JP2016186065A - 電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物及び電気電子機器部品搬送ケース - Google Patents

電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物及び電気電子機器部品搬送ケース Download PDF

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陽子 中川
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Abstract

【課題】ボイドの発生が抑制されており、搬送又は保管の際にも電気電子機器部品の性能低下を起こさないクリーン性に優れ、かつ低歪みである電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物を提供する。【解決手段】メタロセン触媒を使用して製造された、下記(a)〜(c)の要件を満たすプロピレン系樹脂100重量部に対し、造核剤(A)、造核剤(B)、造核剤(C)、造核剤(D)及び造核剤(E)からなる群から選択される少なくとも1種の造核剤を特定量含有してなり、下記(d)〜(e)の要件を満たしていることを特徴とする電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物。(a)エチレン含有量が0〜5重量%(b)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5〜4.0(c)温度上昇溶離分別法によって測定される平均溶出温度(T50)が90〜105℃であり、溶出分散度(σ)が9℃以下(d)揮発性成分含有量が10重量ppm以下(e)肉厚2mmの射出成形板を作製した際、収縮率比(MD方向/TD方向)が0.90〜1.10【選択図】なし

Description

本発明は、電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物に関し、詳しくは、ボイドの発生が抑制されており、搬送又は保管の際にも電気電子機器部品の性能低下を起こさないクリーン性に優れ、かつ低歪みである電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物に関する。
ポリプロピレン系樹脂は、耐熱性、成形性、透明性、耐薬品性に優れるという特徴により、各種工業材料、各種容器、日用品、フィルム及び繊維など様々な用途に幅広く使用されている。
電気電子機器には、シリコンウエハ、ハードディスク、ディスク基板、ICチップ、光記憶用ディスク、LCD用高機能基板ガラス、LCDカラーフィルター、ハードディスク磁気ヘッド素子、CCD素子等々の各種部品が使用されているが、電気電子機器の組み立てにおいては、これら部品を組み立てラインに供するため、これら部品を運搬、移送する必要性があり、そのための搬送ケースが用いられる。従来、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の搬送ケースがこの目的のため用いられてきた。
上記搬送ケースは、主として射出成形により成形され、射出成形品の製品剛性は、肉厚の3乗に比例して向上する。しかし、肉厚を大きくすると、製品の重量が上がり、重くなることや冷却時間が長くなり成形サイクルが長く生産性が劣ること、樹脂量が多くなり軽量化のメリットがなくなること、経済性にも劣るなどの問題点がある。
この対策として、成形品の裏側に、リブを立て、成形品重量を抑えつつ成形品の剛性を向上させることが一般に採用されている(例えば、特許文献1参照)。リブ構造により製品剛性を向上させるためには、裏面のリブの幅やリブ部の肉厚が大きいほど効果がある。さらに、このようなリブにより樹脂の流動性が高まり、主要部分が薄肉であっても、成形性よく製品を得ることができる。
しかし、リブ生成部は肉厚が他の部分よりも厚くなり、冷却が遅れることから、成形品の内部にボイドが発生しやすい。透明な素材を用いる成形品では、ボイドが視覚的に確認できる。当該部分は白色を帯びるので、意匠性をそこなう。またボイドが成形品の破壊の起点になりやすく、強度が損なわれるといった問題もある。そのため肉厚は制限されているのが現状である。
薄肉成形品は一般に他の部材にネジ止めなどで固定されるため、ボスが殆どの場合一体的に設けられている。このボス部分もリブと同様に、冷却が他の一般の薄肉部より遅れるため、内部にボイドを生じ、外観が不良となるとともに、強度の面から成形品形状の制約が生じている。
このようなボイド発生を抑制するため、特定の性能を満たすプロピレン系樹脂組成物を用いたプロピレン系樹脂成形体が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、後述するような、樹脂が含有する低分子量成分や残留物質に起因する電気電子機器部品の性能低下や、プロピレン系樹脂の結晶性の遅さによる低生産性を解決するものではなかった。
また近年、電気電子機器部品は、その微細化、高性能化、高容量化にともない、製造環境、保管、移動中に発生、接触する汚染物質が、電気電子機器製品の歩留まり、品質、信頼性に大きな影響を及ぼすようになってきた。樹脂が含有する低分子量成分や残留物質による揮発成分は、加工時の発煙、異臭等の発生原因になるばかりか、加工後でも臭気、色相に悪影響を与えることがあるが、電気電子機器部品の微細化・高密度化・高集積化が進むにつれて、より高度な清浄空間が必要になる。
そして、搬送ケースに収納された上記部品に、性能上の不具合が発生する頻度が増加する問題が生じてきている。例えば、記憶ディスクに有機物や酸性ガスが付着することからくる記憶ディスクの動作不良等の不具合があげられる(例えば、非特許文献1参照。)。搬送ケースの樹脂材料から発生する有機物汚染ガスや水分の発生を抑えることにより、製品の歩留まり、貯蔵、移動中における品質の低下を防止し、信頼性を向上させることが期待される。
プロピレン系樹脂に係わるこのような問題を解決するために、重合後に低分子量成分を洗浄除去する方法(例えば、特許文献2、3参照。)や、塊状重合後の液相部分を分離除去する方法(例えば、特許文献4、5参照。)が提案されている。しかし、いずれの方法を用いても、得られた樹脂中のオリゴマー成分量やこれに由来する揮発成分量は、十分といえるレベルではなく、品質の優れたプロピレン系樹脂の出現が望まれていた。
また、プロピレン系樹脂は結晶化が遅く、成形において冷却時間を多く必要とするため生産性が悪く、生産性の良いプロピレン系樹脂が望まれていた。
さらに、揮発性成分の低減された半導体関連部品搬送ケースの提供手段として、メタロセン触媒を使用して製造されたプロピレン系樹脂を使用することが提案されている(例えば、特許文献6、7参照。)。しかしメタロセン触媒を使用したプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒を使用して製造されたプロピレン系樹脂と比べ射出成形を行う場合には冷却時間を長く取らなければ製品の変形が生じやすく、成形サイクルが長くなってしまう問題があった。また、前述した成形品のボイド発生は抑制されるものではない。
特開2004−331157号公報 特開2014−118482号公報 特公昭53−4107号公報 特公昭58−41283号公報 特開平10−17612号公報 特開平10−17613号公報 特開2008−106089号公報
超クリーン化技術 東レリサーチセンター(2005年7月)
本発明の目的は、かかる従来技術の状況において、ボイドの発生が抑制されており、搬送又は保管の際にも電気電子機器部品の性能低下を起こさないクリーン性に優れ、かつ低歪みである電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行い、特定の性能を満たすプロピレン系樹脂に特定の造核剤を含有させることにより、得られる電気電子用機器部品搬送ケースのボイドを抑制し、生産性が高く、搬送又は保管の際にも電気電子機器部品の性能低下を起こさないクリーン性に優れ、かつ低歪みといった性能を満足することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物及び電気電子機器部品搬送ケースを提供するものである。
[1]メタロセン触媒を使用して製造された、下記(a)〜(c)の要件を満たすプロピレン系樹脂100重量部に対し、下記式(1)で示される造核剤(A)0.0001〜0.8重量部、下記式(2)で示される造核剤(B)0.0001〜0.1重量部、下記式(3)で示される造核剤(C)0.0001〜0.8重量部、芳香族カルボン酸金属塩からなる造核剤(D)0.0001〜0.8重量部及び下記式(4)で示される造核剤(E)0.0001〜0.2重量部からなる群から選択される少なくとも1種の造核剤を含有してなり、下記(d)〜(e)の要件を満たしていることを特徴とする電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物。
(a)エチレン含有量が0〜5重量%
(b)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5〜4.0
(c)温度上昇溶離分別法によって測定される平均溶出温度(T50)が90〜105℃であり、溶出分散度(σ)が9℃以下
(d)揮発性成分含有量が10重量ppm以下
(e)肉厚2mmの射出成形板を作製した際、収縮率比(MD方向/TD方向)が0.90〜1.10
Figure 2016186065
(式中、R、R及びRは、互いに独立して、未置換の又は置換された炭化水素基を表す。)
Figure 2016186065
[式中、Rは、直接結合、硫黄、炭素数1〜9のアルキレン基又は炭素数2〜9のアルキリデン基であり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数7〜9のアルキルアリール基であり、MはLi、Na、K、Mg、Ca、Zn又はAlであり、nはMの価数である。]
Figure 2016186065
[式中、M及びMは、いずれもリチウムイオン、ナトリウムイオン若しくはカリウムイオンであるか、又は共同してカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛及び一塩基性アルミニウムからなる群より選択される単一の金属カチオンであり、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、同一又は異なって、水素、ヒドロキシ、フッ素、塩素、臭素、沃素、炭素数1〜9のアルキル(ここで、いずれか2つのビシナル(隣接炭素に結合)又はジェミナル(同一炭素に結合)アルキルは、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルキレンオキシ、フェニル、アミノ及び炭素数1〜9のアルキルアミノからなる群からそれぞれ選択される。]
Figure 2016186065
[式中、Rは、プロパン−1,2,3−トリイル基又はブタン−1,2,3,4−テトライル基を表す。3個又は4個のRは、互いに同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。aは、3又は4の整数を表す。]
[2]曲げ弾性率が1000MPa以上である[1]に記載の電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物。
[3]Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Sr、Ti、Fe及びZnの金属含有量総量が35重量ppb以下である[1]又は[2]に記載の電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン樹脂組成物を用いて得られる電気電子機器部品搬送ケース。
[5]薄肉部の肉厚をa、厚肉部の肉厚をbとして、aが1.2mmより大きく、b/aが1.5以上である[4]に記載の電気電子機器部品搬送ケース。
本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いて製造した電気電子機器部品搬送ケースは、従来の搬送ケースと比べ極めてボイドが抑制され、生産性が高く、搬送又は保管の際にも電気電子機器部品の性能低下を起こさないクリーン性に優れ、かつ低歪みといった性能を満足するため有用である。特に、高集積回路用半導体等の搬送ケースに非常に有用である。
