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蛍光体及びこれを用いた発光装置
本発明は、蛍光体及びこれを用いた発光装置に関する。詳細には、本発明は、例えば発光ダイオード(LED)などの固体発光素子で励起可能であり、さらに輝線状の緑色及び/又は赤色の光成分を放つ蛍光体及びこれを用いた発光装置に関する。
従来より、発光ダイオードの光で励起可能であり、さらに輝線状の緑色及び/又は赤色の光成分を放つ無機蛍光体として、特許文献1の蛍光体が知られている。特許文献1では、例えば、CaTbZr(AlO:Ce3+やCaTbZr(AlO:Ce3+,Eu3+などのガーネット型の結晶構造を持つ無機化合物の蛍光体が開示されている。
また、従来より、発光ダイオードの光で励起可能で、ブロードな青緑又は緑色の光成分を放つ無機蛍光体として、特許文献2の蛍光体が知られている。特許文献2では、例えば、CaSc:Ce3+などのカルシウムフェライト型の結晶構造を持つ無機蛍光体が開示されている。
このような蛍光体は、LED照明に代表される照明装置、又はバックライト機能付き液晶ディスプレイやレーザープロジェクターに代表される表示装置といった発光装置等で利用の検討がされ、実際に一部が利用されている。
国際公開第2014/097527号 特許第4148298号明細書
しかしながら、LED光で励起可能であり、さらに輝線状の緑色及び/又は赤色の光成分を放つ従来の無機蛍光体は、温度消光が大きい。このため、室温で高効率の発光が得られないだけでなく、蛍光体温度の上昇によって、さらに発光効率が低下するという問題があった。
一方、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つ従来の蛍光体は、LED光で高効率に励起し、さらに輝線状の緑色及び/又は赤色の光成分を放つことができなかった。このため、紫色又は青色の短波長可視光を放つ固体発光素子を励起源とし、輝線状の緑色及び/又は赤色の光成分を放つ高出力の発光装置を提供することが困難であった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、短波長可視光で励起することが可能でありさらに温度消光が改善された蛍光体及びこれを用いた発光装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係る蛍光体は、発光中心としてCe 3+ 含有し、かつ、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つ無機化合物からなる蛍光体である。そして、当該無機化合物は、ストロンチウムとルテチウムとを含有する。また、蛍光体の発光スペクトルは、450nm以上481nm以下に発光強度の最大値持つ
本発明の第二の態様に係る発光装置は、上述の蛍光体を備える。
本発明の蛍光体は、380nm以上470nm未満の短波長可視光で高効率に励起すること可能であり、さらに温度消光が小さいそのため、当該蛍光体を発光装置に用いた場合、装置の発光効率を向上させることが可能となる。
本発明の実施形態に係る発光装置を説明するための概略図である。 本発明の実施形態に係る半導体発光装置の一例を模式的に示す斜視図である。 (a)は図2におけるA−A線断面図であり、(b)は図2におけるB−B線断面図である。 半導体発光装置における封止部材の形成方法を説明するための図である。 参考例1及び2の蛍光体のXRDパターンを示す図である。 参考例1の蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示す図である。 参考例2の蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示す図である。 参考例1及び2の蛍光体の温度と、室温時の内部量子効率を100%とした場合における内部量子効率の維持率(%)との関係を示すグラフである。 実施例1の蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示す図である。 参考例1及び実施例1の蛍光体の温度と、室温時の内部量子効率を100%とした場合における内部量子効率の維持率(%)との関係を示すグラフである。 実施例2〜5の蛍光体のXRDパターンを示す図である。 実施例2〜5の蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示す図である。 実施例1及び実施例3の蛍光体の温度と、室温時の内部量子効率を100%とした場合における内部量子効率の維持率(%)との関係を示すグラフである。 実施例6及び7並びに参考例8〜11の蛍光体のXRDパターンを示す図である。 実施例6及び7並びに参考例8〜11の蛍光体の励起スペクトル及び発光スペクトルを示す図である。 実施例6及び参考例11の蛍光体の温度と、室温時の内部量子効率を100%とした場合における内部量子効率の維持率(%)との関係を示すグラフである。
以下、本実施形態に係る蛍光体及び当該蛍光体を用いた発光装置について詳細に説明する。なお図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[蛍光体]
一般に蛍光体は、結晶質の化合物を構成する元素の一部を、蛍光を放つイオンとなり得る元素で部分置換した化合物を指す。このような特性を持つイオンは、通常「発光中心」と呼ばれる。そして、本実施形態の蛍光体は、当該結晶質の化合物としての母体に、発光中心としてのイオンが導入されている。これにより、当該蛍光体は、外部刺激、例えば粒子線(α線、β線、電子線)や電磁波(γ線、X線、真空紫外線、紫外線、可視光線)の照射などによって容易に励起され、蛍光を放つことが可能となる。
そして、本実施形態に係る第一の蛍光体は、発光中心として、Ce3+とTb3+とを含有し、かつ、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つ無機化合物からなる蛍光体である。そして、当該蛍光体の励起スペクトルはCe3+によるブロードな励起帯を有し、励起帯は400nm以上470nm以下の範囲内にピークを有する。また、蛍光体の発光スペクトルは、発光ピーク波長が535nm以上560nm未満のTb3+による輝線状の蛍光成分を有する。そして、Tb3+による蛍光成分における535nm以上560nm未満の範囲内の発光ピークが、発光スペクトルの強度最大値となる。
また、本実施形態に係る第二の蛍光体は、発光中心として、Ce3+とTb3+とEu3+とを含有し、かつ、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つ無機化合物からなる蛍光体である。そして、当該蛍光体の励起スペクトルはCe3+によるブロードな励起帯を有し、励起帯は400nm以上470nm以下の範囲内にピークを有する。また、蛍光体の発光スペクトルは、発光ピーク波長が535nm以上560nm未満のTb3+による輝線状の蛍光成分、及び発光ピーク波長が580nm以上650nm未満のEu3+による輝線状の蛍光成分の少なくとも一方を有する。そして、Tb3+による蛍光成分における535nm以上560nm未満の範囲内の発光ピーク、又はEu3+による蛍光成分における580nm以上650nm未満の範囲内の発光ピークが、発光スペクトルの強度最大値となる。
なお、本明細書において、「ブロードな励起帯」とは、当該励起帯に対応する励起スペクトルの半値幅(FWHM)が25nm〜150nmであることを意味する。同様に、「ブロードな蛍光成分」とは、当該蛍光成分に対応する発光スペクトルの半値幅(FWHM)が50nm〜150nmであることを意味する。また、「輝線状の蛍光成分」とは、当該蛍光成分に対応する発光スペクトルの半値幅(FWHM)が3nm〜30nmであることを意味する。
