JP2016190317A - cBN切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱合金の切削に利用するcBN切削工具の寿命を向上させることを課題としている。
【解決手段】平均粒径が0.5μm以上、2μm以下のcBN粒子を使用した熱伝導率が20〜70W/m・KのcBN焼結体からなる刃先チップと、その刃先チップをコーナ部に保持した台金をcBN切削工具に具備させ、その工具の前記刃先チップに設けられる切れ刃に正のすくい角を付与した。
【選択図】図4
【解決手段】平均粒径が0.5μm以上、2μm以下のcBN粒子を使用した熱伝導率が20〜70W/m・KのcBN焼結体からなる刃先チップと、その刃先チップをコーナ部に保持した台金をcBN切削工具に具備させ、その工具の前記刃先チップに設けられる切れ刃に正のすくい角を付与した。
【選択図】図4
Description
この発明は、cBN(立方晶型窒化硼素)焼結体で切れ刃を構成したcBN切削工具、詳しくは、Ni基耐熱合金に代表される耐熱合金の高速切削用途での寿命向上を図ったcBN切削工具に関する。
切削加工における難削材のひとつにNi基耐熱合金がある。このNi基耐熱合金を被削材とする切削加工において従来多用されている超硬合金製工具を使用すると、強度面から切削速度が早くとも80m/min以下に制限され、加工能率が高まらない。
このために、高温硬度に優れるcBN焼結体で切れ刃を構成したcBN切削工具を用いて200m/min以上の高速切削を行うことが検討されている。
ところが、cBNは超硬合金に比べて高硬度である半面、靭性が低いことから、そのcBN切削工具で耐熱合金を切削する場合、横切れ刃部に欠損が生じ、寿命維持の信頼性に欠ける。cBNはセラミックスに比べると靭性が高いが、耐熱合金の切削では靭性不足を否めない。
その対策として、下記特許文献1に記載されるように、切れ刃を構成するcBN焼結体の熱伝導率を低下させ、それにより、刃先で発生する熱(切削熱)で被削材を軟化させながら切削を行う試みがある。
また、切れ刃の強化策として、ネガランドを付与するなどして刃先のすくい角を負にする方法があり、この方法は脆い材料からなる切れ刃の欠損防止に有効である。
靭性の低い脆い材料からなる切れ刃については、刃先の強化処理を行うことが通常なされている。その強化処理(ネガランドの付与など)を施した切れ刃は、強化処理による刃先の鈍化によって切れ味が鈍り、それにより、発生する切削熱が多くなる。
従って、切れ刃の材料としてcBN焼結体を用い、切削熱で被削材を軟化させながら切削を進める場合には、刃先を鈍らせることが工具の寿命向上に関して有効と考えた。
ところが、その方法では、cBN切削工具の寿命は十分に高まらなかった。
そこで、この発明は、耐熱合金の切削に利用するcBN切削工具の寿命を従来敬遠されていた手法を適用して向上させることを課題としている。
上記の課題を解決するため、この発明においては、平均粒径が0.5μm以上、2μm以下のcBN粒子を使用した熱伝導率が20〜70W/m・KのcBN焼結体からなる刃先チップと、その刃先チップをコーナ部に保持した台金をcBN切削工具に具備させ、その工具の前記刃先チップに設けられる切れ刃に正のすくい角を付与した。
この発明のcBN切削工具は、刃先チップを熱伝導率の低いcBN焼結体で形成し、その刃先チップに設けられる切れ刃に正のすくい角を付与している。
切れ刃に正のすくい角を付与したcBN切削工具は、実験の結果、従来の刃先に強化処理を施した耐熱合金切削用cBN切削工具に比べて横切れ刃部境界摩耗(以下、VNと表記)や逃げ面摩耗(フランク摩耗:以下、VBと表記)が抑制され、これにより、従来の工具よりも寿命が向上することが確認された。
以下、この発明のcBN切削工具の実施の形態を添付図面の図1〜図9に基づいて説明する。
図1は、この発明を三角形cBN切削インサートに適用したものであり、また、図2はこの発明を正方形cBN切削インサートに適用したものである。
これ等のcBN切削工具(cBN切削インサート)1は、超硬合金、セラミックス、サーメット、焼結合金などからなる台金(形状は菱形を含む多角形)2のコーナ部にcBN焼結体の小片で構成された刃先チップ3を接合するなどして設け、切れ刃4をそのcBN焼結体で構成している。5は刃先チップ3に形成されたすくい面、6は逃げ面である。
