JP2016190955A - 面内等方的な熱寸法安定性を有する耐熱性樹脂複合体 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い温度環境下に曝される機会が多く、かつ高い寸法安定性が求められる用途に適応される耐熱性樹脂複合体を提供する。
【解決手段】
炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む耐熱性樹脂複合体であって、170℃以上180℃以下の範囲におけるMD方向および/またはCD方向の線膨張係数が9×10−6K−1以下であり、前記線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値が2×10−6K−1以下である、耐熱性樹脂複合体。耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量和比が30/70〜70/30の範囲であってもよい。また、炭素繊維の平均繊維長が3mm以上40mm以下であってもよい。
【選択図】なし
【解決手段】
炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む耐熱性樹脂複合体であって、170℃以上180℃以下の範囲におけるMD方向および/またはCD方向の線膨張係数が9×10−6K−1以下であり、前記線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値が2×10−6K−1以下である、耐熱性樹脂複合体。耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量和比が30/70〜70/30の範囲であってもよい。また、炭素繊維の平均繊維長が3mm以上40mm以下であってもよい。
【選択図】なし
Description
本発明は、優れた面内等方的な熱寸法安定性と耐熱性を兼ね備えた耐熱性樹脂複合体に関する。このような耐熱性樹脂複合体は、一般産業資材分野、電気・電子分野、土木・建築分野、航空機・自動車・船舶分野、農業資材分野、光学材料分野、医療材料分野などにおいて、特に高温域までの、温度変化の大きい環境下で、寸法安定性が要求される用途に対してきわめて有効に使用することができる。
炭素繊維と樹脂材料からなる樹脂複合体は、軽量であり、比強度・比剛性に優れているため、金属代替として、電気・電子用途、土木・建築用途、自動車用途、航空機用途等に広く用いられている。なかでも樹脂材料として熱可塑性樹脂を用いた樹脂複合体は、高速成形による大量生産が可能であり、リサイクル性にも優れることから、量産向けの自動車材料など、様々な用途で注目されている。これらの用途の中には、耐熱性および高温での等方的な寸法安定性が要求される場合がある。
しかし、一般的な樹脂複合体の成形方法である射出成形では、成形の際に行う溶融混練時に炭素繊維長が短くなることにより成形で得られる樹脂複合体の寸法安定性が低下することや、成形時の流動により炭素繊維が配向し樹脂複合体に異方性が生じることなどの課題がある。
特許文献1では、炭素繊維の短繊維が面方向でランダムに分散した不織布を用いた樹脂複合体が開示されている。この基材では、炭素繊維長を長いまま成形可能であり、繊維配向が面方向でランダムであるために、等方的かつ高い寸法安定性を実現している。しかし、樹脂の耐熱性に関しては記述が無く、高温域での使用が想定されていない。
上述したように、樹脂複合体を広く普及させるためには、高い温度環境下でも高い寸法安定性を有することが望まれていた。
本発明者らは上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、強化繊維基材と熱可塑性樹脂とを、特定の構成にて複合させることで、高い温度環境下でも等方的、かつ高い寸法安定性を有する樹脂複合体を製造できることを見出した。
すなわち本発明は、炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む耐熱性樹脂複合体であって、170℃以上180℃以下の範囲におけるMD方向および/またはCD方向の線膨張係数が9×10−6K−1以下であり、前記線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値が2×10−6K−1以下である耐熱性樹脂複合体である。
また、前記耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量比が30/70〜70/30の範囲であってもよく、前記炭素繊維の平均繊維長が3mm以上40mm以下であってもよい。
また、前記耐熱性樹脂複合体の熱可塑性樹脂の融点またはガラス転移温度のいずれかが200℃以上400℃以下の範囲であってもよい。
また、前記耐熱性樹脂複合体の熱可塑性樹脂が、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
本発明によれば、高い温度環境下に曝される機会が多く、かつ高い寸法安定性が求められる用途に適応される耐熱性樹脂複合体を提供することが可能である。
本発明の耐熱性樹脂複合体は炭素繊維と熱可塑性樹脂を含み、耐熱性樹脂複合体の170℃以上180℃以下の範囲におけるMD方向および/またはCD方向の線膨張係数が9×10−6K−1以下であり、前記線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値が2×10−6K−1以下である。
(炭素繊維)
本発明の耐熱性樹脂複合体に含まれる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維と、一連のピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維のいずれも使用することができる。
