JP2016190435A - 積層構造体の製造方法及び積層構造体 - Google Patents

積層構造体の製造方法及び積層構造体 Download PDF

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【課題】ビアを良好に形成することができ、ビア底にスミアを残存し難くすることができる積層構造体の製造方法を提供する。【解決手段】本発明に係る積層構造体の製造方法は、フィラーを含む絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの第1の表面に積層された保護フィルムとを備える積層フィルムを用いて、前記保護フィルムが積層された状態で、前記絶縁フィルムを前記第1の表面とは反対の第2の表面側から、金属層を表面に有する積層対象部材にラミネートし、前記絶縁フィルムを予備硬化させた後、レーザー照射によって、前記保護フィルム及び前記絶縁フィルムを貫通するビアを形成し、前記保護フィルムを剥離し、デスミア処理により前記ビアの内部のスミアを除去する各工程を備え、前記積層フィルムにおける前記保護フィルムが、前記レーザー照射の波長での光線透過率が70%以下であり、前記積層フィルムにおける前記絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数ε0が0.03以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁フィルムを備える積層フィルムであって、例えばプリント配線板などにおいて、絶縁層を形成するために用いることができる積層フィルムに関する。また、本発明は、上記積層フィルムを用いる積層構造体の製造方法に関する。
従来、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂組成物が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂組成物が用いられている。上記絶縁層の表面には、一般に金属部である配線が積層される。
また、絶縁層を形成するために、上記樹脂組成物をフィルム化した絶縁フィルムが用いられることがある。この絶縁フィルムは、取扱い性を高めるために、保護フィルムに積層された積層フィルムの形態で用いられることがある。
例えば、プリント配線板用の層間絶縁フィルムを備える積層フィルムは、第1の保護フィルム上に、エポキシ樹脂組成物により形成された絶縁フィルムが積層され、絶縁フィルム上に第2の保護フィルムが積層されて形成されている。プリント配線板において絶縁層を形成する際には、一方の保護フィルムを絶縁フィルムから剥離する。絶縁フィルムを露出した表面側から、真空ラミネーターやプレスによって内層回路基板等の積層対象部材に積層する。その後、他方の保護フィルムを剥離する。その後、金属配線の形成、絶縁フィルムの硬化、絶縁フィルムに対するビアの形成、ビアのデスミアを行う工程などを経て、プリント配線板が製造される。
上記のような積層フィルム及び該積層フィルムを用いた回路基板の製造方法は、例えば下記の特許文献1に開示されている。
下記の特許文献1には、回路基板上に、表面に保護フィルムが接着された半硬化状態の硬化性樹脂層を形成し、上記保護フィルム上よりレーザー光を照射して、上記半硬化状態の硬化性樹脂層にビアホールを形成し、上記ビアホール内のスミアを、プラズマを用いたデスミア処理により除去し、上記保護フィルムを剥離し、上記半硬化状態の硬化性樹脂層を硬化させるソルダーレジストの形成方法が開示されている。
WO2012/042846
特許文献1に記載のような従来の工程及び積層フィルムの構成では、ビアを良好に形成することが困難なことがある。例えば、ビアの開口部及び底部において、十分な開口面積が確保されず、ビアの形状が悪くなることがある。また、ビアが形成された絶縁フィルムの上部において、ビアの周辺にて粗化後の絶縁フィルムにダメージが発生することがある。また、ビアの形成後のデスミア処理において、ビア底の絶縁フィルムが充分に除去されずに、スミアが残存することがある。更には、レーザーのエネルギーを高くしたり、レーザーでの加工回数を増やしたりしなければならず、生産性、コストの面で不利になる。また、ビアの形成後のデスミア処理において、ビア底の絶縁フィルムが充分に除去されずに、スミアが残存することがある。
本発明の目的は、ビアを良好に形成することができ、ビア底にスミアを残存し難くすることができる積層構造体の製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、絶縁フィルムを保護フィルムとともにラミネート、予備硬化させた後にビアを良好に形成することができ、ビア底にスミアを残存し難くすることができる積層フィルムを提供することである。
本発明の広い局面によれば、フィラーを含む絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの第1の表面に積層された保護フィルムとを備える積層フィルムを用いて、前記保護フィルムが積層された状態で、前記絶縁フィルムを前記第1の表面とは反対の第2の表面側から、金属層を表面に有する積層対象部材にラミネートする工程と、前記絶縁フィルムを予備硬化させる工程と、レーザー照射によって、前記保護フィルム及び前記絶縁フィルムを貫通するビアを形成する工程と、前記保護フィルムを剥離する工程と、デスミア処理により前記ビアの内部のスミアを除去する工程とを備え、前記積層フィルムにおける前記保護フィルムが、前記レーザー照射の波長での光線透過率が70%以下であり、前記積層フィルムにおける前記絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εが0.03以上である、積層構造体の製造方法が提供される。
本発明の広い局面によれば、フィラーを含む絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの第1の表面に積層された保護フィルムとを備え、前記保護フィルムが積層された状態で、前記絶縁フィルムを前記第1の表面とは反対の第2の表面側から、金属層を表面に有する積層対象部材にラミネートし、前記絶縁フィルムを予備硬化させた後、レーザー照射によって、前記保護フィルム及び前記絶縁フィルムを貫通するビアを形成し、前記保護フィルムを剥離し、デスミア処理により前記ビアの内部のスミアを除去するように用いられる積層フィルムであり、前記保護フィルムの波長355nmの光線透過率が70%以下であり、前記絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εが0.03以上である、積層フィルムが提供される。
