JP2016175829A - 薄板硬質脆性材料割断方法及び装置 - Google Patents

薄板硬質脆性材料割断方法及び装置 Download PDF

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知顕 篠田
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泰博 國枝
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達也 中島
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Abstract

【課題】 超薄板ガラスを大型で複雑な装置を使用することなく、切断面のダメージや歪が少ない状態で割断を行なう方法及び装置を提供する。【解決手段】超硬工具を、超薄板ガラスの表面に、送り方向の法線方向に100ミリニュートン以下の定荷重で押し付け送ることにより刻線(スクライブ線)を形成し、然る後該刻線に沿って割断を行なうことを特徴とする硬質脆性材料の割断方法。【選択図】図2

Description

本発明は、家電用、光学用等に用いられる、例えばガラス、石英、水晶あるいはセラミックス等の硬質脆性材料(硬脆材料)の割断加工に際して、該硬質脆性材料の表面に刻線を形成するスクライビング方法及びその装置、更には割断方法に関する。
近年、液晶テレビやパソコン、携帯電話やスマートフォン、デジカメあるいはセンサー等の軽薄化や高精度化、高画素化、解像度の向上に伴い、そのディスプレイに用いられる液晶パネル(フラットパネルディスプレィ)の高精密化の要求が急である。そして、それに用いられる硬質脆性材料であるガラス板の厚みも、極めて薄層化して行く傾向があり、30ないし100μm(0.03ないし0.1mm)程度の超薄板ガラスが開発され実用化されている。なお、本発明においては、薄板硬質脆性材料、就中、上述の目的で使用される薄板ガラス板を加工の対象とするものであり、1mm(1000μm)以上の厚みを有するガラス板を通常のガラス板、0.2mmないし1mm(200ないし1000μm)の厚みを有するものを薄板ガラス、0.2mm(200μm)以下の厚みを有するものを超薄板ガラスと記載する。
従来、通常のガラス板等の硬質脆性材料の割断加工においては、例えばダイヤモンド、窒化ホウ素(CBN)、スクライブローラー等の専用工具を用いて、1〜4kg/cm程度の押圧力を加えてガラス表面に溝(刻線:スクライブ線)を形成し、これに沿って手指等で外力を加えて割断を行なうという古典的な手法が用いられてきた。この従来の方法によれば、例えばダイヤモンド工具等超硬工具を押し付け送ることによりガラス板に脆性破壊が起こり、加工部分で水平クラックに伴う微小切り屑(カレット)が発生するとともに、ガラス板の厚み方向に垂直クラックが成長して刻線が形成され、その刻線に沿って、例えば手動で、割断が行われる。そして、工具先端刃先への荷重が高いため、工具自体のライフは短い。
このような従来の手法に準じた方法を、高い精密度を要するガラス、例えばフラットパネルディスプレィ用の超薄板ガラスに適用した場合、スクライブ線を刻線する過程でガラスが破損したりすることがあり、また、微小切り屑がガラス表面を汚染し品質を著しく低下せしめるだけでなく、割断面が鏡面でなく歪があり、曲げ強度が低下したりする問題点があるのに加えて、切断面の品質を是正向上させるために、切断面を研磨し、洗浄を行なって鏡面を得るという煩雑な後工程が必要であった。よって、これらの従来の手法が、近年の高精密さが要求される超薄板ガラスの割断加工へ適用されることには問題が多かった。
上述の問題点を解決するために様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、0.1〜0.5kg/cm程度の押圧力でカッターをガラス面に押し当て、その押圧力を周期的に変動振動させ、スクライブ線を形成し水平クラックの発生を抑制する方法が開示されている。また、特許文献2には、ダイヤモンドカッターの0.2〜0.5kg程度の複数回の切り込み操作により、切り込み量のバラツキの少ない、最適な切り込み深さのスクライブ線が形成されることが開示されている。また、特許文献3には液晶表示パネル用のガラスのスクライブ装置が記載されており、複数の突起を設けてなる刻線形成手段を用い、それを50〜500g程度の軽荷重で、ガラスに押し付け、振動を与えた後0.6〜3kgf程度の力をかけることにより垂直クラックが深くかつ水平クラックが少ない刻線を形成し刻線形成手段の寿命を大幅に延ばす方法が開示されている。
また、特許文献4にはV字形状の刃を有するガラス切断用カッターホィールであり、前記V字形状の刃の稜線部が連続する刃先となるように形成され、ガラス基板にスクライブラインを刻設するにあたり、水平クラックの発生を抑え、垂直クラックを形成する工具が開示されている。更に特許文献5には円板状の回転自在のカッターを200gf前後の押圧力で0.2mm以下の薄板ガラスに押圧しスクライブして、クラックの発生やガラスの切り粉の発生を抑えてスクライブ線を形成する装置が開示されている。
上述のいずれの方法も、機械的方法であり、水平クラックの発生を抑える、即ち、切り屑の発生を抑え、薄板ガラスの高精密表面の汚染を少なくすることを考慮しているが、垂直方向にクラックを発生させ、それを起点にして割断加工を行なうという点では同じである。更に水平クラックの発生がゼロになるという程のものでもない。即ち、これらの方法でガラスを割断すると、割断面は鏡面にはならず歪があり、切断面の研磨、洗浄等の後工程の必要性が解消されるものではなく、更に、薄板ガラスの物性例えば曲げ強度等の物性が低下するという問題点を解決するものではなかった。また、これ等の文献に記載された押圧力で超薄板ガラスにスクライブ線を形成すると、スクライブ線は形状のバラツキ多く、品質的にも問題が多いことが指摘されていた。更に、これらの機械的方法が超薄板ガラスに適用された場合、比較的高い押圧力により超薄板ガラスを破砕してしまうという問題も指摘されている。