本発明の耐熱性樹脂複合体に含まれる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維と、一連のピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維のいずれも使用することができる。
炭素繊維の繊維径は3μm以上20μm以下が好ましく、5μm以上12μm以下がより好ましい。炭素繊維の繊維径が細過ぎると、取り扱い性に劣り、また、一般に極細の炭素繊維は高コストであるため、製品コストを押し上げる原因となる。炭素繊維の繊維径が太過ぎると、繊維強度が低下し、折れ易くなるため、好ましくない。なお、ここで、炭素繊維の繊維径は顕微鏡観察により30〜50本の繊維径を測定し、その平均値を算出することにより求められる。
炭素繊維の単繊維の平均繊維長は、3mm以上40mm以下が好ましく、5mm以上35mm以下がより好ましく、10mm以上30mm以下がさらに好ましい。繊維長が3mm未満の場合、炭素繊維による補強効果が不十分となり、温度変化に対する寸法安定性に劣る。繊維長が40mmを超える場合、複合体中での分散が不十分になるなど、成形不良が生じ、均一な物性が得られなくなる。
本発明の耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量和に対する炭素繊維の質量の割合は、30質量%以上70質量%以下が好ましく、35質量%以上65質量%以下がより好ましく、40質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量和に対する炭素繊維の質量の割合が30質量%未満の場合、炭素繊維による耐熱性樹脂複合体への補強効果が不十分となり、耐熱性樹脂複合体の寸法安定性は低下する。耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量和に対する炭素繊維の質量の割合が70質量%を超える場合、炭素繊維に対する熱可塑性樹脂の量が不足するため、耐熱性樹脂複合体に成形不良が生じる。
(熱可塑性樹脂)
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、加熱溶融あるいは加熱流動するものであれば特に制限はないが、ガラス転移温度または融点のいずれかが200℃以上400℃以下であってもよい。ガラス転移温度または融点のいずれかが200℃未満の場合、高温下では熱可塑性樹脂の軟化が始まり、耐熱性樹脂複合体の寸法安定性が著しく低下する。一方ガラス転移温度または融点のいずれかが400℃を超える場合、高温での加熱成形が必要となり、成形自体が困難となる。本発明で用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度または融点のいずれか一方は、205℃以上350℃以下が好ましく、210℃以上300℃以下が好ましい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、加熱溶融あるいは加熱流動するものであれば特に制限はないが、ガラス転移温度または融点のいずれかが200℃以上400℃以下であってもよい。ガラス転移温度または融点のいずれかが200℃未満の場合、高温下では熱可塑性樹脂の軟化が始まり、耐熱性樹脂複合体の寸法安定性が著しく低下する。一方ガラス転移温度または融点のいずれかが400℃を超える場合、高温での加熱成形が必要となり、成形自体が困難となる。本発明で用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度または融点のいずれか一方は、205℃以上350℃以下が好ましく、210℃以上300℃以下が好ましい。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、単独で、または二種以上を組み合わせて用いてもよく、具体例としては、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂などが挙げられるが、中でも、力学物性や難燃性、耐熱性、成形性、入手のし易さの点から、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂が好適に用いられる。ポリアミド系樹脂においては、半芳香族ポリアミド系樹脂がより好ましい。
本発明の耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量和に対する熱可塑性樹脂の質量の割合は、30質量%以上70質量%以下が好ましく、35質量%以上65質量%以下がより好ましく、40質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量和に対する熱可塑性樹脂の質量の割合が30質量%未満の場合、熱可塑性樹脂が不足することで耐熱性樹脂複合体に成形不良が生じる。耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量和に対する熱可塑性樹脂の質量の割合が70質量%を超える場合、炭素繊維による耐熱性樹脂複合体への補強効果が不十分となり、耐熱性樹脂複合体の寸法安定性は低下する。なお、本発明の耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量比は、耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量和に対する炭素繊維の質量の割合および熱可塑性樹脂の質量の割合から求めることができる。本発明の耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量比は、30/70〜70/30の範囲が好ましい。
