本発明の熱硬化型水性樹脂組成物は、前記したように、(メタ)アクリル系ポリマーからなるエマルション粒子、多官能モノマーおよび水性媒体を含有する水性樹脂組成物であって、さらに硬化促進剤を含有することを特徴とする。
本発明の熱硬化型水性樹脂組成物は、エマルション粒子と多官能モノマーとをただ単に含有するのではなく、熱重合開始剤を含有させずに硬化促進剤のみを含有することにより、熱重合開始剤をあえて使用しなくても多官能モノマーを重合させることができるのみならず、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成することができるという優れた効果を発現する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルまたはメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味する。
エマルション粒子は、(メタ)アクリル系ポリマーで構成される。エマルション粒子は、例えば、(メタ)アクリル系モノマーを含有するモノマー成分を乳化重合などの重合方法によって重合させることにより、得ることができるが、本発明は、かかる重合方法のみに限定されるものではない。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、オキソ基含有(メタ)アクリレート、フッ素原子含有(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アラルキル(メタ)アクリレート、カルボニル基含有(メタ)アクリレート、アジリジニル基含有(メタ)アクリレート、窒素原子含有(メタ)アクリレート、ジエン構造含有(メタ)アクリル酸化合物、カルボキシル基末端カプロラクトン変性(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明において、アルキル(メタ)アクリレートは、脂環構造を有するアルキル(メタ)アクリレートを含む概念のものである。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18であり、脂環構造を有していてもよいアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
オキソ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのエステル基にフッ素原子を有するフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレート、2−エチルへキシルカルビトール(メタ)アクリレート、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボニル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、オキソシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アジリジニル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
窒素原子含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリンのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
モノマー成分における(メタ)アクリル系モノマーの含有率は、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、その下限値は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに一層好ましくは20質量%以上であり、またその上限値は、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、さらに一層好ましくは70質量%以下である。
モノマー成分における(メタ)アクリル酸の含有率は、0質量%以上であるが、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、モノマー成分における(メタ)アクリル酸の含有率は、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
モノマー成分における水酸基含有(メタ)アクリレートの含有率は、0質量%以上であるが、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは10質量%以下である。
モノマー成分における脂環構造を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有率は、0質量%以上であるが、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、脂環構造を有する(メタ)アクリル系モノマー、なかでもシクロヘキシル(メタ)アクリレートの含有率の下限値は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、またその上限値は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
モノマー成分には、(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマー(以下、他のモノマーという)が適量で含まれていてもよい。
他のモノマーとしては、例えば、イミド環を有するモノマー、ジエン構造含有モノマーなどの2個以上の重合性二重結合を有する単量体、(メタ)アクリル系モノマー以外の芳香族系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー以外のカルボキシル基含有脂肪族系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー以外の窒素原子含有脂肪族系モノマー、シラン基含有脂肪族系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー以外のカルボニル基含有脂肪族系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー以外のアジリジニル基含有脂肪族系モノマー、オレフィン系モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他のモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの他のモノマーのなかでは、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、イミド環を有するモノマーおよびジエン構造含有モノマーが好ましく、ジエン構造含有モノマーがより好ましい。
イミド環を有するモノマーが有するイミド環基としては、例えば、式(Ia):
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R1とR2とは結合して環を形成していてもよい。R3は直接結合または炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされる環状イミド基、式(Ib):
(式中、R1〜R3は前記と同じ。R4およびR5は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表わされる環状イミド基などが挙げられる。
式(Ia)および式(Ib)において、R1とR2とは結合して環を形成している場合、当該R1とR2とは結合した基としては、例えば、炭素数が2〜4のアルキレン基などが挙げられる。アルキレン基のなかでは、イミド環を有するモノマーの安定性の観点から、プロピレン基およびブチレン基が好ましい。R3は、直接結合または炭素数1〜4のアルキレン基であるが、好ましくは直接結合、エチレン基またはプロピレン基である。
イミド環を有するモノマーの重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基などのエチレン性不飽和基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものでない。これらの重合性基のなかでは、(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
イミド環を有するモノマーのなかでは、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、式(Ia)で表わされる環状イミド基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有するモノマーおよび式(Ib)で表わされる環状イミド基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有するモノマーが好ましく、式(IIa):
(式中、R3は前記と同じ。R6は水素原子またはメチル基を示す)
で表わされるマレイミド(メタ)アクリレートおよび式(IIb):
(式中、R3およびR6は前記と同じ)
で表わされるN−(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミドがより好ましく、式(IIa)および式(IIb)において、R3がエチレン基であり、R6が水素原子またはメチル基であるマレイミド(メタ)アクリレートおよびN−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドがさらに好ましい。
モノマー成分におけるイミド環を有するモノマーの含有率は、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。
ジエン構造含有モノマーは、耐擦傷性を向上させる観点から、好適に使用することができる。
モノマー成分にジエン構造含有モノマーを使用した場合、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、式(III):
(式中、R7は水素原子または炭素数1〜30の1価の有機基、R8はメチレン基、R9は直接結合またはメチレン基、R10は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、カルボキシル基、エステル基またはシアノ基、R11は直接結合またはメチレン基、XおよびYはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子、Zは直接結合、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子、X、YおよびZのうちの少なくとも1つの基はたがいに隣接しない酸素原子、イオウ原子またはイミノ基である)
で表わされる環構造含有単位を有することが好ましく、式(IIIa):
(式中、R7は水素原子または炭素数1〜30の1価の有機基を示す)
で表わされる環構造含有単位を有することがより好ましい。
式(III)および式(IIIa)において、R7は水素原子または炭素数1〜30の1価の有機基である。好適な炭素数1〜30の1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基、炭素数2〜30の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、炭素数2〜30の環状エーテル基などが挙げられる。これらの有機基の水素原子の一部または全部は、炭素数1〜30のアルコキシ基、水酸基およびハロゲン原子からなる群より選ばれた少なくとも1種の置換基で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