刃先チップ3は、平均粒径が0.5μm以上、2μm以下のcBN粒子を使用し、そのcBN粒子の含有率を調整することによって熱伝導率を20〜70W/m・Kに設定したcBN焼結体で作られている。
cBN焼結体の原料となすcBN粉末の平均粒径を0.5μm以上、2μm以下とし、さらに、そのcBN粉末を用いたcBN焼結体の熱伝導率を20〜70W/m・Kとなすことで後述する正のすくい角の付与と、横切れ刃部の欠損及び摩耗の抑制を両立させることができる。
図2の工具は、その刃先チップ3が全コーナ部に設けられている。その刃先チップ3は、全コーナ部にある必要はない。図1の工具のように、1箇所のコーナ部に設けられていてもよいし、菱形切削インサートでは、2箇所の鋭角対角コーナ部に設けられていてもよい。
cBN焼結体の刃先チップの製造は、以下に述べる方法で行える。その方法は前掲の特許文献1に詳しく記載されているので、ここでは、簡単に述べるにとどめる。
特許文献1が記載している製造方法は、先ず、微細粒径のWC粉末とCo粉末とAl粉末を質量比で、WC:Co:Al=25:68:7の割合で混合し、これを真空中1000℃で30分間熱処理した化合物を粉砕して結合相を構成する原料粉末を得る。
次に、これも微細粒径のAl粉末とZr粉末の混合物を窒素雰囲気中1000℃で30分間熱処理して第1化合物を得る。その後、同化合物を粗粉砕し、さらに、直径が1mmに満たないジルコニア製メディアを用いてエタノール溶媒中でメディアと粗粉砕された第1化合物を微粉砕し、メディアを除去して断熱相を構成する原料粉末を得る。
次いで、得られた結合相を構成する原料粉末と断熱相を構成する原料粉末と平均粒径が0.5μm以上、2μm以下のcBN粉末を焼結後のcBN含有率が所望の体積%となるように配合、混合し、これを乾燥させる。そしてさらに、その混合粉末を金属製支持板に積層してMoカプセルに充填後、超高圧装置により、例えば,7GPa、温度1750℃で30分間焼結する。
そして、このようにして得られたcBN焼結体を所定の形状に切断し、台金に接合して工具のブランク材を得る。その後、必要箇所の研削を実施して所定形状の工具に仕上げる。
研削は、少なくとも刃先チップ3に設けるすくい面5と逃げ面6について行い、すくい面5を研削するときに切れ刃4に正のすくい角を付与する。図4に示したそのすくい角θは、2°以上、20°以下、より好ましくは5°以上、15°以下の正の値とする。
また、そのすくい角θは、切れ刃先端(刃先)での値とする。図4は、図3の平面図においてコーナ角の2等分線CLに沿った断面を表したものであって、図3においてコーナ角の2等分線CLが切れ刃4と交差した位置が切れ刃先端である。
なお、すくい角θを上記の範囲に設定する理由は、評価試験の結果、すくい角θは2°〜5°或いは15°〜20°でも摩耗抑制の効果が確認されたが、θが5°以上、15°以下で特に摩耗抑制の効果が高かったことによる。
工具製造時の必要箇所の研削は、NC研削盤を使用して行う。使用する研削盤は、位置と姿勢の数値制御がなされる図6に示すようなチャック11と、定位置で回転する砥石(図のそれはカップ砥石)12を有する。
この研削盤に対するワーク(cBN切削工具)の搬入・搬出と、チャック11に対するワークの受け渡しは、位置制御がなされるロボットハンド(図示せず)を用いて行われる。
この発明の工具の研削に用いた研削盤は、図7、図8に示す4軸制御、即ち、X軸、Y軸方向へのチャック移動、チャック11の軸心Oを中心にした回転及び図8のb軸方向回転の各機能(Z軸方向には動かない)を有するものであり、逃げ面、すくい面及び後述する切れ上がり面を工具を持ち替えずにいわゆるワンチャックで研削することができる。
すくい面5の研削加工は、cBN切削工具1を掴んだチャック11を必要な方向に回転させて図9に示すように、刃先チップ3のすくい面を砥石12の端面に平行に押しつける方法で行う。
このとき、砥石12の端面に対して刃先チップ3を少し傾けて研削を行うことで、正のすくい角を有するすくい面5を生じさせることができる。
この発明においては耐熱合金の旋削用工具に対してその正のすくい角を付与する。
切れ刃に正のすくい角を付与することは、靭性の高い超硬合金や高速度鋼などからなる切削工具では一般的である。
しかしながら、耐熱合金の旋削加工に利用するcBN切削工具においてすくい角を正に設定することは、従来は行なわれていなかった。
その理由の一つは、cBN焼結体で形成される切れ刃は、耐熱合金の切削用途では耐欠損性を高めることが重要と考えられていたことにある。
