以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を併せて用いて、第1実施形態に係るオイルポンプの吐出量切替装置1の構成について説明する。オイルポンプの吐出量切替装置1は、自動変速機等に用いられるオイルポンプ10から吐出されるオイルの流量を切替えて制御するものである。なお、ここでは、本発明を無段変速機(CVT)110に適用した場合を例にして説明する。図1は、オイルポンプの吐出量切替装置1が適用される無段変速機110の構成を示す図である。図2は、オイルポンプの吐出量切替装置1の構成を示す図である。
無段変速機110は、例えば、トルクコンバータ(図示省略)を介して、エンジン(図示省略)のクランク軸に接続され、エンジンからの駆動力を変換して出力する。無段変速機110は、トルクコンバータの出力軸と接続されるプライマリ軸(入力軸)120と、該プライマリ軸120と平行に配設されたセカンダリ軸(出力軸)130とを有している。
プライマリ軸120には、プライマリプーリ121が設けられている。プライマリプーリ121は、プライマリ軸120に接合された固定プーリ121aと、該固定プーリ121aに対向して、プライマリ軸120の軸方向に摺動自在でかつ相対回転不能に装着された可動プーリ(シーブ)121bとを有し、それぞれのプーリ121a,121bのコーン面間隔、すなわちプーリ溝幅を変更できるように構成されている。一方、セカンダリ軸130には、セカンダリプーリ131が設けられている。セカンダリプーリ131は、セカンダリ軸130に接合された固定プーリ131aと、該固定プーリ131aに対向して、セカンダリ軸130の軸方向に摺動自在でかつ相対回転不能に装着された可動プーリ(シーブ)131bとを有し、プーリ溝幅を変更できるように構成されている。
プライマリプーリ121とセカンダリプーリ131との間には駆動力を伝達するチェーン140が掛け渡されている。プライマリプーリ121及びセカンダリプーリ131の溝幅を変化させて、各プーリ121,131に対するチェーン140の巻き付け径の比率(プーリ比)を変化させることにより、変速比が無段階に変更される。なお、チェーン140のプライマリプーリ121に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ131に対する巻き付け径をRsとすると、変速比iは、i=Rs/Rpで表される。また、変速速度は、di/dtで表される。
ここで、プライマリプーリ121(可動プーリ121b)にはプライマリ駆動油室(油圧シリンダ室)122が形成されている。一方、セカンダリプーリ131(可動プーリ131b)にはセカンダリ駆動油室(油圧シリンダ室)132が形成されている。プライマリプーリ121、セカンダリプーリ131それぞれの溝幅は、プライマリ駆動油室122に導入されるプライマリ油圧と、セカンダリ駆動油室132に導入されるセカンダリ油圧とを調節することにより設定・変更される。
無段変速機110を変速させるための油圧、すなわち、上述したプライマリ油圧及びセカンダリ油圧は、コントロールバルブ(C/V)機構160が組み込まれたバルブボディによってコントロールされる。コントロールバルブ機構160は、複数のスプールバルブと該スプールバルブを動かすソレノイドバルブ(電磁弁)を用いてコントロールバルブ機構160内に形成された油路を開閉することで、オイルポンプ10から吐出された油圧(ライン圧)を調圧して、上述した無段変速機110のプライマリ駆動油室122及びセカンダリ駆動油室132に供給する。また、コントロールバルブ機構160は、例えば車両の前進/後進を切替える前後進切替機構等の各油圧機構170にも調圧した油圧(作動油圧や潤滑油圧等)を供給する。
無段変速機110の変速制御は、トランスミッション制御装置(以下「TCU」ともいう)150によって実行される。すなわち、TCU150は、上述したコントロールバルブ機構160を構成するソレノイドバルブ(電磁弁)の駆動を制御することにより、プライマリプーリ121のプライマリ駆動油室122及びセカンダリプーリ131のセカンダリ駆動油室132に供給する油圧を調節して、無段変速機110の変速比を変更する。
オイルポンプ10は、オイルパン150に貯留されているオイル(ATF)を、第1吸入油路80A、及び2つの吸入口(第1吸入口106A及び第2吸入口106B)を通して吸入し、昇圧して2つの吐出口(第1吐出口107A及び第2吐出口107B)から吐出する。本実施形態では、オイルポンプ10として、2つの吐出口(第1吐出口107A及び第2吐出口107B)を有する2ポート型のベーンポンプを用いた。
オイルポンプ10は、いわゆる平衡型ベーンポンプであり、断面が略楕円形の内周面を有するカムリング101と、カムリング101の内部に配置され、エンジンの駆動力によって駆動されるロータ102と、ロータ102を回転自在に支持するポンプ軸103と、ロータ102の周囲に形成された溝に組み込まれた複数のベーン104とを有して構成されている。
複数のベーン104それぞれはロータ102の径方向に移動可能とされており、ロータ102が回転すると、ロータ102の溝に組み込まれたベーン104が遠心力で飛び出し、その先端がカムリング101の内周面に接触した状態で偏心したカムリング101の内側面に沿って回転する。このとき、カムリング101とロータ102とベーン104とで画成される油室105の容積が変化して吸入・吐出動作が行われる。
すなわち、ロータ102の回転により、第1吸入油路80Aを通して第1吸入口106Aから吸入されたオイルは、昇圧されて第1吐出口107Aから第1ライン油路70Aに吐出される。同様に、第1吸入油路80Aを通して第2吸入口106Bから吸入されたオイルは、昇圧されて第2吐出口107Bから第2ライン油路70Bに吐出される。
上述したように、オイルポンプ10の第1吐出口107Aには、第1ライン圧油路(特許請求の範囲に記載の高圧油路に相当)70Aが接続されている。また、第2吐出口107Bには、第2ライン圧油路70Bが接続されている。第2ライン圧油路70Bは、切替制御バルブ60を介して、第1ライン圧油路70Aと連通されるように構成されている(詳細は後述する)。第1ライン圧油路70Aには、オイルポンプ10から吐出されるオイルの油圧(吐出圧)を無段変速機110に要求される油圧(ライン圧)に調圧するためのライン圧コントロールバルブ(レギュレータバルブ)30が設けられている。
ライン圧コントロールバルブ30は、後述するライン圧リニアソレノイド20と連通する第1制御圧油路91、第1ライン圧油路70A、及び、オイルを排出するドレン油路93と接続されている。ライン圧コントロールバルブ30は、その内部に、スプール31を軸方向に摺動自在に収容している。このスプール31の端部にはスプリング32が配設されており、ライン圧リニアソレノイド20により生成されたライン圧制御圧(特許請求の範囲に記載の制御油圧に相当、詳細は後述する)による押力(ライン圧制御圧×受圧面積)と、スプリング32のバネ力(付勢力)と、ライン圧による押力(ライン圧×受圧面積)とのバランスに応じてスプール31が軸方向に駆動されることにより、ライン圧油路70Aからドレン油路93に排出されるオイルの量が調節され、ライン圧の調圧が行われる。
