以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
また、以下に開示される複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれる。以下では、同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。また、以下では、便宜上、X方向、Y方向、およびZ方向が規定される。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する。
(第1の実施形態)
本実施形態は、本発明のディスクブレーキ装置を車両用のピストン対向型(固定型)ディスクブレーキ装置に実施した例である。図1〜図7に示されるように、本実施形態のディスクブレーキ装置1は、車軸ハブ(図示省略の回転体)に組付けられて車輪(図示省略)と一体的に回転するディスクロータ10(図4)と、このディスクロータ10の外周部の一部分を跨ぐようにして配置されるキャリパ20と、このキャリパ20に組付けた六個のピストン31〜36と、インナー側ブレーキパッド40と、アウター側ブレーキパッド50と、を備えている。また、ディスクブレーキ装置1は、キャリパ20に設けられた内側支軸61および外側支軸71と、付勢部材81,82と、を備えている。なお、以下では、ディスクロータ10の軸方向をロータ軸方向、ディスクロータ10の径方向をロータ径方向、ディスクロータ10の周方向をロータ周方向とも称する。
図4に示されるディスクロータ10は、キャリパ20に対して回転する。ディスクロータ10は、インナー側ブレーキパッド40のライニング42とアウター側ブレーキパッド50のライニング52とによって挟持可能な環状の被制動面(図示省略)を有している。また、ディスクロータ10は、被制動面が制動時にインナー側ブレーキパッド40のライニング42およびアウター側ブレーキパッド50のライニング52によって挟持されることにより、回転を制動されるようになっている。このディスクロータ10は、車輪の前進回転時には、車輪と一体的に図4の時計方向に回転(正回転)し、図4の左方側が回入側(リーディング側)となり、図4の右方側が回出側(トレーリング側)となる。以下では、ロータ周方向の回出側をロータ周方向の一方側、ロータ周方向のうち回入側をロータ周方向の他方側とする。
キャリパ20は、図1〜図6に示されるように、ロータ軸方向で互いに間隔を空けて位置されたインナーハウジング部21とアウターハウジング部22とを備えるとともに、これらを連結する四つの連結部23,24,25,26を備えている。キャリパ20は、インナーハウジング部21とアウターハウジング部22との間にディスクロータ10の一部が位置した状態で、ディスクロータ10の一部の外周を跨いでいる。インナーハウジング部21とアウターハウジング部22とは、一対の対向部の一例である。
インナーハウジング部21は、ディスクロータ10のインナー側に配置されていて、三つのシリンダを有している。三つのシリンダは、ロータ周方向にて所定の間隔で配置されている。各シリンダは、ロータ軸方向に延びて形成されている。
また、インナーハウジング部21は、支持部21c,21dを有する。支持部21cは、内側支軸61を支持し、支持部21dは、外側支軸71を支持する。
また、インナーハウジング部21は、ロータ径内方端にてロータ径内方に向けて延びる一対の取付け部21e,21fを有している。インナーハウジング部21は、取付け部21e,21fにてボルト(図示省略)を用いて車体側(支持体)に取付けられるように構成されている。
アウターハウジング部22は、図5に示されるように、ディスクロータ10のアウター側に配置されていて、インナーハウジング部21と同様に、三つのシリンダを有している。また、アウターハウジング部22は、インナーハウジング部21の各支持部21c,21dと同様に、支持部22c,22dを有している。支持部22cは、内側支軸61を支持し、支持部22dは、外側支軸71を支持する。
図7に示される各ピストン31〜36は、各シリンダに周知のように液密的かつロータ軸方向に摺動可能に組付けられていて、ディスクロータ10を挟んで対向配置されている。また、各ピストン31〜36は、ディスクロータ10の制動時に、各シリンダとの間に形成される油室にブレーキマスタシリンダ(図示省略)から供給される作動油によって押動されて、インナー側ブレーキパッド40、アウター側ブレーキパッド50をディスクロータ10に向けてロータ軸方向に押圧可能である。なお、各油室はキャリパ20に設けられた油路20aを通して互に連通している。ピストン31〜36とシリンダとは、キャリパ20に設けられインナー側ブレーキパッド40とアウター側ブレーキパッド50とをディスクロータ10に向けて押す押圧部37を構成している。