本発明に係る積層構造体の製造方法は、フィラーを含む絶縁フィルムと、上記絶縁フィルムの第1の表面に積層された保護フィルムとを備える積層フィルムを用いて、上記保護フィルムが積層された状態で、上記絶縁フィルムを上記第1の表面とは反対の第2の表面側から、金属層を表面に有する積層対象部材にラミネートする工程と、上記絶縁フィルムを予備硬化させる工程と、レーザー照射によって、上記保護フィルム及び上記絶縁フィルムを貫通するビアを形成する工程と、上記保護フィルムを剥離する工程と、デスミア処理により上記ビアの内部のスミアを除去する工程とを備え、上記積層フィルムにおける上記保護フィルムが、上記レーザー照射の波長での光線透過率が70%以下であり、上記積層フィルムにおける上記絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εが0.03以上であるので、ビアを良好に形成することができる。
本発明に係る積層フィルムは、フィラーを含む絶縁フィルムと、上記絶縁フィルムの第1の表面に積層された保護フィルムとを備え、上記保護フィルムが積層された状態で、上記絶縁フィルムを上記第1の表面とは反対の第2の表面側から、金属層を表面に有する積層対象部材にラミネートし、上記絶縁フィルムを予備硬化させた後、レーザー照射によって、上記保護フィルム及び上記絶縁フィルムを貫通するビアを形成し、上記保護フィルムを剥離し、デスミア処理により上記ビアの内部のスミアを除去するように用いられる積層フィルムであり、上記保護フィルムの波長355nmの光線透過率が70%以下であり、上記絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εが0.03以上であるので、絶縁フィルムを保護フィルムとともにラミネートした後に、ビアを良好に形成することができ、ビア底にスミアを残存し難くすることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。 図2(a)〜(d)は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを用いて、積層構造体を製造する各工程を説明するための模式的な断面図である。 図3(a)〜(d)は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを用いて、積層構造体を製造する各工程を説明するための模式的な断面図である。
以下、本発明の詳細を説明する。
(積層フィルム)
本発明に係る積層フィルムは、フィラーを含む絶縁フィルムと、上記絶縁フィルムの第1の表面に積層された保護フィルム(第1の保護フィルム)とを備える。本発明に係る積層フィルムは、上記保護フィルムが積層された状態で、上記絶縁フィルムを上記第1の表面とは反対の第2の表面側から、金属層を表面に有する積層対象部材にラミネートし、上記絶縁フィルムを予備硬化させた後、レーザー照射によって、上記保護フィルム及び上記絶縁フィルムを貫通するビアを形成し、上記保護フィルムを剥離し、デスミア処理により上記ビアの内部のスミアを除去するように用いられる積層フィルムである。本発明に係る積層フィルムでは、上記保護フィルムの波長355nmの光線透過率が70%以下である。本発明に係る積層フィルムでは、上記絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εが0.03以上である。
本発明に係る積層フィルムでは、上述した構成を備えているので、絶縁フィルムを保護フィルムとともにラミネートした後に、ビアを良好に形成することができ、ビア底にスミアを残存し難くすることができる。本発明では、良好な形状を有するビアを形成することができる。さらに、ビアが形成された絶縁フィルムの上部において、ビアの周辺にて絶縁フィルムのダメージを生じ難くすることができる。
例えば、保護フィルムにおいて、ビアを形成するレーザーの波長での光線透過率が低いので、ビアの開口部及び底部において、十分な開口面積が確保され、ビアの形状が良好になる。更には、レーザーのエネルギーを高くしたり、レーザーでの加工回数を増やしたりする必要がなく、生産性、コストの面で有利になる。また、絶縁フィルムの吸光係数εが高いので、ビアの形成後のデスミア処理において、ビア底の絶縁フィルムが充分に除去されて、スミア残存し難くなる。
ビアを良好に形成し、かつビア底にスミアをより一層残存し難くする観点からは、上記保護フィルムの光線透過率は好ましくは50%以下である。ビアを良好に形成し、かつビア底にスミアをより一層残存し難くする観点からは、上記絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εは好ましくは0.05以上である。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
積層フィルム1は、絶縁フィルム2と、第1の保護フィルム3と、第2の保護フィルム4を備える。第1の保護フィルム3は、絶縁フィルム2の第1の表面2aに積層されている。第2の保護フィルム4は、絶縁フィルム2の第1の表面2aとは反対側の第2の表面2bに積層されている。
積層フィルムの取扱性を高める観点からは、本発明では、積層フィルムは、絶縁フィルムの第2の表面に積層された第2の保護フィルムを備えることが好ましい。但し、積層フィルムは、絶縁フィルムの第2の表面に積層された第2の保護フィルムを備えていなくてもよい。積層フィルムは、絶縁フィルムの第2の表面に積層された第2の保護フィルムを備えるか又は備えていない。
絶縁フィルム2はフィラーを含む。第1の保護フィルム3の波長355nmの光線透過率は70%以上である。絶縁フィルム2のフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εは0.03以上である。