更には、特許文献6には、特定の稜線角度を有する当接部材とこの当接部材を、高周波により微小振動させながらワーク面に沿って送り、スクライブ線を形成する方法が開示されている。このことによりワーク表面には塑性変形された凹みおよびそれに連なる送り方向に延びる垂直クラックが形成され、そのクラックを結んでスクライブ線が形成することが記載されている。しかし、この方法によれば、高周波振動装置等の付帯装置の設置等が必要であり、装置の大型化、複雑化の問題点が伴うものである。そして、スクライブ線に沿った割断面は鏡面ではないので切断面の研磨、洗浄等の後工程は必要である。更に、この方法で刻線されたスクライブ線も、形状のバラツキが多く、品質的にも問題が多いことが指摘されていた。
特許文献1〜6に記載された方法は、いずれも機械的方法による刻線加工方法であり、記載されているスクライブ線は破壊を伴わない塑性変形であり、クラックは脆性破壊である。割断は凹状のスクライブ線と垂直クラック(メディアンクラック)に沿って行なわれる。メディアンクラックが深いと、刻線に沿って円滑な割断が行なわれ、浅いと例え割断はできても割断面は不均質で品質的な問題多く、いずれの場合も割断面には凹凸や歪、瑕疵があり、面粗さも不良である。更に、これらの機械的方法が超薄板ガラスに適用された場合、比較的高い押圧力により超薄板ガラスを破砕してしまうという問題も指摘されている。
これら機械的刻線加工では、垂直クラックの発生は当然であり、それを避けて鏡面状態の割断面を得ることを目的として、機械的な手法ではなく、レーザービームを用いてガラス表面に割断用溝を形成(スクライビング)する方法が特許文献7に開示されている。この方法によれば、ガラス表面にレーザーを照射しその直後を急冷することにより、ガラス表面に大きな引張応力を発生させスクライブ線を形成する方法であるから、従来の機械的刻線加工に見られる水平クラックや垂直クラックに伴う問題点は解消されるも、レーザー発生照射装置、それを冷却する装置が重要な要件となっており、装置の複雑化、大型化という問題点が伴うものであった。更に、レーザー照射に伴う熱の問題を解消するために、低エネルギーの短パルスレーザー光をガラス表面に掃引照射することにより、ガラス面のスクライビングを行なうという方法が特許文献8に開示されているが、装置自体の大型化、レーザー照射装置の複雑化、大型化という問題を十分に解消するものではない。
通常のガラス板あるいは0.2mmないし1mm厚の薄板ガラスの場合は切断面にダメージが存在してもその後の研磨加工、洗浄作業等により、そのダメージを除去することができる。しかし、薄板ガラスより更に薄い0.2mm厚以下の超薄板ガラスになると厚さが薄すぎて切断面の研磨加工等が非常に行ないにくい。そこで、切断面のダメージや歪が少なく、しかも大型で複雑な装置を用いることなく、優れた面粗さを有する状態で超薄板ガラスを切断する技術の必要性が強く求められるようになって来た。
特開平9−278473号公報 特開2001−113521号公報 特開2000−178038号公報 特開2010−126382号公報 特開2009−91178号公報 特開2000−290032号公報 特開2008−115067号公報 特開2007−331983号公報
上述の如き問題点に鑑み、本発明者等は鋭意研究を行なった結果、薄板ガラスより更に薄い0.2mm(200μm)厚以下の超薄板ガラスの割断加工に関しては、ワーク(超薄板ガラス)に対する加工工具の荷重を特定の低定荷重に設定し、ワーク上に該加工工具を押し付け送ることにより、凹状のスクライブ線(刻線)が形成され、その後の手動等の作業によりワークの良好な割断加工が行なわれることを見出したものである。そして、加工に伴う押圧力よりワークが破砕してしまうという問題点も解決されるに至った。
上述のスクライブ線は垂直方向のクラック(以下メディアンクラックという)を伴う場合もあり、また伴わない場合もあるが、いずれの場合も良好な割断が可能である。十分な深さのメディアンクラックを伴う場合は、その後の手作業等による割断作業が容易であり、極めて低い荷重でのスクライブ線の形成が可能である。そして、メディアンクラックを伴わない場合は、水平方向のクラックも発生させることなく、即ち脆性破壊を伴うことなく、塑性変形のみで必要な深さのスクライブ線が形成され、その後の手作業等による良好な割断作業が行なわれ、かつ割断面はダメージの全くない鏡面であり、他の物性や外観への影響もなく、そのままの状態で割断面を使用することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、上述の課題は、超硬工具を、超薄板硬質脆性材料の表面に、超薄板硬質脆性材料に対して0.8度ないし8度のキール角を持つように押し付け、送り方向の法線方向に100ミリニュートンないしそれ以下の定荷重で送ることにより刻線(スクライブ線)を形成し、然る後該刻線に沿って割断を行なうことを特徴とする超薄板硬質脆性材料の割断方法によって達成される。ここでいう超薄板硬質脆性材料とは、ガラス、石英、水晶あるいはセラミックス等の極めて薄い板状のものを言い、具体的には0.2mm(200μm)以下の厚みを有するものを指す。また、超硬工具とは、ダイヤモンド、CBN、超硬バイト等を取り付けた工具、更にはダイヤモンドあるいはダイヤモンドライクカーボン(DLC)でコーティングした工具等を言い、特にダイヤモンドであることが好ましい。上述の、送り方向の法線方向に押し付ける定荷重を、本発明では押付法線方向定荷重と記載し記号Fで表示する。
そして、ここで言う押付法線方向定荷重とは、工具先端を、ワークである超薄板硬質脆性材料に接触させ加工を行なう場合、接触点の接線に垂直な直線(法線)方向へ一定の荷重を加えることを言う。本発明の場合、刻線作業を行なっている間、即ち、ワークに対し工具先端を相対的に移動(送る)している間、その荷重が一定の値で行なわれていることを示す。
工具先端に取り付ける刻線用工具の形状は次のようであることが好ましい。即ち、図1に示す通り、工具形状を左右対称の楔形とし、その頂角αの角度の範囲を30度ないし90度、特に好ましくは、30度ないし60度とすることが好ましい。90度を超えると水平クラックが出やすく好ましくない。また、30度以下のダイヤモンド工具を製作する技術が現在まだないので30度を下限とした。そしてその送り方向に対するキール角(接触角)βを0.8度ないし8度に設定することにより良好な刻線加工を行なうことができる。ここで言うキール角とは、ダイヤモンド等加工工具のワークに対する送り方向への傾斜を示す(図2及び図3参照)ものである。キール角が8度を超えると微小水平クラックが多数発生することとなり、本発明にいう良好なスクライブ線形成加工を行なうことはできない。また0.8度未満であるとスクライブ線の深さが不十分であり、その後の割断作業ができない。
