JP2016169416A - シリコンナノ粒子発光体の製造方法およびそのシリコンナノ粒子発光体を用いた発光素子 - Google Patents

シリコンナノ粒子発光体の製造方法およびそのシリコンナノ粒子発光体を用いた発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】それぞれの波長でより発光強度が高いシリコンナノ粒子発光体を簡易で、生産性を低下させることなく、比較的安価に製造する方法を提供する。【解決手段】基板上に形成された酸化ケイ素膜中に、スパッタリングによりシリコンを分散させる工程において、ターゲットの被スパッタ粒子の基板面に対する入射方向が、基板の法線に対して10°から80°になるようにして、且つ基板温度を300℃以下にしてスパッタリングを行い、その後、非酸化雰囲気で800℃から1350℃で熱処理する。【選択図】図1

Description

本発明は、高い蛍光発光強度を有するナノメートル(nm)サイズのシリコン粒子の製造方法、及びこの製造方法で製造されたシリコンナノ粒子発光体を用いた発光素子に関する。
従来、発光素子の材料として、GaAsまたはZnSeなどのIII-V族系またはII-VI族系の化合物半導体材料が使われているが、大規模集積回路などの半導体産業の主役であるシリコンに代替できれば、資源量が豊富であること、低環境毒性であること、安価であることなど得られるメリットが多い。
1990年に単結晶ウェハー表面をフッ化水素酸水溶液中で陽極酸化することによるポーラスシリコンからの赤色発光が発見されたこと(非特許文献1)に端を発して、ナノサイズシリコンを用いた発光素子の開発が、様々な用途において進められている。
例えば、シリコンの大きさを三次元的にナノメートルサイズ化(1nmから10nm)することにより、そのサイズ効果により蛍光発光し、粒子径を変えることにより近紫外から近赤外光を放出し、可視光領域においては青色、緑色、赤色(三原色)各色を発色できることが開示されている(特許文献1、2)。また、半導体レーザーや発光ダイオード(特許文献1)、白色光の発色が可能であることから液晶ディスプレイのバックライト(特許文献2)、太陽光発電モジュール用波長変換素子(特許文献3)、生体標識(特許文献4)へのシリコンナノ粒子の適用が開示されている。
更に、近年、シリコン微結晶粒子を発光材料として用いる研究が精力的に進められている。具体的には、スパッタリング法、CVD法、イオン注入法等の手段を用いてシリコン化窒化物多結晶膜とシリコン微結晶粒子とを交互に堆積して発光材料を製造する方法(特許文献5)、シリコン微結晶粒子をシリコンカ−バイド多結晶体中にドット状に分散して発光材料を製造する方法(特許文献6)等が開示されている。さらには、遊星ボールミルでシリコン粉末を粉砕してシリコンナノ粒子を得る方法(特許文献7)や、シリコン源と炭素源とを含む混合物を焼成し、その際に生成した気体を急冷することでシリコンナノ粒子を得る方法(特許文献3)等が開示されている。
一方、発光素子の発光材料としてシリコンナノ粒子を用いようとした場合、その発光強度や発光安定性を向上させることが必要であり、この必要性に応えるべく、種々の技術が開示されている。
具体的には、シリコンナノ粒子の発光強度はその粒径に依存するため、発光に寄与しない粒径の大きいSiナノ粒子を含有するシリコン酸化膜中に酸素雰囲気中で特定波長のレーザー光を照射して、その表面を酸化して粒径を制御する方法(特許文献1)、Si:SiO2膜中に含まれるSiの量を調整する方法(特許文献8)、シリコンナノ粒子が埋め込まれた酸化ケイ素膜をフッ酸溶液で溶解し、シリコンナノ粒子が分散したフッ酸水溶液を得た後、遠心分離により分級する方法(特許文献9)などが開示されている。さらに、シリコンナノ粒子の表面状態も発光強度や発光安定性に大きく寄与することが知られており、SiO2中とそれに埋め込まれたシリコンナノ粒子との熱膨張係数の差を緩和し、界面の欠陥に起因する発光を低減させる方法(特許文献10)、有機分子により不動態化(特許文献11)、コア/シェル構造化(特許文献12)などの工夫がなされている。
また、スパッタリング法によるシリコンナノ粒子の作製技術が開示されている特許文献10、13では、シリコンとSiO2それぞれのターゲット面積比と成膜レートの比を規定することにより、或いは、特許文献14では、高周波電力やガス圧を変化させることにより、ターゲット材料から叩き出されるシリコン原子の量を調整して、シリコンナノの結晶サイズや密度を制御し、各色を発色させる方法が開示されている。
