JP2016191105A - 白金族元素の収集方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】白金族元素を含む酸性水溶液を準備する準備工程、及び酸性水溶液にベタイン構造を含む固体化合物を接触させる固液接触工程を含む白金族元素の収集方法により、白金族元素を効率良く収集することができる。
【選択図】図1
Description
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 白金族元素を含む酸性水溶液を準備する準備工程、及び前記酸性水溶液に下記一般式(A)で表される構造を含む固体化合物を接触させる固液接触工程を含むことを特徴とする白金族元素の収集方法。
6の2価の炭化水素基を、R3は炭素数1〜3の2価の炭化水素基を表す。)
<2> 前記酸性水溶液に塩基を加える塩基添加工程を含む、<1>に記載の白金族元素の収集方法。
<3> 前記塩基が、アミン化合物である、<2>に記載の白金族元素の収集方法。
<4> パラジウム、ロジウム、及びルテニウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を収集する、<1>〜<3>の何れかに記載の白金族元素の収集方法。
<5> ロジウムを収集する、<4>に記載の白金族元素の収集方法。
本発明の一態様である白金族元素の収集方法(以下、「本発明の収集方法」と略す場合がある。)は、白金族元素を含む酸性水溶液を準備する準備工程(以下、準備工程)と略す場合がある。)、及び酸性水溶液に下記一般式(A)で表される構造を含む固体化合物を接触させる固液接触工程(以下、「固液接触工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。
本発明者らは、白金族元素の効率良い収集方法を求めて鋭意検討を重ねた結果、白金族元素を含む酸性水溶液に一般式(A)で表される構造を含む固体化合物を接触させることにより、白金族元素を固体化合物に吸着させて、効率良く収集することができることを見出したのである。
「一般式(A)で表される構造」は、四級アンモニウムカチオン構造(正電荷)とカルボキシラートアニオン構造(負電荷)を隣接しない位置に有した、いわゆるベタイン構造であるが、このベタイン構造と白金族元素の相互作用が強く、白金族元素イオンの吸着に非常に適しているものと考えられる。
本発明の収集方法は、硝酸等の酸性水溶液から有機溶媒を使用せずに白金族元素を収集することができ、さらに使用する固体化合物をフッ素原子(F)、リン原子(P)、硫黄原子(S)等を含まないものとすることができるため、高レベル放射性廃液からの白金族元素の回収に特に適していると言えるのである。
なお、一般式(A)中の波線は、その先が固体化合物の母体に結合していることを表すものとする。
以下、収集対象である白金族元素、「準備工程」、「固液接触工程」等について詳細に説明する。
なお、白金族元素は、具体的にはルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)であるが、収集対象としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)が好ましく、ロジウム(Rh)が特に好ましい。ロジウム(Rh)は、選択的に収集することは困難であったため、ロジウム(Rh)を収集対象とすることによって、本発明の収集方法を有効に利用することができる。
なお、白金族元素の酸化数は、通常1〜8価であり、それぞれの元素に応じた安定な酸化数を有しているが、3価、4価、5価が好ましい。
また、収集対象である白金族元素は、1種類に限られず、2種類以上の白金族元素を収集対象とするものであってもよい。
準備工程は、白金族元素を含む酸性水溶液を準備する工程であるが、準備方法は特に限定されず、白金族元素を含む酸性水溶液を入手しても、或いは白金族元素を含む酸性水溶液を自ら調製してもよい。
また、白金族元素を含む酸性水溶液を自ら調製する場合の調製方法も特に限定されず、白金族元素を含む水溶液に酸を添加しても、或いは白金族元素を溶解させるために酸性水溶液とし、それに白金族元素を含んだものを添加してもよい。
また、ルテニウム(Ru)を収集対象とする場合の酸性水溶液の水素イオン(H+)濃度は、好ましくは0.2M以下、より好ましくは0.1M以下、さらに好ましくは0.02M以下であり、好ましくは0.0001M以上、より好ましくは0.001M以上、さらに好ましくは0.01M以上である。
また、ロジウム(Rh)を収集対象とする場合の酸性水溶液の水素イオン(H+)濃度は、好ましくは0.2M以下、より好ましくは0.1M以下、さらに好ましくは0.02M以下であり、好ましくは0.0001M以上、より好ましくは0.001M以上、さらに好ましくは0.01M以上である。
また、パラジウム(Pd)を収集対象とする場合の酸性水溶液の水素イオン(H+)濃度は、好ましくは2.0M以下、より好ましくは1.0M以下、さらに好ましくは0.5
M以下であり、好ましくは0.01M以上、より好ましくは0.1M以上、さらに好ましくは0.3M以上である。
上記範囲内であると、白金族元素を効率良く収集し易くなる。
酸性水溶液に使用する酸の具体的種類は、特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。なお、塩酸を使用する場合、酸性水溶液は塩化物イオン(Cl−)を含み、硫酸を使用する場合、酸性水溶液は硫酸イオン(SO4 2−)を含み、硝酸を使用する場合、酸性水溶液は硝酸イオン(NO3 −)を含むと表現することができる。この中でも硝酸を使用すること、即ち酸性水溶液は硝酸イオン(NO3 −)を含むことが好ましい。