本発明により、超薄板ガラスの機械的方法によるスクライブ線刻線加工を、従来にない低い荷重で行なうことが可能となり、レーザー加工や高周波振動加工等、装置的に大型で冷却装置等が必要な方法を必要としなくなった。そして、そのスクライブ線に沿って例えば手作業による割断作業が容易であり、その割断面も従来よりも遥かに良好である。更に、刻線加工中にワークが部分的に破砕したり、重大な瑕疵が発生するという問題点も完全に解決できたものであり、関連産業界に資すること極めて大である。
超硬工具保持ユニットBに超硬工具Aを取り付けた状態の正面図 超硬工具保持ユニットBに超硬工具Aを取り付けた状態の側面図 超硬工具保持ユニットBに取り付けられた超硬工具AでワークCの加工を行なう状態を示す斜視説明図 荷重制御用静圧エアシリンダーDの断面図 超硬工具Aを取り付けた超硬工具保持ユニットBを荷重制御用静圧エアシリンダーDの先端に取り付けた状態の断面図 治具Eに、超硬工具A、超硬工具保持ユニットBおよび荷重制御用静圧エアシリンダーDを取り付けた状態を示す断面図 手動割断用治具の平面図 は手動割断用治具の断面図 は図7、図8に示す手動割断用治具上にワークCを載置した状態を示す断面図
本発明の肝要は、前述の通り、脆性材料である超薄板ガラス(ワーク)に対して、100ミリニュートン(以下mNと記載する)以下の一定低荷重をかけながら超硬工具の送り加工を行ない、その後の例えば手作業による割断作業が容易である凹状のスクライブ線を形成することにある。即ち、従来の機械的方法での刻線(スクライブ線)形成作業が1〜40ニュートン(N)程度の荷重で行なわれていたのに比較して、本発明では100mN以下という極めて低い定荷重で刻線形成を行なうことにより、顕著な水平方向のクラックの発生や、ワークの破砕などの好ましからざる現象を伴うことなく割断作業が可能なスクライブ線が刻線できるという点にある。本発明によれば、かかる低荷重により形成されるスクライブ線は、十分な深さのメディアンクラックを伴ったもの、あるいはメディアンクラックを伴わないものがあるが、いずれの場合もその後の手動による割断作業は容易に行なうことが可能である。
就中、メディアンクラックを伴わない場合は、前記スクライブ線は、脆性破壊を伴うことなく、塑性変形のみで形成されている。ここでいう塑性変形とは、ある物質に応力をかけ、その応力を取り除いても元の状態に回復せず永久変形を生ずる現象を言う。そして脆性破壊とは、応力をかけることにより、塑性変形を伴わず破壊する現象を言い、亀裂(クラック)や微小切り屑等を生ずる。即ち、塑性変形とは、脆性破壊を起こすような高い応力ではなく、それよりも低い応力をもって加工を行なうことを重要な点とする。即ち、このようにして刻線されたスクライブ線は、水平方向の微小クラック、垂直方向のメディアンクラックの何れも伴っていないことをその特徴とし、その後の手動による割断作用は容易でありかつその割断面も従来よりも遥かに良好であること、即ち、本発明における最も好ましい形態を発現することを見出した。
また、前述の凹状のスクライブ線が垂直方向のメディアンクラックのみを伴う場合も、割断は容易であり、その割断面は良好であって、水平方向の顕著なクラックによる割断面のダメージも少なく、面粗さも比較的良好であり修正の必要がほとんどないこと、即ち本発明における次に好ましい形態を発現することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
本発明のスクライブ線形成方法は、まずワークである硬質脆性材料の破壊靭性値(KIC)および硬さ(H)を実測し、破壊エネルギーFと巨視せん断応力Fτを算出し、脆性破壊なしの刻線加工条件を設定する。つまり、脆性破壊生成のない理論加工ソフトウェア条件を確定した上で、実際の加工実験を行ない、最適条件を得たものである。
そして、その最適条件とは、超薄板ガラスに対して、特定のキール角(接触角)で、押付法線方向定荷重が100mN以下の荷重で超硬工具を押し付け送り、刻線(スクライブ線)形成加工を行なうことにある。かかる低荷重で超硬工具を超薄板ガラスに対して押し付け、送ることにより、良好な刻線を形成することを本発明者等は見出したものである。このように加工された超薄板ガラスに例えば手でもって外力を加え(折り曲げ)れば、その表面に形成された刻線に沿って容易に割断され、その割断面は鏡面である。押付法線方向定荷重Fが100mNを越えると切り屑が多く発生するようになり、顕著な水平クラックも発生し脆性破壊が起こるようになり、例え割断はできても本発明の目的から外れるので好ましくない。また、押付法線方向定荷重Fが30mN未満であると塑性変形による溝の形成、あるいはメディアンクラックの深さが十分ではなく、その後の割断作業が難しい、あるいはできないこともある。
押付法線方向荷重Fを一定に保つための制御方法については、公知の方法を使用することができ、特に限定を受けるものではないが、本発明の場合、100mN以下という極めて低い荷重を変化がないように一定に与えることが必要である。従って、例えば、超硬工具Aを先端に具備したユニットBの端部を、荷重制御用静圧エアシリンダーDの下端に懸垂し、超硬工具先端を超薄板ガラスC上の、送り方向の法線方向に押し付けて刻線を形成するに必要な定荷重を、該静圧エアシリンダーDの内圧を制御して調整する荷重制御装置を有することを特徴とする超薄板ガラスの割断方法、即ちエアシリンダー方式の荷重制御方法等を挙げることができる。