R7の具体例としては、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、sec−アミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、カプリル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、セチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基、セリル基、メシリル基などの炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基;メトキシエチル基、メチキシエトキシエチル基、メトキシエトキシエトキシエチル基、3−メトキシブチル基、エトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、フェノキシエチル基、フェノキシエトキシエチル基などの炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換されたアルコキシ基含有鎖状飽和炭化水素基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基などの炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部が水酸基で置換された水酸基含有鎖状飽和炭化水素基;フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、クロロエチル基、ジクロロエチル基、ブロモエチル基、ジブロモエチル基などの炭素数1〜30の鎖状飽和炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたハロゲン原子含有鎖状飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基、メタリル基、クロチル基、プロパギル基などの炭素数12〜30の鎖状不飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基、水酸基またはハロゲン原子で置換された鎖状不飽和炭化水素基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタジエニル基などの炭素数3〜20の脂環式炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基、水酸基またはハロゲン原子で置換された脂環式炭化水素基;フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基、シンナミル基、ナフチル基、アントラニル基などの炭素数6〜30の芳香族炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基、水酸基またはハロゲン原子で置換された芳香族炭化水素基;グリシジル基、β−メチルグリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、3−メチル−3−オキセタニルメチル基、3−エチル−3−オキセタニルメチル基などの炭素数2〜30の環状エーテル基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基、水酸基またはハロゲン原子で置換された環状エーテル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。当該置換基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基などの炭素数1〜30のアルコキシ基であることが好ましい。
R7のなかでは、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された環状エーテル基が好ましく、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェノキシエチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、ベンジル基およびテトラヒドロフルフリル基がさらに好ましく、メチル基およびシクロヘキシル基がより一層好ましい。
R8は、メチレン基である。
R9は、直接結合またはメチレン基である。
R10は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、カルボキシル基、エステル基またはシアノ基である。炭素数1〜4のアルキル基のなかでは、メチル基が好ましい。エステル基としては、例えば、式:−COOR12(式中、R12は炭素数1〜30の1価の有機基を示す)で表わされる基などが挙げられる。炭素数1〜30の1価の有機基としては、前記と同様の炭素数1〜30の1価の有機基が挙げられる。炭素数1〜30の1価の有機基のなかでは、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された環状エーテル基が好ましく、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェノキシエチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、フェニル基、ベンジル基およびテトラヒドロフルフリル基がさらに好ましく、メチル基およびシクロヘキシル基がより一層好ましい。
R11は、直接結合またはメチレン基である。
XおよびYは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子である。Zは、直接結合、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいメチレン基、イミノ基、カルボニル基、酸素原子またはイオウ原子である。X、YおよびZのうちの少なくとも1つの基は、たがいに隣接しない酸素原子、イオウ原子またはイミノ基である。イミノ基としては、例えば、−NR13−基(式中、R13は水素原子または炭素数1〜30の1価の有機基を示す)などが挙げられる。前記「たがいに隣接しない酸素原子、イオウ原子またはイミノ基」は、例えば、−O−O−、−O−NR13−などのようにヘテロ原子が隣り合わないことを意味する。R13基において、炭素数1〜30の1価の有機基としては、前記と同様の炭素数1〜30の1価の有機基が挙げられる。炭素数1〜30の1価の有機基のなかでは、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された環状エーテル基が好ましく、炭素数1〜20の鎖状飽和炭化水素基およびその水素原子の一部が炭素数1〜30のアルコキシ基で置換された鎖状飽和炭化水素基;炭素数4〜20の脂環式炭化水素基;炭素数6〜20の芳香族炭化水素基;ならびに炭素数4〜20の環状エーテル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェノキシエチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、フェニル基、ベンジル基およびテトラヒドロフルフリル基がさらに好ましく、メチル基およびシクロヘキシル基がより一層好ましい。
式(III)で表わされる環構造含有単位を与えるジエン構造含有単量体として、ヘテロ原子を含む1,5−ジエン構造含有単量体およびヘテロ原子を含む1,6−ジエン構造含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種のジエン構造含有単量体が用いられる。式(III)で表わされる環構造含有単位を与えるジエン構造含有単量体のなかで好適な単量体としては、式(IV):
(式中、R7、X、YおよびZは前記と同じ。R14は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、カルボキシル基、エステル基またはシアノ基を示す)
で表わされるジエン構造含有単量体が挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基のなかでは、メチル基が好ましい。エステル基としては、例えば、式:−COOR12(式中、R12は前記と同じ)で表わされる基などが挙げられる。
式(IV)で表わされるジエン構造含有単量体の具体例としては、式(IVa):
(式中、R7は前記と同じ)
表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IVb):
(式中、R7は前記と同じ)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IVc):
(式中、R7は前記と同じであり、各R7はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IVd):
(式中、R7およびR13は前記と同じ)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IVe):
(式中、R7は前記と同じ)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IVf):
(式中、R7およびR13は前記と同じ)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IVg):
(式中、R7は前記と同じ)
で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IVh):
(式中、R7は前記と同じ)
で表わされる1,5−ジエン構造含有単量体、式(IVi):
(式中、R7は前記と同じ)
で表わされる1,5−ジエン構造含有単量体などが挙げられる。これらのなかでは、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、式(IVa)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体、式(IVb)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体および式(IVc)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体が好ましく、式(IVa)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体がより好ましい。これらの単量体は、例えば、特開平10−226669号公報に記載の方法によって調製することができる。
式(IVa)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体としては、例えば、α−アリルオキシメチルアクリル酸、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸tert−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタジエニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルなどのアリルオキシメチルアクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでは、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジルおよびα−アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルが好ましく、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルおよびα−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルがより好ましい。また、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルが特に好ましい。
式(IVb)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体としては、例えば、α−メタリルオキシメチルアクリル酸、α−メタリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸プロピル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸ブチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸tert−ブチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタジエニル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルなどのメタリルオキシメチルアクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでは、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、α−メタリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−メタリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、およびα−メタリルオキシメチルアクリル酸ベンジルおよびα−メタリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリルが好ましく、α−メタリルオキシメチルアクリル酸メチルおよびα−メタリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルがより好ましい。