さらに、酸化ケイ素膜中にPをドープすることで、酸化ケイ素膜とシリコンナノ粒子との熱膨張係数の差を緩和し、界面の欠陥を減少させ、発光強度を向上させる技術が開示(特許文献10)されているが、発光ピークが約885nmの発光に限られている。
特開平9−83075号公報 特開2007−63378号公報 国際公開第2012/60418号 特開2009−280841号公報 特開平11−310776号公報 特開2000−77710号公報 特開2011−213848号公報 特開2003−277740号公報 特開2010−254972号公報 特開2001−40348号公報 特開2010−205686号公報 特開2009−96954号公報 特開2004−83740号公報 特開2005−268337号公報 特開2001−14664号公報 特開2013−14806号公報
L.T.Canham,Appl.Phys.Lett.,vol.57, p.1046 (1990)
シリコンナノ粒子を発光素子等の電子デバイスに適用する場合、シリコンナノ粒子には、適用される電子デバイスの機能に応じて、発光スペクトル或いは光吸収スペクトルが要求される。
しかしながら、上記の技術では酸化ケイ素膜中に埋め込むシリコンの量を調整することで、シリコンナノ粒子のサイズを制御し各色を発色させる技術、或いは、酸化ケイ素膜とシリコンナノ粒子との熱膨張係数の差を緩和し、界面の欠陥を減少させて、ある特定の波長の発光強度を向上させるための技術に留まっている。
そのため、上記の従来の技術では、要求される光の波長帯域に応じて発光強度を高める機能が不十分であり、電子デバイスの機能を更に向上させる方法としては、限界があると考えられる。
本発明の目的は、光の用途に応じて当該光の波長帯域においてより高い発光強度をもつ前記シリコンナノ粒子を含有する発光体を製造する方法、並びにそのシリコンナノ粒子を用いた発光素子を提供するものである。
本発明者らは、上述した問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、スパッタリングでシリコンが分散された酸化ケイ素膜を形成する過程において、ターゲットの被スパッタ粒子を基板面に対して斜め入射させ、その角度を制御することによって、発光体に要求される波長に応じて十分な発光強度を持つシリコンナノ粒子を得ることができることを見出し、本発明を達成するに至った。
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
(1)基板上に形成された酸化ケイ素膜中に、スパッタリングによりシリコンを分散させる工程において、ターゲットの被スパッタ粒子の基板面に対する入射方向が、基板の法線に対して10°から80°になるようにして、且つ基板温度を300℃以下にしてスパッタリングを行い、その後、非酸化雰囲気で800℃から1350℃で熱処理することを特徴とするシリコンナノ粒子発光体の製造方法である。
(2)(1)に記載のスパッタリングにおいて、正対するターゲット面に対し基板表面を10°から80°に傾斜させることによりターゲットからの被スパッタ粒子の入射方向を制御することを特徴とするシリコンナノ粒子発光体の製造方法である。
(3)熱処理を900℃〜1300℃の温度、且つ10分から120分の範囲で行うことを特徴とする(1)または(2)に記載のシリコンナノ粒子発光体の製造方法である。
(4)熱処理を窒素ガスまたは窒素化合物ガスが3体積%以上含まれるガス雰囲気にして行うことを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のシリコンナノ粒子発光体の製造方法である。
(5)基板の算術平均粗さRaが5nmから50nmであることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のシリコンナノ粒子発光体の製造方法である。
(6)(1)から(5)記載のいずれかの方法で製造されたシリコンナノ粒子発光体を用いてなることを特徴とする発光素子である。
本発明によれば、ナノシリコン粒子のサイズによって発光スペクトルを制御することができるので、発光素子に要求される機能に応じてそれぞれの波長でより発光強度が高いシリコンナノ粒子発光体を簡易で、生産性を低下させることなく、比較的安価に製造することができる。また、当該シリコンナノ粒子発光体を用いた発光素子を提供することができる。