前述のエアシリンダー方式の荷重制御方法とは、特に限定を受けるものではないが、本発明のように、ワークに対する加工工具の荷重を極めて低荷重に設定し加工を行なう場合に有効な方法である。即ち、本発明の超薄板ガラスの刻線形成用荷重装置は、静圧エアシリンダーの下部の気室に高圧エアを封入し、超硬工具を先端に具備したユニットの自重をキャンセルさせ、上部の気室に送り方向の法線方向に工具先端を押し付ける定荷重に相当する圧力のエアを導入し、所定の定荷重を発現させることを特徴とする超薄板ガラスの刻線用荷重制御装置である。具体的には、例えば図5に示すような荷重制御装置である。即ち、本発明のように、100mN以下という極めて低い荷重を安定して一定に加える場合、その荷重が工具の自重よりも軽いため、工具の自重をキャンセルする力を静圧シリンダーDで発生させる。図5において、Mgは工具の自重であり、シリンダー下部気室G2にエアを送り、Mgに相当する一定圧力F2を発生させ、工具の自重をキャンセルさせる。シリンダー上部気室G1にエアを送り所定の低荷重、例えば50mNに相当する一定圧力F1を発生させる。図5において明らかな如くF1はF2とは逆方向に作用する圧力である。G1をオフにする、即ちF1をゼロにすると加工工具の見掛け荷重がゼロとなり工具が浮上する。このような構造とすることにより、即ちF2を固定し、F1を加減することで、工具の上昇、下降が可能となり、かつ任意の押付法線方向一定低荷重Fを設定することが可能となる。
更にまた、ボイスコイルモーターを応用したボイスコイル方式による荷重制御方式を挙げることもできる。永久磁石の磁界中のコイルに電流を流すことにより発生する垂直方向の力により、押付法線方向荷重Fを一定に保つための制御することも可能である。
上記のいずれの場合もワークである超薄板ガラスに対する強制切込み制御ではなく、ワークの表面の起伏に沿って工具を送り定荷重制御により送り加工を行なうのであるから、例え、ワークに凹凸があっても工具はそれに追随して対応し、スクライブ線の深さや形状に変動を与えることはない。つまり、凹凸の変動が大きなワークに対しては、ワークの凹凸に追随できる能力に優れた装置、即ち応答性に優れた装置を選定することが肝要である。
更に、押付法線方向荷重を一定の低荷重に保つために、超硬工具Aを先端に具備したユニットBに力センサーを取り付け、リアルタイムに荷重値を検出し、前記静圧エアシリンダーのF1内圧をコンピューターで制御するようにしても良い。
上述の加工を達成するためには、超硬工具Aは、カッターホィールの如く送る操作により自在に回転するタイプのものではなく、固定刃を先端に有するものである。そしてその材質は、本発明においてはダイヤモンド、CBNあるいは超硬合金等を取り付けた工具を言い、特に限定を受けるものでないが、ダイヤモンドを取り付けることが好ましい。ダイヤモンド以外であるとそのライフが短く、切削力の変動(低下)が激しく、安定な加工が期待できない。
そしてその形状は、図1の正面図に示す通り工具形状を左右対称の楔形とし、その頂角αの角度の範囲を30度ないし90度とすることが好ましい。頂角αが90度を越えると水平クラックが出やすく、安定した塑性変形のみでの加工は行なわれず、また、頂角αが小さくなると刃物としての切れ味は良くなるが、30度以下の頂角αを持つダイヤモンド工具は製造工程でカケやすくそれを製造する技術がまだ開発されていない。その頂角を形成する稜線a及びbは、図1及び図2では直線で示されているが、曲線であっても構わない。そして、図2の矢印の方向が送り方向である。
図3は、超硬工具保持ユニットBに取り付けられた超硬工具AでワークCの加工を行なう状態を示す斜視説明図である。図面においてAは超硬工具であり、ワークであるCに対してキール角βで押圧される。そして、矢印の方向が送り方向であり、定められた一定荷重下で送られることにより、刻線加工が行なわれる。超硬工具の稜線bは、図面で示すように直線であってもよく、また曲線であってもよい。更に、超硬工具Aの、ワークである超薄板ガラスCへの、送り方向に対するキール角(接触角)βを0.8度ないし8度に設定することにより良好な刻線加工を行なうことができる。8度を超えると微小水平クラックが多数発生することとなり、本発明にいう良好なスクライブ線形成加工を行なうことはできない。また0.8度未満であるとスクライブ線の深さが不十分であり、その後の割断作業ができない。
ワークCである超薄板ガラスと、超硬工具Aは相対的に移動することによって、加工が行なわれるのであるが、実際にはワークCを固定し、超硬工具Aを動かしてもよいし、逆に、超硬工具Aを固定しワークCの方を動かしても良く、更には双方を動かしてもよく特に限定を受けるものではない。超硬工具Aを動かす場合は、汎用モーター、サーボモーター、あるいはそれ以外の公知の駆動手段を、超硬工具Aを先端に具備したユニットBに具備せしめ、それを駆動することによりユニットを動かすことが好ましい。また、ワークCの方を動かす場合はワークCを載置したテーブル自体をそれに付属する汎用モーター、サーボモーター等を駆動して動かしても良いし、移動距離が短く正確さが要求される場合、テーブルに取り付けたピエゾ素子あるいは超磁歪アクチュエータ等を使用して駆動することも可能である。超硬工具AとワークCの相対的な移動(送り)速度を以降、超硬工具Aの送り速度と呼ぶ。そして刻線の形状は直線であってもよいし、必要に応じて、曲線あるいは紋様状のものとしてもよい。また、工具の移動(駆動)については、超硬工具を取り付けた荷重制御装置ユニットを、静圧空気軸受を用いた直線案内であるエアスライド上に載置し、そのエアスライドを何らかの手段、例えばリニアモーター等で駆動することも可能である。この方法によれば駆動は円滑かつ制振されたものであり、また位置的な正確さを期することができる。あるいは、ボールねじを用い、ナット上に静置テーブルを設け、その上に工具を取り付けた荷重制御装置ユニットを載置し、ねじ軸を回転させてユニットを移動させる手段を取ってもよい。
そして、本発明においては超硬工具Aの送り速度については、特に限定を受けるものではなく、どのような送り速度であっても良好な加工が可能である。しかしながら、効率的かつ経済的な観点および装置の汎用性等の観点から、200mm/minないし500mm/min程度の送り速度で行なうことが好適である。
上述のような方法にて超薄板ガラス表面への刻線形成加工が行なわれるのであるから、刻線によるスクライブ線深さは強制切込みによるものではない。従って、加工条件としてスクライブ線深さを設定するものではないが、実際には、1〜3μm程度の深さとなる。また、スクライブ線は塑性変形のみで形成されているもの、あるいはスクライブ線に脆性破壊である十分な深さのメディアンクラックを伴ったものがある。いずれの場合もそれに続く割断作業は問題なく行なわれる。