図4,5,7等に示されるインナー側ブレーキパッド40とアウター側ブレーキパッド50とは、ロータ軸方向でディスクロータ10を間にして位置されている。インナー側ブレーキパッド40とアウター側ブレーキパッド50とは、一対のブレーキパッドの一例である。
インナー側ブレーキパッド40は、図4,7に示されるように、裏板41と、この裏板41に固着したライニング42と、を有している。また、インナー側ブレーキパッド40は、キャリパ20のインナーハウジング部21側に配置されていて、裏板41にて内側支軸61と外側支軸71とに組付けられていて、内側支軸61の軸心回りに所定量(僅かな量)回転可能、すなわち揺動可能に組付けられている。
裏板41は、図4に示されるように、平板状に形成されている。裏板41は、ライニング42よりロータ径方向内側に延在しV字状の内周側トルク受け面41aが形成された内側部41Aを有している。また、裏板41は、ライニング42よりロータ径方向外側に延在しV字状の外周側トルク受け面41bが形成された外側部41Bを有している。内周側トルク受け面41aは、裏板41のロータ径方向内側かつロータ周方向中央部に設けられている。内周側トルク受け面41aは、内側支軸61と係合する。外周側トルク受け面41bは、裏板41のロータ径方向外側かつロータ周方向中央部に設けられている。外周側トルク受け面41bは、外側支軸71と係合する。内周側トルク受け面41aは、ロータ径方向でのインナー側ブレーキパッド40の内側の部分に設けられた内側支持部の一例であり、外周側トルク受け面41bは、ロータ径方向でのインナー側ブレーキパッド40の外側の部分に設けられた外側支持部の一例である。
また、裏板41のディスクロータ10側の面には、図7に示されるように、ライニング42が取り付けられ、裏板41のディスクロータ10とは反対側の面、すなわちピストン31,32,33側の面には、内シムISaおよび外シムISbが取り付けられている。
ライニング42は、略扇形にてロータ周方向に延びるように形成されている。ライニング42は、ピストン31,32,33が内シムISaと外シムISbを介して裏板41を押圧することにより、ディスクロータ10の被制動面に摺動可能に圧接してディスクロータ10を制動可能である。なお、ディスクロータ10の正回転制動時(車両前進時のディスクロータ制動時)には、ディスクロータ10の被制動面に摺動可能に圧接するライニング42にロータ周方向での回入側から回出側へ摩擦力が作用する。
アウター側ブレーキパッド50は、図5,6,7に示されるように、裏板51と、この裏板51に固着したライニング52と、を有している。また、アウター側ブレーキパッド50は、キャリパ20のアウターハウジング部22側に配置されていて、裏板51にて内側支軸61と外側支軸71に組付けられていて、内側支軸61の軸心回りに所定量(僅かな量)回転可能、すなわち揺動可能に組付けられている。
裏板51は、図5,6に示されるように、平板状に形成されている。裏板51は、ライニング52よりロータ径方向内側に延在しV字状の内周側トルク受け面51aが形成された内側部51Aを有している。また、裏板51は、ライニング52よりロータ径方向外側に延在しV字状の外周側トルク受け面51bが形成された外側部51Bを有している。内周側トルク受け面51aは、裏板51のロータ径方向内側かつロータ周方向中央部に設けられている。内周側トルク受け面51aは、内側支軸61と係合する。外周側トルク受け面51bは、裏板51のロータ径方向外側かつロータ周方向中央部に設けられている。外周側トルク受け面51bは、外側支軸71と係合する。内周側トルク受け面51aは、ロータ径方向でのアウター側ブレーキパッド50の内側の部分に設けられた内側支持部の一例であり、外周側トルク受け面51bは、ロータ径方向でのアウター側ブレーキパッド50の外側の部分に設けられた外側支持部の一例である。
また、裏板51のディスクロータ10側の面には、図7に示されるように、ライニング52が取り付けられ、裏板51のディスクロータ10とは反対側の面、すなわちピストン34,35,36側の面には、内シムOSaおよび外シムOSbが取り付けられている。
ライニング52は、略扇形にてロータ周方向に延びるように形成されている。ライニング52は、ピストン34,35,36が内シムOSaと外シムOSbを介して裏板51を押圧することにより、ディスクロータ10の被制動面に摺動可能に圧接してディスクロータ10を制動可能である。なお、ディスクロータ10の正回転制動時(車両前進時のディスクロータ制動時)には、ディスクロータ10の被制動面に摺動可能に圧接するライニング52にロータ周方向での回入側から回出側へ摩擦力が作用する。