式(IVc)で表わされる1,6−ジエン構造含有単量体としては、例えば、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸プロピル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸イソプロピル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸tert−ブチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸フェノキシエチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸シクロヘキシル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸ジシクロペンタジエニル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸イソボルニル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸アダマンチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸ベンジル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル)エーテルなどのα−ヒドロキシメチルアクリル酸系単量体のエーテル体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでは、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸イソプロピル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸フェノキシエチル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸シクロヘキシル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸イソボルニル)エーテル、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸ベンジル)エーテルおよびビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル)エーテルが好ましく、ビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル)エーテルおよびビス(α−ヒドロキシメチルアクリル酸シクロヘキシル)エーテルが好ましい。
ジエン構造含有単量体のなかでは、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルおよびα−メタリルオキシメチルアクリル酸メチルが好ましい。
単量体成分におけるジエン構造含有単量体の含有率は、0質量%以上であるが、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに一層好ましくは15質量%以上であり、またその上限値は好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下、さらに一層好ましくは55質量%以下である。
2個以上の重合性二重結合を有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が2〜10のアルキルジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリル酸エステル;2,2−ジメチル−3−(プロペノイルオキシ)プロパン酸2,2−ジメチル−3−(プロペノイルオキシ)プロピル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの2個以上の重合性二重結合を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの2個以上の重合性二重結合を有する単量体のなかでは、耐擦傷性、伸長性および耐薬品性に優れた被膜を形成する観点から、2官能(メタ)アクリル酸エステルおよび3官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
(メタ)アクリル系モノマー以外の芳香族系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−エトキシスチレン、m−エトキシスチレン、p−エトキシスチレン、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−アセトキシスチレン、m−アセトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、o−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリレート系モノマー以外のカルボキシル基含有脂肪族系モノマーとしては、例えば、イタコン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
(メタ)アクリレート系モノマー以外の窒素原子含有脂肪族系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルメチルカルバメート、N,N−メチルビニルアセトアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、(メタ)アクリロニトリル、マレイミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
シラン基含有脂肪族系モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリレート系モノマー以外のカルボニル基含有脂肪族系モノマーとしては、例えば、アクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリロイルオキシアルキルプロペナール、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(メタ)アクリレート系モノマー以外のアジリジニル基含有脂肪族系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルアジリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、本発明においては、形成される被膜に紫外線安定性や紫外線吸収性を付与する観点から、本発明の目的が阻害されない範囲内で、紫外線安定性モノマー、紫外線吸収性モノマーなどを適量でモノマー成分に含有させてもよい。
紫外線安定性モノマーとしては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
紫外線吸収性モノマーとしては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマー、ベンゾフェノン系紫外線吸収性モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマーとしては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル]−4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
モノマー成分の重合方法としては、例えば、乳化重合法などの重合方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。モノマー成分の重合方法として乳化重合法を採用した場合には、エマルション粒子および当該モノマー成分を乳化重合させる際に使用した水性媒体を含有するエマルションを得ることができる。当該エマルションは、揮発性有機溶媒(VOC)を必要としないので、環境に優しいという利点がある。
以下においては、モノマー成分を乳化重合させることによってエマルション粒子を調製する場合の実施態様について詳細に説明する。
モノマー成分を乳化重合させる際には、水性媒体を用いることができる。水性媒体は、水または含水率が50質量%以上である水と親水性有機溶媒との混合溶媒を意味する。親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、アリルアルコールなどの1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどの脂肪族有機酸アルキルエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの親水性有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。水性媒体の中では、水が好ましい。
モノマー成分を乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの水性媒体中に界面活性剤を溶解させ、撹拌下でモノマー成分および重合開始剤を滴下させる方法、界面活性剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいたモノマー成分を水などの水性媒体中に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、水性媒体の量は、得られるエマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。水性媒体は、あらかじめ反応容器に仕込んでおいてもよく、あるいはプレエマルションとして使用してもよい。また、水性媒体は、必要により、モノマー成分を乳化重合させ、エマルションを製造しているときに用いてもよい。
モノマー成分を乳化重合させる際には、モノマー成分、界面活性剤および水性媒体を混合した後に乳化重合を行なってもよく、モノマー成分、界面活性剤および水性媒体を撹拌することによって乳化させ、プレエマルションを調製した後に乳化重合を行なってもよく、あるいはモノマー成分、界面活性剤および水性媒体のうちの少なくとも1種類とその残部のプレエマルションとを混合して乳化重合を行なってもよい。モノマー成分、界面活性剤および水性媒体は、それぞれ一括添加してもよく、分割添加してもよく、あるいは連続滴下してもよい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート、ナトリウムアルキルジフェニルエーテルジスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩;ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホネート塩、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩などのアリル基を有する硫酸エステルまたはその塩;アリルオキシメチルアルコキシエチルポリオキシエチレンの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性界面活性剤としては、例えば、ベタインエステル型界面活性剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子界面活性剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらのポリマーを構成するモノマーのうちの1種以上を共重合成分とするコポリマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
界面活性剤のなかでは、被膜の耐水性を向上させる観点から、重合性基を有する界面活性剤、すなわち、いわゆる反応性界面活性剤が好ましく、環境保護の観点から、非ノニルフェニル型の界面活性剤が好ましい。
反応性界面活性剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
モノマー成分100質量部あたりの界面活性剤の量は、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、被膜の耐水性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
モノマー成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応のモノマー成分の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、被膜の耐水性を向上させる観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。重合開始剤の添加方法の添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、モノマー成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、エマルション粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分100質量部あたりの連鎖移動剤の量は0質量部以上であるが、エマルション粒子の重量平均分子量を適切に調整する観点から、0.01〜10質量部であることが好ましい。
反応系内には、必要により、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができない。通常、モノマー成分100質量部あたりの添加剤の量は0質量部以上であるが、好ましくは0.01〜5質量部程度、より好ましくは0.1〜3質量部程度である。
モノマー成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合反応の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
モノマー成分を重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは0〜100℃、より好ましくは40〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
モノマー成分を重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜12時間程度である。