次に、スクライブ線形成の工程に続く割断作業工程について言及する。前述の通り、割断作業はスクライブ線の両側より、手作業によって外力を加える(折り曲げる)ことにより、ワーク(超薄板ガラス)はスクライブ線に沿って割断される。ここで言う手作業とは、例えば作業員が両手でワークの両端を把持してワークを折り曲げてゆく作業を言う。しかしながら、ワーク自体の表面積が大きかったり、長尺ものであったりした場合は取扱いが難しい上、その操作自体によりワークが損傷したり汚染したりすることが多い。そのような好ましからざる現象を避けるため、図7及び図8に示す手動割断用治具(ジグ)を用いることができる。
図面において、図7は手動割断用治具の平面図、図8はその断面図である。図7において、該治具は中央線Hに沿って内側に開閉自在になっており、左右両側のパネル(Ia、Ib)には押え具Ja、Jbが設けられている。該治具の中央線Hと、ワーク上に形成されたスクライブ線(刻線)Kが対向し一致するように、即ち、図9に示すように凹状のスクライブ線Kが形成された面が裏面になるように、ワークCを治具上に載置し、押え具Ja、JbでワークCを固定した上でパネルIbを手動で折り曲げてゆけば、適当な角度でワークCはスクライブ線Kに沿って円滑に割断され、割断部以外には損傷、汚染等は発生しない。パネルの材質については特に限定されるものではないが、鉄系の金属板であることが好ましく、また、押え具としてマグネットを用いることが好ましい。
以下実施例、比較例により、本発明の詳細を説明するが、これにより特に限定を受けるものではない。実施例、比較例において使用される装置、加工条件、ワーク等の詳細を以下に示す。
図1及び図2に示すように超硬工具Aを超硬工具保持ユニットBに取り付け、更にそれを図5に示すように荷重制御用静圧エアシリンダーDの下端に懸垂し、ワークである超薄板ガラスC上をXYZ3軸のLMガイドスライドに乗ったステージをボールネジにより駆動させる装置(図示せず)によって送り、刻線加工を行ない、その後手動による割断を行なった。実施例1から実施例8および比較例1から比較例3においては、割断作業は作業員が両手でワークの両端を把持してワークを折り曲げるという完全な手作業で行なった。
ワークとしては、100μmの厚みの超薄板ガラスを用い、超硬工具の種類と形状を変え、送り速度300mm/minに設定してスクライブ線形成加工を行ない、形成されたスクライブ線の形状およびクラックの状態を観察し、然る後手動による割断作業を行ない、光学顕微鏡による割断面の観察を行なった。キール角βおよび押付法線方向定荷重Fを変化せしめて一連の実験を行なった。
〔実施例1〕
超硬工具として、30度の頂角αを持つダイヤモンド刃を使用し、これを超硬工具保持ユニットBに、キール角βが1度になるように取り付け、更に超硬工具保持ユニットBを荷重制御用静圧エアシリンダーDの下端に懸垂し、押付法線方向定荷重Fを50mNとなるようにワークである超薄板ガラス上を送った。送り速度は300mm/minで行なった。超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成されたが、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って手動で割断作業を行なった所、クラックフリーで割断が可能であり、割断面を光学顕微鏡で観察したところ、凹凸や歪、瑕疵もない極めて良好な鏡面であった。そして割断面の洗浄あるいは研磨加工等の必要もなかった。
〔実施例2〕
キール角βを2度とする以外は実施例1と同様にしてスクライブ線形成加工および割断作業を行なったところ、実施例1と同様に、クラックフリーで割断が可能であり、割断面を光学顕微鏡で観察したところ、凹凸や歪、瑕疵もない極めて良好な鏡面であった。そして、同様に割断面の洗浄あるいは研磨加工等の必要もなかった。
実施例1および実施例2で得られた結果は、脆性破壊を伴うことなく、塑性変形のみでスクライブ線が刻線されたことを示しており、その後の手作業等による割断作業が容易であり、水平クラックあるいは垂直クラックに伴うガラスの微小切り屑(カレット)の発生もなく、極めて理想的な割断が行なわれたものであり、本発明における最も好ましい例である。
〔比較例1〕
キール角βを10度とする以外は実施例1と同様にしてスクライブ線形成加工および手動による割断作業を行なったところ、水平クラックが発生し、正常な割断はできなかった。
〔比較例2〕
キール角βを0.5度とする以外は実施例1と同様にしてスクライブ線形成加工および割断作業を行なったところ、V字状のスクライブ線が形成され、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかったが、割断はできなかった。割断できなかった理由はスクライブ線深さが不足していたためと推定される。
〔実施例3〕
キール角βを2度とし、押付法線方向定荷重Fを70mNとする以外は実施例1と同様にしてスクライブ線形成加工および割断作業を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って手動で割断作業を行なった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。そして、実用上の問題はなかった。
〔比較例3〕
キール角βを10度とし、押付法線方向定荷重Fを70mNとする以外は実施例1と同様にしてスクライブ線形成加工および割断作業を行なったところ、水平クラックが発生し、割断はできなかった。
〔実施例4〕
ダイヤモンド刃の頂角αを45度とし、キール角βを5度とし、押付法線方向定荷重Fを30mNとする以外は実施例1と同様にしてスクライブ線形成加工および割断作業を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って手動で割断作業を行った所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例5〕
ダイヤモンド刃の頂角αを45度とし、キール角βを2度とする以外は実施例1と同様にしてスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って手動で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例6〕