(a)は本発明に係るシリコンナノ粒子発光体の製造方法の一実施形態の概略図であり、(b)は10°未満の入射方向から基板上へスパッタリングした場合に形成されるシリコン粒子の状態を示す。 (a)、(b)は、それぞれシリコンナノ粒子発光体を用いた発光素子の実施形態である。
本発明の製造方法は、スパッタリングにより酸化ケイ素膜中にシリコンを分散させ、その後熱処理することによりシリコンを凝集させ、酸化ケイ素膜中にシリコンナノ粒子を形成させる過程を含んでおり、本発明に係るシリコンナノ粒子発光体は、前記酸化ケイ素膜と、シリコンナノ粒子を含むものである。
また、本発明の製造方法は、前記シリコンナノ粒子を形成させる過程において、ターゲットの被スパッタ粒子の基板面に対する入射方向が、基板の法線に対し斜めになるようにして、シリコンが分散された酸化ケイ素膜を作製することで、その後の熱処理により、均一な粒径のシリコンナノ粒子、さらにはシリコンナノ粒子表面に安定な表面欠陥低減層を形成させ、発光強度の高いシリコンナノ粒子を得ることを特徴とする。
本発明において、均一な粒径のシリコンナノ粒子、その表面に表面欠陥低減層を形成するメカニズムについて以下に述べる。
被スパッタ粒子が被着される基板面の法線方向に対して、前記被スパッタ粒子を斜めに入射させて薄膜を形成させる方法は、例えば、磁気記録媒体の製造に適用されている。これは鉄基化合物やコバルト基化合物などの磁性材料を、非磁性円形基板に斜め入射させて薄膜を形成することで、垂直な方向での磁化を容易にし、反対に面内方向で磁化されにくい磁気異方性を付与させ、記録密度を向上させようとするものである(特許文献15)。一方、本発明では、シリコンを絶縁体である酸化ケイ素に含有させた膜(以下、「シリコン含有酸化ケイ素膜」ともいう。)で、当該膜中に適度な量の空孔や空隙を導入し、これを介して含有されたシリコンの拡散を促進し、均一な粒径のシリコンナノ粒子を形成させようとするものである。
斜め入射することにより、既に基板上に堆積した被スパッタ粒子自身が、基板に飛来する被スパッタ粒子の入射方向に対して影を形成し、影になった部分には被スパッタ粒子は堆積できないため(所謂、自己陰影効果)、空孔や空隙の多い比較的低密度の膜となる。このような空孔や空隙の多い膜では、その後の熱処理により、酸化ケイ素膜中に含有したシリコンが凝集する過程でシリコンが空孔や空隙を介して拡散することになるため、シリコンナノ粒子の粒径が均一化し、さらには結晶性も向上することから発光強度が大きくなると考えられる。
基板上に前記方法で作製されたシリコン含有酸化ケイ素膜を、非酸化性ガス雰囲気で熱処理することにより、当該膜中に粒径1nmから10nmのシリコンナノ粒子を形成させる。更に、前記シリコン含有酸化ケイ素膜の一部、もしくは全部を、窒素ガスまたはアンモニアガス等の窒素化合物ガス雰囲気で熱処理することで、シリコンナノ粒子の発光強度がより大きくなる。これは窒素が熱処理の際、シリコンが凝集しナノ粒子が形成すると同時に、膜中への窒素の拡散により、ナノ粒子表面に窒素と酸素を含むシェル層が形成され、前記粒子表面の欠陥を低減したことによる。本発明においては、シリコン含有酸化ケイ素膜が空隙を多く含んでおり、雰囲気ガスから窒素が当該膜中に侵入しやすいため、よりその効果が顕在化するものと考えられる。
次に、本発明に係るシリコンナノ粒子発光体の具体的な製造方法について述べる。
(スパッタリングの条件)
シリコン等の半導体基板やSiO2からなる基板等の誘電体基板上に、シリコン含有酸化ケイ素膜を形成するためのターゲットとして、酸化ケイ素(SiOx(0.5≦x≦2))を用い、酸化ケイ素膜中に含有させるシリコン量を制御するためにターゲット上にシリコンチップを配置しても良い。
適度な空孔や空隙を確保するため、ターゲットの被スパッタ粒子の基板面に対する平均的な入射方向が、基板の法線に対し、10°から80°になるようにする。10°未満だと充分な空孔や空隙を形成することができず、一方、80°超だと空隙が大きくなりすぎて、熱処理時に一部のシリコン粒子のサイズが肥大化したり、シリコンが酸化ケイ素に被覆されていない状態になってしまうため、結果的に蛍光強度が大きくならない。
図1(a)は本発明に係るシリコンナノ粒子発光体1の製造方法の一実施形態の概略図である。図1(a)に示される実施形態においては、ターゲットとしてSiOが用いられており、シリコンナノ粒子及び酸化ケイ素膜が表面上に形成される基板として、SiO基板が用いられている。
