JP2016185685A - インクジェットヘッド駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】低コストで低消費電力のインクジェットヘッド駆動装置を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド駆動装置は、圧力室と、アクチュエータと、ノズルと、駆動信号出力部とを有する。圧力室は、液体を収容する。アクチュエータは、圧力室の容積を印加される電圧により拡張又は収縮させる。ノズルは、圧力室に連通し、圧力室の容積変化によって液体を吐出する。駆動信号出力部は、ノズルから液体を吐出させる吐出パルスの繰り返し回数が3回以上の場合に、第1の電圧振幅を有する最初の吐出パルスと、第1の電圧振幅よりも小さい第2の電圧振幅を有する2回目以降の吐出パルスと、を含む駆動波形の駆動信号をアクチュエータに出力する。
【選択図】図7

Description

本発明の実施形態は、インクジェットヘッド駆動装置に関する。
インクジェットヘッド駆動装置は、パルス幅の時間だけ所定の電圧値を維持する波形の吐出パルスによりインクの液滴を吐出させる。マルチドロップ方式のインクジェットヘッド駆動装置は、インクの液滴を複数回吐出させることにより液滴量を調整する。この種の駆動装置は、最初の液滴の吐出により圧力室に発生する振動を考慮して2回目以降の液滴の吐出を制御する。例えば、吐出パルスの電圧振幅(電圧値)が複数種類ある場合、駆動装置は、複数種類の電圧源が必要となる。複数種類の電圧源を有する駆動装置は、装置規模が大きくなり高コストとなる。また、吐出するインク量は、吐出パルスの電圧振幅を全て同じにしてパルス幅で制御しても良い。しかし、吐出パルスの電圧振幅が一定の駆動装置は、吐出パルスの電圧振幅を制御できるものより消費電力が大きくなる。
特開2012−045797号公報
本発明は、低コストで低消費電力のインクジェットヘッド駆動装置を提供することを目的とする。
実施形態によれば、インクジェットヘッド駆動装置は、圧力室と、アクチュエータと、ノズルと、駆動信号出力部とを有する。圧力室は、液体を収容する。アクチュエータは、圧力室の容積を印加される電圧により拡張又は収縮させる。ノズルは、圧力室に連通し、圧力室の容積変化によって液体を吐出する。駆動信号出力部は、ノズルから液体を吐出させる吐出パルスの繰り返し回数が3回以上の場合に、第1の電圧振幅を有する最初の吐出パルスと、第1の電圧振幅よりも小さい第2の電圧振幅を有する2回目以降の吐出パルスと、を含む駆動波形の駆動信号をアクチュエータに出力する。
図1は、実施形態に係るインクジェットヘッド駆動装置を含むインクジェット記録装置に用いられるインクジェットヘッドの斜視図である。 図2は、実施形態に係るインクジェット記録装置に用いられるインク供給装置の概略図である。 図3は、実施形態に係るインクジェットヘッドに適用可能なヘッド基板の平面図である。 図4(a)は、ヘッド基板における第1の部分の縦断面図である。図4(b)は、ヘッド基板における第2の部分の縦断面図である。 図5(a)は、アクチュエータに電界をかけていない状態を示す模式図である。図5(b)は、1つの圧力室の容積を膨張させた状態を示す模式図である。 図6(a)及び(b)は、1つの圧力室の容積を収縮させた状態を示す模式図である。 図7は、ドライバICの第1の構成例を示す図である。 図8(a)は、7つの液滴を連続吐出させる場合の駆動波形の例である。図8(b)は、吐出させる液滴が2つの場合の駆動波形の例である。図8(c)は、連続吐出させる液滴が1つの場合の駆動波形の例である。 図9は、ドライバICの第2の構成例を示す図である。 図10は、第2の吐出パルスの電位差を変化させた場合における液滴の速度のシミュレーション結果を示す図である。 図11は、図10のシミュレーション結果をグラフ化した図である。 図12は、連続して吐出する液滴数に対する吐出速度と吐出体積とのシミュレーション結果を示す図である。 図13は、図12のシミュレーション結果をグラフ化した図である。 図14(a)は、7つの液滴を連続吐出させる場合の駆動波形の例である。図14(b)は、吐出させる液滴が4つの場合の駆動波形の例である。図14(c)は、連続吐出させる液滴が2つの場合の駆動波形の例である。 図15は、第2の吐出パルスのパルス幅を変更した場合における、連続吐出する液滴数に対する吐出速度と吐出体積とのシミュレーション結果を示す図である。 図16は、図15に示すシミュレーション結果をグラフ化した図である。 図17(a)乃至(c)は、それぞれ図14(a)乃至(c)の駆動波形において打消しパルスのパルス幅を小さい値にした駆動波形の例を示す図である。 図18(a)は、ノズルにおいて液滴を吐出した後のメニスカスの盛り上りを示す模式図である。図18(b)は、メニスカスの引き込みが発生している状態を示す模式図である。 図19は、連続吐出する液滴数が7つの駆動波形における打消しパルスのパルス幅を変化させた場合のメニスカス盛り上り量の時間的変化を示す図である。 図20は、液滴を吐出した後におけるメニスカス盛り上り量の最大値と最小値とをまとめた図である。 図21は、連続吐出液滴数と打消しパルスのパルス幅とを変化させた場合のメニスカス盛り上りの最大値の例を示す図である。 図22は、図21に示す値をグラフ化した図である。 図23は、連続吐出液滴数が7である場合における打消しパルスのパルス幅とメニスカス盛り上り最大値との関係を示す図である。 図24は、打消しパルスのパルス幅がAL以上の範囲において、メニスカスの盛り上り量がAL未満での最小値よりも小さくなる範囲を示す図である。 図25は、本実施形態に係るインクジェット記録装置に適用可能なドライバICの第3の構成例を示す図である。 図26(a)乃至(c)は、第3の構成例に係るドライバICが出力可能な駆動波形の例を示す図である。