ダイヤモンド刃の頂角αを45度とし、キール角βを5度とし、押付法線方向定荷重Fを70mNとする以外は実施例1と同様にしてスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って手動で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例7〕
ダイヤモンド刃の頂角αを60度とし、キール角βを2度とし、押付法線方向定荷重Fを50mNする以外は実施例1と同様にしてスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って手動で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例8〕
ダイヤモンド刃の頂角αを60度とし、キール角βを2度とし、押付法線方向定荷重Fを70mNする以外は実施例1と同様にしてスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って手動で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法同等あるいはそれ以上の面であった。
実施例3から実施例8において、スクライブ線に連通して深いメディアンクラックが形成され、それに沿って割断は可能であるとの結果が得られた。即ち、このスクライブ線は塑性変形であるメディアンクラックを伴う溝であるが、これに沿って良好な割断は可能であった。割断面の品質は実施例1あるいは実施例2で得られた面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の品質を持つ面であり、本発明方法の範囲に入るものである。以下の実施例においても同様である。
以上の結果より、超硬工具を100mN以下という従来法の常識を越えた低定荷重で、ワークである超薄板ガラスの表面を送ることにより、工具の種類、工具の頂角、ワークに対するキール角等によって、影響は受けるが、良好なスクライブ線の刻線加工、および手作業による割断作業が可能であることが明らかになった。就中、いかなるクラックも伴わない、塑性変形のみのスクライブ線の形成およびダメージや凹凸のない鏡面の断面を得る可能性はあるが、その範囲はかなり限定されることが明らかであった。
次に、最終工程即ち、作業員が両手でワークの両端を把持してワークを折り曲げてゆく手動割断作業をより均質に、作業員の熟練度に左右されないように行なうことを目的として、図7および図8に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断を行なった。以下の実施例および比較例に示す実験はこの手動割断用治具を用いて行なった実験例である。超硬工具として、ダイヤモンド刃を使用し、これを超硬工具保持ユニットBに取り付け、更に超硬工具保持ユニットBを荷重制御用静圧エアシリンダーDの下端に懸垂し、所定の押付法線方向定荷重Fでワークである100μmの厚みの超薄板ガラスの上を、送り速度で300mm/minで送った。各実施例、比較例において、ダイヤモンド刃の頂角α、キール角βおよび押付法線方向定荷重Fを変更してスクライブ線形成加工を行ない、形成されたスクライブ線の形状およびクラックの状態を観察し、然る後図7および図8に示す手動割断用治具を用い、図9に示すようにスクライブ線が下側に来るように載置して、前述の手法に則した手作業による割断作業を行ない、光学顕微鏡による割断面の観察を行なった。
〔実施例9〕
頂角α=30度、キール角β=1度、押付法線方向定荷重F=30mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なった。超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成されたが、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って、図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、クラックフリーで割断が可能であり、割断面を光学顕微鏡で観察したところ、凹凸や歪、瑕疵もない極めて良好な鏡面であった。そして割断面の洗浄あるいは研磨加工等の必要もなかった。
〔実施例10〕
頂角α=30度、キール角β=2度、押付法線方向定荷重F=30mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なった。超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成されたが、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って、図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、クラックフリーで割断が可能であり、割断面を光学顕微鏡で観察したところ、凹凸や歪、瑕疵もない極めて良好な鏡面であった。そして割断面の洗浄あるいは研磨加工等の必要もなかった。
〔実施例11〕
頂角α=30度、キール角β=3度、押付法線方向定荷重F=30mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なった。超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成されたが、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って、図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、クラックフリーで割断が可能であり、割断面を光学顕微鏡で観察したところ、凹凸や歪、瑕疵もない極めて良好な鏡面であった。そして割断面の洗浄あるいは研磨加工等の必要もなかった。
実施例9〜11のか結果から明らかな通り、30度の頂角αを持つダイヤモンド刃を使用し、押付法線方向定荷重Fを30mNと極めて低荷重とすることにより、キール角βが比較的広い範囲で、本発明における最も好ましい形態の結果を得ることができた。
〔実施例12〕
頂角α=30度、キール角β=1度、押付法線方向定荷重F=35mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例13〕