なお、モノマー成分を乳化重合させるとき、得られる(メタ)アクリル系ポリマーが有する酸性基の一部または全部が中和剤で中和されるようにしてもよい。中和剤は、最終段でモノマー成分を添加した後に使用してもよく、例えば、1段目の重合反応と2段目の重合反応との間に使用してもよく、初期の乳化重合反応の終了時に使用してもよい。
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸化物;アンモニア、モノメチルアミンなどの有機アミンなどのアルカリ性物質が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中和剤のなかでは、被膜の耐水性を向上させる観点から、アンモニアなどの揮発性を有するアルカリ性物質が好ましい。
エマルション粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、当該(メタ)アクリル系ポリマーの原料として用いられるモノマー成分に含まれているモノマーからなるホモポリマーのガラス転移温度(Tg)(絶対温度:K)とモノマーの質量分率から、式:
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・+Wn/Tgn
〔式中、Tgは、求めようとしているポリマーのガラス転移温度(K)、W1、W2、W3・・・・Wnは、それぞれ各モノマーの質量分率、Tg1、Tg2、Tg3・・・・Tgnは、それぞれ各モノマーの質量分率に対応するモノマーからなるホモポリマーのガラス転移温度(K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求めることができる。なお、ポリマーのガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定装置)、DTA(示差熱分析装置)、TMA(熱機械測定装置)などによって測定することもできる。
本発明においては、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、前記フォックス(Fox)の式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。
なお、特殊モノマー、多官能モノマーなどのようにガラス転移温度が不明のモノマーについては、ガラス転移温度が判明しているモノマーのみを用いて(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度が求められる。
このエマルション粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度を考慮して、当該エマルション粒子を構成している(メタ)アクリル系ポリマーの原料として用いられるモノマー成分の組成を決定することができる。
ホモポリマーのガラス転移温度は、例えば、メチルメタクリレートのホモポリマーでは105℃、シクロヘキシルメタクリレートのホモポリマーでは83℃、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルのホモポリマーでは84℃、n−ブチルアクリレートのホモポリマーでは−56℃、N−アクリロイルオキシエチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドのホモポリマーでは33℃、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドのホモポリマーでは56℃、2−ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーでは−15℃、アクリル酸のホモポリマーでは95℃である。
エマルション粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
前記エマルション粒子を構成している(メタ)アクリル系ポリマーは、架橋構造を有していてもよい。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、被膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上、さらに好ましくは20万以上、さらに一層好ましくは30万以上である。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは120万以下、より好ましくは100万以下、さらに好ましくは80万以下、さらに一層好ましくは60万以下である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)の測定装置として、東ソー(株)製、品番:HLC−8220GPC、分離カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel Super HZM−Mを用い、標準ポリスチレン〔東ソー(株)製〕による換算値である。
エマルション粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマーは、耐擦傷性を向上させる観点から、架橋構造を有していてもよい。(メタ)アクリル系ポリマーに架橋構造を付与する方法としては、例えば、モノマー成分にシランカップリング剤、多官能モノマーを含有させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。シランカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などの重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
エマルション粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、さらに好ましくは70nm以上であり、被膜の表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは450nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは350nm以下である。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルションを蒸留水で希釈し、得られた希釈液約10mLをガラスセルに採取し、これを動的光散法による粒度分布測定器〔パーティクル サイジング システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOM P Model 380〕を用い、ウインドウズベースのソフトウェア〔Windows(登録商標) Based Software〕を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
エマルション粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマーは、形成される被膜の耐擦傷性を向上させる観点から、反応性官能基を有することが好ましい。反応性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、グリシジル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、アミノ基、ベンゾフェニル基、マレイミド基、オキサゾリン基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの反応性官能基は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。反応性官能基を(メタ)アクリル系ポリマーに導入する方法としては、例えば、所望の反応性官能基を有するアクリル系モノマーを、エマルション粒子を構成する他の(メタ)アクリル系モノマーおよびアクリル系以外のモノマーとともに重合させることによって所望の反応性官能基を(メタ)アクリル系ポリマーに導入する方法、あらかじめ適当な官能基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを調製した後、当該(メタ)アクリル系ポリマーの官能基に所望の反応性官能基を有するアクリル系モノマーを反応させることによって所望の反応性官能基を(メタ)アクリル系ポリマーに導入する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。反応性官能基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを用いるとき、当該(メタ)アクリル系ポリマーが有する反応性官能基と反応し得る官能基を有する硬化性モノマーおよび/または硬化性オリゴマー、当該(メタ)アクリル系ポリマーが有する反応性官能基と反応し得る官能基を有する架橋剤などを用いることにより、形成される被膜の耐擦傷性を向上させることができる。
(メタ)アクリル系ポリマー1分子が有する官能基数は、形成される被膜の耐擦傷性を向上させる観点から、好ましくは1個以上、より好ましくは2個以上である。
水性媒体を用いてモノマー成分を乳化重合させることによってエマルション粒子を調製した場合、エマルション粒子が分散した水性媒体を得ることができる。
エマルション粒子が分散した水性媒体におけるエマルション粒子の含有率は、特に限定されないが、生産性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
エマルション粒子には多官能モノマーが含有される。なお、本発明において、多官能モノマーは、便宜上、オリゴマーを包含する概念のものである。また、モノマーは、分子量が1000未満である化合物を意味し、オリゴマーは、分子量が1000以上である化合物を意味する。
本発明においては、エマルション粒子に、多官能モノマーが含有されているので、本発明の熱硬化型水性樹脂組成物は、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する。
多官能モノマーは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルエーテル基などの不飽和二重結合を有する基、環状エーテル基、マレイミド基などの硬化性基を有する化合物である。これらの硬化性基は、それぞれ単独で用いられていてもよく、併用されていてもよい。
多官能モノマーは、耐擦傷性に優れた被膜を形成させることができる。多官能モノマーが有する硬化性基の数は、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上である。
また、多官能モノマーの分子量/官能基数は、耐擦傷性に優れた被膜を形成させる観点から、好ましくは80以上、より好ましくは85以上であり、密着性に優れた被膜を形成させる観点から、好ましくは160以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは140以下である。なお、2種類以上の多官能モノマーを併用する場合、多官能モノマーの分子量/官能基数は、各多官能モノマーの質量分率と官能基数との積をそれぞれ加算した値である。
多官能モノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(分子量:298)〔例えば、新中村化学工業(株)製、品番:A−TMM−3LM−Nなど〕、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量:296)〔例えば、サートマー社製、品番:SR351など〕、トリメチロールプロパントリメタクリレート(分子量:338)〔例えば、サートマー社製、品番:SR350など〕、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート(分子量:330)〔例えば、サートマー社製、品番:SR209など〕、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(分子量:578)〔例えば、日本化薬(株)製、品番:KAYARAD DPHAなど〕、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エトキシ化(4[エトキシ基の数を示す。以下同じ])ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子量:528)〔例えば、サートマー社製、品番:SR494など〕、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(分子量:525)〔例えば、サートマー社製、品番:SR399など〕、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、分子量が290〜2000であり、分子量/官能基数が80〜160であり、(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレート、分子量が10000未満のハイパーブランチオリゴマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
多官能モノマーのなかでは、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。これらの多官能モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、多官能モノマーを含有するエマルション粒子における多官能モノマーの含有率の下限値は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、またその上限値は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