酸性水溶液の硝酸イオン(NO3 −)濃度は、通常0.01〜3.0Mの範囲であり、好ましくは0.1M以上、より好ましくは0.5M以上である。上記範囲内であると、白金族元素を効率良く収集し易くなる。
固液接触工程は、酸性水溶液に一般式(A)で表される構造を含む固体化合物を接触させる工程であるが、一般式(A)で表される構造の具体的種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
R1はそれぞれ独立して炭素数1〜6の炭化水素基を表しているが、「炭化水素基」は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。また、R1の炭素数は、好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。
R1としては、メチル基(−CH3)、エチル基(−C2H5)、n−プロピル基(−C3H7)、i−プロピル基(−CH(CH3)2)等が挙げられる。
R2は炭素数1〜6の2価の炭化水素基を表しているが、「2価の炭化水素基」とは、2つの結合部位を有する炭化水素基を意味し、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素−炭素不飽和結合、分岐構造、環状構造のそれぞれを有していてもよいことを意味する。また、R2の炭素数は、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
R2としては、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−C2H4−)、n−プロピレン基(−C3H6−)、i−プロピレン基(−CH(CH3)CH2−)、n−へキシレン基等が挙げられる。
R3は炭素数1〜3の2価の炭化水素基を表しているが、「2価の炭化水素基」とは、前述のものと同義である。
R3としては、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−C2H4−)、n−プロピレン基(−C3H6−)、i−プロピレン基(−CH(CH3)CH2−)が挙げられる。
一般式(A)で表される構造としては、下記式で表されるものが挙げられる。
母体は、高分子化合物等の有機固体化合物であっても、或いは二酸化ケイ素(シリカ)、黒鉛等の無機固体化合物の何れであってもよいが、有機固体化合物が好ましく、高分子化合物であることが好ましい。
また、高分子化合物としては、ポリスチレンが好ましい。
固体化合物としては、ポリスチレンを母体とした下記式で表される化合物が挙げられる。なお、架橋ポリスチレンを母体とした固体化合物は、市販されており、例えば三菱化学株式会社製両性イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)AMP03等が挙げられる。
固体化合物が粒子状である場合の平均粒子径は、通常10μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上である、通常10mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下である。上記範囲内であると、白金族元素を効率良く収集し易くなる。
以上、より好ましくは5000等量以上であり、通常50000等量以下、好ましくは20000等量以下、より好ましくは10000等量以下である。上記範囲内であると、白金族元素を効率良く収集し易くなる。
なお、酸性水溶液と固体化合物を振とうする場合の振とう時間は、通常20分以上、好ましくは40分以上、より好ましくは60分以上、さらに好ましくは120分以上である。上記範囲内であると、白金族元素を効率良く収集し易くなる。
固液接触工程は、1回に限られず、接触と分離を複数回繰り返してもよい。固液接触工程の回数は、通常1回〜20回の範囲であり、好ましくは15回以下、より好ましくは10回以下、さらに好ましくは5回以下である。上記範囲内であると、白金族元素を効率良く収集し易くなる。
塩基添加工程に使用される塩基は、ブレンステッド塩基であれば、特に限定されず、水酸化ナトリウム等の水酸化物塩、トリエチルアミン等のアミン化合物等が挙げられるが、アミン化合物が特に好ましい。
アミン化合物としては、トリエチルアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、トリス(2−アミノエチル)アミン等が挙げられる。
パラジウム、ロジウム、ルテニウムをそれぞれ0.5mM含む硝酸水溶液(硝酸濃度:0.1M、0.2M、0.4M、1.0M、2.0M、3.0M)をそれぞれ準備した。この酸性水溶液1mLに対し、それぞれベタイン型の両性イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)AMP03(三菱化学株式会社製)を0.200g添加し、1時間振とう(振とう条件:1800spm)した。振とう終了後、酸性水溶液に残ったパラジウム、ロジウム、ルテニウムのそれぞれの濃度を測定し、水相と固相の分配係数を算出した。なお、分配係数Kdは、下記式に測定値を代入して算出した。結果を図1に示す。