頂角α=30度、キール角β=2度、押付法線方向定荷重F=35mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なった。超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成されたが、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って、図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、クラックフリーで割断が可能であり、割断面を光学顕微鏡で観察したところ、凹凸や歪、瑕疵もない極めて良好な鏡面であった。そして割断面の洗浄あるいは研磨加工等の必要もなかった。
〔実施例14〕
頂角α=30度、キール角β=3度、押付法線方向定荷重F=35mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例15〕
頂角α=30度、キール角β=5度、押付法線方向定荷重F=35mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なったところ、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例16〕
頂角α=30度、キール角β=2度、押付法線方向定荷重F=40mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なったところ、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例17〕
頂角α=30度、キール角β=3度、押付法線方向定荷重F=40mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例18〕
頂角α=30度、キール角β=5度、押付法線方向定荷重F=40mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例19〕
頂角α=30度、キール角β=2度、押付法線方向定荷重F=50mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なった。超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成されたが、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って、図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、クラックフリーで割断が可能であり、割断面を光学顕微鏡で観察したところ、凹凸や歪、瑕疵もない極めて良好な鏡面であった。そして割断面の洗浄あるいは研磨加工等の必要もなかった。
〔実施例20〕
頂角α=30度、キール角β=3度、押付法線方向定荷重F=50mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例21〕
頂角α=30度、キール角β=5度、押付法線方向定荷重F=50mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔比較例4〕
頂角α=40度、キール角β=0.5度、押付法線方向定荷重F=30mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、V字状のスクライブ線が形成され、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なったが、割断はできなかった。
〔実施例22〕
頂角α=40度、キール角β=0.8度、押付法線方向定荷重F=30mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工行なった。超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成されたが、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って、図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、クラックフリーで割断が可能であり、割断面を光学顕微鏡で観察したところ、凹凸や歪、瑕疵もない極めて良好な鏡面であった。そして割断面の洗浄あるいは研磨加工等の必要もなかった。
〔実施例23〕
頂角α=40度、キール角β=1度、押付法線方向定荷重F=30mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なった。超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成されたが、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って、図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、クラックフリーで割断が可能であり、割断面を光学顕微鏡で観察したところ、凹凸や歪、瑕疵もない極めて良好な鏡面であった。そして割断面の洗浄あるいは研磨加工等の必要もなかった。
〔比較例5〕
頂角α=40度、キール角β=9.5度、押付法線方向定荷重F=30mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、V字状のスクライブ線が形成され、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って、図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なったが、割断はできなかった。
〔実施例24〕
頂角α=40度、キール角β=8度、押付法線方向定荷重F=80mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工業を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔実施例25〕
