JP2016175508A - ブレーキ制御装置およびブレーキ制御方法 - Google Patents

ブレーキ制御装置およびブレーキ制御方法 Download PDF

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    • B60VEHICLES IN GENERAL
    • B60TVEHICLE BRAKE CONTROL SYSTEMS OR PARTS THEREOF; BRAKE CONTROL SYSTEMS OR PARTS THEREOF, IN GENERAL; ARRANGEMENT OF BRAKING ELEMENTS ON VEHICLES IN GENERAL; PORTABLE DEVICES FOR PREVENTING UNWANTED MOVEMENT OF VEHICLES; VEHICLE MODIFICATIONS TO FACILITATE COOLING OF BRAKES
    • B60T8/00Arrangements for adjusting wheel-braking force to meet varying vehicular or ground-surface conditions, e.g. limiting or varying distribution of braking force
    • B60T8/17Using electrical or electronic regulation means to control braking
    • B60T8/176Brake regulation specially adapted to prevent excessive wheel slip during vehicle deceleration, e.g. ABS
    • B60T8/1764Regulation during travel on surface with different coefficients of friction, e.g. between left and right sides, mu-split or between front and rear

Abstract

【課題】 スプリットμ路であっても安定性を確保可能なブレーキ制御装置を提供すること。【解決手段】 アンチロックブレーキ制御中に、左右輪の間に路面μの差があると判定されると、低μ路面と判定された前後輪の液圧を低μ側液圧とし、高μ路面と判定された高μ側後輪の液圧を、高μ路面と判定された高μ側前輪の液圧と低μ側の液圧との間の液圧に制御するようにした。【選択図】 図4

Description

本発明は、車両に制動力を付与するブレーキ制御装置およびブレーキ制御方法に関する。
一般に、左右輪の路面摩擦係数(以下、μと記載する。)が異なる路面(以下、スプリットμ路と記載する。)を走行中に制動した場合、高μ側の輪のホイルシリンダ液圧が高く、低μ側の輪はアンチロックブレーキ制御の影響によって液圧が低い。左右輪の制動力に差が生じるため、車両にヨーモーメントが生じてしまう。そこで、高μ側の後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側の後輪のホイルシリンダ液圧まで低下させることで、車両のヨーモーメントを抑制し、更に後輪のコーナリングフォースを確保することで安定性を確保している。しかし、後輪のホイルシリンダ液圧を低減すると、制動力が十分に得られない。そこで、特許文献1に記載の技術では、スプリットμ路において、高μ側の後輪のホイルシリンダ液圧を、低μ側の後輪のホイルシリンダ液圧に許容差圧を加算した値の範囲内で独立に制御している。
特開平6-156248号公報
しかしながら、特許文献1のような構成では、許容差圧が車体速や経過時間によって決定されるため、高μ側のμがさほど高くなかった場合、高μ側の後輪のスリップ率が増大し、コーナリングフォースが低下するため、安定性を十分に確保することが困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、スプリットμ路であっても安定性を確保可能なブレーキ制御装置およびブレーキ制御方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、第一発明のブレーキ制御装置では、アンチロックブレーキ制御中に、左右輪の間に路面μの差があると判定されると、低μ路面と判定された前後輪の液圧を低μ側液圧とし、高μ路面と判定された高μ側後輪の液圧を、高μ路面と判定された高μ側前輪の液圧と低μ側の液圧との間の液圧に制御するようにした。
また第二発明のブレーキ制御装置では、低μ路面と判定された前後輪のホイルシリンダの液圧を低μ側液圧とし、高μ路面と判定された高μ側後輪の液圧を、高μ路面と判定された高μ側前輪の液圧以下であって、かつ、低μ側液圧より大きな液圧に設定し、設定された液圧となるように液圧を制御して車両の左右前後輪に設けられたホイルシリンダの液圧を個別に制御し、アンチロックブレーキ制御を実施するようにした。
また第三の発明のブレーキ制御方法では、車両の走行中の路面の状態が、左右輪間で路面μの差があると判定されると、低μ路面と判定された前後輪の液圧を低μ側液圧とし、高μ路面と判定された高μ側後輪の液圧を、高μ路面と判定された高μ側前輪の液圧と低μ側液圧との間の液圧に制御してアンチロックブレーキを行うようにした。
よって、高μ側後輪の確保しつつ、液圧の過剰な上昇を制限することで、適切な制動力を得ることができ、制動距離の短縮しつつ、車両の安定性を確保できる。
実施例1のブレーキ制御装置を備えた車両のシステム図である。 実施例1のスプリットμ路における車両挙動を示す概略図である。 実施例1のブレーキコントローラにおいて行われるブレーキ液圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1の各車輪のホイルシリンダ液圧のタイムチャートである。 実施例2のブレーキコントローラにおいて行われるブレーキ液圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。 実施例2の各車輪のホイルシリンダ液圧のタイムチャートである。 実施例2の制動時に左右路面μ差に対して車両に発生する可能性のある減速度を示すグラフである。 実施例3のブレーキコントローラにおいて行われるブレーキ液圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。 実施例3の各車輪のホイルシリンダ液圧のタイムチャートである。 実施例4のブレーキコントローラにおいて行われるブレーキ液圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。 実施例4の各車輪のホイルシリンダ液圧のタイムチャートである。 実施例5のブレーキコントローラにおいて行われるブレーキ液圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。 実施例5の各車輪のホイルシリンダ液圧のタイムチャートである。
〔実施例1〕
[車両システム構成]
図1は、実施例1のブレーキ制御装置を備えた車両のシステム図である。実施例1の車両は、ブレーキペダル1と、ブレーキペダル踏力に基づいて液圧(以下、マスタシリンダ圧)を発生するマスタシリンダ2と、車両の走行状態に基づいて各輪のホイルシリンダ液圧を制御するブレーキユニット3と、ブレーキユニット3の作動を制御するブレーキコントローラ4と、を有する。ブレーキユニット3は、各輪(前右輪FR,前左輪FL,後右輪RR,後左輪RL)に制動力を発生させるホイルシリンダW/Cと配管を介して接続されている。ブレーキユニット3は、ポンプと、各種電磁弁とを備え、車輪のロックを回避するアンチロックブレーキ制御や、車両の挙動を安定化させるビークルダイナミクス制御等を実行可能なユニットであり、周知の技術であるため説明を省略する。
ホイルシリンダW/Cを含むブレーキ作動ユニットは所謂ディスク式であり、タイヤと一体に回転するブレーキロータであるブレーキディスクと、ブレーキディスクに対し所定クリアランス(隙間ないしブカ)をもって配置されたブレーキパッドを有する。そして、ホイルシリンダW/Cに作用する液圧によってブレーキパッドが移動し、ブレーキディスクに接触することで制動力を発生する。前輪側のホイルシリンダW/C(FR,FL)の容量は、後輪側のホイルシリンダW/C(RR,RL)の容量よりも大きい。言い換えると、前後輪ホイルシリンダW/Cに同一の液圧を発生させると、前輪側に発生する制動力が後輪側に発生する制動力よりも大きい。
車両は、各輪の車輪速を検出する車輪速センサ5と、ステアリングホイール8の操舵角を検出する操舵角センサ6と、車両の前後方向の加減速度を算出する加減速度センサ7と、を有する。また、加減速度センサ7は、車両の前後方向の加減速度に限らず、横加速度やヨーレイトを検出可能な一体型センサであってもよく、特に限定しない。以下、減速度は
