以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る異常運転検出装置は、自移動体の周辺に位置する他移動体を含む、他移動体周辺を撮影する撮影部と、撮影部によって撮影された撮影画像に基づき、基準物を特定し、基準物と他移動体との相対位置の変化を示す運転度を測定する測定部と、運転度に基づき、他移動体の異常運転を示す注意喚起情報を出力する出力部と、を備える。
このような本実施形態の異常運転検出装置によれば、撮影部による撮影画像に基づいて基準物を特定し、基準物と他移動体との相対位置の変化を示す運転度を測定することで、基準物を基準として他移動体の異常運転を精度良く検出することができる。尚、運転度は複数のパラメータを含んでいてもよく、各パラメータについて独立に基準値が設定されてもよいし、複数のパラメータを総合的に判定するように基準値が設定されてもよい。また、出力部は、自移動体に対して注意喚起情報を出力してもよいし、他移動体の周辺の移動体に対して注意喚起情報を出力してもよい。
自移動体の状態を示す自移動体情報と、他移動体の状態を示す他移動体情報と、自移動体及び他移動体が走行している道路の状態を示す道路情報と、のうち少なくとも1つを含む環境情報を取得する環境取得部と、環境情報に基づいた基準値を取得する基準値取得部と、をさらに備え、出力部は、運転度が基準値以上となる場合、注意喚起情報を出力することが好ましい。それにより、他移動体の運転度を測定するだけでなく、環境情報に基づいた基準値を取得することで、正常走行からのずれが発生しやすい場合や接触の可能性が低い場合には基準値を高くし、ずれが発生しにくい場合や接触の可能性が高いには基準値を低くすることにより、他移動体の異常運転を適切に検出することができる。尚、正常走行とは、走行時に速度の変化が小さく且つ左右へのふらつきが小さいことを意味する。さらに、環境情報が、自移動体の状態を示す自移動体情報と、他移動体の状態を示す他移動体情報と、自移動体及び前記他移動体が走行している道路の状態を示す道路情報と、のうち少なくとも1つを含むことで、自移動体や他移動体、道路の状態に応じて、運転度についての基準値を適切に設定することができる。尚、自移動体情報は、自移動体の走行速度を含むことがより好ましい。また、他移動体情報は、他移動体の走行速度と、他移動体に取り付けられている標識情報(例えば初心運転者標識や高齢運転者標識)と、のうち少なくとも1つを含むことがより好ましい。また、道路情報は、路面状態と、車線幅と、道路上の障害物の有無と、車線の曲率と、カーブの連続数と、のうち少なくとも1つを含むことがより好ましい。
運転度は、他移動体の左右への振れ幅を含み、測定部は、道路に沿って設けられた設置物又は自移動体を基準物として特定し、基準物と他移動体との相対位置に基づいて振れ幅を測定することが好ましい。それにより、他移動体が左右に振れた場合に、異常運転であると判断することができる。さらに、測定部が設置物を基準物として特定した場合には、設置物と他移動体との相対位置(即ち間隔)に基づいて振れ幅を精度良く測定し、他移動体が左右に振れたかを検出することができる。一方、測定部が自車両を基準物として特定した場合には、自移動体が左右に振れずに走行していると仮定すれば、他移動体が左右に振れたかを検出することができる。尚、他移動体が自移動体の前後に位置し、自車両を基準物とする場合には、自移動体及び他移動体の任意の部位を基準位置とし、左右方向における基準位置同士の相対位置の変化に基づいて、振れ幅を測定することができる。また、他移動体が自移動体の左右に位置し、自車両を基準物とする場合には、他移動体との相対位置(即ち左右方向における移動体間隔)に基づいて、振れ幅を測定することができる。尚、測定部は、車線を区切る白線と、ガードレールと、歩道と、道路の幅方向端部に設けられる壁部と、のうち少なくとも1つを設置物(基準物)として特定することがより好ましい。