頂角α=40度、キール角β=1度、押付法線方向定荷重F=100mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なった。超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成されたが、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って、図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なった所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
〔比較例6〕
頂角α=40度、キール角β=9.5度、押付法線方向定荷重F=120mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、V字状のスクライブ線が形成され、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って、図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なったが、割断はできなかった。
〔実施例26〕
頂角α=45度、キール角β=1度、押付法線方向定荷重F=30mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なった。超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成されたが、水平クラックもメディアンクラックも観察されなかった。このスクライブ線に沿って、図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行った所、クラックフリーで割断が可能であり、割断面を光学顕微鏡で観察したところ、凹凸や歪、瑕疵もない極めて良好な鏡面であった。そして割断面の洗浄あるいは研磨加工等の必要もなかった。
〔実施例27〕
頂角α=60度、キール角β=1度、押付法線方向定荷重F=30mNとして、前述の方法でスクライブ線形成加工を行なったところ、超薄板ガラス上にはV字状のスクライブ線が形成され、それに連通して、ワークの反対側の面まで達する深いメディアンクラックが形成された。このスクライブ線に沿って図7に示す手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行った所、割断は可能であった。割断面の品質は実施例1の割断面よりは多少劣るが、従来法と同等あるいはそれ以上の面であった。
以上述べた通り、超硬工具を100mN以下という従来法の常識を越えた低定荷重でワークである超薄板ガラスの表面を送ることにより、工具の種類、工具の頂角、ワークに対するキール角等によって、影響は受けるが、良好なスクライブ線の刻線加工が可能となった。スクライブ線が、水平方向のクラックは伴わず、十分な深さのメディアンクラックのみを伴う場合は、脆性破壊ではあるが、その後の手動によるワークの割断作業は容易であり工業的な利用は十分に可能である。また、いかなるクラックも伴わない、塑性変形のみのスクライブ線の形成は、適度の深さを確保できれば、その線に沿った手動による割断作業を可能とし、しかもその割断面はダメージや凹凸のない鏡面であるという極めて好ましい結果が得られたものである。更に、割断作業に際し、手動割断用治具を用いた手作業で割断作業を行なえば、その効果は格段に向上する。
本発明は、近年進歩が著しい液晶パネル(フラットパネルディスプレィ)の高精密化、小型化、高画素化等の傾向に伴う超薄板ガラスの割断作業を、超音波振動やレーザー等の煩雑かつ重厚な装置を使うことなく、従来の機械加工の延長線上で達成したものであり、関連産業界での利用の可能性は極めて高いものである。
A:超硬工具 B:超硬工具保持ユニット C:ワーク
D:荷重制御用静圧シリンダー E:静圧シリンダー用受具
F:押付法線方向荷重 F1:上部気室の圧力
F2:下部気室の圧力 G1:上部気室 G2:下部気室
H:治具中央線 Ia:治具左側パネル Ib:治具右側パネル
Ja、Jb:押え具 K:スクライブ線
a:超硬工具の頂角を形成する稜線
b:超硬工具の底部を形成する稜線
Mg:工具の自重 α:超硬工具の頂角 β:キール角

Claims (6)

  1. 超硬工具を、超薄板硬質脆性材料の表面に、超薄板硬質脆性材料に対して0.8度ないし8度のキール角を持つように押し付け、送り方向の法線方向に100ミリニュートン以下の定荷重で送ることにより刻線を形成し、然る後該刻線に沿って割断を行なうことを特徴とする超薄板硬質脆性材料の割断方法。
  2. 超薄板硬質脆性材料が超薄板ガラスであることを特徴とする請求項第1項に記載の超薄板硬質脆性材料の割断方法。
  3. 超硬工具が、ダイヤモンドあるいは超硬合金であり、かつその形状が左右対称の楔形であり、その頂角αが30度ないし90度であることを特徴とする請求項第1項または第2項のいずれかに記載の超薄板硬質脆性材料の割断方法。
  4. 割断作業が、中央線に沿って内側に開閉自在で左右両側のパネルに各々抑え具が設けられた治具を用い、該治具の中央線と超薄板硬質脆性材料に形成された刻線の凹状部が対向し一致するように超薄板硬質脆性材料を置き、左右のパネルに設けられた抑え具で固定した上でパネルを手動で折り曲げてゆき、超薄板硬質脆性材料該を刻線に沿って割断することを特徴とする請求項第1項ないし第3項のいずれかに記載の超薄板硬質脆性材料の割断方法。
  5. 請求項第1項ないし第4項のいずれかに記載の超薄板硬質脆性材料の割断方法において、超硬工具を先端に具備したユニットの端部を、荷重制御用静圧エアシリンダーの下端に懸垂し、超硬工具先端を超薄板ガラス上の、送り方向の法線方向に押し付けて刻線を行なうに必要な定荷重を、該静圧エアシリンダーの内圧を制御して調整する荷重制御装置を有することを特徴とする超薄板硬質脆性材料の割断方法。
  6. 請求項第5項に記載の超薄板硬質脆性材料の割断方法で使用する刻線形成用荷重制御装置において、静圧エアシリンダーの下部の気室に高圧エアを封入し、超硬工具を先端に具備したユニットの自重をキャンセルさせ、上部の気室に送り方向の法線方向に工具先端を押し付ける定荷重に相当する圧力のエアを導入し、所定の定荷重を発現させることを特徴とする超薄板硬質脆性材料の刻線形成用荷重制御装置。
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