本発明の熱硬化型水性樹脂組成物における不揮発分含量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
なお、熱硬化型水性樹脂組成物における不揮発分含量は、熱硬化型水性樹脂組成物1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔熱硬化型水性樹脂組成物における不揮発分含量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔熱硬化型水性樹脂組成物1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
本発明の熱硬化型水性樹脂組成物には、耐擦傷性を向上させる観点から、前記多官能モノマー以外の架橋剤が適量で含まれていてもよい。本発明の熱硬化型水性樹脂組成物に架橋剤が含まれている場合には、室温下のみならず、高温下であっても樹脂フィルムに対する本発明の熱硬化型水性樹脂組成物で形成される被膜の耐擦傷性を向上させることができる。
前記架橋剤としては、例えば、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、チタネート系架橋剤、尿素系架橋剤、アルキルアルコール化尿素系架橋剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
前記架橋剤のなかでは、樹脂フィルムに対する本発明の熱硬化型水性樹脂組成物で形成される被膜の接着性を向上させる観点から、オキサゾリン系架橋剤およびメラミン系架橋剤が好ましい。
オキサゾリン系架橋剤としては、例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)エタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,8−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)シクロヘキサン、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキサゾリン系架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
メラミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのメラミン系架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
多官能モノマーをエマルション粒子に含有させる方法としては、例えば、エマルション粒子を含有するエマルションと多官能モノマーとを混合することによって多官能モノマーをエマルション粒子に含有させる方法などが挙げられる。
多官能モノマーをエマルション粒子に含有させる具体的な方法としては、例えば、ジャーナル・オブ・ディスバージョン・サイエンス・アンド・テクノロジー(Journal of Dispersion Science & Technology)、5巻、231頁(1984年)に記載されている方法に基づいてエマルション粒子と多官能モノマーとを混合することにより、多官能モノマーをエマルション粒子に含有させる方法、マクロモレキュール・ケミストリー(Makromolecule Chemistry)、180巻、737頁(1979年)に記載されている2段階膨潤法により、多官能モノマーをエマルション粒子に含有させる方法、分子拡散法、動的膨潤法、拡散膨潤法などにより、多官能モノマーをエマルション粒子に含有させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
好適な多官能モノマーをエマルション粒子に含有させる方法としては、多官能モノマーの水分散液とエマルション粒子を含有するエマルションとを混合することにより、多官能モノマーをエマルション粒子に含有させる方法などが挙げられる。多官能モノマーの水分散液とエマルション粒子を含有するエマルションとを混合する方法としては、例えば、多官能モノマーの水分散液にエマルション粒子を含有するエマルションを一括添加法、連続的添加法、間欠的添加法またはこれらの方法の組合せなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
多官能モノマーをエマルション粒子に含有させる際には、乳化剤などの分散剤で多官能モノマーをあらかじめ水中に分散させ、得られた水分散液をホモジナイザーなどで例えば平均粒子径が0.01〜2μm程度となるように微分散させ、得られた多官能モノマーの微分散液をエマルションに添加することが好ましい。多官能モノマーの微分散液を調製する際には、ホモジナイザーとして、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどを用いることができる。
また、エマルション粒子中に多官能モノマーを効率よく含有させるために、吸収促進剤を用いることができる。吸収促進剤は、あらかじめエマルションに含有させておいてもよく、あるいは多官能モノマーと併用してもよい。エマルション粒子の不揮発分100質量部あたりの吸収促進剤の量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。なお、吸収促進剤として、吸収促進効果を発現するものであればよく、特に限定されない。吸収促進剤としては、例えば、トルエン、酢酸エチルなどの一般的な有機溶媒、2,2,2−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどの成膜助剤などが挙げられる。吸収促進剤として、揮発性を有する化合物を用いた場合には、熱硬化型水性樹脂組成物を調製した後、必要により、当該揮発性を有する化合物を脱気工程などによって容易に除去することができる。
本発明の熱硬化型水性樹脂組成物には、硬化促進剤が用いられる。本発明の熱硬化型水性樹脂組成物は、熱重合開始剤を含有させずに硬化促進剤のみを含有することにより、熱重合性重合開始剤を使用したときに低下する耐折り曲げ性を改善することができる。
硬化促進剤としては、金属化合物、β−ジケトン化合物、アミン化合物、四級アンモニウム塩、リン化合物、ニトロ化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
金属化合物としては、例えば、アルミニウム、チタニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ハフニウムなどの金属のβ−ジケトン錯体、金属アルコキサイド、カルボン酸塩、オキシ塩化物または塩化物が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記β−ジケトン錯体としては、例えば、アルミニウムトリス(2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムテトラ(3−メチル−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムテトラ(2,4−ヘキサンジオネート)、チタニウムテトラ(5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート)、チタニウムテトラ(3,5−ヘプタンジオネート)、チタニウムテトラ(6−メチルヘプタンジオネート)、チタニウムテトラ(2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムテトラ(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)、チタニウムオキシビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムオキシビス(3−メチル−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムオキシビス(2,4−ヘキサンジオネート)、チタニウムオキシビス(5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート)、チタニウムオキシビス(3,5−ヘプタンジオネート)、チタニウムオキシビス(6−メチルヘプタンジオネート)、チタニウムオキシビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムオキシビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)、バナジウムトリス(2,4−ペンタンジオネート)、クロムトリス(2,4−ペンタンジオネート)、マンガン(II)ビス(2,4−ペンタンジオネート)、マンガン(III)トリス(2,4−ペンタンジオネート)、鉄(II)ビス(2,4−ペンタンジオネート)、鉄(III)トリス(2,4−ペンタンジオネート)、コバルト(II)ビス(2,4−ペンタンジオネート)、コバルト(III)トリス(2,4−ペンタンジオネート)、ニッケルビス(2,4−ペンタンジオネート)、銅ビス(2,4−ペンタンジオネート)、亜鉛ビス(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(3−メチル−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(2,4−ヘキサンジオネート)、ジルコニウムテトラ(5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート)、ジルコニウムテトラ(3,5−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(6−メチルヘプタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオネート)、ジルコニウムテトラ(メチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラ(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムオキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート)、ハフニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのβ−ジケトン錯体のなかでは、チタニウムオキシビス(2,4−ペンタンジオネート)、チタニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)およびハフニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)が好ましい。
前記金属アルコキサイドとしては、例えば、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラn−プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラn−ブトキシド、チタニウムテトラtert−ブトキシド、チタニウムテトラ2−エチルヘキソキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラtert−ブトキシド、ハフニウムテトラn−ブトキシド、ハフニウムテトラtert−ブトキシドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、触媒性能に優れているともに工業的に容易に入手することができることから、チタニウムテトラn−プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシドおよびジルコニウムテトラn−ブトキシドが好ましい。
前記金属カルボン酸塩としては、例えば、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、2−エチルヘキサン酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、オキシシュウ酸バナジウム、ナフテン酸バナジウム、蟻酸クロム、酢酸クロム、シュウ酸クロム、ナフテン酸クロム、2−エチルヘキサン酸クロム、蟻酸マンガン、酢酸マンガン、オクテン酸マンガン、シュウ酸マンガン、酒石酸マンガン、ナフテン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸マンガン、酢酸鉄、乳酸鉄、シュウ酸鉄、クエン酸鉄、2−エチルヘキサン酸鉄、ナフテン酸鉄、ステアリン酸鉄、酢酸コバルト、オクテン酸コバルト、乳酸コバルト、シュウ酸コバルト、クエン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、酢酸ニッケル、乳酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、クエン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、グルコン酸銅、アセチルアセトン銅、オレイン酸銅、ナフテン酸銅、酢酸銅、乳酸銅、シュウ酸銅、クエン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、ナフテン酸銅、ステアリン酸銅、蟻酸亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、オクテン酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム、オキシオレイン酸ジルコニウム、カプリル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、オキシステアリン酸ジルコニウム、これらの水和物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの金属カルボン酸塩のなかでは、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、オクテン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オクテン酸コバルトおよびナフテン酸コバルトが好ましく、ナフテン酸マンガンおよびナフテン酸コバルトがより好ましい。