正の値であって、その値が大きくなるほど急減速しているものとする。
ブレーキコントローラ4は、車輪速センサ5から各輪の車輪速と、操舵角センサ6から操舵角と、加減速度センサ7から車両の減速度を入力する。ブレーキコントローラ4は、路面μ推定部4a、スプリットμ路判定部4b、左前輪液圧設定部4c、左後輪液圧設定部4d、右前輪液圧設定部4e、右後輪液圧設定部4f、目標減速度算出部4g、車輪加減速度算出部4hを有している。
路面μ推定部4aは、各車輪の車輪速と車体速との差、および各輪の推定液圧値から車両走行中の路面の摩擦係数(μ)を推定する。スプリットμ路判定部4bは、推定した路面μが左右輪で差があることを判定する。左前輪液圧設定部4c、左後輪液圧設定部4d、右前輪液圧設定部4e、右後輪液圧設定部4fは、それぞれ左前輪、左後輪、右前輪、右後輪のホイルシリンダ液圧を設定する。以下では、スプリットμ路において、左前輪および左後輪側の路面μが低μ、右前輪および右後輪の路面μが高μであるとして説明する(図2参照)。目標減速度算出部4gは、アンチロックブレーキ制御中の車両の減速度を算出する。車輪加減速度算出部4hは、各車輪の車輪速から車輪加減速度を算出する。
[スプリットμ路におけるブレーキ制御]
図2はスプリットμ路における車両挙動を示す概略図である。図2(a)は左輪側の路面が低μ、右輪側の路面が高μのスプリットμ路において、運転者がブレーキペダル1を踏み込んだ際の状態を表す。
通常、運転者がブレーキペダル操作を行うと、各車輪には操作量に応じた液圧が発生する。しかし、各車輪がロック傾向になるとアンチロックブレーキ制御が介入し、アンチロックブレーキ制御が介入した車輪のホイルシリンダ液圧は、他の車輪のホイルシリンダ液圧とは独立して制御されることとなる。
図2で示すようなスプリットμ路では、左輪側は低μであり、早期に車輪がロック傾向となり、左前後輪にアンチロックブレーキ制御が介入する。このとき、左前後輪(低μ側前後輪)のホイルシリンダ液圧は、右前後輪(高μ側前後輪)のホイルシリンダ液圧よりも低い液圧(低μ側液圧)に制御されることとなる。よって、低μ側前後輪の制動力は高μ側前後輪の制動力よりも小さくなり、車両に大きなヨーモーメントφが生じてしまう。
そこで、高μ側の後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側の後輪のホイルシリンダ液圧まで低下させることで、旋回ヨーモーメントを抑制し、更に後輪のコーナリングフォースを確保することで安定性を確保することが考えられる(図2(b))。高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪のホイルシリンダ液圧まで低下させて、左右後輪のホイルシリンダ液圧を同圧にする制御は、いわゆるセレクトロー制御を示している。
しかし、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低減すると、制動力が十分に得られない。そこで、特許文献1に記載の技術では、スプリットμ路において、高μ側の後輪のホイルシリンダ液圧を、低μ側の後輪のホイルシリンダ液圧に許容差圧を加算した値の範囲内で独立に制御している。しかし、特許文献1のような構成では、許容圧力差が車体速や経過時間によって決定されるため、高μ側のμがさほど高くなかった場合、高μ側の後輪のスリップ率が増大し、コーナリングフォースが低下するため、安定性を十分に確保することが困難である。そこで、実施例1では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を、許容圧力差の範囲内で上昇させると共に、高μ側前輪のホイルシリンダ液圧以下の範囲で制御することとした。
以下、スプリットμ路における高μ側後輪のホイルシリンダW/Cのブレーキ液圧制御について説明する。
(高μ側後輪ホイルシリンダ液圧制御処理)
図3はブレーキコントローラ4の右後輪液圧設定部4f(図2のように右側路面が高μである場合)において行われる、高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダW/Cのブレーキ液圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1では、アンチロックブレーキ制御が介入したか否かを判定する。アンチロックブレーキ制御が介入していないときには、ステップS2へ移行する。アンチロックブレーキ制御が介入しているときには、ステップS3へ移行する。
ステップS2では、マスタシリンダ圧同等の液圧が印加される通常制動制御を行い、処理を終了する。
ステップS3では、車両が走行している路面がスプリットμ路であるか否かを判定する。スプリットμ路であるときにはステップS5へ移行し、スプリットμ路でないときにはステップS4へ移行する。
ステップS4では、通常のアンチロックブレーキ制御を行い、処理を終了する。
ステップS5では、運転者によるカウンタ操舵が実施されたかを判定する。操舵角速度が所定角速度以上となったことを持ってカウンタ操舵の実施判定とする。カウンタ操舵が実施されたときにはステップS7に移行し、カウンタ操舵が実施されていないときにはステップS6に移行する。
ステップS6では、高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪(左後輪)のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御(セレクトロー制御)して、処理を終了する。
ステップS7では、許容圧力差を算出して、ステップS8に移行する。許容圧力差の算出は、低μ側後輪(左後輪)のホイルシリンダ液圧に対する高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダ液圧の差圧の許容値である。許容圧力差の算出は、特許文献1と同様に行えば良い。つまり、許容圧力差の初期値は車体速度が大きくなるほど小さく、また横加速度が大きくなるほど大きく設定される。そして、許容圧力差は時間関数として増大するように設定される。
ステップS8では、液圧制限値を算出して、ステップS9へ移行する。液圧制限値は次の式で示す値に設定する。
(液圧制限値) = (低μ側後輪のホイルシリンダ液圧) + (許容圧力差)
ステップS9では、液圧制限値が次の式で示す条件を満たすか否かを判定し、条件を満たすときにはステップS10へ移行し、条件を満たさないときにはステップS11へ移行する。
(液圧制限値) > (高μ側前輪のホイルシリンダ液圧)
ステップS10では、液圧制限値を算出しなおして、ステップS11へ移行する。液圧制限値は次の式で示す値に設定する。
(液圧制限値) = (高μ側前輪のホイルシリンダ液圧)
ステップS11では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を、液圧制限値内で独立して制御して処理を終了する。つまり、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と一致させるように制御するのではなく、低μ側後輪のホイルシリンダ液圧に対して独立して制御する。
[各輪のホイルシリンダ液圧変化]
図4は各車輪のホイルシリンダ液圧、ステアリングホイール8の操舵角、操舵角速度、各車輪の車輪速、および車体速のタイムチャートである。
時間t1において、運転者によりブレーキペダル1が操作され、全輪のホイルシリンダ液圧が上昇する。時間t2において、低μ側前後輪がロック傾向となりアンチロックブレーキ制御が介入する。
時間t2以降、高μ側前輪のホイルシリンダ液圧はブレーキペダル1の操作量に応じて上昇する。高μ側前輪の車輪速は車体速に対して遅くなり、高μ側前輪はスリップしながら制動力を発生させている。一方、低μ側前後輪のホイルシリンダ液圧は、アンチロックブレーキ制御が働き、ロック傾向を抑制するように制御されるため細かい増減を繰り返す。
高μ側後輪のホイルシリンダ液圧は、時間t2以降、カウンタステア方向の操舵角速度が所定角速度以上となる時間t3までは、低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御される(セレクトロー制御)。このとき、高μ側後輪は路面μに対して十分な制動力が発生しておらず、高μ側後輪の車輪速はほぼ車体速に追従する。
左右前輪の制動力差に伴う車両のモーメントの発生直後は、運転者によるカウンタステアが車両挙動の修正に追い付いていないため、車両安定に時間を要する。そのため、左右前輪の制動力差が発生する時間t2直後には、車両の安定性の確保を重視し、左右後輪の制動力差を発生させないようにしている。
時間t3において、カウンタステア方向の操舵角速度が所定角速度以上となると、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧のセレクトロー制御を終了し制限独立制御を開始する。制限独立制御では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を液圧制限値の範囲内で独立して制御する。