内側支軸61は、図1,3〜7に示されるように、ロータ軸方向に延びて、キャリパ20の各支持部21c,22cにそれぞれ螺着されている。内側支軸61は、キャリパ20に支持され、インナー側ブレーキパッド40とアウター側ブレーキパッド50のそれぞれの内周側トルク受け面41a,51aを支持している。
外側支軸71は、図1〜7に示されるように、ロータ軸方向に延びて、キャリパ20の各支持部21d,22dにそれぞれ挿入されている。外側支軸71は、当該外側支軸71に設けられたフランジ71a(図2)と、抜け止め具91(図2)とによって、キャリパ20からの抜け止めがなされている。外側支軸71は、キャリパ20に支持され、内側支軸61回りのインナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50の揺動を可能に、インナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50のそれぞれの外周側トルク受け面41b,51bを支持している。外側支軸71は、軸部材の一例である。
外側支軸71と抜け止め具91について詳細に説明する。なお、以下では、外側支軸71の軸方向を支軸方向、外側支軸71の径方向を支軸径方向、外側支軸71の周方向を支軸周方向とも称する。図8,10に示されるように、外側支軸71は、本体部71bと、引掛部71cと、介在部71dと、支持部71eと、を有している。本体部71bは、支持部21dに設けられた開口部21d1と、支持部22dに設けられた開口部22d1とに挿入されている。引掛部71cは、本体部71bの支軸方向の一方側(図8の左側)に設けられ、本体部71bと間隔を空けて位置されている。引掛部71cの径は、一例として、本体部71bの径よりも小さい。引掛部71cは、環状の支持面71fと、環状のガイド面71gと、を有している。支持面71fは、支軸径方向に延びて本体部71bに面する。ガイド面71gは、支持面71fの外周縁から支軸方向の一方側に延びた筒状面である。ガイド面71gの少なくとも一部は、支軸方向の他方側(図8の右側)から一方側(図の左側)に向かうにつれ径が小さくなっている。介在部71dは、本体部71bと引掛部71cとの間に介在している。介在部71dの径は、本体部71bの径および引掛部71cの径よりも小さい。このような構成により、本体部71bと引掛部71cとの間に凹部71hが設けられている。支持面71fは、凹部71hの一部を形成している。凹部71hは、外側支軸71の側面71iに円環状に設けられている。支持部71eは、引掛部71cの支軸方向の一方側の端面から支軸方向の一方側に突出している。別の言い方をすると、支持部71eは、外側支軸71の支軸方向の一方側の端部71jに設けられている。支持部71eは、一例として、円柱状に形成されている。支持部71eの径は、引掛部71cの径よりも小さい。以上の構成の外側支軸71は、支持部21d,22dを貫通して配置されるとともに支持部22dにおける支軸方向の一方側に凹部71hが位置される。支持部22dは、対象物の一例である。支持部22dは、壁部とも称され得る。
抜け止め具91は、支軸方向の他方側(図8の右側)への外側支軸71の移動を制限することにより、外側支軸71の抜け止めを行う。抜け止め具91は、図8〜14に示されるように、ベース部91aと、複数の第一の突出片91bと、複数の第二の突出片91cと、を有している。ベース部91aは、外側支軸71の軸心Ax(図8)回りの円環状に形成されている。ベース部91aは、平坦状の環状部91dと、環状部91dの内周部に接続された凸部91eと、を有している。凸部91eは、支軸方向の一方側に向かうにつれ縮径する円錐状に形成されている。また、凸部91eの中心部には、開口部91fが設けられている。開口部91fは、凸部91eを支軸方向に貫通した貫通孔である。開口部91fには、支持部71eが入れられている。
複数の第一の突出片91bは、ベース部91aから支軸方向に沿って支軸方向の他方側に突出し、外側支軸71の軸心Ax回りに互いに間隔を空けて位置されている。本実施形態では、一例として、三つの第一の突出片91bが、外側支軸71の軸心Ax回りに略等間隔に位置されている。第一の突出片91bは、支軸径方向でのベース部91aの外側の部分から延びている。第一の突出片91bは、延部91gと曲部91hとを有している。延部91gは、ベース部91aから支軸方向に沿って支軸方向の他方側に突出している。延部91gは、支軸方向の他方側に向かうにつれ支軸径方向の外側に向かう。曲部91hは、延部91gの支軸方向の他方側の端部から、支軸径方向の内側に向いつつ支軸方向の一方側に折り返されている。曲部91hは、凹部71hに入っている(図10)。曲部91hの先端面(先端部)、すなわち第一の突出片91bの先端面91iは、外側支軸71の支持面71fに面する(図10)。複数の第一の突出片91bの先端部を通る円の径は、支持面71fの径よりも小さい。第一の突出片91bは、弾性変形可能である。