理由の2つ目は、すくい角を正にすると切れ味の向上による刃先温度の低下が起こる。これは、耐熱合金の切削を目的として熱伝導率の低いcBN焼結体を刃具材料として選択し、また、切削速度を高めて刃先温度を上げることで切削熱で被削材を軟化させながら行う切削加工法においては意に反することであり、切れ刃の欠損防止の効果を低減させると考えられていたことにある。
その耐熱合金を切削する用途のcBN切削工具に、正のすくい角を付与することで切削工具の寿命を向上させ得る知見は本発明者等にもなかった。種々の模索と試験を繰り返した中で偶然その効果を見出したのである。
すくい面5は平坦な面が加工性に優れて好ましい。その正のすくい角のついたすくい面5を形成すると、研削されて落ち込んだ面と研削されていない面との間に段差が生じる。
その段差が生じる箇所は、彎曲した切れ上り面7にしてその切れ上り面7をすくい面5の終端(切れ刃から離れる側の端部)に連ならせるのがよい。
彎曲した切れ上り面7は、砥石12の側面で加工することができる。砥石12は、半径が50mm〜200mm程度のものでよく、そのような砥石の側面で研削した切れ上り面7は、コーナ部が、内接円の半径rが5μm〜50μm程度の面になって切屑のカール性を良好にする。
すくい面5の研削により、図4に示すように、コーナ角の2等分線CLに沿った断面において、切れ刃4の先端(刃先)が台金2の平坦な上面2aの延長上(上面2aと同一高さ位置)から台金下面側に向かって多少低下する。その芯下がり量(上面2aの延長上からの低下量)dは、10μm〜100μmの範囲にあるようにするのがよい。
その芯下がり量dの下限を10μmにすることで、すくい面の研削時にシャープエッジの切れ刃を生じさせることができる。
一方、その芯下がり量dが大きくなる程すくい面の無駄な研削量が増える。また、芯下がり量dが大きくなるにつれて切削抵抗も増加する。これ等を考えると芯下がり量dの上限は100μm程度が許容範囲である。
なお、切れ刃4は、先端(刃先)から離れるに従って台金上面の延長上からの低下量が大きくなる。その影響で、先端から後退した位置における切れ刃各部のすくい角(平面図において切れ刃各部に直交する線に沿った断面に現われるすくい角)は、例えば、図4に示した先端でのすくい角が例えば10°の場合、後方では先端よりも小さい7°や8°と言った値になる。
切れ刃4は中心部(刃先)から離れた位置では刃先よりも強度が高くなるのが望ましく、平坦な面で構成されるすくい面にすることでその要求にも応えることができる。
図9の方法でのすくい面5の研削により、図3に示すように、すくい面5に工具の平面視においてコーナ角の2等分線CLに対してほぼ垂直な研摩筋8が形成される。その方向に延びた研摩筋8は、切屑の溶着防止に効果を奏する。研摩筋8は厳密には砥石12の外径に近い曲率半径で彎曲しており、そのためにここではほぼ垂直と表現した。
なお、この発明のcBN切削工具は、正のすくい角の付与によって切れ刃がシャープになる。そのシャープな切れ刃は欠けやすいので、必要に応じて、切れ刃に刃先強化のための微小なRホーニング処理を施すのがよい。
そのRホーニングは、すくい角を正に設定すること(すなわち切れ味を高めること)の効果が損なわれないものにする。曲率半径が0.005mm以上、0.02mm以下のRホーニングであれば、その要求に応えることができる。
表1に示す諸元のcBN切削工具を試作してその性能を評価した。試作工具は、図1に示した形状である。表1の試料No.1〜10に用いた刃先チップの熱伝導率とその刃先チップの切れ刃に付与した正のすくい角を表1に併せて示す。また、表1の各試料の刃先チップの組成を表2に示す。
刃先チップを構成するcBN焼結体は、平均粒径が1μmのcBN粒子を使用したが、平均粒径が0.5μm以上、2μm以下であれば、大差の無い性能が得られる。
試料No.1〜3及びNo.7〜10は、cBN焼結体からなる刃先チップの熱伝導率と正のすくい角の大きさのどちらも本発明の条件を満たす。試料No.4〜6は、刃先チップの熱伝導率が本発明の条件外となっている。
試料No.1〜4及びNo.7〜10の刃先チップの熱伝導率はcBNの含有量を調整して異ならせた。試料No.5は、刃先チップに市販のボラゾン(Diamond Innovation社商品名)を使用し、試料No.6は、市販のβ−SiAlONセラミックス工具を使用した。
この試作工具を使用して被削材:HRC46の硬さの直径:120mm、長さ:250mmのインコネル718の棒材を以下の条件で切削した。