前記金属オキシ塩化物としては、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ塩化ハフニウム、これらの水和物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記金属塩化物としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化チタニウム、塩化バナジウム、塩化クロム、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅、塩化亜鉛、塩化ジルコニウム、塩化ハフニウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの金属塩化物のなかでは、触媒性能に優れ、工業的に容易に入手することができることから、塩化チタニウム、塩化ジルコニウム、塩化ハフニウムおよび塩化鉄が好ましい。
前記β−ジケトン化合物としては、例えば、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、2−メチルヘキサン−3,5−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2−メチルヘプタン−3,5−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,2−ジメチルヘキサン−3,5−ジオン、2,2,6−トリメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,2−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、3−メチルペンタン−2、4−ジオン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸プロピル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸ブチル、プロピオニル酢酸tert−ブチル、ブチリル酢酸メチル、ブチリル酢酸エチル、ブチリル酢酸プロピル、ブチリル酢酸イソプロピル、ブチリル酢酸ブチル、ブチリル酢酸tert−ブチル、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸ブチル、イソブチリル酢酸tert−ブチル、3−オキソヘプタン酸メチル、3−オキソヘプタン酸エチル、3−オキソヘプタン酸プロピル、3−オキソヘプタン酸イソプロピル、3−オキソヘプタン酸ブチル、3−オキソヘプタン酸tert−ブチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸メチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸エチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸プロピル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸イソプロピル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸ブチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸tert−ブチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸メチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸エチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸プロピル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸イソプロピル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸ブチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸tert−ブチル、ベンゾイル酢酸メチル、ジベンゾインメタン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸メチルエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジtert−ブチル、マロン酸メチルtert−ブチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのβ−ジケトン化合物のなかでは、触媒性能に優れ、工業的に容易に入手することができることから、2,4−ペンタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセト酢酸メチルおよびアセト酢酸エチルが好ましい。
前記アミン化合物としては、例えば、アニリン、トルイジン、クレゾール等のアニリン類;アセト酢酸アニリドなどのアニリドを含む芳香族アミン;モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジンなどの脂環式アミン;オクチルアミン;1−アセチル−2チオ尿素などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記四級アンモニウム塩としては、例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、ジトリメチルベンシルアンモニウムオキザレート、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート、トリメチルベンジルアンモニウムタータレート、トリメチルベンジルアンモニウムグリコレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、2−エチルヘキシルホスファイト、ベンゼンホスフォン酸、ベンゼンホスフィンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記ニトロ化合物としては、例えば、ジニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸、2−ニトロ−4−アミノフェノール、m−ニトロフェノール、o−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
硬化促進剤のなかでは、前記金属化合物が好ましく、蟻酸マンガン、酢酸マンガン、オクテン酸マンガン、シュウ酸マンガン、酒石酸マンガン、ナフテン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸マンガン酢酸コバルト、オクテン酸コバルト、乳酸コバルト、シュウ酸コバルト、クエン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸コバルトおよびステアリン酸コバルトがより好ましく、オクテン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オクテン酸コバルトおよびナフテン酸コバルトがさらに好ましい。これらの金属化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
硬化促進剤の量は、当該硬化促進剤の種類によって異なるので一概には決定することができない。例えば、硬化促進剤が前記金属化合物である場合、水性樹脂組成物の不揮発分における金属化合物が有する金属の含有率は、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは0.1〜100ppm、より好ましくは0.2〜50ppm、さらに好ましくは0.3〜10ppm、さら一層好ましくは0.4〜5ppmである。また、硬化促進剤が前記金属化合物以外の硬化促進剤である場合、水性樹脂組成物の不揮発分における前記金属化合物が有する金属以外の硬化促進剤の含有率は、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.03〜2質量%、さらに好ましくは0.05〜1質量%、さらに一層好ましくは0.08〜0.5質量%である。
なお、本発明においては、必要により、(メタ)アクリル系ポリマーの硬化を促進させるために、硬化促進助剤を用いることができる。硬化促進助剤としては、例えば、ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシ)−4−メチルアニリンなどのアミン化合物のβ−ケトエステル、β−ケトアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
本発明の熱硬化型水性樹脂組成物は、熱重合開始剤を含有させずに硬化促進剤のみを含有させることにより、熱重合開始剤を使用したときに低下する耐折り曲げ性を改善することができる。本発明の目的を阻害しない範囲内で熱重合開始剤を熱硬化型水性樹脂組成物に含有させてもよいが、耐折り曲げ性を向上させる観点から、本発明の熱硬化型水性樹脂組成物は、熱重合開始剤を含有しないことが好ましい。
熱重合開始剤としては、例えば、tert−ブチルベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、1、1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの熱重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの熱重合開始剤のなかでは、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成する観点から、tert−ブチルベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシドおよびジラウロイルパーオキシドが好ましく、tert−ブチルベンゾイルパーオキシドおよびtert−ブチルパーオキシドがより好ましい。
熱重合開始剤は、例えば、熱硬化型水性樹脂組成物に直接添加してもよく、あるいはエマルション粒子を含有するエマルションと混合してもよい。
以上のようにして得られる本発明の熱硬化型水性樹脂組成物は、エマルション粒子、水性媒体、多官能モノマーおよび硬化促進剤を含有するものであるが、必要により、例えば、各種添加剤などが本発明の目的を阻害しない範囲内で含まれていてもよい。
本発明の熱硬化型水性樹脂組成物は、耐擦傷性に優れるとともに耐折り曲げ性に優れた被膜を形成するので、例えば、塗料などのコーティング剤、印刷インク、接着剤、レジスト剤、成形材料などの原料として好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部(質量部、以下同じ)を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート600部、シクロヘキシルメタクリレート180部、ブチルアクリレート105部、N−アクリロイルオキシエチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド50部、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド50部およびアクリル酸15部を仕込むことによって滴下用プレエマルションを調製し、そのうち滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。重合反応の終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、エマルション粒子を含有し、不揮発分含量が40%である重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれているエマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度を求めたところ、当該ガラス転移温度は68℃であった。