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェットヘッド駆動装置を含むインクジェット記録装置に用いられるインクジェットヘッド1の斜視図である。
インクジェットヘッド1は、ノズル2、ヘッド基板3、ドライバIC(駆動回路、駆動信号出力部)4、およびマニホールド5を備える。また、マニホールド5は、インク供給口6とインク排出口7とを有する。
ノズル2は、インクを吐出する。ノズル2は、ヘッド基板3上に設ける。ドライバIC4は、ノズル2からインクの液滴を吐出させるための駆動信号を出力する駆動回路である。インク供給口6は、ノズル2にインクを供給する。ノズル2は、ドライバIC4から与えられる駆動信号に応じてインク供給口6から供給されたインクの液滴を吐出する。インク排出口7は、インク供給口6から流入したインクのうちノズル2から吐出しなかったインクを排出する。
図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置(インクジェット方式のプリンタ)に用いられるインク供給装置8の概略図である。
インク供給装置8は、供給側インクタンク9、排出側インクタンク10、供給側圧力調整ポンプ11、輸送ポンプ12、および排出側圧力調整ポンプ13を有する。これらは、インクを流すことができるチューブにより接続する。
供給側圧力調整ポンプ11は、供給側インクタンク9の圧力を調整する。排出側圧力調整ポンプ13は、排出側インクタンク10の圧力を調整する。供給側インクタンク9は、チューブを介して、インクジェットヘッド1のインク供給口6にインクを供給する。排出側インクタンク10は、チューブを介してインクジェットヘッド1のインク排出口7から排出されたインクを一時的に貯留する。輸送ポンプ12は、チューブを介して、排出側インクタンク10に貯留されたインクを供給側インクタンク9に還流させる。
次に、インクジェットヘッド1の構成例について詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係るインクジェット記録装置1に適用可能なヘッド基板3の平面図である。図4(a)は、図3に示すヘッド基板3におけるA2−A2の縦断面図である。図4(b)は、図3に示すヘッド基板3におけるA−Aの縦断面図である。図5(a)及び(b)は、図4(a)及び(b)に示すヘッド基板3におけるB−Bの横断面図である。
ヘッド基板3は、図3に示すように、圧電部材14、ベース基板15、ノズルプレート16、及び、枠部材17で構成する。図4(a)及び(b)に示すように、ベース基板15、圧電部材14及びノズルプレート16で囲まれた中央部の空間は、インク供給路18を形成する。また、ベース基板15、圧電部材14、枠部材17及びノズルプレート16で囲まれた空間は、インク排出路19を形成する。
圧電部材14は、インク供給路18からインク排出路19までに渡る複数の長溝を有する。これらの長溝は、1つおきに圧力室24と空気室201とを形成する。空気室201は、蓋202により形成する。蓋202は、空気室201の両端に設ける。蓋202は、インク供給路18およびインク排出路19のインクが空気室201に流入しない様にする。蓋202は、例えば光硬化樹脂などにより形成する。
ベース基板15には、図3に示すように、配線電極20が形成される。配線電極20は、圧力室24と空気室201との内面に形成された電極21とドライバIC4とを電気的に接続する。また、ベース基板15には、インク供給穴22とインク排出穴23とが形成される。インク供給穴22は、インク供給路18に連通する。インク排出穴23は、インク排出路19に連通する。インク供給穴22は、マニホールド5によりインク供給口6に流体的に接続する。インク排出穴23は、マニホールド5によりインク排出口7に流体的に接続する。ベース基板15は、例えば、誘電率が小さく、かつ圧電部材との熱膨張率の差が小さい材料で構成する。ベース基板15の材料は、アルミナ(Al2O3)、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などを用いることが可能である。本実施形態では、主として、ベース基板15を低誘電率のPZTで構成したインクジェットヘッド1を想定して説明する。
ベース基板15の上には、圧電部材14が接合される。圧電部材14は、図5に示すように、板厚方向に沿って互いに方向が反対向きに分極された圧電部材14aと圧電部材14bを積層することにより形成する。圧電部材14には、インク供給路18からインク排出路19へ繋がる複数の長溝が並列に形成される。圧電部材における各長溝の内面には、電極21が形成される。圧力室24は、長溝と圧電部材14上に設けた長溝を覆うノズルプレート16の一面とで囲まれた空間である。電極21は、配線電極20を通してドライバIC4に接続される。圧力室24の隔壁を構成する圧電部材14は、各圧力室24に設けた電極21によって挟まれ、アクチュエータ25を形成する。
ドライバIC4は、駆動信号によりアクチュエータ25に電界を印加する。アクチュエータ25は、印加される電界によって、圧電部材14aと圧電部材14bとの接合部を頂部として「く」の字型にせん断変形する。アクチュエータ25が変形することにより、圧力室24の容積は変化する。圧力室24の容積が変化すると、圧力室24の内部にあるインクが加圧される。加圧されたインクは、ノズル2から吐出する。圧電部材14は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)などである。本実施形態では、圧電部材14が圧電定数の高いチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で構成されたものを想定する。
