JP2016186055A - ポリグリコール酸組成物および一時目止め材 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリグリコール酸組成物を水中に投入した直後に溶解することを抑えつつ、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまでの時間を短縮化する。【解決手段】本発明に係るポリグリコール酸組成物は、5〜400価の多価アルコールのヒドロキシ基にポリグリコール酸が結合している重合体を含み、当該ポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均が4〜60である。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリグリコール酸組成物および一時目止め材に関する。
ポリグリコール酸は、加水分解性を有しており、このポリグリコール酸が持つ加水分解性を利用して、ポリグリコール酸組成物は様々な分野において使用されている。ここで、非特許文献1に開示されているように、非晶ポリグリコール酸は、結晶ポリグリコール酸よりも加水分解の分解速度が速いことが開示されている。そこで、より優れた分解性を有する分解性組成物を得るために、分解性組成物の結晶化度を低下する工夫が、特許文献1および2に開示されている。
例えば、特許文献1には、多価アルコールで環状エステルを重合し、得られたポリエステルに分岐構造を持たせることにより、ポリエステルの結晶性を低下させる構成が開示されている。同様に、特許文献2にも、ラクチドを多価アルコールで開環重合させ、得られたポリ乳酸に分岐構造を持たせることにより、結晶化点を低下させる構成が開示されている。
Xin-Hua Zong et. al.,Macromolecules, 32, p.8107-8114,1999
ここで、ポリグリコール酸組成物の加水分解を促進する方法として、ポリグリコール酸組成物に加水分解促進助剤を添加する方法(例えば、特許文献3参照)、またはポリグリコール酸組成物のポリグリコール酸を低分子量化する方法がある。
本発明者らが、ポリグリコール酸組成物の加水分解において、水中でポリグリコール酸が低分子量化して水中への溶解が始まるまでを前期とし、その後、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまでを後期として、上記の2つの方法を用いたときのポリグリコール酸組成物の水中での分解挙動を経時的に評価したところ、以下の結果が得られた。
ポリグリコール酸組成物に加水分解促進助剤を添加する方法では、前期の分解速度は加速するが、加水分解促進助剤が水中に溶出することにより、後期の分解速度が低下してしまう。
また、ポリグリコール酸組成物のポリグリコール酸を低分子量化する方法では、前期の分解速度は速いが、ポリグリコール酸が低分子量化することでポリグリコール酸組成物の結晶化度が増加することにより、後期の分解速度が低下してしまう。また、ポリグリコール酸を低分子量化しすぎると、ポリグリコール酸組成物を水中に投入したときにポリグリコール酸組成物がすぐに水中に溶解してしまう。そのため、このようなポリグリコール酸組成物では実用する際に不具合が起きる可能性がある。
したがって、特許文献1および2に開示されているような分解性組成物に対して、上記の加水分解を促進する方法を適用したとしても、十分な分解速度は得られない。
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した直後に溶解することを抑えつつ、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまでの時間の短縮化を実現するポリグリコール酸組成物および当該ポリグリコール酸組成物によって形成されている一時目止め材を提供することにある。
本発明者らは、ポリグリコール酸組成物の加水分解性について種々調査したところ、特定の範囲内の価数の多価アルコールならびに特定の範囲内の重合度のポリグリコール酸を用いて形成したポリグリコール酸組成物は、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した直後に溶解することを抑制しつつ、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまでの時間の短縮化を実現することができることを見出した。
すなわち、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るポリグリコール酸組成物は、5〜400価の多価アルコールのヒドロキシ基にポリグリコール酸が結合している重合体を含むポリグリコール酸組成物であって、当該ポリグリコール酸組成物における上記ポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均が4〜60である。
また、本発明の一態様に係るポリグリコール酸組成物においては、上記多価アルコールは、多糖類、ポリエステルポリオール、ポリビニルアルコールおよびポリグリセリンからなる群より選択されることが好ましい。特に、上記多価アルコールは、ポリグリセリンであることが好ましい。
また、本発明の一態様に係るポリグリコール酸組成物は、上記多価アルコールと、グリコリドまたはグリコール酸とを反応させて得られることが好ましい。特に、上記ポリグリコール酸組成物は、上記多価アルコールと、グリコリドとを反応させて得られることが好ましい。
また、本発明の一態様に係るポリグリコール酸組成物においては、上記ポリグリコール酸組成物の結晶化度が、0〜20%であることが好ましい。
また、本発明の一態様に係るポリグリコール酸組成物においては、上記多価アルコールは、20〜100価の多価アルコールであることが好ましい。
また、本発明の一態様に係るポリグリコール酸組成物においては、上記ポリグリコール酸組成物における上記ポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均は、5〜50であることが好ましい。
なお、上述したポリグリコール酸組成物を用いて、一時目止め材を形成してもよく、この場合には、上述したポリグリコール酸組成物を用いて形成した一時目止め材も、本発明の範疇に入る。
本発明によれば、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した直後に溶解することを抑えつつ、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまでの時間の短縮化を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