運転度は、他移動体の速度変化量を含み、測定部は、自移動体を基準物として特定し、自移動体と他移動体との相対位置に基づいて速度変化量を測定することが好ましい。それにより、他移動体が加減速した場合に、異常運転であると判断することができる。さらに、相対位置の時間変化に基づいて自移動体と他移動体との相対速度を算出することができ、自移動体が一定速度で走行していると仮定すれば、他移動体が加減速したかを検出することができる。尚、他移動体が自移動体の前後に位置する場合には、他移動体との相対位置(即ち移動体間隔)の時間変化を算出することにより、相対速度を算出することができる。また、他移動体が自移動体の左右に位置する場合には、自移動体及び他移動体の任意の部位を基準位置とし、前後方向における基準位置同士の相対位置の時間変化を算出することにより、相対速度を算出することができる。
尚、撮影部は、自移動体の前後左右のうち少なくとも1方向に位置する他移動体の周辺を撮影すればよい。それにより、自移動体に対して適宜な方向に位置する他移動体の異常運転を検出することで、接触を回避しやすくすることができる。
また、本発明の実施形態に係る異常運転検出方法は、自移動体の周辺に位置する他移動体を含む、他移動体周辺を撮影する撮影工程と、撮影工程において撮影された撮影画像に基づき、基準物を特定し、基準物と他移動体との相対位置の変化を示す運転度を測定する測定工程と、運転度に基づき、他移動体の異常運転を示す注意喚起情報を出力する出力工程と、を含む。このような本実施形態の異常運転検出方法によれば、上記の異常運転検出装置と同様に、基準物と他移動体との相対位置の変化を示す運転度を測定することで、基準物を基準として他移動体の異常運転を精度良く検出することができる。
また、上述した異常運転検出方法をコンピュータにより実行させる異常運転検出プログラムとしてもよい。このようにすることにより、コンピュータを用いて、他移動体の異常運転を精度良く検出することができる。
また、上述した異常運転検出プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。図1は、本発明の実施例に係る異常運転検出装置1の概略を示すブロック図であり、図2は、異常運転検出装置1が実行する異常検出処理の手順の一例を示すフローチャートであり、図3は、異常検出処理における他車両検知処理の手順の一例を示すフローチャートであり、図4は、異常検出処理における振れ検知処理の手順の一例を示すフローチャートであり、図5は、異常検出処理における速度変化検知処理の手順の一例を示すフローチャートであり、図6は、異常検出処理における測定終了判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
本実施例の異常運転検出装置1は、自移動体としての自車両に搭載されて他移動体としての他車両の異常運転を検出するものであって、図1に示すように、制御部2と、前方カメラ3と、後方カメラ4と、左方カメラ5と、右方カメラ6と、スピーカ7と、表示部8と、車両通信部9と、を備える。
制御部2は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)で構成され、異常運転検出装置1の全体制御を司る。尚、制御部2は、例えばナビゲーション装置やメータ等の車載装置に設けられた制御部であってもよいし、車載装置とは独立に異常運転検出装置1専用の制御部であってもよい。また、制御部2は、後述するように、カメラ3〜6の撮影画像に基づいて運転度を測定することで測定部として機能するとともに、運転度についての基準値を取得することで基準値取得部として機能する。
カメラ3〜6は、それぞれ前後左右を撮影するように構成され、自車両の周辺に位置する他車両及びこの他車両の周辺を撮影し、撮影画像を制御部2に送信することにより、撮影部として機能する。制御部2は、カメラ3〜6から送信された撮影画像に基づき、基準物を特定し、基準物と他車両との相対位置の相対位置の変化を示す運転度を測定するように構成されている。また、カメラ3〜6は、道路に沿って延びて車線を区切る白線も撮影するように構成されている。制御部2は、道路に沿って延びて車線を区切る白線(設置物)を基準物として特定した場合には、白線と他車両との左右方向(幅方向)における間隔の変化を測定し、自車両を基準物として特定した場合には、自車両に対して前後に位置する他車両(前後車両)との前後方向(進行方向)における車両間隔、左右に位置する他車両(左右車両)との左右方向における車両間隔、前後車両との左右方向における相対位置の変化を測定する。尚、前後車両との左右方向における相対位置の変化を測定する際には、自車両の中心線(左右方向における略中心位置)と他車両の中心線とを比較する。
