニールの際の温度が、600℃〜750℃であることが好ましい。アニール温度が低すぎると炭化水素ガスからの炭素の析出が遅く、高すぎると結晶が過大に成長してしまうからである。
炭化水素ガスは、メタン、エタン、プロパン、ブタンの中から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。炭化水素ガスにも還元性があるが、さらに還元を進めるために還元性ガスを混合して供給してもよい。
還元性ガスは、水素、アセチレン、一酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、ホルムアルデヒドの中から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
アニールにより、炭化水素ガスが鉄または炭化鉄を含む粒子と反応し、炭化水素ガスが分解・結合し、正極活物質の表面を炭素被覆することができる。
なお、得られた正極活物質は、焼成工程やアニール工程において凝集していることが多いため、乳鉢やボールミルほか粉砕手段に掛けることにより、再び微粒子とすることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定・拘束されるべきものではない。
<正極活物質の作製>
[実施例1]
噴霧燃焼法によって得られた前駆体粒子を、炭素源と混合した後、不活性ガス充填雰囲気化、650℃、8時間で焼成することにより、正極活物質を得た。この正極活物質を、炭化水素ガスの雰囲気化において650℃でアニールし、正極活物質の表面を炭素で被覆した後、さらに不活性ガス雰囲気下で800℃1時間焼成することにより、LiFe0.2Mn0.5Zn0.3SiOの組成を有する正極活物質を得た。
このようにして得られたLiFe0.2Mn0.5Zn0.3SiOの組成を有する正極活物質の結晶構造を、CuKα線を用いたX線回折測定で評価したところ、空間群P2/nまたはPmn2の少なくともいずれか一方のカチオン交換構造が含まれている旨を示唆する測定結果であった。すなわち、電気化学的方法や、酸処理などの化学処理、または高温での焼成を必要とすることなく、カチオン交換構造が得られたことがわかる。
[実施例2〜5]
組成比を変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5にかかる正極活物質を得た。組成は、表1に示す通りである。なお、実施例2〜5のいずれも、カチオン交換構造が得られた旨の測定結果であった。
[比較例1]
再度の温度変調による焼成を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1にかかる正極活物質を得た。組成比は、LiFe0.2Mn0.7Zn0.3SiOである。X線回折測定による評価では、カチオン交換構造が含まれる可能性を示唆するものではなかった。
[比較例2、3]
再度の温度変調による焼成を950℃で行ったこと以外は、実施例と同様にして、比較例2、3にかかる正極活物質を得た。X線回折測定による評価では、いずれもカチオン交換構造が得られた旨の測定結果であった。組成比については、いずれもLiFe0.2Mn0.7Zn0.3SiOである。
[比較例4〜6]
再度の温度変調による焼成を行わなかったこと以外は、実施例と同様にして、比較例4〜6にかかる正極活物質を得た。組成比は、表1に示す通りである。X線回折測定による評価では、比較例4〜6のいずれにおいても、カチオン交換構造が含まれる可能性を示唆するものではなかった。
なお、表1中、「O」は通常構造、「CM」は、初回充電前における上記正極活物質のカチオン交換構造をそれぞれ意味する。
<活物質粒子径、活物質結晶子径の測定>
窒素吸着ブルナウアー・エメット・テーラー(BET)多点法により、比表面積から各活物質の粒子径(面積相当径)を求めた(トライスターII3020シリーズにて測定、島津製作所社製)。結果を表1に示す。
<リチウム二次電池の作製>
前記により得られた正極活物質に対して、導電助剤(カーボンブラック)を10重量%となるように混合し、内部を窒素で置換したボールミルを用いて更に5時間混合した。混合粉末と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、重量比95:5の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えて十分混練し、正極スラリーを得た。
厚さ15μmのアルミニウム箔集電体に、正極スラリーを50g/mの塗工量で塗布し、120℃で30分間乾燥した。その後、ロールプレスで2.0g/cmの密度になるように圧延加工し、2cmの円盤状に打抜いて正極とした。
これらの正極と、負極に金属リチウム、電解液にエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解したものを用い、リチウム二次電池を作製した。なお、作製雰囲気は露点が−50℃以下とした。各極は集電体の付いた電槽缶に圧着して用いた。上記正極、負極、電解質及びセパレータを用いて直径25mm、厚さ1.6mmのコイン型リチウム二次電池とした。