本発明の耐熱性樹脂複合体には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、帯電防止剤、ラジカル抑制剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機物、などの添加物を含んでいてもよい。かかる添加物の無機物の具体例としては、カーボンナノチューブ、フラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などが用いられる。
(炭素繊維と熱可塑性樹脂の複合化)
本発明における耐熱性樹脂複合体の製造にあたって炭素繊維と熱可塑性樹脂とを複合化する方法としては、耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維の配向が面方向にランダムになるようにすることができれば、特に方法の制限はない。複合化手法として、例えば、炭素繊維と粉末状または繊維状の熱可塑性樹脂が混合した不織布を作製し、これを加熱加圧成形する方法がある。また他の方法として、炭素繊維不織布に熱可塑性樹脂の溶液もしくは溶融液を含浸させ、必要に応じて乾燥してシート状のプリプレグとする方法もある。更に別の方法として、炭素繊維不織布と不織布状またはフィルム状の熱可塑性樹脂を交互に積層させた後に、これを加熱加圧成形する方法もある。これらの手法のうち、炭素繊維の分散性、等方性、樹脂の含浸性、均一性、取り扱い性などから、炭素繊維と熱可塑性繊維を混合した不織布を用いることが好ましい。
本発明における耐熱性樹脂複合体の製造にあたって炭素繊維と熱可塑性樹脂とを複合化する方法としては、耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維の配向が面方向にランダムになるようにすることができれば、特に方法の制限はない。複合化手法として、例えば、炭素繊維と粉末状または繊維状の熱可塑性樹脂が混合した不織布を作製し、これを加熱加圧成形する方法がある。また他の方法として、炭素繊維不織布に熱可塑性樹脂の溶液もしくは溶融液を含浸させ、必要に応じて乾燥してシート状のプリプレグとする方法もある。更に別の方法として、炭素繊維不織布と不織布状またはフィルム状の熱可塑性樹脂を交互に積層させた後に、これを加熱加圧成形する方法もある。これらの手法のうち、炭素繊維の分散性、等方性、樹脂の含浸性、均一性、取り扱い性などから、炭素繊維と熱可塑性繊維を混合した不織布を用いることが好ましい。
不織布の製造方法は特に限定はなく、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、スチームジェット不織布、乾式抄紙法、湿式抄紙法などが挙げられる。なかでも、生産効率や強化繊維の不織布中での均一分散の面から、湿式抄紙法が好ましい。例えば、湿式抄紙法では、前記熱可塑性繊維および強化繊維を水中に均一に分散させた水性スラリーとし、ついでこのスラリーを通常の抄紙工程に供すればよい。なお、水性スラリーは、後述するバインダーなどを含んでいてもよい。また、紙の均一性や圧着性を高めるために、スプレードライによりバインダーを塗布したり、湿式抄紙工程後に熱プレス工程を加えたりしてもよい。
不織布の目付は5g/m2以上1500g/m2以下であることが好ましい。目付が5g/m2より小さい場合、地合斑が大きくなり、また工程通過性が悪化するので好ましくない。目付が1500g/m2より大きい場合も、同様な理由で好ましくない。好ましくは6g/m2以上1400g/m2以下であり、より好ましくは7g/m2以上1300g/m2以下である。
(耐熱性樹脂複合体の製造)
耐熱性樹脂複合体は、例えば加熱成形法により製造することができる。加熱成形法は特に制限なく、スタンパブル成形や加圧成形、真空圧着成形、GMT成形のような一般的な圧縮成形が好適に用いられる。その時の成形温度は用いる熱可塑性繊維の流動開始温度や分解温度に併せて設定すればよい。例えば、熱可塑性繊維が結晶性の場合、成形温度は熱可塑性繊維の融点以上、(例えば、融点+100℃以下)の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性繊維が非結晶性の場合、成形温度は熱可塑性繊維のガラス転移温度以上、(例えば、ガラス転移温度+200℃以下)の範囲であることが好ましい。なお、必要に応じて、加熱成形する前にIRヒーターなどで予備加熱することもできる。
耐熱性樹脂複合体は、例えば加熱成形法により製造することができる。加熱成形法は特に制限なく、スタンパブル成形や加圧成形、真空圧着成形、GMT成形のような一般的な圧縮成形が好適に用いられる。その時の成形温度は用いる熱可塑性繊維の流動開始温度や分解温度に併せて設定すればよい。例えば、熱可塑性繊維が結晶性の場合、成形温度は熱可塑性繊維の融点以上、(例えば、融点+100℃以下)の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性繊維が非結晶性の場合、成形温度は熱可塑性繊維のガラス転移温度以上、(例えば、ガラス転移温度+200℃以下)の範囲であることが好ましい。なお、必要に応じて、加熱成形する前にIRヒーターなどで予備加熱することもできる。
加熱成形する際の圧力の制限は特にないが、通常は0.05N/mm2以上の圧力で行われる。加熱成形する際の時間の制限は特にないが、基材の加熱ムラ防止のため、通常は10秒以上であることが好ましい。また、長時間高温に曝すとポリマーが劣化してしまう可能性があるので、30分以内であることが好ましい。また、得られる耐熱性樹脂複合体の厚さや密度は、繊維の種類や加える圧力で適宜設定可能である。更には、得られる耐熱性樹脂複合体の形状にも特に制限は無く、適宜設定可能である。目的に応じて、例えば仕様の異なる不織布を複数枚積層する、仕様の異なる不織布を金型の中に別々に配置するなどの上で、加熱成形してもよい。また、他の繊維織物や樹脂複合体と併せて成形してもよい。さらに、一度加熱成形して得られた耐熱性樹脂複合体を、再度加熱成形してもよい。
(耐熱性樹脂複合体の線膨張係数)