電極21は、ニッケル(Ni)と金(Au)との2層構造である。電極21は、例えばメッキ法によって、長溝内に均一に成膜される。また、電極21の形成方法としては、メッキ法以外に、スパッタ法、蒸着法を用いることも可能である。長溝は、例えば、深さ300.0μm幅80.0μmの形状で、169.0μmのピッチで平行に配列する。
長溝は、圧力室24と空気室201となる。圧力室24と空気室201とは、交互に並んだ構成となる。
ノズルプレート16は、圧電部材14の上に接着する。ノズルプレート16には、圧力室24の長手方向の中央部にノズル2が形成される。ノズルプレート16の材質は、ステンレスなどの金属材料、単結晶シリコンなどの無機材料、或いは、ポリイミドフィルムなどの樹脂材料である。なお、本実施形態では、主として、ノズルプレート16の材料がポリイミドフィルムであることを想定する。
ノズル2は、例えば、ノズルプレート16を圧電部材14に接着した後に、エキシマレーザ等で孔加工を施すことにより形成される。ノズル2は、圧力室24側からインク吐出側に向けて先細りの形状である。ノズルプレート16の材質がステンレスの場合、ノズル2はプレス加工で形成できる。また、ノズルプレート16の材質が単結晶シリコンの場合、ノズル2は、フォトリソグラフィーによるドライエッチングやウエットエッチングなどで形成できる。
上述したインクジェットヘッドは、圧力室24の一端にインク供給路18があり、他端にインク排出路19があり、圧力室24の中央部にノズル2がある構成である。ただし、本実施形態に係るインクジェット記録装置に適用可能なインクジェットヘッドは、上述の構成例に限定されるものではない。例えば、本実施形態に係るインクジェットヘッド記録装置は、圧力室24の一端にノズルがあり、他端にインク供給路があるインクジェットヘッドでも適用可能である。
次に、本実施形態に係るインクジェットヘッドの動作原理について説明する。
図5(a)は、配線電極20a〜20gを介して、全ての電極21a〜21gにグラウンド電圧を印加した状態を示す。図5(a)は、全ての電極が同電位であるため、アクチュエータ25a〜25hには電界がかからない。このため、アクチュエータ25a〜25hは変形しない。図5(b)は、電極21dのみに電圧V2を印加した状態を示す。図5(b)に示す状態では、電極21dと両隣の電極21c、21eとの間に電位差が生じる。アクチュエータ25d、25eは、印加される電位差により、圧力室24dの容積を膨張させるように「く」の形に変形する。電極21dの電圧をグラウンド電圧に戻すと、アクチュエータ25d、25eは、図5(b)の状態から図5(a)の状態に戻るため、ノズル2dから液滴が吐出される。
また、図6(a)及び(b)は、図4(a)及び(b)に示すヘッド基板3におけるB−Bの横断面図である。図6(a)及び(b)は、圧力室24dの容積を収縮させた状態を示す。図6(a)及び(b)は、アクチュエータ25d、24eが図5(b)に示す状態とは逆の形状に変形した状態を示す。
図6(a)は、電極21dをグラウンド電圧とし、各空気室201a、201c、201e、201gの電極21a、21c、21e、21gに電圧V2を印加した状態を示す。図6(a)に示す状態では、電極21dと両隣の電極21c、21eとの間には、図5(b)とは逆の電位差が生じる。これらの電位差により、アクチュエータ25d、25eは、図5(b)とは逆向きの「く」の形に変形する。尚、図6(a)は、電極21b、21fにも電圧V2を印加した状態を示す。これにより、アクチュエータ25b、25c、25f、25gは変形しない。アクチュエータ25b、25c、25f、25gが変形しなければ、圧力室24b、24fは収縮しない。
また、図6(b)は、電極21dを電圧-V2とし、その他の電極21a、21b、21c、21e、21f、21gをグラウンド電圧とした状態を示す。図6(b)に示す状態においても、電極21dと両隣の電極21c、21eとの間には、図5(b)とは逆の電位差が生じる。これらの電位差により、アクチュエータ25d、25eは、図5(b)とは逆向きの「く」の形に変形する。
図7は、ドライバIC4の構成例(第1の構成例)を示す図である。
図7に示す構成例において、ドライバIC4は、電圧切替え部31(31a、31b、…、31e)と電圧制御部32とを有する。
ドライバIC4は、電圧源40、電圧源41および電圧源42に接続する。各電圧源40、41、42は、選択的に各配線電極20に電圧を与える。図7に示す例では、電圧源40は、グラウンド電圧とし、電圧値V0(V0=0[V])とする。また、電圧源41は、電圧値V0よりも高い電圧値V1とする。また、電圧源42は、電圧値V1よりも高い電圧値V2とする。
各電圧切替え部31a、31b、…、31eは、それぞれ各配線電極20a、20b、…、20eに接続する。また、各電圧切替え部31は、ドライバIC4の内部に引き込まれた配線を介して、各電圧源40、41、42に接続する。電圧切替え部31は、配線電極20に接続する電圧源を切替える切替えスイッチを有する。例えば、電圧切替え部31aは、切替えスイッチにより、電圧源40、41、42の何れか1つと配線電極20aとを接続する。
電圧制御部32は、各電圧切替え部31a、31b、…、31eにそれぞれ接続する。電圧制御部32は、第1乃至第3電圧源40、41、42のうちどの電圧源を選択するかを示す命令を各電圧切替え部31に出力する。たとえば、電圧制御部32は、ドライバIC4の外部から印刷データを受信し、各電圧切替え部31における電圧源の切替えタイミングを決定する。電圧制御部32は、決定した切換えタイミングで、各電圧切替え部31に電圧源40、41、42の何れかを選択する命令を出力する。これにより、各電圧切替え部31は、電圧制御部32からの命令に沿って各配線電極20と接続する電圧源を切替える。
図8(a)乃至(c)は、電極21に与える駆動波形51(51−7、51−2、51−3)の例を示す図である。