〔1.ポリグリコール酸組成物の構成と性質〕
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物は、
多価アルコールのヒドロキシ基にポリグリコール酸が結合している重合体を含むポリグリコール酸組成物である。
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物は、
多価アルコールのヒドロキシ基にポリグリコール酸が結合している重合体を含むポリグリコール酸組成物である。
(多価アルコール)
多価アルコールは、具体的には5〜400価の多価アルコールであり、好ましくは20〜100価の多価アルコールであり、より好ましくは30〜60価の多価アルコールである。このような多価アルコールの具体例としては、デンプン、グリコーゲンおよびセルロース等の多糖類、Hyper branched bis-MPA polyester-32-hydroxyl generation2、Hyper branched bis-MPA polyester-32-hydroxyl generation3、およびHyper branched bis-MPA polyester-32-hydroxyl generation4(シグマアルドリッチ社製)等のポリエステルポリオール、ポリビニルアルコールならびにポリグリセリン等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルポリオールおよびポリグリセリンがより好ましい。したがって、多価アルコールの好適な形態は、価数5〜400のポリグリセリンであり、より好適な形態は、価数20〜100のポリグリセリンであり、特に好適な形態は、価数30〜60のポリグリセリンである。
多価アルコールは、具体的には5〜400価の多価アルコールであり、好ましくは20〜100価の多価アルコールであり、より好ましくは30〜60価の多価アルコールである。このような多価アルコールの具体例としては、デンプン、グリコーゲンおよびセルロース等の多糖類、Hyper branched bis-MPA polyester-32-hydroxyl generation2、Hyper branched bis-MPA polyester-32-hydroxyl generation3、およびHyper branched bis-MPA polyester-32-hydroxyl generation4(シグマアルドリッチ社製)等のポリエステルポリオール、ポリビニルアルコールならびにポリグリセリン等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルポリオールおよびポリグリセリンがより好ましい。したがって、多価アルコールの好適な形態は、価数5〜400のポリグリセリンであり、より好適な形態は、価数20〜100のポリグリセリンであり、特に好適な形態は、価数30〜60のポリグリセリンである。
多価アルコールは水との親和性が高いため、実際に使用する多価アルコールは水分を吸収している場合が多い。多価アルコールとグリコリドとの反応において水分が含まれていると、水とグリコリドが反応する副反応が起きてしまう。そのため、実際に使用する多価アルコールの含有水分量は、10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましく、2%未満であることがさらに好ましい。多価アルコールの含有水分量が少ないほど、グリコリドが水と反応する副反応が抑えられるため、生成されるポリグリコール酸の構造制御がしやすくなり、所望の加水分解性を達成しやすくなる。
なお、多価アルコールにおけるすべてのヒドロキシ基がポリグリコール酸と結合している必要はなく、少なくとも一部のヒドロキシ基がポリグリコール酸と結合していればよい。しかしながら、生成されるポリグリコール酸の水中投入した直後の溶解性の観点から、多価アルコールにおけるヒドロキシ基の50%以上がポリグリコール酸と結合していることが好ましく、60%以上がポリグリコール酸と結合していることがより好ましく、70%以上がポリグリコール酸と結合していることがさらに好ましい。
(ポリグリコール酸)
本明細書において、ポリグリコール酸は、グリコール酸ユニットのみからなるグリコール酸のホモポリマーに加えて、グリコール酸ユニットと他のモノマーユニットとを含むポリグリコール酸共重合体を含むものである。なお、本明細書において、グリコール酸のホモポリマーとは、グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドの開環重合物も包含する意味で使用している。また、ポリグリコール酸がポリグリコール酸共重合体である場合には、グリコール酸ユニットの含有量が70モル%以上であることが好ましい。
本明細書において、ポリグリコール酸は、グリコール酸ユニットのみからなるグリコール酸のホモポリマーに加えて、グリコール酸ユニットと他のモノマーユニットとを含むポリグリコール酸共重合体を含むものである。なお、本明細書において、グリコール酸のホモポリマーとは、グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドの開環重合物も包含する意味で使用している。また、ポリグリコール酸がポリグリコール酸共重合体である場合には、グリコール酸ユニットの含有量が70モル%以上であることが好ましい。
ポリグリコール酸が、グリコール酸ユニットのみからなるグリコール酸のホモポリマーの場合には、例えば、グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドの開環重合によってポリグリコール酸を製造することができる。グリコリドの製造方法は、特に限定されないが、一般的には、グリコール酸オリゴマーを熱解重合することにより得ることができる。グリコール酸オリゴマーの解重合法として、例えば、溶融解重合法、固相解重合法および溶液解重合法等を採用することができる。なお、クロロ酢酸塩の環状縮合物として得られるグリコリドも用いることができる。