本発明の耐熱性樹脂複合体の170℃以上180℃以下の範囲におけるMD方向および/またはCD方向の線膨張係数は9×10−6K−1以下であり、7×10−6K−1以下が好ましく、5×10−6K−1以下がより好ましい。耐熱性樹脂複合体の170℃以上180℃以下の範囲における線膨張係数が9×10−6K−1を超える場合、耐熱性樹脂複合体の寸法安定性が低下する。また、本発明の耐熱性樹脂複合体における、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は2×10−6K−1以下であり、1.5×10−6K−1以下が好ましく、1.0×10−6K−1以下がより好ましい。線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値が2×10−6K−1を超える場合、耐熱性樹脂複合体の等方的な寸法安定性が低下する。なお、ここで言う線膨張係数は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。また、ここで言うMD方向とは耐熱性樹脂複合体の配向と平行となる向きであり、CD方向とは耐熱性樹脂複合体の配向と垂直となる向きである。例えば、ロール状原料を用いて成型した耐熱性樹脂複合体であれば、ロールの巻き方向がMD方向、ロールの幅方向がCD方向である。また、射出成形体であれば、射出方向がMD方向、射出方向に垂直な方向がCD方向である。
本発明の耐熱性樹脂複合体の170℃以上180℃以下の範囲におけるMD方向および/またはCD方向の線膨張係数は9×10−6K−1以下であり、7×10−6K−1以下が好ましく、5×10−6K−1以下がより好ましい。耐熱性樹脂複合体の170℃以上180℃以下の範囲における線膨張係数が9×10−6K−1を超える場合、耐熱性樹脂複合体の寸法安定性が低下する。また、本発明の耐熱性樹脂複合体における、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は2×10−6K−1以下であり、1.5×10−6K−1以下が好ましく、1.0×10−6K−1以下がより好ましい。線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値が2×10−6K−1を超える場合、耐熱性樹脂複合体の等方的な寸法安定性が低下する。なお、ここで言う線膨張係数は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。また、ここで言うMD方向とは耐熱性樹脂複合体の配向と平行となる向きであり、CD方向とは耐熱性樹脂複合体の配向と垂直となる向きである。例えば、ロール状原料を用いて成型した耐熱性樹脂複合体であれば、ロールの巻き方向がMD方向、ロールの幅方向がCD方向である。また、射出成形体であれば、射出方向がMD方向、射出方向に垂直な方向がCD方向である。
(バインダー)
本発明の耐熱性樹脂複合体は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを接着するバインダーを含んでいてもよく、前記バインダーは繊維であってもよく、前記熱可塑性樹脂からなる繊維であってもよく、融点またはガラス転移温度のいずれもが200℃未満または400℃を超えてもよい。バインダーとしては、例えばポリビニルアルコール系繊維などの水溶性ポリマー繊維、PET系繊維などの熱融着繊維、パラ系アラミド繊維や全芳香族ポリエステル系繊維のパルプ状物などが挙げられる。また、前記熱可塑性樹脂以外の樹脂を用いる場合、耐熱性の低下を防ぐため、炭素繊維と熱可塑性樹脂とバインダーの質量和に対するバインダーの割合は8%以下であることが望ましい。
本発明の耐熱性樹脂複合体は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを接着するバインダーを含んでいてもよく、前記バインダーは繊維であってもよく、前記熱可塑性樹脂からなる繊維であってもよく、融点またはガラス転移温度のいずれもが200℃未満または400℃を超えてもよい。バインダーとしては、例えばポリビニルアルコール系繊維などの水溶性ポリマー繊維、PET系繊維などの熱融着繊維、パラ系アラミド繊維や全芳香族ポリエステル系繊維のパルプ状物などが挙げられる。また、前記熱可塑性樹脂以外の樹脂を用いる場合、耐熱性の低下を防ぐため、炭素繊維と熱可塑性樹脂とバインダーの質量和に対するバインダーの割合は8%以下であることが望ましい。
(耐熱性樹脂複合体の用途)
本発明の耐熱性樹脂複合体は、一般産業資材分野、電気・電子分野、土木・建築分野、航空機・自動車・船舶分野、農業資材分野、光学材料分野、医療材料分野などにおいて、特に高温域までの、温度変化の大きい環境下で、寸法安定性が要求される用途に対してきわめて有効に使用することができる。
本発明の耐熱性樹脂複合体は、一般産業資材分野、電気・電子分野、土木・建築分野、航空機・自動車・船舶分野、農業資材分野、光学材料分野、医療材料分野などにおいて、特に高温域までの、温度変化の大きい環境下で、寸法安定性が要求される用途に対してきわめて有効に使用することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何等限定されるものではない。以下の実施例及び比較例においては、下記の方法により各種物性を測定した。
[熱可塑性樹脂およびバインダーの融点]
融点は、島津製作所製 示差走査熱量分析装置「DSC−60」を用い、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下で測定し、そのピーク温度(℃)から求めた。
融点は、島津製作所製 示差走査熱量分析装置「DSC−60」を用い、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下で測定し、そのピーク温度(℃)から求めた。
[熱可塑性樹脂およびバインダーのガラス転移温度]
