JP2016179932A - セメント組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】モルタルによる評価でコンクリートに使用したときの強度を担保でき、さらにコンクリートに使用する場合もモルタルによる評価で品質管理をすることができるセメント組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、セメントクリンカ、石膏および石灰石微粉末を含むセメント組成物であって、セメント組成物の40μmふるい残分の割合は12質量%以下であり、セメント組成物の2.8μmふるい通過分の割合は2.0〜5.0質量%であり、セメント組成物中の石灰石微粉末の割合が2.0質量%以上であり、セメント組成物の2.8μmふるい通過分における石膏のSOに換算した質量および石灰石微粉末の合計の割合は55質量%以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、セメント組成物に関し、とくにポルトランドセメントのセメント組成物に関する。
モルタルやコンクリートを用いて作製された構造体を使用して建てられた建造物の品質を保証するために、モルタルやコンクリートに用いられるセメント組成物が発現する強度は高いことが必要である。このため、従来から、高い強度を発現する様々なセメント組成物が開発されてきた。そのようなセメント組成物の中に、セメント組成物の粒度分布や比表面積を調整することによってセメント組成物が発現する強度を高めたセメント組成物が従来技術として知られている。たとえば、特許文献1に記載のセメント含有粉体組成物では、セメント質材料のブレーン比表面積を1500〜3300cm/gとし、かつ、100μm篩残分量を0.5〜40質量%とすることによって、セメント含有粉体組成物が発現する強度を高くしている。また、特許文献2に記載のセメント組成物では、セメント組成物中のシリカフュームのBET比表面積を5〜18m/gとし、セメント組成物中の石灰石微粉末の粒度分布が、粒径10μm以下の粒子が99体積%以上、粒径5μm以下の粒子が95体積%以上、粒径2μm以下の粒子が70〜93体積%、粒径1μm以下の粒子が27〜50体積%、および、粒径0.5μm以下の粒子が15体積%以下となるようにすることによって、セメント組成物が発現する強度を高くしている。さらに、特許文献3に記載のセメント組成物では、セメント組成物中の微粉セメントの粒度分布が、粒径20μm以下の粉体の含有率が75体積%以上、粒径10μm以下の粉体の含有率が55体積%以上、粒径1μm以下の粉体の含有率が5体積%以上、粒径0.5μm以下の粉体の含有率が1体積%以上の各条件を満たすようにすることによって、セメント組成物が発現する強度を高くしている。
特開2014−166927号公報 特開2014−88294号公報 特開2012−20912号公報
上述の特許文献1〜3に記載のセメント組成物では、モルタルから作製した供試体を使用してセメント組成物が発現する強度の評価を行っている。そして、モルタルによる評価でセメント組成物が高い強度を発現するのであれば、コンクリートにおいてもセメント組成物は高い強度を発現するとしている。このような観点から、従来は、コンクリートに用いるセメント組成物の品質管理を、モルタルを用いて作製した供試体を用いて行っていた。これは、ひとつには、セメント組成物の品質管理を、コンクリートの供試体を用いて行うと非常に手間と労力とがかかるという問題があるためである。
しかしながら、本発明者等が検討を行った結果、モルタルによる評価で高い強度を発現するとされたセメント組成物が、コンクリートに用いると必ずしも高い強度を発現するとは限らないことがわかった。そこで、本発明は、モルタルによる評価でコンクリートに使用したときの強度を担保でき、さらにコンクリートに使用する場合もモルタルによる評価で品質管理をすることができるセメント組成物を提供することを目的とする。