上述のように第一の蛍光体は、発光中心として、少なくともセリウムイオン(Ce3+)とテルビウムイオン(Tb3+)とを含有している。また、第二の蛍光体は、発光中心として、セリウムイオン(Ce3+)とテルビウムイオン(Tb3+)に加えて、ユウロピウムイオン(Eu3+)を含有している。そして、当該蛍光体の発光スペクトルは、図6及び図7に示す特徴的な形状を有している。まず、本実施形態の蛍光体が図6及び図7に示す特徴的なスペクトルを示すメカニズムについて説明する。
一般に、Ce3+付活蛍光体は、吸収した光をそれよりも長波長の光に変換し、さらにその変換光は幅の広い分光分布を持つことが知られている。それに対して、Tb3+付活蛍光体は、吸収した光をそれよりも長波長の光に変換するが、その変換光は535nm以上560nm未満に強度最大値を持ち、さらに複数の輝線からなることが知られている。また、Eu3+付活蛍光体も、吸収した光をそれよりも長波長の光に変換するが、その変換光は580nm以上650nm未満に強度最大値を持ち、さらに複数の輝線からなることが知られている。
また、Ce3+とTb3+の両方を付活した蛍光体では、エネルギー伝達と呼ばれるメカニズムによって、Ce3+が吸収したエネルギーの少なくとも一部がTb3+へ移動することも知られている。エネルギー伝達によるエネルギー移動が生じるためには、通常、Ce3+の発光スペクトルとTb3+の吸収スペクトルが重なっている必要がある。
さらに、Tb3+とEu3+の両方を付活した蛍光体でも、エネルギー伝達と呼ばれるメカニズムによって、Tb3+が吸収したエネルギーの少なくとも一部がEu3+へ移動することも知られている。これは、Tb3+の発光スペクトルとEu3+の吸収スペクトルが若干重なっているためである。
そして、Ce3+とTb3+とEu3+の三種類のイオンを付活した蛍光体では、Ce3+からTb3+へのエネルギー伝達とTb3+からEu3+へのエネルギー伝達の二つが同時に起こることも知られている。これは、Ce3+が吸収したエネルギーの少なくとも一部がTb3+へ移動し、さらにTb3+を介して、Tb3+が吸収したエネルギーの少なくとも一部がEu3+へと移動するためである。
Ce3+からTb3+へのエネルギー伝達については、Ce3+が波長400nm以上490nm以下の紫ないし青色光を放つときであっても、Ce3+の発光スペクトルとTb3+の吸収スペクトルの重なりが大きいため、伝達確率が高いことも知られている。つまり、400nm以上490nm以下の範囲に発光ピークを持つCe3+付活蛍光体にTb3+を共付活した場合、Ce3+の発光スペクトルとTb3+の吸収スペクトルの重なりが大きいため、Ce3+からTb3+へエネルギー伝達する確率は高い。さらに、Tb3+の濃度が高い場合は、Tb3+とCe3+の間のイオン間距離が近くなるため、Ce3+が吸収したエネルギーの殆ど全てがTb3+に移動し、Tb3+に起因する輝線状の発光が主体として現れる。また、Tb3+の濃度が低い場合であっても、Ce3+が吸収したエネルギーの多くがTb3+に移動する。そのため、Ce3+に起因する400nm以上490nmにピークを有するブロードな発光成分と、Tb3+に起因する535nm以上560nm未満の輝線状の発光成分とが認められるようになる。
一方、Tb3+からEu3+へのエネルギー伝達については、Tb3+の発光スペクトルとEu3+の吸収スペクトルの重なりが小さいため、少なくともいずれかのイオンの濃度を高くする必要がある。これにより、Tb3+とEu3+の間のイオン間距離が小さくなり、伝達確率を高めることができる。その結果、Eu3+に起因する輝線状の発光が主体として現れるようになる。
Ce3+からTb3+を介するEu3+へのエネルギー伝達は、上記したCe3+からTb3+へのエネルギー伝達とTb3+からEu3+へのエネルギー伝達の二つを含むものであるので、両者の特徴を併せ持っている。この結果、第一の蛍光体の励起スペクトルはCe3+によるブロードな励起帯を有し、発光スペクトルはTb3+による輝線状の蛍光成分を有し、さらにTb3+に由来する発光ピークが当該発光スペクトルの強度最大値を示すものとなる。また、第二の蛍光体の励起スペクトルはCe3+によるブロードな励起帯を有し、発光スペクトルは、Tb3+による輝線状の蛍光成分、及びEu3+による輝線状の蛍光成分の少なくとも一方を有する。そして、Tb3+に由来する発光ピーク、又はEu3+に由来する発光ピークが、当該発光スペクトルの強度最大値を示すものとなる。
また、Ce3+は、パリティー許容遷移となる4f⇔5dの電子エネルギー遷移に基づく光吸収と発光を示すことから、通常、Ce3+の励起スペクトルの長波長端と発光スペクトルの短波長端とは若干の重なりを持つ。このため、Ce3+を単独で付活した際に450nm以上500nm未満の光を放つような蛍光体の場合、400nm以上470nm以下の範囲内にピークを有するCe3+によるブロードな励起帯が認められる。
なお、Ce3+とEu3+の共存は励起エネルギーの非発光緩和を助長し、発光効率の低下を誘発する原因となるため、無機化合物の結晶中におけるこれらの含有量は少ない方がよい。つまり、Ce3+が電子を放出してCe4+になりやすい性質を持つのに対して、Eu3+が電子を受け取りEu2+になりやすい性質を持つ。そして、無機化合物の結晶中では、Ce3+−Eu3+対がCe4+−Eu2+対として安定的に存在しやすい。そのため、Ce3+とEu3+の共添加は、Ce3+あるいはEu3+の機能低下を誘引する。
このように、本実施形態の第一及び第二の蛍光体は、上述の発光メカニズムを利用するものである。そのため、第一及び第二の蛍光体において、無機化合物中のTbの原子数は、無機化合物中のCeの原子数よりも多いことが好ましい。これにより、Tb3+とCe3+の間のイオン間距離が近くなるため、Tb3+に由来する輝線状の発光成分を主成分とする蛍光体を容易に得ることが可能となる。
また、第二の蛍光体のように、無機化合物中にさらにEuを含む場合には、無機化合物中のTbの原子数は、無機化合物中のEuの原子数よりも多いことが好ましい。これにより、比較的高濃度のTbが、CeとEuとを分断する構造となる。そのため、Ce3+−Eu3+間の距離が長くなり、Ce3+とEu3+の共添加に伴う発光効率の低下を抑制することが可能となる。
第一及び第二の蛍光体を構成する無機化合物は、少なくともアルカリ土類金属と希土類元素とを含有することが好ましい。アルカリ土類金属及び希土類元素は、いずれもイオン半径が1Å前後で近似しており、さらに第2族のアルカリ土類金属と第3族の希土類元素は、周期表では隣同士の関係にあり、化学的な性質も類似している。このため、光吸収イオンとして機能するCe3+イオンや、発光中心として機能するTb3+あるいはEu3+イオンとの置換が容易な無機化合物を得ることが可能となる。
第一及び第二の蛍光体を構成する無機化合物は、上述のアルカリ土類金属として、少なくともストロンチウム(Sr)を含有することが好ましい。これにより、現時点では理由は不明ながらも、短波長可視光で高効率に励起することができ、輝線状の緑色及び/又は赤色の光成分を放ち、さらに温度消光が改善された無機蛍光体を得ることができる。
第一及び第二の蛍光体を構成する無機化合物がアルカリ土類金属としてSrを含む場合、アルカリ土類金属として、さらにカルシウム(Ca)を含有することが好ましい。これにより、温度消光がさらに改善された蛍光体を得ることができる。なお、Caを含むことによって温度消光が改善される理由は、次のように考えられる。つまり、Sr2+の格子位置を、イオン半径がSr2+(1.12Å)よりも小さなCa2+(0.99Å)で置換することによって、無機化合物の結晶のイオン結合性が増加する。これにより、格子振動を伴ってエネルギー緩和する非発光遷移の確率が小さくなることに起因すると考えられる。