ガラス転移温度は、レオロジー社製固体動的粘弾性装置「レオスペクトラDVE−V4」を用い、周波数10Hz、昇温速度10℃/分で損失正接(tanδ)の温度依存性を測定し、そのピーク温度(℃)から求めた。
ガラス転移温度は、レオロジー社製固体動的粘弾性装置「レオスペクトラDVE−V4」を用い、周波数10Hz、昇温速度10℃/分で損失正接(tanδ)の温度依存性を測定し、そのピーク温度(℃)から求めた。
[炭素繊維、熱可塑性樹脂およびバインダーの平均繊維長]
それぞれのカット糸から無作為に100本抜き出し、それぞれの繊維長を測定し、それぞれの平均繊維長(mm)を求めた。
それぞれのカット糸から無作為に100本抜き出し、それぞれの繊維長を測定し、それぞれの平均繊維長(mm)を求めた。
[炭素繊維の割合、熱可塑性樹脂の割合、バインダーの割合]
炭素繊維の割合、熱可塑性樹脂の割合、バインダーの割合は、スラリーを調製するにあたって使用した炭素繊維質量、熱可塑性樹脂質量、バインダー質量、から、以下の式に従い算出した。
炭素繊維比率 (%)=炭素繊維質量(g)/(炭素繊維質量+熱可塑性樹脂質量)(g)×100
熱可塑性樹脂比率 (%)=熱可塑性樹脂質量(g)/(炭素繊維質量+熱可塑性樹脂質量)(g)×100
バインダー比率 (%)= バインダー質量(g)/(炭素繊維質量+熱可塑性樹脂質量+バインダー質量)(g)×100
炭素繊維の割合、熱可塑性樹脂の割合、バインダーの割合は、スラリーを調製するにあたって使用した炭素繊維質量、熱可塑性樹脂質量、バインダー質量、から、以下の式に従い算出した。
炭素繊維比率 (%)=炭素繊維質量(g)/(炭素繊維質量+熱可塑性樹脂質量)(g)×100
熱可塑性樹脂比率 (%)=熱可塑性樹脂質量(g)/(炭素繊維質量+熱可塑性樹脂質量)(g)×100
バインダー比率 (%)= バインダー質量(g)/(炭素繊維質量+熱可塑性樹脂質量+バインダー質量)(g)×100
[線膨張係数]
厚さ3mmの平板から、面内の直交する2方向(MD方向とCD方向)について、線膨張係数を測定する方向を試験片の長さ方向とした、長さ15mm、幅3mmの短冊状試験片を切り出した。ブルカー・エイエックスエス株式会社製線膨張係数測定装置「TMA−4000SA」を用い、TMA法により、昇温速度5℃/分、荷重10gで、20℃から1℃刻みで、短冊状の試験片の線膨張係数を測定し、170℃から180℃での線膨張係数を算出した。線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値(以下、|MD−CD|と記載することがある)は、得られたMD方向の線膨張係数とCD方向の線膨張係数から求めた。
厚さ3mmの平板から、面内の直交する2方向(MD方向とCD方向)について、線膨張係数を測定する方向を試験片の長さ方向とした、長さ15mm、幅3mmの短冊状試験片を切り出した。ブルカー・エイエックスエス株式会社製線膨張係数測定装置「TMA−4000SA」を用い、TMA法により、昇温速度5℃/分、荷重10gで、20℃から1℃刻みで、短冊状の試験片の線膨張係数を測定し、170℃から180℃での線膨張係数を算出した。線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値(以下、|MD−CD|と記載することがある)は、得られたMD方向の線膨張係数とCD方向の線膨張係数から求めた。
[実施例1]
ポリエーテルイミド系ポリマー(サービックイノベーティブプラスチックス社製「ULTEM(登録商標)9011」)を150℃で12時間真空乾燥した。このポリマーを紡糸ヘッド温度390℃、紡糸速度1500m/分、吐出量50g/分の条件で丸孔ノズルより吐出し、2640dtex/1200fのマルチフィラメントを得た。次いで、得られた繊維を10mmにカットした。得られたポリエーテルイミド系ポリマーからなる繊維(以下、PEI繊維と略称することがある)の外観は毛羽等なく良好で、短繊維の平均繊度は2.2dtex、平均繊維長は10.1mmで、ガラス転移温度は217℃であった。
ポリエーテルイミド系ポリマー(サービックイノベーティブプラスチックス社製「ULTEM(登録商標)9011」)を150℃で12時間真空乾燥した。このポリマーを紡糸ヘッド温度390℃、紡糸速度1500m/分、吐出量50g/分の条件で丸孔ノズルより吐出し、2640dtex/1200fのマルチフィラメントを得た。次いで、得られた繊維を10mmにカットした。得られたポリエーテルイミド系ポリマーからなる繊維(以下、PEI繊維と略称することがある)の外観は毛羽等なく良好で、短繊維の平均繊度は2.2dtex、平均繊維長は10.1mmで、ガラス転移温度は217℃であった。
得られたPEI繊維55質量部、12.7mmのカット長のPAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長12.7mm)40質量部およびPET系バインダー繊維5質量部(クラレ社製「PET系バインダー繊維」;平均繊維長10mm)を水中に分散させて、スラリーを調製した。このスラリーを用いて湿式抄紙し、100℃で熱風乾燥後、目付け50g/m2の紙状のシートを得た。得られた紙状のシートをプレス金型上に87枚重ね合わせ(総目付け=4350g/m2)、圧力10MPaの下、30℃から320℃まで昇温した後に、50℃まで冷却することで厚さ3mm、幅120mm、長さ120mmの平板を成形した。得られた平板の外観は良好であり、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で4.3×10−6K−1、CD方向で4.8×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は0.5×10−6K−1であり、熱寸法安定性および等方性に優れるものであった。
[実施例2]