また、複数の第二の突出片91cは、ベース部91aから支軸方向に沿って支軸方向の他方側に突出し、外側支軸71の軸心Ax回りに互いに間隔を空けて位置されている。本実施形態では、一例として、三つの第二の突出片91cが、外側支軸71の軸心Ax回りに略等間隔に位置されている。複数の第二の突出片91cは、第一の突出片91bと外側支軸71の軸心Ax回りに交互に位置されている。第一の突出片91bと第二の突出片91cとは、軸心Ax回りに略等間隔に位置されている。本実施形態では、第二の突出片91cの長さは、第一の突出片91bの長さよりも長い。第二の突出片91cは、延部91jと曲部91kとを有している。延部91jは、ベース部91aから支軸方向に沿って支軸方向の他方側に突出している。延部91jは、支軸方向の他方側に向かうにつれ支軸径方向の外側に向かう。曲部91kは、延部91jの支軸方向の他方側の端部から、支軸径方向の内側に折り曲げられている。曲部91kは、支持部22dにおける支軸方向の一方側の面22d2に面する(図10)。複数の第二の突出片91cの先端部を通る円の径は、支持部22dの開口部22d1の径よりも大きい。第二の突出片91cは、弾性変形可能である。
上記構成の抜け止め具91は、外側支軸71の支軸方向の一方側から支軸方向の他方側へ向けて移動されることで、外側支軸71に装着される(図10)。この際、複数の第一の突出片91bは、一例として、引掛部71cのガイド面71gの支軸方向の一方側の端部に当接してからガイド面71gを摺動することで、当該複数の第一の突出片91bにおける支軸径方向での内側部分である先端面91i同士の間隔が広がるように弾性変形する(撓む)。そして、複数の第一の突出片91bは、ガイド面71gを通過すると、凹部71hに入ることにより当該凹部71hで先端面91i同士の間隔が縮まるように弾性変形(復元)する。これにより、第一の突出片91bの先端面91iが、外側支軸71の支持面71fに面する。この際、複数の第一の突出片91bが引掛部71cのガイド面71gを摺動することにより、外側支軸71に対する抜け止め具91の支軸径方向の位置合わせが行われる。また、この際、第二の突出片91cは、一例として、引掛部71cと離間した状態で移動される。そして、曲部91kが、支持部22dにおける支軸方向の一方側の面22d2に面する。また、この際、開口部91fに支持部71eが入る。このようにして外側支軸71に装着された抜け止め具91では、支軸方向の他方側への力が外側支軸71に作用した場合、第一の突出片91bの先端面91iが外側支軸71の支持面71fに引っ掛かり(当接し)、第二の突出片91cの曲部91kが支持部22dの面22d2に引っ掛かり(当接し)、第一の突出片91bおよび第二の突出片91cが支軸方向に突っ張る。これにより、外側支軸71の支軸方向の他方側への移動が制限される。また、抜け止め具91は、支軸径方向で支持部71eと当接することによって支持部71eに支軸径方向に支持され、支軸径方向の移動が制限される。このように装着された抜け止め具91では、三つの第一の突出片91bが、外側支軸71の軸心Ax回りに略等間隔に位置されているので、第一の突出片91bが凹部71hから外れにくい。すなわち、抜け止め具91が外側支軸71から外れにくい。
付勢部材81は、図4,5に示されるように、キャリパ20と外側支軸71との間に介在し、外側支軸71をロータ径方向の内側に向けて押して、外側支軸71を拘束する。詳細には、付勢部材81は、図7に示されるように、ベース部81aと、一対のアーム部81b,81cと、を有し、板バネとして構成されている。ベース部81aは、外側支軸71のロータ径方向の外側の部分を覆う湾曲状に形成され、外側支軸71のロータ径方向の外側の部分に重ねられている。アーム部81bは、ベース部81aからロータ周方向の回出側に延びて、連結部25のうちロータ径方向の内側部分に凹状に設けられた制限部25aに引っ掛けられ、連結部25に支持されている。アーム部81bは、制限部25aによって、ロータ径方向およびロータ軸方向の移動を制限されている。アーム部81bは、その先端部に湾曲部81dを有し、この湾曲部81dが制限部25aと接触している。一方、アーム部81cは、ベース部81aからロータ周方向の回入側に延びて、連結部24のうちロータ径方向の内側部分に凹状に設けられた制限部24aに引っ掛けられ、連結部24に支持されている。アーム部81cは、制限部24aによって、ロータ径方向およびロータ軸方向の移動を制限されている。アーム部81cは、その先端部に湾曲部81eを有し、この湾曲部81eが制限部24aと接触している。以上の構成の付勢部材81は、外側支軸71をロータ径方向の内側に向けて押す押圧力を生じる。このときの反力は、連結部24,25に作用する。上記押圧力の方向は、図4中に矢印F1で示され、上記反力の方向は、図4中に矢印F2で示されている。付勢部材81は、第二の付勢部材の一例である。
