JP2016173431A - 楽器及びギター - Google Patents

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朗 水谷
Akira Mizutani
朗 水谷
亮 篠田
Ryo Shinoda
亮 篠田
智矢 宮田
Tomoya Miyata
智矢 宮田
洋子 白井
Yoko Shirai
洋子 白井
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【課題】良好な音響特性を有する楽器用振動板を容易かつ安価に得られるようにする。【解決手段】板材2の一方の面2aあるいは両方の面2a,2bに、板材2の曲げ剛性の異方性が変化するように複数の溝部3を並べて形成した楽器用振動板1を提供する。複数の溝部3が両方の面2a,2bに形成される場合には、一方の面2aに形成される溝部3と、他方の面2bに形成される溝部3とを、互いに複数の溝部3の配列方向にずらして位置させる。【選択図】図3

Description

本発明は、楽器及びギターに関する。
アコースティックギター、グランドピアノ、アップライトピアノ等のアコースティック楽器は、表板や響板などのように、振動することで音の放射に寄与する楽器用振動板を備える。
楽器用振動板の音響特性を決める要因の一つとして、楽器用振動板の異方性が知られている。例えば非特許文献1には、アコースティックギターの表板の異方性の大きさが、アコースティックギターの音響特性に影響する旨が記載されている。
アコースティック・ギター・マガジン、日本、リットーミュージック、2011年9月号 SUMMER ISSUE Vol.49、p. 69、85
音響特性が良好である表板等の楽器用振動板は木製であることが多いが、このような木材資源には限りがある。このため、従来では、良好な音響特性を有する楽器用振動板の入手が困難である。また、良好な音響特性を有する楽器用振動板は高価である。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、容易かつ安価に良好な音響特性を得ることが可能な楽器用振動板を備える楽器及びギターを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の楽器用振動板は、板材の少なくとも一方の面に、前記板材の曲げ剛性の異方性が変化するように複数の溝部を並べて形成したことを特徴とする。
本発明によれば、板材のうち複数の溝部の延在方向及び板厚方向に直交する方向の曲げ剛性(直交方向の曲げ剛性)を低下させることができる。これにより、板材の曲げ剛性の異方性を容易に変えることができるため、良好な音響特性を有する楽器用振動板を容易かつ安価に得ることが可能となる。
本発明の一実施形態に係るアコースティックギターを示す正面図である。 図1のアコースティックギターの要部を示す拡大断面図である。 図1のアコースティックギターの要部の変形例を示す拡大断面図である。 等方性材料からなる楽器用振動板の比曲げ剛性と異方性との関係を示すグラフである。 図1のアコースティックギターの変形例を示す正面図である。
以下、図1,2を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、この実施形態に係る楽器用振動板1は、アコースティック楽器の一種であるアコースティックギター10に設けられている。
アコースティックギター10(以下、単にギター10と呼ぶ。)は、胴部11を有する。本実施形態の楽器用振動板1は、胴部11の表板12として構成されている。表板12には、これを貫通する響孔13(サウンドホール)が形成されている。表板12の外面12bには、ブリッジ14及びサドル15が順次重ねて設けられている。サドル15はギター10の弦16を支持する。弦16の振動はサドル15及びブリッジ14を介して表板12に伝達される。これにより、表板12が振動すると共に胴部11内の空気が共鳴し、音が響孔13から外部に放射される。
本実施形態の表板12は、木製である。表板12は、例えば一枚の木製板材(単板材)であってもよいが、例えば複数枚の木製板材を重ね合せた合板材であってもよい。
表板12(楽器用振動板1)を構成する板材2の一方の面2a(主面2a)には、複数の溝部3が形成されている。本実施形態において、板材2の他方の面2b(主面2b)には溝部3が形成されていない。各溝部3は、一方の面2aから窪んで形成され、板材2の面2a,2bに平行する面内において一方向に延びている。本実施形態において、各溝部3は一方向(X軸方向)に直線状に延びている。各溝部3の延在方向に直交する溝部3の断面形状は、例えば図2のようにV字状であってもよいが、例えばU字状、円弧状、台形状、階段状など任意であってよい。