ポリグリコール酸がポリグリコール酸共重合体である場合には、ポリグリコール酸共重合体は、グリコール酸モノマーと、他のモノマーとを共重合させて製造することができる。ここで、グリコール酸モノマーとは、グリコール酸またはグリコリドを意味している。他のモノマーとしては、例えば、シュウ酸エチレン(すなわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類、カーボネート類、エーテル類、エーテルエステル類およびアミド類等の環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸および6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸あるいはそのアルキルエステル;エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、コハク酸およびアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類あるいはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;ならびにこれらの2種以上を挙げることができる。
重合反応に用いられるグリコール酸モノマーと他のモノマーとの総量に占めるグリコール酸モノマーの割合は、70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは98重量%以上であり、最も好ましくは99重量%以上である。
グリコール酸モノマーがグリコリドである場合には、他のモノマーとして環状モノマーを使用し、グリコリドとともに他の環状モノマーを同時に開環重合させてポリグリコール酸共重合体を製造することができる。グリコリドとの共重合成分として使用することができる他の環状モノマーとしては、他のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステル(例えば、ラクチド等)、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトン等)、トリメチレンカーボネートあるいは1,3−ジオキサン等の環状モノマーを使用することができる。好ましい他の環状モノマーは、他のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステルであり、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、L−乳酸、D−乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、およびこれらのアルキル置換体等を挙げることができる。特に好ましい他の環状モノマーは、乳酸の2分子間環状エステルであるラクチドであり、L体、D体、ラセミ体、およびこれらの混合物のいずれであってもよい。
グリコリドと他の環状モノマーとを開環共重合することにより、ポリグリコール酸共重合体の融点を低下させて加工温度を下げたり、結晶化速度を制御して押出加工性または延伸加工性を改善したりすることができる。しかし、これらの環状モノマーの使用割合が大きすぎると、形成されるポリグリコール酸共重合体の結晶性が損なわれて、耐熱性、ガスバリア性および機械的強度等が低下する。
ポリグリコール酸がポリグリコール酸共重合体である場合、ポリグリコール酸中のグリコール酸ユニットは70モル%以上であり得、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは98モル%以上であり、最も好ましくは99モル%以上である。グリコール酸ユニットが上記の範囲にあれば、ポリグリコール酸共重合体であっても、ポリグリコール酸に期待される強度または分解性が維持される。
(グリコール酸ユニット数)
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均は、4〜60であり、好ましくは5〜50であり、より好ましくは5〜30である。なお、ポリグリコール酸が、グリコール酸以外の他のモノマーユニットも含む共重合体である場合には、「グリコール酸ユニット数」には、当該他のモノマーユニットの数も含まれている。すなわち、「グリコール酸ユニット数」とは、ポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸の構成ユニット数と換言することができる。
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均は、4〜60であり、好ましくは5〜50であり、より好ましくは5〜30である。なお、ポリグリコール酸が、グリコール酸以外の他のモノマーユニットも含む共重合体である場合には、「グリコール酸ユニット数」には、当該他のモノマーユニットの数も含まれている。すなわち、「グリコール酸ユニット数」とは、ポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸の構成ユニット数と換言することができる。
ポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均が4以上であることにより、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した直後に溶解するポリグリコール酸が少なくなり、ポリグリコール酸組成物がすぐに溶解してしまうことを防ぐことができ、これにより前期の分解速度が速くなってしまうことを防ぐことができる。なお、本明細書では、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した際に、水中でポリグリコール酸が低分子量化して水中への溶解を開始するまでを前期とし、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまでを後期とする。本発明の一実施形態では、前期は、ポリグリコール酸組成物を66℃の脱イオン(DI)水中に保持したときに、保持開始から12時間までであり、後期は、保持開始から12時間以降とすることができる。
一方、ポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均が60以下であることにより、ポリグリコール酸組成物を十分に加水分解でき、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまでの時間を短くすることができる。
グリコール酸ユニット数は、例えば以下の方法で算出することができる。まずポリグリコール酸組成物のサンプルを重水素化トリフルオロ酢酸に溶解したものを核磁気共鳴分析(1H−NMR)で測定する。そして、測定結果に基づき、多価アルコールのヒドロキシ基以外のプロトンの積分値と、グリコール酸のメチレン部のプロトンの積分値との比を、ポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均値として算出する。
(酸化防止剤)