スピーカ7は、注意喚起情報を音声によって自車両内に出力するように構成され、出力部として機能する。尚、スピーカ7は、例えば車両に搭載された音楽再生用のスピーカであればよい。また、表示部8は、例えばナビゲーション装置等の表示画面で構成され、周囲換気情報を画像によって出力するように構成されている。このようなスピーカ7及び表示部8が出力部として機能する。尚、出力部は、画像と音声とのうち少なくとも一方を出力するものであればよい。
車両通信部9は、車両のメータと通信して自車両の走行速度(自車両速度)を取得するとともに、ステアリングホイールに接続されて操舵角(即ち、自車両の車輪の舵角)を取得し、制御部2に信号を送信する。また、本実施例では、自車両速度を自移動体情報としての自車両情報(環境情報)とし、車両通信部9は環境取得部として機能する。
本実施例では、他車両における正常走行からの程度を示す運転度は、他車両の左右への振れ幅と、他車両の速度変化量と、を含み、振れ幅についての基準値である振れ基準値と、速度変化量についての基準値である間隔基準値と、がそれぞれ決定される。
ここで、制御部2が図2に示す異常検出処理を実行する手順について説明する。車両が走行を開始して所定時間が経過すると、制御部2は、図2に示す異常検出処理を開始する。異常検出処理において、制御部2は、まず他車両検知処理を実行する(S1)。図3に示すように、他車両検知処理において、制御部2は、車両通信部9によって自車両速度を取得し(S20)、自車両速度が開始閾値(例えば20km/h)以上であるか否かを判定する(S21)。自車両速度が開始閾値未満である場合(S21でN)、制御部2は他車両検知処理を終了する。一方、自車両速度が開始閾値以上である場合(S21でY)、制御部2は、カメラ3〜6に自車両の周辺を撮影させるとともに(撮影工程)、撮影画像に基づいて他車両としての前方車両との前後方向における車両間隔を測定し(S22)、測定した車両間隔が間隔閾値(例えば50m)以下であるか否かを判定する(S23)。尚、間隔閾値は、一定の値であってもよいし、自車両速度に基づいて変動してもよい。また、他車両が検知されない場合には、車両間隔を無限大とする。制御部2は、測定した車両間隔が間隔閾値以下である場合(S23でY)、検知対象となる前方車両があると判断し(S24)、測定した車両間隔が間隔閾値よりも大きい場合(S23でN)、S24を経ずに次工程へ進む。
次に、制御部2は、他車両としての後方車両との前後方向における車両間隔を測定し(S25)、測定した車両間隔が間隔閾値以下であるか否かを判定する(S26)。この間隔閾値は、S23における間隔閾値と等しい値であってもよいし異なる値であってもよい。制御部2は、測定した車両間隔が間隔閾値以下である場合(S26でY)、検知対象となる後方車両があると判断し(S27)、測定した車両間隔が間隔閾値よりも大きい場合(S26でN)、S27を経ずに次工程へ進む。
次に、制御部2は、他車両としての左右車両との左右方向における車両間隔を測定し(S28)、測定した車両間隔が間隔閾値以下であるか否かを判定する(S29)。制御部2は、測定した車両間隔が間隔閾値以下である場合(S29でY)、検知対象となる左右車両があると判断し(S30)、他車両検知処理を終了し、測定した車両間隔が間隔閾値よりも大きい場合(S29でN)、S30を経ずに他車両検知処理を終了する。尚、S28〜S30の工程は、左右のうち他車両が存在し得る方向について実施されればよく、例えば、自車両が最も左側の車線を走行している場合には右方の車両を対象とすればよい。また、自車両が三車線のうち中央の車線を走行している場合には、左右両方の他車両を対象としてS28〜S30の工程を実施するものとする。また、左右車両に対する間隔閾値は、前後車両に対する間隔閾値とは異なる値(例えば1車線分の幅程度)に設定されている。また、S28、S29に代えて、自車両と左右車両との前後方向における相対位置を測定し、自車両と左右車両とが前後方向において離れていないかを判定することによって他車両の有無を判断してもよい。