すなわち、ライン圧コントロールバルブ30は、実ライン圧による押力がライン圧制御圧による押力よりも大きい場合に、第1ライン圧油路70Aとドレン油路93とを連通して、第1ライン圧油路70Aのオイルをドレン油路93を通して排出することにより、実ライン圧とライン圧制御圧とが一致するようにライン圧を調節する。一方、ライン圧コントロールバルブ30は、実ライン圧による押力がライン圧制御圧による押力よりも小さい場合には、第1ライン圧油路70Aとドレン油路93とを連通を遮断し、第1ライン圧油路70Aからのオイルの排出を停止する。
ライン圧リニアソレノイド20は、無段変速機110に要求されるライン圧に基づいてTCU150から印加される電流値に応じてバルブを軸方向に変位させるリニアソレノイド21を有しており、該リニアソレノイド21に印加される電流に応じて、パイロット圧油路90からの供給圧(パイロット圧)とドレンとのバランスを調節することにより、ライン圧制御圧を調圧する(図3参照)。調圧されたライン圧制御圧が第1制御圧油路91を通してライン圧コントロールバルブ30に供給されることにより、上述したように、ライン圧コントロールバルブ30が駆動制御される。ここで、図3に示されるように、ライン圧リニアソレノイド20に印加される電流値が増大するほど、ライン圧制御圧(破線参照)がリニアに増大し、それに伴い、実ライン圧(実線参照)もリニアに増大する。
オイルポンプ10の第2吐出口107Bは、第2ライン圧油路70B、切替制御バルブ60を介して、第1ライン圧油路70Aに連通される。また、オイルポンプ10の第2吐出口107Bは、第2ライン圧油路70B、切替制御バルブ60、第2吸入油路80B(特許請求の範囲に記載の低圧油路に相当)を介して、第1吸入油路80Aに連通されている。
切替制御バルブ60は、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧(実油圧)による押力と、該ライン圧を調節するためのライン圧制御圧(制御油圧)による押力と、後述するスイッチ圧ソレノイド50により生成されたスイッチ油圧による押力との押力差に基づいて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先を、第1ライン圧油路70A(高圧油路)と、オイルポンプの第2吸入口106Bに連通する第2吸入油路80B(低圧油路)との間で切替える。すなわち、切替制御バルブ60は、特許請求の範囲に記載の吐出状態切替手段として機能する。
より詳細には、切替制御バルブ60は、ライン圧リニアソレノイド20と連通する第1制御圧油路91、スイッチ圧ソレノイド50と連通する第2制御圧油路(スイッチ圧油路)92、第1ライン圧油路70A、第2吐出口107Bと連通する第2ライン圧油路70B、及び、第1吸入油路80A(第1,第2吸入口106A,106B)と連通する第2吸入油路80Bと接続されている。切替制御バルブ60は、その内部に、スプール61を軸方向に摺動自在に収容している。このスプール61の一方の端部にはスプリング62が配設されており、実ライン圧PLによる押力FPL(=実ライン圧PL×受圧面積APL)と、ライン圧リニアソレノイド20により生成されたライン圧制御圧による押力FPLCONT(=ライン圧制御圧PLCONT×受圧面積APLCONT)と、スプリング62のバネ力(付勢力)Fspring(=K×X(バネ潰れ代))と、スイッチ圧ソレノイド50により生成されたスイッチ油圧PSWによる押力FSW(スイッチ油圧PSW×受圧面積ASW)とのバランスに応じてスプール61が軸方向に駆動されることにより、第2ライン圧油路70Bに連通する油路が、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。なお、スプール61の実ライン圧PLの受圧面積APLは、ライン圧制御圧PLCONTの受圧面積APLCONTよりも小さく設定されている。
より具体的には、切替制御バルブ60は、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力とスイッチ油圧による押力との合力がライン圧制御圧による押力よりも大きい場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bとなるように切替える。一方、切替制御バルブ60は、第1ライン圧70Aの実ライン圧による押力とバネ力とスイッチ油圧による押力との合力がライン圧制御圧による押力未満の場合には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aとなるように切替える。
そのため、切替制御バルブ60は、後述するスイッチ圧ソレノイド50からスイッチ油圧(例えば、上記合力がライン圧制御圧による押力よりも大きくなるようなスイッチ油圧)が供給された場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bとなるように油路(回路)を固定(半吐出状態に固定)する。一方、切替制御バルブ60は、例えば、スイッチ圧ソレノイド50からスイッチ油圧が供給されない場合(スイッチ油圧がゼロの場合)には、上述したように、実ライン圧による押力とライン圧制御圧による押力とバネ力とのバランスに応じて、第2ライン圧油路70Bに連通する油路を、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替える。
スイッチ圧ソレノイド50は、無段変速機110の運転状態に基づいて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先を、オイルポンプ10の吸入口106A,106Bに連通する第2吸入油路80Bに固定(すなわち半吐出状態に固定)するか、固定しないかを切替えるスイッチ油圧を生成する。スイッチ圧ソレノイド50には、上述したパイロット圧油路90、及び第2制御圧油路(スイッチ圧油路)92が接続されている。スイッチ圧ソレノイド50が開弁されることにより、パイロット圧油路90からの供給圧(パイロット圧)が、第2制御圧油路92を通して、切替制御バルブ60の一方(スプリング62が配設されている側)の端部にスイッチ油圧として供給される。一方、スイッチ圧ソレノイド50が閉弁されることにより、上記スイッチ油圧の供給が停止される。なお、その際に、第2制御圧油路92内のオイルがドレンされ、スイッチ油圧はゼロとされる。