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物は、その特性を大きく損なわない限り、添加剤を含むものであってもよい。例えば、多価アルコールの熱安定性が低い場合は、グリコリドまたはグリコール酸との反応時に多価アルコールが熱によって分解する可能性があるため、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤は、一般にポリグリコール酸と多価アルコールとの溶融混練時あるいはグリコール酸またはグリコリドの重合時に加えられる。
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物は、その特性を大きく損なわない限り、添加剤を含むものであってもよい。例えば、多価アルコールの熱安定性が低い場合は、グリコリドまたはグリコール酸との反応時に多価アルコールが熱によって分解する可能性があるため、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤は、一般にポリグリコール酸と多価アルコールとの溶融混練時あるいはグリコール酸またはグリコリドの重合時に加えられる。
酸化防止剤としては、例えばBASFジャパン株式会社製のIrganox1035等のヒンダードフェノール系の酸化防止剤が挙げられる。中でも、多価アルコールとの相溶性が高いものが好ましい。なお、酸化防止剤の添加量は、多価アルコール100重量部に対して0.1〜10重量部とすることが好ましく、0.2〜5重量部とすることがより好ましく、1重量部とすることがさらに好ましい。
(結晶化度)
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物の結晶化度は、0〜20%であることが好ましく、0〜15%であることがより好ましい。結晶化度を上記の範囲内にすることにより、ポリグリコール酸組成物の水中での溶解性を制御することができる。
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物の結晶化度は、0〜20%であることが好ましく、0〜15%であることがより好ましい。結晶化度を上記の範囲内にすることにより、ポリグリコール酸組成物の水中での溶解性を制御することができる。
結晶化度は、例えば以下の方法で算出することができる。まずポリグリコール酸組成物の示差走査熱量測定装置(メトラートレド株式会社製DSC822e)を用いて、サンプル10mgを−50℃から280℃まで20℃/minの昇温速度で昇温する。その結果得られる融解ピークの面積から結晶化ピークの面積を引き、その面積をポリグリコール酸の完全結晶の融解熱量(200J/g)で割った値を結晶化度として算出する。
〔2.ポリグリコール酸組成物の製造方法〕
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物の製造方法の一例を以下に説明する。以下では、多価アルコールとグリコリドとを反応させてポリグリコール酸組成物を製造する方法を説明するが、本発明に係るポリグリコール酸組成物の製造方法はこれに限定されるものではない。
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物の製造方法の一例を以下に説明する。以下では、多価アルコールとグリコリドとを反応させてポリグリコール酸組成物を製造する方法を説明するが、本発明に係るポリグリコール酸組成物の製造方法はこれに限定されるものではない。
多価アルコールとグリコリドとを反応させてポリグリコール酸組成物を製造する方法は、多価アルコールを開始剤としてグリコリドを開環重合することで行われる。好ましくは、多価アルコールを開始剤として、少量の触媒の存在下でグリコリドの開環重合が行われる。
触媒は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化錫(例えば、二塩化錫および四塩化錫等)ならびに有機カルボン酸錫(例えば、2−エチルヘキサン酸錫等のオクタン酸錫)等の錫系化合物;アルコキシチタネート等のチタン系化合物;アルコキシアルミニウム等のアルミニウム系化合物;ジルコニウムアセチルアセトン等のジルコニウム系化合物;ハロゲン化アンチモンおよび酸化アンチモン等のアンチモン系化合物;等がある。触媒の使用量は、グリコリドに対して、重量比で好ましくは1〜1000ppm、より好ましくは3〜300ppmである。
グリコリドには、微量の水分と、グリコール酸および直鎖状のグリコール酸オリゴマー等のヒドロキシカルボン酸化合物とが不純物として含まれている場合がある。これら不純物の全プロトン濃度を、好ましくは0.01〜0.5モル%、より好ましくは0.02〜0.4モル%、特に好ましくは0.03〜0.35モル%に調整することにより、生成するポリグリコール酸組成物の溶融粘度および分子量等の物性を制御することができる。
グリコリドの開環重合は、塊状重合でも、溶液重合でもよいが、多くの場合、塊状重合が採用される。塊状重合の重合装置としては、押出機型、パドル翼を持った縦型、ヘリカルリボン翼を持った縦型、押出機型やニーダー型の横型、アンプル型、板状型および管状型等の様々な装置の中から、適宜選択することができる。また、溶液重合には、各種反応槽を用いることができる。
重合温度は、実質的な重合開始温度である120℃から300℃までの範囲内で目的に応じて適宜設定することができる。重合温度は、好ましくは130〜270℃、より好ましくは140〜260℃、特に好ましくは150〜250℃である。重合温度が120℃以上であれば、生成したポリグリコール酸組成物の分子量分布が広くなることを抑えることができる。重合温度が300℃以下であれば、生成したポリグリコール酸組成物が熱分解することを抑えることができる。重合時間は、3分間〜20時間、好ましくは5分間〜18時間の範囲内である。重合時間が3分間以上であれば重合が充分に進行し、所定の重量平均分子量を実現しやすくなる。重合時間が20時間以下であれば、生成したポリグリコール酸組成物が着色してしまうことを防ぐことができる。
生成したポリグリコール酸組成物を固体状態とした後、所望によりさらに固相重合を行ってもよい。固相重合とは、ポリグリコール酸の融点未満の温度で加熱することにより、固体状態を維持したままで熱処理する操作を意味する。この固相重合により、未反応モノマー、オリゴマー等の低分子量成分が揮発・除去される。固相重合は、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間、特に好ましくは3〜30時間で行われる。
