JP2016174502A - 半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本明細書は、半導体装置の構造の一部を利用して構成するYコンデンサの容量を適切に調整し、コモンモードノイズを効果的に抑制する技術を提供する。【解決手段】本明細書が開示する半導体装置は、パワーモジュール10を備える。パワーモジュール10は、そのスイッチング素子6の第1電極Pと導通している導電板13aと、第2電極Nと導通している導電板13bとを封止している。導電板13aと絶縁板21aと支持板56aによって容量C1の第1Yコンデンサが構成されている。導電板13bと絶縁板21bと支持板56bによって容量C2の第2Yコンデンサが構成されている。第1及び第2Yコンデンサが無いときの第1電極Pとグランドとの間のインピーダンスZ1と、第2電極Nとグランドとの間のインピーダンスZ2がZ1>Z2の関係を満たしており、容量C1と容量C2がC1<C2の関係を満たしている。【選択図】図6
Description
本発明は、半導体装置に関する。特に、半導体装置が内蔵するスイッチング素子のスイッチング動作に起因するコモンモードノイズを低減する半導体装置に関する。
スイッチング素子を有する半導体装置では、スイッチング素子のスイッチング動作に伴う高周波ノイズ電流がグランドに伝搬するいわゆるコモンモードノイズが発生する。コモンモードノイズを低減する一つの方法は、スイッチング素子を含む回路とグランドとの間にノイズ除去用コンデンサを挿入することである。コモンモードノイズ除去用のコンデンサは、一般に、Yコンデンサと呼ばれている。
汎用のコンデンサ素子をYコンデンサとして半導体装置に組み込む代わりに、半導体装置の構造の一部を利用してYコンデンサを構築する技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。特許文献1に開示された技術では、スイッチング素子を収容する半導体モジュールの端子に導体を接続する。その導体をグランド電位の別の導体(特許文献1では「アース導体」と称している)に対して平行に延ばし、端子に接続された導体と別の導体との間に誘電体を挟んでYコンデンサを構成する。グランド電位の別の導体には、半導体モジュールを搭載する金属板が利用される。特許文献2に開示された半導体装置は、スイッチング素子と、そのスイッチング素子の電極と接続されている電極板を封止している半導体モジュールを備える。半導体モジュールは、絶縁体を介して一対の保持板で保持される。保持板は導電材で作られている。保持板はグランドと導通しており、保持板と絶縁体と電極板によってYコンデンサが構成される。
特許文献1、2に開示された技術は、単にYコンデンサを、半導体装置の構造の一部を利用して構成しているに過ぎない。本明細書は、半導体装置の構造の一部を利用して構成するYコンデンサの容量を適切に調整し、コモンモードノイズを効果的に抑制する技術を提供する。
本明細書が開示する半導体装置は、パワーモジュールと、第1及び第2絶縁部材と、第1〜第4導電板を備える。パワーモジュールは、所定の電子回路の一部を構成しているスイッチング素子を封止している。所定の電子回路とは、例えば、電力変換回路である。パワーモジュールは、また、第1、第2導電板も封止している。パワーモジュールの内部で、第1導電板はスイッチング素子の第1電極と導通しており、第2導電板はスイッチング素子の第2電極と導通している。第3導電板は、第1絶縁部材を挟んで第1導電板と対向するようにパワーモジュールに隣接配置されている。第4導電板は、第2絶縁部材を挟んで第2導電板と対向するようにパワーモジュールに隣接配置されている。第3導電板と第4導電板は、半導体装置のハウジングと導通している。第1導電板と第1絶縁部材と第3導電板によって第1Yコンデンサが構成される。第2導電板と第2絶縁部材と第4導電板によって第2Yコンデンサが構成される。本明細書が開示する半導体装置では、第1及び第2Yコンデンサが無いときの第1電極とグランドとの間のインピーダンスZ1と、第2電極とグランドとの間のインピーダンスZ2がZ1>Z2の関係を満たしている。このとき、第1Yコンデンサの容量C1と第2Yコンデンサの容量C2が、C1<C2の関係を満たしている。
詳しくは実施例で述べるが、上記の半導体装置では、スイッチング動作に起因するコモンモードノイズの伝搬経路を表す等価回路が、スイッチング素子を中心とするブリッジ回路を構成する。今、第1YコンデンサのインピーダンスをZY1と表記し、第2YコンデンサのインピーダンスをZY2で表記すると、そのブリッジ回路は、理想的には、Z1×ZY2=Z2×ZY1の関係が成立するときに、インピーダンスがバランスし、コモンモードノイズは流れない。Z1×ZY2=Z2×ZY1の関係が成立せずとも、Z1×ZY2とZ2×ZY1の差が小さいほど、グランドに流れるコモンモードノイズが抑制される。即ち、Z1>Z2のとき、ZY1>ZY2であれば、コモンモードノイズが抑制される。一方、コンデンサはその容量が大きいほどインピーダンスが小さくなる。それゆえ、C1<C2の関係が成立すれば、ZY1>ZY2の関係が成立する。即ち、Z1>Z2の関係が成立するときに、C1<C2の関係が成立すれば、コモンモードノイズが抑制される。
なお、スイッチング素子が電極Aと電極Bを有しており、電極Aとグランドとの間のインピーダンスZAと、電極Bとグランドとの間のインピーダンスZBの関係がZA>ZBのときには電極Aを第1電極とみなし、電極Bを第2電極とみなす。反対に、ZA<ZBのときには、電極Bを第1電極とみなし、電極Aを第2電極とみなす。
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
(第1実施例)図1−図6を参照して第1実施例の半導体装置1を説明する。第1実施例の半導体装置1は、チョッパー型の昇圧コンバータ回路2を有する。図1に、半導体装置1の回路図、即ち、昇圧コンバータ回路2の回路図を示す。
昇圧コンバータ回路2は、電気自動車に搭載されるデバイスであり、バッテリ91の電圧を昇圧して出力する。出力された電力は、例えば、走行用モータを駆動するインバータに供給される。
昇圧コンバータ回路2は、入力正極端3aと入力負極端3bに印加された電圧を昇圧して出力正極端7aと出力負極端7bに出力する。昇圧コンバータ回路2は、フィルタコンデンサ4、リアクトル5、スイッチング素子6を備える。フィルタコンデンサ4は、入力正極端3aと入力負極端3bの間に接続されている。リアクトル5は、入力正極端3aと出力正極端7aの間に接続されている。入力負極端3bと出力負極端7bは直結されている。スイッチング素子6は、リアクトル5の出力正極端側と出力負極端7bの間に接続されている。スイッチング素子6は、具体的にはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。図1に示す回路は良く知られているので動作の説明は省略する。