時間t3から時間t4では、許容圧力差は時間の経過とともに増大する。つまり、液圧制限値も増大し、それに伴い、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧も増加する。このとき、高μ側後輪の制動力は高μ側前輪の制動力よりも小さく、高μ側後輪の車輪速は車体速に対してスリップしているものの、高μ側後輪のスリップ量は高μ側前輪のスリップ量よりも小さくなっている。
時間t4において、液圧制限値が高μ側前輪のホイルシリンダ液圧より大きくなろうとするため、液圧制限値を高μ側前輪のホイルシリンダ液圧に設定する。これにより、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧が高μ側前輪のホイルシリンダ液圧を越えることがないようにしている。
[作用]
スプリットμ路における制動時には、左右後輪のホイルシリンダ液圧をセレクトロー制御し、左右後輪間の制動力差を小さくするようにしていた。これにより、車両の安定性を後輪側で確保し、車両のヨーモーメントを抑制できる。また、高μ側前輪により制動力を確保できる。
しかし、セレクトロー制御では高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低下させるため、車両の制動距離が長くなるおそれがあった。そこで、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪のホイルシリンダ液圧に許容圧力差を加算した範囲内で独立して制御するようにしていた。これにより、高μ側後輪の制動力を高めることができるため、車両の制動距離を短くできる。また許容圧力差を時間関数として増大するように設定することで、車両のヨーモーメント発生直後には左右後輪の制動力差を小さくして、車両の安定性を確保することができる。一方、許容圧力差を時間関数として増大させていくと、許容圧力差の増大に伴い高μ側後輪の制動力が高くなりすぎ、高μ側後輪がロックして車両安定性が低下するおそれがある。
そこで実施例1では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧が高μ側前輪のホイルシリンダ液圧を超えないように液圧制限値を設定するようにした。これにより、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧は、低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と高μ側前輪のホイルシリンダ液圧との間の液圧となるように制御される。したがって、スプリットμ路上でブレーキ操作したときであっても、車両安定性と制動力を確保することができる。
また実施例1では、前後輪ホイルシリンダW/Cに同一の液圧を発生させると、前輪側に発生する制動力が後輪側に発生する制動力よりも大きくなるようにした。制動時には前輪側に輪荷重が移動するため、前輪のタイヤの摩擦円に対して後輪のタイヤの摩擦円は小さくなる。後輪の制動力を小さくすることでコーナリングフォースを確保することができ、車両の安定性を向上させることができる。
また実施例1では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を高μ側前輪のホイルシリンダ液圧の値に対し車両の諸元に基づいた所定の係数をかけた値に設定するようにした。前輪と後輪の制動力のバランスを考慮することで車両の安定性を図ることができる。
また実施例1では、運転者によりステアリングホイール8がカウンタ方向に操舵されるまでは、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を、低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御するようにした。スプリットμ路における車両のヨーモーメント発生に対しての運転者の反応は、カウンタ方向の操舵を監視することにより見ることができる。したがって、車両のヨーモーメント発生に対しての反応が早い運転者に対しては、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と同圧にする時間が短くなる。これにより、車両の安定性確保に関しては早目に運転者の操舵に任せ、高μ側後輪により制動力を確保することができる。一方、車両のヨーモーメント発生に対して反応が遅い運転者に対しては、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と同圧にする時間が長くなる。これにより、まずは左右後輪による車両の安定性確保を優先することができる。
また実施例1では、カウンタ方向の操舵角速度が所定操舵角速度以上のときに、運転者がカウンタステアを行っていると判定するようにした。運転者がカウンタ方向の操舵を行ったとしても、十分に速く操舵を行わなくては車両の安定性を確保することが出来ない。これにより、運転者によるカウンタ方向の操舵角速度が小さいときには、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と等しくし、車両の安定性を確保することができる。
実施例1では、液圧制限値(許容圧力差)を設定することにより、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧が高μ側前輪のホイルシリンダ液圧と低μ側後輪のホイルシリンダ液圧との間の液圧となるようにしている。これに対して、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を高μ側前輪のホイルシリンダ液圧の値に対し車両の諸元に基づいた所定の係数をかけた値に設定するようにして、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧が高μ側前輪のホイルシリンダ液圧と低μ側後輪のホイルシリンダ液圧との間の液圧となるようにしても良い。
[効果]
(1) 車両の走行中の路面の状態を判定する路面μ推定部4a(路面状態判定部)と、車両の左右前後輪に設けられたホイルシリンダ液圧を個別に制御し、アンチロックブレーキ制御を実施し、アンチロックブレーキ制御中に、左右輪の間に路面μの差があると判定されると、路面μ推定部4aにより低μと判定された前後輪の液圧を低μ側液圧とし、路面μ推定部4aにより高μ路面と判定された高μ側後輪の液圧を、路面μ推定部4aにより高μ路面と判定された高μ側前輪の液圧と低μ側液圧との間の液圧に制御する制限独立制御(高μ側後輪液圧制御)を行うブレーキコントローラ4(アンチロックブレーキ制御部)と、を備えた。
よって、スプリットμ路上でブレーキ操作したときであっても、車両安定性と制動力確保することができる。
(2) 同一の液圧に対して、前輪には後輪よりも大きな制動トルクを発生させるホイルシリンダW/C(制動トルク発生部)を備えた。
よって、車両の安定性を向上させることができる。
(3) ブレーキコントローラ4は、高μ側後輪の液圧を高μ側前輪の液圧の値に対し車両の諸元に基づいた所定の係数をかけた値に設定するようにした。
よって、前輪と後輪の制動力のバランスを考慮することで車両の安定性を図ることができる。
(4) 運転者によるステアリング操作状態を検出する操舵角センサ6(ステアリング状態検出部)を備え、ブレーキコントローラ4は、ステアリング操作状態が運転者のカウンタステア状態を検出するまでは、左右両後輪に低μ側液圧が発生するように制御するようにした。
よって、車両のヨーモーメント発生に対する運転者の反応に応じて、セレクトロー制御を行う時間を可変にすることができる。
(5) ブレーキコントローラ4は、検出されたステアリング操作状態である操舵角速度が所定値以上になったときにカウンタステア状態と検出することとした。
よって、精度良くカウンタステア状態を検出することができ、運転者によるカウンタ方向の操舵角速度が小さいときには、高μ側後輪の液圧を低μ側後輪の液圧と同圧にし、車両の安定性を確保することができる。
(6) 車両の走行中の路面の状態を判定する路面μ推定部4a(路面状態判定部)と、左右輪の間に路面μの差があると判定するスプリットμ路判定部4b(スプリットμ判定部)と、路面μ推定部4aにより低μ路面と判定された前後輪のホイルシリンダの液圧を低μ側液圧とする左前輪液圧設定部4c、左後輪液圧設定部4d(低μ側液圧設定部)と、高μ路面と判定された後輪の液圧を高μ路面と判定された高μ側前輪の液圧以下であって、かつ、低μ側液圧より大きな液圧に設定する右後輪液圧設定部4f(高μ側液圧設定部)と、設定された液圧となるように液圧を制御して車両の左右前後輪に設けられたホイルシリンダの液圧を個別に制御し、アンチロックブレーキ制御を実施するブレーキコントローラ4(アンチロックブレーキ制御部)と、を備えた。