積層フィルム1では、絶縁フィルム2は第2の表面2b側から、第1の保護フィルム3が積層された状態で、金属層を表面に有する積層対象部材にラミネートして用いられる。また、絶縁フィルム2を予備硬化させた後、レーザー照射によって、第1の保護フィルム3及び絶縁フィルム(予備硬化後)を貫通するビアを形成し、第1の保護フィルム3を剥離し、デスミア処理により上記ビアの内部のスミアを除去するように用いられる。絶縁フィルム2が第2の表面2b側から積層対象部材にラミネートされる前に、絶縁フィルム2の第2の表面2bから第2の保護フィルム4が剥離される。
保護フィルムをより一層良好に剥離し、絶縁層と金属層との密着強度をより一層高める観点からは、ビア形成工程後の上記絶縁フィルムに対する上記保護フィルム(第1の保護フィルム)の剥離強度は好ましくは10mN/cm以上、より好ましくは20mN/cm以上、好ましくは60mN/cm以下、より好ましくは40mN/cm以下である。上記剥離強度が上記下限以上であると、保護フィルムの意図しない剥離が抑えられる。上記剥離強度が上記上限以下であると、保護フィルムを良好に剥離することができる。
上記第1の保護フィルムとしては、紫外線領域以下に高い吸収を持つ、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、及び紫外線吸収剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルムが挙げられる。
上記第2の保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム及びポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルム、並びにポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。
上記絶縁フィルム又は上記絶縁フィルムを硬化させた絶縁層上には、金属配線を形成することが好ましい。上記絶縁フィルム又は上記絶縁フィルムを硬化させた絶縁層上には、ダメージが生じ難いために、金属配線を微細化しても、金属配線を良好に形成することができる。
上記積層対象部材としては、金属層を表面に有する基板、金属層を表面に有する絶縁層等が挙げられる。上記積層対象部材は、金属層を表面に有する基板であってもよく、金属層を表面に有する絶縁層であってもよい。上記金属層を表面に有する基板は、回路基板であることが好ましい。
上記絶縁フィルムに用いることができる各成分については、後に詳しく記載する。
(積層構造体の製造方法)
本発明に係る積層構造体の製造方法は、フィラーを含む絶縁フィルムと、上記絶縁フィルムの第1の表面に積層された保護フィルム(第1の保護フィルム)とを備える積層フィルムを用いて、上記保護フィルムが積層された状態で、上記絶縁フィルムを上記第2の表面側から、金属層を表面に有する積層対象部材にラミネートする工程(ラミネート工程)と、上記絶縁フィルムを予備硬化させる工程(予備硬化工程)と、レーザー照射によって、上記保護フィルム及び上記絶縁フィルムを貫通するビアを形成する工程(ビア形成工程)と、上記保護フィルムを剥離する工程(剥離工程)と、デスミア処理により上記ビアの内部のスミアを除去する工程(デスミア工程)とを備える。
本発明に係る積層構造体の製造方法では、上記保護フィルムの上記レーザー照射の波長での光線透過率が70%以上である。本発明に係る積層構造体の製造方法では、上記絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εが0.03以上である。
本発明に係る積層構造体の製造方法では、上述した構成を備えているので、ビアを良好に形成することができ、ビア底にスミアを残存させ難くすることができる。本発明では、良好な形状を有するビアを形成することができる。さらに、ビアが形成され、デスミア処理された絶縁フィルムの上部において、ビアの周辺にて他の部位より荒れてしまう絶縁フィルムのダメージを生じ難くすることができる。
例えば、保護フィルムにおいて、ビアを形成するレーザーの波長での光線透過率が低いので、ビアの開口部及び底部において、十分な開口面積が確保され、ビアの形状が良好になる。更には、レーザーのエネルギーを高くしたり、レーザーでの加工回数を増やしたりする必要がなく、生産性、コストの面で有利になる。また、絶縁フィルムにおいて、ビアを形成するレーザーの波長での吸光係数εが高いので、ビアの形成後のデスミア処理において、ビア底の絶縁フィルムが充分に除去されて、スミア残存し難くなる。
ビアを良好に形成し、かつビア底にスミアをより一層残存し難くする観点からは、上記保護フィルムの光線透過率は好ましくは50%以上である。ビアを良好に形成し、かつビア底にスミアをより一層残存し難くする観点からは、上記絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εは好ましくは0.05以上である。
上記デスミア工程は、上記絶縁フィルムの上記積層対象部材側とは反対の表面を粗化処理する粗化処理工程を兼ねていてもよい。
本発明に係る積層構造体の製造方法は、上記デスミア工程又は粗化処理工程後に、粗化処理された絶縁フィルムの上記積層対象部材側とは反対の表面に、めっき処理により金属層を形成するめっき工程、並びに上記めっき工程後に、予備硬化された絶縁フィルムを硬化させる本硬化工程、の各工程を備えることが好ましい。
次に、図2(a)〜(d)及び図3(a)〜(d)を参照しつつ、積層構造体の製造方法の各工程を具体的に説明する。
先ず、図1に示す積層フィルム1を用意する。
(Bステージ積層フィルム作製方法)
樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、並びに従来公知のその他のフィルム成形法等が挙げられる。なかでも、薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
上記樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば90〜200℃で1〜180分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムを得ることができる。例えば、このBステージフィルムを、絶縁フィルムとして用いることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、未硬化状態にある未硬化物である。未硬化物は硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記Bステージフィルムは、プリプレグではないことが好ましい。上記Bステージフィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロスなどに沿ってマイグレーションが生じることがなくなる。また、Bステージフィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じることがなくなる。また、樹脂組成物をプリプレグを含まないBステージフィルムとすることで、硬化物の熱による寸法変化が小さくなり、形状保持性が高くなり、セミアディティブプロセス適性が高くなる。