符号10が示す破線矩形は、後述するパワーモジュールを示している。即ち、パワーモジュール10の中にスイッチング素子6が収容されている。符号Pは、スイッチング素子6の高電位側の電極を示しており、符号Nはスイッチング素子6の低電位側の電極を示している。具体的には、一方の電極Pはスイッチング素子6のコレクタ電極であり、他方の電極Nはスイッチング素子6のエミッタ電極である。
図1に示すグランドG1、G2は、スイッチング素子6のスイッチング動作に伴う高周波ノイズ電流(スイッチングノイズ)が流れるグランドを示しており、昇圧コンバータ回路2と結線されてはいない。グランドG1は、例えば半導体装置1とバッテリ91が搭載される車両のボディ95に相当する。例えば半導体装置1は、車両のフロントコンパートメントあるいはリアコンパートメントに搭載され、バッテリ91は車室内のシート下に搭載される。半導体装置1とグランドG1は、結線されてはいないが、半導体装置1のハウジング、バッテリ91のハウジング、あるいは、半導体装置1とバッテリ91を連結するパワーケーブルなどから、寄生容量を経由して車両のボディ95へと伝わる。寄生容量とは、車載機器とボディ95と物理的な構造に起因して意図せずに形成されてしまう容量のことである。寄生容量を介したグランドG1へのノイズ伝達経路は、ボディ95の各所に存在するが、図1では、複数の寄生容量を一つの寄生容量SCで代表している。
ボディ95へ伝搬したコモンモードノイズは、車両のラジオの音声に悪影響を及ぼす。コモンモードノイズを低減するため、半導体装置1は、後述するYコンデンサ23、24を備えている。
グランドG2は、半導体装置1のハウジング50(後述)に相当する。半導体装置1のハウジング50は導電性の金属で作られており、車両のボディに導通している。半導体装置1のハウジング50とボディ95との間の抵抗8は、例えば50オーム程度であり、極めて小さい。
スイッチング素子6の一方の電極PとグランドG2の間にはYコンデンサ23が接続されており、他方の電極NとグランドG2の間にはYコンデンサ24が接続されている。Yコンデンサ23とYコンデンサ24は、グランドG1へ流れるコモンモードノイズを低減するために設けられている。詳しくは後述するが、Yコンデンサ23、24は、パワーモジュール10とその周辺の構造を利用して形成されている。
グランドG1とG2を分けているのは次の理由による。グランドG1は、寄生容量SCを介したノイズ伝達経路を表している。グランドG2は、上記したYコンデンサ23、24を介したノイズ伝達経路を表している。グランドG1とグランドG2は、ともに、半導体装置1のスイッチングノイズが伝達されるグランドであるとみなせることに留意されたい。
スイッチングノイズ(コモンモードノイズ)の伝搬経路を表す等価回路を図2に示す。図1の昇圧コンバータ回路2は、100ボルト程度の電圧と数十アンペア程度の電流を扱う。そのような昇圧コンバータ回路2では、スイッチングノイズの周波数は、1[MHz]〜100[MHz]程度であり、フィルタコンデンサ4の容量は1[マイクロファラド」〜100[マイクロファラド]程度である。そのような規模の回路の場合、スイッチングノイズは、フィルタコンデンサ4をほとんど無抵抗で流れる。すなわち、コモンモードノイズの伝搬経路においては、入力正極端3aと入力負極端3bは短絡状態とみなせる。それゆえ、図2の等価回路では、図1の入力正極端3aと入力負極端3bを一つのポイント(ポイントA)で表している。即ち、ポイントAは、グランドG1に等しい。また、説明の便宜上、先に述べた寄生容量SCは、ポイントAとポイントP(スイッチング素子6の電極P)の間、及び、ポイントAとポイントN(スイッチング素子6の電極N)の間の経路に含める。さらに、説明の便宜上、Yコンデンサ23、24のグランドG2側をポイントBで表している。即ち、ポイントBは、グランドG2に等しい。「ポイントA」、「ポイントB」との呼称は、説明の便宜上のものである。なお、Yコンデンサの容量は、100[ピコファラド]〜10[ナノファラド]程度である。
図2に示されているように、スイッチング素子6の電極PとポイントAの間にリアクトル5が接続される。スイッチング素子6の電極PとポイントBの間にはYコンデンサ23が接続される。スイッチング素子6の電極NとポイントBの間には、Yコンデンサ24が接続される。なお、図2では、図1で示した寄生容量SCの図示は省略した。
図2に示すように、昇圧コンバータ回路2について、コモンモードノイズの伝搬経路を表す等価回路は、スイッチング素子6を中心とするブリッジ回路を構成する。今、電極PとポイントA(グランドG1)の間のインピーダンスをZPA、電極NとポイントA(グランドG1)の間のインピーダンスをZNAとする。別言すれば、インピーダンスZPAは、寄生容量SCを介した電極PからグランドG1までのコモンモードノイズ伝搬経路のインピーダンスに相当し、インピーダンスZPBは、寄生容量SCを介した電極NからグランドG1までのコモンモードノイズ伝搬経路のインピーダンスに相当する。また、電極PからポイントB(グランドG2)までのコモンモードノイズ伝搬経路のインピーダンスをZPB、電極NからポイントB(グランドG2)までのコモンモードノイズ伝搬経路のインピーダンスをZNBとする。インピーダンスZPBは、Yコンデンサ23のインピーダンスに相当する。インピーダンスをZNBは、Yコンデンサ24のインピーダンスに相当する。インピーダンスZPAは、別言すれば、電極PからグランドG1までのコモンモードノイズ伝搬経路の中で、Yコンデンサ23、24以外を通るコモンモードノイズ伝搬経路のインピーダンスに相当する。インピーダンスZNAは、電極NからグランドG1までのコモンモードノイズ伝搬経路の中で、Yコンデンサ23、24以外を通るコモンモードノイズ伝搬経路のインピーダンスに相当する。
インピーダンスZPA、ZNAを求めるには、Yコンデンサ23、24を外して電極P、NとグランドG1までのインピーダンスを計測すればよい。その意味では、インピーダンスZPAは、Yコンデンサ23、24が無いときの電極Pからグランドまでのインピーダンスに相当し、インピーダンスZNAは、Yコンデンサ23、24が無いときの電極Nからグランドまでのインピーダンスに相当する。
以下、グランドG1とグランドG2を合わせて総称する場合には、グランドGと表記する。また、以下では、コモンモードノイズを単純にノイズと称する場合がある。図2のブリッジ回路において、ZPA・ZNB=ZPB・ZNAが成立すれば、ポイントAとポイントBが等電位となり、理論的には、グランドGにコモンモードノイズは流れない。ZPA・ZNBの値とZPB・ZNAの値との差が小さいほど、グランドGに流れるノイズは抑制される。従って、例えば、ZPA>ZNAの関係が成立するとき、ZPB>ZNBの関係が成立すれば、グランドGに流れるノイズを低減できる。また、仮に、ZPA<ZNAの関係が成立するときには、ZPB<ZNBの関係が成立すれば、ノイズを低減できる。