付勢部材82は、図4〜7に示されるように、インナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50のロータ径方向の外側に位置され、キャリパ20とインナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50との間に介在している。付勢部材82は、インナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50をロータ径方向の内側に向けて押す。詳細には、付勢部材82は、図7に示されるように、ベース部82aと、一対の板バネ部82b,82cと、延部82dと、を有している。ベース部82aと、一対の板バネ部82b,82cと、延部82dとは、一体形成されている。一対の板バネ部82b,82cは、一対のバネ部の一例である。
ベース部82aは、図4に示されるように、キャリパ20の連結部25に取り付けられている。ベース部82aは、壁部82eと、四つ(複数の)の取付アーム82fを有している。壁部82eは、ロータ軸方向に延びて、連結部25におけるロータ径方向の内側の面に重ねられている(図4,5)。二つの取付アーム82fは、壁部82eのロータ周方向の一端部に設けられ、ロータ径方向の外側に延び、他の二つの取付アーム82fは、壁部82eのロータ周方向の他端部に設けられ、ロータ径方向の外側に延びている。各取付アーム82fは、湾曲形状の板バネとして構成されている。四つの取付アーム82fがそれらの弾性力によって連結部25をロータ周方向で挟むことにより、ベース部82aが連結部25に取り付けられている。
一対の板バネ部82b,82cは、ロータ軸方向に互いに間隔を空けて位置されている。一対の板バネ部82b,82cは、ベース部82aから、ロータ周方向の回出側に延びるとともにインナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50に向けて延びている。一対の板バネ部82b,82c間に、二つの取付アーム82fが位置されている。板バネ部82bは、その先端部にインナー側ブレーキパッド40の裏板41と接触する湾曲部82gを有している。湾曲部82gは、ロータ径方向の内側に向けて凸状に形成されている。また、板バネ部82bは、ベース部82aと、インナー側ブレーキパッド40との当接部(湾曲部82g)と、の間に、曲部82hを有している。曲部82hは、ロータ径方向の外側に向けて凸状に形成されている。また、板バネ部82cは、その先端部にアウター側ブレーキパッド50の裏板51と接触する湾曲部82iを有している。湾曲部82iは、ロータ径方向の内側に向けて凸状に形成されている。また、板バネ部82cは、ベース部82aと、アウター側ブレーキパッド50との当接部(湾曲部82i)と、の間に、曲部82jを有している。曲部82jは、ロータ径方向の外側に向けて凸状に形成されている。以上の構成では、板バネ部82bは、インナー側ブレーキパッド40をロータ径方向の内側に向けて押し、板バネ部82cは、アウター側ブレーキパッド50をロータ径方向の内側に向けて押す。
各板バネ部82b,82cは、少なくとも湾曲部82g,82iのロータ軸方向の幅が、裏板41,51のロータ軸方向の厚さと、新品の(摩耗していない)ライニング42,52のロータ軸方向の厚さと、を加えた値と略同等以上の幅に形成されている。これにより、ライニング42,52の摩耗によって裏板41,51の軸方向の位置がずれた場合でも、板バネ部82b,82cを裏板41,51に当接させて、板バネ部82b,82cによって裏板41,51を押すことが可能となっている。
延部82dは、一対の板バネ部82b,82c間に位置されている。延部82dは、ベース部82aからロータ周方向の回出側に延びている。延部82dは、その先端部82kがロータ径方向の外側に折り曲げられている。先端部82kは、図4に示されるように、連結部26のうちロータ径方向の内側部分に凹状に設けられた制限部26aに引っ掛けられ、制限部26aにロータ径方向の外側から支持されている。先端部82kは、制限部26aによって、ロータ径方向およびロータ軸方向の移動を制限されている。