絶縁フィルムの厚みは、好ましくは5μm以上200μm以下である。
積層フィルム1を用いて、絶縁フィルム2の第2の表面2bから第2の保護フィルム4を剥離する。第2の保護フィルム4の剥離後に、絶縁フィルム2と第1の保護フィルム3との積層フィルム1Aが得られる(図2(a)、前剥離工程(第1の剥離工程))。
次に、絶縁フィルム2を第2の表面2b側から、第1の保護フィルム3が積層された状態で、積層対象部材21にラミネートする(図2(b)、ラミネート工程)。ここでは、積層対象部材21として、金属層21bを表面に有する基板が用いられており、この基板は回路基板である。この基板は、基板本体21aと、基板本体21a上に金属層21bとを有する。ラミネート後に、絶縁フィルム2は、第2の表面2b側で、積層対象部材21と接する。絶縁フィルム2は、金属層21bが無い領域で基板本体21aと接し、金属層21bがある領域で金属層21bと接する。
次に、絶縁フィルム2を予備硬化させる。絶縁フィルム2は、予備硬化された絶縁フィルム2Aになる(図2(c)、予備硬化工程)。
絶縁フィルムを適度に予備硬化させるための予備硬化温度は好ましくは100℃以上、好ましくは200℃以下、予備硬化時間は好ましくは0.5時間以上、好ましくは2時間以下である。
次に、上記予備硬化工程後に、第1の保護フィルム3及び絶縁フィルム2Aに、レーザーを照射する。金属層21bに対応する位置にて、レーザーを照射する。レーザー照射によって、第1の保護フィルム3及び絶縁フィルム2Aを貫通するビア31を形成する(図2(d)、ビア形成工程)。本実施形態では、ビア31が形成された絶縁フィルム2Aの上部Xにおいて、絶縁フィルム2Aのダメージが抑えられている。さらに、ビア31の底部Yにてスミアが残存していない。なお、ビア31の底部Yに、スミアがわずかに残存していたとしても、残存しているスミアは少量であるため、デスミア処理によって残存しているスミアを除去することができる。
次に、上記ビア形成工程後に、絶縁フィルム2Aの第1の表面2aから第1の保護フィルム3を剥離する。第1の保護フィルム3を剥離すると、絶縁フィルム2Aの第1の表面2aが露出する(図3(a)、剥離工程(第2の剥離工程))。
次に、上記剥離工程後に、デスミア処理により上記ビアの内部のスミアを除去する(図3(b)、デスミア工程)。本実施形態では、絶縁フィルム2Aの積層対象部材21側とは反対の第1の表面2a(上面)を粗化処理している。粗化処理により、予備硬化された絶縁フィルム2Aは、粗化処理された絶縁フィルム2Bになる。粗化処理前に膨潤処理を行ってもよい。デスミア処理は、粗化処理を兼ねていてもよい。本実施形態では、デスミア処理後に、ビア31の底部Yにてスミアが残存していない。
上記デスミア処理及び上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理及び粗化処理に用いられるデスミア処理液及び粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。デスミア処理液及び粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記粗化処理の方法は特に限定されない。上記粗化処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜40分間の条件で、予備硬化された絶縁フィルムを処理する方法が好適である。この粗化処理は、1回又は2回行われることが好ましい。上記粗化処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
上記絶縁フィルムの粗化処理された表面の算術平均粗さRaは好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。上記算術平均粗さRaが上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁層と金属層との密着性がより一層高くなる。上記算術平均粗さは、JIS B0601−1994に準拠して測定される。
次に、上記デスミア工程及び上記粗化処理工程後に、粗化処理された絶縁フィルム2Bの積層対象部材21側とは反対の第1の表面2a(上面)に、めっき処理により金属層22を形成する(図3(c)、めっき工程)。ここでは、微細な金属配線である金属層22が形成されている。金属層22は、ビア31内にも至っている。絶縁フィルム上に金属層を形成した後に、ドライフィルムレジストを積層し、露光及び現像して、レジストパターンを形成し、次に、レジストパターンの開口部においてエッチング処理により金属層を部分的に除去して、レジストパターンを剥離して、金属配線を形成してもよい。絶縁フィルム上にドライフィルムレジストを積層し、露光及び現像して、レジストパターンを形成し、次にレジストパターンの開口部において金属配線を形成し、レジストパターンを剥離して、金属配線を形成してもよい。また、ドライフィルムレジストを用いずに、直接にレジストパターンを形成してもよい。
積層フィルムの使用により、金属層を微細配線にすることができる。微細配線である金属層のL/Sは好ましくは20μm以下/20μm以下、より好ましくは15μm以下/15μm以下、更に好ましくは10μm以下/10μm以下である。
次に、上記めっき工程後に、予備硬化されかつ粗化処理された絶縁フィルム2Bを硬化させる。粗化処理された絶縁フィルム2Bは、絶縁層2Cになる(図3(d)、本硬化工程)。
上記本硬化工程において、絶縁フィルムを充分に硬化させるための本硬化温度は好ましくは150℃以上、好ましくは200℃以下、本硬化時間は好ましくは0.5時間以上、好ましくは2時間以下である。上記本硬化工程における本硬化温度は、上記予備硬化工程における予備硬化温度よりも好ましくは20℃以上高い。