一方、コンデンサのインピーダンスは、コンデンサの容量と相関がある。具体的には、コンデンサの容量が大きいほどインピーダンスが小さくなる。Yコンデンサ23の容量を記号CPで表し、Yコンデンサ24の容量を符号CNで表す。CP>CNの関係が成立すれば、ZPB<ZNBの関係が成立する。CP<CNの関係が成立すれば、ZPB>ZNBの関係が成立する。従って、ZPA>ZNAの関係が成立するとき、CP<CNの関係が成立すれば、ノイズを低減できる。また、ZPA<ZNAの関係が成立するときは、CP>CNの関係が成立すれば、ノイズを低減できる。
先に述べたように、インピーダンスZPA、ZNAは、Yコンデンサ23、24を外して電極P、NとグランドG1までのインピーダンスを計測すれば得ることができる。インピーダンスZPA、ZNAを計測し、得られたインピーダンスに基づいて、Yコンデンサ23、24の容量を決めればよい。
以上の事項をまとめると次のように表現することができる。Yコンデンサ23、24が無い場合の回路において、電極Pと電極Nのうち、グランドG(グランドG1)との間のインピーダンスが大きい方の電極を「第1電極」と表記し、インピーダンスが小さい方の電極を「第2電極」と表記する。そして、第1電極とグランドG(グランドG2)の間に接続されているYコンデンサを「第1Yコンデンサ」と表記し、第2電極とグランドG(グランドG2)の間に接続されているYコンデンサを「第2Yコンデンサ」と表記する。第1Yコンデンサの容量を「C1」と表記し、第2Yコンデンサの容量を「C2」と表記する。第1、第2Yコンデンサが接続されていないときの第1電極とグランドG(グランドG1)との間のインピーダンスを「Z1」と表記し、第2電極とグランドG(グランドG1)との間のインピーダンスを「Z2」と表記する。Z1>Z2の関係が成立する。このとき、C1<C2の関係が成立すれば、コモンモードノイズを効果的に低減することができる。
図2の等価回路では、ポイントPA間にはリアクトル5が接続されており、ポイントNA間は直結である。それゆえ、明らかに、ZPA>ZNAの関係が成立する。従って、電極Pが上記した第1電極に対応し、電極Nが上記した第2電極に相当する。また、ZPAがZ1に対応し、ZNAがZ2に対応する。そうすると、Yコンデンサ23が第1Yコンデンサに対応し、その容量はC1(CP)である。また、Yコンデンサ24は第2Yコンデンサに対応し、その容量はC2(CN)である。従って、C1<C2(CP<CN)の関係が成立すれば、コモンモードノイズを低減できる。
仮に、リアクトル5のインダクタンスが大きい場合、ZPA>>ZNA(Z1>>Z2)の関係が成立する。その場合には、CP<<CN(C1<<C2)の関係が成立すれば、さらに効果的に高周波ノイズ(スイッチングノイズ)を低減できる。また、ZPA/ZNA=CN/CPの関係が成立すれば、図2の等価回路でインピーダンス群がバランスし、より一層、コモンモードノイズを抑制することができる。
Yコンデンサ23、24は、汎用のコンデンサ素子ではなく、半導体装置1のハードウエア構成を利用して形成される。次に、図3−図6を使ってYコンデンサ23、24のハードウエア構成を説明する。
図3は、半導体装置1の平面図である。図3は、ハウジング50の中の部品レイアウトが理解できるように、カバーを外した図である。図4は、図3のIV−IV線における断面図である。図4は、ハウジング50だけが断面で表されており、内部の部品は側面図で表されている。ハウジング50には、パワーモジュール10、コンデンサユニット54、リアクトルユニット55が収容されている。コンデンサユニット54の中に、図1のフィルタコンデンサ4が収容されている。符号54a、54bが、コンデンサユニット54の端子を示している。リアクトルユニット55の中に、図1のリアクトル5が収容されている。符号55a、55bが、リアクトルユニット55の端子を示している。先に述べたように、パワーモジュール10の中に、スイッチング素子6が収容されている。符号12a、12bが、パワーモジュール10の端子を示している。端子12a、12bが、夫々、図1に示したスイッチング素子6の電極P、電極Nに相当する。リアクトルユニット55の端子、コンデンサユニット54の端子、パワーモジュール10の端子が、バスバ59a−59fで接続されており、図1の回路(Yコンデンサ23、24を除く)が構成される。
バスバ59aには、図1の入力正極端3aに対応する端子板53aが接続されている。バスバ59dには、図1の入力負極端3bに対応する端子板53bが接続されている。端子板53a、53bは、絶縁体58aを挟んでハウジング50に接続されている。バスバ59cには、図1の出力正極端7aに対応する端子板57aが接続されている。59fには、図1の出力負極端7bに対応する端子板57bが接続されている。端子板57a、57bは、絶縁体58bを挟んでハウジング50に接続されている。
パワーモジュール10について説明する。パワーモジュール10は、その両側を支持板56a、56bで支持され、ハウジング50に固定されている。パワーモジュール10と支持板56aの間に絶縁板21aが挟まれている。パワーモジュール10と支持板56bの間に絶縁板21bが挟まれている。一対の支持板56a、56bは、導電性の金属で作られている。
図5と図6を参照してパワーモジュール10とその周辺の構造について説明する。図5に、パワーモジュール10とその両側の支持板56a、56bの分解斜視図を示す。図6にパワーモジュール10を図中のXY平面でカットした断面図を示す。図6には、支持板56a、56bも示してある。パワーモジュール10は、スイッチング素子6を樹脂パッケージ14で封止したデバイスである。樹脂パッケージ14には、スイッチング素子6のほか、スペーサ16と2枚の導電板13a、13bも封止されている。スイッチング素子6は一方の面に電極Pが露出しており、その反対側の面に電極Nが露出している。樹脂パッケージ14の内部で電極Pに導電板13aが接続している。樹脂パッケージ14の内部で電極Nには、導電性のスペーサ16を介して導電板13bが接続している。別言すれば、導電板13aはスイッチング素子6の一方の電極Pと導通しており、導電板13bはスイッチング素子6の他方の電極Nと導通している。図示されてはいないが、導電板13aは、パワーモジュール10の端子12aに接続しており、導電板13bは、パワーモジュール10の端子12bに接続している。
導電板13aの一面は樹脂パッケージ14の表面に露出している。導電板13bの一面は、導電板13aとは反対側で樹脂パッケージ14の表面に露出している。支持板56aは、絶縁板21aを挟んで導電板13aと対向するようにパワーモジュール10に隣接配置されており、支持板56bは、絶縁板21bを挟んで導電板13bと対向するようにパワーモジュール10に隣接配置されている。それら一対の支持板56a、56bは、パワーモジュール10を両側から挟み込んでおり、パワーモジュール10を支持している。