次に、前記で得られた重合体分散液に含まれる不揮発分1000部に対し、硬化性モノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート〔新中村化学工業(株)製、品番:A−TMM−3LM−N〕1000部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬(株)製、品番:KAYARAD DPHA〕1500部と、重合体分散液に含まれる不揮発分および硬化性モノマーの不揮発分の合計量1000部あたりの量が2部となるようにトリフェニルホスフィンを添加した混合溶液を超音波ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製、品番:US−600S〕を用いて分散させた溶液を添加し、23℃にて24時間振とうすることにより、熱硬化型水性樹脂組成物を得た。
次に、前記で得られた熱硬化型水性樹脂組成物の物性として、耐擦傷性および耐折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
〔耐擦傷性〕
ポリエチレンテレフタレート製フィルム〔東洋紡(株)製、商品名:コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ:100μm〕を縦:20cm、横:20cmの大きさに裁断したフィルム(以下、PETフィルムという)に乾燥後の膜厚が1〜2μmとなるようにバーコーターで熱硬化型水性樹脂組成物を塗布することにより、当該熱硬化型水性樹脂組成物からなる被膜を形成させた。
次に、前記で形成された被膜を以下の硬化条件で硬化させることにより、硬化被膜とPETフィルムとの積層体を得た。
(硬化条件)
熱硬化型水性樹脂組成物からなる被膜が形成されたPETフィルムを表1に示す熱硬化条件で加熱することにより、被膜を硬化させた。
次に、硬化被膜とPETフィルムとの積層体を縦10cm、横10cmの正方形状に裁断することにより、試験片を作製した。
染色堅ろう度試験機〔スガ試験機(株)製、品番:FR−II〕を用い、スチールウール〔日本スチールウール(株)製、番手:#0000〕に150g/cm2の荷重をかけて試験片の被膜面を20往復擦り、試験片の被膜面で発生した傷の本数を数え、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎:傷なし
○:傷の数が1〜5本
△:傷の数が6〜15本
×:傷の数が16本以上
〔耐折り曲げ性〕
アルミニウム板(JIS A1050、縦:100mm、横:20mm、厚さ:1mm)の表面に乾燥後の被膜の厚さが1〜2μmとなるようにバーコーターで水性樹脂組成物を塗布し、得られたサンプルを180℃のオーブン中で1分間加熱乾燥させた後、オーブンからサンプルを取り出した直後に、被膜を外側にした状態でアルミニウム板の中心を90度曲げることによって耐折り曲げ性の試験を行なった。折り曲げ部分の被膜の外観を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて耐折り曲げ性を評価した。
(評価基準)
○:被膜が透明である。
△:被膜が僅かに白化している。
×:被膜が白化している。
なお、前記物性の評価において、×が1つもないものが合格基準を満たしている。
実施例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート600部、シクロヘキシルメタクリレート180部、ブチルアクリレート105部、N−アクリロイルオキシエチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド50部、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド50部およびアクリル酸15部を仕込むことによって滴下用プレエマルションを調製し、そのうち滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。重合反応の終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、エマルション粒子を含有し、不揮発分含量が40%である重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれているエマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度を求めたところ、当該ガラス転移温度は68℃であった。
次に、前記で得られた重合体分散液に含まれる不揮発分1000部に対し、硬化性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬(株)製、品番:KAYARAD DPHA〕1000部と、重合体分散液に含まれる不揮発分および硬化性モノマーの不揮発分の合計量1000部あたりの量が0.015部となるようにナフテン酸マンガンを添加した混合物を超音波ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製、品番:US−600S〕を用いて分散させた溶液を添加し、23℃にて24時間振とうすることにより、熱硬化型水性樹脂組成物を得た。
次に、前記で得られた熱硬化型水性樹脂組成物の物性として、耐擦傷性および耐折り曲げ性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
実施例3
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート600部、シクロヘキシルメタクリレート180部、ブチルアクリレート105部、N−アクリロイルオキシエチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド50部、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド50部およびアクリル酸15部を仕込むことによって滴下用プレエマルションを調製し、そのうち滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。重合反応の終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、エマルション粒子を含有し、不揮発分含量が40%である重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれているエマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度を求めたところ、当該ガラス転移温度は68℃であった。
次に、前記で得られた重合体分散液に含まれる不揮発分1000部に対し、硬化性モノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート〔新中村化学工業(株)製、品番:A−TMM−3LM−N〕1000部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬(株)製、品番:KAYARAD DPHA〕1500部と、重合体分散液に含まれる不揮発分および硬化性モノマーの不揮発分の合計量1000部あたりの量が2部となるようにトリフェニルホスフィンを添加した混合溶液を超音波ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製、品番:US−600S〕を用いて分散させた溶液を添加し、23℃にて24時間振とうした後、重合体分散液に含まれる不揮発分および硬化性モノマーの不揮発分の合計量1000部あたりの量が2部となるように熱重合開始剤としてtert−アミルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートを添加することにより、熱硬化型水性樹脂組成物を得た。
次に、前記で得られた熱硬化型水性樹脂組成物の物性として、耐擦傷性および耐折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
実施例4
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート680部、シクロヘキシルメタクリレート200部、ブチルアクリレート100部およびアクリル酸20部を仕込むことによって滴下用プレエマルションを調製し、そのうち滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。重合反応の終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、エマルション粒子を含有し、不揮発分含量が40%である重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれているエマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度を求めたところ、当該ガラス転移温度は75℃であった。
次に、前記で得られた重合体分散液に含まれる不揮発分1000部に対し、硬化性モノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート〔新中村化学工業(株)製、品番:A−TMM−3LM−N〕500部、トリメチロールプロパントリメタクリレート〔サートマー社製、品番:SR350〕500部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬(株)製、品番:KAYARAD DPHA〕1000部およびジペンタエリスリトールペンタアクリレート〔サートマー社製、品番:SR399〕1000部と、重合体分散液に含まれる不揮発分および硬化性モノマーの不揮発分の合計量1000部に対し、ナフテン酸コバルト0.01部およびアセト酢酸エチル1部を添加した混合溶液を超音波ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製、品番:US−600S〕を用いて分散させた溶液を添加し、23℃にて24時間振とうすることにより、熱硬化型水性樹脂組成物を得た。
次に、前記で得られた熱硬化型水性樹脂組成物の物性として、耐擦傷性および耐折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
実施例5
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート90部、シクロヘキシルメタクリレート200部、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル600部、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド100部およびアクリル酸10部を仕込むことによって滴下用プレエマルションを調製し、そのうち滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。重合反応の終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、エマルション粒子を含有し、不揮発分含量が40%である重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれているエマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度を求めたところ、当該ガラス転移温度は83℃であった。
次に、前記で得られた重合体分散液に含まれる不揮発分1000部に対し、硬化性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬(株)製、品番:KAYARAD DPHA〕2500部およびエトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート〔サートマー社製、品番:SR494〕1000部と、重合体分散液に含まれる不揮発分および硬化性モノマーの不揮発分の合計量1000部あたりの量が0.006部となるようにナフテン酸コバルトを添加した混合溶液を超音波ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製、品番:US−600S〕を用いて分散させた溶液を添加し、23℃にて24時間振とうすることにより、熱硬化型水性樹脂組成物を得た。
次に、前記で得られた熱硬化型水性樹脂組成物の物性として、耐擦傷性および耐折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
実施例6
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、シクロヘキシルメタクリレート200部およびα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル800部を仕込むことによって滴下用プレエマルションを調製し、そのうち滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。重合反応の終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、エマルション粒子を含有し、不揮発分含量が40%である重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれているエマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度を求めたところ、当該ガラス転移温度は84℃であった。