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、セメント組成物の40μmふるい残分の割合、セメントクリンカ組成物の2.8μmふるい通過分の割合、セメント組成物中の石灰石微粉末の割合、ならびにセメント組成物の2.8μmふるい通過分における石灰石微粉末および石膏の合計の割合をそれぞれ所定の範囲内にすることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]セメントクリンカ、石膏および石灰石微粉末を含むセメント組成物であって、セメント組成物の40μmふるい残分の割合は12質量%以下であり、セメント組成物の2.8μmふるい通過分の割合は2.0〜5.0質量%であり、セメント組成物中の石灰石微粉末の割合が2.0質量%以上であり、セメント組成物の2.8μmふるい通過分における石膏のSOに換算した質量および石灰石微粉末の合計の割合は55質量%以上であるセメント組成物。
[2]セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合が2.0質量%以上である上記[1]に記載のセメント組成物。
[3]セメント組成物のブレーン比表面積値が3000cm/g以上であり、セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合が3.5質量%以下であり、セメント組成物中の石灰石微粉末の割合が10質量%以下である上記[2]に記載のセメント組成物。
本発明によれば、モルタルによる評価でコンクリートに使用したときの強度を担保でき、さらにコンクリートに使用する場合もモルタルによる評価で品質管理をすることができるセメント組成物を提供することができる。
本発明は、セメントクリンカ、石膏および石灰石微粉末を含むセメント組成物であって、セメント組成物の40μmふるい残分の割合は12質量%以下であり、セメント組成物の2.8μmふるい通過分は2.0〜5.0質量%であり、セメント組成物中の石灰石微粉末の割合が2.0質量%以上であり、セメント組成物の2.8μmふるい通過分における石膏のSOに換算した質量および石灰石微粉末の合計の割合は55質量%以上である。また、本発明のセメント組成物は、セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合が2.0質量%以上であってもよい。さらに、本発明のセメント組成物は、セメント組成物のブレーン比表面積値が3000cm/g以上であり、セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合が3.5質量%以下であり、セメント組成物中の石灰石微粉末の割合が10質量%以下であってもよい。以下、本発明を詳細に説明する。
(セメントクリンカ)
本発明のセメント組成物に使用されるセメントクリンカは、セメント組成物を構成する主要組成物であり、石灰石(CaO成分)、粘土(Al成分、SiO成分)、ケイ石(SiO成分)および酸化鉄原料(Fe成分)などを適量ずつ配合し、1450℃前後の高温で焼成して製造される。セメントクリンカは、3CaO・SiO(略号:CS)、2CaO・SiO(略号:CS)、3CaO・Al(略号:CA)、および4CaO・Al・FeO(略号:CAF)を含む。セメントクリンカは、エーライト(CS)およびビーライト(CS)の主要鉱物と、その主要鉱物の結晶間に存在するアルミネート相(CA)およびフェライト相(CAF)の間隙相などとから構成される。
なお、セメントクリンカにおける3CaO・SiO(略号:CS)、2CaO・SiO(略号:CS)、3CaO・Al(略号:CA)および4CaO・Al・FeO(略号:CAF)の割合は、JIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」により測定したセメントクリンカにおけるCaO、SiO、AlおよびFeの割合から、セメント化学の分野でボーグ式と呼ばれる計算式により求められる(たとえば、大門正機編訳「セメントの化学」、内田老鶴圃(1989)、p.11を参照)。
本発明のセメント組成物は、ポルトランドセメントであり、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」に規定されている品質を満たせば、セメントクリンカにおける3CaO・SiO、2CaO・SiO、3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの割合は、とくに限定されない。しかし、セメント組成物の流動性がさらに良好にするために、セメント組成物の質量に対する3CaO・Alの割合は、好ましくは、11.5質量%以下である。なお、CaO・Alの割合の好ましい範囲の下限値は、とくに限定されないが、たとえば7質量%である。また、3CaO・Alの割合は、上述のボーグ式から算出した値である。