スイッチ圧ソレノイド50としては、例えば、電圧が印加されることにより開弁し、電圧の印加が停止されることにより閉弁するオン・オフソレノイドが好適に用いられる。なお、電圧の印加/停止と開弁/閉弁との関係は逆(ノーマリ・オープン)であってもよい。スイッチ圧ソレノイド50の開弁/閉弁はTCU150によって制御される。すなわち、スイッチ圧ソレノイド50及びTCU150は、特許請求の範囲に記載のスイッチ油圧生成手段として機能する。
TCU150は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。
TCU150には、例えば、シフトレバーの選択位置を検出するレンジスイッチ151、及び無段変速機110のオイルの温度(油温)を検出する油温センサ152等を含む各種センサが接続されている。また、TCU150は、CAN(Controller Area Network)を介して、エンジンを総合的に制御するECUから、例えば、アクセルペダル開度や、エンジン回転数等の情報を受信する。
TCU150は、上述した各種センサ等から取得した各種情報に基づいて、スイッチ圧ソレノイド50や、上述したライン圧リニアソレノイド20等の駆動を制御する。また、TCU150は、変速マップに従い、車両の運転状態(例えばアクセルペダル開度及び車速等)に応じて自動で変速比を無段階に変速する。なお、変速マップはTCU150内のROMに格納されている。
より具体的には、TCU150は、例えば、オイルの温度(油温)が所定温度未満の場合(例えば極低温の場合)に、スイッチ圧ソレノイド50を開弁する。すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定(半吐出状態に固定)されるようにスイッチ油圧を生成する。
同様に、TCU150は、オイルポンプ10の回転数が所定回転数以上の場合(高回転時)に、スイッチ圧ソレノイド50を開弁する。すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定(半吐出状態に固定)されるようにスイッチ油圧を生成する。なお、オイルポンプ10の回転数は、例えば、エンジン回転数から算出することができる。
また、TCU150は、無段変速機110が搭載された車両が定常走行している場合(例えば、アクセルペダルの踏込み量の変化が所定値以下であり、変速比が略一定で大きく変化しない場合)に、スイッチ圧ソレノイド50を開弁する。すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定(半吐出状態に固定)されるようにスイッチ油圧を生成する。
上述した運転状態以外の場合には、TCU150は、スイッチ圧ソレノイド50を閉弁する(スイッチ油圧をゼロとする)。そのため、上述したように、実ライン圧による押力とライン圧制御圧による押力とバネ力とのバランスに応じて、第2ライン圧油路70Bに連通する油路が、第1ライン圧油路70A(全吐出状態)と第2吸入油路80B(半吐出状態)との間で切替えられる。
次に、図4を参照しつつ、オイルポンプの吐出量切替装置1の動作について説明する。図4は、オイルポンプの吐出量切替装置1(TCU150)による吐出量切替処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、TCU150において、所定時間毎(例えば10ms毎)に繰り返して実行される。
ステップS100では、無段変速機110の油温が所定温度未満(例えば極低温)であるか否かについての判断が行われる。ここで、油温が所定温度未満の場合には、ステップS108において、スイッチ圧ソレノイド50が開弁され(「FPL+Fspring+FSW>FPLCONT」となり)、オイルポンプ10の吐出状態が半吐出状態に固定される(ステップS110)。その後、本処理から一旦抜ける。一方、油温が所定温度以上のときには、ステップS102に処理が移行する。
ステップS102では、オイルポンプ10の回転数が所定回転数以上(高回転)であるか否かについての判断が行われる。ここで、ポンプ回転数が所定回転数以上の場合には、ステップS108において、スイッチ圧ソレノイド50が開弁され、オイルポンプ10の吐出状態が半吐出状態に固定される(ステップS110)。その後、本処理から一旦抜ける。一方、ポンプ回転数が所定回転数未満のときには、ステップS104に処理が移行する。
ステップS104では、定常走行状態であるか否か(例えば、アクセルペダルの踏込み量の変化が所定値以下であり、変速比が略一定で大きく変化していないか否か)についての判断が行われる。ここで、定常走行状態の場合には、ステップS108において、スイッチ圧ソレノイド50が開弁され、オイルポンプ10の吐出状態が半吐出状態に固定される(ステップS110)。その後、本処理から一旦抜ける。一方、定常走行状態でないときには、ステップS112に処理が移行する。
ステップS112では、スイッチ圧ソレノイド50が閉弁され、切替制御バルブ60に供給されるスイッチ油圧がゼロになる。そのため、切替制御バルブ60のスプール61に作用する力、すなわち、実ライン圧PLによる押力FPLと、バネ力(付勢力)Fspringと、実ライン圧制御圧PLCONTによる押力FPLCONTとのバランスが「FPL+Fspring>FPLCONT」となった場合(ステップS114)には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとが連通される。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが、第2ライン圧油路70B、第2吸入油路80B、第1吸入油路80Aを通して、オイルポンプ10の第1,第2吸入口106A,106Bに戻される。その結果、オイルポンプ10は、第1吐出口107Aのみから第1ライン圧70Aにオイルが供給される半吐出(部分吐出)運転状態となる(ステップS110)。
一方、切替制御バルブ60のスプール61に作用する力のバランスが「FPL+Fspring<FPLCONT」となった場合には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとが連通される。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが第1吐出口107Aから吐出されたオイルと合流して供給される。その結果、オイルポンプ10は、第1吐出口107A及び第2吐出口107Bからオイルが供給される全吐出状態に切替えられる(ステップS116)。