図1は、本発明の電気電子機器部品搬送ケースにおける薄肉部と厚肉部の肉厚を説明するための成形品の断面図である。 図2は、実施例で使用した突起付き円盤の突起の形状を示す図であり、図2aは突起付き円盤の側面図であり、図2bは突起の平面図である。
本発明の電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物は、メタロセン触媒を使用して製造された一定のエチレン含有量、分子量分布及び溶出特性を有する持つプロピレン系樹脂100部に対し、特定の構造を有する造核剤を特定量含有してなり、揮発性成分含有量が一定量以下で、かつ射出成形板を作製した際、収縮率比(MD方向/TD方向)が特定範囲以内であることを特徴とする。
以下、本発明の電気電子機器部品搬送ケースに用いるプロピレン系樹脂組成物及び電気電子機器部品搬送ケースについて、詳細に説明する。
[1] プロピレン系樹脂組成物を構成する成分
(1) プロピレン系樹脂
(i)プロピレン系樹脂のエチレン含有量
本発明に用いるプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、又はプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体を意味する。それらの中で、プロピレン単独重合体及びプロピレンとエチレンとのランダム共重合体が好ましい。プロピレンとエチレンのランダム共重合体の場合、共重合体全体に対するエチレン単位の含有量(以下、エチレン含有量と略称することがある。)の上限は5重量%以下、好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下である。また、下限は0重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上である。
エチレン含有量を上記一定以下にすることにより、本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いて成形した電気電子機器部品搬送ケースの剛性が高くなり、大型化や薄肉化によるケースのたわみを最小限に抑え、内容物の損傷等を防ぐことが出来るため好ましい。また、エチレン含有量を上記一定以上にすることにより、本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いて成形した電気電子機器部品搬送ケースの耐衝撃性が高くなり、ケースに外部からの衝撃が加わった際などに割れ等の損傷を防ぐことが出来るため好ましい。
好ましいエチレン含有量であるプロピレン系樹脂として、具体的には例えば、日本ポリプロ(株)製の商品名として、ウィンテックWMG03(プロピレン・エチレン・ランダム共重合体:MFR30g/10分、エチレン含有量0.75重量%、重量平均分子量(Mw)32万、分子量分布(Mw/Mn)2.4、メタロセン触媒)や、ウィンテックWMH02(プロピレン・エチレン・ランダム共重合体:MFR19g/10分、エチレン含有量0.30重量%、重量平均分子量(Mw)20万、分子量分布(Mw/Mn)3.3、メタロセン触媒)が挙げられる。
(ii)プロピレン系樹脂の触媒
本発明に用いるプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて製造される。メタロセン触媒を用いることにより、得られるプロピレン系樹脂の分子量分布〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)〕を1.5〜4.0にすることが可能であり、チーグラー触媒を用いた場合の分子量分布である約4〜9と比較し小さい。これは、分子鎖の長さが非常に揃っていることを示し、揮発性成分の発生の原因になると考えられる未反応モノマー、ダイマー、低分子量化合物、非晶質成分、オリゴマーなどの、比較的低分子量の成分の含有量が少ないことを意味する。
メタロセン触媒としては、公知のメタロセン触媒系が使用できるが、好ましくは、メチルアルモキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物やフッ素含有ホウ素化合物を助触媒として使用しない触媒系が用いられる。
アルミニウムオキシ化合物を用いて重合すると生成ポリマー中に存在するアルミニウム量が多くなり、また、フッ素含有ホウ素化合物を用いて重合すると生成ポリマー中に存在するハロゲン量が多くなる。上記した好ましいハロゲン含有量のプロピレン系樹脂を得るためには、触媒除去工程の負荷を非常に大きくせねばならず、実用的でない。
メタロセン触媒としては、担持型のものが好ましい。
担持型メタロセン触媒の特に好ましい例としては、担体が助触媒の機能を兼ねたイオン交換性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、以下に述べる成分[A]、成分[B]及び必要に応じて添加される成分[C]を組み合わせて得られる。
・成分[A]メタロセン錯体
共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表第4〜6族の遷移金属化合物
・成分[B]助触媒
イオン交換性層状ケイ酸塩
・成分[C]有機アルミニウム化合物
・成分[A]メタロセン錯体
上記の成分[A]としては、具体的には、次の一般式[I]で表される化合物を使用することができる。
Q(C4−a )(C4−b )MXY ・・・[I]
一般式[I]において、Qは、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を表す。
Mは、周期律表第4〜6族遷移金属を表し、中でもチタン、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
X及びYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基又は炭素数1〜20の珪素含有炭化水素基を示す。
及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR又は2個のRがそれぞれ結合してC〜C10環を形成していてもよい。特には、6員環、7員環を形成して、上記共役五員環と共に、インデン環、アズレン環を形成することが好ましい。
a及びbは、0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。
2個の共役五員環配位子の間を架橋する結合性基Qは、例として、アルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、ゲルミレン基等が挙げられる。これらは水素原子がアルキル基、ハロゲン等で置換されたものであってもよい。特には、シリレン基が好ましい。
メタロセン錯体として、具体的には次の化合物を好ましく挙げることができる。
(1)メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(2)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(3)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(4)エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(5)メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(6)エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(7)エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(8)エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(9)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(10)ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(11)ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド
(12)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(13)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(14)メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾ(インデニル)]ジルコニウムジクロリド
(15)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド
(16)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(17)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(18)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(19)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(20)ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(21)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(22)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(23)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(24)ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(25)ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
また、チタニウム化合物、ハフニウム化合物などの他の第4、5、6族遷移金属化合物についても上記と同様の化合物が好ましく挙げられる。本発明の触媒成分及び触媒については、これらの化合物を併用してもよい。
・成分[B]助触媒(イオン交換性層状ケイ酸塩)
イオン交換性層状ケイ酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。イオン交換性層状ケイ酸塩として粘土化合物を使用することができ、粘土化合物の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
(1)1:1型構造が主要な構成層であるディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族
(2)2:1型構造が主要な構成層であるモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群
本発明で使用する珪酸塩は、上記(1)、(2)の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。
本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトであることが特に好ましい。
これら珪酸塩を酸、塩、アルカリ、酸化剤、還元剤、有機溶剤などで化学処理することにより活性向上を図ることができる。
酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩粒子の表面の不純物を除く、又は層間陽イオンの交換を行うほか、結晶構造のAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などが挙げられるが、好ましくは無機酸、特に好ましくは硫酸である。
酸処理条件に特に制限はないが、好ましくは5〜50重量%の酸の水溶液を60〜100℃の温度で1〜24時間反応させるような条件であり、その途中で酸の濃度を変化させてもよい。酸処理した後、通常洗浄が行われる。洗浄とは処理系内に含まれる酸をイオン交換性層状珪酸塩から分離除去する操作である。