図8(a)乃至(c)は、横軸が時間で、縦軸が電位差である。図8(a)乃至(c)に示す電位差は、両隣の空気室201の内壁の電極につながる配線電極20との電位差である。例えば、駆動波形が図5(a)に示す電極21dに印加されることを想定する。この場合、両隣の空気室は、空気室201c及び201eである。また、両隣の空気室201c及び201eの内壁の電極は、電極21c及び21eであり、電極21c及び21eにつながる配線電極は、配線電極20c及び20eである。すなわち、駆動波形を印加する電極が電極21dである場合、図8(a)乃至(c)に示す電位差は、配線電極20c、20eとの電位差(電極21c、21eとの電位差)を示す。
図8(a)は、7つの液滴を連続吐出させる場合の駆動波形51−7の例を示す。
駆動波形51−7が電極21dに印加される場合、駆動波形51−7の電位差が0の時間では、圧力室24dは、図5(a)に示す状態となり、容積が変化しない。また、電極21dに印加する駆動波形51−7の電位差がV2の時間では、圧力室24dは、図5(b)に示す状態となり、容積が膨張する。さらに、電極21dに印加する駆動波形51−7の電位差が−V2の時間では、圧力室24dは、図6(a)に示す状態となり、容積が収縮する。
なお、図9は、ドライバICの変形例(第2の構成例)である。図9は、電位差−V1を保持することが無い場合のドライバIC4´の構成例を示す。駆動波形において電位差−V1の状態を保持する必要が無ければ、電圧切替え部は、空気室の内壁の電極と電圧値V1の電圧源とを接続する必要がない。図9に示す第2の構成例において、ドライバIC4´は、空気室の内壁の電極と配線電極を介してつながるのが電圧切替え部301a´、301c´、301e´となる。
図8(a)に示す駆動波形51−7は、7つの吐出パルスで構成される。最初の吐出パルスが第1の吐出パルスであり、2つ目以降の吐出パルスが第2の吐出パルスであるものとする。第1の吐出パルスの電圧振幅は、第1の電圧振幅としての電位差V2である。第2の吐出パルスの電圧振幅は、第1の電圧振幅よりも小さい第2の電圧振幅としての電位差V1である。第1の吐出パルスによりインクの液滴が吐出されると、駆動波形が印加される圧力室には、残留圧力振動が生じる。第2の吐出パルスは、それ以前の吐出パルスによる残留圧力振動と次の吐出パルスが強め合うタイミングで吐出パルスを印加する。
さらに、最後の吐出パルスによりインクの液滴を吐出した後にも、圧力室には、残留圧力振動が生じる。最後の吐出パルスによる残留圧力振動は、次の駆動波形による次のインクの吐出に影響する。従って、次の駆動波形によって次のインクの吐出を開始するまでに、残留圧力振動は鎮静化させておく必要がある。例えば、残留圧力振動は、打消しパルス(流入出抑制パルス)を与えることにより打消す。打消しパルス(流入出抑制パルス)は、ノズルと圧力室の液体流入出を抑制する。図8(a)に示す駆動波形51−7において、最後の台形波は、第3の電圧振幅としての電位差−V2を持つ打消しパルスである。打消しパルスは、残留圧力振動を打消すタイミングで印加する。
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、連続吐出させた液滴(駆動波形51−7では7つの液滴)を合体させる事で、対象物に大きな液滴を着弾させる。例えば、駆動波形51−7は、7つの液滴を連続吐出させることにより液滴7つ分のインクを対象物に着弾させる。すなわち、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、駆動波形の第2の吐出パルスの数を変更する事で、対象物に着弾する液滴の大きさを調整する。例えば、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、連続吐出させる液滴の最大数を7つとする。連続吐出させる液滴の最大数が7つであれば、液滴量の階調数は、不吐出(液滴量が「0」)の場合を含めると8階調となる。
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、連続吐出させる液滴を飛翔中に合体させるように制御する。連続吐出させた液滴が飛翔中に合体するためには、連続吐出させる最後の液滴が、最初の液滴以上の吐出速度となる必要がある。本実施形態に係るインクジェット記録装置は、最後の液滴が最初の液滴以上の吐出速度となるように、駆動波形における第1の電圧振幅V2と第2の電圧振幅V1とが設定される。
以下、インクを吐出するための駆動波形における第1及び第2の電圧振幅(電位差V2及びV1)の設定例について説明する。
図8(b)は、吐出させる液滴が2つの場合の駆動波形51−2の例であり、図8(c)は、連続吐出させる液滴が1つの場合の駆動波形51−1の例である。図8(a)乃至(c)は、第1の吐出パルスの電位差(第1の電圧振幅)を25Vと想定し、打消しパルスの電位差(第3の電圧振幅)を−25Vと想定する。第1及び第2の吐出パルスのパルス幅は、基準電位V0から各吐出パルスの電位差にまで波形を立ち上げる時間と立ち上げた電位差を維持する時間との合計である。また、打消しパルスのパルス幅は、基準電位V0から打消しパルスの電位差にまで波形を立ち下げる時間と立ち下げた電位差を維持する時間との合計である。
第2の吐出パルスは、連続吐出するインクの液滴を残留圧力振動のタイミングで吐出させる。圧力室24内のインクの音響共振周期の1/2(半周期)を「AL」とすると、各吐出パルスの間隔は、「AL」に応じて設定される。図8(a)乃至(c)に示す例では、第1の吐出パルスのパルス幅は、1ALであり、各吐出パルスの間隔は各パルス幅の中心間の時間が2ALである。
本実施形態に係るインクジェット記録装置では、第2の吐出パルスによる電位差V1は、第1の吐出パルスによる電位差V2より小さいものとする。ヘッド駆動による電力消費は、各電極に電圧を与える事による電荷の移動で生じる。このため、第2の吐出パルスの電位差V1を第1の吐出パルスの電位差V2より小さくすれば、第2の吐出パルスの電位差V1がV2と同じ場合よりも電力消費は小さくできる。