支持板56a、56bは、導電性の金属で作られており、ハウジング50と導通している。先に述べたように、ハウジング50が昇圧コンバータ回路2のグランドに相当する。なお、「昇圧コンバータ回路2のグランド」とは、正確には、昇圧コンバータ回路2について、スイッチング素子6のスイッチング動作に伴う高周波ノイズ電流の伝搬経路を示す等価回路のグランドGを意味する。支持板56a、56bは、ハウジング50の電位、即ちグランド電位に保持される。図6に示すように、導電板13aと支持板56aが絶縁板21aを挟んで対向している。そして、導電板13aはスイッチング素子6の電極Pと導通しており、支持板56aはハウジング50(グランドG)と導通している。導電板13aと支持板56aと絶縁板21aが、図1と図2に示したYコンデンサ23を構成する。導電板13bと支持板56bが絶縁板21bを挟んで対向している。そして、導電板13bはスイッチング素子6の電極Nと導通しており、支持板56bはハウジング50(グランドG)と導通している。導電板13bと支持板56bと絶縁板21bが、図1と図2に示したYコンデンサ24を構成する。図6では、上記の導電板13a等がYコンデンサ23、24を構成することを示すように、コンデンサ記号をパワーモジュール10の横に仮想線で描いている。
前述したように、Yコンデンサ23の容量CPとYコンデンサ24の容量CNの間にCP<CNの関係が成立するとコモンモードノイズが抑制される。導電板13aと導電板13bの大きさは等しく、絶縁板21aと絶縁板21bの大きさも等しく、支持板56aと支持板56bの大きさも等しい。また、絶縁板21aと絶縁板21bの厚みも等しい。ここで、絶縁板の距離は、Yコンデンサにおける電極間距離に相当する。仮に、絶縁板21aと絶縁板21bの誘電率が同じであれば、Yコンデンサ23の容量CPとYコンデンサ24の容量CNは等しくなる。しかし、本実施例においては、絶縁板21aと絶縁板21bは、異なる材料で作られており、絶縁板21aの誘電率Maは、絶縁板21bの誘電率Mbよりも小さい。この誘電率の相違により、CP<CNの関係が実現される。即ち、CP<CNの関係が成立するように、絶縁板21a、21bの夫々の誘電率と厚みが定められている。導電板13a、13b、絶縁板21a、21b、支持板56a、56bにより、2つのYコンデンサ23、24が構成され、Yコンデンサ23の容量CP<Yコンデンサ24の容量CNの関係が成立している。それゆえ、半導体装置1のコモンモードノイズが抑制される。
なお、リアクトル5のインダクタンスが大きい場合、図2の等価回路において、ZPA>>ZNAの関係が成立する場合がある。その場合には、CP<<CNの関係が成立するとよい。Yコンデンサ23、24の容量差を大きくするには、絶縁板21aと絶縁板21bに、誘電率が大きくことなる材料を用いるとよい。図2の等価回路において、ZPA>>ZNAの関係が成立する場合、CP<<CNの関係が成立すれば、ZPB>>ZNBの関係が成立し、コモンモードノイズを効果的に抑制できる。
もしも可能であるならば、ZPA/ZNA=CN/CPの関係が成立するように、容量CPと容量CNが定められると、コモンモードノイズを一層効果的に抑制することができる。ZPA>>ZNAのであるので、CP<<CNの関係が成立すれば、近似的に、ZPA/ZNA=CN/CPの関係が成立する。
上記説明したように、第1実施例の半導体装置1は、コモンモードノイズ対策として、装置の構造を活用した2個のYコンデンサ(Yコンデンサ23、24)を備えている。それら2個のYコンデンサは、半導体装置1の回路の等価回路(コモンモードノイズの伝搬経路を示す等価回路)がブリッジ回路を構成するように配置されている。そして、2個のYコンデンサは、その容量が、ブリッジ回路のインピーダンス群がバランス状態に近づくように選定される。ブリッジ回路のインピーダンス群がバランス状態に近くなることの一例は、図2の等価回路においてZPA・ZNBがZPB・ZNAに近づくことである。第1実施例では、2個のYコンデンサの容量は、異なる誘電率の絶縁板を用いることで実現している。先に述べたように、ZPA・ZNAは、Yコンデンサ23、24を外して計測すれば得られる。インピーダンスZPB、ZNBは、ZPA、ZNAの計測値に基づいて定めることができる。Yコンデンサ23、24の容量CP、CNは、インピーダンスZPB、ZNBに基づいて定めることができる。
(第2実施例)図7−図11を使って第2実施例の半導体装置101を説明する。第2実施例の半導体装置101は、チョッパー型の双方向DC−DCコンバータ回路102を備える。図7に、双方向DC−DCコンバータ回路102の回路図を示す。双方向DC−DCコンバータ回路102は、バッテリ91の出力電圧を昇圧してインバータ回路92に出力する昇圧機能と、インバータ回路92から送られる電力を降圧してバッテリ91に供給する降圧機能を備える。半導体装置101は、電気自動車に搭載されるデバイスであり、インバータ回路92は、不図示の走行用のモータに交流電力を供給する。電気自動車は、その減速エネルギを利用してモータで発電する。モータが発電した交流電力はインバータ回路92が直流電力に変換する。変換された直流電力が双方向DC−DCコンバータ回路102に供給される。以下では、説明を簡単にするために、双方向DC−DCコンバータ回路102を単純に双方向コンバータ回路102と称することにする。
双方向コンバータ回路102は、フィルタコンデンサ4、リアクトル5、2個のスイッチング素子6a、6b、2個の還流ダイオード、平滑コンデンサ9を備えている。双方向コンバータ回路102は、低電圧側(バッテリ側)の端子と高電圧側(インバータ回路側)の端子が夫々入力と出力を兼ねるが、説明の便宜上、低電圧側(バッテリ側)の端子を入力正極端3a、入力負極端3bと表記し、高電圧側の端子を出力正極端7a、出力負極端7bと表記する。双方向コンバータ回路102は、入力正極端3aと入力負極端3bの間に印加される電圧を昇圧して出力正極7aと出力負極端7bの間に出力する昇圧機能と、出力正極端7aと出力負極端7bの間に印加される電圧を降圧して入力正極端3aと入力負極端3bに出力する降圧機能を有している。
2個のスイッチング素子6a、6bは直列に接続されている。スイッチング素子6a、6bは、トランジスタである。より具体的には、スイッチング素子6a、6bは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子6a、6bの夫々に還流ダイオードが逆並列に接続されている。2個のスイッチング素子6a、6bの中点と入力正極端3aの間にリアクトル5が接続されている。入力正極端3aと入力負極端3bの間にフィルタコンデンサ4が接続されている。出力正極端7aと出力負極端7bの間に平滑コンデンサ9が接続されている。図7の双方向コンバータ回路102はよく知られているので詳しい説明は省略する。
図7の符号110が示す破線は、パワーモジュールを示している。即ち、2個のスイッチング素子6a、6bと還流ダイオードはパワーモジュール110に収容されている。パワーモジュール110については後述する。
図7のグランドG1は、第1実施例の場合と同様に、車両のボディ95であり、双方向コンバータ回路102と結線されてはいない。スイッチング素子6a、6bのスイッチング動作に伴う高周波ノイズ電流が、寄生容量SCを介してグランドG1に流れ込む。寄生容量を介したグランドG1へのノイズ伝達経路は、ボディ95の各所に存在するが、図7では、複数の寄生容量を一つの寄生容量SCで代表している。