塩類処理で用いられる塩類としては、特定の陽イオンを含有するものを選択して使用することが好ましい。陽イオンの種類については1から4価の金属陽イオンが好ましく、特にLi、Ni、Zn、Hfの陽イオンが好ましい。
具体的な塩類としては、次のものを例示することができる。
陽イオンがLiのものとしては、LiCl、LiBr、LiSO、Li(PO)、Li(ClO)、Li(C)、LiNO、Li(OOCCH)、Li(C)等を挙げることができる。
陽イオンがNiのものとしては、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等を挙げることができる。
陽イオンがZnのものとしては、Zn(OOCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、ZnBr、ZnI等を挙げることができる。
陽イオンがHfのものとしては、Hf(OOCCH、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfOCl、HfF、HfCl、HfBr、HfI等を挙げることができる。
化学処理後は、乾燥を行うが、一般的には、乾燥温度は100〜800℃で実施可能であり、構造破壊を生じるような高温条件(加熱時間にもよるが、例えば800℃以上)は好ましくない。構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜4時間であり、雰囲気は乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下である。乾燥方法に関しては特に限定されず各種方法で実施可能である。
・成分[C]有機アルミニウム化合物
成分[C]の有機アルミニウム化合物は、必要に応じて任意的に使用される成分であり、下記一般式[II]で示される化合物が最適である。
(AlR 3−p・・・[II]
式[II]中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。pは1〜3の、qは1〜2の整数である。
としては、アルキル基が好ましく、またXは、それがアルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が好ましい。
これらのうち、好ましくは、p=3、q=1のトリアルキルアルミニウム及びp=2、q=1のジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
有機アルミニウム化合物は、単独又は複数種混合して、又は併用して使用することができる。また、有機アルミニウム化合物は、触媒調製時だけでなく、予備重合又は本重合時にも添加して使用することができる。
(iii)プロピレン系樹脂の製造方法
本発明に使用されるメタロセン触媒は、本重合が行われる前に予備重合処理することが望ましい。予備重合に供されるモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン、1,3−ブタジエン等のジエン化合物、スチレン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物を用いることができる。
この予備重合は、不活性溶媒中で穏和な条件で行うことが好ましく、固体触媒(成分[A]と成分[B]の合計)1gあたり、0.01〜1,000g、好ましくは0.1〜100gの重合体が生成するように行うことが望ましい。
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化α−オレフィン等の溶媒存在下、又は不存在下に行われる。本発明においては、固体触媒(固体触媒を予備重合処理した場合は、予備重合で生成した重合体を含まない。)当たりのポリマー生成量をできるだけ大きくすることが望ましい。ポリマー生成量を大きくするために、重合温度、重合圧力はいずれも高めに設定することが望ましい。
通常、重合温度は60〜90℃、重合圧力は1.5〜4MPa程度から選択される。特に、バルク重合法の場合、重合温度は60〜80℃で、重合圧力は温度と相関して2.5〜4MPa程度から選択することが好ましい。一方、気相重合法の場合は、重合温度は70〜90℃で、1.5〜4MPa程度から選択することが好ましい。
さらに、固体触媒の滞留時間を長くすることによっても、固体触媒当たりのポリマー生産量を上げることが可能であるが、あまり長くし過ぎると生産性に影響を与える。好ましい滞留時間は、1〜8時間、さらに好ましくは1〜6時間である。担体を含めた固体触媒1gあたりのポリマー生産量は20kg以上、好ましくは25kg以上、さらに好ましくは30kg以上となるように、重合条件を設定することが望ましい。
また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。更に、重合温度、分子量調節剤の濃度等を変えて多段階で重合させてもよい。
本発明においては、重合終了後、得られたプロピレン系樹脂を、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの不活性飽和炭化水素溶剤や液状α−オレフィンなどを用いて、さらに好ましくは炭素数3又は4の不活性炭化水素溶剤や液状α−オレフィンを用いて、洗浄を行うことが好ましい。
洗浄方法としては、特に制限はなく、撹拌槽での接触処理後上澄みのデカンテーション、向流洗浄、サイクロンによる洗浄液との分離など、公知の方法を用いることができる。
また、洗浄前又は洗浄と同時に、失活剤を添加してもよい。失活剤に関しては、特に制限はなく、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類など、又はこれらの混合物を用いることができる。
(iv)プロピレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)及び重量平均分子量(Mw)
本発明に用いるプロピレン系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる分子量分布〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)〕は1.5〜4.0に設定される。
分子量分布の下限は好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上であり、上限は好ましくは3.8以下、より好ましくは3.5以下である。
分子量分布の下限が一定以上であると、プロピレン系樹脂の製造や精製の条件範囲が広がるため生産効率が向上し好ましい。また、上限が一定以下であると、分子鎖の長さが非常に揃っていることを示し、揮発性成分の発生の原因になると考えられる未反応モノマー、ダイマー、低分子量化合物、非晶質成分、オリゴマーなどの、比較的低分子量の成分の含有量が少なくなるため好ましい。
また、本発明に用いるプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10万〜60万の範囲であることが好ましい。重量平均分子量Mwが60万以下であると成形が容易になる。一方、重量平均分子量Mwが10万以上では、低結晶成分が減少し、金型汚染、ブリードアウト、溶媒溶出等を抑制する上、成形品の耐衝撃性が向上するため、実用的である。
(v)プロピレン系樹脂の平均溶出温度(T50)及び溶出分散度(σ)
本発明に用いるプロピレン系樹脂の平均溶出温度(T50)は90〜105℃であり、溶出分散度(σ)は9℃以下に設定される。
ここで、平均溶出温度は、o−ジクロロベンゼンを溶媒とする温度上昇溶離分別法による重合体の溶出曲線に基づく値であり、溶出重合体の積算質量が50質量%となるときの温度を表す。溶出分散度は、温度上昇溶離分別法による溶出量が溶出温度に対して正規確率分布に従うと仮定し、質量積算溶出量I(t)が下記の数式(1)で表されると定義した際のσの値である。
Figure 2016186065
溶出分散度は具体的には、σ=T50−T15.9である。なお、T15.9は積算質量が15.9質量%となるときの温度を示す。
平均溶出温度が90〜105℃であることにより、プロピレン系樹脂の分子量及び融点を電気電子機器部品搬送用ケースの成形のために適切なものとすることができ、寸法精度を向上させることができる。平均溶出温度が90℃以上のときにはプロピレン系樹脂の分子量及び融点が低くなり過ぎることはなく、電気電子機器部品搬送用ケースの寸法精度が良好となり、105℃以下のときにはプロピレン系樹脂の分子量及び融点が高くなり過ぎることはなく好ましい。
また、溶出分散度(σ)が9℃以下であることにより、温度上昇に伴う成分の溶出を抑えることができると共に、寸法精度を高めることができる。溶出分散度(σ)はより好ましくは7℃以下、更に好ましくは6℃以下である。
(vi)アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)
本発明に用いるプロピレン系樹脂として、プロピレン単独重合体を用いる場合のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は90%以上、好ましくは94%以上、より好ましくは97%以上が望ましい。アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が90%以上では、低結晶成分が減少し、金型汚染、ブリードアウト、溶媒溶出性を改良することができる。
(2)造核剤
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上記プロピレン系樹脂100重量部に対し、下記式(1)で示される造核剤(A)0.0001〜0.8重量部、下記式(2)で示される造核剤(B)0.0001〜0.1重量部、下記式(3)で示される造核剤(C)0.0001〜0.8重量部、芳香族カルボン酸金属塩からなる造核剤(D)0.0001〜0.8重量部及び下記式(4)で示される造核剤(E)0.0001〜0.2重量部からなる群から選択される少なくとも1種の造核剤を含有する。該造核剤を用いることにより、プロピレン系樹脂の結晶が緻密に生成され、搬送用ケースが含有する揮発性成分が成形品の外部へ漏れ出ることを抑制できるとともに、プロピレン系樹脂の結晶化を促進することで生産性を向上することが出来る。また、該造核剤を用いることにより、プロピレン系樹脂組成物の成形時の流れ方向(MD方向)の収縮率と流れに垂直方向(TD方向)の収縮率との比を1に近くすることが可能であり、それによって、成形品の反りや歪み等の変形を小さくすることが出来る。さらに、前述のとおり、電気電子機器部品搬送用ケースの成形品にはリブ部等、他の部分よりも肉厚の厚い部分があり、薄肉部と比べて冷却が遅れ成形品内部にボイドが発生しやすいものであるが、該造核剤の含有により、ボイドの発生を大きく抑制することが本発明により明らかとなった。その機構は定かではないが、該造核剤による結晶化の促進により厚肉部と薄肉部の冷却時間の差が小さくなることでボイドが発生しにくくなるためであると考えられる。
造核剤(A)は、下記一般式(1)で示されるアミノベンゼン系化合物である。
Figure 2016186065
(式中、R、R及びRは、互いに独立して、未置換の又は置換された炭化水素基を表す。)
この未置換の又は置換された炭化水素基を有する化合物とは、具体的に下記に示す各種化合物が例示される。本発明に用いられる造核剤は、基本的には上記式(1)の化合物の形態を有すれば適正に達成できる性能を有する。未置換の又は置換された炭化水素基を有する各種化合物は、本発明に用いられる式(1)で表される化合物を合成する際にいかなる反応成分を選定するかによるものであり、式(1)の化合物の反応収率に若干影響するが、造核剤としては同等に作用するものであり、以下のものが具体的に例示できる。
基R、R及びRの少なくとも1つが、枝分かれした炭素原子数3〜20のアルキル基、又は、未置換の又は1つ以上の炭素原子数1〜20のアルキル基によって置換された炭素原子数3〜12のシクロアルキル基で表わされる式(1)の化合物が好ましい。