さらに、セメント組成物の質量に対する3CaO・SiOの割合は、たとえば54〜68質量%であり、セメント組成物の質量に対する2CaO・SiOの割合は、たとえば5〜26質量%であり、セメント組成物の質量に対する4CaO・Al・FeOの割合は、たとえば7〜11質量%である。これらの割合は、上述のボーグ式から算出した値である。
(セメントクリンカの製造)
次に、セメントクリンカの製造の一例について説明する。セメントクリンカ原料としては、Ca、Si、Alなどを含み、所望によりFeを含むものであれば、元素単体物、酸化物、炭酸化物などの形態を問わず用いることができ、また、それらの混合物を用いることができる。天然原料の例として、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料が挙げられ、工業的な原料の例として、上記元素を含む廃棄物原料、高炉スラグ、フライアッシュなどが挙げられる。かかるセメントクリンカ原料の混合割合に関しては、とくに限定されるものではなく、目的とする鉱物組成に対応した成分組成となるように原料配合を定めることができる。
そして、目的とするセメントクリンカが得られるような組成で混合されたセメントクリンカ原料を、下記の焼成条件で焼成し、冷却する。焼成は、通常、電気炉やロータリーキルンなどを用いて行われる。焼成方法としては、たとえば、セメントクリンカ原料を、所定の第1焼成温度および第1焼成時間で加熱して焼成を行う第1焼成工程と、該第1焼成工程後、第1焼成温度から所定の第2焼成温度まで所定の昇温時間をかけて昇温させる昇温工程と、該昇温工程後、第2焼成温度および所定の第2焼成時間で加熱して焼成を行う第2焼成工程とを含む方法が挙げられる。たとえば、電気炉を用いた場合、セメントクリンカ原料を、1000℃の焼成温度(第1焼成温度)で30分間(第1焼成時間)加熱して焼成を行った後(第1焼成工程)、1450℃(第2焼成温度)まで30分間(昇温時間)かけて昇温させ(昇温工程)、さらに1450℃で15分間(第2焼成時間)加熱して焼成を行った後(第2焼成工程)、焼成物を急冷することにより、セメントクリンカを製造することができる。
(石膏)
本発明のセメント組成物は石膏を含む。また、本発明における石膏は半水石膏を含む。本発明における石膏は、無水石膏および/または二水石膏をさらに含んでもよい。セメント組成物の質量に対する石膏のSOに換算した質量の割合は、好ましくは2.0質量%以上であり、より好ましくは2.0〜3.5質量%である。石膏のSOに換算した質量の割合が2.0質量%以上であると、セメント組成物が発現する短期強度(たとえば、材齢3日のコンクリートの強度)がさらに強くなる。また、石膏のSOに換算した質量の割合が2.0〜3.5質量%であると、さらにセメント組成物が発現する長期強度(たとえば、材齢28日のコンクリートの強度)がさらに強くなる。なお、セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合は、JIS R 5202:2010「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定することができる。
セメント組成物の質量に対する半水石膏のSOに換算した質量の割合は、好ましくは1.3質量%以下である。半水石膏のSOに換算した質量の割合が1.3質量%以下であると、セメント組成物の流動性がさらに良好になる。なお、セメント組成物の質量に対する半水石膏のSOに換算した質量の割合の好ましい範囲の下限値はとくに限定されないが、たとえば、0.7質量%である。また、セメント組成物の質量に対する半水石膏のSOに換算した質量の割合は次のようにして測定する。熱重量−示差熱分析装置(TG−DTA分析装置)を使用して、常温から300℃までの間の温度範囲における二水石膏に起因する脱水量と、二水石膏から転化した半水石膏および元々存在していた半水石膏に起因する脱水量とを測定し、これらの脱水量から、二水石膏および半水石膏を定量する。そして、その定量された半水石膏の値をSOに換算して、セメント組成物の質量に対する半水石膏のSO換算の質量の割合を算出することができる。
(石灰石微粉末)