このようにして製造した本実施形態に係るポリグリコール酸組成物は、5〜400価の多価アルコールのヒドロキシ基にポリグリコール酸が結合している重合体を含むポリグリコール酸組成物であって、当該ポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均が4〜60となっている。この構成によれば、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した際に、水中でポリグリコール酸が低分子量化して水中への溶解が始まるまで(前期)の加水分解が抑えられるため、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した直後に溶解することを抑制しつつ、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまで(後期)の時間の短縮化を実現することができる。
なお、本実施形態に係るポリグリコール酸組成物とは、ペレット、粉末または粒体等の他、シート、フィルム、棒状、チューブ状、ブロック状およびその他の形状の溶融成形体、容器、真空成形品等の熱成形品、繊維あるいは布帛等を含む。さらに、本実施形態に係るポリグリコール酸組成物とは、塗料、コーティング剤、インキ、トナー、農薬、医薬および化粧品等の分野における原料または添加剤、あるいは石油、ガス、水、熱水および温泉等のための坑井掘削用の材料等、一定の形状を有さずポリグリコール酸の分解性を活かした用途に用いられるものを含み、特定の形状に限定されない。
〔3.ポリグリコール酸組成物によって形成される一時目止め材〕
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物は、当業者に周知の方法によって、一時目止め材を形成することができる。本実施形態に係るポリグリコール酸組成物から形成される一時目止め材は、水中に浸漬することにより分解するものである。
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物は、当業者に周知の方法によって、一時目止め材を形成することができる。本実施形態に係るポリグリコール酸組成物から形成される一時目止め材は、水中に浸漬することにより分解するものである。
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物から形成される一時目止め材とは、押出成形、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、トランスファ成形、注型成形、スタンパブル成形、ブロー成形、延伸フィルム成形、インフレーションフィルム成形、積層成形、カレンダー成形、発泡成形、RIM成形、FRP成形、粉末成形およびペースト成形等の溶融成形あるいはその他の成形方法により成形された特定の形状を有する成形品を含む。さらに、一時目止め材とは、塗料、コーティング剤、インキ、トナー、農薬、医薬および化粧品等の分野における原料または添加剤、あるいは石油、ガス、水、熱水および温泉等のための坑井掘削用の材料等、特定の形状を有さずポリグリコール酸の分解性を活かした用途に用いられるもの全般を意味する。
〔4.ポリグリコール酸組成物の成形体を含有する坑井処理流体〕
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物の成形体を含有する一時目止め材としての坑井処理流体も、本発明の範疇である。このような坑井処理流体は、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体および仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種の坑井処理流体として使用できる。
本実施形態に係るポリグリコール酸組成物の成形体を含有する一時目止め材としての坑井処理流体も、本発明の範疇である。このような坑井処理流体は、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体および仕上げ流体からなる群より選ばれる少なくとも1種の坑井処理流体として使用できる。
本実施形態に係る坑井処理流体に含まれる成形体の形状としては、特に限定はないが、例えば、パウダー、ペレット、フィルムおよび繊維が挙げられる。パウダーとしては、長径/短径が1.9以下であり、累積50重量%平均径が1〜1000μmであるパウダーが挙げられる。ペレットとしては、長手方向の長さが1〜10mmであり、かつアスペクト比が1以上5未満のペレットが挙げられる。フィルムとしては、面積0.01〜10cm2であり、厚さ1〜1000μmのフィルム片が挙げられる。繊維としては、長さ/断面径(アスペクト比)が10〜2000であり、短径が5〜95μmの短繊維が挙げられる。
本実施形態に係る成形体は、例えば、繊維としてフラクチャリング流体に配合する場合は、当該繊維を0.05〜100g/L、好ましくは0.1〜50g/Lの濃度でフラクチャリング流体に含有させることによって、プロパントの分散性を向上させることが可能となる。
フラクチャリング流体に配合された繊維は、坑井の製造中および/または完成後には、機能上、不要となることがある。ここで、本実施形態に係るポリグリコール酸組成物からなる繊維を用いると、通常必要とされる回収または廃棄処理が不要または容易となる。すなわち、本実施形態に係るポリグリコール酸組成物からなる繊維は、生分解性および加水分解性に優れているので、例えば、地中に形成されたフラクチャ等の中に残置しておいても、土壌中に存在する微生物によって生分解され、あるいは土壌中の水分によって加水分解されて短時間で消失するため、回収作業が不要となる。特に、本実施形態に係るポリグリコール酸組成物は、高温(例えば、60℃以上)だけでなく低温(例えば、60℃未満、好ましくは50℃以下)でも優れた分解性を示すため、高温高圧の土壌環境中だけでなく、比較的低温の土壌環境中においても、上記の繊維は短時間で消失する。また、条件によっては、上記の繊維が残存する地中にアルカリ性溶液を注入して繊維と接触させることによって、より短時間で加水分解させることもできる。さらに、上記の繊維をフラクチャリング流体と一緒に地上に回収した後、容易に(比較的低温で)生分解または加水分解させることもできる。
また、本実施形態に係る成形体は、高温(例えば、60℃以上)だけでなく低温(例えば、60℃未満、好ましくは50℃以下)でも優れた加水分解性を有することから、機能上、不要となり地上で回収した場合、比較的低温でも短期間で加水分解させて消失させることができる。高温高圧の土壌環境中だけでなく、比較的低温の土壌環境中においても同様である。なお、成形体は、酸放出性を有しているため、坑井製造中において採用され得る酸処理(すなわち、酸を油層等と接触させる処理)を行うことにより、岩石の破砕を容易にしたり、岩石を溶解して油層の浸透率を高めたりする坑井刺激法において有効に働く効果を奏する。