また、基R、R及びRが、互いに独立して、未置換又は1つ以上の1−メチルエチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、第三ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、第三ブチルメチル基、シクロプロピル基、3−メチルシクロプロピル基、2,2,3,3−テトラメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、2−シクロペンチルエチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基、4−第三ブチルシクロヘキシル基、(4−メチルシクロヘキシル)メチル基、下記式(1−1)〜(1−3)で示される官能基、α−シクロヘキシルベンジル基、3−メチルベンジル基、3,4−ジメトキシベンジル基、4−ビフェニルメチル基、2−ナフチルメチル基、m−トリル基、m−メトキシフェニル基、p−トリル基、4−エチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−第三ブチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−第三ブチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基又は3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル基で表わされる式(1)の化合物がより好ましい。
Figure 2016186065
Figure 2016186065
Figure 2016186065
具体的には、式(1)で示される化合物として、1,3,5−トリス[2,2−ジメチルプロピオニルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[シクロヘキシルカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[4−メチルベンゾイルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[3,4−ジメチルベンゾイルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[3,5−ジメチルベンゾイルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[シクロペンタンカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[1−アダマンタンカルボニルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[2−メチルプロピオニルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[3,3−ジメチルブチリルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[2−エチルブチリルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[2,2−ジメチルブチリルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[2−シクロヘキシル−アセチルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[3−シクロヘキシル−プロピオニルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[4−シクロヘキシル−ブチリルアミノ]ベンゼン、1,3,5−トリス[5−シクロヘキシル−バレロイルアミノ]ベンゼン、1−イソブチリルアミノ−3,5−ビス[ピバロイルアミノ]ベンゼン、2,2−ジメチルブチリルアミノ−3,5−ビス[ピバロイルアミノ]ベンゼン、3,3−ジメチルブチリルアミノ−3,5−ビス[ピバロイルアミノ]ベンゼン、1,3−ビス[イソブチリルアミノ]−5−ピバロイルアミノベンゼン、1,3−ビス[イソブチリルアミノ]−5−(2,2−ジメチル−ブチリル)アミノベンゼン、1,3−ビス[イソブチリルアミノ]−5−(3,3−ジメチル−ブチリル)アミノベンゼン、1,3−ビス[2,2−ジメチルブチリルアミノ]−5−ピバロイルアミノベンゼン、1,3−ビス[2,2−ジメチルブチリルアミノ]−5−イソブチリルアミノベンゼン、1,3−ビス[2,2−ジメチルブチリルアミノ]−5−(3,3−ジメチルブチリル)−アミノベンゼン、1,3−ビス[3,3−ジメチルブチリルアミノ]−5−ピバロイルアミノ−ベンゼン、1,3−ビス[3,3−ジメチルブチリルアミノ]−5−イソブチリル−アミノベンゼン、1,3−ビス[3,3−ジメチルブチリルアミノ]−5−(2,2−ジメチル−ブチリルアミノ)アミノベンゼン又は、1,3,5−トリス[3−(トリメチルシリル)プロピオニルアミノ]ベンゼンを挙げることができる。
このような化合物は、例えば、公表特許2006−518402号公報に記載の製造方法等によって製造することができる。
これらのうち、基R、R及びRが、同一の基である式(1)の化合物が好ましい。なかでも、R、R及びRが第三ブチル基で表わされる式(1)の化合物、すなわち、1,3,5−トリス[2,2−ジメチルプロピオニルアミノ]ベンゼンが特に好ましい。
造核剤(B)は、下記一般式(2)で示される有機リン酸金属塩化合物である。
Figure 2016186065
[式中、Rは、直接結合、硫黄、炭素数1〜9のアルキレン基又は炭素数2〜9のアルキリデン基であり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数7〜9のアルキルアリール基であり、MはLi、Na、K、Mg、Ca、Zn又はAlであり、nはMの価数である。]
一般式(2)で表される有機リン酸金属塩化合物の具体例としては、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4−キュミル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−キュミル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム(4,4’−ジメチル−6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−ビフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−s−ブチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−エチルフェニル)フォスフェート、カリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ジンク−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム−トリス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2’−チオビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2’−チオビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2’−チオビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[(4,4’−ジメチル−6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−ビフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム−トリス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]及びこれらの2種以上の混合物を例示することができる。これらのうち特に、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートが好ましい。
この様な造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブNA−11を挙げることができる。
造核剤(C)は、一般式(3)で示される造核剤である。
Figure 2016186065
[式中、M及びMは、いずれもリチウムイオン、ナトリウムイオン若しくはカリウムイオンであるか、又は共同してカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛及び一塩基性アルミニウムからなる群より選択される単一の金属カチオンであり、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、同一又は異なって、水素、ヒドロキシ、フッ素、塩素、臭素、沃素、炭素数1〜9のアルキル(ここで、いずれか2つのビシナル(隣接炭素に結合)又はジェミナル(同一炭素に結合)アルキルは、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルキレンオキシ、フェニル、アミノ及び炭素数1〜9のアルキルアミノからなる群からそれぞれ選択される。]
ここで、「一塩基性アルミニウム」なる用語は周知であり、2つのカルボニルオキシ基が結合した単一カチオンとしてアルミニウムヒドロオキシ基を含むことを意図している。さらに、これら可能な塩のそれぞれにおいて、非対称炭素原子の立体配置は、シス又はトランスのいずれでもよいが、シスが好ましい。
一般式(3)で表される造核剤は、凝集等を防止する目的で、他の化合物を混合して用いても差し支えない。
この様な造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、ミリケン社製、商品名:ハイパフォームHPN68L及びハイパフォームHPN−20Eを挙げることができる。ハイパフォームHPN68Lの造核剤成分の構造を下記に示す。Metalはナトリウムを示す。
Figure 2016186065
ハイパフォームHPN−20Eの造核剤成分の構造を下記に示す。
Figure 2016186065
造核剤(D)は、芳香族カルボン酸金属塩であり、市販のものとしては下記の式の共同薬品(株)製、商品名:AL−PTBBAを挙げることできる。
Figure 2016186065
造核剤(E)は、式(4)で示される造核剤であり、市販のものとしては新日本理化(株)製、商品名:リカクリアPC−1を挙げることができる。
Figure 2016186065
[式中、Rは、プロパン−1,2,3−トリイル基又はブタン−1,2,3,4−テトライル基を表す。3個又は4個のRは、互いに同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。aは、3又は4の整数を表す。]
(3)酸化防止剤
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、各種フェノール系酸化防止剤をさらに添加することが可能である。具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ブチレ−テッドヒドロキシトルエン)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレ−ト、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンを好ましく挙げることができる。
本発明の効果を阻害しない範囲で、他の酸化防止剤を併用することも可能であるが、リン、硫黄を含む酸化防止剤を使用すると、含まれるリン、硫黄が内容物に対し悪影響を及ぼし、製品性能を損なう可能性があるため望ましくない。
フェノール系酸化防止剤の好ましい添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.03〜0.2重量部の範囲である。フェノール系酸化防止剤の添加量が0.03重量部以上であると、熱によるポリプロピレンの劣化を防止でき、揮発性成分量が増加するのを抑制できるため好適である。フェノール系酸化防止剤の添加量が0.2重量部以下であると、酸化防止剤に由来するアウトガスの発生が抑制され、製造費用が抑制され、製品の色合いも良好となるため好適である。また、添加量が0.2重量部以下であると、ブルーミングにより、半導体内容物を直接汚染することが抑制され、揮発性成分として認識されることもないので好適である。