本発明の石灰石微粉末は、ブレーン比表面積値が5000〜20000cm/g程度の石灰石微粉末である。石灰石微粉末は、主に、モルタルやコンクリートの流動性改善や耐久性および強度向上を目的としてセメント組成物に添加される。セメント組成物中の石灰石微粉末の割合は、2.0質量%以上であり、好ましくは2.0〜10質量%である。セメント組成物中の石灰石微粉末の割合が2.0質量%未満であると、モルタルによる評価ではセメント組成物が発現する強度が高くても、コンクリートとして使用する場合、セメント組成物が発現する強度が低くなる場合がある。このため、セメント組成物中の石灰石微粉末の割合が2.0質量%未満であると、モルタルによる評価でコンクリートに使用したときのセメント組成物の強度を担保できず、コンクリートに使用する場合、モルタルによる評価でセメント組成物を品質管理することができない場合がある。また、セメント組成物中の石灰石微粉末の割合が2.0〜10質量%であると、セメント組成物が発現する長期強度(たとえば、材齢28日のコンクリートの強度)がさらに強くなる。なお、セメント組成物中の石灰石微粉末の割合は、JIS M 8850:1994「石灰石分析方法」に準拠して測定する。
(40μmふるい残分の割合)
本発明のセメント組成物の40μmふるい残分の割合は12質量%以下である。セメント組成物の40μmふるい残分の割合が12質量%よりも大きいと、モルタルによる評価ではセメント組成物が発現する強度が高くても、コンクリートとして使用する場合、セメント組成物が発現する強度が低くなる場合がある。このため、セメント組成物の40μmふるい残分の割合が12質量%よりも大きいと、モルタルによる評価でコンクリートに使用したときのセメント組成物の強度を担保できず、コンクリートに使用する場合、モルタルによる評価でセメント組成物を品質管理することができない。なお、セメント組成物の40μmふるい残分の割合は、JCAS K−03−2005 「エア・ジェット式ふるい装置によるセメント粉末度試験方法」に準拠して、40μmの目開きのふるい網を用いて測定される。また、セメント組成物の40μmふるい残分の割合の範囲の下限値はとくに限定されないが、たとえば、4質量%である。
(2.8μmふるい通過分の割合)
本発明のセメント組成物の2.8μm通過分の割合は2.0〜5.0質量%であり、好ましくは3.5〜5.0質量%である。セメント組成物の2.8μm通過分の割合が2.0質量%未満であると、モルタルによる評価ではセメント組成物が発現する強度が高くても、コンクリートとして使用する場合、セメント組成物が発現する強度が低くなる場合がある。このため、セメント組成物の2.8μm通過分の割合が2.0質量%未満であると、モルタルによる評価でコンクリートに使用したときのセメント組成物の強度を担保できず、コンクリートに使用する場合、モルタルによる評価でセメント組成物を品質管理することができない場合がある。また、セメント組成物の2.8μm通過分の割合が5.0質量%よりも大きいと、セメント組成物の充分な流動性が得られない。なお、セメント組成物の2.8μmふるい通過分の割合は、JCAS K−03−2005 「エア・ジェット式ふるい装置によるセメント粉末度試験方法」に準拠して、2.8μmの目開きのふるい網を用いて測定される。
本発明のセメント組成物の2.8μmふるい通過分における石膏のSOに換算した質量および石灰石微粉末の合計の割合は55質量%以上である。セメント組成物の2.8μmふるい通過分における石膏のSOに換算した質量および石灰石微粉末の合計の割合が55質量%未満であると、モルタルによる評価ではセメント組成物が発現する強度が高くても、コンクリートとして使用する場合、セメント組成物が発現する強度が低くなる場合がある。このため、セメント組成物の2.8μmふるい通過分における石膏のSOに換算した質量および石灰石微粉末の合計の割合が55質量%未満であると、モルタルによる評価でコンクリートに使用したときのセメント組成物の強度を担保できず、コンクリートに使用する場合、モルタルによる評価でセメント組成物を品質管理することができない場合がある。なお、セメント組成物の2.8μmふるい通過分における石膏のSOに換算した質量および石灰石微粉末の合計の割合の上限値はとくに限定されないが、たとえば、85質量%である。
(ブレーン比表面積)
本発明のセメント組成物のブレーン比表面積は、好ましくは3000cm/g以上であり、より好ましくは3000〜3800cm/gである。セメント組成物のブレーン比表面積が3000cm/g以上であると、セメント組成物が発現する長期強度(たとえば、材齢28日のコンクリートの強度)がさらに強くなる。また、セメント組成物のブレーン比表面積が3000〜3800cm/gであると、セメント組成物の流動性がさらに良好になる。なお、ブレーン比表面積とは、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準拠したブレーン方式により測定した比表面積である。