上記構成の付勢部材82では、板バネ部82bは、インナー側ブレーキパッド40の回入側部位が回出側部位に比してロータ径方向外側となるように、裏板41の回出側部位外周をロータ径方向内側に向けて押す(付勢する)押圧力(弾性力)を生じる。一方、板バネ部82cは、アウター側ブレーキパッド50の回入側部位が回出側部位に比してロータ径方向外側となるように、裏板51の回出側部位外周をロータ径方向内側に向けて押す(付勢する)押圧力(弾性力)を生じる。このときの反力は、連結部25に作用する。上記押圧力の方向は、図4中に矢印F3で示され、上記反力の方向は、図4中に矢印F4で示されている。
以上の構成では、インナー側ブレーキパッド40の裏板41が、内周側トルク受け面41aの図4における内側支軸61に対する1時から2時の位置と10時から11時の位置の二箇所にて、内側支軸61に隙間ゼロで係合するとともに、外周側トルク受け面41bの図4における外側支軸71に対する7時から8時の位置の一箇所にて、外側支軸71に隙間ゼロで係合している。
一方、アウター側ブレーキパッド50の裏板51が、内周側トルク受け面51aの図5における内側支軸61に対する1時から2時の位置と10時から11時の位置の二箇所にて、内側支軸61に隙間ゼロで係合するとともに、外周側トルク受け面51bの図5における外側支軸71に対する4時から5時の位置の一箇所にて、外側支軸71に隙間ゼロで係合している。
以上の構成のディスクブレーキ装置1では、ブレーキペダル(図示省略)の踏込みに伴って、ブレーキマスタシリンダ(図示省略)から各油室に向けて作動油が供給されると、各ピストン31〜36がディスクロータ10に向けて押動されてインナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50をディスクロータ10に向けて押圧する。これにより、インナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50のライニング42,52がディスクロータ10の被制動面に摺動可能に圧接して、ディスクロータ10を制動する。なお、ブレーキペダル(図示省略)の踏込みが解除されて、各油室からブレーキマスタシリンダ(図示省略)に向けて作動油が排出されると、上述したディスクロータ10の制動は解除される。
上記構成のディスクブレーキ装置1では、ディスクロータ10の制動時(正回転制動時)、インナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50におけるV字状の内周側トルク受け面41a,51aと内側支軸61との二箇所の係合部と、インナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50におけるV字状の外周側トルク受け面41b,51bと外側支軸71の一箇所の係合部の合計三箇所にて、制動時のトルクが受けられる。よって、制動時のトルクを不安定な平面で受ける場合に比して、インナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50の挙動が安定する。このため、制動時の不安定挙動に伴うブレーキ鳴きの発生を抑制することが可能である。また、制動時のトルクを受ける箇所の面積(加工面積)が、制動時のトルクを不安定な平面で受ける場合に比して、削減できて、加工コストを低減することが可能である。
また、本実施形態においては、各裏板41,51が付勢部材82によって回出側部位外周をロータ径方向内側に向けて付勢されていて、インナー側ブレーキパッド40およびアウター側ブレーキパッド50の回入側部位が回出側部位に比してロータ径方向外側となるように設定されている。したがって、制動時のトルクを受ける三箇所が、付勢部材82の付勢力により制動前に予め係合(当接)している。このため、ディスクロータ10の非制動時に、キャリパ20に組付けた内側支軸61および外側支軸71と各ブレーキパッド40,50とのガタつきを抑制することが可能である。
以上、説明したように、本実施形態では、抜け止め具91の第一の突出片91bが支軸方向に沿って突出している。これにより、第一の突出片91bの長さを長くしやすい。すなわち、第一の突出片91bを撓みやすくしやすい。よって、第一の突出片91bを凹部71hに入れやすいので、抜け止め具91を外側支軸71に装着しやすい。
また、本実施形態では、複数の第一の突出片91bは、抜け止め具91が外側支軸71の支軸方向の一方側から支軸方向の他方側へ向けて移動される場合、当該複数の第一の突出片91bにおける支軸径方向での内側部分である先端面91i同士の間隔が広がり、凹部71hで先端面91i同士の間隔が縮まる。よって、抜け止め具91を支軸方向の他方側へ移動させることにより、複数の第一の突出片91bを凹部71hに入れることができる。よって、比較的容易に抜け止め具91を外側支軸71に装着することができる。