複数の溝部3は、互いに交差しないように一方の面2aに並べられている。複数の溝部3は、各溝部3の延在方向、及び、板材2の板厚方向(Z軸方向)に直交する方向(Y軸方向;以下、直交方向と呼ぶ。)に配列されている。複数の溝部3は、例えば互いに平行しなくてもよいが、本実施形態では互いに平行している。
これにより、板材2においては、溝部3を形成しない場合と比較して、複数の溝部3の配列方向(Y軸方向)の曲げ剛性が低くなる。すなわち、板材2の曲げ剛性の異方性(以下、板材2の異方性と呼ぶ。)が変化する。複数の溝部3は、例えば隙間なく配列されてもよいが、本実施形態では隙間をあけて配列されている。また、複数の溝部3は、例えば図2のように等しい間隔で配列されてもよいが、これに限ることはない。本実施形態において、複数の溝部3は、板材の一方の面2a全体に形成されている。
また、各溝部3は、例えば弦16の直交方向(Y軸方向)に延びてもよいが、本実施形態では弦16の長手方向(X軸方向)に延びている。すなわち、各溝部3の延在方向は、例えば弦16の長手方向(ギター10のネックの長手方向)に平行する。
図2に例示する本実施形態のギター10では、複数の溝部3が表板12の内面12aのみに形成されているが、例えば表板12の外面12bのみに形成されてもよい。
本実施形態の楽器用振動板1によれば、板材2のうち複数の溝部3の延在方向及び板厚方向に直交する方向の曲げ剛性(直交方向の曲げ剛性)を低下させることができる。これにより、板材2の異方性を容易に変えることができるため、良好な音響特性(例えば、音量、サステイン(音の伸び)、周波数特性など)を有する楽器用振動板1を容易かつ安価に得ることが可能となる。また、楽器用振動板1を備えるギター10等の楽器を安価に提供できる。
また、本実施形態の板材2は木製であるため、複数の溝部3を形成することで、板材2の異方性を適切に調整することができる。したがって、溝部3を形成する前の板材2が安価な単板材や合板材であっても、良好な音響特性を有する楽器用振動板1として使用することができる。
以下、木製の板材2(以下、木製板材2と呼ぶ。)の異方性及びその調整方法について説明する。
例えば、木製の板材2では、繊維方向が木製板材2の面2a,2bに平行する面内で一方向に延びている。このため、木製板材2は、木製板材2の面2a,2bに平行する面内で繊維方向に直交する方向(繊維直交方向)の曲げ剛性が繊維方向の曲げ剛性よりも低い異方性を有する。
次に、上記した木製板材2の異方性を調整する具体的な方法について説明する。
例えば、溝部3の無い木製板材2の異方性が、良好な音響特性を有する板材よりも小さい場合には、各溝部3の延在方向が繊維方向に平行するように複数の溝部3を木製板材2に形成すればよい。これにより、木製板材2の異方性を大きくすることができる。
また、例えば、溝部3の無い木製板材2の異方性が、良好な音響特性を有する板材よりも大きい場合には、各溝部3の延在方向が繊維方向に直交するように複数の溝部3を木製板材2に形成すればよい。これにより、木製板材2の異方性を小さくすることができる。
これにより、良好な音響特性を有さない安価な木製板材2の異方性を、良好な音響特性を有する板材の異方性に近づけることができる。すなわち、良好な音響特性を有する楽器用振動板1を容易かつ安価に得ることが可能となる。
また、ギター10においては、木製板材2の異方性が大きい方がより良好な音響特性となる場合が多いため、複数の溝部3の形成によって異方性を大きくすることは特に有効である。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
複数の溝部3は、例えば図3に示すように、板材2の両方の面2a,2bに形成されてもよい。この場合、一方の面2aに形成される溝部3と、他方の面2bに形成される溝部3とは、例えば板材2の板厚方向に重なってもよいが、例えば図3のように互いに複数の溝部3の配列方向(Y軸方向)にずらして位置してもよい。また、溝部3の深さ寸法や幅寸法は、例えば図3のように一方の面2aと他方の面2bとで異なってもよいが、例えば互いに等しくてもよい。
複数の溝部3が板材2の両方の面2a,2bに形成される場合には、溝部3を一方の面2aのみに形成する場合と比較して、板材2の直交方向(Y軸方向)の曲げ剛性を大きく低下させることができる。すなわち、板材2の異方性を大きく変えることができる。
また、両方の面2a,2bに形成される複数の溝部3が互いに溝部3の配列方向にずらして位置する場合には、板材2が局所的に薄くなることを防止できる。したがって、板材2の強度が局所的に弱くなることを防止できる。