(セメント組成物の流動性)
本発明のセメント組成物は、セメント組成物のブレーン比表面積を3800cm/g以下にし、セメント組成物の2.8μm通過分の割合を5.0質量%以下にし、セメント組成物中の半水石膏のSOに換算した質量の割合を1.3質量%以下にし、さらにセメント組成物中の3CaO・Alの割合を11.5質量%以下にすることによって、流動性をより良好にすることができる。
(セメント組成物のその他の成分)
本発明のセメント組成物には、流動性、水和速度または強度発現の調節用として、フライアッシュ、高炉スラグあるいはシリカフュームなどをさらに添加することができる。また、本発明のセメント組成物に、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤、とくにポリカル系高性能AE減水剤を添加することにより、コンクリートの流動性および強度をより向上させることができる。
(モルタルおよびコンクリート)
本発明のセメント組成物を、水と混合することにより、セメントミルクを作製することができ、水および砂と混合することにより、モルタルを作製することができ、砂および砂利と混合することにより、コンクリートを製造することができる。また、上記セメント組成物からモルタルやコンクリートを作製する際、高炉スラグやフライアッシュなどを添加することもできる。
なお、上述したように、モルタルによる評価で高い強度を発現するとされたセメント組成物が、コンクリートに用いると必ずしも高い強度を発現するとは限らない。これは、以下の理由によると推測される。なお、この推測は、本発明を限定しない。モルタルの強度は、セメント組成物の水和に関連する因子に依存する。一方、コンクリートの強度は、セメント組成物の水和に関連する因子のほかに、セメント組成物と骨材との間の界面に生成する欠陥への応力集中による破壊の因子による。すなわち、モルタルの強度は、マトリックスであるセメント組成物の強度と骨材の強度とにより決まるのに対し、セメントの強度は、マトリックスであるセメント組成物の強度と、骨材の強度と、セメント組成物および骨材の間の接着強度とにより決まるので、モルタルによる評価で高い強度を発現するとされたセメント組成物が、コンクリートに用いると必ずしも高い強度を発現するとは限らないと推測される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例は、本発明を限定するものではない。
[評価方法]
実施例および比較例のセメント組成物を次の評価方法で評価した。
(ブレーン比表面積値)
実施例および比較例のセメント組成物のブレーン比表面積値をJIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準拠して測定した。
(40μmふるい残分の割合)
実施例および比較例のセメント組成物の40μmふるい残分の割合を、JCAS K−03−2005 「エア・ジェット式ふるい装置によるセメント粉末度試験方法」に準拠して、40μmの目開きのふるい網を用いて測定した。
(2.8μmふるい通過分の割合)
実施例および比較例のセメント組成物の2.8μmふるい通過分の割合を、JCAS K−03−2005 「エア・ジェット式ふるい装置によるセメント粉末度試験方法」に準拠して、2.8μmの目開きのふるい網を用いて測定した。
(セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合)
実施例および比較例のセメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合を、JIS R 5202:2010「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準拠して測定した。
(セメント組成物中の半水石膏のSOに換算した質量の割合)
熱重量−示差熱分析装置(TG−DTA分析装置)((株)リガク製、型番:Thermo plus EVO)を使用して、常温から300℃までの間の温度範囲における二水石膏に起因する脱水量と、二水石膏から転化した半水石膏および元々存在していた半水石膏に起因する脱水量とを測定し、これらの脱水量から、二水石膏および半水石膏を定量した。そして、その定量された半水石膏の値をSOに換算して、セメント組成物の質量に対する半水石膏のSO換算の質量の割合を算出した。