上記本硬化工程では、複数の絶縁フィルムを積層した後に、複数の絶縁フィルムを一度に硬化させてもよい。
上記の工程を経て、積層構造体を得ることができる。
複数の金属層が複数の絶縁層を介して積層されているプリント配線板は、ビルドアップ法を用いて得ることが可能である。上記積層構造体は、プリント配線板であることが好ましく、ビルドアップ配線板であることが好ましい。上記ビルドアップ法では、金属層を上面に有する基板を用いて、基板上に絶縁層を形成する工程と、さらにその上に金属層を形成する工程と、さらにその上に絶縁層を形成する工程とが繰り返し行われる。これらの工程によって、多層ビルドアップ配線板が得られる。
(絶縁フィルムの材料)
[熱硬化性樹脂]
上記絶縁フィルムに含まれる熱硬化性樹脂は特に限定されない。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド、及びアクリル樹脂等が挙げられる。絶縁性や機械強度をより一層良好にする観点からは、上記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましい。上記熱硬化性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。上記エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱硬化性樹脂において、特にナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等の多環芳香族を有する樹脂、及びトリアジン核を有するエポキシ樹脂等の複素環を有する樹脂は、紫外領域での高い光吸収特性を有し、樹脂組成物の単位重量当たりの吸光係数εを高めることができる。
[硬化剤]
上記絶縁フィルムに含まれる硬化剤は特に限定されない。上記硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物及びジシアンジアミド等が挙げられる。なかでも、熱による寸法変化がより一層小さい絶縁層を形成する観点からは、上記硬化剤は、シアネートエステル化合物又はフェノール化合物であることが好ましい。上記硬化剤は、シアネートエステル化合物であることが好ましく、フェノール化合物であることも好ましい。上記硬化剤は、上記熱硬化性樹脂の熱硬化性基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
粗化処理された絶縁層の表面の表面粗さをより一層小さくし、絶縁層と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ絶縁層の表面により一層微細な配線を形成する観点からは、上記硬化剤は、シアネートエステル化合物、フェノール化合物又は活性エステル化合物であることが好ましい。
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
上記シアネートエステル化合物は特に限定されない。該シアネートエステル化合物として、従来公知のシアネートエステル化合物を使用可能である。上記シアネートエステル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT−30」及び「PT−60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA−230S」、「BA−3000S」、「BTP−1000S」及び「BTP−6020S」)等が挙げられる。
上記フェノール化合物は特に限定されない。該フェノール化合物として、従来公知のフェノール化合物を使用可能である。上記フェノール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD−2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH−7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH−7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA−1356」及び「LA3018−50P」)等が挙げられる。
粗化処理された絶縁層の表面の表面粗さをより一層小さくし、絶縁層と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ絶縁層の表面により一層微細な配線を形成する観点からは、上記フェノール化合物は、ビフェニルノボラック型フェノール化合物、又はアラルキル型フェノール化合物であることが好ましい。
上記活性エステル化合物は特に限定されない。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC8000」等が挙げられる。
上記活性エステル化合物として、従来公知の活性エステル化合物を使用可能である。上記活性エステル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記絶縁フィルムに含まれている上記フィラーを除く固形分A100重量%中、上記熱硬化性樹脂と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。
上記熱硬化性樹脂と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な絶縁層が得られ、溶融粘度を調整することができるためにフィラーの分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に絶縁フィルムが濡れ拡がることを防止できる。さらに、絶縁層の熱による寸法変化をより一層抑制できる。また、上記熱硬化性樹脂と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限未満であると、絶縁フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込みが困難になる。また、上記熱硬化性樹脂と上記硬化剤との合計の含有量が上記上限を超えると、溶融粘度が低くなりすぎて硬化過程で、意図しない領域に絶縁フィルムが濡れ拡がりやすくなる傾向がある。「固形分A」とは、熱硬化性樹脂と硬化剤と必要に応じて配合される他の固形分との総和をいう。固形分Aには、フィラーは含まれない。「固形分」とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