図1(a)に示されるように、ターゲット10上の複数箇所にシリコンチップ11を配置し、前述の入射方向から基板2上へスパッタリングすることによって、酸化ケイ素膜3中にシリコン4が分散された状態で存在するとともに、空孔や空隙3aが十分に形成される。前記シリコン4は、酸化ケイ素を構成する分子と共有結合しない状態で存在するシリコン原子のみからなる。前記空孔或いは空隙により、後述する熱処理時においてシリコン4が凝集してシリコンナノ粒子5が形成される際、そのサイズが均一化され、前記シリコンナノ粒子5は、シリコンからなるコア5bの周囲にキャリア再結合が起きにくいシェル5aが形成される構造になる。尚、シェル5aは、後述するN2雰囲気熱処理時に特に形成され易い。
図1(b)は、10°未満の入射方向から基板2上へスパッタリングした場合に形成されるシリコン粒子6の分布状態を示す。前述したように、傾斜角が10°未満だと充分な空孔や空隙を形成することができず、熱処理時に一部のシリコン粒子6が肥大化する等して、そのサイズが均一化されない。
正対するターゲット面に対して基板を10°から80°に傾斜させて配置する方法は、容易であることや、生産性の点から好適である。また、これ以外の方法として、ターゲットに正対する位置から平行にずらした位置に基板を配置する方法(特許文献16)、ターゲットと基板の間にコリメーター(貫通孔を有するマスク)を配置する方法(特許文献15)があり、いずれの方法でも良い。
成長中の膜に付着した被スパッタ粒子の移動度(モビリティ)が大きくなりすぎると、それ自身で空孔や空隙を埋めてしまうことになるので、基板温度を300℃以下にすることが必要である。基板を加熱せずに室温でスパッタリングを行った場合、基板がプラズマに晒されると基板温度が上昇、ターゲット印加電力、ガス圧力などのスパッタリング条件により異なるが、300℃以上になることはない。
被スパッタ粒子を斜め入射させる場合、陰影効果による空孔や空隙の形成は、基板表面の凹凸により影響を受ける。前述したように、表面が完全に平坦の場合でも自己陰影効果による空孔や空隙が形成されるが、基板の表面の算術平均粗さが5nmから50nmであると、シリコンナノ粒子の均一化や窒素によるシェル層の形成に好適である。50nmを超えると、大きな空隙が発生し、熱処理の際にシリコンが空隙に流出し、シリコン粒子が肥大化してしまったり、酸化ケイ素の中に埋め込まれた状態ではなくなってしまったため、窒素を含むガス雰囲気での熱処理で直接窒素に触れることになるので、窒化してしまい、発光しないものとなってしまう。
スパッタリングではアルゴンなどの不活性ガスを用いて、ターゲットに含まれる成分と同じ成分の薄膜を形成する。例えば、図1(a)に示す本発明の一実施形態において、スパッタリングガスとしてアルゴンを用い、ターゲット10の成分とシリコンチップの成分であるシリコンの両方を含む薄膜を形成する。尚、ターゲット10として、SiO基板を用いても良い。前記不活性ガスには、窒素ガス又は窒素化合物ガスを2体積%以下まで含ませても良い。但し、窒素ガス又は窒素化合物ガスが前記不活性ガスに対して2体積%超含まれる場合、シリコンが窒化されたり、当該膜中に含まれた窒素が、スパッタリング後の熱処理においてシリコンの拡散を抑制し、凝集作用を阻害することになる。その結果、発光強度を低下させてしまう可能性があるので好ましくない。
(スパッタリング後の熱処理の条件)
前記方法で形成されたシリコン含有酸化ケイ素膜を、非酸化ガス雰囲気で熱処理を行う。非酸化性ガスとして主にアルゴンが選択されるが、窒素ガスまたは窒素化合物ガスが含まれるとより好ましい。前記ガスそれぞれに含まれる窒素原子のモル量や、窒素原子の化学ポテンシャルによって、最適濃度が決まると考えられるが、実験の結果、いずれのガスでも3体積%以上含まれるガス雰囲気にするとより発光強度が向上した。
熱処理温度の下限は酸化ケイ素膜中に含まれたシリコンを比較的短時間でナノサイズ粒子化するのに必要な800℃以上とする。一方、熱処理温度の上限は、酸化ケイ素とシリコンが反応して一酸化ケイ素に変化してシリコンが消失してしまうのを避けるために1350℃以下にする。900℃から1300℃、熱処理時間は10分から120分の間で行うことが好ましいが、発光波長はシリコンナノ粒子の粒径に依存するため、酸化ケイ素膜中に含まれるシリコンの量、被スパッタ粒子の入射方向、基板表面粗さに応じて、熱処理温度、熱処理時間を選択する必要がある。