本実施形態に係る坑井処理流体には、本実施形態に係る成形体の他、坑井処理流体に通常含有される種々の成分または添加剤を含有させることができる。例えば、水圧破砕(フラクチャリング)において使用されるフラクチャリング流体には、本実施形態の成形体を含有(例えば、0.05〜100g/Lの濃度)させることに加えて、溶剤または分散媒として、水または有機溶剤を主成分として含有(90〜95質量%程度)させ、支持体(プロパント)として、砂、ガラスビーズ、セラミック粒子および樹脂被覆した砂等を含有(9〜5質量%程度)させ、さらに、ゲル化剤、スケール防止剤および岩石等を溶解するための酸または摩擦低減剤等の種々の添加剤を含有(0.5〜1質量%程度)させることができる。成形体を含有する坑井処理流体、例えば上記の繊維を0.05〜100g/Lの濃度で含有する坑井処理流体は、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体または仕上げ流体等の坑井処理流体として、優れた特性を有するとともに、使用後の回収および廃棄が極めて容易であるという効果を奏する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例における各物性値は、以下に示す測定方法および評価方法を用いた。
(1)グリコール酸ユニット数
重水素化トリフルオロ酢酸にポリグリコール酸組成物のサンプルを溶解させ、1H−NMR測定をした。得られたチャートより、多価アルコールに含まれるヒドロキシ基以外のプロトンの積分値と、グリコール酸のメチレン部のプロトンの積分値との比を、ポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均値として算出した。
重水素化トリフルオロ酢酸にポリグリコール酸組成物のサンプルを溶解させ、1H−NMR測定をした。得られたチャートより、多価アルコールに含まれるヒドロキシ基以外のプロトンの積分値と、グリコール酸のメチレン部のプロトンの積分値との比を、ポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均値として算出した。
(2)結晶化度
示差走査熱量測定装置(メトラートレド株式会社製DSC822e)を用いて、ポリグリコール酸組成物のサンプル10mgを−50℃から280℃まで20℃/minの昇温速度で昇温した。その結果得られる融解ピークの面積から結晶化ピークの面積を差し引き、その面積をポリグリコール酸の完全結晶の融解熱量(200J/g)で除した値を、結晶化度として算出した。
示差走査熱量測定装置(メトラートレド株式会社製DSC822e)を用いて、ポリグリコール酸組成物のサンプル10mgを−50℃から280℃まで20℃/minの昇温速度で昇温した。その結果得られる融解ピークの面積から結晶化ピークの面積を差し引き、その面積をポリグリコール酸の完全結晶の融解熱量(200J/g)で除した値を、結晶化度として算出した。
(3)加水分解試験
ポリグリコール酸組成物のサンプル1gをイオン交換水50mlが入ったバイアル瓶に入れ、軽く撹拌した後、66℃に設定されたオーブン内に設置した。設置してから12時間後および3週間後にバイアル瓶を取り出し、室温まで冷却した後、5Aの濾紙で重力濾過した。濾過後、露点−40℃以下に管理されたドライルーム内にて、室温で濾紙を一晩乾燥し、濾紙上に残ったポリグリコール酸の重量から重量保持率(%)を求めた。具体的には、以下の計算式を用いた:
重量保持率(%)=濾紙上に残ったポリグリコール酸の重量/サンプルの重量
なお、設置してから12時間後の重量保持率は、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した際に、水中でポリグリコール酸が低分子量化して水中への溶解が始まるまで(前期)の重量保持率を意図しており、設置してから3週間後の重量保持率は、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した際に、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまで(後期)の重量保持率を意図している。
ポリグリコール酸組成物のサンプル1gをイオン交換水50mlが入ったバイアル瓶に入れ、軽く撹拌した後、66℃に設定されたオーブン内に設置した。設置してから12時間後および3週間後にバイアル瓶を取り出し、室温まで冷却した後、5Aの濾紙で重力濾過した。濾過後、露点−40℃以下に管理されたドライルーム内にて、室温で濾紙を一晩乾燥し、濾紙上に残ったポリグリコール酸の重量から重量保持率(%)を求めた。具体的には、以下の計算式を用いた:
重量保持率(%)=濾紙上に残ったポリグリコール酸の重量/サンプルの重量
なお、設置してから12時間後の重量保持率は、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した際に、水中でポリグリコール酸が低分子量化して水中への溶解が始まるまで(前期)の重量保持率を意図しており、設置してから3週間後の重量保持率は、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した際に、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまで(後期)の重量保持率を意図している。
〔実施例1〕
露点−40℃以下に管理されたドライルーム内にて、開始剤として、ヒドロキシ基の価数が40であるポリグリセリン(株式会社ダイセル製PGL X)4.54gと、酸化防止剤として、ポリグリセリン100重量部に対して1重量部のIrganox1035(BASFジャパン株式会社製)とをビーカーに入れて撹拌した。そこに、株式会社クレハ製のグリコリド(遊離酸濃度2eq/t)100gを加え、100℃に加熱して完全に溶融させた後、触媒として二塩化錫二水和物(関東化学株式会社製)3mgを添加して撹拌し、目視で完全に均一になったことを確認してからさらに5分間撹拌した。なお、ポリグリセリンの量は、グリコリドに対して0.2モル%となっている。