上記熱硬化性樹脂と上記硬化剤との配合比は特に限定されない。熱硬化性樹脂と硬化剤との配合比は、熱硬化性樹脂と硬化剤との種類により適宜決定される。
上記硬化剤において、特にナフタレン型硬化剤等の多環芳香族を有する硬化剤、及びイミダゾール化合物等の複素環を有する硬化剤は、紫外領域での高い光吸収特性を有し、樹脂組成物の単位重量当たりの吸光係数εを高めることができる。
[フィラー]
上記絶縁フィルムに含まれている上記フィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラー等が挙げられる。無機フィラーが好ましい。上記フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記無機フィラーとしては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。粗化処理された絶縁層の表面の表面粗さを小さくし、絶縁層と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ絶縁層の表面により一層微細な配線を形成し、かつ絶縁層により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機フィラーは、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、絶縁層の線膨張率がより一層低くなり、かつ粗化処理された絶縁層の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、絶縁層と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は略球状であることが好ましい。
上記フィラーの平均粒径は、好ましくは0.1μm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは1μm以下である。上記フィラーの平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定できる。
上記フィラーは、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤により表面処理されていることがより好ましい。これにより、粗化処理された絶縁層の表面の表面粗さがより一層小さくなり、絶縁層と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ絶縁層の表面により一層微細な配線が形成され、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を絶縁層に付与することができる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記絶縁フィルム100重量%中、上記フィラーの含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以下である。上記フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、粗化処理された絶縁層の表面の表面粗さがより一層小さくなり、絶縁層と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ絶縁層の表面により一層微細な配線を形成することができると同時に、このフィラー量であれば金属銅並に絶縁層の熱線膨張係数を低くすることも可能である。
本発明では、上記絶縁フィルム100重量%中、上記フィラーの含有量が多くても、上記フィラーの含有量が50重量%以上であっても、保護フィルムを良好に剥離することができる。
[溶剤]
上記絶縁フィルムに含まれている上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。上記溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記絶縁フィルム100重量%中、上記溶剤の含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下である。上記溶剤の含有量が上記下限以上であると、絶縁フィルムが過度に流動しにくくなる。上記溶剤の含有量が上記上限以下であると、絶縁層に溶剤がより一層残存し難くなる。
[他の成分及びエポキシ樹脂材料の詳細]
上記絶縁フィルムは、必要に応じて硬化促進剤、熱可塑性樹脂及びレベリング剤等を含んでいてもよい。
上記硬化促進剤の使用により、絶縁フィルムの硬化速度がより一層速くなる。絶縁フィルムを速やかに硬化させることで、絶縁層の架橋構造が均一になる。上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
硬化物の絶縁信頼性を高める観点からは、上記硬化促進剤は、イミダゾール化合物であることが特に好ましい。
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。エポキシ樹脂材料を効率的に硬化させる観点からは、上記固形分A100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、エポキシ樹脂材料には、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及び上述した樹脂以外の他の樹脂等を添加してもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記硬化促進剤において、特にイミダゾール化合物等の複素環を有する硬化促進剤は、紫外領域での高い光吸収特性を有し、樹脂組成物の単位重量当たりの吸光係数εを高めることができる。
上記他の樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アミドイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。 上記他の樹脂において、特にポリイミド樹脂、アミドイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂等の複素環を有する樹脂は紫外領域での高い吸収特性を有し、樹脂組成物の単位重量当たりの吸光係数εを高めることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