(シリコンナノ粒子発光体を用いた発光素子)
本発明のシリコンナノ粒子発光体は、前記シリコンナノ粒子を含有する酸化ケイ素膜と、当該酸化ケイ素膜がその上に形成された基板とを含む構造を有する。本発明のシリコンナノ粒子発光体は、短波長の光を長波長に変換できるため、青色の光と、その光を赤色と緑色の光に波長変換して重ねることで白色光を合成することができるので、本発明のシリコンナノ粒子発光体を発光素子に用いることができる。例えば、図2(a)、(b)に示すように、青色LED21を光源として、導光板20として本発明のシリコンナノ粒子発光体を用いて、液晶等の白色バックライト30を構成しても良い。尚、図2(a)のバックライト30はオンエッジ方式であり、(b)のバックライト40は表面実装方式である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、直径254mmのSiO円板の上に5mm角、厚さ1mmの単結晶シリコンチップを均等に並べたものをターゲットとし、シリコン/SiO2比はシリコンチップの枚数により調整した。被スパッタ粒子を被着させる基板はφ13mm、厚さ3mmのSiO円板で、表面を光学研磨したもの、または、ダイヤモンドペーストによるバフ研磨したものを使用し、表面粗さは原子間力顕微鏡(Bruker社製 NanoScope5 Dimension-5000)で測定した。
(シリコンナノ粒子発光体の製造条件)(試料1〜8)
試料1〜8のシリコンナノ粒子発光体の製造条件を表1に示す。尚、試料1〜8の前記基板はターゲット表面と対向し、且つ平行であり、ターゲット法線上に近い位置に設置し、ターゲットからスパッタされた粒子の内、前記基板表面に対し、ある特定の角度を持った被スパッタ粒子のみが飛来できるように、前記基板とターゲットの間にマスク(コリメーター)を挿入するか、或いは、マスクは挿入せずに、ターゲット法線上に近い位置で、且つ法線に対し前記基板を傾斜させて、被スパッタ粒子を斜め入射させる方法とした。
基板は室温もしくは基板裏面に設置されたヒータで加熱を行い、熱電対により前記基板の裏面温度を計測した。
チャンバー内を真空にした後、Arガス50SCCMを導入し、圧力調整弁にてチャンバー内を0.5Paとした。スパッタリングは500Wの高周波電力をターゲットに印加することにより行い、シリコンが分散された酸化ケイ素膜の膜厚を1μmとした。
前記スパッタリングで形成されたシリコン含有酸化ケイ素膜は、アルゴンガス雰囲気で850℃で熱処理を行い、当該膜中のシリコンをナノサイズに凝集させた。
尚、試料5〜8は本発明の製造方法によって製造された発明例であり、試料1〜4は本発明に対する比較例である。試料1は、前記基板の基板面をターゲット表面に対して平行に対向させ、ターゲット法線上に近い位置に設置し、前記基板を加熱せずにシリコン含有酸化ケイ素膜を形成し、850℃で熱処理を行うことによって製造された。
試料2は、前記基板を400℃に加熱してシリコン含有酸化ケイ素膜を形成し、成膜後に850℃で熱処理したものである。試料3は、基板を加熱せずにシリコン含有酸化ケイ素膜を形成し、750℃で熱処理したものである。試料4は、その基板を加熱せずに傾斜角度を5°にして、850°で熱処理することによって製造された。
前記の製造条件によって得られたシリコンナノ粒子発光体に、波長350nmの励起光を照射し、発生する蛍光スペクトルを分光器(浜松ホトニクス社製C10027-02)で測定した。試料1の蛍光ピーク強度を1としたときの試料1〜8の各製造条件での蛍光測定結果を表1に示す。
(試料9〜12の製造条件)
熱処理温度により、シリコンナノ粒子の大きさが変わり、蛍光ピーク波長が変わるため、熱処理温度1000℃にして、さらには、窒素ガス雰囲気で熱処理した場合での実験も行った。
尚、ターゲット及び基板は、試料1〜8と同様のものが使用され、前記基板を傾斜する方法も、試料1〜8と同様に行われた。試料11、12は本発明の製造方法によって製造された発明例であり、試料9、10は本発明に対する比較例である。試料9〜12の製造条件と、試料9の蛍光ピーク強度を1としたときの試料10〜12の各製造条件での蛍光測定結果を表1に示す。
(試料13〜26の製造条件)
熱処理温度を1150℃にした場合で、基板表面粗さの効果、熱処理雰囲気ガス組成の影響を調査した。