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力とスイッチ油圧による押力との合力と、該ライン圧の制御圧であるライン圧制御圧による押力との押力差に応じて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。よって、無段変速機110の運転状態に応じてスイッチ油圧を供給することにより半吐出状態に固定することができる。一方、スイッチ油圧の供給を停止した場合(ゼロにした場合)には、半吐出状態に固定されることなく、第1ライン油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力とライン圧制御圧による押力との押力差に応じて、全吐出状態と半吐出状態とを切替えることができる。よって、その場合、従来のように、部品ばらつきや制御遅れ等を考慮したマージンを持ってシフトソレノイドバルブの駆動制御を行う必要がない。その結果、運転状態によっては全吐出状態又は部分吐出状態に固定することを可能としつつ、部分吐出状態の運転領域を拡大して、オイルポンプ10の負荷をより軽減することができ、燃料消費率(燃費)をより低減することが可能となる。
また、本実施形態によれば、オイルの温度(油温)が所定温度未満の場合に、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定される。よって、例えば、極低温時に半吐出状態に固定することができる。そのため、キャビテーションの発生を防止して、騒振(騒音・振動)性能及び信頼性を向上させることができる。
同様に、本実施形態によれば、オイルポンプ10の回転数が所定回転数以上の場合に、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定される。よって、例えば、オイルポンプ10の回転数が高いときに半吐出状態に固定することができる。そのため、キャビテーションの発生を防止して、騒振(騒音・振動)性能及び信頼性を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、定常走行状態のときに、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定される。よって、全吐出状態と部分吐出状態との切替による油圧脈動の発生を防止して、信頼性の向上を図ることができる。
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、無段変速機110の運転状態に応じてオイルポンプ10の吐出状態を半吐出状態に固定可能としたが、全吐出状態に固定可能とする構成としてもよい。
そこで、次に、図5を用いて、第2実施形態に係るオイルポンプの吐出量切替装置2の構成について説明する。図5は、オイルポンプの吐出量切替装置2の構成を示す図である。なお、図5において上記第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
本実施形態は、切替制御バルブ60に代えて、切替制御バルブ60Bが用いられている点で、上述した第1実施形態と異なっている。また、第2制御圧油路(スイッチ圧油路)92が、切替制御バルブ60Bの他方(スプリング62と反対側)の端部に接続されている点で、上述した第1実施形態と異なっている。その他の構成は、上述した第1実施形態と同一または同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
切替制御バルブ60Bは、ライン圧リニアソレノイド20と連通する第1制御圧油路91、スイッチ圧ソレノイド50と連通する第2制御圧油路92、第1ライン圧油路70A、第2吐出口107Bと連通する第2ライン圧油路70B、及び、第1吸入油路80A(第1,第2吸入口106A,106B)と連通する第2吸入油路80Bと接続されている。切替制御バルブ60Bは、その内部に、スプール61Bを軸方向に摺動自在に収容している。このスプール61Bの一方の端部にはスプリング62が配設されており、実ライン圧による押力FPL(=実ライン圧PL×受圧面積APL)と、ライン圧リニアソレノイド20により生成されたライン圧制御圧による押力FPLCONT(=実ライン圧制御圧PLCONT×受圧面積APLCONT)と、スプリング62のバネ力(付勢力)Fspring(=K×X(バネ潰れ代))と、スイッチ圧ソレノイド50により生成されたスイッチ油圧PSWによる押力FSW(スイッチ油圧PSW×受圧面積ASW)とのバランスに応じてスプール61Bが軸方向に駆動されることにより、第2ライン圧油路70Bに連通する油路が、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。
より具体的には、切替制御バルブ60Bは、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力がライン圧制御圧による押力とスイッチ油圧による押力との合力よりも大きい場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bとなるように切替える。一方、切替制御バルブ60は、第1ライン圧70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力がライン圧制御圧による押力とスイッチ油圧による押力との合力未満の場合には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aとなるように切替える。
そのため、切替制御バルブ60Bは、スイッチ圧ソレノイド50からスイッチ油圧(例えば、該スイッチ油圧による押力とライン圧制御圧による押力との合力が実ライン圧による押力とバネ力との合力よりも大きくなるようなスイッチ油圧)が供給された場合には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aとなるように油路(回路)を固定(全吐出状態に固定)する。一方、切替制御バルブ60は、例えば、スイッチ圧ソレノイド50からスイッチ油圧が供給されない場合(スイッチ油圧がゼロの場合)には、上述したように、実ライン圧による押力とライン圧制御圧による押力とバネ力とのバランスに応じて、第2ライン圧油路70Bに連通する油路を、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替える。
スイッチ圧ソレノイド50は、無段変速機110の運転状態に基づいて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先を、第1ライン圧油路70Aに固定(すなわち全吐出状態に固定)するか、固定しないかを切替えるスイッチ油圧を生成する。スイッチ圧ソレノイド50には、上述したように、パイロット圧油路90、及び第2制御圧油路(スイッチ圧油路)92が接続されている。スイッチ圧ソレノイド50が開弁されることにより、パイロット圧油路90からの供給圧(パイロット圧)が、第2制御圧油路92を通して、切替制御バルブ60Bの他方(スプリング62と反対側)の端部にスイッチ油圧として供給される。一方、スイッチ圧ソレノイド50が閉弁されることにより、上記スイッチ油圧の供給が停止される。なお、その際に、第2制御圧油路92内のオイルがドレンされ、スイッチ油圧はゼロとされる。