切削条件 切削速度V:200m/min
送り f:0.1mm/rev
切り込みap:0.3mm
クーラント:20倍希釈エマルジョン
送り f:0.1mm/rev
切り込みap:0.3mm
クーラント:20倍希釈エマルジョン
この評価試験はVNとVBのどちらか一方が0.2mmに達したときを工具の寿命とし、その寿命までの切削長を調べた。その結果を表1に併せて示す。
この試験結果からわかるように、cBN焼結体からなる刃先チップの熱伝導率が20〜70W/m・Kの範囲にある切削工具は、熱伝導率が10W/m・Kの試料No.4や熱伝
導率が100W/m・Kの試料No.5に比べて寿命が大きく延びている。その寿命向上の
効果は、正のすくい角を5°〜15°にしたものが特に顕著である。
導率が100W/m・Kの試料No.5に比べて寿命が大きく延びている。その寿命向上の
効果は、正のすくい角を5°〜15°にしたものが特に顕著である。
なお、この発明を適用する切削工具は、菱形、三角形、正方形、コーナ数が5以上の多角形など形状は特に問わない。また、台金のコーナ部の少なくとも1箇所にcBN焼結体の刃先チップを備えるものの全てがこの発明の適用対象となる。
1 cBN切削工具
2 台金
2a 平坦な上面
3 刃先チップ
4 切れ刃
5 すくい面
6 逃げ面
7 切れ上り面
8 研摩筋
θ すくい角
CL コーナ角の2等分線
d 切れ刃先端の台金上面の延長上からの低下量
11 チャック
12 砥石
O チャックの軸心
2 台金
2a 平坦な上面
3 刃先チップ
4 切れ刃
5 すくい面
6 逃げ面
7 切れ上り面
8 研摩筋
θ すくい角
CL コーナ角の2等分線
d 切れ刃先端の台金上面の延長上からの低下量
11 チャック
12 砥石
O チャックの軸心
Claims (6)
- 平均粒径が0.5μm以上、2μm以下のcBN粒子を使用した熱伝導率が20〜70W/m・KのcBN焼結体からなる刃先チップと、その刃先チップをコーナ部に保持した台金を具備し、工具の前記刃先チップに設けられる切れ刃に正のすくい角が付与されたcBN切削工具。
- 前記正のすくい角の大きさが、5°以上、15°以下である請求項1に記載のcBN切削工具。
- 前記コーナ部のコーナ角の2等分線に沿った断面において、切れ刃の先端が前記台金の平坦な上面の延長上から台金下面側に向かって10μm〜100μm低下しており、先端から離れるに従って切れ刃位置の低下量が大きくなっている請求項1又は請求項2に記載のcBN切削工具。
- 前記刃先チップに付されるすくい面が平坦な面で構成された請求項3に記載のcBN切削工具。
- 前記刃先チップの、正のすくい角が付与されたすくい面の終端にR50mm〜R200mmの曲率半径を有する彎曲した切れ上り面を連ならせた請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のcBN切削工具。
- すくい面の正のすくい角を有する部分が、工具の平面視において前記コーナ部のコーナ角の2等分線に対してほぼ垂直な研摩筋を有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のcBN切削工具。
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Cited By (1)
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WO2020174877A1 (ja) * | 2019-02-28 | 2020-09-03 | 住友電気工業株式会社 | 切削工具、その製造方法、及びニッケル基耐熱合金の加工方法 |
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WO2011122242A1 (ja) * | 2010-03-29 | 2011-10-06 | 住友電工ハ-ドメタル株式会社 | 切削インサート |
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2016
- 2016-05-19 JP JP2016100313A patent/JP2016190317A/ja active Pending
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