上述のように、第一及び第二の蛍光体を構成する無機化合物は、アルカリ土類金属と希土類元素とを含有することが好ましい。この場合、当該希土類元素として、セリウム(Ce)とテルビウム(Tb)とルテチウム(Lu)とを含有することが好ましい。Luを含むことにより、Tb3+を添加せずCe3+を単独で付活した際に、450〜500nmの範囲内に発光ピークを持つ蛍光体が得られる。また、当該蛍光体にさらにTb3+を共付活した場合には、Ce3+からTb3+へのエネルギー伝達が生じ易いものとなる。そして、Tb3+は輝線状の緑色成分を放つ機能を有するイオンであるため、これによりTb3+に由来する輝線状の発光を主成分とする蛍光体を容易に得ることができる。
第一及び第二の蛍光体を構成する無機化合物がアルカリ土類金属と希土類元素とを含有する場合、当該希土類元素としてCeとTbとLuに加え、さらにユウロピウム(Eu)を含むことも好ましい。Euを含むことにより、Tb3+を介して、Ce3+からTb3+へと伝達されたエネルギーを、さらにEu3+へと伝達することができる。そして、上述のように、Eu3+は赤色成分を放つ機能を有するイオンである。そのため、Eu3+に由来する輝線状の赤色成分を放つ蛍光体や、輝線状の赤色成分を主成分とする蛍光体を得ることができる。
第一及び第二の蛍光体を構成する無機化合物がアルカリ土類金属と希土類元素とを含有する場合、当該希土類元素としてCeとTbとLuに加え、さらにスカンジウム(Sc)を含むことも好ましい。Scはイオン半径が希土類元素の中で最も小さなSc3+(0.81Å)として、結晶中に含有される。イオン半径が小さなイオンは、最外殻電子と原子核との距離が小さく、原子核による最外殻電子の束縛力が強いため、結晶のイオン結合性を高めるように作用する。したがって、Scを含むことにより、無機化合物の結晶中のイオン結合性が高まり、これにより格子振動を伴ってエネルギー緩和する非発光遷移の確率を小さくすることができる。そして、蛍光体の温度消光は、格子振動を伴ってエネルギー緩和する非発光遷移の確率と相関するため、これにより温度消光を一層抑制することが可能となる。
第一の蛍光体を構成する無機化合物は、一般式:
MX
で示される化合物を母体とし、当該母体を構成する元素の一部がCe及びTbで置換されていることが好ましい。なお、式中、MはSr及びCaの少なくとも一方を含有し、XはLu及びScの少なくとも一方を含有する。
また、第二の蛍光体を構成する無機化合物は、一般式:
MX
で示される化合物を母体とし、当該母体を構成する元素の一部がCe、Tb及びEuで置換されていることが好ましい。なお、式中、MはSr及びCaの少なくとも一方を含有し、XはLu及びScの少なくとも一方を含有する。
第一及び第二の蛍光体を構成する無機化合物の母体として、このような化合物を使用することにより、短波長可視光で高効率に励起でき、輝線状の緑色及び/又は赤色の光成分を放ち、さらに温度消光が改善された無機蛍光体を容易に得ることができる。
一般式:MXで示される化合物の元素Mは、少なくともストロンチウム(Sr)を含有し、さらにカルシウム(Ca)を含有することが好ましい。なお、ストロンチウムやカルシウムは、これら以外の二価のイオンと成り得る元素で部分置換し得るものである。そのため、一般式:MXにおける元素Mは、カルシウムフェライト型の結晶構造を損ねない範囲で、Srと、アルカリ土類金属、マグネシウム(Mg)及び亜鉛(Zn)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素とを含有するものであってもよい。
なお、一般式:MXで示される化合物は、元素Mの過半数をSrで占めることが好ましい。ここで、元素Mの過半数をSrで占めるとは、元素Mを占める原子群の中の過半数をSr原子が占めることを意味する。このような組成にすることで、より高効率の蛍光体として機能し得るものとなる。なお、元素Mはストロンチウムのみで占められていてもよい。
また、一般式:MXで示される化合物の元素Xは、少なくともルテチウム(Lu)を含有することが好ましい。なお、ルテチウムは、ルテチウム以外の三価のイオンと成り得る元素で部分置換し得るものである。そのため、一般式:MXにおける元素Xは、カルシウムフェライト型の結晶構造を損ねない範囲で、Luと、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素とを含有するものであってもよい。
なお、一般式:MXで示される化合物は、元素Xの過半数をLuで占めることが好ましい。ここで、元素Xの過半数をLuで占めるとは、元素Xを占める原子群の中の過半数をLu原子が占めることを意味する。このような組成にすることで、より高効率の蛍光体として機能し得るものとなる。なお、元素Xはルテチウムのみで占められていてもよい。
本実施形態の蛍光体は、公知の手法により製造することが可能であり、一般的な固相反応を用いて合成することができる。
具体的には、まず、普遍的なセラミックス原料粉末である希土類酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩などを準備する。次に、所望の化合物の化学量論的組成又はこれに近い組成となるように原料粉末を調合し、乳鉢やボールミルなどを用いて十分に混合する。その後、アルミナるつぼなどの焼成容器を用いて、電気炉などにより混合原料を焼成することで、本実施形態の蛍光体を調製することができる。なお、混合原料を焼成する際には、大気中又は弱還元雰囲気下、1300〜1700℃の焼成温度にて数時間加熱することが好ましい。
なお、本実施形態の蛍光体は、水、有機溶剤、樹脂などの溶媒や水ガラスなどと適宜混合して、スラリー状、ペースト状、ゾル状、ゲル状としたものとして利用することができる。
このように、本実施形態の蛍光体において、励起スペクトルは、Ce3+によるブロードな励起帯を有し、当該励起帯は400nm以上470nm以下の範囲内にピークを有する。そのため、短波長可視光(380nm以上470nm未満の波長)を効率よく吸収して、波長変換することが可能となる。
さらに、第一の蛍光体の発光スペクトルは、発光ピーク波長が535nm以上560nm未満のTb3+による輝線状の蛍光成分を有する。そして、Tb3+による蛍光成分における、535nm以上560nm未満の範囲内の発光ピークが、蛍光体の発光スペクトルの強度最大値となる。また、第二の蛍光体の発光スペクトルは、発光ピーク波長が535nm以上560nm未満のTb3+による輝線状の蛍光成分、及び発光ピーク波長が580nm以上650nm未満のEu3+による輝線状の蛍光成分の少なくとも一方を有する。そして、Tb3+による蛍光成分における、535nm以上560nm未満の範囲内の発光ピーク、又はEu3+による蛍光成分における、580nm以上650nm未満の範囲内の発光ピークが、蛍光体の発光スペクトルの強度最大値となる。そのため、第一及び第二の蛍光体は、視認性が良好な緑色光あるいは赤色光を放出することができる。また、視感度の高い535nm以上560nm未満の範囲内、又は視感度の高い580nm以上650nm未満の範囲内に発光成分が集中する。そのため、当該蛍光体を発光装置に用いた場合、装置の発光効率を向上させることが可能となる。
なお、本実施形態の蛍光体は、発光中心がCe3+の蛍光体とTb3+の蛍光体を単に混合した混合物や、さらに発光中心がEu3+の蛍光体を単に混合した混合物ではない。つまり、本実施形態の蛍光体は、Ce3+とTb3+、あるいは、Ce3+とTb3+とEu3+とが、単一の化合物内で共存している。そのため、Ce3+が短波長可視光を吸収し、さらにCe3+からTb3+へのエネルギー伝達や、Ce3+からTb3+を介するEu3+へのエネルギー伝達が起こることから、上述のような特異な形状の発光スペクトルを得ることが可能となる。