また、フェノール系酸化防止剤の添加量(重量部)の下限は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、下記式を満足するように調整されていることが望ましい。
3×10−3B−0.67
(但し、単位は重量部、Bは成形温度(℃)である。また、0.03未満の値は、0.03とする。)
これは、射出成形において、電気電子機器部品搬送ケースを得る際、該ケースが大きいものや薄肉のもの、複雑な形状の場合、成形温度を高くする必要がある。しかし、成形温度が高温であるほど熱劣化は促進され、揮発性成分が増加するため、フェノール系酸化防止剤は多く必要となる。反面、フェノール系酸化防止剤を多く加えるほど、色相は悪化する場合がある。そこで、製品の実用上要求される成形性、揮発性成分量及び色相を考慮したときに、上記式で表されるフェノール系酸化防止剤の添加量が最も効果的となる。なお、ここで成形温度は、(射出)成形機のシリンダー設定温度をさす。
(4)その他の添加剤
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的任意成分を配合することもできる。このような任意成分としては、中和剤、滑剤、光安定剤等、帯電防止剤、防曇剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、分散剤、充填剤、難燃剤、着色剤、顔料、蛍光増白剤等を挙げることができる。
[2] プロピレン系樹脂組成物の特性
(1)造核剤の含有量
本発明の電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物は、上記に記載のプロピレン系樹脂100重量部に対し、上記記載の造核剤(A)0.0001〜0.8重量部、造核剤(B)0.0001〜0.1重量部、造核剤(C)0.0001〜0.8重量部、造核剤(D)0.0001〜0.8重量部及び造核剤(E)0.0001〜0.2重量部からなる群から選択される少なくとも1種の造核剤を含有してなる。
造核剤(A)〜(E)の各含有量が0.0001重量部以上であるとポリプロピレンの結晶を緻密に生成でき、揮発性成分量が増加したり、ボイドが発生するのを抑制したりできるので好ましい。造核剤(A)〜(E)の各含有量が本発明で規定する上限値以下であると、造核剤に由来する揮発性成分の発生が抑制され、さらに製造費用が抑制されるため好適である。
造核剤(A)〜(E)の各含有量の下限は、好ましくは0.0002重量部、より好ましくは0.001重量部、更に好ましくは0.005重量部以上である。また、造核剤(A)、(C)及び(D)の各含有量の上限は好ましくは0.2重量部、より好ましくは0.1重量部、更に好ましくは0.05重量部、特に好ましくは0.005重量部であり、造核剤(B)の含有量の上限は好ましくは0.0100重量部、より好ましくは0.0050重量部、更に好ましくは0.0010重量部、特に好ましくは0.0005重量部であり、造核剤(E)の含有量の上限は好ましくは0.1000重量部、より好ましくは0.0100重量部、更に好ましくは0.0010重量部、特に好ましくは0.0005重量部である。
(2)揮発性成分含有量
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、揮発性成分含有量が10重量ppm以下であり、好ましくは8重量ppm以下、より好ましくは6重量ppm以下である。揮発性成分含有量が前記上限以下であることにより、プロピレン系樹脂組成物を成形し集積度や加工精度が高い電気電子機器部品搬送ケースとした際、揮発性成分の電気電子機器部品への付着による汚染を抑制し、部品性能の不具合発生頻度を減少させることが可能となる。
(3)収縮率比(MD方向/TD方向)
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、成形時の流れ方向(MD方向)の収縮率と流れに垂直方向(TD方向)の収縮率との比が1に近く、それによって、成形時の反りや歪み等の変形が小さいことを特徴とする。この比を、収縮率比(MD方向/TD方向)とすれば、これは、収縮率の異方性の尺度となり、この値が1に近いほど異方性が小さいことを意味する。また、この値が1に近ければ近いほど、成形品の反りや歪み等の変形が小さくなる。
具体的には、本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いて肉厚2mmの射出成形板を作製した際、収縮率比(MD方向/TD方向)が0.90〜1.10の範囲である必要がある。
下限は好ましくは0.92以上、より好ましくは0.94以上であり、上限は好ましくは1.08以下、より好ましくは1.06以下である。
このような範囲の成形品を得るための条件は、プロピレン系樹脂の種々のインデックス、造核剤の種類及び配合量などによって影響される。
本発明において式(1)で示される造核剤を用いた場合、収縮率比(MD方向/TD方向)を上記の範囲にすることが容易となる。
(4)メルトフローレート(MFR)
また、プロピレン系樹脂のインデックスのうち、収縮率比(MD方向/TD方向)に影響が大きいものは、プロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)である。収縮率比を1に近くするためには、MFRが3以上100以下であることが好ましい。プロピレン系樹脂のMFRが3以上であると、成形時のMD方向の収縮率がTD方向の収縮率に対して小さくなる。この結果、収縮率比(MD方向/TD方向)が1.10以下となり、成形後の反りや歪み等の変形が小さくなるので望ましい。一方、プロピレン系樹脂のMFRが100以下であると、MD方向の収縮率がTD方向の収縮率よりも大きくなる結果、収縮率比(MD方向/TD方向)が0.90以上となるため、やはり収縮率の異方性が減少して、反りや歪み等の変形は小さくなる。プロピレン系樹脂のMFRが3以上100以下の場合には、MD方向の収縮率とTD方向の収縮率がほぼ等しくなり、収縮率比(MD方向/TD方向)は、0.90〜1.10の範囲に収まるため、反りや歪み等の変形が非常に小さい成形品を得ることができる。プロピレン系樹脂のMFRが10以上80以下の範囲にある場合には、収縮率比(MD方向/TD方向)がさらに1に近づくため、より好ましい。
MFRに関しては、その値が大きくなるにつれて、剛性は大きくなるが、衝撃強度が小さくなるというトレードオフの関係がある。さらに、成形品の形状等や成形条件により最適なMFR範囲が規定される場合も多い。このように、諸物性や用途に対する適正を考慮して、本発明の目的に適合する範囲で、適宜MFRを選定することができる。
(5)曲げ弾性率
本発明のプロピレン系樹脂組成物の曲げ弾性率は、JIS K7152−1に準拠して成形した多目的試験片を切削加工により所定の寸法に加工した後、JIS K7171に準拠して23℃で測定した際、1000MPa以上が好ましく、より好ましくは1300MPa以上、更に好ましくは1500MPa以上である。曲げ弾性率が高いとシリコンウエハ等を容器に収納した際、容器がたわみ変形を生じることを防止できるため好ましい。
(6)金属含有量総量
本発明のプロピレン系樹脂組成物の金属含有量総量は35重量ppb以下であることが好ましい。ここで、金属含有量総量とは、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Sr、Ti、Fe及びZnの総量であり、分析手法は実施例に記載する方法の通りである。
上記上限以下であると、本発明のプロピレン系樹脂組成物を電気電子機器部品搬送ケースとして用いた際、成形品から剥がれ落ちた樹脂の欠片や金属成分が付着した場合、付着した部分の電気特性が変化することにより欠損となる可能性が減少する。金属含有量総量が小さいほど欠損の可能性は減少するため、問題の生じない範囲としての金属含有量総量は35重量ppb以下である。より好ましくは25重量ppb以下、さらに好ましくは15重量ppb以下と低減させることが望ましい。
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、組成物に含まれるハロゲンの含有量、例えば、塩素の含有量が10重量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは5重量ppm以下である。ハロゲン含有量が少ないと腐食性を発現することがないので、好ましい。
(7)ヘイズ
JIS K7152−3に準拠して成形したD2試験片(60×60×2mm)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。この値が小さいほど透明であることを意味し、一般には透明・高光沢な成形品としての外観意匠性が高いことになる。具体的に好ましくは80以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは60以下である。
[3]本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いて得られる電気電子機器部品搬送用ケース
本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いて電気電子機器部品搬送ケースを製造するには、プロピレン系樹脂組成物を、射出成形法等により所望形状のケースに成形する。搬送ケースとは、各種マガジン、トレイ、ボックス、容器等を含む。
なお、ここで電気電子機器部品とは、特に限定されないが、例えば、シリコンウエハ、ハードディスク、サファイアウエハ、ディスク基板、ICチップ、光磁気ディスク(MO)、DVD、BD、各種メモリー、LCD用高機能基板ガラス、LCDカラーフィルター、ハードディスク用磁気抵抗ヘッド、CCD、CCDデバイス、光学機器半導体部品等の各種電気電子機器用の部品をいう。
射出成形法としては、公知の成形法が挙げられ、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、インサート・アウトサート成形法等の方法が挙げられる。
本発明の電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン樹脂組成物を用いて得られる電気電子機器部品搬送ケースは、薄肉部の肉厚aが1.2mmより大きく、b(厚肉部の肉厚)/a(薄肉部の肉厚)が1.5以上の部位を有している場合に、特にボイド低減の効果が大きく好ましい。
本発明の電気電子機器部品搬送ケースにおける薄肉部とは、成形品の平板部分において最大の面積を占める部分を表し、厚肉部とは、平板部分に設けられたリブ等によって生じる、最も厚い部分を表す。また、平板部分は平面であっても曲面であってもよい。
図1は、本発明の電気電子機器部品搬送ケースであるプロピレン系樹脂成形品における薄肉部と厚肉部の肉厚を説明するための成形品の断面図である。図1中、薄肉部1は成形品の平板部分であり、その肉厚aは板厚であり、2はリブ等による厚肉部であり、厚肉部2の肉厚bは板厚と突起部分の厚みの合計となる。成形品の大きさ及び形状は、通常、薄肉部の肉厚aが1.2mmより大きく、b(厚肉部の肉厚)/a(薄肉部の肉厚)が1.5以上の部位を有していれば、特に制限されるものではない。また、例えば箱型成形品のように複数の平板部分を有する成形品においては、各側壁においてそれぞれ薄肉部、厚肉部を考慮すべきである。薄肉部の肉厚aは、好ましくは1.5mm以上であり、上限は特に制限はないが、好ましくは2.5mm以下である。b(厚肉部の肉厚)/a(薄肉部の肉厚)は、好ましくは1.5以上であるが、より好ましくは1.8以上であり、その上限は好ましくは3.0以下である。このような成形品の製造に、本発明のプロピレン系樹脂組成物を適用することで、本発明の上記効果を有効に発揮することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例で限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例において、プロピレン系樹脂(重合体)及びプロピレン系樹脂組成物の物性測定は下記の方法に従ったものである。
<1.測定の方法>
(1) メルトフローレート(MFR):
JIS−K6921−2:1997付属書(230℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2) 立体規則性
13C−NMRにより、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)を測定した。その測定条件は以下の通りである。