制御部2は、再び異常検出処理に戻り、検知対象となる他車両があるか否かを判定する(S2)。検知対象となる他車両がない場合(S2でN)、制御部2は異常検出処理を終了する。一方、検知対象となる他車両がある場合(S2でY)、制御部2は、異常運転検出装置1がオン状態(即ち動作している状態)であるか否かを判定する(S3)。異常運転検出装置1がオフ状態の場合(S3でN)、制御部2は異常検出処理を終了する。一方、異常運転検出装置1がオン状態の場合(S3でY)、制御部2は、検知対象となる前後車両があるか否かを判定する(S4)。検知対象となる前後車両がある場合(S4でY)、制御部2は、振れ検知処理を実行する(S5)。一方、検知対象となる前後車両がない場合(S4でN)、制御部2は、後述するS11に進む。
振れ検知処理において、制御部2は図4に示すように、まず対象となる他車両の走行状態を予め定められた一定時間(例えば10s)だけ監視し(S40)、検知時間の測定を開始する(S41)。次に、制御部2は、前後のカメラ3、4によって白線が検知されたか否かを判定する(S42)。白線が検知された場合(S42でY)、制御部2は、白線を基準物として特定し、その白線と他車両との左右方向における間隔を、振れパラメータとする(S43)。この間隔が大きくなると振れパラメータが増加し、小さくなると減少するものとする。一方、白線が検知されない場合(S42でN)、制御部2は、自車両を基準物として特定し、自車両の中心線に対する他車両の中心線の左右方向における相対位置を振れパラメータとする(S44)。自車両の中心線に対して他車両の中心線が右側に移動すると振れパラメータが増加し、左側に移動すると減少するものとする。また、相対位置を測定するための基準は、中心線に限定されず、車両の適宜な位置に設定されていればよい。
次に、制御部2は、振れパラメータの初期値を取得し(S45)、測定している検知時間が第1測定時間(例えば30s)以内であるかを判定する(S46)。検知時間が第1測定時間以内である場合(S46でY)、制御部2は、自車両の操舵角を取得し(S47)、自車両が左右に振れているか否かを判定する(S48)。このとき、例えば操舵角が短時間で大きな変化を繰り返している場合に、自車両が左右に振れていると判断すればよい。自車両が左右に振れていない場合(S48でN)、制御部2は、自車両速度を取得し(S49、環境取得工程)、自車両速度が開始閾値以上であるか否かを判定する(S50)。検知時間が第1測定時間を超過した場合(S46でN)、自車両が左右に振れている場合(S48でY)、及び、自車両速度が開始閾値未満である場合(S50でN)、制御部2は、振れ検知処理を終了する。
一方、自車両速度が開始閾値以上である場合(S50でY)、制御部2は、その時点での振れパラメータを取得し(S51、測定工程)、環境情報としての自車両速度に基づいて振れ基準値を決定する(S52、基準値取得工程)。振れ基準値は、例えば自車両速度が高いほど振れ基準値が低くなるように決定されればよい。次に、制御部2は、S51で取得した振れパラメータから初期値を減じた差分(振れ差分値)の絶対値が、予め設定された振れ上限値以内であるか否かを判定する(S53)。この絶対値が振れ上限値よりも大きい場合(S53でN)、制御部2は、振れ検知処理を終了する。即ち、対象とする他車両が車線変更等を行った場合、振れ差分値の絶対値が振れ上限値よりも大きくなり、この他車両は検知対象から外れるようになっている。