[発光装置]
次に、本実施形態に係る発光装置を説明する。本実施形態の発光装置は、上記蛍光体を備えている。上述のように、本実施形態の蛍光体は、特殊なスペクトル形状を有し、かつ、色調制御された蛍光を放出する。このため、本実施形態の発光装置では、上記蛍光体と当該蛍光体を励起する励起源とを組み合わせることによって、効果的に色調制御された蛍光を出力することが可能となる。
なお、本実施形態の発光装置は、発光する機能を備えた電子装置を広く包含するものであり、何らかの光を発する電子装置であれば特に限定されるものではない。つまり、本実施形態の発光装置は、少なくとも本実施形態の蛍光体を利用しており、さらに当該蛍光体が放つ蛍光を少なくとも出力光として利用する発光装置である。
より詳細に説明すると、本実施形態の発光装置は、上述の蛍光体と当該蛍光体を励起する励起源とを組み合わせている。そして、蛍光体は、励起源が放つエネルギーを吸収し、吸収したエネルギーを色調制御された蛍光に変換するものである。なお、励起源は、蛍光体の励起特性に合わせて、放電装置、電子銃、固体発光素子などから適宜選択すればよい。
従来より、蛍光体を利用する発光装置は数多くあり、例えば蛍光灯や電子管、プラズマディスプレイパネル(PDP)、白色LED、さらには蛍光体を利用する検出装置などがこれに該当する。広義には、蛍光体を利用する照明光源及び照明装置並びに表示装置なども発光装置であり、レーザーダイオードを備えるプロジェクターやLEDバックライトを備える液晶ディスプレイなども発光装置とみなされる。ここで、本実施形態の発光装置は、蛍光体が放つ蛍光の種別によって分類できるため、この分類について説明する。
電子装置に利用される蛍光現象は、学術的に幾つかに区分されており、フォトルミネッセンス、カソードルミネッセンス、エレクトロルミネッセンスなどの用語で区別されている。「フォトルミネッセンス(photoluminescence)」とは、蛍光体に電磁波を照射したときに蛍光体が放つ蛍光をいう。なお、「電磁波」という用語は、X線、紫外線、可視光及び赤外線などを総称して指す。「カソードルミネッセンス(cathodeluminescence)」とは、蛍光体に電子線を照射したときに蛍光体が放つ蛍光をいう。また、エレクトロルミネッセンス(electroluminescence)とは、蛍光体に電子を注入したり電界をかけたりしたときに放つ蛍光をいう。原理的にフォトルミネッセンスに近い蛍光として、サーモルミネッセンス(thermoluminescence)という用語もあるが、これは蛍光体に熱を加えたときに蛍光体が放つ蛍光をいう。また、原理的にカソードルミネッセンスに近い蛍光として、ラジオルミネッセンス(radioluminescence)という用語もあるが、これは蛍光体に放射線を照射したときに蛍光体が放つ蛍光をいう。
先に説明したように、本実施形態の発光装置は、上述の蛍光体が放つ蛍光を少なくとも出力光として利用するものである。そして、ここでいう蛍光は少なくとも上述のように区分することができるため、当該蛍光は、上記ルミネッセンスから選ばれる少なくとも一つの蛍光現象として置き換えることができる。
なお、蛍光体のフォトルミネッセンスを出力光として利用する発光装置の典型例としては、X線イメージインテンシファイア、蛍光灯、白色LED、蛍光体とレーザーダイオードを利用する半導体レーザープロジェクター及びPDPが挙げられる。また、カソードルミネッセンスを出力光とする発光装置の典型例としては、電子管、蛍光表示管及びフィールドエミッションディスプレイ(FED)が挙げられる。さらに、エレクトロルミネッセンスを出力光とする発光装置の典型例としては、無機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(無機EL)、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)及び有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)が挙げられる。
以下、図面を参考に本実施形態の発光装置を説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置の概略を示す。図1(a)及び図1(b)において、励起源1は、本実施形態の蛍光体2を励起するための一次光を生成する光源である。励起源1は、α線、β線、電子線などの粒子線や、γ線、X線、真空紫外線、紫外線、可視光(特に紫色光や青色光などの短波長可視光)などの電磁波を放つ放射装置を用いることができる。また励起源1としては、各種の放射線発生装置や電子ビーム放射装置、放電光発生装置、固体発光素子、固体発光装置なども用いることができる。励起源1の代表的なものとしては、電子銃、X線管球、希ガス放電装置、水銀放電装置、発光ダイオード、半導体レーザーを含むレーザー光発生装置、無機又は有機のエレクトロルミネッセンス素子などが挙げられる。
また、図1(a)及び図1(b)において、出力光4は、励起源1が放つ励起線又は励起光3によって励起された蛍光体2が放つ蛍光である。そして出力光4は、発光装置において照明光や表示光として利用されるものである。
図1(a)では、励起線又は励起光3を蛍光体2に照射する方向に、蛍光体2からの出力光4が放出される構造の発光装置を示す。なお、図1(a)に示す発光装置としては、白色LED光源や蛍光ランプ、電子管などが挙げられる。一方、図1(b)では、励起線又は励起光3を蛍光体2に照射する方向とは逆の方向に、蛍光体2からの出力光4が放出される構造の発光装置を示す。図1(b)に示す発光装置としては、プラズマディスプレイ装置や反射板付き蛍光体ホイールを利用する光源装置、プロジェクターなどが挙げられる。
本実施形態の発光装置の具体例として好ましいものは、蛍光体を利用して構成した半導体発光装置、照明光源、照明装置、LEDバックライト付き液晶パネル、LEDプロジェクター、レーザープロジェクターなどである。
そして、上述のように、本実施形態の蛍光体において、励起スペクトルは、Ce3+によるブロードな励起帯を有し、当該励起帯は400nm以上470nm以下の範囲内にピークを有する。そのため、当該蛍光体は、短波長可視光を効率よく吸収して波長変換することができる。したがって、本実施形態の発光装置は、380nm以上470nm未満の範囲内にピークを持つ短波長可視光によって蛍光体を励起する構造を有することが好ましい。さらに、当該発光装置は、短波長可視光を放つ固体発光素子をさらに備えることが好ましい。
次に、本実施形態に係る半導体発光装置の具体例を詳細に説明する。図2に示すように、本実施形態に係る半導体発光装置100は、基板110、複数のLED(発光素子)120、及び複数の封止部材130を備える。基板110は、例えば、セラミックス基板や熱伝導樹脂などからなる絶縁層とアルミニウム板などからなる金属層との二層構造を有する。基板110は略方形の板状であって、基板110の短手方向(X軸方向)の幅W1が例えば12〜30mmであり、長手方向(Y軸方向)の幅W2が例えば12〜30mmである。
図3(a)及び(b)に示すように、LED120は、例えばGaN系のLEDであって、平面視形状が略長方形である。そしてLED120は、短手方向(X軸方向)の幅W3が例えば0.3〜1.0mm、長手方向(Y軸方向)の幅W4が例えば0.3〜1.0mm、厚み(Z軸方向の幅)が例えば0.08〜0.30mmである。
そしてLED120は、基板110の長手方向(Y軸方向)とLED120の素子列の配列方向とが一致するように配置されている。LED120は、一列に並んだ複数のLED120ごとに素子列を構成しており、それら素子列が基板110の短手方向(X軸方向)に沿って複数列並べて実装されている。具体的には、例えば、25個のLED120が5列5行でマトリックス状に実装されている。すなわち、1つの素子列は5個のLEDで構成され、そのような素子列が5列並べて実装されている。