露点−40℃以下に管理されたドライルーム内にて、開始剤として、ヒドロキシ基の価数が40であるポリグリセリン(株式会社ダイセル製PGL X)4.54gと、酸化防止剤として、ポリグリセリン100重量部に対して1重量部のIrganox1035(BASFジャパン株式会社製)とをビーカーに入れて撹拌した。そこに、株式会社クレハ製のグリコリド(遊離酸濃度2eq/t)100gを加え、100℃に加熱して完全に溶融させた後、触媒として二塩化錫二水和物(関東化学株式会社製)3mgを添加して撹拌し、目視で完全に均一になったことを確認してからさらに5分間撹拌した。なお、ポリグリセリンの量は、グリコリドに対して0.2モル%となっている。
撹拌後、得られた融液を試験管に流し込み、150℃の温度下で7時間反応させた。7時間後、内容物をアルミ製の容器に移し、室温まで冷却した後、衝撃式粉砕機で粉砕後、平均粒径が1mm未満の粉砕品を篩分回収して、ポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
なお、表1における「開始剤」とは、多価アルコールを指しており、「添加量」とは、グリコリドに対する多価アルコールの量(モル%)である。また、「平均GA unit数」は、上述した測定方法で求めた、ポリグリコール酸組成物におけるポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均値である。
〔実施例2〕
ポリグリセリンの量を12.3g(グリコリドに対して0.5モル%)とした点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
ポリグリセリンの量を12.3g(グリコリドに対して0.5モル%)とした点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
〔実施例3〕
ポリグリセリンの量を25.1g(グリコリドに対して1モル%)とした点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
ポリグリセリンの量を25.1g(グリコリドに対して1モル%)とした点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
〔実施例4〕
ポリグリセリンの量を12.3g(グリコリドに対して0.5モル%)とし、酸化防止剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
ポリグリセリンの量を12.3g(グリコリドに対して0.5モル%)とし、酸化防止剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
〔実施例5〕
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が32のHyper branched bis-MPA polyester-32-hydroxyl generation3(シグマアルドリッチ社製)を30.4g(グリコリドに対して1モル%)用いた点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。なお、表1では、Hyper branched bis-MPA polyester-32-hydroxyl generation3を「Hyper branch」と略記している。
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が32のHyper branched bis-MPA polyester-32-hydroxyl generation3(シグマアルドリッチ社製)を30.4g(グリコリドに対して1モル%)用いた点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。なお、表1では、Hyper branched bis-MPA polyester-32-hydroxyl generation3を「Hyper branch」と略記している。
〔比較例1〕
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が1のドデシルアルコール(純正化学株式会社製)を1.6g(グリコリドに対して1モル%)用い、酸化防止剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が1のドデシルアルコール(純正化学株式会社製)を1.6g(グリコリドに対して1モル%)用い、酸化防止剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
〔比較例2〕
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が3のグリセリン(関東化学株式会社製)を7.9g(グリコリドに対して10モル%)用い、酸化防止剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が3のグリセリン(関東化学株式会社製)を7.9g(グリコリドに対して10モル%)用い、酸化防止剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
〔比較例3〕
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が3のグリセリン(関東化学株式会社製)を15.8g(グリコリドに対して20モル%)用い、酸化防止剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が3のグリセリン(関東化学株式会社製)を15.8g(グリコリドに対して20モル%)用い、酸化防止剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
〔比較例4〕
ポリグリセリンの量を2.0g(グリコリドに対して0.1モル%)とした点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
ポリグリセリンの量を2.0g(グリコリドに対して0.1モル%)とした点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
〔比較例5〕
ポリグリセリンの量を51g(グリコリドに対して2モル%)とした点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
ポリグリセリンの量を51g(グリコリドに対して2モル%)とした点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
〔比較例6〕