一方、振れ差分値の絶対値が振れ上限値以内の場合(S53でY)、制御部2は、振れ差分値の絶対値が振れ基準値以上であるか否かを判定する(S54)。振れ差分値の絶対値が振れ基準値未満である場合(S54でN)、制御部2は、再びS46に戻る。一方、振れ差分値の絶対値が振れ基準値以上である場合(S54でY)、制御部2は、前回測定した振れ差分値と、今回測定した振れ差分値と、の積が負の値であるか否かを判定する(S55)。即ち、他車両が前回移動した方向と今回移動した方向とが異なっているか否かを判定する。制御部2は、この積が負の値である場合(S55でY)、振れ回数のカウンタ値を1増加させ(S56)、一方、この積が正の値又は0である場合(S55でN)、S46に戻る。S56に次いで、制御部2は、振れ回数が予め定められた振れ判定回数以上であるか否かを判定する(S57)。振れ回数が振れ判定回数未満である場合(S57でN)、制御部2はS46に戻る。一方、振れ回数が振れ判定回数以上である場合(S57でY)、制御部2は、対象とする前後車両の左右への振れを確定し(S58)、振れ検知処理を終了する。
振れ検知処理を終了すると、制御部2は再び異常検出処理に戻り、振れ検知処理において前後車両の左右の振れが確定したか否かを判定する(S6)。振れが確定していない場合(S6でN)、制御部2は、速度変化検知処理を実行する(S7)。
速度変化検知処理において、制御部2は図5に示すように、まず自車両速度の初期値を取得し(S60)、自車両を基準物として特定して前後車両との車両間隔の初期値を取得する(S61)。次に、制御部2は、検知時間の測定を開始する(S62)。制御部2は、測定している検知時間が第2測定時間以内であるかを判定する(S63)。尚、第2測定時間は第1測定時間と等しくてもよいし、異なる値に設定されていてもよい。検知時間が第2測定時間以内である場合(S63でY)、制御部2は、自車両速度を取得し(S64、環境取得工程)、自車両速度が一定であるか否かを判定する(S65)。このとき、自車両速度が初期値に対して所定の誤差範囲内であれば自車両速度が一定であると判断すればよい。自車両速度が一定である場合(S65でY)、制御部2は、自車両速度が開始閾値以上であるか否かを判定する(S66)。検知時間が第2測定時間を超過した場合(S63でN)、自車両速度が一定でない場合(S65でN)、及び、自車両速度が開始閾値未満である場合(S66でN)、制御部2は、速度変化検知処理を終了する。
一方、自車両速度が開始閾値以上である場合(S66でY)、制御部2は、その時点での自車両と他車両との車両間隔を取得し(S67、測定工程)、環境情報としての自車両速度に基づいて間隔基準値を決定する(S68、基準値取得工程)。尚、間隔基準値は、例えば自車両速度が高いほど低くなるように決定されればよい。次に、制御部2は、車両間隔が間隔閾値以下であるか否かを判定する(S69)。車両間隔が間隔閾値よりも大きい場合(S69でN)、制御部2は、速度変化検知処理を終了する。即ち、対象とする他車両が充分に遠ざかった場合、この他車両は検知対象から外れるようになっている。
一方、車両間隔が間隔閾値以下の場合(S69でY)、制御部2は、S67で取得した車両間隔から初期値を減じた差分(間隔差分値)の絶対値が間隔基準値以上であるか否かを判定する(S70)。間隔差分値の絶対値が間隔基準値未満である場合(S70でN)、制御部2は、再びS63に戻る。一方、間隔差分値の絶対値が間隔基準値以上である場合(S70でY)、制御部2は、前回測定した間隔差分値と、今回測定した間隔差分値と、の積が負の値であるか否かを判定する(S71)。即ち、自車両が他車両に対して近づいたり離れたりを繰り返したか判定する。制御部2は、この積が負の値である場合(S71でY)、変化回数のカウンタ値を1増加させ(S72)、この積が正の値又は0である場合(S71でN)、S63に戻る。S72に次いで、制御部2は、変化回数が予め定められた変化判定回数以上であるか否かを判定する(S73)。変化回数が変化判定回数未満である場合(S73でN)、制御部2はS63に戻る。一方、変化回数が変化判定回数以上である場合(S73でY)、制御部2は、対象とする前後車両の速度変化を確定し(S74)、速度変化検知処理を終了する。
速度変化検知処理において、自車両速度が一定であることを判定した後に他車両との車両間隔の変化を測定していることから、この車両間隔が変化するということは、他車両の速度が変化していることと等しい。従って、車両間隔を測定することによって他車両の速度変化を検出する処理となっている。