絶縁フィルムを形成するために、以下の材料を用いた。実施例及び比較例では、以下の成分を用いた。
(熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂))
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP6000」)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製「RE−410S」)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(日本化薬社製「XD1000」)
ビフェニル型エポキシ樹脂(DIC社製「NC3000H」)
(硬化剤)
アミノトリアジン変性ノボラック型(ATN)硬化剤(DIC社製「LA3018−50P」)
(熱可塑性樹脂)
フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX6954BH30」」)
(フィラー)
シリカ(アドマテックス社製「SC2050」)
(硬化促進剤)
イミダゾール化合物(四国化成工業社製「2P4MZ」)
(添加剤)
レベリング剤(楠本化成社製「LHP−90」)
(保護フィルム)
保護フィルム1(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、リンテック社製「5011」、厚み50μm、波長355nmでの光線透過率99.9%)
保護フィルム2(ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、帝人デュポン社製「Q65HA」、厚み50μm、波長355nmでの光線透過率16%)
(実施例1)
(1)積層フィルムの作製
シリカ(アドマテックス社製「SC2050」)のシクロヘキサノンスラリー(シリカスラリー)(固形分70重量%)45.83重量部に、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000H」)2.72重量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「RE−410S」)2.48重量部と、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP6000」)5.23重量部と、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(日本化薬社製「XD1000」)3.59重量部とを加え、攪拌機を用いて、1200rpmで60分間撹拌した。次に、未溶解物がなくなったことを確認した。その後、アミノトリアジン変性ノボラック型硬化剤(DIC社製「LA−3018−50P」)のポリプロピレングリコールモノメチルエーテル混合溶液(固形分50重量%)29.83重量部を加えて、1200rpmで60分間撹拌し未溶解物がなくなったことを確認した後、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX6954BH30」)のメチルエチルケトン及びシクロヘキサノン混合溶液(固形分30重量%)10.24重量部と、イミダゾール化合物(四国化成工業社製「2P4MZ」)0.06重量部と、レベリング剤(楠本化成社製「LHP−90」、炭化水素系溶剤混合溶液)0.01重量部とをさらに加え、1200rpmで30分間撹拌し、樹脂ワニスを得た。
保護フィルム2(ポリエチレンナフタレートフィルム、帝人デュポン社製「Q65HA」、波長355nmでの光線透過率16%)の表面に、乾燥後の絶縁フィルム(樹脂組成物)の厚みが20μmとなるようにダイコーターにて樹脂ワニスを塗布し、100℃で60秒間乾燥(乾燥条件)させて、絶縁フィルムを形成した。
(2)積層構造体の作製
1)ラミネート工程:ガラスエポキシ基板(FR−4、利昌工業社製「CS−3665」)の表面に、名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP−500−IIA」を用いて、得られた積層フィルムを、絶縁フィルムの表面がガラスエポキシ基板に対向するようにラミネート(真空ラミネート)して、積層体を得た。ラミネートの条件は、30秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.8MPaでプレスする条件とした。
2)予備硬化工程:内部の温度が150℃のギヤオーブン内に積層板を60分間入れ、絶縁フィルムを硬化させて、予備硬化絶縁層(絶縁フィルム)を形成し、積層体を得た。
3)ビア形成工程:保護フィルム3及び予備硬化絶縁層に、UV−YAGレーザー(ESI社製「5330XI」、波長355nm、周波数70kHz、ショット数50ショット、エネルギー0.5W)にてレーザー照射し、ビアの上端径が30μmとなるように、保護フィルム及び予備硬化絶縁層を貫通するビアを形成した。
4)フィルム剥離工程:予備硬化絶縁層から、保護フィルムを剥離した。
5)粗化処理工程:得られた予備硬化絶縁層を有する積層体を、下記の(a)膨潤処理をした後、下記の(b)粗化処理をした。
(a)膨潤処理:
70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」、和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」の水溶液)に、上記積層体を入れて、10分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。すなわち、70℃で10分間膨潤処理を行った。
(b)デスミア処理を兼ねる粗化処理:
80℃の過マンガン酸ナトリウム(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」、和光純薬工業社製「水酸化ナトリウム」)粗化水溶液に、上記積層体を入れて、30分間揺動させ、粗化処理された予備硬化絶縁層を得た。すなわち、80℃で30分間粗化処理を行った。
粗化処理された予備硬化絶縁層を、25℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」、和光純薬工業社製「硫酸」)により2分間洗浄した後、純水でさらに洗浄した。このようにして、ガラスエポキシ基板上に、粗化処理された予備硬化絶縁層を形成した。
