JP2016195670A - 医療用インプラント及び医療用インプラントの組み立て方法 - Google Patents
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股関節では、大腿骨の球状部(大腿骨頭)が骨盤の球面座をなす凹部(臼蓋)に嵌合している。関節部分、即ち大腿骨頭の表面は軟骨で覆われ、上述した股関節にかかる重さや力を吸収するとともに、大腿骨頭と臼蓋との動きを円滑にしている。
例えば、特許文献1には、大腿骨の骨頭側に配置される近位部と、前記近位部の遠位側に連なり遠位側に向かって小径となるテーパ部と、前記テーパ部の遠位側に連なる遠位部と、大腿骨の骨頭に挿入される固定部材が貫通可能な貫通孔と、を備えている髄内釘が開示されている。特許文献1に記載の髄内釘では、貫通孔の一方の開口端は近位部及びテーパ部の境界を含む表面に開口し、貫通孔の他方の開口端は近位部の表面に開口している。この構成によって、機械的強度を高める必要性から太く形成される近位部にテーパ部を接続可能にするため、髄内釘全体を細く形成することに限界があるという問題が解決され、機械的強度を低下させることなく、全体として細く形成される髄内釘が提供される。
人工股関節置換術とは、すり減った軟骨と傷んだ骨とを切除して、金属製やプラスチック製の人工股関節に置き換える手術である。
例えば、特許文献2には、医用インプラント表面に、複数の溝が形成された骨組織侵入固定部を有し、前記骨組織侵入固定部の全部若しくは一部が、前記骨組織侵入固定部以外の前記医用インプラント表面よりも高く盛り上がるように盛り上げ加工されている構成が開示されている。
特許文献1に記載の医用インプラントは、複数の溝が形成された骨組織侵入固定部を有するので、骨との密着固定性に優れると共に、骨組織侵入固定部の全部若しくは一部が盛り上げ加工されているので、強度に優れる。
即ち、既に人工股関節が施されている股関節では、従来の髄内釘を大腿骨の内腔に挿入することは困難である。そこで、従来は人工関股関節の周囲の骨折部分をギプスで固定することで、保存的な治療(保存療法)が行われていた。
このように、従来は、既に人工股関節が施された骨に適用可能な髄内釘等の医療用インプラントがなく、保存療法を行ったとしても患者の苦痛が大きいという問題があった。なお、上記では関節の一つとして股関節を例示して説明したが、上述した問題は人工関節で置換可能な関節であって、例えば膝関節、肘関節等の関節でも同様に起こり得る。
本発明は、上記のように人工股関節が施された骨に適用可能な髄内釘等の医療用インプラントがないという問題を解決するためになされたものであって、予め人工関節置換術が施された骨に適用可能な医療用インプラント及び該医療用インプラントの組み立て方法を提供する。
また、前記細棒の断面形状が矩形とされていてもよい。
また、本発明の医療用インプラントの組み立て方法では、人工関節のステムの遠位側端部を把持部で把持すると共に、把持部の遠位側端部を軸部に連結させることができる。
従って、本発明によれば、予め人工関節置換術が施された骨に適用可能な医療用インプラント及び該医療用インプラントの組み立て方法が提供される。
医療用インプラント1は、人工股関節(人工関節)10が設けられた大腿骨(骨)の内腔Sに挿入される医療用インプラントであって、図1及び図2に示すように、少なくとも把持部2と、軸部4と、を備えている。
寛骨臼は球面座を形成し、該球面座内側の球面に沿って、カップ、ライナー、骨頭ボールがこの順に嵌合される。この球面嵌合によって、人工股関節10が骨盤に対して回動可能とされている。
本実施形態の把持部2は、複数の細棒6,…,6を有する。細棒6は、ステム12の遠位側端部12bの延在方向(即ち、図1及び2に示す矢印D1方向)と軸線J6を揃えて配置可能とされている。図2に示すように、把持部2では、細棒6が前記配置とされた状態で、ステム12の遠位側端部12bの外周面に沿って複数並べられている。
本実施形態の軸部4は、所定の長さ寸法で形成された棒部材5を有する。
棒部材5の長さ寸法は、特に限定されないが、大腿骨の内腔Sに挿入されたステム12の遠位側の先端から、大腿骨の内腔Sの遠位側の端までの長さ寸法以下とされ、該長さ寸法と略同等であることが好ましい。棒部材5の断面形状は、特に制限されず、図2に例示する円形や、矩形、三角形、多角形等であってもよい。但し、棒部材5の断面形状は、円形とされていることが好適である。これにより、棒部材5が略円形の断面形状を有する大腿骨の内腔Sに円滑に挿入可能となり、且つ内腔Sの壁面に接触した際に該壁面を傷付けることが極めて少ない。棒部材5の断面の幅寸法は、特に制限されず、内腔Sでの髄液等の流動を妨げないように、大腿骨の内腔Sの断面の幅寸法を勘案して適切に設定されている。