(3CaO・SiO、2CaO・SiO、3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの含有量の割合)
実施例および比較例のセメント組成物の質量に対する3CaO・SiO、2CaO・SiO、3CaO・Alおよび4CaO・Al・FeOの割合は、セメントクリンカの原料の配合量からCaO、SiO、AlおよびFeの割合を算出し、その算出結果を用いて上述のボーグ式から算出した。
(石灰石微粉末の割合)
実施例および比較例のセメント組成物中の石灰石微粉末の割合は、石灰石微粉末の配合量から算出した。
(2.8μmふるい通過分における石膏のSOに換算した質量および石灰石微粉末の合計の割合)
実施例および比較例のセメント組成物の2.8μmふるい通過分における石膏のSOに換算した質量および石灰石微粉末の合計の割合は、以下のように測定した。実施例および比較例のセメント組成物の2.8μmふるい通過分を、JCAS K−03−2005 「エア・ジェット式ふるい装置によるセメント粉末度試験方法」に準拠して、2.8μmの目開きのふるい網を用いて得た。次に、実施例および比較例のセメント組成物の2.8μmふるい通過分中の石膏のSOに換算した質量の割合を、JIS R 5202:2010「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準拠して測定した。また、実施例および比較例のセメント組成物の2.8μmふるい通過分中の石灰石微粉末の割合をJIS M 8850:1994「石灰石分析方法」に準拠して測定した。そして、測定した石膏のSOに換算した質量の割合および石灰石微粉末の割合を足し算して、2.8μmふるい通過分における石膏のSOに換算した質量および石灰石微粉末の合計の割合を算出した。
(182日材齢コンクリート/モルタル強度比)
実施例および比較例のセメント組成物の182日材齢コンクリート強度および182日材齢モルタル強度を測定し、測定した182日材齢コンクリート強度を182日材齢モルタル強度で割り算することによって、182日材齢コンクリート/モルタル強度比を算出した。実施例および比較例のセメント組成物の182日材齢コンクリート強度は、JIS A 1132:2014「コンクリートの強度試験用供試体の作り方:4.圧縮強度供試体」に準拠して、セメント組成物から作製したコンクリートをそれぞれ、φ100mm×高さ200mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型してコンクリート供試体を3個ずつ作製した。20℃水中で材齢182日まで養生し、JISA 1108:2006「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して、各供試体における圧縮強さを測定した。また、実施例および比較例のセメント組成物の182日モルタル強度は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法:10.4供試体の作り方」に準拠して、セメント組成物から作製したモルタルをそれぞれ、40×40×160mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型してモルタル供試体を3個ずつ作製した。20℃水中で材齢182日まで養生し、JISR 5201:2015「セメントの物理試験方法:10.5測定」に準拠して、圧縮強さを測定した。
(3日および28日コンクリート強度)
実施例および比較例のセメント組成物の3日および28日コンクリート強度は、JISA 1132:2014「コンクリートの強度試験用供試体の作り方:4.圧縮強度供試体」に準拠して、セメント組成物から作製したコンクリートをそれぞれ、φ100mm×高さ200mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型してモルタル供試体を3個ずつ作製した。20℃水中で材齢3日および28日まで養生し、JISA 1108:2006「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して、各材齢における圧縮強さを測定した。
(182日材齢乾燥収縮)