以下、第2の吐出パルスのパルス幅dpをALとした場合における、第2の吐出パルスの電位差(第2の電圧振幅)V1の設定例について説明する。
以下の説明では、圧力室24のALが約2.2μs、各パルスの立ち上げ時間と立ち下げ時間とが約0.2μs、打消しパルスのパルス幅cpが3.4μsである事を想定する。なお、パルスの立ち上げ及び立ち下げ時間は、アクチュエータをコンデンサに見立てドライバICの内部抵抗や配線抵抗を考慮した場合の回路全体の時定数と相関する時間であり、コンデンサとつながる電圧源が変化した場合、コンデンサ内部の電位差変化に要する充電時間あるいは放電時間を示したものである。
次に、第2の吐出パルスの電位差(第2の電圧振幅)と液滴の速度との関係について説明する。
図10は、第2の吐出パルスの電位差を変化させた場合における液滴の速度のシミュレーション結果を示す。図11は、図10に示すシミュレーション結果をグラフ化したものである。
図10は、数値解析によるシミュレーションの結果を示すものである。図10に示すシミュレーションは、まず、アクチュエータに発生する変位を構造解析で算出する。アクチュエータの変位を受けた後、圧力室内の流体の流れは、圧縮性流体解析で算出する。ノズルから吐出される液滴の挙動は、表面流体解析で算出する。構造解析の範囲は、図4(a)又は(b)に示す上下方向では、圧力室24を形成する圧電部材14とノズルプレート16を含む範囲であり、図4(a)及び(b)における左右方向は、圧電部材14を含む範囲、図3の上下方向(図4の奥行方向)はA線からA2線の範囲となっており、図3の上下方向を法線とする境界面を対称境界としている。
圧縮性流体解析の範囲は、圧力室を含む範囲となっており、インク供給路及びインク排出路と圧力室との境界を自由流入条件とする。圧力室内のノズル近傍の圧力値をノズルの液表面を解析する表面流体解析の入力条件とし、その結果、表面流体解析において圧力室からノズルに流入した液体流量を圧力室におけるノズル近傍での流出流量として圧縮性流体解析に入力する事で連成解析を行う。
図10は、第1の吐出パルスで吐出される第1の液滴と第2の吐出パルスで吐出される第2の液滴との吐出速度を示す。例えば、図10は、1つの第1の吐出パルスと1つの第2の吐出パルスとを有する図8(b)の駆動波形51−2で吐出された液滴の速度を示す。
図10に示すシミュレーション結果によれば、電位差V1が大きくなるにつれ、第1の液滴と第2の液滴との速度差が小さくなる。電位差V1が14V以上の場合、第1の液滴と第2の液滴との速度が同じになっている。これは、第1の液滴と第2の液滴とが合体して1つの液滴になったことを示す。つまり、第1の液滴と第2の液滴とを合体させるには、第1の吐出パネルの電圧振幅V2が25Vの場合、第2の吐出パルスの電圧振幅V1は14V以上とする必要がある。インクジェットヘッドの製造バラツキを考慮すると、電位差V1は、14Vより大きくする事が望ましい。
また、第2の液滴の吐出速度は、電位差V1を大きくすると大きくなるが、第2の吐出パルスのパルス幅dpをALより小さくする(あるいは大きくする)事で減速できる。このため、第2の吐出パルスのパルス幅dpにより第2の液滴の吐出速度が調整できる。また、第2の吐出パルスのパルス幅dpは、製造バラツキに合わせ、圧力室ごとに調整してもよい。例えば、第2の液滴の吐出速度が小さい圧力室は、第2の吐出パルスのパルス幅dpをALに近づけることにより、液滴の吐出速度を大きくできる。また、第2の液滴の吐出速度が大きい圧力室は、第2の吐出パルスのパルス幅dpをALから遠ざけることにより、液滴の吐出速度を小さくできる。
次に、連続して吐出する液滴数に対する吐出速度と吐出体積との関係について説明する。
図12は、連続して吐出する液滴数に対する吐出速度と吐出体積とのシミュレーション結果を示す。図13は、図12に示すシミュレーション結果をグラフ化したものである。なお、図12に示すシミュレーション結果は、第2の吐出パルスのハルス幅を一定として、連続して吐出する液滴数が1から7の場合の吐出速度と吐出体積とを示す。また、図12において、第1の吐出パルスの電位差V2は25V、第2の吐出パルスの電位差V1は16V、第1及び第2の吐出パルスのパルス幅は全てALである。また、打消しパルスは、電位差が−25Vで、パルス幅が3.4μsである。
図12及び図13に示す例において、液滴合体後の吐出速度は、連続して吐出する液滴数が7つの場合が、1つの場合の約1.5倍となる。つまり、第2の吐出パルスのパルス幅を一定とすると、液滴数7滴の場合の合体後の吐出速度は、1滴目の液滴よりも1,5倍の速度となる。これは、パルス幅が一定であれば、連続して吐出する液滴数が多いほど、液滴の速度変化が大きくなる事を示す。また、吐出体積は、液滴数に対し、完全な比例ではなく若干指数関数的な増加となる。これは、液滴の吐出が繰り返されるほど圧力室及びノズル表面に生じる残留振動が大きくなることを示す。この結果として、連続して吐出する液滴のうち後半に吐出する液滴であるほど、吐出速度及び吐出体積に与える影響が大きくなる。
図14(a)乃至(c)は、連続的に打ち出す液滴数に応じて、第2の吐出パルスのパルス幅を変更した駆動波形の例を示す。図14(a)は、7つの液滴を連続吐出させる場合の駆動波形52−7の例を示す。図14(b)は、連続吐出させる液滴が4つの場合の駆動波形52−1の例である。図14(c)は、連続吐出させる液滴が2つの場合の駆動波形51−2の例である。
図15は、第2の吐出パルスのパルス幅を変更した場合、連続して吐出する液滴数に対する吐出速度と吐出体積とのシミュレーション結果を示す。図16は、図15に示すシミュレーション結果をグラフ化したものである。