第2実施例の半導体装置101も、半導体装置1と同様に、ボディ95に流れるコモンモードノイズを低減するためにYコンデンサ123、124a、124b(後述)を備えている。
図7のグランドG2は、第1実施例の場合と同様に、半導体装置101のハウジング150(後述)に相当する。グランドG1(ボディ95)とグランドG2(ハウジング150)の間の抵抗8は、50オーム程度である。グランドG1とグランドG2は、共に、半導体装置101のグランドである。
スイッチング素子6aの一方の電極(高電位側の電極Pa)とグランドG2の間にはYコンデンサ124aが接続されている。スイッチング素子6bの一方の電極(低電位側の電極Nb)とグランドGの間にはYコンデンサ124bが接続されている。直列接続の中点SとグランドG2の間にはYコンデンサ123が接続されている。中点Sは、スイッチング素子6aの他方の電極(低電位側の電極Na)とスイッチング素子6bの他方の電極(高電位側の電極Pa)に対応する。Yコンデンサ124a、124b、123は、スイッチング素子6a、6bが発する高周波ノイズ電流によるコモンモードノイズを低減するために設けられている。Yコンデンサ124a、124b、123は、半導体装置101のハードウエア構造を利用して形成されている。Yコンデンサ124a、124b、123のハードウエア構造については後述する。
コモンモードノイズの伝搬経路について説明する。双方向コンバータ回路102が扱う電力は第1実施例の昇圧コンバータ回路2と同程度である。従って、第1実施例の昇圧コンバータ回路2の場合と同様に、コモンモードノイズの伝搬経路としては、入力正極端3aと入力負極端3bの間、及び、出力正極端7aと出力負極端7bの間は短絡状態とみなせる。
スイッチング素子6a、6bが発する高周波ノイズ電流のグランドGへの伝搬経路(コモンモードノイズの伝搬経路)を表す等価回路を図8に示す。図8のポイントAは、短絡とみなせる入力正極端3aと入力負極端3bに相当する。ポイントSは、2個のスイッチング素子6a、6bの直列接続の中点に相当する。ポイントSは、スイッチング素子6aの一方の電極Naとスイッチング素子6bの一方の電極Paにも相当する。ポイントPNは、短絡とみなせる出力正極端7aと出力負極端7bに相当する。ポイントPNは、スイッチング素子6aの他方の電極(図7の電極Pa)とスイッチング素子6bの他方の電極(図7の電極Nb)にも相当する。ポイントBは、Yコンデンサ123、124a、124bのグランドG2側を表している。寄生容量SCは、ポイントSとポイントAの間、及び、ポイントPNとポイントAの間に含まれるが、図示は省略した。
第1実施例の等価回路(図2)と図8を比較すると、図2のスイッチング素子6が、図8のスイッチング素子6a、6bの逆並列接続に対応し、図2のYコンデンサ23が図8のYコンデンサ123に対応し、図2のYコンデンサ24が図8のYコンデンサ124a、124bの並列接続に対応しているのが解る。Yコンデンサ124a、124bの並列接続は、一つのYコンデンサ124とみなせる。コモンモードノイズの伝搬経路は、スイッチング素子6a、6bを中心とするブリッジ回路を構成する。
図8において、符号ZSAは、ポイントS(スイッチング素子6a、6bの一方の電極)とポイントA(グランドG1)の間のインピーダンスを表している。符号ZPNAは、ポイントPN(スイッチング素子6a、6bの他方の電極)とポイントA(グランドG1)の間のインピーダンスを表している。符号ZSBは、Yコンデンサ123を経由するポイントS(スイッチング素子6a、6bの一方の電極)からポイントB(グランドG2)までの間のインピーダンスを表している。符号ZPNBは、Yコンデンサ124を経由するポイントPN(スイッチング素子6a、6bの他方の電極)からポイントB(グランドG2)までの間のインピーダンスを表している。別言すれば、インピーダンスZSAは、Yコンデンサ123、124が無いときのポイントS(スイッチング素子6a、6bの一方の電極)とグランドG2の間のインピーダンスを表している。インピーダンスZPNAは、Yコンデンサ123、124が無いときのポイントPN(スイッチング素子6a、6bの他方の電極)とグランドG2の間のインピーダンスを表している。
第1実施例のときと同様に、図8のブリッジ回路において、ZSA・ZPNB=ZSB・ZPNAの関係が成立すれば、理想的には、コモンモードノイズが流れない。ZSA・ZPNBの値とZSB・ZPNAの値の差が小さいほど、コモンモードノイズは小さくなる。図7に示されているように、ポイントSとポイントAの間にはリアクトル5が接続されており、ポイントPNとポイントAは、電子部品を介さずに直結されている。従って、ZSA>ZPNAの関係が成立している。それゆえ、ZSB>ZPNBの関係が成立すれば、ノイズを低減できる。
今、Yコンデンサ123の容量をCSで表し、Yコンデンサ124の容量をCPNで表す。なおYコンデンサ124は、Yコンデンサ124aと124bの並列接続の等価コンデンサである。Yコンデンサ124の容量CPNは、Yコンデンサ124aの容量とYコンデンサ124bの容量を加算した値に等しい。第1実施例のときと同様に、CS<CPNであれば、ZSB>ZPNBが実現される。即ち、CS<CPNとなるようにYコンデンサ123、124(124a、124b)の容量を決定すれば、スイッチング素子6a、6bが発する高周波ノイズ電流によるコモンモードノイズを低減できる。
仮に、リアクトル5のインダクタンスが大きければ、ZSA>>ZPNAの関係が成立する場合がある。その場合には、ZSB>ZPNBの関係が成立すれば、コモンモードノイズを効果的に抑制できる。そのためには、CS<<CPNとなるようにYコンデンサ123、124(124a、124b)の容量を決定すれば、コモンモードノイズを抑制できる。
さらには、ZSB/ZPNB=CPN/CSの関係が成立すれば、ZSA・ZPNB=ZSB・ZPNAの関係が成立し、コモンモードノイズを理想的に抑制できる。
Yコンデンサ123、124a、124bのハードウエア構成について説明する。図9に、半導体装置101の平面図を示し、図10に図9のX−X線の断面図を示す。半導体装置101のハウジング150には、積層ユニット157、リアクトルユニット155、コンデンサユニット152が収容されている。リアクトルユニット155が、図7、図8の回路図におけるリアクトル5に相当する。コンデンサユニット152の中に、コンデンサ素子154、159が収容されている。コンデンサ素子154が図7のフィルタコンデンサ4に相当し、コンデンサ素子159が図7の平滑コンデンサ9に相当する。図9と図10において、各部品はバスバで接続されているが、多くのバスバは図示を省略している。