凹部8の深さ寸法は、特に限定されないが、ステム12の遠位側端部12b及びその周囲に配置した複数の細棒6,…,6の長手方向における中心から遠位側の部分が挿入可能な深さ寸法より大とされ、ステム12及び細棒6の長さ寸法を勘案して適切に設定されている。凹部8の開口の幅寸法は、上記同様にステム12の遠位側端部12b及びその周囲に配置した複数の細棒6,…,6が挿入可能とされ、ステム12及び細棒6の径寸法を勘案して適切に設定されている。
凹部8は、細棒6の遠位側端部6bを収容可能とし、且つ細棒6を介してステム12の遠位側端部12bを挿入可能な連結部として機能する。
なお、凹部8は棒部材5を貫通し、棒部材5の遠位側端面5dに開口していてもよい。即ち、棒部材5は中空状の筒体であってもよい。
図3及び図4は本実施形態の医療用インプラント1の組み立て方法を説明するための断面図である。
医療用インプラント1を組み立てる際には、先ず、人工股関節10のステム12を一旦、大腿骨から取り出す。
続いて、軸部4の連結部である凹部8に把持部2を連結させる。詳しくは、図3に示すように、棒部材5の近位側端部5aの凹部8に、複数の細棒6,…,6をその軸線方向を棒部材5の延在方向に合わせて充填する。
続いて、ステム12の遠位側端部12bを把持部2によって把持する。詳しくは、凹部8に充填した複数の細棒6,…,6の近位側からステム12の遠位側端部12bを遠位側に進行させる。図4に示すように、ステム12の遠位側端部12bの進行に伴って、凹部8の幅方向中心から外周に向かって複数の細棒6,…,6が順次、遠位側に推し進められる。ステム12の遠位側端部12bが凹部8の側壁面に細棒6を介して係止されるまで、ステム12の遠位側端部12bを遠位側に進行させる。この際、ステム12の遠位側端部12bと棒部材5との間に介在しない細棒6は、凹部8の遠位側端部まで落下し、凹部8が棒部材5の遠位側端面5dに開口している場合には、遠位側端面5dから取り出される。
以上の作業により、図1に示す医療用インプラント1が組み立てられる。
図5は、大腿骨Bの内腔Sに挿通された医療用インプラント1の断面図である。医療用インプラント1を遠位側に向けて進行させることによって、図5に示すように、医療用インプラント1を内腔Sの全長にわたって挿通させる。大腿骨Bが骨折している場合には、ひび等が入った、又は折れて分離した大腿骨B1,B2同士の内腔Sを連結させながら、医療用インプラント1を遠位側に進行させればよい。
この後に、ステム12のネック部14を図示しない人工股関節10の骨頭ボールに接続する。これにより、大腿骨Bの内腔Sへの医療用インプラント1の設置が完了する。
上記説明した本実施形態の医療用インプラント1によれば、大腿骨の内腔Sの径方向に沿って、ステム12と把持部2によって人工股関節10のステム12の遠位側端部12bが安定して把持される。即ち、棒部材5の凹部8の外壁部とステム12の遠位側端部12bとの間に細棒6が隙間なく介在し、ステム12の遠位側端部12bが係止される。細棒6の姿勢は、ステム12の遠位側端部12bの外周面の形状に合っているため、ステム12の遠位側端部12bが凹部8に安定して把持される。また、細棒6の姿勢は、ステム12の遠位側端部12bの外周面の形状に合わせて可動となっている。そのため、ステム12及び人工股関節10の動きを阻害しない。
また、把持部2と軸部4とが連結可能とされ、これらがステム12の遠位側端部12bから大腿骨Bの遠位側端部までの内腔Sに配置される。即ち、
従って、大腿骨Bの内腔Sに、人工股関節10のステム12と把持部2と軸部4を一貫して安定的に挿通させることができ、且つ内腔Sから軸部4が突出することも容易に防止することができる。
例えば、本実施形態の人工関節はステム12及びステム12に該当する部位を有していれば、人工股関節10に限定されず、人工膝関節、人工肘関節等であってもよく、これら以外の関節に適用可能な医療用インプラント等であってもよい。
また、本実施形態の把持部2は、複数の細棒6,…,6を有する構成に限定されず、ステム12の遠位側端部12bの外周面に当接させることができ、これらを凹部8に挿入できれば、例えば網状の布やスポンジ等の弾性を有する発泡体や樹脂等であってもよい。
荷重試験器及びセンサ(販売元:日本電産シンポ株式会社)を使用し、細棒6の三点曲げ試験を行った。細棒6として、断面形状が正方形、真円、正三角形のチタン合金製のピンを各一本ずつ用意した。正方形の一辺の長さは0.7mm、真円の半径は0.5mm、正三角形の一辺の長さは0.5mmとした。また、各ピンへの強制変位は10mmとした。