パラジウム、ロジウム、ルテニウムをそれぞれ0.5mM含む塩酸水溶液(塩酸濃度:0.1M、0.2M、0.4M、1.0M、2.0M、3.0M)をそれぞれ準備した。この酸性水溶液1mLに対し、それぞれベタイン型の両性イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)AMP03(三菱化学株式会社製)を0.200g添加し、1時間振とう(振とう条件:1800spm)した。振とう終了後、酸性水溶液に残ったパラジウム、ロジウム、ルテニウムのそれぞれの濃度を測定し、水相と固相の分配係数を算出した。結果を図2に示す。
硝酸と硝酸ナトリウムを用いて、ロジウムを0.1mM含む硝酸水溶液(水素イオン(H+)濃度:0.12M、0.17M、0.22M、0.27M、0.32M、硝酸イオン(NO3 −)濃度:0.32M)をそれぞれ準備した。この酸性水溶液1mLに対し、それぞれベタイン型の両性イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)AMP03(三菱化学株式会社製)を0.200g添加し、1時間振とう(振とう条件:1800spm)した。振とう終了後、酸性水溶液に残ったロジウムの濃度を測定し、水相と固相の分配係数を算出した。結果を図3に示す。
硝酸と硝酸ナトリウムを用いて、ロジウムを0.1mM含む硝酸水溶液(硝酸イオン(NO3 −)濃度:0.32M、0.37M、0.42M、0.47M、0.52M、水素イオン(H+)濃度:0.32M)をそれぞれ準備した。この酸性水溶液1mLに対し、それぞれベタイン型の両性イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)AMP03(三菱化学株式会社製)を0.200g添加し、1時間振とう(振とう条件:1800spm)した。振とう終了後、酸性水溶液に残ったロジウムの濃度を測定し、水相と固相の分配係数を算出した。結果を図4に示す。
ロジウムを0.1mMとトリエチルアミンを所定濃度含む硝酸水溶液(硝酸濃度:0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M)をそれぞれ準備した。この酸性水溶液1mLに対し、それぞれベタイン型の両性イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)AMP03(三菱化学株式会社製)を0.200g添加し、1時間振とう(振とう条件:1800spm)した。振とう終了後、酸性水溶液に残ったロジウムの濃度を測定し、水相と固相の分配係数を算出した。結果を図5に示す。
ロジウムを0.1mMとトリエチルアミンを所定濃度含む塩酸水溶液(塩酸濃度:0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M)をそれぞれ準備した。この酸性水溶液1mLに対し、それぞれベタイン型の両性イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)AMP03(三菱化学株式会社製)を0.200g添加し、1時間振とう(振とう条件:1800spm)した。振とう終了後、酸性水溶液に残ったロジウムの濃度を測定し、水相と
固相の分配係数を算出した。結果を図6に示す。
ロジウムを10mMとトリエチルアミンを所定濃度含む硝酸水溶液(硝酸濃度:0.1M、0.2M、0.3M、0.4M、0.5M)をそれぞれ準備した。この酸性水溶液1mLに対し、それぞれベタイン型の両性イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)AMP03(三菱化学株式会社製)を0.200g添加し、1時間振とう(振とう条件:1800spm)した。振とう終了後、酸性水溶液に残ったロジウムの濃度を測定し、ロジウムの吸着率をそれぞれ算出した。なお、吸着率は、下記式に測定値を代入して算出した。結果を図7に示す。
なお、図7の(1)〜(5)は、それぞれ下記の条件であることを表している。
((1)硝酸濃度:0.1M、トリエチルアミン濃度:0.05M、(2)硝酸濃度:0.2M、トリエチルアミン濃度:0.15M、(3)硝酸濃度:0.3M、トリエチルアミン濃度:0.25M、(4)硝酸濃度:0.4M、トリエチルアミン濃度:0.35M、(5)硝酸濃度:0.5M、トリエチルアミン濃度:0.45M)
0.1mMのルテニウム、ロジウム、パラジウムを含む塩酸水溶液(水素イオン(H+)濃度:4.47mM、1.20mM、0.59mM))をそれぞれ準備した。この水溶液1mLに対し、それぞれベタイン型の両性イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)AMP03(三菱化学株式会社製)を0.200g添加し、1時間振とう(振とう条件:1800spm)した。振とう終了後、水溶液中のルテニウム、ロジウム、パラジウム濃度をそれぞれ測定し、各元素に関する水相と固相の分配係数を算出した。結果を図8に示す。
Claims (5)
- 前記酸性水溶液に塩基を加える塩基添加工程を含む、請求項1に記載の白金族元素の収集方法。
- 前記塩基が、アミン化合物である、請求項2に記載の白金族元素の収集方法。
- パラジウム、ロジウム、及びルテニウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を収集する、請求項1〜3の何れか1項に記載の白金族元素の収集方法。
- ロジウムを収集する、請求項4に記載の白金族元素の収集方法。
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