よって、スプリットμ路上でブレーキ操作したときであっても、車両安定性と制動力確保することができる。
(7) 車両の走行中の路面の状態が、左右輪の間で路面μに差があると判定されると、低μ路面と判定された前後輪のホイルシリンダの液圧を低μ側液圧とし、高μ路面と判定された後輪のホイルシリンダ液圧を高μ側前輪の液圧と低μ側液圧との間の液圧に制御してアンチロックブレーキを行うようにした。
よって、スプリットμ路上でブレーキ操作したときであっても、車両安定性と制動力確保することができる。
〔実施例2〕
実施例2ではブレーキコントローラ4での処理の流れが実施例1と相違する。図5はブレーキコントローラ4の右後輪液圧設定部4f(図2のように右側路面が高μである場合)において行われる、高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダW/Cのブレーキ液圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS21では、アンチロックブレーキ制御が介入したか否かを判定する。アンチロックブレーキ制御が介入していないときには、ステップS22へ移行する。アンチロックブレーキ制御が介入しているときには、ステップS23へ移行する。
ステップS22では、マスタシリンダ圧同等の液圧が印加される通常制動制御を行い、処理を終了する。
ステップS23では、車両が走行している路面がスプリットμ路であるか否かを判定する。スプリットμ路であるときにはステップS25へ移行し、スプリットμ路でないときにはステップS24へ移行する。
ステップS24では、通常のアンチロックブレーキ制御を行い、処理を終了する。
ステップS25では、アンチロックブレーキ制御が開始後、所定時間を経過したか否かを判定する。所定時間を経過していないときにはステップS26に移行し、所定時間を経過したときにはステップS27に移行する。
ステップS26では、高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪(左後輪)のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御(セレクトロー制御)して、処理を終了する。
ステップS27では、減速度が所定減速度以上であるか否かを判定する。減速度が所定減速度以上であるときにはステップS28へ移行し、減速度が所定減速度未満であるときにはステップS29へ移行する。
ステップS28では、セレクトロー制御を所定時間延長して、ステップS29へ移行する。
ステップS29では、許容圧力差を算出して、ステップS30に移行する。許容圧力差の算出は、低μ側後輪(左後輪)のホイルシリンダ液圧に対する高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダ液圧の差圧の許容値である。許容圧力差の算出は、特許文献1と同様に行えば良い。つまり、許容圧力差の初期値は車体速度が大きくなるほど小さく、また横加速度が大きくなるほど大きく設定される。そして、許容圧力差は時間関数として増大するように設定される。
ステップS30では、液圧制限値を算出して、ステップS9へ移行する。液圧制限値は次の式で示す値に設定する。
(液圧制限値) = (低μ側後輪のホイルシリンダ液圧) + (許容圧力差)
ステップS31では、液圧制限値が次の式で示す条件を満たすか否かを判定し、条件を満たすときにはステップS32へ移行し、条件を満たさないときにはステップS33へ移行する。
(液圧制限値) > (高μ側前輪のホイルシリンダ液圧)
ステップS32では、液圧制限値を算出しなおして、ステップS33へ移行する。液圧制限値は次の式で示す値に設定する。
(液圧制限値) = (高μ側前輪のホイルシリンダ液圧)
ステップS33では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を、液圧制限値内で独立して制御して処理を終了する。つまり、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と一致させるように制御するのではなく、低μ側後輪のホイルシリンダ液圧に対して独立して制御する。
[各輪のホイルシリンダ液圧変化]
図6は各車輪のホイルシリンダ液圧および加減速度のタイムチャートである。
時間t11において、運転者によりブレーキペダル1が操作され、全輪のホイルシリンダ液圧が上昇する。時間t12において、低μ側前後輪がロック傾向となりアンチロックブレーキ制御が介入する。
時間t12以降、高μ側前輪のホイルシリンダ液圧はブレーキペダル1の操作量に応じて上昇する。一方、低μ側前後輪のホイルシリンダ液圧は、アンチロックブレーキ制御が働き、ロック傾向を抑制するように制御されるため細かい増減を繰り返す。
高μ側後輪のホイルシリンダ液圧は、時間t12以降、アンチロックブレーキ制御が開始後、所定時間を経過する時間t13までは、低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御される(セレクトロー制御)。時間t13において、減速度が所定減速度以上であるため、時間t13から所定時間後の時間t14まで、セレクトロー制御を延長する。
時間t14において、セレクトロー制御の延長期間が終了すると制限独立制御を開始する。制限独立制御では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を液圧制限値の範囲内で独立して制御する。
時間t14から時間t15では、許容圧力差は時間の経過とともに増大する。つまり、液圧制限値も増大し、それに伴い、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧も増加する。このとき、高μ側後輪の制動力は高μ側前輪の制動力よりも小さく、高μ側後輪の車輪速は車体速に対してスリップしているものの、高μ側後輪のスリップ量は高μ側前輪のスリップ量よりも小さくなっている。
時間t15において、液圧制限値が高μ側前輪のホイルシリンダ液圧より大きくなろうとするため、液圧制限値を高μ側前輪のホイルシリンダ液圧に設定する。これにより、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧が高μ側前輪のホイルシリンダ液圧を越えることがないようにしている。
[作用]
実施例2では、アンチロックブレーキ制御開始後、所定時間経過した後の車両の減速度が所定減速度未満のときには、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧をすぐに制限独立制御をするようにした。一方、アンチロックブレーキ制御開始後、所定時間経過した後の車両の減速度が所定減速度以上であるときには、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧のセレクトロー制御を延長した後に、制限独立制御をするようにした。
図7は、制動時に左右路面μ差に対して車両に発生する可能性のある減速度を示すグラフである。図7では低い側のμを0.1と想定している。図7において、制動時に線Aより上方の減速度が生じる可能性がある。また図7において、線Bより右側の左右路面μ差が0.3以上となると、運転者のカウンタステアでは車両挙動の修正が困難となる。
減速度が0.25[G]以上であるときには、運転者のカウンタステアによる車両挙動の修正が困難になる可能性がある。減速度が0.25[G]以上であっても左右路面μ差が0.3未満であれば、運転者のカウンタステアによる車両挙動の修正は可能であるが、ここでは減速度のみに着目し、車両挙動の修正が困難になる可能性があることから安定性を優先させている。このときには、セレクトロー制御を延長して、左右後輪による車両の安定性確保を優先している。
減速度が0.25[G]未満ときには、運転者のカウンタステアによる車両挙動の修正が可能となる。このときには、車両の安定性確保に関しては運転者の操舵に任せ、制限独立制御により高μ側後輪の制動力を確保している。
スプリットμ路における制動時の旋回ヨーモーメントの発生は、左右輪の制動力差に起因する。しかし、ホイルシリンダW/Cへ供給するブレーキ液のばらつき、ブレーキパッドの摩擦力のばらつき、キャリパの位置のばらつき、タイヤの摩擦力のばらつき等により、制御上はホイルシリンダ液圧を目標値となるように制御したとしても制動力がばらつくため、制動力の推定精度を得ることができないことがある。そこで実施例2では、スプリットμ路における制動時の減速度に応じて、セレクトロー制御を延長するか否かを判定するようにしている。
[効果]
(8) 車両に作用する前後方向の加減速度を算出する加減速度センサ7(前後加減速度算出部)を備え、アンチロックブレーキ制御開始後、所定時間経過後に減速度が所定の減速度以上であることが検出されると、後輪の液圧の左右独立制御を開始するようにした。
よって、運転者のカウンタステアによる車両挙動の修正が困難な状況においては、セレクトロー制御を延長して、左右後輪による車両の安定性確保を優先することができる。