液滴数が2(2滴目)に対応する第2の吐出パルスのパルス幅は、図15の場合も図12の場合も同じ値(AL=2.2μs)である。このため、図8(b)に示す駆動波形51−2と図14(c)に示す駆動波形52−2とは同じ駆動波形である。また、液滴数が2(2滴目)については、図15の場合も図12の場合も、吐出速度及び吐出体積が同じ値である。
これに対して、図15に示す液滴数が3〜7(3〜7滴目)に対応する第2の吐出パルスのパルス幅は、図12に示すパルス幅(AL=2.2μs)よりも小さい値である。例えば、図15に示す3〜7滴目については、液滴合体後の吐出速度がほぼ一定となる。例えば、図15に示す3〜7滴目の液滴は、吐出速度がほぼ10m/sであり、吐出体積も液滴数に対して比例に近い値とである。図15及び図16によれば、3〜7滴目を吐出するための各第2の吐出パルスのパルス幅を変更することにより、液滴数が3〜7の場合の液滴合体後の吐出速度を一定に近い値に制御できる。
上述したように、連続する液滴の吐出が繰り返されるほど、圧力室及びノズル表面に生じる残留振動が大きくなる。連続吐出させる液滴数に応じて第2の吐出パルスのパルス幅を変える事により、液滴合体後の吐出速度が液滴数によらず一定となるように制御できる。また、連続吐出させる液滴数に応じて第2の吐出パルスのパルス幅を変える事により、吐出体積が液滴数に比例するように制御できる。
上述した例では、第2の吐出パルスの電位差V1が14V以上であれば、最後に吐出させる液滴の吐出速度を最初に吐出させる液滴の速度より大きくする事が可能である。ヘッド駆動における電力消費は、各電極に電圧を与える事による電荷の移動で生じる。本実施形態では、第2の吐出パルスの電位差V1を第1の吐出パルスの電位差V2より小さくすれば、V1とV2とが同じ値の場合と比較して電力消費を小さくする事ができる。
次に、打消しパルスについて説明する。
図17(a)乃至(c)は、それぞれ図14(a)乃至(c)の駆動波形において打消しパルスのパルス幅を小さい値にした駆動波形53−7、53−4、53−2を示す図である。
例えば、図14(a)乃至(c)に示す打消しパルスのパルス幅cpはALより大きい。これに対して、図17(a)乃至(c)に示す各駆動波形53−7、53−4、53−2における打消しパルスは、ALよりもパルス幅が小さい。一般には、打消しパルスのパルス幅を小さくすれば、駆動波形の時間の長さも短くなる。駆動波形の時間の長さが短い方が、駆動波形の繰り返し周期を早くできる。このため、通常、打消しパルスのパルス幅の調整は、ALよりも短い範囲で行われる。
図18(a)は、ノズルにおいて液滴を吐出した後のメニスカスの盛り上りを示す模式図である。図18(a)では、ノズル開口部の直上にある斜線で示した部分の液の体積がメニスカスの盛り上り量であるものとする。図18(b)は、メニスカスの引き込みが発生している状態を示す図である。図18(b)では、斜線で示したノズル内の外気の体積をメニスカス盛り上り量のマイナス値で表わす。
すなわち、メニスカス盛り上り量がマイナス値である場合、その体積に相当する分だけメニスカスの引き込みが発生している事を意味する。メニスカスの盛り上りが大きいまま次の駆動波形を入力すると、次の駆動波形による吐出体積が変化してしまう。このため、次の駆動波形の入力タイミングは、メニスカスの盛り上り量に配慮して決定する必要がある。
図19は、連続吐出する液滴数が7つの駆動波形における打消しパルスのパルス幅を変化させた場合のメニスカス盛り上り量の時間的変化を示す図である。
図19は、横軸が時間であり、縦軸がメニスカス盛り上り量である。縦軸は、例えば、ノズルプレート表面から吐出方向の50μm以内に存在する液体量の値であるものとする。また、マイナス値は、上述したように、メニスカスの盛り上りの逆の現象として、メニスカスの引き込みによりノズル内に引き込まれる外気の体積を示すものである。図19は、打消しパルスのパルス幅cpが1.4μs、2.8μsおよび3.4μsの3種類である場合を示す。ALは、2.2μsであることを想定している。このため、1.4μsはALよりも小さい値であり、2.8μsおよび3.4μsはALよりも大きい値である。
また、駆動波形により吐出した7つの液滴は、駆動波形入力の35μs後にはノズルプレート表面より50μmの範囲からは出ている。このため、図19は、35μs以後における縦軸の値が液滴を吐出した後のメニスカス盛り上り量を示す。図19に示す例では、打消しパルスのパルス幅が1.4μsである場合、メニスカス盛り上り量は、42.5μsの時点で最大となり、70μsの時点で最小となる。打消しパルスのパルス幅が1.4μsである場合、打消しパルスのパルス幅がALより大きい他の2つの場合と比べ、メニスカス盛り上りの増減が大きい。
図20は、液滴を吐出した後におけるメニスカス盛り上り量の最大値と最小値とをまとめた図である。
図20は、3種類のパルス幅の打消しパルスについて、メニスカス盛り上り量の最大値と最小値とを示す。例えば、打消しパルスのパルス幅が1.4μsである場合、メニスカス盛り上り最大値は1.73、最小値は−0.99、増減は2.72である。これに対して、打消しパルスのパルス幅が2.8μsである場合、メニスカス盛り上り最大値は1.45、最小値は−0.77、増減は2.22である。打消しパルスのパルス幅が3.4μsである場合、メニスカス盛り上り最大値は1.58、最小値は−0.57、増減は2.15である。
図20によれば、打消しパルスのパルス幅がALよりも小さい値である場合、打消しパルスのパルス幅がALより大きい値の場合よりも、メニスカス盛り上りの増減が大きい。つまり、打消しパルスのパルス幅をALよりも大きい値に設定すれば、メニスカス盛り上りの増減を抑制できる。
次に、インクジェットヘッドにおける各ノズルに製造上のバラツキがある場合を想定する。
メニスカス盛り上りの増減が大きい駆動信号である場合、製造バラツキによるメニスカス挙動のバラツキも大きくなる。このため、打消しパルスのパルス幅は、各ノズルごとに調整する必要がある。しかし、本実施形態に係るインクジェットヘッド駆動装置は、打消しパルスにより、圧力室に隣接する両サイドの空気室にV2の電圧を与える。両サイドの空気室は、該当ノズルの両隣のノズルの圧力室とも隣接する。このため、各ノズルごとの打消しパルスの時間調整には制約がある。