上述したように、スイッチ圧ソレノイド50の開弁/閉弁はTCU150Bによって制御される。TCU150Bは、例えば、無段変速機110のシフトレンジがニュートラル(N)レンジ又はパーキング(P)レンジの場合に、スイッチ圧ソレノイド50を開弁する。すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aに固定(全吐出状態に固定)されるようにスイッチ油圧を生成する。
同様に、TCU150Bは、無段変速機110の変速速度di/dtが所定速度以上の場合(又は所定速度以上になると予測される場合)に、スイッチ圧ソレノイド50を開弁する。すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aに固定(全吐出状態に固定)されるようにスイッチ油圧を生成する。
上述した運転状態以外の場合には、TCU150Bは、スイッチ圧ソレノイド50を閉弁する(スイッチ油圧をゼロとする)。そのため、上述したように、実ライン圧による押力とライン圧制御圧による押力とバネ力とのバランスに応じて、第2ライン圧油路70Bに連通する油路が、第1ライン圧油路70A(全吐出状態)と第2吸入油路80B(半吐出状態)との間で切替えられる。
次に、図6を参照しつつ、オイルポンプの吐出量切替装置2の動作について説明する。図6は、オイルポンプの吐出量切替装置2(TCU150B)による吐出量切替処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、TCU150Bにおいて、所定時間毎(例えば10ms毎)に繰り返して実行される。
ステップS200では、無段変速機110のシフトレンジがニュートラル(N)レンジ又はパーキング(P)レンジであるか否かについての判断が行われる。ここで、シフトレンジがニュートラルレンジ又はパーキングレンジである場合には、ステップS204において、スイッチ圧ソレノイド50が開弁され(「FPL+Fspring<FPLCONT+FSW」となり)、オイルポンプ10の吐出状態が全吐出状態に固定される(ステップS206)。その後、本処理から一旦抜ける。一方、シフトレンジがニュートラルレンジ及びパーキングレンジでないときには、ステップS202に処理が移行する。
ステップS202では、無段変速機110の変速速度di/dtが所定速度以上であるか否か(又は所定速度以上になると予測されるか否か)ついての判断が行われる。ここで、変速速度が所定速度以上である場合には、ステップS204において、スイッチ圧ソレノイド50が開弁され、オイルポンプ10の吐出状態が全吐出状態に固定される(ステップS206)。その後、本処理から一旦抜ける。一方、変速速度が所定速度未満のときには、ステップS208に処理が移行する。
ステップS208では、スイッチ圧ソレノイド50が閉弁され、切替制御バルブ60Bに供給されるスイッチ油圧がゼロになる。そのため、切替制御バルブ60Bのスプール61Bに作用する力、すなわち、実ライン圧PLによる押力FPLと、バネ力(付勢力)Fspringと、実ライン圧制御圧PLCONTによる押力FPLCONTとのバランスが「FPL+Fspring>FPLCONT」となった場合(ステップS210)には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとが連通される。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが、第2ライン圧油路70B、第2吸入油路80B、第1吸入油路80Aを通して、オイルポンプ10の第1,第2吸入口106A,106Bに戻される。その結果、オイルポンプ10は、第1吐出口107Aのみから第1ライン圧70Aにオイルが供給される半吐出(部分吐出)運転状態となる(ステップS212)。
一方、切替制御バルブ60Bのスプール61Bに作用する力のバランスが「FPL+Fspring<FPLCONT」となった場合には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとが連通される。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが第1吐出口107Aから吐出されたオイルと合流して供給される。その結果、オイルポンプ10は、第1吐出口107A及び第2吐出口107Bからオイルが供給される全吐出状態に切替えられる(ステップS206)。
本実施形態によれば、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力と、該ライン圧の制御圧である実際のライン圧制御圧による押力とスイッチ油圧による押力との合力との押力差に応じて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。よって、無段変速機110の運転状態に応じてスイッチ油圧を供給することにより全吐出状態に固定することができる。一方、スイッチ油圧の供給を停止した場合(ゼロにした場合)には、全吐出状態に固定されることなく、第1ライン油路70Aの実油圧(実ライン圧)による押力とバネ力との合力とその制御油圧(ライン圧制御圧)による押力との押力差に応じて、全吐出状態と半吐出状態とを切替えることができる。よって、その場合、従来のように、部品ばらつきや制御遅れ等を考慮したマージンを持ってシフトソレノイドバルブの駆動制御を行う必要がない。その結果、運転状態によっては全吐出状態又は部分吐出状態に固定することを可能としつつ、部分吐出状態の運転領域を拡大して、オイルポンプ10の負荷をより軽減することができ、燃料消費率(燃費)をより低減することが可能となる。
また、本実施形態によれば、シフトレンジがニュートラル(N)レンジ又はパーキング(P)レンジの場合に、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン油路70Aに固定(全吐出状態に固定)される。よって、その後、シフトレンジがドライブ(D)レンジ又はリバース(R)レンジに切替えられたときに、充分な油圧流量を確保することができ、発進時の応答性を向上させることができる。
同様に、本実施形態によれば、変速速度が所定速度以上の場合に、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン油路70Aに固定(全吐出状態に固定)される。よって、大流量(大量の油圧流量)が必要とされる急変速時において、充分な油圧流量を確保することができ、所望の変速速度を確保することができる。
(第3実施形態)
上述した第1実施形態では、無段変速機110の運転状態に応じてオイルポンプ10の吐出状態を半吐出状態に固定可能とし、上記第2実施形態では全吐出状態に固定可能としたが、半吐出状態と全吐出状態の双方に固定可能とする構成としてもよい。
そこで、次に、図7を用いて、第3実施形態に係るオイルポンプの吐出量切替装置3の構成について説明する。図7は、オイルポンプの吐出量切替装置3の構成を示す図である。なお、図7において上記第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