(9) 車両に作用する前後方向の加減速度を算出する加減速度センサ7(前後加減速度算出部)を備え、ブレーキコントローラ4は、アンチロックブレーキ制御開始後、検出された減速度が所定減速度未満のときには、制限独立制御を開始するようにした。
よって、運転者のカウンタステアによる車両挙動の修正が可能である状況においては、制限独立制御を開始して、車両の安定性確保に関しては運転者の操舵に任せ、高μ側後輪による制動力を確保している。
〔実施例3〕
実施例3ではブレーキコントローラ4での処理の流れが実施例1と相違する。図8はブレーキコントローラ4の右後輪液圧設定部4f(図2のように右側路面が高μである場合)において行われる、高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダW/Cのブレーキ液圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS41では、アンチロックブレーキ制御が介入したか否かを判定する。アンチロックブレーキ制御が介入していないときには、ステップS42へ移行する。アンチロックブレーキ制御が介入しているときには、ステップS43へ移行する。
ステップS42では、マスタシリンダ圧同等の液圧が印加される通常制動制御を行い、処理を終了する。
ステップS43では、車両が走行している路面がスプリットμ路であるか否かを判定する。スプリットμ路であるときにはステップS45へ移行し、スプリットμ路でないときにはステップS44へ移行する。
ステップS44では、通常のアンチロックブレーキ制御を行い、処理を終了する。
ステップS45では、運転者によるカウンタ操舵が実施されたかを判定する。操舵角速度が所定角速度以上となったことを持ってカウンタ操舵の実施判定とする。カウンタ操舵が実施されたときにはステップS46に移行し、カウンタ操舵が実施されていないときにはステップS47に移行する。
ステップS46では、車両走行路面がスプリットμ路と判定されてから所定時間経過したか否かを判定する。所定時間経過したときにはステップS49へ移行し、所定時間経過していないときにはステップS47へ移行する。
ステップS47では、現在の減速度を基準減速度として設定して、ステップS48へ移行する。
ステップS48では、高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪(左後輪)のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御(セレクトロー制御)して、処理を終了する。
ステップS49では、許容圧力差を算出して、ステップS49に移行する。許容圧力差の算出は、低μ側後輪(左後輪)のホイルシリンダ液圧に対する高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダ液圧の差圧の許容値である。許容圧力差の算出は、特許文献1と同様に行えば良い。つまり、許容圧力差の初期値は車体速度が大きくなるほど小さく、また横加速度が大きくなるほど大きく設定される。そして、許容圧力差は時間関数として増大するように設定される。
ステップS50では、液圧制限値を算出して、ステップS51へ移行する。液圧制限値は次の式で示す値に設定する。
(液圧制限値) = (低μ側後輪のホイルシリンダ液圧) + (許容圧力差)
ステップS51では、目標減速度を算出して、ステップS52へ移行する。目標減速度は次の式で示す値に設定する。
(目標減速度) = (基準減速度) + (目標減速度設定値)
目標減速度設定値は、車体速に応じて低速ほど大きな値に設定する。
ステップS52では、減速度が目標減速度より大きいか否かを判定する。減速度が目標減速度より大きいときにはステップS53へ移行し、減速度が目標減速度以下のときにはステップS54へ移行する。
ステップS53では、液圧制限値を所定値減算して、ステップS55へ移行する。
ステップS54では、液圧制限値を所定値加算して、ステップS55へ移行する。
ステップS55では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を、液圧制限値内で独立して制御して処理を終了する。つまり、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と一致させるように制御するのではなく、低μ側後輪のホイルシリンダ液圧に対して独立して制御する。
[各輪のホイルシリンダ液圧変化]
図9は各車輪のホイルシリンダ液圧および加減速度のタイムチャートである。
時間t21において、運転者によりブレーキペダル1が操作され、全輪のホイルシリンダ液圧が上昇する。時間t22において、低μ側前後輪がロック傾向となりアンチロックブレーキ制御が介入する。
時間t22以降、高μ側前輪のホイルシリンダ液圧はブレーキペダル1の操作量に応じて上昇する。一方、低μ側前後輪のホイルシリンダ液圧は、アンチロックブレーキ制御が働き、ロック傾向を抑制するように制御されるため細かい増減を繰り返す。
時間t22において、車両が走行している路面がスプリットμ路であると判定される。高μ側後輪のホイルシリンダ液圧は、時間t22以降、スプリットμ路と判定されてから所定時間経過する時間t23までは低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御される(セレクトロー制御)。このときの車両の減速度を基準減速度として設定する。また基準減速度を基に目標減速度を設定する。目標減速度は、車体速が低くなるほど大きな値に設定される。
時間t23において、スプリットμ路と判定されてから所定時間経過すると制限独立制御を開始する。制限独立制御では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を液圧制限値の範囲内で独立して制御する。
時間t24において、車両の減速度が目標減速度より大きくなると、液圧制限値を所定値減算する。液圧制限値の減算は、車両の減速度が目標減速度以下となる時間t25まで継続する。
時間t25において、車両の減速度が目標減速度以下となると、液圧制限値を所定値加算する。
以下、同様にして液圧制限値の加減算を行う。目標減速度を、車体速に応じて変化する値とすることで、高μ側後輪の車体速に対するスリップ量を所定範囲内におさめることができる。
[作用]
実施例3では、車両走行路面がスプリットμ路と判定されてから所定時間経過するまでは、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御(セレクトロー制御)するようにした。
車両がスプリットμ路に侵入した直後は、運転者のカウンタステアによる車両挙動の修正が間に合わないおそれがある。このようなときには、左右後輪をセレクトロー制御して、左右後輪による車両の安定性確保を優先している。
また実施例3では、アンチロックブレーキ制御中の目標減速度を算出し、車両の減速度が目標減速度より大きくなるときには、液圧制限値を減算して、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低減するようにした。
ホイルシリンダW/Cへ供給するブレーキ液のばらつき、ブレーキパッドの摩擦力のばらつき、キャリパの位置のばらつき、タイヤの摩擦力のばらつき等により、制御上はホイルシリンダ液圧を目標値となるように制御したとしても制動力がばらつくことがある。上記のように制御することにより、制限独立制御中に高μ側後輪による制動力が過剰となり、車両挙動が不安定になることを抑制している。
また高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を制限独立制御する前の減速度を基準加速度に設定し、この基準加速度に応じて目標加速度を設定するようにした。そのため、高μ側路面のμの値に関わらず高μ側後輪の制動力を制御することができる。また路面勾配に関わらず高μ側後輪の制動力を制御することができる。
実施例3では、車両の減速度に応じて液圧制限値を増減させている。これに対して、車両の減速度と横加速度の合力スカラー値に応じて液圧制限値を増減させるようにしても良い。これにより、スプリットμ路における制動時に、車両の進行方向が変更した場合には適切に制御することができる。
[効果]
(10) ブレーキコントローラ4は、左右輪の路面μに差があると判定されてから所定時間経過するまでは、左右両後輪に低μ側液圧が発生するように制御するようにした。
よって、車両がスリップμ路に侵入した直後には、左右後輪をセレクトロー制御して、左右後輪による車両の安定性確保を行うことができる。
(11) 車両に作用する前後方向の加減速度を算出する加減速度センサ7(前後加減速度算出部)を備え、ブレーキコントローラ4は、アンチロックブレーキ制御中の目標減速度を算出し、算出された車両の減速度が算出した目標減速度を上回る場合、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低減するようにした。