例えば、図6(a)では、電極21dに−V2の電位差を与えるため隣接する電極21cと21eに電圧V2を与える。ここで、図6(a)において、電極21dの電位差を−V2にしたまま、電極21bに与える電位差について考える。まず、電極21bにV2の電圧を与えれば、電極21bの周囲電極との電位差は0となる。次に、電極21bの周囲電極との電位差を−V2にする(電極21bに打消しパルスを入力する)には、電極21bに0電圧を与えればよい。しかし、電極21bの周囲電極との電位差をV2にする(電極21bに第1の吐出パルスを入力する)には、電極21bにV2の2倍の電圧を与える必要がある。これは、V2の2倍の電圧値をもつ新たな電圧源が必要になることを意味する。
また、図7に示す構成のドライバIC4は、同一の瞬間において隣接するノズルの一方に電位差−V2を与え、他方に電位差V2を与える動作ができない。このように各ノズルごとの打消しパルスの時間調整には制約がある。従って、本実施形態に係るインクジェットヘッド駆動装置は、打消しパルスの各ノズルでの個別調整が必要なく、液滴吐出後のメニスカス盛り上りの増減が小さい事が要求される。
図21は、連続吐出液滴数と打消しパルスのパルス幅とを変化させた場合のメニスカス盛り上りの最大値の例を示す図である。図22は、図21に示す値をグラフ化したものである。図21及び図22は、連続吐出液滴数ごとに、駆動波形の打消しパルスのパルス幅を8μsから38μsまでの種々の値とした場合のメニスカス盛り上りの最大値の変化を示す。
なお、図21及び図22は、ALが2.2μs、パルス間隔が4.4μs、第1の吐出パルスの電位差(第1の電圧振幅)が25[v]、第2の吐出パルスの電位差(第2の電圧振幅が16[v]であるものとする。また連続吐出液滴数ごとの第2の吐出パルスのパルス幅は、図15と同様とする。図21及び図22によれば、連続吐出する液滴数にかからず、メニスカス盛り上り量が最も小さくなる打消しパルスの波形におけるパルス幅はAL以上の値である。
図23は、連続吐出液滴数が7である場合における打消しパルスのパルス幅とメニスカス盛り上り最大値との関係を示す図である。図23では、打消しパルスのパルス幅がAL以上の範囲において、メニスカスの盛り上り量がAL未満での最小値よりも小さくなる範囲を示す。また、図24は、打消しパルスのパルス幅がAL以上の範囲において、メニスカスの盛り上り量がAL未満での最小値よりも小さくなる範囲をまとめた図である。すなわち、打消しパルスのパルス幅をAL以上の値とすれば、液滴吐出後におけるメニスカスの盛り上り量を小さくできる。
上記のように、打消しパルスのパルス幅をAL以上の値とすることにより、液滴を吐出した後におけるメニスカスの盛り上り量を小さくすることができる。インクジェットヘッド駆動装置は、液滴を吐出した後のメニスカスの盛り上り量を小さくすることにより、印字品質を向上できる。
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。
図25は、上述した実施形態の変形例に係るインクジェット記録装置に適用可能なドライバICの構成例(ドライバICの第3の構成例)を示す図である。
図25に示すように、ドライバIC4´´は、4種類の電圧源(第1電圧源40、第2電圧源41、第3電圧源42、第4電圧源43)に接続される。第4電圧源43の電圧値は−V2であり、打消しパルスに用いる第3の電圧振幅を提供する。電圧切替え部31b´´、31d´´は、電圧制御部32´´の制御により第1乃至4電圧源40,41,42,43の何れかと配線電極20b、20dを接続する。配線電極20b、20dは、圧力室の内壁の電極21b、21dと接続する。一方、空気室の内壁の電極21a、21c、21eは、配線電極20a、20c、20eを介して第1電圧源40と接続する。
なお、図25においては、空気室内壁の電極とつながる配線電極はドライバIC4´´の内部で第1電圧源40と接続しているが、空気室内壁の電極とつながる配線電極の配線引きまわしを変更しドライバICの外部で第1電圧源40と接続させてもよい。この場合、ドライバICと接続する配線電極は圧力室内壁の電極とつながっているもののみとなる。
例えば、ドライバIC4´´は、図6(b)に示すノズル2dに打消しパルスを入力する場合、図6(b)に示すように電極21dに−V2の電圧をかければよい。すなわち、ドライバIC4´´は、吐出パルスだけでなく打消しパルスのパルス幅も各ノズルごとに調整する事が容易となる。ドライバIC4´´は、打消しパルスをノズルごとに調整できるため、連続吐出する液滴数が最大数より少ない場合に、第1の吐出パルスの開始時間を前倒しする事ができる。
例えば、図26(a)乃至(c)は、ドライバIC4´´が出力可能な駆動波形54−7、54−4、54−2の例を示す図である。図26(a)は、連続吐出する液滴数が最大数としての「7」である場合の駆動波形54−7の例を示す。図26(b)は、連続吐出する液滴数が最大数より少ない「4」である場合の駆動波形54−4の例を示す。図26(c)は、連続吐出する液滴数が最大数より少ない「2」である場合の駆動波形54−2の例を示す。
図26(b)又は(c)に示すように、ドライバIC4´´は、連続吐出する液滴数が最大数より少ない場合、第1の吐出パルスの開始時間を前倒しできる。第1の吐出パルスの開始時間を前倒しすることで、打消しパルスの入力後の次の駆動波形入力までの時間を長くすることができる。例えば、図21及び図22では、連続吐出する液滴の数が3の場合にメニスカス盛り上り量が最も大きい。ドライバIC4´´は、連続吐出する液滴数が「3」であれば、最大「7−3=4」パルス分の時間だけ、第1の吐出パルスの開始時間を前倒しできる。