半芳香族ポリアミド系ポリマー(クラレ社製「ジェネスタ(登録商標)PA9T」)を80℃で12時間真空乾燥した。このポリマーを紡糸ヘッド温度310℃、紡糸速度1500m/分、吐出量50g/分の条件で丸孔ノズルより吐出し、マルチフィラメントを得た。次いで、得られた繊維を5mmにカットした。得られたPA9T繊維の外観は毛羽等なく良好で、短繊維の平均繊度は0.7dtex、平均繊維長は5.2mmで、ガラス転移温度は120℃、融点は262℃であった。
半芳香族ポリアミド系ポリマー(クラレ社製「ジェネスタ(登録商標)PA9T」)を80℃で12時間真空乾燥した。このポリマーを紡糸ヘッド温度310℃、紡糸速度1500m/分、吐出量50g/分の条件で丸孔ノズルより吐出し、マルチフィラメントを得た。次いで、得られた繊維を5mmにカットした。得られたPA9T繊維の外観は毛羽等なく良好で、短繊維の平均繊度は0.7dtex、平均繊維長は5.2mmで、ガラス転移温度は120℃、融点は262℃であった。
得られたPA9T繊維55質量部、12.7mmのカット長のPAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長12.7mm)40質量部およびPET系バインダー繊維5質量部(平均繊維長10mm)を水中に分散させて、スラリーを調製した。このスラリーを用いて湿式抄紙し、100℃で熱風乾燥後、目付け50g/m2の紙状のシートを得た。得られた紙状のシートをプレス金型上に81枚重ね合わせ(総目付け=4050g/m2)、圧力10MPaの下、30℃から300℃まで昇温した後に、50℃まで冷却することで厚さ3mm、幅120mm、長さ120mmの平板を成形した。得られた平板の外観は良好であり、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で6.1×10−6K−1、CD方向で7.2×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は1.1×10−6K−1であり、熱寸法安定性および等方性に優れるものであった。
[実施例3]
ポリアミド系ポリマー(ナイロン66)(宇部興産社製「UBEナイロン(登録商標)66」)を用いたこと以外は実施例2と同様な方法でナイロン66繊維を得た。得られたナイロン66繊維の外観は毛羽等なく良好で、ガラス転移温度は50℃、265℃であった。
ポリアミド系ポリマー(ナイロン66)(宇部興産社製「UBEナイロン(登録商標)66」)を用いたこと以外は実施例2と同様な方法でナイロン66繊維を得た。得られたナイロン66繊維の外観は毛羽等なく良好で、ガラス転移温度は50℃、265℃であった。
得られたナイロン66繊維55質量部、12.7mmのカット長のPAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長12.7mm)40質量部およびPET系バインダー繊維5質量部(平均繊維長10mm)を水中に分散させて、スラリーを調製した。このスラリーを用いて湿式抄紙し、100℃で熱風乾燥後、目付け50g/m2の紙状のシートを得た。得られた紙状のシートをプレス金型上に84枚重ね合わせ(総目付け=4200g/m2)、圧力10MPaの下、30℃から300℃まで昇温した後に、50℃まで冷却することで厚さ3mm、幅120mm、長さ120mmの平板を成形した。得られた平板の外観は良好であり、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で7.1×10−6K−1、CD方向で8.0×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は0.9×10−6K−1であり、熱寸法安定性および等方性に優れるものであった。
[実施例4]
ポリフェニレンサルファイドポリマー(PPS)(東レ社製「A504×02」)を用いたこと以外は実施例2と同様な方法でPPS繊維を得た。得られたPPS繊維の外観は毛羽等なく良好で、ガラス転移温度は92℃、融点は280℃であった。
ポリフェニレンサルファイドポリマー(PPS)(東レ社製「A504×02」)を用いたこと以外は実施例2と同様な方法でPPS繊維を得た。得られたPPS繊維の外観は毛羽等なく良好で、ガラス転移温度は92℃、融点は280℃であった。
得られたPPS繊維55質量部、12.7mmのカット長のPAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長12.7mm)40質量部およびPET系バインダー繊維5質量部(平均繊維長10mm)を水中に分散させて、スラリーを調製した。このスラリーを用いて湿式抄紙し、100℃で熱風乾燥後、目付け50g/m2の紙状のシートを得た。得られた紙状のシートをプレス金型上に90枚重ね合わせ(総目付け=4500g/m2)、圧力10MPaの下、30℃から300℃まで昇温した後に、50℃まで冷却することで厚さ3mm、幅120mm、長さ120mmの平板を成形した。得られた平板の外観は良好であり、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で6.5×10−6K−1、CD方向で7.0×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は0.5×10−6K−1であり、熱寸法安定性および等方性に優れるものであった。
[実施例5]
平均繊維長3mmのPAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm)を用いた以外は実施例1と同様な方法で平板を得た。得られた平板の外観は良好であり、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で5.0×10−6K−1、CD方向で6.9×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は1.9×10−6K−1であり、熱寸法安定性および等方性に優れるものであった。