よって、制限独立制御中に高μ側後輪による制動力が過剰となり、車両挙動が不安定になることを抑制することできる。
〔実施例4〕
実施例4ではブレーキコントローラ4での処理の流れが実施例1と相違する。図10はブレーキコントローラ4の右後輪液圧設定部4f(図2のように右側路面が高μである場合)において行われる、高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダW/Cのブレーキ液圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS61では、運転者によりブレーキ操作がされた(ブレーキON)か否かを判定する。運転者によりブレーキ操作がされたときにはステップS63へ移行し、運転者によりブレーキ操作がされていないときにはステップS62へ移行する。
ステップS62では、現在の車両の減速度を基準減速度に設定して、処理を終了する。
ステップS63では、アンチロックブレーキ制御が介入したか否かを判定する。アンチロックブレーキ制御が介入していないときには、ステップS64へ移行する。アンチロックブレーキ制御が介入しているときには、ステップS65へ移行する。
ステップS64では、マスタシリンダ圧同等の液圧が印加される通常制動制御を行い、処理を終了する。
ステップS65では、車両が走行している路面がスプリットμ路であるか否かを判定する。スプリットμ路であるときにはステップS67へ移行し、スプリットμ路でないときにはステップS66へ移行する。
ステップS66では、通常のアンチロックブレーキ制御を行い、処理を終了する。
ステップS67では、運転者によるカウンタ操舵が実施されたかを判定する。操舵角速度が所定角速度以上となったことを持ってカウンタ操舵の実施判定とする。カウンタ操舵が実施されたときにはステップS69に移行し、カウンタ操舵が実施されていないときにはステップS68に移行する。
ステップS68では、高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪(左後輪)のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御(セレクトロー制御)して、処理を終了する。
ステップS69では、許容圧力差を算出して、ステップS70に移行する。許容圧力差の算出は、低μ側後輪(左後輪)のホイルシリンダ液圧に対する高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダ液圧の差圧の許容値である。許容圧力差の算出は、特許文献1と同様に行えば良い。つまり、許容圧力差の初期値は車体速度が大きくなるほど小さく、また横加速度が大きくなるほど大きく設定される。そして、許容圧力差は時間関数として増大するように設定される。
ステップS70では、液圧制限値を算出して、ステップS71へ移行する。液圧制限値は次の式で示す値に設定する。
(液圧制限値) = (低μ側後輪のホイルシリンダ液圧) + (許容圧力差)
ステップS71では、減速度偏差を算出して、ステップS72へ移行する。減速度偏差は次の式で示す値に設定する。
(減速度偏差) = (減速度) - (基準減速度)
ステップS72では、減速度感応値を算出して、ステップS73へ移行する。減速度感応値は減速度偏差が大きくなるほど小さな値となるように設定される。
ステップS73では、液圧制限値が減速度感応値より大きいか否かを判定する。液圧制限値が減速度感応値より大きいときには、ステップS74へ移行する。液圧制限値が減速度感応値以下のときには、ステップS75へ移行する。
ステップS74では、液圧制限値を減速度感応値に設定して、ステップS75へ移行する。
ステップS75では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を、液圧制限値内で独立して制御して処理を終了する。つまり、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と一致させるように制御するのではなく、低μ側後輪のホイルシリンダ液圧に対して独立して制御する。
[各輪のホイルシリンダ液圧変化]
図11は各車輪のホイルシリンダ液圧、ステアリングホイール8の操舵角、操舵角速度、各車輪の車輪速、および加減速度のタイムチャートである。
時間t31において、運転者によりブレーキペダル1が操作され、全輪のホイルシリンダ液圧が上昇する。時間t32において、低μ側前後輪がロック傾向となりアンチロックブレーキ制御が介入する。なお、時間t31より以前の減速度を基準減速度として設定している。
時間t32以降、高μ側前輪のホイルシリンダ液圧はブレーキペダル1の操作量に応じて上昇する。一方、低μ側前後輪のホイルシリンダ液圧は、アンチロックブレーキ制御が働き、ロック傾向を抑制するように制御されるため細かい増減を繰り返す。
高μ側後輪のホイルシリンダ液圧は、時間t32以降、カウンタステア方向の操舵角速度が所定角速度以上となる時間t33までは、低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御される(セレクトロー制御)。
時間t33において、カウンタステア方向の操舵角速度が所定角速度以上となると、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧のセレクトロー制御を終了し制限独立制御を開始する。制限独立制御では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を液圧制限値の範囲内で独立して制御する。
時間t33から時間t34では、許容圧力差は時間の経過とともに増大する。つまり、液圧制限値も増大し、それに伴い、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧も増加する。
時間t34において、液圧制限値が減速度感応値より大きくなろうとするため、液圧制限値を減速度感応値に設定する。
[作用]
実施例4では、液圧制限値を減速度感応値で制限するようにした。ブレーキ操作が行われる前の減速度(基準減速度)と現在の減速度との偏差である減速度偏差が大きくなるほど、減速度感応値は小さな値となるように設定される。言い換えると、車両の減速度が大きいほど、減速度感応値は小さな値に設定される。そのため、車両の減速度が大きいほど、液圧制限値はより制限された値となり、高μ側後輪の液圧の増加を抑えるようにしている。
一般的なタイヤ特性により車両制動時には車速が低下するほど車両の減速度は増加していくため、後輪の垂直輪荷重は低下する。そのため、車両制動時に後輪のスリップ率が一定となるように制御していたとしてもタイヤ横力が低下し、後輪により車両挙動の安定を確保することができないおそれがある。そこで実施例4では車両の減速度が大きいほど高μ側後輪の液圧の増加を抑えるようにして、タイヤ横力を確保するようにしている。
実施例4では、減速度感応値を減速度偏差に応じて設定している。これを、車両の諸元値と車両の減速度から推定される後輪垂直輪荷重に基づいて、液圧制限値(または高μ側後輪の液圧)を制限するようにしても良い。これにより、車両ごとの特性差を考慮して制限を行うことができるため、マッチングを容易にすることができる。
[効果]
(12) 車両に作用する前後方向の加減速度を算出する加減速度センサ7(前後加減速度算出部)を備え、ブレーキコントローラ4は、算出された減速度に基づき、高μ側後輪の液圧を高μ側前輪の液圧よりも小さくなるように制限するようにした。
よって、車両減速時の減速度増加に伴う後輪の輪荷重の低下によるタイヤ横力減少を抑制し、後輪により車両の安定性を確保することができる。
〔実施例5〕
実施例5ではブレーキコントローラ4での処理の流れが実施例1と相違する。図12はブレーキコントローラ4の右後輪液圧設定部4f(図2のように右側路面が高μである場合)において行われる、高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダW/Cのブレーキ液圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS81では、運転者によりブレーキ操作がされた(ブレーキON)か否かを判定する。運転者によりブレーキ操作がされたときにはステップS83へ移行し、運転者によりブレーキ操作がされていないときにはステップS82へ移行する。
ステップS82では、現在の車両の減速度を第一基準減速度に設定して、処理を終了する。
ステップS83では、アンチロックブレーキ制御が介入したか否かを判定する。アンチロックブレーキ制御が介入していないときには、ステップS84へ移行する。アンチロックブレーキ制御が介入しているときには、ステップS85へ移行する。
ステップS84では、マスタシリンダ圧同等の液圧が印加される通常制動制御を行い、処理を終了する。
ステップS85では、車両が走行している路面がスプリットμ路であるか否かを判定する。スプリットμ路であるときにはステップS87へ移行し、スプリットμ路でないときにはステップS86へ移行する。