<正極活物質の電極特性の試験評価>
次に、前記のコイン型リチウム二次電池により、正極活物質の電極特性の試験評価を次のように実施した。
試験温度25℃または60℃、0.1Cの電流レートにて、CC−CV法(定電流定電圧)により、4.5V(対Li/Li+)まで充電を行い、その後電流レートが0.01Cまで低下した後に充電を停止した。その後、0.1Cレートにて、CC法(定電流)により1.5V(前記に同じ)まで放電を行って、充放電容量およびサイクル寿命を測定した。30サイクル後の放電容量も併せ、表1に示す。
Figure 2016197539
上記実施例および表1から、一般式Li(FeMnZn)SiO(0<x≦2.5、a+b+c=1、0.1≦c≦0.5)で表されるカチオン交換構造を有する活物質が得られた実施例1〜5は、初回容量も高く、充放電の繰り返し後においても安定した結晶構造を維持するため、サイクル特性に優れた二次電池を得ることができることが証明された。
一方で、カチオン交換構造が得られなかった比較例1、4〜6については、実施例に比べて大幅にサイクル後の容量が劣る結果となった。充放電の繰り返しにともない、Liが脱挿入するための安定した結晶構造を維持できなくなったことが理由であると考えられる。比較例2、3については、カチオン交換構造を有するものの、組成がLi(FeMnZn)SiO(0<x≦2.5、0.1≦c≦0.5)においてa+b+c=1を満たさないため、放電容量に難がある。また、面積相当径も、50nmを大幅に上回っていることがわかる。
1………微粒子製造装置
3………原料溶液供給部
5………燃焼ガス供給部
7………エア供給部
9………微粒子合成ノズル
10………Liサイト鎖I
11………反応容器
13………フィルタ
15………前駆体微粒子
20………Liサイト鎖II
30………非水電解質二次電池
31………電解質
33………正極
35………負極
37………セパレータ
39………封口体
41………電池缶
43………正極リード
45………負極リード
47………正極端子

Claims (7)

  1. 一般式Li(FeMnZn)SiO(0<x≦2.5、a+b+c=1、0.1≦c≦0.5)で表され、空間群P2/nまたはPmn2の少なくともいずれか一方の結晶構造を母体構造とし、さらにFe/Mn/Znサイトの一部にLi原子が入り、Liサイトの一部にFe原子またはMn原子またはZn原子のいずれかが入ったカチオン交換構造を持つことを特徴とする、リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. Feおよび/またはMnの一部に代えて、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Moの少なくともいずれかが置換されることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  3. Liサイトのみで構成される副格子上で、Li原子の第一近接サイトにはFe原子またはMn原子またはZn原子のいずれかが入ることを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  4. 窒素吸着ブルナウアー・エメット・テーラー(BET)多点法による比表面積から、下記式(1)によって求められる面積相当径(以下「面積相当径」とする)が50nm以下であることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかにに記載の正極活物質。
    式(1):(面積相当径)=6/{(電極活物質の真密度)×(比表面積)}
  5. 集電体と、
    前記集電体の少なくとも片面に、請求項1から請求項4のいずれかに記載の正極活物質を含む正極活物質層と、
    を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。
  6. 請求項5に記載の二次電池用正極と、
    リチウムイオンを吸蔵および放出可能な負極と、
    前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを有し、
    リチウムイオン伝導性を有する電解質中に、前記正極と前記負極と前記セパレータとを設けたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  7. 少なくともリチウム源、鉄源、マンガン源、シリコン源、および亜鉛源を用いて前駆体粒子を得る工程と、
    前記前駆体粒子を焼成することにより、正極活物質を得る工程と、
    前記正極活物質の表面を炭素で被覆する工程と、
    前記炭素被覆された正極活物質を再度焼成する工程と、
    を具備することを特徴とする、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
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