(比較例1)
保護フィルムの剥離をビア形成前に行ったこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
(1)積層フィルム
実施例1で得られた積層フィルムを用意した。
(2)積層構造体の作製
1)ラミネート工程:ガラスエポキシ基板(FR−4、利昌工業社製「CS−3665」)の表面に、名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP−500−IIA」を用いて、得られた積層フィルムを、絶縁フィルムの表面がガラスエポキシ基板に対向するようにラミネート(真空ラミネート)して、積層体を得た。ラミネートの条件は、30秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.8MPaでプレスする条件とした。
2)フィルム剥離工程:予備硬化絶縁層から、保護フィルムを剥離した。
3)予備硬化工程:内部の温度が150℃のギヤオーブン内に積層板を60分間入れ、絶縁フィルムを硬化させて、予備硬化絶縁層(絶縁フィルム)を形成し、積層体を得た。
4)ビア形成工程:保護フィルム3及び予備硬化絶縁層に、UV−YAGレーザー(ESI社製「5330XI」、波長355nm、周波数70kHz、ショット数50ショット、エネルギー0.5W)にてレーザー照射し、ビアの上端径が30μmとなるように、保護フィルム及び予備硬化絶縁層を貫通するビアを形成した。
ビア形成工程後、実施例1と同様にして、積層構造体を得た。
(比較例2)
保護フィルムの種類を下記の表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
(評価)
(1)保護フィルムの光線透過率
分光光度計(島津製作所社製「Uvmini―1240」)を用いて透過率を測定することで、保護フィルムの波長355nmの光線透過率を評価した。
(2)絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数ε
絶縁フィルムのフィラーを除く成分を用いて、20g/Lのシクロヘキサノン溶液を調製した。調製した溶液を石英セルに3ml程度入れ、分光光度計(島津製作所社製「UVmini−1240」)を用いて、吸光度を測定し、ランベルト・ベール式(下式1)にて、絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εを評価した。
Abs=εcl・・・(式1)
(ε:樹脂組成物の単位重量当たりの吸光係数ε[L/(g・cm)]、Abs:吸光度[−]、l:入射光に平行な石英セルの長さ[cm])
(3)ビアの開口率
粗化処理後にビア上端と、ビア下端との口径を光学顕微鏡で観察した。式:下端径(μm)/上端径(μm)×100より、ビアの開口率を求めた。ビアの開口率は、100%に近いことが好ましい。
(4)粗化処理後の予備硬化絶縁層の表面のダメージ
粗化処理後に、ビア周辺の予備硬化絶縁層の上部をSEM(走査型電子顕微鏡:JEOL社製「JSM−6700F」、M×1500)にて、二次電子モードで観察した。ビア周辺の予備硬化絶縁層の上部における欠けの有無を観察した。表面のダメージを以下の基準で判定した。
[表面のダメージの判定基準]
○:欠けがない
△:長さ5μm未満の微小な欠けがある
×:長さ5μm以上の大きな欠けがある
(5)ビア底における残渣(スミア)
粗化処理後に、ビア底を、SEM(走査型電子顕微鏡:JEOL社製「JSM−6700F」、M×7500)にて、反射電子モードで観察した。ビア底のスミア残りを以下の基準で判定した。
[ビア底における残渣の判定基準]
○:残渣なし
△:長さ3μm未満の微小な残渣がある
×:長さ3μm以上の大きな残渣がある
組成の詳細及び評価結果を下記の表1に示す。
Figure 2016190435
1,1A…積層フィルム
2…絶縁フィルム
2a…第1の表面
2b…第2の表面
2A…予備硬化された絶縁フィルム
2B…粗化処理された絶縁フィルム
2C…絶縁層
3…第1の保護フィルム
4…第2の保護フィルム
21…積層対象部材
21a…基板本体
21b…金属層
22…金属層
31…ビア
X…絶縁フィルムの上部
Y…ビアの底部

Claims (2)

  1. フィラーを含む絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの第1の表面に積層された保護フィルムとを備える積層フィルムを用いて、前記保護フィルムが積層された状態で、前記絶縁フィルムを前記第1の表面とは反対の第2の表面側から、金属層を表面に有する積層対象部材にラミネートする工程と、
    前記絶縁フィルムを予備硬化させる工程と、
    レーザー照射によって、前記保護フィルム及び前記絶縁フィルムを貫通するビアを形成する工程と、
    前記保護フィルムを剥離する工程と、
    デスミア処理により前記ビアの内部のスミアを除去する工程とを備え、
    前記積層フィルムにおける前記保護フィルムが、前記レーザー照射の波長での光線透過率が70%以下であり、
    前記積層フィルムにおける前記絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εが0.03以上である、積層構造体の製造方法。
  2. フィラーを含む絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの第1の表面に積層された保護フィルムとを備え、
    前記保護フィルムが積層された状態で、前記絶縁フィルムを前記第1の表面とは反対の第2の表面側から、金属層を表面に有する積層対象部材にラミネートし、前記絶縁フィルムを予備硬化させた後、レーザー照射によって、前記保護フィルム及び前記絶縁フィルムを貫通するビアを形成し、前記保護フィルムを剥離し、デスミア処理により前記ビアの内部のスミアを除去するように用いられる積層フィルムであり、
    前記保護フィルムの波長355nmの光線透過率が70%以下であり、
    前記絶縁フィルムのフィラーを除く成分の単位重量当たりの吸光係数εが0.03以上である、積層フィルム。
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