機種:日本電子(株)製GSX−400
溶媒:o−ジクロルベンゼン:重ベンゼン=4:1(体積比)
濃度:100mg/ml
温度:130℃
パルス角:90°
積算回数:5,000回以上
(3)エチレン含有量の測定:
エチレンコモノマー由来の重合体中のエチレン含有量(単位:重量%)は、得られた重合体をプレスし、シート状に成形したものをIR法により測定した。具体的には730cm−1付近に観測されるメチレン鎖由来のピーク高さから算出した。
(4)分子量及び分子量分布の測定:
分子量分布Mw/Mnは、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定し、算出した。測定条件は以下の通りである。
装置:WATERS社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本直列)
移動相溶媒:ο−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
(5)融解ピーク温度(融点)(Tm、単位:℃):
示差走査熱量計(DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、一旦200℃まで温度を上げて、熱履歴を消去した後、200℃で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させて結晶化させ、再び昇温速度10℃/分にて測定して融解させた際の、吸熱ピークトップの温度を融解ピーク温度(融点)(Tm)とした。
(6)平均溶出温度(T50)及び溶出分散度(σ)の測定:
平均溶出温度(T50)及び溶出分散度(σ)は、温度上昇溶離分別法(TREF)で算出した。具体的には、平均溶出温度(T50)は、重合体の溶出曲線に基づく値であり、溶出重合体の積算質量が50質量%となるときの温度を表す。溶出分散度(σ)は、溶出量が溶出温度に対して正規確率分布に従うと仮定し、質量積算溶出量I(t)が下記の数式(1)で表されると定義した際のσの値である。
Figure 2016186065
溶出分散度は具体的には、σ=T50−T15.9(単位:℃)である。なお、T15.9は積算質量が15.9質量%となるときの温度を示す。
重合体の溶出曲線は以下のように測定した。
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mL BHT入り)に溶解し溶液とした。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、10分間保持した。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mL BHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で40℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃まで直線的に昇温し、溶出曲線を得た。
<装置>
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ × 150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000
(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ、4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル、光路長1.5mm、窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
<測定条件>
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mL BHT入り)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速 : 1mL/分
(7)揮発性成分含有量の測定:
プロピレン系樹脂組成物中から発生する揮発性成分含有量(炭素数30以下のオリゴマー量)は、ダイナミックヘッドスペース(DHS)−GC/MSによって測定をした。揮発性成分含有量は、プロピレン系樹脂組成物に対する揮発性成分含有量の割合(単位:重量ppm)である。以下に測定法を示す。
(I)測定及び評価概要
試料を100℃に加熱し、そこで発生する揮発性成分を−150℃で捕集した後、ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で各揮発性成分の分離・検出及び同定を行った。検量線は、炭素数10〜32まで炭素数2毎の脂肪族直鎖飽和炭化水素を、n−ヘプタン溶媒で濃度1000μg/mlの標準混合溶液とし、試料と同条件で測定を行ってガスクロマトグラム/質量分析法で測定し作成した。定量はn−エイコサンを標準とした値で計算した。
(II)装置及び測定方法
(i)加熱追出し(ダイナミックヘッドスペース)装置:
試料を約50mg精秤して、加熱追出し管(GERSTEL社製TDS管)に充填をし、その両端に約10mgの石英ウール(GL Sciences社製、Cat.No.3001−12404)を詰めた。先のTDS管を40℃の加熱抽出装置(GERSTEL社製 TDS−A)に装入した後、管内をヘリウムで置換し、60℃/分の速度で100℃まで昇温し、100℃で30分間加熱した。この加熱期間中、TENAXを充填したGC注入口(GERSTEL社製 CIS4)を−150℃に冷却することにより、試料より発生した揮発性成分を捕集した。捕集した成分は、捕集部分を320℃まで急速に加熱することにより、気化させてGCカラムに導入した。
(ii)ガスクロマトグラフ(GC):
アジレント社製 HP6890
カラム:DB−5ms
カラムの昇温条件:40℃×5min〜10℃/min〜300℃×15min
(iii)マススペクトロメーター(MS):
アジレント社製 Mass Sensitive Detector 5973N
測定成分のイオン化には、電子衝撃(EI)法を用いた。
(8)金属含有量の測定:
試料と固液比が1:5(重量)になるように3%硝酸を混合し、70℃で4時間、金属成分を溶出させた後、高分解能ICP質量分析装置(Thermo Fisher Scientific社製 ELEMENT2型)を用いて、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Sr、Ti、Fe、Znの元素の含有量を測定し、合計値を算出した。
(9)ボイド発生率の測定:
住友重機械社製SG125MH成形機を用い、射出成形法にてシリンダー温度220℃、金型温度40℃、又はシリンダー温度を190℃、金型温度を30℃とし、厚さ2mm、直径200mmの突起付き円盤を5枚成形し、ボイドが発生した突起の割合を算出した(単位:%)。ボイドの発生状態は目視で行い、突起付け根部分の白化状態により確認した。
突起付き円盤の突起の形状を図2に示す。図2aは突起付き円盤の側面図であり、図2bは突起の平面図である。図2(図中の数字は幅、高さ、長さ等を示し、単位はmmである。)に示すとおり、突起はピラミッド型形状を有し、高さは2.8mmであり、底部からの高さ2.8mmの位置で頂部を幅1mmでカットしており、ピラミッド型の底部は、幅7mm×長さ5mmである。この成形品における薄肉部aは2mm、厚肉部bは4.8mmであり、b/a=2.4となる。ゲート位置は製品中心にあり、ゲートを中心として対称的に、片側ごとに14個の突起を設けてある。
(10)収縮率比の測定:
外寸が120mm×120mm×2mmであり、樹脂の流れ方向(MD方向)とそれに垂直方向(TD方向)とに、それぞれ100mm間隔の罫書き線が引かれた金型を用いて、シート状の試験片を成形した。成形機は東芝IS100GN射出成形機を用い、成形温度は220℃、金型温度は40℃とした。得られた試験片を、室温23℃、相対湿度50%の恒温室内で88時間状態調節した後、罫書き線間の長さを、MD方向、TD方向のそれぞれについて測定し、100mmからの減少率をパーセントで表示して成形収縮率とした。さらに、収縮率の異方性の指標として、MD方向の収縮率とTD方向の収縮率の比(MD/TD比)を算出した。
収縮率は、金型寸法に対して、成形品がどの程度収縮したかを示す指標である。この数値が小さいほど、成形品の収縮が少なく、成形後の変形が少ない傾向がある。また、MD方向の収縮率とTD方向への収縮率の比が1に近いほど収縮率の異方性がないことを意味し、全ての方向に同じように相似的に収縮する結果、成形品の反り変形が小さくなることを示す。
(11)曲げ弾性率の測定:
東芝機械製EC100射出成形機により、JIS K7152−1に準拠して成形した多目的試験片を切削加工により所定の寸法に加工した後、JIS K7171に準拠して23℃で測定した。
(12)ヘイズ値の測定:
東芝機械製EC100射出成形機により、JIS K7152−3に準拠して成形したD2試験片(60×60×2mm)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。この値が小さいほど透明であることを意味し、一般には透明・高光沢な成形品としての外観意匠性が高いことになる。
<2.樹脂、添加剤>
2−1.プロピレン系樹脂の製造
(1)製造例1
(i)触媒の調製
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。
(a)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理: セパラブルフラスコに蒸留水1130g、96%硫酸750gを加え、内温を90℃に保ち、そこに平均粒径25μmの造粒スメクタイト(水沢化学社製商品名「ベンクレイSL」)300gを添加し、5時間反応させた。
洗浄: 1時間で室温まで冷却し、蒸留水でpH=3.69まで洗浄した。このときの洗浄倍率は1/10,000以下であった。この段階の固体を一部乾燥させて、酸処理による溶出率を求めたところ33.5%であった。
塩類処理: 硫酸リチウム1水和物211gを蒸留水521gに溶かし、さらに上記酸処理で得られた固体100g(乾燥重量)を加え、室温で120分間撹拌した。このスラリーを濾過し、得られた固体に蒸留水3000gを加え、5分間室温で撹拌した。更に、このスラリーを濾過した。得られた固体に蒸留水2500gを加え、5分間撹拌後再び濾過した。この操作をさらに4回繰り返した。得られた固体を窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、さらに200℃で2時間減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイトを得た。
(b)珪酸塩の活性化処理
上記の化学処理スメクタイト200gを、内容積3Lの攪拌翼のついたガラス製反応器に導入し、ノルマルヘプタン750ml、さらに、トリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(500mmol)を加え、室温で攪拌した。1時間後、ノルマルヘプタンにて洗浄(残液率1%未満)し、スラリー量を2000mLに調整した。
(c)予備重合触媒の調製
次に、(r)−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]ジルコニウムジクロリド3mmolのトルエンスラリー870mLとトリイソブチルアルミニウム(15mmol)のヘプタン溶液42.6mLを、あらかじめ室温にて1時間反応させておいた混合液を、上記の化学処理スメクタイトスラリーに加え、1時間攪拌しスメクタイト/錯体スラリーを調製した。続いて、窒素で十分置換を行った内容積10Lの攪拌式オートクレーブに、ノルマルヘプタン2.1Lを導入し、40℃に保持した。そこに、先に調製したスメクタイト/錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところで、プロピレンを100g/時間の速度で供給し、その温度を維持した。4時間後、プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。回収した予備重合触媒スラリーから、上澄みを約3L除き、トリイソブチルアルミニウム(30mmol)のヘプタン溶液を170mL添加し、10分間撹拌した後に、40℃にて減圧下熱処理した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレン2.30gを含む予備重合触媒が得られた。