本実施形態は、切替制御バルブ60に代えて、切替制御バルブ60Cが用いられている点で、上述した第1実施形態と異なっている。また、スイッチ圧ソレノイド50に代えて、スイッチ圧デューティソレノイド51が用いられている点で、上述した第1実施形態と異なっている。その他の構成は、上述した第1実施形態と同一または同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
切替制御バルブ60Cは、ライン圧リニアソレノイド20と連通する第1制御圧油路91、スイッチ圧ソレノイド50と連通する第2制御圧油路92、第1ライン圧油路70A、第2吐出口107Bと連通する第2ライン圧油路70B、及び、第1吸入油路80A(第1,第2吸入口106A,106B)と連通する第2吸入油路80Bと接続されている。切替制御バルブ60Cは、その内部に、スプール61Cを軸方向に摺動自在に収容している。このスプール61Cの一方の端部にはスプリング62が配設されており、実ライン圧による押力FPL(=実ライン圧PL×受圧面積APL)と、ライン圧リニアソレノイド20により生成されたライン圧制御圧による押力FPLCONT(=ライン圧制御圧PLCONT×受圧面積APLCONT)と、スプリング62のバネ力(付勢力)Fspring(=K×X(バネ潰れ代))と、スイッチ圧ソレノイド50により生成されたスイッチ油圧PSWによる押力FSW(スイッチ油圧PSW×受圧面積ASW)とのバランスに応じてスプール61Cが軸方向に駆動されることにより、第2ライン圧油路70Bに連通する油路が、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。
より具体的には、切替制御バルブ60Cは、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力とスイッチ油圧による押力との合力がライン圧制御圧による押力よりも大きい場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bとなるように切替える。一方、切替制御バルブ60Cは、第1ライン圧70Aの実ライン圧による押力とバネ力とスイッチ油圧による押力との合力がライン圧制御圧による押力未満の場合には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aとなるように切替える。
そのため、切替制御バルブ60Cは、スイッチ圧デューティソレノイド51からスイッチ油圧(例えば、デューティが100%で、上記合力がライン圧制御圧による押力よりも大きくなるようなスイッチ油圧)が供給された場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bとなるように油路(回路)を固定(半吐出状態に固定)する。
一方、切替制御バルブ60Cは、スイッチ圧デューティソレノイド51からスイッチ油圧が供給されない場合(例えば、デューティが0%で、スイッチ油圧がゼロの場合)には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aとなるように油路(回路)を固定(全吐出状態に固定)する。
また、切替制御バルブ60Cは、例えば、スイッチ圧デューティソレノイド51から中間のスイッチ油圧が供給された場合(例えば、デューティが50%の圧。詳細は後述する)には、上述したように、実ライン圧による押力とライン圧制御圧による押力とバネ力とのバランスに応じて、第2ライン圧油路70Bに連通する油路を、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替える。そのため、本実施形態では、スプリング62Cのバネ力が、上記第1実施形態のスプリング62のバネ力よりも弱めに設定される。例えば、該スプリング62Cのバネ力は、例えばデューティが50%に設定されたときのスイッチ油圧による押力分、上記スプリング62のバネ力よりも弱めに設定される。すなわち、例えばデューティが50%に設定されたときのスイッチ油圧が供給されたときに、実ライン圧による押力とライン圧制御圧による押力とバネ力とのバランスに応じて、全吐出状態と半吐出状態とを切替できるように設定される。
スイッチ圧デューティソレノイド51は、無段変速機110の運転状態に基づいて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先を、オイルポンプ10の吸入口106A,106Bに連通する第2吸入油路80Bに固定(すなわち半吐出状態に固定)するか、第1ライン圧油路70Aに固定(すなわち全吐出状態に固定)するか、又は、いずれにも固定しないかを切替えるスイッチ油圧を生成する。
スイッチ圧デューティソレノイド51には、上述したパイロット圧油路90、及び第2制御圧油路92が接続されている。スイッチ圧デューティソレノイド51がデューティ100%で駆動されることにより、パイロット圧油路90からの供給圧(パイロット圧)が、第2制御圧油路92を通して、切替制御バルブ60の一方(スプリング62が配設されている側)の端部にスイッチ油圧として供給される。
一方、スイッチ圧デューティソレノイド51がデューティ0%で駆動される(すなわち、駆動が停止される)ことにより、上記スイッチ油圧の供給が停止される。なお、その際に、第2制御圧油路92内のオイルがドレンされ、スイッチ油圧はゼロとされる。
また、スイッチ圧デューティソレノイド51が、デューティ0%とデューティ100%との間(例えばデューティ50%)で駆動されることにより、中間圧が、切替制御バルブ60の一方の端部にスイッチ油圧として供給される。
スイッチ圧デューティソレノイド51としては、例えば、印加される電圧のデューティ比に応じて開弁量が制御されるデューティソレノイドが好適に用いられる。ここで、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加される電圧のデューティ比(%)とスイッチ油圧PSW(MPa)との関係(スイッチ圧デューティソレノイド51の特性)を図8に示す。図8の横軸はデューティ比(%)であり、縦軸はスイッチ油圧PSW(MPa)である。
図8に示されるように、デューティ比が0(%)のときには出力されるスイッチ油圧が0(MPa)になる。一方、デューティ比が100(%)のときには出力されるスイッチ油圧がパイロット圧油路90からの供給圧(パイロット圧)と同じ圧力(MPa)になる。また、デューティ比が0〜100(%)の間では、デューティ比の増加に比例してスイッチ油圧がリニアに増大する。
スイッチ圧デューティソレノイド51はTCU150Cによって駆動される。すなわち、スイッチ圧デューティソレノイド51及びTCU150Cも、特許請求の範囲に記載のスイッチ油圧生成手段として機能する。