積層ユニット157は、複数の冷却器160が積層されたユニットである。図9では一つの冷却器にのみ符号160を付しており、残りの冷却器に対する符号は省略している。積層ユニット157には複数のパワーモジュール110が組み込まれている。それぞれのパワーモジュール110は、隣接する冷却器160の間に挟まれている。図9では、一つのパワーモジュール110のみに符号110を付しており、残りのパワーモジュールに対する符号は省略している。複数のパワーモジュール110の一つが、図7に示したパワーモジュール110であり、他のパワーモジュール110は、インバータ回路92に使われるスイッチング素子を収容している。
各冷却器の内部には流路が備えられている。複数の冷却器160は、冷媒供給管161と冷媒排出管162で連結されている。冷媒供給管161を通じて全ての冷却器160に冷媒が分配される。冷媒は冷却器160を通る間に隣接するパワーモジュール110から熱を吸収する。冷却器160を通った冷媒は冷媒排出管162を通じてハウジング150の外へと排出される。
積層ユニット157は、積層方向の一端がハウジング150の壁に接しており、他端とリアクトルユニット155には板バネ158が挿入されている。板バネ158によって、積層ユニット157には積層方向に加圧される。積層方向の加圧により、パワーモジュール110と冷却器160が密着し、パワーモジュール110から冷却器160へ熱がよく伝達される。
複数の冷却器160、冷媒供給管161、冷媒排出管162は、導電性の金属で作られている。また、半導体装置101のハウジング150も導電性の金属で作られている。具体的には、それらはアルミニウムで作られている。図9に示されているように、積層ユニット157はハウジング150に接している。即ち、冷却器160とハウジング150は導通している。
図10ではパワーモジュール110の側面が表れている。パワーモジュール10は、2個のスイッチング素子6a、6bを樹脂パッケージ114でモールドしたデバイスである。パワーモジュール110の表面には導電板113a、113bが露出している。図10では描かれていないが、パワーモジュール110の裏面には導電板113c、113dが露出している。スイッチング素子6a、6bの両面には電極が露出しており、導電板113a−113dは、それらのスイッチング素子6a、6bのいずれかの電極と導通している。
冷却器160の側板とパワーモジュール110の導電板113a−113dと絶縁板121a、121bにより、前述したYコンデンサ123、124a、124bが形成される。次に、図11を参照してパワーモジュール110の内部構造と、Yコンデンサの構造について説明する。
図11は、パワーモジュール110を図中のXY平面でカットした断面図である。図11には、パワーモジュール110の両側の冷却器160も断面で示されている。図11において、パワーモジュール110の下側に描かれている冷却器を冷却器160aと称し、上側に描かれている冷却器を冷却器160bと称する。図11では、冷却器160aの上側に配置されたパワーモジュール、及び、冷却器160bの下側に配置されたパワーモジュールは図示を省略した。
図11のパワーモジュール110は、双方向コンバータ回路102に使われているスイッチング素子6a、6bを収容している。なお、図示はされていないが、パワーモジュール110は、スイッチング素子6a、6bのほか、夫々のスイッチング素子に接続されている還流ダイオードも収容している。以下の説明では、還流ダイオードは無視する。
スイッチング素子6a、6bは、樹脂パッケージ114に封止されている。樹脂パッケージ114は、スイッチング素子6a、6bのほか、2個のスペーサ116a、116b、4枚の導電板113a−113dを封止している。スイッチング素子6a、6bは、その両面に電極が設けられている。スイッチング素子6aの一方の電極Paには導電板113aが接続されており、他方の電極Naにはスペーサ116aを介して導電板113cが接続されている。スイッチング素子6bの一方の電極Pbには導電板113bが接続されており、他方の電極Nbにはスペーサ116bを介して導電板113dが接続されている。別言すれば、スイッチング素子6aの一方の電極Paは導電板113aと導通しており、他方の電極Naは導電板113cと導通している。また、スイッチング素子6bの一方の電極Pbは導電板113bと導通しており、他方の電極Nbは導電板113dと導通している。スイッチング素子6aの電極Paはコレクタ電極であり、電極Naはエミッタ電極である。また、スイッチング素子6bの電極Pbはコレクタ電極であり、電極Nbはエミッタ電極である。図11に示されているように、導電板113bと導電板113cは樹脂パッケージ114の中で接続されている。
導電板113a−113dの夫々の一方の面は、パワーモジュール110の樹脂パッケージ114から露出している。導電板113aと113bは、絶縁板121aを挟んで冷却器160aの側板163と対向している。導電板113cと113dは、絶縁板121bを挟んで冷却器160bの側板164と対向している。別言すれば、冷却器160aの側板163は、絶縁板121aを挟んで導電板113a、113bと対向するようにパワーモジュール110に隣接配置されている。また、冷却器160bの側板164は、絶縁板121bを挟んで導電板113c、113dと対向するようにパワーモジュール110に隣接配置されている。
絶縁板121aと121bは、図中の右半分と左半分で材質が異なり、誘電率が異なる。絶縁板121aの図中の左半分を左部121a1と称し、右半分を右部121a2と称する。絶縁板121bの左半分を左部121b1と称し、右半分を右部121b2と称する。
導電板113aはスイッチング素子6aの電極Paと導通しており、側板163はハウジング150(即ちグランドG2)と導通している。従って、導電板113aと側板163とそれらに挟まれている絶縁板121aの左部121a1がYコンデンサを形成する。同様に、導電板113bと側板163とそれらに挟まれている絶縁板121aの右部121a2がYコンデンサを形成する。導電板113cと側板164とそれらに挟まれている絶縁板121bの左部121b1がYコンデンサを形成する。導電板113dと側板164とそれら挟まれている絶縁板121bの右部121b2がYコンデンサを形成する。
導電板113aと絶縁板121aの左部121a1と側板163で構成されるYコンデンサが、図7、図8に示したYコンデンサ124aに対応する。導電板113dと絶縁板121bの右部121b2と側板164で構成されるYコンデンサが図7、図8に示したYコンデンサ124bに対応する。導電板113bと絶縁板121aの右部121a2と側板163で構成されるYコンデンサと、導電板113cと絶縁板121bの左部121b1と側板164で構成されるYコンデンサの並列接続が、図7、図8のYコンデンサ123に対応する。絶縁板121aと絶縁板121bの厚みは同じであり、導電板113a−113dの面積も同じである。絶縁板の左部121a1、右部121a2、左部121b1、右部121b2の誘電率は、Yコンデンサ123の容量CSと、Yコンデンサ124の容量CPN(Yコンデンサ124aと124bの並列接続の容量)が、CS<CPNとなるように定められている。従って、先に述べたように、図8の等価回路においてZSB>ZPNBが実現され、図7の双方向コンバータ回路102のコモンモードノイズが抑えられる。