(ii)プロピレン系樹脂の製造
内容積270Lの攪拌装置付き液相重合槽、内容積400Lの失活槽、スラリー循環ポンプ、循環ライン液力分級器、濃縮器、向流ポンプ及び洗浄液受け槽からなる失活洗浄システム、二重管式熱交換器と流動フラッシュ槽からなる高圧脱ガスシステム、さらに低圧脱ガス槽及び乾燥器などを含む後処理系を組み込んだプロセスにより、プロピレン−エチレン共重合体の連続製造を実施した。
上記で調製した予備重合触媒を流動パラフィン(東燃社製商品名「ホワイトレックス335」)に濃度15重量%で分散させて、触媒成分として0.35g/hrで液相重合槽に導入した。さらに、この重合槽に液状プロピレンを40kg/hr、エチレンを0.4kg/hr、水素を0.25g/hr、トリイソブチルアルミニウムを18g/hrで連続的に供給し、内温を70℃に保持し、重合を行った。液相重合槽から重合体と液状プロピレンの混合スラリーを重合体として12.0kg/hrとなるように失活洗浄槽に抜き出した。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.3時間であった。失活洗浄槽には、失活剤としてエタノールを21.0g/hrで供給した。さらに液状プロピレンを40kg/hr供給し、ジャケットによる加熱で内温を50℃に保った。重合体は分級器の下部から高圧脱ガス槽へ抜き出し、さらに低圧脱ガス槽を経て、乾燥器で乾燥を行った。乾燥器の内温80℃、滞留時間が1時間となるように調整し、さらに室温の乾燥窒素をパウダーの流れの向流方向に12m/hrの流量で流した。乾燥後の重合体は、ホッパーから取り出した。
一方、分級器、濃縮器を経て、重合体と分離された液状プロピレンは、40kg/hrで洗浄液受け槽に抜き出した。得られた重合体の固体触媒1g当たりの収量は34.3kg、エチレン含有量=0.75wt%、MFR=30.6g/10分、分子量分布(Mw/Mn)2.8、Tm=141.7℃であった。
(2)製造例2
(i)触媒の製造
(a)層状ケイ酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた3Lセパラブルフラスコに、純水2264gを投入し、96%硫酸670gを滴下した。内温が90℃になるまでオイルバスで加熱し、目標温度に到達したところで、さらに市販の造粒モンモリロナイト(構造:水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:18μm、粒度分布=7〜30μm、組成(wt%):Al=9.11、Si=32.91)を400g添加後撹拌した。このとき、酸濃度は19.7wt%で、粘土に対する酸濃度は16.4mmol/gだった。その後、90℃を保ちながら300分反応させた。この反応溶液を2Lの純水に空けることで反応を停止し、さらに、このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、その後4Lの純水で3回洗浄した。
回収したケーキは、120℃で終夜乾燥後、100g秤取り次工程に用いた。1Lプラスチックビーカーにて硫酸リチウム水和物108gを純水481mLに溶解した水溶液に回収したケーキを加えて室温で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、3Lの純水で3回洗浄した。
回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、73.3gの化学処理モンモリロナイトを得た。これを目開き53μmの篩にて篩い分けしたところ、篩通過分は、72.3gで全体の重量の98.7%であった。これらの平均粒径をレーザー回折・散乱式で測定したところ、平均粒径は17.1μmであった。
得られた化学処理モンモリロナイトの組成(wt%)は、Alが6.16、Siが39.15含まれており、AlとSiのモル比は0.164であった。
このようにして得た化学処理モンモリロナイト全量を、容積200mLのフラスコに入れ、200℃でおよそ3時間(突沸がおさまってから2時間以上)減圧乾燥した。
(b)触媒調製
内容積1Lのフラスコに上記層状ケイ酸塩の化学処理から得られた乾燥モンモリロナイト19.99gを秤量し、ヘプタン131mL、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液69.0mL(49.4mmol、濃度141.9mg/L)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mLに調整した。
次に、このTiBA処理したモンモリロナイトのヘプタンスラリーに、ヘプタン181mLとTnOAのヘプタン溶液3.1mL(濃度143.6mg/mL、1214μmol)を加えた。
ここに、別のフラスコ(容積200mL)中で、(r)−[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライド(合成は、特開平10−110136号公報の実施例に従って実施した。)244mg(300.1μmol)にヘプタン(48mL)を加えたスラリーを加えて、60℃で60分間撹拌した。
上記モンモリロナイトのヘプタンスラリーを、十分に乾燥・窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度一定に維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに1時間維持した。
予備重合終了後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を215mL抜き出した。続いてトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液8.6mL(6.1mmol)を室温にて加え、その後、40℃にて1時間減圧乾燥することにより、固体触媒を65.17g回収した。
予備重合倍率(予備重合重合体量を固体触媒量で除した値)は、2.16g/gであった。この触媒の固体触媒量あたりのHf錯体担持量は、12.3μmolであった。平均の粒径は、29.1μmであった。
(ii)プロピレン−エチレン共重合体の製造
内容積105mの攪拌装置付き液相重合槽を用い、プロピレン−エチレン共重合体の連続製造を実施した。上記で製造した予備重合触媒をヘキサン溶媒で濃度12重量%にスラリー化処理を施し、触媒スラリーとして31.4kg/hrとなるように連続的に重合槽へ供給した。さらに、この重合槽に液状プロピレンを22T/hr、エチレンを28.5kg/hr、水素を0.36kg/hr、トリイソブチルアルミニウムを2.2kg/hr連続的に供給し、内温を70℃に保持し、重合を行った。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.7時間であった。重合体は連続的に重合槽から抜き出され、エタノールを1.0kg/hrとなるよう供給し触媒を失活処理した。その後、重合体は脱ガス工程に移送されガスと分離をし、次いで乾燥工程で乾燥を行った。得られた重合体の固体触媒1g当たりの収量は12kg、エチレン含有量=0.3wt%、MFR=19.6g/10分、Tm=149.3℃であった。
(3)製造例3
(i)触媒の調製
(a)チーグラー触媒の調製
攪拌翼、温度計、ジャケット、冷却コイルを備えた100Lの反応器に、Mg(OEt):30molを仕込み、次いで、Ti(OBu)を、仕込んだMg(OEt)中のマグネシウムに対して、Ti(OBu)/Mgのモル比が0.60となるように仕込んだ。さらに、トルエン(TOL)を19.2kg仕込み、攪拌しながら昇温した。139℃で3時間反応させた後、130℃に降温して、MeSi(OPh)のトルエン溶液を、先に仕込んだMg(OEt)中のマグネシウムに対して、MeSi(OPh)/Mgのモル比が0.67になるように添加した。なお、ここで用いたトルエン量は、7.8kgであった。添加終了後、130℃で2時間反応させ、その後、室温に降温し、Si(OEt)を添加した。Si(OEt)の添加量は、先に仕込んだMg(OEt)中のマグネシウムに対して、Si(OEt)/Mgのモル比が0.056となるようにした。
次に、得られた反応混合物に対して、マグネシウム濃度が、0.57(mol/L・TOL)になるように、トルエンを添加した。さらに、フタル酸ジエチル(DEP)を、先に仕込んだMg(OEt)中のマグネシウムに対して、DEP/Mgのモル比が0.10になるように添加した。得られた混合物を、引き続き攪拌しながら−10℃に冷却し、TiClを2時間かけて滴下して、均一溶液を得た。なお、TiClは、先に仕込んだMg(OEt)中のマグネシウムに対して、TiCl/Mgのモル比が4.0になるようにした。TiCl添加終了後、攪拌しながら0.5℃/minで15℃まで昇温し、同温度で1時間保持した。次いで、再び0.5℃/minで50℃まで昇温し、同温度で1時間保持した。さらに、1℃/minで118℃まで昇温し、同温度で1時間処理を行った。処理終了後、攪拌を停止し、上澄み液を除去した後、トルエンで、残液率=1/73になるように洗浄し、スラリーを得た。
次に、ここで得られたスラリーに、室温で、トルエンとTiClを添加した。なお、TiClは、先に仕込んだMg(OEt)中のマグネシウムに対して、TiCl/Mg(OEt)のモル比が5.0となるようにした。また、トルエンは、TiCl濃度が、2.0(mol/L・TOL)になるように調整した。このスラリーを攪拌しながら昇温し、118℃で1時間反応を行った。反応終了後、攪拌を停止し、上澄み液を除去した後、トルエンで、残液率=1/150となるように洗浄し、固体成分のスラリーを得た。さらに上記で得られた固体成分のうち、400gを、攪拌翼、温度計、冷却ジャケットを有する別の反応器に移送し、ノルマルヘキサンを加えて、固体成分の濃度として5.0(g/l)になるように希釈した。得られたスラリーを攪拌しながら、15℃で、トリメチルビニルシラン、トリエチルアルミ(TEA)及びt−ブチルメチルジエトキシシラン(TBMDES)を添加した。なお、TEA、トリメチルビニルシラン、TBMDESの添加量は、それぞれ、上記固体成分中の固体成分1gに対して、3.1(mmol)、0.2(ml)、0.2(ml)となるようにした。添加終了後、引き続き攪拌しながら、15℃で1時間保持し、さらに、30℃に昇温して、同温度で2時間攪拌した。
(b)予備重合
次に、再び15℃に降温し、同温度を保持しながら、反応器の気相部に、1.2kgのプロピレンガスを72分かけて定速でフィードして予備重合を行った。フィード終了後、攪拌を停止して上澄み液を除去した後、ノルマルヘキサンで洗浄を行い、予備重合触媒成分のスラリーを得た。なお、残液率は、1/12とした。得られた予備重合触媒成分は、上記固体成分1gあたり、3.1gのプロピレン重合体を有していた。
(ii)プロピレン系樹脂の製造
重合は製造例1で用いたのと同じ反応器システムを用いて行った。上記で得られた予備重合触媒成分を流動パラフィン(東燃社製商品名「ホワイトレックス335」)に濃度2重量%で分散させて、触媒成分として0.2g/hrで導入した。この反応器に液状プロピレンを32.8kg/hr、エチレンを0.26kg/hr、水素を4.0g/hr、トリエチルアルミニウムを6.6g/hr、t−ブチルメチルジエトキシシラン(TBEDMS)を0.011g/hrで連続的に供給し、内温を70℃に保持し重合を行った。
液相重合槽から重合体と液状プロピレンの混合スラリーを、重合体として13.8kg/hrとなるように失活洗浄槽に抜き出した。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.3時間であった。失活洗浄槽には、失活剤としてエタノールを21.0g/hrで供給した。さらに液状プロピレンを40kg/hr供給し、ジャケットによる加熱で内温を50℃に保った。重合体は分級器の下部から高圧脱ガス槽へ抜き出し、さらに低圧脱ガス槽を経て、乾燥器で乾燥を行った。乾燥器の内温80℃、滞留時間が1時間となるように調整し、さらに室温の乾燥窒素をパウダーの流れの向流方向に12m/hrの流量で流した。乾燥後の重合体は、ホッパーから取り出した。一方、分級器、濃縮器を経て、重合体と分離された液状プロピレンは、40kg/hrで洗浄液受け槽に抜き出した。得られた重合体の固体触媒1g当たりの収量は69.0kg、エチレン含有量4.2wt.%、MFR25.5g/10分、分子量分布(Mw/Mn)4.6、Tm=140.1℃であった。