各素子列では、LED120が長手方向(Y軸方向)に直線状に配列されている。このようにLED120を直線状に配列することによって、それらLED120を封止する封止部材130も直線状に形成することができる。
図3(b)に示すように、各素子列は、それぞれ長尺状の封止部材130によって個別に封止されている。そして、1つの素子列とその素子列を封止する1つの封止部材130とによって、1つの発光部101を構成している。したがって、半導体発光装置100は5つの発光部101を備えていることになる。
封止部材130は、蛍光体を含有した透光性の樹脂材料で形成されている。樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン・エポキシのハイブリッド樹脂、ユリア樹脂などを用いることができる。また、蛍光体としては、本実施形態の蛍光体を用いることができる。ただ、蛍光体としては、本実施形態の蛍光体のみならず、例えば、Eu2+、Ce3+、Tb3+、Mn2+の少なくともいずれかで付活した酸化物や酸ハロゲン化物などの酸化物系蛍光体も用いることができる。また、蛍光体としては、Eu2+、Ce3+、Tb3+、Mn2+の少なくともいずれかで付活した窒化物や酸窒化物などの窒化物系蛍光体、又は硫化物や酸硫化物などの硫化物系蛍光体も用いることができる。
具体的には、青色蛍光体として、BaMgAl1017:Eu2+、CaMgSi:Eu2+、BaMgSi:Eu2+、Sr10(POCl:Eu2+などが挙げられる。緑青又は青緑色蛍光体として、SrSiCl:Eu2+、SrAl1424:Eu2+、BaAl13:Eu2+、BaSiO:Eu2+が挙げられる。さらに緑青又は青緑色蛍光体として、BaZrSi:Eu2+、CaYZr(AlO:Ce3+、CaYHf(AlO:Ce3+、CaYZr(AlO:Ce3+,Tb3+が挙げられる。緑色蛍光体として、(Ba,Sr)SiO:Eu2+、CaMg(SiOCl:Eu2+、CaMg(SiOCl:Eu2+,Mn2+が挙げられる。さらに緑色蛍光体として、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、CeMgAl1119:Mn2+、YAl(AlO:Ce3+、LuAl(AlO:Ce3+が挙げられる。また、緑色蛍光体として、YGa(AlO:Ce3+、CaScSi12:Ce3+、CaSc:Ce3+、β−Si:Eu2+、SrSi:Eu2+が挙げられる。緑色蛍光体として、BaSi12:Eu2+、SrSi13Al21:Eu2+、YTbSiC:Ce3+、SrGa:Eu2+が挙げられる。緑色蛍光体として、CaLaZr(AlO:Ce3+、CaTbZr(AlO:Ce3+、CaTbZr(AlO:Ce3+,Pr3+が挙げられる。緑色蛍光体として、ZnSiO:Mn2+、MgGa:Mn2+が挙げられる。緑色蛍光体として、LaPO:Ce3+,Tb3+、YSiO:Ce3+,CeMgAl1119:Tb3+、GdMgB10:Ce3+,Tb3+が挙げられる。黄又は橙色蛍光体として、(Sr,Ba)SiO:Eu2+、(Y,Gd)Al12:Ce3+、α−Ca−SiAlON:Eu2+が挙げられる。黄又は橙色蛍光体として、YSiC:Ce3+、LaSi11:Ce3+、YMgAl(AlO(SiO):Ce3+が挙げられる。赤色蛍光体としては、SrSi:Eu2+、CaAlSiN:Eu2+、SrAlSi:Eu2+、CaS:Eu2+、LaS:Eu3+、YMg(AlO)(SiO:Ce3+が挙げられる。また、赤色蛍光体として、Y:Eu3+、YS:Eu3+、Y(P,V)O:Eu3+、YVO:Eu3+が挙げられる。赤色蛍光体として、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn4+、KSiF:Mn4+、GdMgB10:Ce3+,Mn2+が挙げられる。
図3に示すように、封止部材130は、短手方向(X軸方向)の幅W5が例えば0.8〜3.0mm、長手方向(Y軸方向)の幅W6が例えば3.0〜40.0mmであることが好ましい。また、LED120を含めた最大厚み(Z軸方向の幅)T1が例えば0.4〜1.5mm、LED120を含めない最大厚みT2が例えば0.2〜1.3mmであることが好ましい。封止信頼性を確保するためには、封止部材130の幅W5はLED120の幅W3に対して2〜7倍であることが好ましい。
封止部材130の短手方向に沿った断面の形状は図3(a)に示すように、略半楕円形である。また、封止部材130の長手方向の両端部131,132は、R形状になっている。具体的には、両端部131,132の形状は、図2に示すように、平面視における形状が略半円形であり、図3(b)に示すように、長手方向に沿った断面の形状が約90°の中心角を有する略扇形である。封止部材130の両端部131,132がこのようにR形状になっている場合は、それら両端部131,132において応力集中が生じ難いと共に、LED120の出射光を封止部材130の外部に取り出し易い。
各LED120は、基板110にフェイスアップ実装される。そして基板110に形成された配線パターン140によって、LED120に電力を供給する図示しない点灯回路ユニットと電気的に接続されている。配線パターン140は、一対の給電用のランド141,142と、各LED120に対応する位置に配置された複数のボンディング用のランド143とを有する。
図3に示すように、LED120は、例えば、ワイヤボンディングによりワイヤ(例えば、金ワイヤ)150を介してランド143と電気的に接続されている。ワイヤ150の一方の端部151はLED120と接合され、他方の端部152はランド143と接合されている。各ワイヤ150は、それぞれ接続対象である発光素子の属する素子列に沿って配置されている。さらに各ワイヤ150の両端部151,152も素子列に沿って配置されている。各ワイヤ150は、LED120やランド143と共に封止部材130により封止されているため劣化し難く、また絶縁されていて安全性も高い。なお、LED120の基板110への実装方法は、上記のようなフェイスアップ実装に限定されず、フリップチップ実装であってもよい。
LED120は、図2に示すように、同じ素子列に属する5個のLED120が直列接続され、5つの素子列が並列接続されている。なお、LED120の接続形態はこれに限定されず、素子列に関係なくどのように接続されていてもよい。ランド141,142には、図示しない点灯回路ユニットの一対のリード線が接続され、それらリード線を介して点灯回路ユニットから各LED120に電力が供給され、これにより各LED120が発光する。
封止部材130は、以下のような手順で形成することができる。まず、図2に示すように、一列に並んだ複数のLED120からなる素子列がX軸方向に複数列並べて実装された基板110を用意する。次に図4に示すように、基板110に、例えばディスペンサ160を用いて、素子列に沿って樹脂ペースト135をライン状に塗布する。その後、塗布後の樹脂ペースト135を固化させることによって、素子列ごとに個別に封止部材130を形成する。
本実施形態の半導体発光装置は、照明光源用や液晶ディスプレイのバックライト用、表示装置用の光源など広く利用可能である。つまり上述のように、本実施形態の蛍光体は、視認性が良好な光を放ち得る。そのため、当該蛍光体を照明光源等に用いた場合、高演色性かつ高効率の照明光源や、高輝度画面の広色域表示が可能な表示装置を提供することができる。
このような照明光源としては、本実施形態の半導体発光装置と、当該半導体発光装置を動作させる点灯回路と、口金など照明器具との接続部品とを組み合わせて構成することができる。また、必要に応じて照明器具を組み合わせれば、照明装置や照明システムを構成することにもなる。