楽器用振動板1の板材2は、木製に限らず、例えば単純な樹脂(例えばエポキシ樹脂)等からなる等方性材料や、繊維強化樹脂(例えば炭素繊維強化樹脂(CFRP))等のように異方性が非常に大きい材料によって構成されてもよい。
例えば、等方性材料からなる板材2に複数の溝部3を形成した場合には、板材2に異方性を持たせることができる。この点について、図4のグラフを用いて具体的に説明する。
図4のグラフにおいて、横軸は、板材2の比曲げ剛性(溝部3の延在方向の曲げ剛性(Ex)を板材2の密度(ρ)で割ったもの)を示している。また、縦軸は、板材2の異方性(溝部3の延在方向の曲げ剛性(Ex)を複数の溝部3の配列方向の曲げ剛性(Ey)で割ったもの)を示している。また、異方性が1であることは、板材2が等方性である(異方性を有さない)ことを意味する。
さらに、図4のグラフにおいて、「溝無し」は溝部3を形成していない板材2のプロット点を、「片面に溝」は一方の面2aのみに複数の溝部3を形成した板材2のプロット点を、「両面に溝」は両方の面2a,2bに複数の溝部3を形成した板材2のプロット点をそれぞれ示している。
図4のグラフによれば、溝部3のない板材2では、異方性を有さない、すなわち、複数の溝部3の配列方向の曲げ剛性が溝部3の延在方向の曲げ剛性と等しい。これに対し、面2a,2bに複数の溝部3を形成した板材2では、その異方性を大きくすることができる。具体的には、複数の溝部3の配列方向の曲げ剛性を溝部3の延在方向の曲げ剛性よりも低くすることができる。また、複数の溝部3を両方の面2a,2bに形成した板材2では、複数の溝部3を一方の面2aのみに形成した板材2と比較して、異方性を大きくすることができる。
また、図4のグラフによれば、板材2のうち溝部3の延在方向の比曲げ剛性は、溝部3が無い板材2、一方の面2aにのみ溝部3を形成した板材2、両方の面2a,2bに溝部3を形成した板材2の順番で、微小に減少しているだけである、すなわち、溝部3の有無によらず大きく変化しない。したがって、複数の溝部3を形成しても、溝部3の配列方向の曲げ剛性だけが低下し、溝部3の延在方向の曲げ剛性を維持することができる。この傾向は、樹脂からなる板材2に限らず、木製など他の材料からなる板材2であっても同様である。
また、複数の溝部3は、板材2の面2a,2b全体に形成されることに限らず、例えば面2a,2bの一部領域にのみ形成されてもよい。この場合、板材2の一部領域のみの異方性を変えることができる。
具体的に説明すれば、複数の溝部3は、例えば図5に示すように、ギター10の表板12の一部領域のみに形成されてもよい。図5においては、複数の溝部3が表板12のうち響孔13との間にブリッジ14を挟み込む領域Aに形成されている。領域Aは、ギター10から放射される音のうち低音域の音響特性に影響しやすいため、この領域Aの異方性を変えることで、低音域の音響特性を変えることができる。
また、配列方向(例えば図2,3においてY軸方向)に隣り合う溝部3同士は、例えば溝部3の延在方向の端部において互いに連結されてもよい。したがって、複数の溝部3は、例えば蛇行する一つの溝によって構成されてもよい。
本発明の楽器用振動板は、ギター10の表板12に限らず、例えばギター10の裏板や側板に適用されてもよい。
また、本発明の楽器用振動板は、ギター10に限らず、振動することで音の放射に寄与する板材を備える各種楽器に適用することが可能である。すなわち、本発明の楽器用振動板を備える楽器は、例えばヴァイオリン、ウクレレ、チェロ、ピアノ、カホンなどであってもよい。
1…楽器用振動板、2…板材、2a…一方の面、2b…他方の面、3…溝部、10…ギター(楽器)、12…表板、12a…内面、12b…外面

Claims (6)

  1. 板材の少なくとも一方の面に、前記板材の曲げ剛性の異方性が変化するように複数の溝部を並べて形成した楽器用振動板を備える楽器。
  2. 複数の前記溝部が、前記板材の両方の面に形成される請求項1に記載の楽器。
  3. 一方の面に形成される前記溝部と、他方の面に形成される前記溝部とが、互いに複数の前記溝部の配列方向にずれて位置する請求項2に記載の楽器。
  4. 前記板材が、等方性材料からなる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の楽器。
  5. 複数の前記溝部が、前記面の一部領域にのみ形成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の楽器。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の楽器が、弦を備えるギターであり、
    前記溝部が、前記弦の長手方向に延びているギター。

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