2−2.プロピレン系樹脂(P)
(P−1)製造例1で重合して得られたプロピレン系樹脂
(P−2)製造例2で重合して得られたプロピレン系樹脂
(P−3)製造例3で重合して得られたプロピレン系樹脂
(P−4)プロピレン単独重合体:MFR11g/10分、立体規則性(mmmm)97%、重量平均分子量(Mw)27万、分子量分布(Mw/Mn)6.3、チーグラー触媒(日本ポリプロ(株)製商品名「ノバテックMA3」)
2−3.造核剤(N)
(N−1)1,3,5−トリス[2,2−ジメチルプロピオニルアミノ]ベンゼン(式(1)におけるR〜Rが全てtert−ブチル基である化合物。)
BASFジャパン(株)製商品名「イルガクリアXT−386」
(N−1MB)製造例1で重合して得られたプロピレン系樹脂100重量部と、上記N−1(XT−386)0.5重量部と、下記に記載のA−1(IRGANOX1010)0.03重量部とをスーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械製TEM−35B二軸押出機を用いて、ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。
(N−1MB2)製造例1で重合して得られたプロピレン系樹脂100重量部と、上記N−1(XT−386)0.1重量部と、下記に記載のA−1(IRGANOX1010)0.03重量部とをスーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械製TEM−35B二軸押出機を用いて、ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。
(N−2)リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム (株)ADEKA製商品名「アデカスタブNA−11」
(N−2MB)製造例1で重合して得られたプロピレン系樹脂100重量部と、上記N−2(NA−11)0.1重量部と、下記に記載のA−1(IRGANOX1010)0.03重量部とをスーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械製TEM−35B二軸押出機を用いて、ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。
(N−3)ジナトリウム−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート ミリケン社製商品名「ハイパフォームHPN−68L」
(N−3MB)製造例1で重合して得られたプロピレン系樹脂100重量部と、上記N−3(HPN−68L)0.1重量部と、下記に記載のA−1(IRGANOX1010)0.03重量部とをスーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械製TEM−35B二軸押出機を用いて、ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。
(N−4)1,2−シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩 ミリケン社製商品名「ハイパフォームHPN−20E」
(N−4MB)製造例1で重合して得られたプロピレン系樹脂100重量部と、上記N−4(HPN−20E)0.1重量部と、下記に記載のA−1(IRGANOX1010)0.03重量部とをスーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械製TEM−35B二軸押出機を用いて、ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。
(N−5)ヒドロオキシ−ジ(p−tert−ブチル安息香酸)アルミニウム) 共同薬品(株)製商品名「AL−PTBBA」
(N−5MB)製造例1で重合して得られたプロピレン系樹脂100重量部と、上記N−5(AL−PTBBA)0.1重量部と、下記に記載のA−1(IRGANOX1010)0.03重量部とをスーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械製TEM−35B二軸押出機を用いて、ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。
(N−6)N,N’,N”−トリス(2−メチルシクロへキシル)−(1,2,3−プロパントリカルボキサミド)新日本理化(株)製商品名「リカクリアPC−1」
(N−6MB)製造例1で重合して得られたプロピレン系樹脂100重量部と、上記N−6(PC−1)0.1重量部と、下記に記載のA−1(IRGANOX1010)0.03重量部とをスーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械製TEM−35B二軸押出機を用いて、ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。
2−4.その他添加剤(A)
(A−1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン BASFジャパン(株)製商品名「IRGANOX1010」
<3.実施例1〜16、比較例1〜7>
重合体及び添加剤を表1及び2に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械製TEM−35B二軸押出機を用いて、ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを用いて、物性を測定した。それらの評価結果を表1及び2に示す。
Figure 2016186065
Figure 2016186065
実施例2、実施例5、実施例8、実施例10、実施例12、実施例14及び比較例2、並びに実施例3、実施例4及び比較例3から、造核剤含有によってボイド発生率が顕著に低減することが分かる。また、実施例1及び比較例1より、造核剤含有によるボイド発生率低減効果は成形温度と金型温度が変化しても発現することが分かる。
また、表2の実施例6、実施例7、実施例9、実施例11、実施例13、実施例15及び実施例16の通り、本発明の範囲に含まれる造核剤が2〜10重量ppm程度の微量含有する場合も、ボイド発生率が低下する。
造核剤の含有量が本発明の範囲に含まれない比較例4においては、金属含有量が高く、電気電子機器部品搬送ケースとして用いた際、成形品から剥がれ落ちた樹脂の欠片や金属成分が付着し電気特性が変化することにより欠損となる可能性があることに加え、収縮率比が本発明の範囲外となり(下限値よりも小さく)、成形後の変形が大きくなるため不適である。また、比較例7も含有量が本発明の範囲に含まれない為、収縮率比が本発明の範囲外になる。
また、比較例5や比較例6に示した通り、チーグラー触媒を使用して製造されたプロピレン系樹脂を用いた場合、分子量分布や平均溶出温度、溶出分散度、揮発性成分含有量、金属含有量が本発明の範囲外であるため、電気電子機器部品搬送ケースとして用いる場合、搬送又は保管の際に汚染による電気電子機器部品の性能低下を起こす可能性が高く、かつ比較例6に関してはボイド低減の効果も得られなかったため不適である。
本発明は、電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物及び電気電子機器部品搬送ケースに関し、本発明の電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物を用いた電気電子機器部品搬送ケースは、ボイドの発生が抑制されており、搬送又は保管の際にも電気電子機器部品の性能低下を起こさないクリーン性に優れ、かつ低歪みであるため、産業上の利用可能性は非常に高い。
1 成形品の平板部分(薄肉部)
2 リブ等による厚肉部
a 薄肉部1の肉厚
b 厚肉部2の肉厚
図中の数字は幅、高さ、長さ等を示し、単位はmmである。

Claims (5)

  1. メタロセン触媒を使用して製造された、下記(a)〜(c)の要件を満たすプロピレン系樹脂100重量部に対し、下記式(1)で示される造核剤(A)0.0001〜0.8重量部、下記式(2)で示される造核剤(B)0.0001〜0.1重量部、下記式(3)で示される造核剤(C)0.0001〜0.8重量部、芳香族カルボン酸金属塩からなる造核剤(D)0.0001〜0.8重量部及び下記式(4)で示される造核剤(E)0.0001〜0.2重量部からなる群から選択される少なくとも1種の造核剤を含有してなり、下記(d)〜(e)の要件を満たしていることを特徴とする電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物。
    (a)エチレン含有量が0〜5重量%
    (b)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5〜4.0
    (c)温度上昇溶離分別法によって測定される平均溶出温度(T50)が90〜105℃であり、溶出分散度(σ)が9℃以下
    (d)揮発性成分含有量が10重量ppm以下
    (e)肉厚2mmの射出成形板を作製した際、収縮率比(MD方向/TD方向)が0.90〜1.10
    Figure 2016186065
    (式中、R、R及びRは、互いに独立して、未置換の又は置換された炭化水素基を表す。)
    Figure 2016186065
    [式中、Rは、直接結合、硫黄、炭素数1〜9のアルキレン基又は炭素数2〜9のアルキリデン基であり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数7〜9のアルキルアリール基であり、MはLi、Na、K、Mg、Ca、Zn又はAlであり、nはMの価数である。]
    Figure 2016186065
    [式中、M及びMは、いずれもリチウムイオン、ナトリウムイオン若しくはカリウムイオンであるか、又は共同してカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛及び一塩基性アルミニウムからなる群より選択される単一の金属カチオンであり、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、同一又は異なって、水素、ヒドロキシ、フッ素、塩素、臭素、沃素、炭素数1〜9のアルキル(ここで、いずれか2つのビシナル(隣接炭素に結合)又はジェミナル(同一炭素に結合)アルキルは、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルキレンオキシ、フェニル、アミノ及び炭素数1〜9のアルキルアミノからなる群からそれぞれ選択される。]
    Figure 2016186065
    [式中、Rは、プロパン−1,2,3−トリイル基又はブタン−1,2,3,4−テトライル基を表す。3個又は4個のRは、互いに同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。aは、3又は4の整数を表す。]
  2. 曲げ弾性率が1000MPa以上である請求項1に記載の電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物。
  3. Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Sr、Ti、Fe及びZnの金属含有量総量が35重量ppb以下である請求項1又は2に記載の電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン系樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の電気電子機器部品搬送ケース用プロピレン樹脂組成物を用いて得られる電気電子機器部品搬送ケース。
  5. 薄肉部の肉厚をa、厚肉部の肉厚をbとして、aが1.2mmより大きく、b/aが1.5以上である請求項4に記載の電気電子機器部品搬送ケース。
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