より具体的には、TCU150Cは、例えば、オイルの温度(油温)が所定温度未満の場合(例えば極低温の場合)に、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加するデューティを100%に設定する。すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定(半吐出状態に固定)されるようにスイッチ油圧を生成する。
同様に、TCU150Cは、オイルポンプ10の回転数が所定回転数以上の場合(高回転時)に、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加するデューティを100%に設定する。すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定(半吐出状態に固定)されるようにスイッチ油圧を生成する。
また、TCU150Cは、無段変速機110が搭載された車両が定常走行している場合(例えば、アクセルペダルの踏込み量の変化が所定値以下であり、変速比が略一定で大きく変化しない場合)に、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加するデューティを100%に設定する。すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定(半吐出状態に固定)されるようにスイッチ油圧を生成する。
一方、TCU150Cは、例えば、無段変速機110のシフトレンジがニュートラル(N)レンジ又はパーキング(P)レンジの場合に、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加するデューティを0%に設定する。すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aに固定(全吐出状態に固定)されるようにスイッチ油圧を生成する。
同様に、TCU150Cは、無段変速機110の変速速度di/dtが所定速度以上の場合(又は所定速度以上になると予測される場合)に、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加するデューティを0%に設定する。すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aに固定(全吐出状態に固定)されるようにスイッチ油圧を生成する。
上述した運転状態以外の場合には、TCU150Cは、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加するデューティを例えば50%に設定する(スイッチ油圧を中間圧とする)。そのため、上述したように、実ライン圧による押力とライン圧制御圧による押力とバネ力とのバランスに応じて、第2ライン圧油路70Bに連通する油路が、第1ライン圧油路70A(全吐出状態)と第2吸入油路80B(半吐出状態)との間で切替えられる。
次に、図9を参照しつつ、オイルポンプの吐出量切替装置3の動作について説明する。図9は、オイルポンプの吐出量切替装置3(TCU150C)による吐出量切替処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、TCU150Cにおいて、所定時間毎(例えば10ms毎)に繰り返して実行される。
ステップS300では、無段変速機110の油温が所定温度未満(例えば極低温)であるか否かについての判断が行われる。ここで、油温が所定温度未満の場合には、ステップS310において、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加されるデューティが100%に設定され(「FPL+Fspring+FSW>FPLCONT」となり)、オイルポンプ10の吐出状態が半吐出状態に固定される(ステップS312)。その後、本処理から一旦抜ける。一方、油温が所定温度以上のときには、ステップS302に処理が移行する。
ステップS302では、オイルポンプ10の回転数が所定回転数以上(高回転)であるか否かについての判断が行われる。ここで、ポンプ回転数が所定回転数以上の場合には、ステップS310において、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加されるデューティが100%に設定され、オイルポンプ10の吐出状態が半吐出状態に固定される(ステップS312)。その後、本処理から一旦抜ける。一方、ポンプ回転数が所定回転数未満のときには、ステップS304に処理が移行する。
ステップS304では、定常走行状態であるか否か(例えば、アクセルペダルの踏込み量の変化が所定値以下であり、変速比が略一定で大きく変化しないか否か)についての判断が行われる。ここで、定常走行状態の場合には、ステップS310において、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加されるデューティが100%に設定され、オイルポンプ10の吐出状態が半吐出状態に固定される(ステップS312)。その後、本処理から一旦抜ける。一方、定常走行状態でないときには、ステップS306に処理が移行する。
ステップS306では、無段変速機110のシフトレンジがニュートラル(N)レンジ又はパーキング(P)レンジであるか否かについての判断が行われる。ここで、シフトレンジがニュートラルレンジ又はパーキングレンジである場合には、ステップS314において、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加されるデューティが0%に設定され(「FPL+Fspring+FSW<FPLCONT」となり)、オイルポンプ10の吐出状態が全吐出状態に固定される(ステップS316)。その後、本処理から一旦抜ける。一方、シフトレンジがニュートラルレンジ及びパーキングレンジでないときには、ステップS308に処理が移行する。
ステップS308では、無段変速機110の変速速度di/dtが所定速度以上であるか否か(又は所定速度以上になると予測されるか否か)ついての判断が行われる。ここで、変速速度が所定速度以上である場合には、ステップS314において、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加されるデューティが0%に設定され、オイルポンプ10の吐出状態が全吐出状態に固定される(ステップS316)。その後、本処理から一旦抜ける。一方、変速速度が所定速度未満のときには、ステップS320に処理が移行する。