次に、前記で得られた重合体分散液に含まれる不揮発分1000部に対し、硬化性モノマーとしてテトラエチレングリコールジメタクリレート〔サートマー社製、品番:SR209〕1000部およびエトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート〔サートマー社製、品番:SR494〕3000部と、重合体分散液に含まれる不揮発分および硬化性モノマーの不揮発分の合計量1000部あたりの量が0.02部となるようにナフテン酸コバルトを添加した混合溶液を超音波ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製、品番:US−600S〕を用いて分散させた溶液を添加し、23℃にて24時間振とうすることにより、熱硬化型水性樹脂組成物を得た。
次に、前記で得られた熱硬化型水性樹脂組成物の物性として、耐擦傷性および耐折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
実施例7
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート300部、シクロヘキシルメタクリレート100部、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル500部、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド50部、2−ヒドロキシエチルアクリレート35部およびアクリル酸15部を仕込むことによって滴下用プレエマルションを調製し、そのうち滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。重合反応の終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、エマルション粒子を含有し、不揮発分含量が40%である重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれているエマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度を求めたところ、当該ガラス転移温度は84℃であった。
次に、前記で得られた重合体分散液に含まれる不揮発分1000部に対し、硬化性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬(株)製、品番:KAYARAD DPHA〕1000部、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート〔サートマー社製、品番:SR494〕3000部と、重合体分散液に含まれる不揮発分および硬化性モノマーの不揮発分の合計量1000部に対し、ナフテン酸コバルト0.005部およびナフテン酸マンガン0.005部を添加した混合溶液を超音波ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製、品番:US−600S〕を用いて分散させた溶液を添加し、23℃にて24時間振とうすることにより、熱硬化型水性樹脂組成物を得た。
次に、前記で得られた熱硬化型水性樹脂組成物の物性として、耐擦傷性および耐折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
実施例8
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート300部、シクロヘキシルメタクリレート100部、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル500部、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド50部、2−ヒドロキシエチルアクリレート35部およびアクリル酸15部を仕込むことによって滴下用プレエマルションを調製し、そのうち滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。重合反応の終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、エマルション粒子を含有し、不揮発分含量が40%である重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれているエマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度を求めたところ、当該ガラス転移温度は84℃であった。
次に、前記で得られた重合体分散液に含まれる不揮発分1000部に対し、硬化性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬(株)製、品番:KAYARAD DPHA〕1000部、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート〔サートマー社製、品番:SR494〕1000部およびジペンタエリスリトールペンタアクリレート〔サートマー社製、品番:SR399〕1000部と、重合体分散液に含まれる不揮発分および硬化性モノマーの不揮発分の合計量1000部に対し、α−アセチル−γ−ブチロラクトン5部を添加した混合溶液を超音波ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製、品番:US−600S〕を用いて分散させた溶液を添加し、23℃にて24時間振とうすることにより、熱硬化型水性樹脂組成物を得た。
次に、前記で得られた熱硬化型水性樹脂組成物の物性として、耐擦傷性および耐折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
比較例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部(質量部、以下同じ)を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート600部、シクロヘキシルメタクリレート180部、ブチルアクリレート105部、N−アクリロイルオキシエチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド50部、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド50部およびアクリル酸15部を仕込むことによって滴下用プレエマルションを調製し、そのうち滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。重合反応の終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、エマルション粒子を含有し、不揮発分含量が40%である重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれているエマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度を求めたところ、当該ガラス転移温度は68℃であった。
次に、前記で得られた重合体分散液に含まれる不揮発分1000部に対し、硬化性モノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート〔新中村化学工業(株)製、品番:A−TMM−3LM−N〕1000部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬(株)製、品番:KAYARAD DPHA〕1500部の混合溶液を超音波ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製、品番:US−600S〕を用いて分散させた溶液を添加し、23℃にて24時間振とうすることにより、熱硬化型水性樹脂組成物を得た。
次に、前記で得られた熱硬化型水性樹脂組成物の物性として、耐擦傷性および耐折り曲げ性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表1に示す。
比較例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート90部、シクロヘキシルメタクリレート200部、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル600部、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド100部およびアクリル酸10部を仕込むことによって滴下用プレエマルションを調製し、そのうち滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。重合反応の終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、エマルション粒子を含有し、不揮発分含量が40%である重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれているエマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度を求めたところ、当該ガラス転移温度は83℃であった。
次に、前記で得られた重合体分散液に含まれる不揮発分1000部あたりの量が0.01部となるようにナフテン酸コバルトを添加することにより、熱硬化型水性樹脂組成物を得た。
次に、前記で得られた熱硬化型水性樹脂組成物の物性として、耐擦傷性および耐折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
比較例3
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1040部を仕込んだ。また、滴下ロートに脱イオン水290部、乳化剤としてアニオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロン(登録商標)HS−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート90部、シクロヘキシルメタクリレート200部、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル600部、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド100部およびアクリル酸10部を仕込むことによって滴下用プレエマルションを調製し、そのうち滴下用プレエマルションの総量の6質量%にあたる約85部をフラスコ内に添加した。その後、ゆるやかに窒素ガスをフラスコ内に吹き込みながら撹拌下で80℃まで昇温し、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部をフラスコ内に添加し、重合反応を開始した。重合反応の終了後、滴下用プレエマルションの残部、3.5%過硫酸アンモニウム水溶液43部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液40部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコ内の温度を80℃に60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。得られた反応液を室温まで冷却することにより、エマルション粒子を含有し、不揮発分含量が40%である重合体分散液を得た。得られた重合体分散液に含まれているエマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度を求めたところ、当該ガラス転移温度は83℃であった。
次に、前記で得られた重合体分散液に含まれる不揮発分1000部に対し、硬化性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬(株)製、品番:KAYARAD DPHA〕2500部およびエトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート〔サートマー社製、品番:SR494〕1000部と、重合体分散液に含まれる不揮発分および硬化性モノマーの不揮発分の合計量1000部に対し、ナフテン酸コバルト0.015部および熱重合開始剤としてtert−アミルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート20部を添加した混合溶液を超音波ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製、品番:US−600S〕を用いて分散させた溶液を添加し、23℃にて24時間振とうすることにより、熱硬化型水性樹脂組成物を得た。
次に、前記で得られた熱硬化型水性樹脂組成物の物性として、耐擦傷性および耐折り曲げ性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
表1に示された結果から、各実施例で得られた熱硬化型水性樹脂組成物は、各比較例で得られた硬化型熱硬化型水性樹脂組成物と対比して、形成された被膜は、耐擦傷性に優れているだけでなく、耐折り曲げ性にも優れていることがわかる。