実施例および比較例のセメント組成物の182日材齢乾燥収縮は、まず、JISA 1129−3:2010「モルタル及びコンクリートの長さ変化試験方法−第3部:ダイヤルゲージ法」およびJISA 1132:2014「コンクリートの強度試験用供試体の作り方:5.曲げ強度供試体」に準拠して、セメント組成物から作製したコンクリートをそれぞれ、100mm×100mm×400mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型してコンクリート供試体を3個ずつ作製した。次に、JISA 1129−3:2010「モルタル及びコンクリートの長さ変化試験方法−第3部:ダイヤルゲージ法」の付属書A(参考)「モルタル及びコンクリートの乾燥による自由収縮ひずみ試験方法」に準拠して、作製されたコンクリート供試体を20℃で7日間水中養生した後、20℃、65%RHの雰囲気下に182日間保存し、かかる雰囲気下での保存開始時と182日保存後(182日材齢)のコンクリート供試体の長さを測定した。そして、各コンクリート供試体について保存開始時の長さ(基長)に対する182日保存後の長さの差を算出し、得られた3つの長さ変化を平均することによって、コンクリート供試体の182日材齢乾燥収縮を算出した。
(28日モルタル強度)
実施例および比較例のセメント組成物の28日モルタル強度は、JISR 520:2015「セメントの物理試験方法:10.4供試体の作り方」に準拠して、セメント組成物から作製したモルタルをそれぞれ、40mm×40mm×160mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型してモルタル供試体を3個ずつ作製した。20℃水中で材齢28日まで養生し、JISR 5201:2015「セメントの物理試験方法:10.5測定」に準拠して、圧縮強さを測定した。
(コンクリートのスランプフロー値の測定)
実施例および比較例のセメント組成物から作製したコンクリートのスランプフロー値を、「高流動コンクリート施工指針の試験方法(土木学会基準)スランプフロー試験」に準拠して測定した。スランプフローの測定は、コンクリート組成物混練りの5分経過後に実施した。
[実施例および比較例のセメント組成物の作製]
以下のようにして、実施例および比較例のセメント組成物を作製した。
<実施例1〜18、比較例1〜5>
(セメントクリンカの作製)
クリンカ原料として、二酸化珪素(キシダ化学(株)製、試薬1級、SiO)、酸化鉄(III)(関東化学(株)製、試薬特級、Fe)、炭酸カルシウム(キシダ化学(株)製、試薬1級、CaCO)、酸化アルミニウム(関東化学(株)製、試薬1級、Al)、塩基性炭酸マグネシウム(キシダ化学(株)製、試薬特級、約4MgCO・Mg(OH)・5HO)、炭酸ナトリウム(キシダ化学(株)製、無水・特級、NaCO)およびリン酸三カルシウム(キシダ化学(株)製、試薬1級、Ca(PO)を用いた。
配合量を適宜変えて配合したクリンカ原料を、電気炉に投入して1000℃で30分間の焼成を行った後、1000℃から1450℃まで30分間かけて昇温させ、さらに1450℃で15分間の焼成を行った後、焼成物を大気中に取り出すことによって急冷して、各実施例、比較例に用いたセメントクリンカを作製した。
(セメント組成物の作製)
上記作製したセメントクリンカと石膏(半水石膏(関東化学(株)製半水石膏、型番:07108−01(焼石膏 鹿1級))および二水石膏((株)ノリタケカンパニーリミテッド製、型番:生石膏A号))と石灰石微粉末(関東化学(株)製、型番:07050−00(炭酸カルシウム(特級))とを配合した。そして、配合物を、ブレーン比表面積値が約3000〜約3800cm/gの範囲となるようにボールミルで粉砕して、各実施例および比較例のセメント組成物を作製した。なお、実施例および比較例のセメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合は、石膏の配合量を変えることにより、各セメント組成物間で変わるようにした。また、実施例および比較例のセメント組成物中の半水石膏のSOに換算した質量の割合は、石膏の配合量を変えることにより、セメント組成物間で変わるようにした。なお、配合された石膏中の二水石膏の一部が粉砕中に半水石膏に変わるので、それによっても実施例および比較例のセメント組成物中の半水石膏のSOに換算した質量の割合は各セメント組成物間で変わる。さらに、実施例および比較例のセメント組成物中の石灰石微粉末の割合は、石灰石微粉末の配合量を変えることにより、各セメント組成物間で変わるようにした。