また、本実施形態では、第一の突出片91bと第二の突出片91cとは、ベース部91aから支軸方向の他方側に突出し、ベース部91aと第二の突出片91cとのうち第二の突出片91cが、支持部22dの面22d2に面する。よって、第一の突出片91bと第二の突出片91cとが、支軸方向に突っ張ることにより、支軸方向の他方側への外側支軸71の移動を制限することができる。
また、本実施形態では、第一の突出片91bおよび第二の突出片91cは、支軸径方向でのベース部91aの外側の部分から延びている。よって、ベース部91aを小さくしやすい。
また、本実施形態では、ベース部91aには、開口部91fが設けられ、開口部91fには、外側支軸71の支軸方向の一方側の端部71jに設けられた支持部71eが挿入される。よって、ベース部91aを支持部71eに支持させることができる。ベース部91aは、支軸径方向で支持部71eと当接することによって支持部71eに支軸径方向に支持される。これにより、抜け止め具91の支軸径方向の移動を制限することができる。
また、本実施形態では、ベース部91aは、凸部91eを有している。よって、ベース部91aの剛性が凸部91eによって高められる。
また、本実施形態では、三つの第一の突出片91bが、外側支軸71の軸心Ax回りに略等間隔に位置されている。よって、外側支軸71の軸心Axと三つの第一の突出片91bの中心位置とを一致させやすいので、三つの第一の突出片91bに作用する荷重にばらつきが生じるのを抑制しやすい。
なお、抜け止め具91は、外側支軸71の軸心Ax回りに回転可能である。よって抜け止め具91は、図9に示されるように、ある第一の突出片91bが支軸径方向の外側に位置された姿勢以外にも、例えば、図15に示されるように、ある第二の突出片91cが支軸径方向の外側に位置された姿勢等になり得る。
(第2の実施形態)
本実施形態は、図16〜20に示されるように、外側支軸71および抜け止め具91が第1の実施形態と主に異なる。
外側支軸71は、図16〜19に示されるように、本体部71b、引掛部71c、および介在部71dを有するが、支持部71eは有していない。また、図19に示されるように、凹部71hの一部を形成する支持面71fは、支軸方向の一方側(図19の左側)に向かうにつれ支軸径方向の外側に向かう傾斜面である。また、本体部71bの支軸方向の一方側の面には、支持部71kが設けられている。支持部71kは、円環状に形成されている。支持部71kの径は、本体部71bの径よりも小さい。
また、抜け止め具91のベース部91aは、図19,20に示されるように、円環状の環状部91dによって構成されており、凸部91eは設けられていない。ベース部91a(環状部91d)の径は、開口部22d1の径よりも大きい。ベース部91aは、支持部22dの面22d2に面している。
また、第一の突出片91bは、延部91gを有するが曲部91hは有していない。第一の突出片91b(延部91g)は、ベース部91aから支軸方向の一方側に突出している。第一の突出片91bは、ベース部91aの支軸径方向の内側の部分から突出している。第一の突出片91bの先端面91iは、外側支軸71の支持面71fに面するとともに支持面71fに沿う(図19)。すなわち、先端面91iは、支持面71fと同様に、外側支軸71の軸心Axに対して傾斜している。また、第一の突出片91bには、当該第一の突出片91bにおける外側支軸71に接触する先端面91iとベース部91aとの間に曲部91mが設けられている。曲部91mは、支軸径方向の外側に向けて凸となるように形成されている。
第二の突出片91cは、延部91jを有するが曲部91kは有していない。第二の突出片91c(延部91j)は、ベース部91aの支軸径方向の内側の部分から支軸径方向の内側に突出し、外側支軸71の支持部71kと径方向で面する。第二の突出片91cの先端部を通る円の径は、ガイド面71gの最小径よりも小さくてもよいし、ガイド面71gの最大径と略同じ径以上であってもよい。
また、本実施形態では、第一の突出片91bと第二の突出片91cとは、それぞれ五つ設けられて、軸心Ax回りに略等間隔に位置されている。なお、第一の突出片91bと第二の突出片91cとは、第一の実施形態と同様に三つであってもよい。