速度変化検知処理を終了すると、制御部2は再び異常検出処理に戻り、速度変化検知処理において前後車両の速度変化が確定したか否かを判定する(S8)。前後車両の速度変化が確定していない場合(S8でN)、制御部2は後述するS10に進む。前後車両の振れが確定している場合(S6でY)、及び、速度変化が確定している場合(S8でY)、制御部2は、スピーカ7及び表示部8に注意喚起情報を出力させる(S9、出力工程)。次に、制御部2は、検知対象であり、且つ、振れ検知処理及び速度変化検知処理が未処理の前後車両があるか否かを判定する(S10)。未処理の前後車両がある場合、制御部2は再びS5に戻る。一方、未処理の前後車両がない場合(S10でN)、制御部2は、検知対象となる左右車両があるか否かを判定する(S11)。検知対象となる左右車両がある場合(S11でY)、制御部2は、左右車両振れ検知処理を実行する(S12)。一方、検知対象となる左右車両がない場合(S11でN)、制御部2は、後述するS16に進む。
左右車両振れ検知処理は、図4の振れ検知処理と略同様の処理であって、自車両を基準物として特定するとともに、自車両と他車両との左右方向における車両間隔を振れパラメータとする。即ち、S42〜S44の工程は省略される。また、左右車両振れ検知処理において判定に用いる値(測定時間、振れ上限値、振れ基準値、振れ判定回数)は、図4の振れ検知処理で用いる値と等しくてもよいし、異なる値であってもよい。
左右車両振れ検知処理を終了すると、制御部2は再び異常検出処理に戻り、左右車両の振れが確定したか否かを判定する(S13)。左右車両の振れが確定していない場合(S13でN)、制御部2は後述するS15に進む。一方、左右車両の振れが確定している場合(S13でY)、制御部2は、スピーカ7及び表示部8に注意喚起情報を出力させる(S14、出力工程)。次に、制御部2は、検知対象であり、且つ、左右車両振れ検知処理が未処理の左右車両があるか否かを判定する(S15)。未処理の左右車両がある場合、制御部2は再びS12に戻る。一方、未処理の左右車両がない場合(S15でN)、制御部2は、測定終了判定処理を実行する(S16)。
測定終了判定処理において、制御部2は図6に示すように、まず自車両速度を取得し(S80)、自車両速度が開始閾値以上であるか否かを判定する(S81)。自車両速度が開始閾値未満である場合(S81でN)、制御部2は、測定終了状態として全ての注意喚起を停止させ(S82)、測定終了判定処理を終了する。一方、自車両速度が開始閾値以上である場合(S81でY)、制御部2は、前方車両との車両間隔を測定し(S83)、測定した車両間隔が間隔閾値以下であるか否かを判定する(S84)。制御部2は、測定した車両間隔が間隔閾値よりも大きい場合(S84でN)、検知対象となる前方車両なしと判断して前方車両についての注意喚起を停止させ(S85)、測定した車両間隔が間隔閾値以下である場合(S84でY)、S85を経ずに次工程へ進む。
次に、制御部2は、後方車両との車両間隔を測定し(S86)、測定した車両間隔が間隔閾値以下であるか否かを判定する(S87)。制御部2は、測定した車両間隔が間隔閾値よりも大きい場合(S87でN)、検知対象となる後方車両なしと判断して後方車両についての注意喚起を停止させ(S88)、測定した車両間隔が間隔閾値以下である場合(S87でY)、S88を経ずに次工程へ進む。
次に、制御部2は、左右車両との車両間隔を測定し(S89)、測定した車両間隔が間隔閾値以下であるか否かを判定する(S90)。制御部2は、測定した車両間隔が間隔閾値よりも大きい場合(S90でN)、検知対象となる左右車両なしと判断して左右車両についての注意喚起を停止させ(S91)、測定終了判定処理を終了し、測定した車両間隔が間隔閾値以下である場合(S90でY)、S91を経ずに測定終了判定処理を終了する。
上記の構成により、カメラ3〜6による撮影画像に基づいて基準物を特定し、基準物と他車両との相対位置の変化に基づいて運転度を測定することで、基準物を基準として他車両の異常運転を精度良く検出することができる。