ステップS320では、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加されるデューティが50%に設定され、切替制御バルブ60Cに供給されるスイッチ油圧が中間圧になる。そのため、切替制御バルブ60Cのスプール61Cに作用する力、すなわち、実ライン圧PLによる押力FPLと、バネ力(付勢力)Fspringと、実ライン圧制御圧PLCONTによる押力FPLCONTと、スイッチ油圧PSWによる押力FSWとのバランスが「FPL+Fspring+FSW>FPLCONT」となった場合(ステップS320)には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとが連通される。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが、第2ライン圧油路70B、第2吸入油路80B、第1吸入油路80Aを通して、オイルポンプ10の第1,第2吸入口106A,106Bに戻される。その結果、オイルポンプ10は、第1吐出口107Aのみから第1ライン圧70Aにオイルが供給される半吐出(部分吐出)運転状態となる(ステップS312)。
一方、切替制御バルブ60Cのスプール61Cに作用する力のバランスが「FPL+Fspring+FSW<FPLCONT」となった場合には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとが連通される。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが第1吐出口107Aから吐出されたオイルと合流して供給される。その結果、オイルポンプ10は、第1吐出口107A及び第2吐出口107Bからオイルが供給される全吐出状態に切替えられる(ステップS316)。
本実施形態によれば、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力とスイッチ油圧による押力との合力と、該ライン圧の制御圧であるライン圧制御圧による押力との押力差に応じて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。すなわち、無段自動変速機110の運転状態に応じてスイッチ油圧を調節(例えば、デューティ0%又はデューティ100%に)することにより全吐出状態又は部分吐出状態に固定することができる。一方、全吐出状態及び部分吐出状態のいずれにも固定しないようにスイッチ油圧を調節(例えば、デューティ50%に)した場合には、第1ライン油路70Aの実油圧(実ライン圧)による押力とバネ力とスイッチ油圧による押力との合力と、制御油圧(ライン圧制御圧)による押力との押力差に応じて、全吐出状態と部分吐出状態とを切替えることができる。よって、その場合、従来のように、部品ばらつきや制御遅れ等を考慮したマージンを持ってシフトソレノイドバルブの駆動制御を行う必要がない。その結果、運転状態によっては全吐出状態又は部分吐出状態に固定することを可能としつつ、部分吐出状態の運転領域を拡大して、オイルポンプ10の負荷をより軽減することができ、燃料消費率(燃費)をより低減することが可能となる。
また、本実施形態によれば、オイルの温度(油温)が所定温度未満の場合に、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定される。よって、例えば、極低温時に半吐出状態に固定することができる。そのため、キャビテーションの発生を防止して、騒振(騒音・振動)性能及び信頼性を向上させることができる。
同様に、本実施形態によれば、オイルポンプ10の回転数が所定回転数以上の場合に、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定される。よって、例えば、オイルポンプ10の回転数が高いときに半吐出状態に固定することができる。そのため、キャビテーションの発生を防止して、騒振(騒音・振動)性能及び信頼性を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、定常走行状態のときに、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bに固定される。よって、全吐出状態と部分吐出状態との切替による油圧脈動の発生を防止して、信頼性の向上を図ることができる。
一方、本実施形態によれば、シフトレンジがニュートラル(N)レンジ又はパーキング(P)レンジの場合に、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン油路70Aに固定(全吐出状態に固定)される。よって、その後、シフトレンジがドライブ(D)レンジ又はリバース(R)レンジに切替えられたときに、充分な油圧流量を確保することができ、(発進)応答性を向上させることができる。
同様に、本実施形態によれば、変速速度が所定速度以上の場合に、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン油路70Aに固定(全吐出状態に固定)される。よって、大流量(大量の油圧流量)が必要とされる急変速時において、充分な油圧流量を確保することができ、所望の変速速度を確保することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明を無段変速機(CVT)に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、有段自動変速機(Step AT)やDCTなどにも適用することができる。また、上記実施形態では、本発明をチェーン式の無段変速機(CVT)に適用したが、チェーン式の無段変速機に代えて、例えば、ベルト式の無段変速機や、トロイダル式の無段変速機等にも適用することができる。
上記実施形態では、2つの吐出口107A,107Bを有する2ポート型のオイルポンプ10を例にして説明したが、2ポート型のオイルポンプ10に代えて、3つ以上の吐出口を有するオイルポンプを用いてもよい。また、上記実施形態では、オイルポンプ10としてベーンポンプを用いたが、ベーンポンプに代えて、例えば、内接歯車式ギヤポンプやトロコイドポンプ等を用いることもできる。
なお、部分吐出状態は半吐出状態に限定されず、全吐出状態よりも吐出量(容量)の小さい運転状態であればよい。
上記第3実施形態では、スイッチ圧デューティソレノイド51として、デューティソレノイドを用いたが、デューティソレノイドに代えて、例えば、リニアソレノイドやステッピングモータ等を用いてもよい。また、実ライン圧による押力とライン圧制御圧による押力とによってオイルポンプ10の吐出状態を切替可能とする中間圧を生成する際のデューティは50%には限られない。
上記第3実施形態では、スイッチ圧デューティソレノイド51に印加するデューティ比を変えることにより、全吐出状態に固定するか、半吐出状態に固定するか、又は固定しないかを切替えたが、このような構成に代えて、例えば、三方弁を用いて、スイッチ油圧を、切替制御バルブ60の一方の端部に導入するか、他方の端部に導入するか、又は導入しないかを切替えることにより、全吐出状態に固定するか、半吐出状態に固定するか、又は固定しないかを切替える構成としてもよい。