JP2016168544A - 吸着材成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも粉状の炭素多孔体を含有し、IUPACで定義されるIV型に分類される窒素吸着等温線における、温度77Kでの飽和蒸気圧P0に対する平衡圧力Pの相対圧力P/P0が0.5及び0.85であるときのそれぞれの吸着量の差の絶対値が0.15g/mL以上である吸着材成形体である。
【選択図】図1
Description
具体的には、電気化学キャパシタにおける炭素多孔体は、電極(正極及び負極)の界面において、電極と電解液中のイオンとの間の反応に起因して発現する容量を利用する材料として期待される。熱交換型反応器における炭素多孔体は、吸着質の吸着反応又は脱着反応に伴う吸着熱又は脱着熱を利用する場合の材料として期待される。バイオ燃料電池における炭素多孔体は、負極側での酵素による糖の分解、又は正極側での酵素による酸素還元反応を行わせるため、負極及び正極に酵素を利用する場合の材料として期待される。キャニスタにおける炭素多孔体は、例えば自動車に搭載された場合のガソリン蒸気の吸着又は脱着を良好に行う場合の利用が考えられる。また、燃料精製設備における炭素多孔体は、燃料に含まれる不純物を吸着させて燃料を精製する材料として期待される。
つまり、比表面積が比較的大きい活性炭等を使用した場合でも、吸着量又は脱着量が少なくなる場合がある。
<1> 少なくとも粉状の炭素多孔体を含有し、IUPACで定義されるIV型に分類される窒素吸着等温線における、温度77ケルビンでの飽和蒸気圧P0に対する平衡圧力Pの相対圧力P/P0が0.5及び0.85であるときのそれぞれの窒素吸着量の差の絶対値が0.15g/mL(吸着材成形体1ミリリットル(mL)当たりのグラム数;以下同様)以上である吸着材成形体である。
本発明の吸着材成形体は、少なくとも粉状の炭素多孔体を含有し、IUPACで定義されるIV型に分類される窒素吸着等温線における、温度77Kでの飽和蒸気圧P0に対する平衡圧力Pの相対圧力P/P0が0.5及び0.85であるときのそれぞれの窒素吸着量の差の絶対値を0.15g/mL以上とするものである。
特に圧力の点では、相対圧力の比較的大きい作動領域では、その相対圧力の領域において、相対圧力差に対する吸着量差が大きく発現することが重要である。
本発明においては、成形体とした場合に、窒素吸着等温線(温度77ケルビン,K)でみた場合の、飽和蒸気圧P0に対する平衡圧力Pの相対圧力P/P0が0.5及び0.85であるときのそれぞれの吸着量の差の絶対値が所定値以上となるようにする。つまり、相対圧力が比較的大きい作動領域での吸着量の差に着目する。これにより、吸着材の密度を高く維持しつつも、相対圧力の比較的大きな作動領域において、相対圧力の変化量に対する窒素吸着量の変化量を大きくすることができるので、気体の圧力を変化させた際の気体の吸脱着速度が速くなり、かつ、吸脱着量を向上させることができる。
また、相対圧力(P/P0)が0.5及び0.85であるとき、すなわち相対圧力が比較的大きい作動領域にあるときの吸着量の差に着目するので、吸脱着時の吸着熱及び脱着熱により吸脱着反応が阻害されることもない。
窒素吸着量A0.85N2と窒素吸着量A0.5N2との差(例えば、窒素吸着量A0.85N2−窒素吸着量A0.5N2による減算値)が0.15g/mL以上であることで、メソ細孔を有する構造でありながら相対圧力の比較的大きな領域において、相対圧力の変化量に対する窒素吸着量の変化量が大きくなる。そのため、特定の気体に対して、気体圧力を変化させた場合の気体の吸脱着量を向上させることができる。