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が440のポリビニルアルコール(和光純薬工業株式会社製;重合度500、けん化度88%)を5.7g(グリコリドに対して0.5モル%)用いた点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が440のポリビニルアルコール(和光純薬工業株式会社製;重合度500、けん化度88%)を5.7g(グリコリドに対して0.5モル%)用いた点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
〔比較例7〕
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が4のペンタエリトリトール(関東化学株式会社製)を5.8g(グリコリドに対して5モル%)用い、酸化防止剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
ポリグリセリンの代わりに、ヒドロキシ基の価数が4のペンタエリトリトール(関東化学株式会社製)を5.8g(グリコリドに対して5モル%)用い、酸化防止剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でポリグリコール酸組成物を得た。得られたポリグリコール酸組成物の物性を表1に示す。
表1から分かるように、実施例1〜5のポリグリコール酸組成物は、12時間後の重量保持率がおよそ80〜100%と高く、3週間後の重量保持率がおよそ10〜20%と低い。すなわち、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した直後に溶解することを抑えつつ、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまでの時間の短縮化を実現できていることが分かる。
これに対して、比較例1、2、4、6および7では、12時間後の重量保持率が100%と高いが、3週間後の重量保持率が30%以上と高くなっている。これは、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した直後に溶解することが抑えられているが、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまでの時間が短縮化できていないことを示している。
また、比較例3および5では、12時間後の重量保持率がそれぞれ5%および6%と低く、3週間後の重量保持率が0%となっており、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した直後に溶解してしまっていることを示している。
このように、5〜400価の多価アルコールのヒドロキシ基にポリグリコール酸が結合している重合体を含むポリグリコール酸組成物であって、当該ポリグリコール酸組成物における上記ポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均が4〜60であるポリグリコール酸組成物によって、ポリグリコール酸組成物を水中に投入した直後に溶解することを抑えつつ、ポリグリコール酸組成物が水中に完全に溶解するまでの時間の短縮化を実現できる。
本発明に係るポリグリコール酸組成物および一時目止め材は、石油、ガス、水、熱水および温泉等のための坑井掘削用の分解性材料として好適に利用することができる。
Claims (9)
- 5〜400価の多価アルコールのヒドロキシ基にポリグリコール酸が結合している重合体を含むポリグリコール酸組成物であって、当該ポリグリコール酸組成物における上記ポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均が4〜60であることを特徴とするポリグリコール酸組成物。
- 上記多価アルコールは、多糖類、ポリエステルポリオール、ポリビニルアルコールおよびポリグリセリンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリグリコール酸組成物。
- 上記多価アルコールは、ポリグリセリンであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリグリコール酸組成物。
- 上記多価アルコールと、グリコリドまたはグリコール酸とを反応させて得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリグリコール酸組成物。
- 上記多価アルコールと、グリコリドとを反応させて得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリグリコール酸組成物。
- 上記ポリグリコール酸組成物の結晶化度が、0〜20%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリグリコール酸組成物。
- 上記多価アルコールは、20〜100価の多価アルコールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリグリコール酸組成物。
- 上記ポリグリコール酸組成物における上記ポリグリコール酸のグリコール酸ユニット数の平均は、5〜50であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリグリコール酸組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリグリコール酸組成物によって形成されている、一時目止め材。
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JPS6076531A (ja) * | 1983-08-26 | 1985-05-01 | サンド・アクチエンゲゼルシヤフト | マトリックス材料とその製造法およびこの材料を使用した医薬組成物 |
JPH02276818A (ja) * | 1989-01-27 | 1990-11-13 | Mitsui Toatsu Chem Inc | 生体吸収性ポリエステルおよびその製造方法 |
JP2008222768A (ja) * | 2007-03-09 | 2008-09-25 | Univ Kansai | 分岐型生分解性ポリエステル及びその製造方法 |
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2015
- 2015-03-27 JP JP2015067623A patent/JP2016186055A/ja active Pending
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