このように、本実施形態の発光装置は、視感度や視認性の面で良好な特性を有するため、上述の半導体発光装置や光源装置以外にも広く利用することができる。
以下、本実施形態を実施例、比較例及び参考例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
固相反応を利用する調製手法を用いて、実施例、比較例及び参考例に係る蛍光体を合成し、その特性を評価した。なお、実施例、比較例及び参考例では、以下の化合物粉末を原料として使用した。
炭酸ストロンチウム(SrCO):純度3N、関東化学株式会社製
酸化ルテチウム(Lu):純度3N、信越化学工業株式会社製
酸化セリウム(CeO):純度4N、信越化学工業株式会社製
酸化テルビウム(Tb):純度3N、信越化学工業株式会社製
酸化ユウロピウム(Eu):純度3N、信越化学工業株式会社製
炭酸カルシウム(CaCO):純度2N5、関東化学株式会社製
酸化ジルコニウム(ZrO):純度3N、関東化学株式会社製
酸化アルミニウム(θ−Al):純度4N5、住友化学株式会社製
酸化スカンジウム(Sc):純度3N、信越化学工業株式会社製
また、比較例では、反応促進剤として以下のものを用いた。
フッ化アルミニウム(AlF):純度3N、株式会社高純度化学研究所製
炭酸カリウム(KCO):純度2N5、関東化学株式会社製
参考例1及び2]
参考例1では、目標とする蛍光体をSr(Lu0.899Ce0.001Tb0.1とした。また、参考例2では、目標とする蛍光体をSr(Lu0.889Ce0.001Tb0.1Eu0.01とした。そして、参考例1及び2の蛍光体を次のように調製した。
まず、表1に示す割合で各原料を秤量した。次に、これらの原料を適量の純水と共に、十分に湿式混合した。そして、混合後の原料を容器に移し、乾燥機を用いて150℃で3時間乾燥させた。乾燥後の混合原料を乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、焼成原料とした。
その後、焼成原料を蓋付きのアルミナるつぼに移し、箱型電気炉を用いて、1500〜1600℃の大気中で2時間本焼成した。
本焼成後の焼成物を、乳鉢と乳棒とを用いて数分間解砕した後、アルミナるつぼに移し、管状電気炉を用いて1500〜1600℃の弱還元雰囲気中で2時間焼成した。なお、弱還元雰囲気は、アルゴン96%と水素4%との混合ガス雰囲気とし、混合ガス流量を100ml/minとした。このようにして、参考例1及び2の蛍光体を調製した。
Figure 2016176017
[比較例1]
比較例1では、従来のガーネット型の結晶構造を持つ蛍光体(Ca(Tb0.98Ce0.02)Zr(AlO)を調製した。
まず、表2に示す割合で、各原料及び反応促進剤を秤量した。次に、ボールミルを用いて、これらの原料及び反応促進剤を適量の純水と共に、十分に湿式混合した。そして、混合後の原料を容器に移し、乾燥機を用いて120℃で一晩乾燥させた。乾燥後の混合原料を乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、焼成原料とした。
その後、焼成原料を蓋付きのアルミナるつぼに移し、箱型電気炉を用いて、1600℃の大気中で4時間本焼成した。
本焼成後の焼成物を、乳鉢と乳棒とを用いて数分間解砕した後、アルミナるつぼに移し、管状電気炉を用いて1600℃の弱還元雰囲気中で2時間焼成した。なお、弱還元雰囲気は、アルゴン96%と水素4%との混合ガス雰囲気とし、混合ガス流量を100ml/minとした。このようにして、比較例1の蛍光体を調製した。
Figure 2016176017
参考例1及び2で得られた蛍光体について、次の評価を行った。
まず、参考例1及び2の蛍光体の結晶構造解析を、X線回折装置(製品名:MultiFlex、株式会社リガク製)を用いて行った。測定結果を図5に示す。図5において、参考例1のXRDパターンを(a)、参考例2のXRDパターンを(b)として示す。また、PDF(Power Diffraction Files)に登録されている、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つSrLuのパターン(PDF No.32−1242)を(c)として示す。
図5中の(a)及び(b)と(c)とを比較して分かるように、参考例1及び2の蛍光体のXRDパターンは、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つSrLuのパターンと概ね一致した。このことは、少なくとも参考例1及び2の蛍光体が、カルシウムフェライト型構造を有する化合物を主体にしてなることを示している。
次に、参考例1及び2の蛍光体の励起特性と発光特性を、分光蛍光光度計(FP−6500、日本分光株式会社製)を用いて測定した。図6は、参考例1の蛍光体(Sr(Lu0.899Ce0.001Tb0.1)における発光スペクトル1aと励起スペクトル2aを示している。そして、図7は、参考例2の蛍光体(Sr(Lu0.889Ce0.001Tb0.1Eu0.01)における発光スペクトル1bと励起スペクトル2bを示している。なお、参考例1及び2の蛍光体における発光スペクトル測定時の励起波長は、各々407nm及び406nmとし、励起スペクトル測定時のモニタ波長は発光ピーク波長とした。また、図6及び図7において、発光スペクトルと励起スペクトルは、いずれも最大強度を100として規格化している。
図6から分かるように、参考例1の蛍光体の励起スペクトルはCe3+によるブロードな励起帯を有し、当該励起帯は紫〜青色の波長領域に励起強度の極大値を持つ。具体的には、参考例1の蛍光体におけるCe3+によるブロードな励起帯は、407nmに励起強度の極大値を持つ。そのため、参考例1の蛍光体は、400nm以上470nm以下の範囲内の励起光を吸収して発光するという特徴を持つ。
そして、図6から、参考例1の蛍光体の発光スペクトルは、発光ピーク波長が535nm以上560nm未満である、Tb3+による輝線状の蛍光成分を有している。さらに、Tb3+による蛍光成分における、535nm以上560nm未満の範囲内の発光ピークが、当該発光スペクトルの強度最大値となることが分かる。
また、図7から分かるように、参考例2の蛍光体の励起スペクトルは、参考例1と同様に、Ce3+によるブロードな励起帯を有し、当該励起帯は紫〜青色の波長領域に励起強度の極大値を持つ。具体的には、参考例2の蛍光体におけるCe3+によるブロードな励起帯は、406nmに励起強度の極大値を持つ。そのため、参考例2の蛍光体は、400nm以上470nm以下の範囲内の励起光を吸収して発光するという特徴を持つ。
そして、図7から、参考例2の蛍光体の発光スペクトルは、発光ピーク波長が535nm以上560nm未満である、Tb3+による輝線状の蛍光成分を有している。さらに、発光ピーク波長が580nm以上650nm未満である、Eu3+による輝線状の蛍光成分も有している。そして、Eu3+による蛍光成分における、580nm以上650nm未満の範囲内の発光ピークが、当該発光スペクトルの強度最大値となることが分かる。
以上の通り、参考例1及び2の蛍光体は、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つ無機化合物であり、上述の特徴的な励起スペクトル及び発光スペクトルを有する蛍光体であることが分かる。
次に、参考例1及び比較例1の蛍光体の温度消光を、瞬間マルチ測光システム(MPCD−9800、大塚電子株式会社製)と、加熱機構を備える量子効率測定システム(QE−1100、大塚電子株式会社製)とを用いて評価した。