すなわち、打消しパルス後の次の駆動波形入力までの時間が長くなればなるほど、時間経過によってメニスカス盛り上りが鎮静化される。メニスカス盛り上りが鎮静化されれば、次の液滴吐出における吐出体積への影響を小さくする事が出来きる。この結果、インクジェット記録装置としては、印字品質を向上できる。
上述した各実施形態に係るインクジェットヘッド駆動装置は、以下のようにまとめられる。
(1)
インクジェット駆動装置は、液体を収容する圧力室と、この圧力室に連通し、この圧力室の液体を吐出するノズルと、前記圧力室の容積を拡張、または収縮させるアクチュエータと、前記圧力室の容積を拡張又は収縮させて液体を吐出させる吐出パルスを含む駆動信号を前記アクチュエータに出力する駆動信号出力部と、を具備する。前記インクジェットヘッド駆動装置は、前記駆動信号における吐出パルスの繰り返し回数で吐出液滴量を変化させるものであって、前記駆動信号出力部が出力する駆動信号の吐出パルスは、電圧振幅の値が少なくとも2種類あり、吐出パルスの繰り返し回数が3回以上の場合に、前記駆動信号に含まれる最初の吐出パルスの電圧振幅と比較し、それ以降の吐出パルスは電圧振幅が小さい値であり、また2回目以降の吐出パルスの電圧振幅が同一である。
(2)
前記(1)のインクジェットヘッド駆動装置において、前記駆動信号出力部は、異なる電圧値をもつ少なくとも3種類の電圧源と接続し、前記アクチュエータと接続する電圧源を切り替える事でアクチュエータに出力する吐出パルスの電圧振幅の値を変化させる。
(3)
前記(1)又は(2)に記載のインクジェットヘッド駆動装置において、前記圧力室内のインクの主音響共振周波数における周期の1/2の時間をALとした場合に、前記駆動波形に含まれる最初の吐出パルスのパルス幅は略ALであり、2回目以降の吐出パルスのパルス幅は略AL以下となる。
(4)
前記(3)に記載のインクジェットヘッド駆動装置において、前記駆動波形に含まれる各吐出パルスのパルス幅中心の間隔が前記ALの略2倍となる。
(5)
前記(3)又は(4)に記載のインクジェットヘッド駆動装置において、前記2回目以降の吐出パルスの電圧振幅は、前記駆動波形に含まれる全ての吐出パルスの幅を略ALとし各吐出パルスのパルス幅中心の間隔が前記ALの略2倍とした場合に、最後の吐出パルスで吐出された液滴の速度が最初の吐出パルスで吐出された液滴の速度以上となる電圧振幅である。
(6)
前記(1)乃至(5)に記載のインクジェットヘッド駆動装置において、前記駆動波形には、吐出パルスの繰り返しの後に、ノズルと圧力室の液体流入出を抑制する流入出抑制パルスが含まれる。
(7)
前記(6)に記載のインクジェットヘッド駆動装置において、前記流入出抑制パルスの電圧振幅は、前記(1)に記載の2種類の電圧振幅とは異なる値である。
(8)
前記(6)に記載のインクジェットヘッド駆動装置において、前記流入出抑制パルスのパルス幅は前記AL以上である。
上記のような本実施形態に係るインクジェットヘッド駆動装置によれば、装置規模の拡大を最小限にとどめながら、消費電力を小さくできる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…インクジェットヘッド、2(2b、2d、2f)…ノズル、3…ヘッド基板、4、4´、4´´…ドライバIC(駆動回路、駆動信号出力部)、14(14a、14b)…圧電部材、24(24b、24d、24f)…圧力室、25(25a、25b、25c、25d、25e、25f、25g、25h)…アクチュエータ、31(31a、31b、31c、31d、31e、31a´、31b´、31c´、31d´、31e´、31b´´、31d´´)…電圧切替え部、32、32´、32´´…電圧制御部、40…第1電圧源、41…第2電圧源、42…第3電圧源、43…第4電圧源、201(201a、201c、201e、201f)…空気室。

Claims (5)

  1. 液体を収容する圧力室と、
    前記圧力室の容積を印加される電圧により拡張又は収縮させるアクチュエータと、
    前記圧力室に連通し、前記圧力室の容積変化によって液体を吐出するノズルと、
    前記ノズルから液体を吐出させる吐出パルスの繰り返し回数が3回以上の場合に、第1の電圧振幅を有する最初の吐出パルスと、前記第1の電圧振幅よりも小さい第2の電圧振幅を有する2回目以降の吐出パルスと、を含む駆動波形の駆動信号を前記アクチュエータに出力する駆動信号出力部と、
    を有するインクジェットヘッド駆動装置。
  2. 前記駆動信号出力部は、異なる電圧値をもつ少なくとも3種類の電圧源と接続し、前記アクチュエータと接続する電圧源を切り替える事でアクチュエータに出力する吐出パルスの電圧振幅の値を変化させる、
    請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動装置。
  3. 前記駆動信号出力部は、前記最初の吐出パルスのパルス幅を前記圧力室内のインクの主音響共振周波数における周期の1/2の時間とし、前記2回目以降の吐出パルスのパルス幅を前記主音響共振周波数における周期の1/2の時間以下とし、前記駆動波形における各吐出パルスのパルス幅中心の間隔が前記主音響共振周波数の周期とする、
    請求項1又は2の何れかに記載のインクジェットヘッド駆動装置。
  4. 前記第2の電圧振幅は、最後の吐出パルスで吐出された液滴の速度が最初の吐出パルスで吐出された液滴の速度以上となる電圧振幅である、
    請求項1乃至3の何れか1項に記載のインクジェットヘッド駆動装置。
  5. 前記駆動信号出力部は、吐出パルスの繰り返しの後に、ノズルと圧力室の液体流入出を抑制する流入出抑制パルスを含む駆動波形を生成する、
    前記請求項1乃至4の何れか1項に記載のインクジェットヘッド駆動装置。
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