平均繊維長3mmのPAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm)を用いた以外は実施例1と同様な方法で平板を得た。得られた平板の外観は良好であり、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で5.0×10−6K−1、CD方向で6.9×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は1.9×10−6K−1であり、熱寸法安定性および等方性に優れるものであった。
[実施例6]
実施例1で得られたPEI繊維45質量部、PAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長12.7mm)を50質量部用いた以外は実施例1と同様な方法で平板を得た。得られた平板の外観は概ね良好であり、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で3.5×10−6K−1、CD方向で4.2×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は0.7×10−6K−1であり、熱寸法安定性および等方性に優れるものであった。
実施例1で得られたPEI繊維45質量部、PAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長12.7mm)を50質量部用いた以外は実施例1と同様な方法で平板を得た。得られた平板の外観は概ね良好であり、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で3.5×10−6K−1、CD方向で4.2×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は0.7×10−6K−1であり、熱寸法安定性および等方性に優れるものであった。
[比較例1]
実施例1で得られたPEI繊維55質量部、平均繊維長1mmのPAN系炭素繊維(東邦テナックス製(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長1mm)を用いた以外は実施例1と同様な方法で平板を得た。得られた平板の外観は良好であったが、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で10.1×10−6K−1、CD方向で12.0×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は1.9×10−6K−1であり、熱寸法安定性にやや劣るものであった。
実施例1で得られたPEI繊維55質量部、平均繊維長1mmのPAN系炭素繊維(東邦テナックス製(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長1mm)を用いた以外は実施例1と同様な方法で平板を得た。得られた平板の外観は良好であったが、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で10.1×10−6K−1、CD方向で12.0×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は1.9×10−6K−1であり、熱寸法安定性にやや劣るものであった。
[比較例2]
実施例1で得られたPEI繊維75質量部、PAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長12.7mm)を20質量部用いた以外は実施例1と同様な方法で平板を得た。得られた平板の外観は良好であったが、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で12.0×10−6K−1、CD方向で13.3×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は1.3×10−6K−1であり、熱寸法安定性に劣るものであった。
実施例1で得られたPEI繊維75質量部、PAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長12.7mm)を20質量部用いた以外は実施例1と同様な方法で平板を得た。得られた平板の外観は良好であったが、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で12.0×10−6K−1、CD方向で13.3×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は1.3×10−6K−1であり、熱寸法安定性に劣るものであった。
[比較例3]
ポリプロピレンポリマー(PP)(株式会社プライムポリマー製「J−3000GP」)を用いたこと以外は実施例2と同様な方法でPP繊維を得た。得られたPP繊維の外観は毛羽等なく良好で、ガラス転移温度は−20℃、融点は170℃であった。得られたPP繊維55質量部、12.7mmのカット長のPAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長12.7mm)40質量部およびPET系バインダー繊維5質量部(平均繊維長10mm)を水中に分散したスラリーを用いて湿式抄紙し、100℃で熱風乾燥後、目付け50g/m2の紙状のシートを得た。得られた紙状のシートをプレス金型上に69枚重ね合わせ(総目付け=3450g/m2)、圧力10MPaの下、30℃から200℃まで昇温した後に、30℃まで冷却することで厚さ3mm、幅120mm、長さ120mmの平板を成形した。得られた平板の外観は良好であったが、30〜180℃における線膨張係数測定時に試験片が変形し、線膨張係数の測定ができなかった。この平板は熱安定性に劣ると判断した。