(モルタルの作製)
JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準拠してモルタルを調製し,強度試験を実施した。
(コンクリートの作製)
下記の表1に示す配合割合で、実施例および比較例のセメント組成物、砂(揖斐川産川砂、粒径25〜5mm)、砂利(西島産砕石、粒径5mm以下)、AE減水剤(BASFポゾリス(株)製、商品名:マスターポリーヒード15S)および水を、パン型強制ミキサ(岡三機工(株)製、型番:STR−N2 8H)を用いて均質に混合して、コンクリートを調製した。
実施例および比較例のセメント組成物の評価結果を下記の表2および表3に示す。
[結果]
(1)実施例1〜18のセメント組成物の182日材齢コンクリート/モルタル強度比と比較例1〜5のセメント組成物の182日材齢コンクリート/モルタル強度比とを比較することによって、セメント組成物の40μmふるい残分の割合を12質量%以下とし、セメント組成物の2.8μmふるい通過分の割合を2.0〜5.0質量%とし、セメント組成物中の石灰石微粉末の割合を2.0質量%以上とし、セメント組成物の2.8μmふるい通過分における石膏のSOに換算した質量および石灰石微粉末の合計の割合を55質量%以上とすることにより、モルタルによる評価でコンクリートに使用したときのセメント組成物が発現する強度を担保でき、さらにコンクリートに使用する場合もモルタルによる評価でセメント組成物の品質管理をすることができることがわかった。
(2)実施例1〜11のセメント組成物の3日コンクリート強度と実施例12のセメント組成物の3日コンクリート強度とを比較することによって、セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合を2.0質量%以上にすることにより、セメント組成物が発現する短期強度をさらに強くできることがわかった。
(3)実施例1〜11のセメント組成物の28日コンクリート強度と実施例13〜15のセメント組成物の28日コンクリート強度とを比較することによって、セメント組成物のブレーン比表面積値を3000cm/g以上とし、セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合を3.5質量%以下とし、セメント組成物中の石灰石微粉末の割合を10質量%以下とすることにより、セメント組成物が発現する長期強度をさらに強くできることがわかった。
(4)実施例1〜11のセメント組成物のコンクリートのスランプフロー値と実施例16〜18のセメント組成物のコンクリートのスランプフロー値とを比較することによって、セメント組成物のブレーン比表面積を3800cm/g以下にし、セメント組成物の2.8μm通過分の割合を5.0質量%以下にし、セメント組成物中の半水石膏のSOに換算した質量の割合を1.3質量%以下にし、さらにセメント組成物中の3CaO・Alの割合を11.5質量%以下にすることによって、コンクリートの流動性をより良好にできることがわかった。

Claims (3)

  1. セメントクリンカ、石膏および石灰石微粉末を含むセメント組成物であって、
    前記セメント組成物の40μmふるい残分の割合は12質量%以下であり、
    前記セメント組成物の2.8μmふるい通過分の割合は2.0〜5.0質量%であり、
    前記セメント組成物中の前記石灰石微粉末の割合が2.0質量%以上であり、
    前記セメント組成物の2.8μmふるい通過分における前記石膏のSOに換算した質量および前記石灰石微粉末の合計の割合は55質量%以上であるセメント組成物。
  2. 前記セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合が2.0質量%以上である請求項1に記載のセメント組成物。
  3. 前記セメント組成物のブレーン比表面積値が3000cm/g以上であり、
    前記セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合が3.5質量%以下であり、前記セメント組成物中の前記石灰石微粉末の割合が10質量%以下である請求項2に記載のセメント組成物。
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