ます、参考例1及び比較例1の蛍光体における温度消光の評価手順を示す。最初に各々の蛍光体に、励起ピーク波長の光を照射して励起させ、室温下(30℃)での内部量子効率を測定した。その後、200℃まで10℃刻みで蛍光体を加熱し、その都度、内部量子効率を測定した。このようにして、参考例1及び比較例1の温度消光を評価した。評価結果を図8に示す。図8では、蛍光体の温度と、室温時の内部量子効率を100%とした場合における内部量子効率の維持率(%)との関係を示し、(A)は参考例1の蛍光体の結果であり、(B)は比較例1の蛍光体の結果である。
図8の(A)と(B)とを比較して分かるように、参考例1の蛍光体における内部量子効率の維持率は、比較例1よりも高い。なお、参考例2の温度消光の測定結果は省略したが、参考例1と同様の特性を示した。この理由は、参考例の蛍光体の温度消光が、Ce3+を単独付活した蛍光体の温度消光によって概ね決定されることによる。これについては、実施例を用いて後ほど説明する。
このように、LED光で励起可能であり、さらに輝線状の緑色及び/又は赤色の光成分を放つ、従来のガーネット型の結晶構造を持つ無機化合物の蛍光体は、温度消光が大きい課題があった。しかし、本実施形態の蛍光体は、温度消光が改善できることが分かる。
実施例1]
エネルギー伝達を利用する発光メカニズムを備えた蛍光体の温度消光は、一般に、エネルギー伝達を利用する以前の蛍光体、つまり本実施形態の蛍光体ではCe3+を単独付活した蛍光体の温度消光と同様の傾向を示す。そのため、合成作業が容易なCe3+単独付活蛍光体を用いて、蛍光体の温度消光を調べた結果を説明する。
実施例1では、目標とする蛍光体をSr(Lu0.9995Ce0.0005とした。そして、実施例1の蛍光体を次のように調製した。まず、表3に示す割合で、各原料を秤量した。次に、参考例1及び2と同様にこれら原料を混合し、焼成することにより、実施例1の蛍光体を調製した。
Figure 2016176017
次に、参考例1及び2と同様に、実施例1の蛍光体の結晶構造解析を行った。その結果、実施例1の化合物は、参考例1及び2と同様のXRDパターンを示した。そのため、実施例1は、Sr(Lu0.9995Ce0.0005で表され、カルシウムフェライト型の結晶構造を有する化合物であることが分かった。
さらに、実施例1の蛍光体の励起特性と発光特性を、参考例1及び2と同様に測定した。図9は、実施例1の蛍光体(Sr(Lu0.9995Ce0.0005)における発光スペクトル1cと励起スペクトル2cとを示している。なお、実施例1の蛍光体における発光スペクトル測定時の励起波長は405nmとし、励起スペクトル測定時のモニタ波長は発光ピーク波長とした。また、図9において、発光スペクトルと励起スペクトルは、いずれも最大強度を100として規格化している。
図9から分かるように、実施例1の蛍光体の励起スペクトルはCe3+によるブロードな励起帯を有し、当該励起帯は紫〜青色の波長領域に励起強度の最大値を持つ。具体的には、実施例1の蛍光体におけるCe3+によるブロードな励起帯は、405nmに励起強度の最大値を持つ。そのため、実施例1の蛍光体は、400nm以上470nm以下の範囲内の励起光を吸収して発光するという特徴を持つ。
そして、図9から、実施例1の蛍光体の発光スペクトルは、Ce3+によるブロードな蛍光成分を有し、さらに当該蛍光成分は青〜緑青光の波長領域に発光強度の最大値を持つ。具体的には、実施例1の蛍光体のCe3+によるブロードな蛍光成分は、455nmに発光強度の最大値を持ち、450nm以上500nm未満の波長範囲の青色〜緑青光を放つような蛍光体である。
次に、実施例1の蛍光体の温度消光を参考例1と同様に測定した。図10では、参考例1の蛍光体の温度消光(A)及び実施例1の蛍光体の温度消光(C)を比較して示す。図10に示すように、参考例1の蛍光体の温度消光は、実施例1の蛍光体の温度消光と同様の傾向にある。そのため、エネルギー伝達を利用する発光メカニズムを備えた蛍光体の温度消光は、一般に、エネルギー伝達を利用する以前の蛍光体の温度消光で決定することができる。
実施例2〜5]
実施例2〜5の蛍光体では、目標とする蛍光体を(Sr1-xCa)(Lu0.9995Ce0.0005(但し、0.1≦x≦0.7)で表される化合物とした。そして、実施例2〜5の蛍光体を次のように調製した。まず、表4に示す割合で各原料を秤量した。次に、参考例1及び2と同様にこれら原料を混合し、焼成することにより、実施例2〜5の蛍光体を調製した。
Figure 2016176017
次に、参考例1及び2と同様に、実施例2〜5の蛍光体の結晶構造解析を行った。測定結果を図11に示す。図11において、実施例2のXRDパターンを(d)、実施例3のXRDパターンを(e)、実施例4のXRDパターンを(f)、実施例5のXRDパターンを(g)として示す。また、PDFに登録されている、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つSrLuのパターンを(c)として示す。
図11中の(d)〜(g)と(c)とを比較して分かるように、実施例2〜5の蛍光体のXRDパターンは、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つSrLuのパターンと概ね一致した。このことは、少なくとも実施例2〜5の蛍光体が、(Sr1-xCa)(Lu0.9995Ce0.0005で表され、カルシウムフェライト型構造を有する化合物であることを示している。
次に、実施例2〜5の蛍光体の励起特性と発光特性を、参考例1及び2と同様に測定した。図12は、実施例2の発光スペクトル1dと励起スペクトル2d、実施例3の発光スペクトル1eと励起スペクトル2e、実施例4の発光スペクトル1fと励起スペクトル2f、及び実施例5の発光スペクトル1gと励起スペクトル2gを示している。なお、発光スペクトル測定時の励起波長は励起ピーク波長とし、励起スペクトル測定時のモニタ波長は発光ピーク波長とした。また、図12において、発光スペクトルと励起スペクトルは、いずれも最大強度を100として規格化している。
図12から分かるように、Caの置換量(x)が増加するにつれて、発光スペクトル及び励起スペクトルは両者とも相対的に長波長側へとシフトした。具体的には、発光スペクトルと励起スペクトルのピークは、例えば、xの数値が0.1の実施例2では、各々460nmと407nmであったが、xの数値が0.3の実施例3では、各々467nmと410nmにまでシフトした。また、xの数値が0.5の実施例4では、各々478nmと412nmにまでシフトし、xの数値が0.7の実施例5では、各々481nmと414nmにまでシフトした。そして、発光スペクトルの長波長シフトに伴って、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つ蛍光体が放つ光色は、青色から青緑色へと変化した。
なお、Caの置換量が増加するにつれて長波長シフトする理由は、次のように考えられる。つまり、Sr2+の格子位置を、イオン半径がSr2+(1.12Å)よりも小さなCa2+(0.99Å)で置換することによって、結晶の格子体積が減少し、Ce3+−O2−距離が縮小したことに起因すると考えられる。一般に、Ce3+−O2−距離が縮小するとCe3+−O2−相互作用が増加し、Ce3+の発光準位は下がるとされている。これにより、発光準位と基底状態とのエネルギー差が減少し、Ce3+の励起スペクトルと発光スペクトルが、エネルギーの低い長波長側へとシフトしたと考えられる。
以上の結果は、実施例2〜5の蛍光体が、波長405〜415nm付近の紫〜青色光を効率よく吸収して、青〜青緑色光へと波長変換できることを示すものである。