さらに、他車両の運転度としての振れ幅及び速度変化量を測定するだけでなく、環境情報としての自車両速度に基づき、振れ幅及び速度変化量についての基準値を決定することで、正常走行からのずれが発生しやすい場合や接触の可能性が低い場合には基準値を高くし、ずれが発生しにくい場合や接触の可能性が高いには基準値を低くすることにより、他車両の異常運転を適切に検出することができる。
さらに、環境情報が自車両速度を含むことで、運転度についての基準値を適切に設定することができる。即ち、自車両速度が高い場合には、低速時に比べて他車両と接触しやすくなると考えられ、自車両速度が高いほど振れ基準値及び間隔基準値を低く設定することにより、他車両の異常運転を適切に検出することができる。
さらに、運転度が他車両の左右への振れ幅及び速度変化量を含むことで、他車両が左右に振れたり加減速したりした場合に、異常運転を検出することができる。
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、運転度についての基準値を決定するための環境情報として、自車両情報である自車両速度を例示したが、環境情報は、自車両速度に限定されず、他車両の状態を示す他車両情報(他移動体情報)や、自車両及び他車両が走行している道路の状態を示す道路情報を含んでいてもよく、これらのうち1つであってもよいし、適宜なものが複数組み合わされてもよい。また、取得する環境情報に応じて、適宜な環境取得部が異常運転検出装置1に設けられればよい。
他車両情報は、例えば、他車両の走行速度や、他車両に取り付けられている標識情報(例えば初心運転者標識や高齢運転者標識)であればよい。他車両の走行速度が高い場合や、初心運転者標識又は高齢運転者標識が取り付けられている場合には、接触しやすくなると考えられ、基準値を低く設定すればよい。また、道路情報は、例えば、路面状態や、車線幅、道路上の障害物の有無、車線の曲率、カーブの連続数、であればよい。路面が濡れていたり凍結していたりする場合や、車線幅が狭い場合には、接触しやすくなると考えられ、基準値を低く設定すればよい。また、道路上に障害物が存在する場合や、車線の曲率が小さい場合、カーブが連続する場合には、正常に走行していても左右への振れが発生しやすいと考えられ、基準値を高く設定すればよい。
また、前記実施例では、運転度として、前後車両の左右への振れ幅と、前後車両の速度変化と、左右車両の左右への振れ幅と、を測定するものとしたが、左右車両の速度変化を測定し、左右車両の異常運転を検出してもよい。即ち、自車両を基準物として特定するとともに、自車両と左右車両とにおけるそれぞれ適宜な部位(例えば車両の前方端部や運転席位置等)を基準位置とし、基準位置同士の相対位置の時間変化を測定することで左右車両との相対速度を測定してもよい。また、検知対象とする他車両は、前方車両と後方車両と左右車両とのうち少なくとも1つであればよい。さらに、測定する運転度は、左右への振れ幅と速度変化量とのうち少なくとも一方を含めばよい。
また、前記実施例では、設置物として車線を区切る白線を例示したが、設置物は、道路に沿って設けられていればよく、例えばガードレールや縁石等であってもよい。
また、前記実施例では、自車両が左右に振れていない場合に他車両の振れ幅を測定し、自車両速度が一定の場合に他車両の速度変化量を測定するものとしたが、自車両に対する他車両の相対的な振れ幅と、自車両の舵角と、に基づいて他車両の絶対的な振れ幅を算出してもよい。また、自車両に対する他車両の相対的な速度と、自車両速度と、に基づいて他車両の絶対的な速度を算出してもよい。
また、前記実施例では、他車両の異常運転を検出した場合に、自車両において注意喚起情報を出力するものとしたが、他車両の周辺を走行する車両と通信することにより、異常運転についての情報を共有する構成としてもよい。また、異常運転についての情報を自車両からサーバに送信し、異常運転状態にある他車両の周辺を走行する車両に対し、サーバから情報を配信してもよい。
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施例に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施例に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。