上記構成の抜け止め具91は、外側支軸71の支軸方向の一方側から支軸方向の他方側へ向けて移動されることで、外側支軸71に装着される。この際、第二の突出片91cは、ガイド面71gおよび凹部71hを経て、外側支軸71の支持部71kに支軸径方向で面する位置に移動される。このとき、第二の突出片91cの先端部を通る円の径が、ガイド面71gの最小径よりも小さい場合について説明する。この場合、複数の第二の突出片91cは、一例として、引掛部71cのガイド面71gの支軸方向の一方側の端部に当接してからガイド面71gを摺動することで、当該複数の第二の突出片91cにおける支軸径方向での内側部分である先端面(先端部)同士の間隔が広がるように弾性変形する(撓む)。そして、複数の第二の突出片91cは、ガイド面71gを通過すると、凹部71hに入ることにより当該凹部71hで先端面同士の間隔が縮まるように弾性変形(復元)する。この場合、複数の第二の突出片91cが引掛部71cのガイド面71gを摺動することにより、外側支軸71に対する抜け止め具91の支軸方向の位置合わせが行われる。一方、第二の突出片91cの先端部を通る円の径が、ガイド面71gの最大径と程同じ径以上である場合には、上記移動の際に、第二の突出片91cを弾性変形させないで移動させることが可能である。この場合、第二の突出片91cを引掛部71cのガイド面71gによってガイドさせることも可能である。
また、上記の移動の際、複数の第一の突出片91bは、一例として、引掛部71cのガイド面71gの支軸方向の一方側の端部に当接してからガイド面71gを摺動することで、当該複数の第一の突出片91bにおける支軸径方向での内側部分である先端面91i同士の間隔が広がるように弾性変形する(撓む)。そして、複数の第一の突出片91bは、ガイド面71gを通過すると、凹部71hに入ることにより当該凹部71hで先端面91i同士の間隔が縮まるように弾性変形(復元)する。これにより、第一の突出片91bの先端面91iが、外側支軸71の支持面71fに面する。この際、複数の第一の突出片91bが引掛部71cのガイド面71gを摺動することにより、外側支軸71に対する抜け止め具91の支軸方向の位置合わせが行われる。
以上のようにして外側支軸71に装着された抜け止め具91では、支軸方向の他方側(図19の右側)への力が外側支軸71に作用した場合、第一の突出片91bの先端面91iが外側支軸71の支持面71fに引っ掛かり(当接し)、ベース部91aが支持部22dの面22d2に引っ掛かり(当接し)、第一の突出片91bおよびベース部91aが支軸方向に突っ張る。これにより、外側支軸71の支軸方向の他方側への移動が制限される。また、抜け止め具91は、支軸径方向で支持部71kと当接することによって支持部71kに支軸径方向に支持され、支軸径方向の移動が制限される。なお、第二の突出片91cが支持部22dの面22d2に引っ掛かるように構成してもよい。
以上、説明したように、本実施形態では、第二の突出片91cは、ベース部91aから支軸径方向の内側に突出し、外側支軸71と支軸径方向で面する。よって、第二の突出片91cが外側支軸71によって支軸径方向に支持されることで、支軸径方向の抜け止め具91の移動を制限することができる。
また、本実施形態では、第一の突出片91bおよび第二の突出片91cは、ベース部91aの支軸径方向の内側の部分から突出している。よって、作業者がベース部91aをつかみやすい。
また、本実施形態では、第一の突出片91bは、ベース部91aから支軸径方向の内側に向かって延びている。また、第一の突出片91bの先端面91iは、支軸方向の一方側に向かうにつれ支軸径方向の外側に向かう支持面71fに面するとともに支持面71fに沿う。よって、第一の突出片91bを長くしやすいとともに、第一の突出片91bが支持面71fに当接した状態で滑りにくい。
また、本実施形態では、第一の突出片91bには、当該第一の突出片91bにおける外側支軸71に接触する部分である先端面91iとベース部91aとの間に曲部91mが設けられている。よって、第一の突出片91bを撓ませやすい。よって、抜け止め具91を外側支軸71に装着しやすい。
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。また、複数の実施形態間で、構成を部分的に入れ替えて実施することができる。
また、上記実施形態では、キャリパ20が、インナーハウジング部21とアウターハウジング部22を備えるとともに、これらを連結する連結部23〜26を備えていて、これらが一体的に形成されている例を説明したが、これに限定されない。例えば、インナーハウジング部とアウターハウジング部をロータ軸方向にて二分割して、これらを複数の連結ボルトで連結して構成したキャリパを採用して実施してもよい。
また、上記実施形態では、キャリパ20のインナーハウジング部21とアウターハウジング部22に形成されているシリンダがそれぞれ三個ずつであるように構成して実施したが、キャリパのインナーハウジング部とアウターハウジング部に形成されているシリンダと、これに組付けるピストンをそれぞれ三個以外の個数設けて実施してもよい。