尚、ターゲット及び基板は、試料1〜8と同様のものが使用され、前記基板を傾斜する方法も、試料1〜8と同様に行われた。試料18〜26は本発明の製造方法によって製造された発明例であり、試料13〜17は本発明に対する比較例である。試料13〜26の製造条件と、試料13の蛍光ピーク強度を1としたときの試料14〜26の各製造条件での蛍光測定結果を表1に示す。
試料2と試料8とを製造条件及び蛍光測定結果に関して比較すると、基板温度が300℃超の場合、他の製造条件が本発明例と実質的に同一であっても、蛍光ピーク強度が不十分になることが分かる。
また、試料3と試料7とを比較すると、非酸化ガス雰囲気で熱処理温度が800℃未満の場合、他の製造条件が本発明例と実質的に同一であっても、蛍光ピーク強度が不十分になることが分かる。
また、試料1、4と試料5とを比較すると、ターゲットの被スパッタ粒子の基板面に対する平均的な入射方向が基板の法線に対して10°未満の場合、他の製造条件が本発明例と同一であっても、蛍光ピーク強度が不十分になることが分かる。
ターゲットの被スパッタ粒子の基板面に対する平均的な入射方向と、蛍光強度の向上とのこのような関係は、他の比較例及び発明例においても同様に見られる。試料9、10、13〜17はターゲットの被スパッタ粒子の基板面に対する平均的な入射方向が10°未満或いは80°超であるが、いずれも蛍光ピーク強度が不十分であった。これに対し、本発明例である試料5〜8、11、12、18〜26は比較対象とされる試料に対して、少なくとも30%以上の蛍光ピーク強度の増加がある。特に、試料18〜26は、ターゲットの被スパッタ粒子の基板面に対する平均的な入射方向の条件を満たすことに加えて、窒素ガスまたは窒素化合物ガスを含むガス雰囲気で熱処理が好適な温度範囲で行われており、比較対象とされる試料に対して少なくとも2倍程度の蛍光強度を有していることが分かる。
また、本発明によれば、シリコンナノ粒子の蛍光ピーク強度の波長を600nm〜840nmの広い範囲にわたって調整できることが示された。
Figure 2016169416
以上の結果から、本発明のシリコンナノ粒子発光体の製造方法によれば、それぞれの波長でより発光強度が高いシリコンナノ粒子発光体を簡易で、生産性を低下させることなく、比較的安価に製造することができることが示された。
本発明の製造方法により製造されたシリコンナノ粒子発光体は、発光素子に好適に用いることができる。
1 シリコンナノ粒子発光体
2 基板
3 酸化ケイ素膜
3a 空孔或いは空隙
4 シリコン
5 シリコンナノ粒子
5a シェル
5b シリコンコア
10 ターゲット
11 シリコンチップ
20 導光板
21 青色LED
22 発光体
23 リフレクター
30、40 バックライト

Claims (6)

  1. 基板上に形成された酸化ケイ素膜中に、スパッタリングによりシリコンを分散させる工程において、ターゲットの被スパッタ粒子の基板面に対する入射方向が、前記基板の法線に対して10°から80°になるようにして、且つ前記基板温度を300℃以下にしてスパッタリングを行い、その後、非酸化雰囲気で800℃から1350℃で熱処理することを特徴とするシリコンナノ粒子発光体の製造方法。
  2. 前記スパッタリングにおいて、正対するターゲット面に対し、前記基板表面を10°から80°に傾斜させることによりターゲットからの被スパッタ粒子の入射方向を制御することを特徴とする請求項1に記載のシリコンナノ粒子発光体の製造方法。
  3. 前記熱処理を、900℃から1300℃の温度、且つ10分から120分の範囲で行うことを特徴とする請求項1または2に記載のシリコンナノ粒子発光体の製造方法。
  4. 前記熱処理を、窒素ガスまたは窒素化合物ガスが3体積%以上含まれるガス雰囲気にして行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシリコンナノ粒子発光体の製造方法。
  5. 前記基板の算術平均粗さRaが5nmから50nmであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシリコンナノ粒子発光体の製造方法。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の方法で製造されたシリコンナノ粒子発光体を用いてなることを特徴とする発光素子。
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