先に述べたように、リアクトル5のインダクタンスが大きければ、ZSA>>ZPNAの関係が成立する場合がある。ZSA>>ZPNAの関係が成立する場合、CS<<CPNとなるように、誘電率の差が大きい材料が絶縁板121a、121bの左部と右部に用いられる。もしも可能であるならば、ZPA/ZNA=CN/CPの関係が成立するように、容量CPと容量CNが定められる。
パワーモジュール110の両側に形成されるYコンデンサの別の態様を説明する。図12に変形例のYコンデンサの断面図を示す。この変形例では、絶縁板の中に金属板を埋設して、所望の容量を有するYコンデンサを実現する。図12に示すパワーモジュール110は、図11に示したものと同一である。図11に示した冷却器160a、160bは、側板163、164のみを示し、残りの部分は図示を省略している。また、絶縁板221aと221bは、理解を助けるために厚みを増して描いてある。
絶縁板221aには、段差を有する金属板222が埋め込まれている。金属板222は、その端部222cが絶縁板221aから露出しており、冷却器の側板163と導通している。従って、導電板113a、113bと、金属板222と、それらに挟まれている絶縁板(絶縁板221aの一部)によって、Yコンデンサが形成される。
段差を有する金属板222は、導電板113aとの距離W1が、導電板113bとの距離W2よりも小さくなるように、絶縁板221aに埋め込まれている。コンデンサの容量は、コンデンサ電極間の距離に反比例する。それゆえ、導電板113aと金属板222の左部222aとそれらの間の絶縁板で構成されるYコンデンサの容量は、導電板113bと金属板222の右部222bとそれらの間の絶縁板で構成されるYコンデンサの容量よりも大きくなる。
絶縁板221bにも、同様に、段差を有する金属板223が埋め込まれている。金属板223は、その端部223cが絶縁板221bから露出しており、冷却器の側板164と導通している。従って、導電板113c、113dと、金属板223と、それらに挟まれている絶縁板(絶縁板221bの一部)によって、Yコンデンサが形成される。金属板223も、金属板222と同様に、導電板113dとの距離が、導電板113cとの距離よりも小さくなるように配置されている。導電板113dと金属板223の右部223bとそれらの間の絶縁板で構成されるYコンデンサの容量は、導電板113cと金属板223の左部223aとそれらの間の絶縁板で構成されるYコンデンサの容量よりも大きくなる。
導電板113aと左部222aとそれらの間の絶縁板で構成されるYコンデンサが、図7、図8に示したYコンデンサ124aに対応する。導電板113dと右部223bとそれらの間の絶縁板で構成されるYコンデンサが図7、図8に示したYコンデンサ124bに対応する。導電板113bと右部222bとそれらの間の絶縁板で構成されるYコンデンサ、及び、導電板113cと左部223aとそれらの間の絶縁板で構成されるYコンデンサの並列接続が、図7、図8のYコンデンサ123に対応する。図12の金属板入りの絶縁板221a、221bを採用することで、Yコンデンサ123の容量CSと、Yコンデンサ124の容量CPNとの間に、CS<CPNの関係が成立する。従って、図7の等価回路図において、ZSB>ZPNBが実現され、図7の双方向コンバータ回路102のコモンモードノイズが抑制される。
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。第1実施例の昇圧コンバータ回路2が、請求項の「所定の電子回路」の一例に相当する。第1実施例のスイッチング素子6の電極Pが請求項の「第1電極」の一例に相当し、電極Nが請求項の「第2電極」の一例に相当する。第1実施例の導電板13aが請求項の「第1導電板」の一例に相当し、導電板13bが請求項の「第2導電板」の一例に相当する。第1実施例の支持板56aが請求項の「第3導電板」の一例に相当し、支持板56bが請求項の「第4導電板」の一例に相当する。第1実施例の絶縁板21aが請求項の「第1絶縁部材」の一例に相当し、絶縁板21bが請求項の「第2絶部材」の一例に相当する。第1実施例のYコンデンサ23が請求項の「第1Yコンデンサ」の一例に相当し、Yコンデンサ24が請求項の「第2Yコンデンサ」の一例に相当する。第1実施例のYコンデンサ23の容量CPが請求項の「容量C1」の一例に相当し、Yコンデンサ24の容量CNが請求項の「容量C2」の一例に相当する。第1実施例のインピーダンスZPAが請求項の「インピーダンスZ1」の一例に相当し、インピーダンスZNAが請求項の「インピーダンスZ2」の」一例に相当する。
第2実施例の双方向DC−DCコンバータ回路102が請求項の「所定の電子回路」の別の一例に相当する。第2実施例のスイッチング素子6aと6bが、請求項の「電子回路の一部を構成しているスイッチング素子」の別の一例に相当する。なお、前述したように、スイッチング素子6a、6bは、トランジスタである。第2実施例のスイッチング素子6aの電極Naとスイッチング素子6bの電極Pbが、それぞれ、請求項の「第1電極」の別の一例に相当する。第2実施例のスイッチング素子6aの電極Paとスイッチング素子6bの電極Nbが、それぞれ、請求項の「第2電極」の別の一例に相当する。第2実施例の導電板113bと113cが夫々、請求項の「第1導電板」の別の一例に相当する。第2実施例の導電板113aと113dが夫々、請求項の「第2導電板」の別の一例に相当する。第2実施例の側板163の導電板113bと対向する部分と、側板164の導電板113cと対向する部分が請求項の「第3導電板」の別の一例に相当する。第2実施例の側板163の導電板113aと対向する部分と、側板164の導電板113dと対向する部分が請求項の「第4導電板」の別の一例に相当する。第2実施例の絶縁板121bの左部121b1と、絶縁板121aの右部121a2が、請求項の「第1絶縁部材」の別の一例に相当する。第2実施例の絶縁板121bの右部121b2と、絶縁板121aの左部121a1が、請求項の「第2絶縁部材」の別の一例に相当する。
第2実施例の入力正極端3aと入力負極端3bが、請求項の「第1正極端」と「第1負極端の一例に相当する。第2実施例の出力正極端7aと出力負極端7bが、請求項の「第2正極端」と「第2負極端」の一例に相当する。
第2実施例のYコンデンサ123が請求項の「第1Yコンデンサ」の一例に相当する。第2実施例のYコンデンサ124a、124bが、請求項の「第2Yコンデンサ」の一例に相当する。第2実施例のYコンデンサ123の容量CSが請求項の「容量C1」の一例に相当し、Yコンデンサ124の容量CPNが請求項の「容量C2」の一例に相当する。第1実施例のインピーダンスZSAが請求項の「インピーダンスZ1」の一例に相当し、インピーダンスZPNAが請求項の「インピーダンスZ2」の一例に相当する。