次に、実施例3の蛍光体の温度消光を参考例1と同様に測定した。図13では、実施例3の蛍光体の温度消光(D)及び実施例1の蛍光体の温度消光(C)を比較して示す。図13に示すように、実施例3の蛍光体((Sr0.7Ca0.3)(Lu0.9995Ce0.0005)の内部量子効率の維持率は、実施例1の蛍光体(Sr(Lu0.9995Ce0.0005)よりも高い。この結果は、本実施形態に係るカルシウムフェライト型構造を有する蛍光体が、Caを含むことによって、さらに温度消光が改善されることを示している。
実施例6及び7並びに参考例8〜11]
実施例6及び7並びに参考例8〜11の蛍光体では、目標とする蛍光体を(Sr0.7Ca0.3)(Lu0.997−yScCe0.003(但し、0≦y≦0.997)で表される化合物とした。そして、実施例6及び7並びに参考例8〜11の蛍光体を次のように調製した。まず、表5に示す割合で各原料を秤量した。次に、参考例1及び2と同様にこれら原料を混合し、焼成することにより、実施例6及び7並びに参考例8〜11の蛍光体を調製した。
Figure 2016176017
まず、参考例1及び2と同様に、実施例6及び7並びに参考例8〜11の蛍光体の結晶構造解析を行った。図14において、実施例6のXRDパターンを(h)、実施例7のXRDパターンを(i)、参考例8のXRDパターンを(j)、参考例9のXRDパターンを(k)、参考例10のXRDパターンを(l)、参考例11のXRDパターンを(m)として示す。また、PDFに登録されている、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つSrLuのパターンを(c)として示す。
図14中の(h)〜(l)と(c)とを比較して分かるように、実施例6及び7並びに参考例8〜10の蛍光体のXRDパターンは、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つSrLuのパターンと概ね一致した。このことは、少なくとも実施例6及び7並びに参考例8〜10の蛍光体が、(Sr0.7Ca0.3)(Lu0.997−yScCe0.003で表され、カルシウムフェライト型構造を有する化合物であることを示している。
なお、図14中の(m)に示した参考例11の蛍光体のXRDパターンは、実施例6及び7並びに参考例8〜10と異なっている。ただ、参考例11の回折ピークの位置は、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つSrLuのピーク位置に対して、単純に高角度側に2〜3°ずれている。このようなXRDパターンの一致は、実質的に、参考例11の蛍光体が(Sr0.7Ca0.3)(Sc0.997Ce0.003で表され、カルシウムフェライト型の結晶構造を有する化合物であることを示している。
次に、実施例6及び7並びに参考例8〜11の蛍光体の励起特性と発光特性を、参考例1及び2と同様に測定した。図15は、実施例6の発光スペクトル1hと励起スペクトル2h、実施例7の発光スペクトル1iと励起スペクトル2i、参考例8の発光スペクトル1jと励起スペクトル2jを示している。また、図15は、参考例9の発光スペクトル1kと励起スペクトル2k、参考例10の発光スペクトル1lと励起スペクトル2l及び参考例11の発光スペクトル1mと励起スペクトル2mを示している。なお、発光スペクトル測定時の励起波長は励起ピーク波長とし、励起スペクトル測定時のモニタ波長は発光ピーク波長とした。また、図15において、発光スペクトルと励起スペクトルは、いずれも最大強度を100として規格化している。
図15から分かるように、Scの置換量(y)が増加するにつれて、発光スペクトルと励起スペクトルは両者とも相対的に長波長側へとシフトした。具体的には、発光スペクトルと励起スペクトルのピークは、例えば、yの数値が0の実施例6では、各々467nmと410nmであったが、yの数値が0.1の実施例7では、各々476nmと410nmにまでシフトした。また、yの数値が0.3の参考例8では、各々490nmと414nmにまでシフトし、yの数値が0.5の参考例9では、各々490nmと421nmにまでシフトした。さらに、yの数値が0.7の参考例10では、各々492nmと433nmにまでシフトし、yの数値が0.997の参考例11では、各々496nmと440nmにまでシフトした。そして、発光スペクトルの長波長シフトに伴って、蛍光体が放つ光色は、青色から青緑色へと変化した。
なお、Scの置換量が増加するにつれて長波長シフトする理由は、次のように考えられる。つまり、Lu3+の格子位置を、イオン半径がLu3+(0.86Å)よりも小さなSc3+(0.75Å)で置換することによって、結晶の格子体積がさらに減少し、Ce3+−O2−距離が縮小したことに起因すると考えられる。一般に、Ce3+−O2−距離が縮小するとCe3+−O2−相互作用が増加し、Ce3+の発光準位は下がるとされている。これにより、発光準位と基底状態とのエネルギー差が減少し、Ce3+の励起スペクトルと発光スペクトルが、エネルギーの低い長波長側へとシフトしたと考えられる。
以上の結果は、実施例6及び7並びに参考例8〜11の蛍光体が、波長410〜440nm付近の紫〜青色光を効率よく吸収して、青〜青緑色光へと波長変換できることを示すものである。
次に、実施例6及び参考例11の蛍光体の温度消光を参考例1と同様に測定した。図16では、実施例6の蛍光体の温度消光(E)及び参考例11の蛍光体の温度消光(F)を比較して示す。図16に示すように、参考例11の蛍光体((Sr0.7Ca0.3)(Sc0.997Ce0.003)の内部量子効率の維持率は、実施例6の蛍光体((Sr0.7Ca0.3)(Lu0.997Ce0.003)よりも高い。この結果は、本実施形態に係るカルシウムフェライト型の結晶構造を有する蛍光体が、Scを含むことによって、さらに温度消光が改善することを示している。
なお、Scを含むことによって温度消光が改善される理由は、次のように考えられる。つまり、Lu3+の格子位置を、イオン半径がLu3+(0.86Å)よりも小さなSc3+(0.75Å)で置換することによって、無機化合物の結晶のイオン結合性が増加する。これにより、格子振動を伴ってエネルギー緩和する非発光遷移の確率が小さくなることに起因すると考えられる。
以上、本実施形態を実施例によって説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
2 蛍光体

Claims (8)

  1. 発光中心としてCe 3+ 含有し、かつ、カルシウムフェライト型の結晶構造を持つ無機化合物からなる蛍光体であって、
    前記無機化合物は、ストロンチウムとルテチウムとを含有し、
    前記蛍光体の発光スペクトルは、450nm以上481nm以下に発光強度の最大値を持つ蛍光体。
  2. 前記無機化合物は、さらにカルシウムを含有する、請求項1に記載の蛍光体。
  3. 前記無機化合物は、さらにスカンジウムを含有する、請求項1又は2に記載の蛍光体。
  4. 当該無機化合物は、一般式:
    MX
    (式中、MはSrを含有し、XはLuを含有する)で示される化合物を母体とし、前記母体を構成する元素の一部がCeで置換されている、請求項に記載の蛍光体。
  5. 前記無機化合物にCe 3+ を単独付活している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蛍光体。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蛍光体を備える発光装置。
  7. 前記蛍光体は、380nm以上470nm未満の範囲内にピークを持つ短波長可視光によって励起する請求項6に記載の発光装置。
  8. 前記短波長可視光を放つ固体発光素子をさらに備える請求項7に記載の発光装置。
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