図1に示す本実施形態の医療用インプラント1のモデルを用意し、このモデルに対して実施例1と同様の荷重試験器及びセンサを使用し、四点曲げ試験を行った。細棒6としては、実施例1と同様の断面形状が正方形、真円、正三角形のチタン合金製のピンをそれぞれ15〜30本ずつ使用した。軸部4としては、端面に開口する凹部を有する棒体を用いた。大腿骨Bの骨折部位の間隔は約10mmとした。また、強制変位を5mmとし、棒体からのピンの突出量(図3及び図4に示す寸法X)を10mm及び15mmとして剛性を比較した。
図7からわかるように、断面形状が正方形及び真円である場合には、突出量が10mmから15mmに変更されることで、ピンの剛性は低くなった。一方、断面形状が正三角形である場合には、突出量が10mmから15mmに変更されることで、ピンの剛性は僅かに高くなった。
上記実施形態では、このように細棒6の断面形状及び棒部材5からの突出量によって把持部2の剛性が異なるため、剛性も考慮して細棒6の棒部材5からの突出量が適切に設定されていることが好ましい。
次に、図1に示す本実施形態の医療用インプラント1と同様の有限要素モデルを構築し、有限要素解析を行った。有限要素解析における要素数は、20000とした。図8(a)には、医療用インプラント1の前方から見た場合に対応する有限要素モデルの断面を示す。図8(b)には、医療用インプラント1の外側から見た場合に対応する有限要素モデルを示す。また、図9(a),(b)に示すように、ピンの遠位側端部を棒体の軸線方向以外の方向で拘束した。そして、図11に示すように、人工股関節のステムのネック部に対応する位置に、医療用インプラント1の長手方向に対して約25°傾斜した方向から600Nの負荷を適宜加えた。さらに、有限要素解析における材料定数と要素の種類は表1のように設定した。
なお、図13には、医療用インプラント1の前方から見た場合に対応する有限要素モデルの断面において、引張及び圧縮を加える様子を説明するための図を示す。図14(a)には、インプラント直後の負荷圧力の分布であって、図13に示す領域Qの拡大図を示す。同様に、図14(b),(c)には、インプラント後の安定時の負荷圧力の分布を医療用インプラントの前方及び後方から見た場合に対応する負荷圧力の分布であって、図13に示す領域Qの拡大図を示す。
図10から図14に示されているように、インプラント直後にはピンの遠位側端部に集中していた応力が、インプラント後の安定時には、医療用インプラント1の長手方向にやや分散されている。また、ネック部に600Nの負荷を加えた場合には、ピン全体に応力が分散されている。これらの結果から、医療用インプラント1では長手方向に安定し、近位側端部からの負荷が一箇所に集中することなく、細棒6や把持部2全体に分散されるといえる。
以上説明した実施例1から実施例3の結果から、先ず、ステム12の遠位側端部に面積の広い断面を有する細棒6が配置されると、ステム12の固定が安定し、剛性が高くなると考察される。
表2に、断面形状が正方形、真円、正三角形である単純支持梁のそれぞれにおける断面二次モーメントの理論値を示す。また、表3には、これらの単純支持梁の長手方向両端部を支持し、中央に荷重を加えた際の実測値を示す。
大腿骨Bの骨折に対しては、一般に、医療用インプラント1を設置したと想定した場合の四点曲げ試験の剛性は60000N/mと報告されている。この値も、解析結果の1/10以下であることから、本実施形態の医療用インプラント1は従来の髄内釘と同等か、それ以上の剛性を有していると推察される。
2…把持部
4…軸部
6…細棒
8…凹部(連結部)
10…人工股関節(人工関節)
12…ステム
12b…遠位側端部
B…大腿骨(骨)
S…内腔
Claims (4)
- 人工関節が設けられた骨の内腔に挿入される医療用インプラントであって、
前記内腔で人工関節のステムの遠位側端部を把持する把持部と、
前記把持部に連結され、且つ前記ステムの遠位側端部から前記骨の遠位側端部までの前記内腔に配置される軸部と、
を備えた医療用インプラント - 前記把持部は前記ステムの遠位側端部の外周側に、前記ステムの延在方向と軸線を揃えて配置可能な複数の細棒を有し、
前記軸部の近位側端部に、前記細棒の遠位側端部を収容可能とされ、且つ前記細棒を介して前記ステムの遠位側端部を挿入可能な連結部を備えた請求項1に記載の医療用インプラント。 - 前記細棒の断面形状が矩形とされている請求項2に記載の医療用インプラント。
- 請求項1から請求項3に記載の医療用インプラントを組み立てる方法であって、
前記軸部を前記把持部に連結させるとともに、前記人工関節のステムの遠位側端部を前記把持部によって把持し、前記ステムと前記把持部と前記軸部とを一体化して前記内腔の近位側端部から前記内腔に挿入する医療用インプラントの組み立て方法。
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