図12の変形例の場合、金属板222の右部222bと、金属板223の左部223aが請求項の「第3導電板」の一例に相当する。金属板222の左部222aと、金属板223の右部223bが請求項の「第4導電板」の一例に相当する。
実施例の半導体装置1は、車載の電力変換装置であった。その特徴をまとめると、次の通りである。半導体装置(電力変換装置)は、電子回路(昇圧コンバータ回路2などの電力変換回路)を収容しているハウジング50を備える。ハウジング50は、車両のボディ95と導通している。半導体装置は、パワーモジュール10を備える。パワーモジュール10の構成は上記した通りである。第1Yコンデンサ、第2Yコンデンサの構成も上記した通りである。第1、第2Yコンデンサ以外を通る第1電極(電極P)からボディ95までのノイズ伝搬経路のインピーダンスZ1と、第1、第2Yコンデンサ以外を通る第2電極(電極N)からボディ95までのノイズ伝搬経路のインピーダンスZ2が、Z1>>Z2の関係を満たしている。そして、容量C1<<C2の関係が成立している。ノイズ伝搬経路とは、スイッチング素子のスイッチング動作に伴う高周波ノイズ電流の伝搬経路のことである。第2実施例の半導体装置101も、上記の特徴を有している。実施例の半導体装置は、ボディに流れるコモンモードノイズを低減することができる。
本明細書が開示する半導体装置は、第1実施例の昇圧コンバータ回路2、あるいは、第2実施例の双方向DC−DCコンバータ回路102を有する装置に限られない。別の電力変換回路を有する半導体装置であってもよい。また、本明細書が開示する技術は、車載の半導体装置に限られない。
第1実施例、第2実施例は、ともに、スイッチング素子の第1電極にリアクトルが接続されており、第2電極は半導体装置の入力端又は出力端に接続されている回路であった。そのような回路では、インピーダンスZ1>>インピーダンスZ2となる。そのときには、C1<<C2であるのがよい。
インピーダンスは周波数依存の電気抵抗である。本明細書において、「ZPA>ZNA」などの表現は、スイッチング素子のスイッチング動作に伴って発する高周波ノイズ電流(スイッチングノイズ)の周波数帯におけるインピーダンスの大小関係を意味する。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
1、101:半導体装置 2:昇圧コンバータ回路 3a:入力正極端 3b:入力負極端 4:フィルタコンデンサ 5:リアクトル 6、6a、6b:スイッチング素子 7a:出力正極端 7b:出力負極端 8:抵抗 9:平滑コンデンサ 10、110:パワーモジュール 12a、12b:端子 13a、13b、113a−113d:導電板 14、114:樹脂パッケージ 16、116a、116b:スペーサ 21a、21b、121a、121b、221a、221b:絶縁板 23、24、123、124、124a、124b:Yコンデンサ 50、150:ハウジング 53a、53b、57a、57b:端子板 56a、56b:支持板 58a、58b:絶縁体 59a−59f:バスバ 91:バッテリ 92:インバータ回路 95:車両のボディ 102:双方向DC−DCコンバータ回路 160:冷却器 163、164:側板 222、223:金属板
Claims (7)
- 所定の電子回路を収容している半導体装置であり、
前記電子回路の一部を構成しているスイッチング素子と、当該スイッチング素子の第1電極と導通している第1導電板と、当該スイッチング素子の第2電極と導通している第2導電板と、を封止しているパワーモジュールと、
第1絶縁部材を挟んで前記第1導電板と対向するように前記パワーモジュールに隣接配置されており、前記半導体装置のハウジングと導通している第3導電板と、
第2絶縁部材を挟んで前記第2導電板と対向するように前記パワーモジュールに隣接配置されており、前記ハウジングに導通している第4導電板と、
を備えており、
前記第1導電板と前記第1絶縁部材と前記第3導電板によって容量C1の第1Yコンデンサが構成されているとともに、前記第2導電板と前記第2絶縁部材と前記第4導電板によって容量C2の第2Yコンデンサが構成されており、
前記第1及び第2Yコンデンサが無いときの前記第1電極と前記電子回路のグランドとの間のインピーダンスZ1と、前記第2電極と前記グランドとの間のインピーダンスZ2がZ1>Z2の関係を満たしており、
前記容量C1と前記容量C2がC1<C2の関係を満たしていることを特徴とする半導体装置。 - Z1/Z2=C2/C1の関係が成立していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
- 前記第1絶縁部材と前記第2絶縁部材の夫々の誘電率と厚みがC1<C2の関係を満たすように定められていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
- 前記第3導電板と前記第4導電板は、前記パワーモジュールを両側から挟み込んでおり、前記パワーモジュールを支持していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
- 前記第3導電板と前記第4導電板は、前記パワーモジュールを両側から挟み込んでいる冷却器の側板であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
- 前記所定の電子回路は、第1正極端と第1負極端の間に印加される電圧を昇圧して第2正極端と第2負極端の間に出力する昇圧機能と、前記第2正極端と前記第2負極端の間に印加される電圧を降圧して前記第1正極端と前記負極端に出力する降圧機能を有している双方向DC−DCコンバータ回路であり、当該DC−DCコンバータ回路は、
直列に接続されている2個の前記スイッチング素子と、
夫々のスイッチング素子に逆並列に接続されているダイオードと、
2個の前記スイッチング素子の直列接続の中点と前記第1正極端の間に接続されているリアクトルと、
前記第1正極端と前記第1負極端の間に接続されているフィルタコンデンサと、
前記第2正極端と前記第2負極端の間に接続されている平滑コンデンサと、
を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置。 - 前記パワーモジュールは、2個の前記スイッチング素子を封止していることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
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JP2018046623A (ja) * | 2016-09-13 | 2018-03-22 | 三菱電機株式会社 | 電力変換装置 |
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- 2015-03-18 JP JP2015054225A patent/JP2016174502A/ja active Pending
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