ステップS86では、通常のアンチロックブレーキ制御を行い、処理を終了する。
ステップS87では、運転者によるカウンタ操舵が実施されたかを判定する。操舵角速度が所定角速度以上となったことを持ってカウンタ操舵の実施判定とする。カウンタ操舵が実施されたされたときにはステップS88に移行し、カウンタ操舵が実施されていないときにはステップS89に移行する。
ステップS88では、車両走行路面がスプリットμ路と判定されてから所定時間経過したか否かを判定する。所定時間経過したときにはステップS93へ移行し、所定時間経過していないときにはステップS89へ移行する。
ステップS89では、現在の減速度を第二基準減速度として設定して、ステップS90へ移行する。
ステップS90では、基準減速度偏差を計算して、ステップS91へ移行する。基準減速度偏差は次の式で示す値に設定する。
(基準減速度偏差) = (第二基準減速度) - (第一基準減速度)
ステップS91では、補正値を算出して、ステップS92へ移行する。補正値は、基準減速度偏差が所定値以上のときにはゼロとなり、所定値未満のとき正の値となるように設定される。また、基準減速度偏差が小さいほど大きな値となるように設定される。つまり、補正値は高μ側後輪のホイルシリンダ液圧がセレクトロー制御されているときに、前輪により十分に制動力が発生していないときには補正値を大きく設定するようにした。
ステップS92では、高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪(左後輪)のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御(セレクトロー制御)して、処理を終了する。
ステップS93では、許容圧力差を算出して、ステップS94に移行する。許容圧力差の算出は、低μ側後輪(左後輪)のホイルシリンダ液圧に対する高μ側後輪(右後輪)のホイルシリンダ液圧の差圧の許容値である。許容圧力差の算出は、特許文献1と同様に行えば良い。つまり、許容圧力差の初期値は車体速度が大きくなるほど小さく、また横加速度が大きくなるほど大きく設定される。そして、許容圧力差は時間関数として増大するように設定される。
ステップS94では、液圧制限値を算出して、ステップS95へ移行する。液圧制限値は次の式で示す値に設定する。
(液圧制限値) = (低μ側後輪のホイルシリンダ液圧) + (許容圧力差)
ステップS95では、液圧制限値に補正値を加算したものを新たな液圧制限値として設定して、ステップS96へ移行する。
(液圧制限値) = (液圧制限値) + (補正値)
ステップS96では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を、液圧制限値内で独立して制御して処理を終了する。つまり、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と一致させるように制御するのではなく、低μ側後輪のホイルシリンダ液圧に対して独立して制御する。
[各輪のホイルシリンダ液圧変化]
図13は各車輪のホイルシリンダ液圧、各車輪の車輪速、および加減速度のタイムチャートである。
時間t41において、運転者によりブレーキペダル1が操作され、全輪のホイルシリンダ液圧が上昇する。時間t42において、低μ側前後輪がロック傾向となりアンチロックブレーキ制御が介入する。なお、時間t41より以前の減速度を第一基準加速度として設定している。
時間t42以降、高μ側前輪のホイルシリンダ液圧はブレーキペダル1の操作量に応じて上昇する。一方、低μ側前後輪のホイルシリンダ液圧は、アンチロックブレーキ制御が働き、ロック傾向を抑制するように制御されるため細かい増減を繰り返す。
時間t42において、車両が走行している路面がスプリットμ路であると判定される。高μ側後輪のホイルシリンダ液圧は、時間t42以降、スプリットμ路と判定されてから所定時間経過する時間t43までは低μ側後輪のホイルシリンダ液圧と同圧となるように制御される(セレクトロー制御)。このときの車両の減速度を第二基準減速度として設定する。また第一基準減速度と第二基準減速度との偏差である基準減速度偏差を基に補正値を設定する。補正値は、基準減速度偏差が所定値以下のときにゼロ以上の値となるように設定され、基準減速度偏差が小さいほど大きな値となるように設定される。
時間t43において、スプリットμ路と判定されてから所定時間経過すると制限独立制御を開始する。制限独立制御では、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を液圧制限値の範囲内で独立して制御する。時間t43以降、液圧制限値は補正値を加算した値に設定される。
[作用]
スプリットμ路は積雪路面で生じやすい。この場合、高μ側路面に雪解け水が溜まっていることが考えられる。このような路面状況においては、高速走行における制動時に高μ側前輪においてハイドロプレーニング現象が生じ、制動力を得ることができないことがある。高μ側前輪が通過した直後の路面は雪解け水の一部が排出される。そのため、高μ側後輪がこの路面を通過するときには、高μ側前輪通過時に比べてハイドロプレーニング現象が生じ難い状況となっていることがある。
そこで実施例5では、高μ側後輪の制限独立制御が開始される前において、制動力が十分に発生していないとき(減速度が小さいとき)には、液圧制限値を増加させる補正値を設定するようにした。これにより制限独立制御時には、高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を高めに制御して、高μ側後輪により制動力を確保するようにした。
[効果]
(13) 車両に作用する前後方向の加減速度を算出する加減速度センサ7(前後加減速度算出部)を備え、ブレーキコントローラ4は、算出された減速度が所定値以下のときは、高μ側後輪の液圧を増加させるようにした。
よって、高μ側前輪により制動力を確保することが出来ないときには、高μ側後輪の制動力配分を高めて制動力を確保することができる。
〔実施例6〕
実施例1〜実施例5では、車両の減速度を加減速度センサ7により検出するようにしている。実施例6では、車輪加減速度算出部4hにより算出した高μ後輪の減速度を用いて車両の減速度を求めるようにした。
高μ側後輪のホイルシリンダ液圧をセレクトロー制御しているときの高μ後輪の車輪速はほぼ車体速に等しい。そのため、車輪の減速度も車両の減速度とほぼ等しくなる。
車両減速時において、加減速度センサ7が検出した車両の減速度と、車輪加減速度算出部4hが算出した車輪の減速度のうち大きい方の値を減速度として採用するようにした。これにより、加減速度センサ7の出力が得られないときであっても、車輪加減速度算出部4hが算出した車輪加減速度を車両の減速度として、用いることができる。
仮に液圧制限値が大きめに設定されたときには、高μ後輪のスリップ率は高くなる。高μ側後輪のスリップ率が高くなると、車輪加減速度算出部4hでは車輪の減速度は大きく算出される。特に実施例4および実施例5において車輪の減速度を用いて制御した場合、車輪の減速度は大きいときには、制限独立制御時の高μ側後輪のホイルシリンダ液圧はより小さな液圧に制限されることとなる。そのため、高μ後輪のスリップ率は小さくなり、車輪の減速度から求めた車両の減速度の精度も高くなる。
また加減速度センサ7が減速度側に張り付き異常を生じたときには、加減速度センサ7の減速度の値は、常に車輪の減速度の値よりも大きくなり、加減速度センサ7の減速度が選択されることとなる。この場合、減速度の値は誤っているものの、制限独立制御時の高μ側後輪のホイルシリンダ液圧はより小さな液圧に制限されることとなる。そのため後輪により車両挙動の安定性を確保することができる。
[効果]
(14) 車輪に設けられた車輪の車輪加減速度を算出する車輪加減速度算出部4hを備え、車両の減速度は、加減速度センサ7により検出された減速度と、車輪加減速度算出部4hにより算出された減速度のうち、大きな減速度であるようにした。
よって、加減速度センサ7の出力が得られないときであっても、車輪加減速度算出部4hが算出した車輪の減速度を車両の減速度として用いることができる。
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施例1〜実施例6に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は実施例1〜実施例6に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
[請求項以外の技術的思想]
更に、上記実施例から把握しうる請求項以外の技術的思想について、以下に記載する。
(A) 請求項14に記載のブレーキ制御装置において、
前記高μ側後輪液圧設定部は、前記高μ側後輪の液圧を前記高μ側前輪の液圧の値に対し車両の諸元に基づいた所定の係数をかけた値に設定して制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