ポリプロピレンポリマー(PP)(株式会社プライムポリマー製「J−3000GP」)を用いたこと以外は実施例2と同様な方法でPP繊維を得た。得られたPP繊維の外観は毛羽等なく良好で、ガラス転移温度は−20℃、融点は170℃であった。得られたPP繊維55質量部、12.7mmのカット長のPAN系炭素繊維(東邦テナックス製;平均繊維径7μm、平均繊維長12.7mm)40質量部およびPET系バインダー繊維5質量部(平均繊維長10mm)を水中に分散したスラリーを用いて湿式抄紙し、100℃で熱風乾燥後、目付け50g/m2の紙状のシートを得た。得られた紙状のシートをプレス金型上に69枚重ね合わせ(総目付け=3450g/m2)、圧力10MPaの下、30℃から200℃まで昇温した後に、30℃まで冷却することで厚さ3mm、幅120mm、長さ120mmの平板を成形した。得られた平板の外観は良好であったが、30〜180℃における線膨張係数測定時に試験片が変形し、線膨張係数の測定ができなかった。この平板は熱安定性に劣ると判断した。
[比較例4]
半芳香族ポリアミド系ポリマー(クラレ社製「ジェネスタ(登録商標)PA9T」)80質量部と20質量部の炭素繊維(平均繊維長0.3mm未満)を含有するコンパウンド樹脂を80℃で12時間真空乾燥した。該コンパウンド樹脂を射出成形機にて成形し、厚さ3mm、幅100mm、長さ150mmの平板を得た。得られた平板の外観は良好であったが、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で9.8×10−6K−1、CD方向で34.3×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は24.5×10−6K−1であり、熱寸法安定性および等方性に劣るものであった。実施例、比較例の結果を表1にまとめた。
半芳香族ポリアミド系ポリマー(クラレ社製「ジェネスタ(登録商標)PA9T」)80質量部と20質量部の炭素繊維(平均繊維長0.3mm未満)を含有するコンパウンド樹脂を80℃で12時間真空乾燥した。該コンパウンド樹脂を射出成形機にて成形し、厚さ3mm、幅100mm、長さ150mmの平板を得た。得られた平板の外観は良好であったが、170℃から180℃における線膨張係数はMD方向で9.8×10−6K−1、CD方向で34.3×10−6K−1、線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値は24.5×10−6K−1であり、熱寸法安定性および等方性に劣るものであった。実施例、比較例の結果を表1にまとめた。
本発明によれば、高い温度環境下においても、等方的、かつ高い寸法安定性を有する樹脂複合体を提供することが可能である。本発明の樹脂複合体は、一般産業資材分野、電気・電子分野、土木・建築分野、航空機・自動車・鉄道・船舶分野、農業資材分野、光学材料分野、医療材料分野などをはじめとして多くの用途において、特に高い温度環境下で使用し、高い寸法安定性を要求される部品に極めて有効に使用することができる。
Claims (5)
- 炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む耐熱性樹脂複合体であって、170℃以上180℃以下の範囲におけるMD方向および/またはCD方向の線膨張係数が9×10−6K−1以下であり、前記線膨張係数のMD方向とCD方向の差の絶対値が2×10−6K−1以下である、耐熱性樹脂複合体。
- 前記耐熱性樹脂複合体中の炭素繊維と熱可塑性樹脂の質量比が30/70〜70/30の範囲である、請求項1に記載の耐熱性樹脂複合体。
- 前記炭素繊維の平均繊維長が3mm以上40mm以下である、請求項1または請求項2に記載の耐熱性樹脂複合体。
- 前記熱可塑性樹脂の融点またはガラス転移温度のいずれかが200℃以上400℃以下の範囲である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の耐熱性樹脂複合体。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の耐熱性樹脂複合体。
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---|---|---|---|
JP2015071847A JP2016190955A (ja) | 2015-03-31 | 2015-03-31 | 面内等方的な熱寸法安定性を有する耐熱性樹脂複合体 |
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JP2015071847A JP2016190955A (ja) | 2015-03-31 | 2015-03-31 | 面内等方的な熱寸法安定性を有する耐熱性樹脂複合体 |
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JP2015071847A Pending JP2016190955A (ja) | 2015-03-31 | 2015-03-31 | 面内等方的な熱寸法安定性を有する耐熱性樹脂複合体 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019011420A (ja) * | 2017-06-30 | 2019-01-24 | 株式会社クラレ | 繊維強化ポリアミドシートまたはテープ |
-
2015
- 2015-03-31 JP JP2015071847A patent/JP2016190955A/ja active Pending
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JP2019011420A (ja) * | 2017-06-30 | 2019-01-24 | 株式会社クラレ | 繊維強化ポリアミドシートまたはテープ |
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