(B) 請求項14に記載のブレーキ制御装置において、
前記アンチロックブレーキ制御部は、左右輪の路面μに差があると判定されてから所定時間経過するまでは、左右両後輪に前記低μ側液圧が発生するように制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
(C) 上記(A)に記載のブレーキ制御装置において、
車両に作用する前後方向の加減速度を算出する加減速度センサと、
アンチロックブレーキ制御中の車両目標減速度を算出する目標減速度算出部と、
を備え、
前記アンチロックブレーキ制御部は、算出された車両の減速度が前記算出された車両目標減速度を上回る場合、前記高μ側後輪の液圧を低減することを特徴とするブレーキ制御装置。
(D) 請求項14に記載のブレーキ制御装置において、
車両に作用する前後方向の加減速度を算出する前後加減速度センサを備え、
前記アンチロックブレーキ制御部は、算出された減速度に基づき、前記設定された高μ側後輪の液圧を前記高μ側前輪の液圧に対して小さくなるように制限することを特徴とするブレーキ制御装置。
(E) 請求項15に記載のブレーキ制御方法において、
左右輪の間で路面μに差があると判定されてから所定時間経過するまでは、左右両後輪に前記低μ側液圧が発生するように制御することを特徴とするブレーキ制御方法。
4 ブレーキコントローラ(アンチロックブレーキ制御部)
4a 路面μ推定部(路面状態判定部)
4b スプリットμ路判定部(スプリットμ判定部)
4c 左前輪液圧設定部(低μ側液圧設定部)
4d 左後輪液圧設定部(低μ側液圧設定部)
4f 右後輪液圧設定部(高μ側液圧設定部)
4h 車輪加減速度算出部(車輪加減速度算出部)
6 操舵角センサ(ステアリング状態検出部)
7 加減速度センサ(前後加減速度算出部、前後加減速度センサ)
W/C ホイルシリンダ(制動トルク発生部)

Claims (15)

  1. 車両の走行中の路面の状態を判定する路面状態判定部と、
    車両の左右前後輪に設けられたホイルシリンダの液圧を個別に制御し、アンチロックブレーキ制御を実施し、前記アンチロックブレーキ制御中に、前記路面状態判定部により左右輪の間に路面μの差があると判定されると、前記路面状態判定部により低μ路面と判定された前後輪の液圧を低μ側液圧とし、前記路面状態判定部により高μ路面と判定された高μ側後輪の液圧を、前記路面状態判定部により高μ路面と判定された高μ側前輪の液圧と前記低μ側液圧との間の液圧に制御する高μ側後輪液圧制御を行うアンチロックブレーキ制御部と、
    を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
  2. 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
    同一の液圧に対して、前記前輪には前記後輪よりも大きな制動トルクを発生させる制動トルク発生部を備えた車両に用いられることを特徴とするブレーキ制御装置。
  3. 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
    前記アンチロックブレーキ制御部は、前記高μ側後輪の液圧を前記高μ側前輪の液圧の値に対し車両の諸元に基づいた所定の係数をかけた値に設定して制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
  4. 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
    前記アンチロックブレーキ制御部は、左右輪の路面μに差があると判定されてから所定時間経過するまでは、左右両後輪に前記低μ側液圧が発生するように制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
  5. 請求項4に記載のブレーキ制御装置において、
    車両に作用する前後方向の加減速度を算出する前後加減速度算出部を備え、
    前記アンチロックブレーキ制御部は、アンチロックブレーキ制御中の目標減速度を算出し、前記算出された車両の減速度が前記算出した目標減速度を上回る場合、前記高μ側後輪のホイルシリンダ液圧を低減することを特徴とするブレーキ制御装置。
  6. 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
    車両に作用する前後方向の加減速度を算出する前後加減速度算出部を備え、
    前記アンチロックブレーキ制御部は、算出された減速度に基づき、前記高μ側後輪の液圧を前記高μ側前輪の液圧よりも小さくなるように制限することを特徴とするブレーキ制御装置。
  7. 請求項6に記載のブレーキ制御装置において、
    前記車輪に設けられた車輪の車輪加減速度を算出する車輪加減速度算出部を備え、
    前記減速度は、前記前後加減速度検出部により検出された減速度と、前記車輪加減速度算出部により算出された減速度のうち、大きな減速度であることを特徴とするブレーキ制御装置。
  8. 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
    車両に作用する前後方向の加減速度を算出する前後加減速度算出部を備え、
    前記アンチロックブレーキ制御部は、算出された減速度が所定値以下のときは、前記高μ側後輪の液圧を増加させることを特徴とするブレーキ制御装置。
  9. 請求項8に記載のブレーキ制御装置において、
    前記車輪に設けられた車輪の車輪加減速度を算出する車輪加減速度算出部を備え、
    前記減速度は、前記前後加減速度算出部により算出された減速度と、前記車輪加減速度算出部により算出された減速度のうち、大きな減速度であることを特徴とするブレーキ制御装置。
  10. 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
    運転者によるステアリング操作状態を検出するステアリング状態検出部を備え、
    前記アンチロックブレーキ制御部は、前記ステアリング操作状態が運転者のカウンタステア状態を検出するまでは、左右両後輪に前記低μ側液圧が発生するように制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
  11. 請求項10に記載のブレーキ制御装置において、
    前記アンチロックブレーキ制御部は、検出されたステアリング操作状態である操舵角速度が所定値以上になったときにカウンタステア状態と検出することを特徴とするブレーキ制御装置。
  12. 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
    車両に作用する前後方向の加減速度を算出する前後加減速度算出部を備え、
    前記アンチロックブレーキ制御部は、アンチロックブレーキ制御開始後、前記算出された減速度が所定の減速度以上のときには、左右両後輪に前記低μ側液圧が発生するように所定時間継続した後に、前記高μ側後輪液圧制御を開始することを特徴とするブレーキ制御装置。
  13. 請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
    車両に作用する前後方向の加減速度を算出する前後加減速度算出部を備え、
    前記アンチロックブレーキ制御部は、アンチロックブレーキ制御開始後、前記検出された減速度が所定の減速度未満のときには、高μ側後輪液圧制御を開始することを特徴とするブレーキ制御装置。
  14. 車両の走行中の路面の状態を判定する路面状態判定部と、
    前記路面状態判定部により、左右輪の間に路面μの差があると判定するスプリットμ判定部と、
    前記路面状態判定部により低μ路面と判定された前後輪のホイルシリンダの液圧を低μ側液圧とする低μ側液圧設定部と、
    前記路面状態判定部により高μ路面と判定された高μ側後輪の液圧を、前記路面状態判定部により高μと判定された高μ側前輪の液圧以下であって、かつ、前記低μ側液圧より大きな液圧に設定する高μ側後輪液圧設定部と、
    前記設定された液圧となるように前記液圧を制御して車両の左右前後輪に設けられたホイルシリンダの液圧を個別に制御し、アンチロックブレーキ制御を実施するアンチロックブレーキ制御部と、
    を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
  15. 車両の走行中の路面の状態が、左右輪間で路面μの差があると判定されると、
    低μ路面と判定された前後輪の液圧を低μ側液圧とし、高μ路面と判定された高μ側後輪の液圧を、高μ路面と判定された高μ側前輪の液圧と前記低μ側液圧との間の液圧に制御してアンチロックブレーキを行うことを特徴とするブレーキ制御方法。
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