窒素吸着量A0.85N2と窒素吸着量A0.5N2との差は、相対圧力の変化量に対する窒素吸着量の変化量を高める観点から、大きいほど望ましく、0.2g/mL以上が好ましく、0.3g/mL以上がより好ましく、0.4g/mL以上が更に好ましく、0.5g/mL以上が更に好ましく、0.6g/mL以上が特に好ましい。
例えばアンモニアを吸着材成形体に吸着させ、温度273ケルビンで相対圧力P/P0を変化させた際に吸着材成形体1gに吸着するアンモニアの吸着量[g/g]を測定する。測定値に基づき、相対圧力P/P0を横軸にとり、炭素多孔体1gに吸着したアンモニア吸着量[g/g]を縦軸にとってプロットし、温度273ケルビンでの飽和蒸気圧P0に対する平衡圧力Pの相対圧力P/P0とアンモニア吸着量との関係線(吸着等温線)を作成する。この関係線(吸着等温線)より、相対圧力P/P0の差に対するアンモニア吸着量差を求めることができる。
ここで、同様に温度77ケルビンで窒素を吸着させた場合の相対圧力P/P0と窒素吸着量との関係線(吸着等温線)を作成した場合、図2に示すように、求められるアンモニア吸着量差と窒素吸着量差とには直線的な相関関係がある。
したがって、アンモニア吸着量差と窒素吸着量差との間の相関関係に基づいて、相対圧力P/P0の差に対するアンモニア吸着量差から、相対圧力P/P0の差に対する窒素吸着量差を求めることができる。
本発明の吸着材成形体は、炭素材料として、粉状の炭素多孔体の少なくとも一種を含む。粉状の炭素多孔体を含むことで、成形体とした場合に多孔構造が得られ、気体の吸着サイトとなる比表面積を大きくとることができる。
かかる観点から、炭素多孔体は、メソ細孔を有する多孔体が好ましい。
BET比表面積は、窒素(N2)分子を炭素多孔体に吸着させ、吸着したN2分子の量から求められる。すなわち、圧力(P)とN2吸着量(V)との関係から、BET法(
Brunauer, Emmet and Teller's equation)により炭素多孔体の表面に吸着したN2分子の単分子吸着量(Vm)を求め、下記式から算出される値である。
比表面積 =(Vm×N/M)×Am 〔Am:分子1つあたりの占有面積〕
BETプロットの直線領域は、相対圧力P/P0で0.05〜0.3の範囲を採用して、上記Vmを決定する。
この場合、相対圧力P/P0が0.85のときの窒素吸着量から相対圧力P/P0が0.5のときの窒素吸着量を差し引いた値が100cm3(STP)/g以上600cm3(STP)/g以下になる。そのため、相対圧力の比較的大きな領域において、相対圧力の変化量に対する窒素吸着量の変化量をより大きくすることができる。よって、気体の圧力を変化させたときの気体の吸脱着量は更に大きくなる。
具体的には、本発明に好適な態様の炭素多孔体は、ベンゼンジカルボン酸のアルカリ土類金属塩を不活性雰囲気中で550℃〜700℃の温度で加熱して炭素とアルカリ土類金属炭酸塩との複合体を形成し、形成された複合体を、アルカリ土類金属炭酸塩を溶解可能な洗浄液により洗浄し、アルカリ土類金属炭酸塩を除去することによって、粉状物として得られる炭素多孔体である。
アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、中でも、カルシウムが好ましい。
ベンゼンジカルボン酸のアルカリ土類金属塩は、上市されている市販品を用いてもよいし、ベンゼンジカルボン酸とアルカリ土類金属の水酸化物とを水中で混合することにより合成してもよい。合成する場合、ベンゼンジカルボン酸とアルカリ土類金属の水酸化物とのモル比は、中和反応式に基づく化学量論量だけを用いてもよいし、一方が他方に対して過剰になるように用いてもよい。例えば、ベンゼンジカルボン酸とアルカリ土類金属の水酸化物とのモル比は、1.5:1〜1:1.5の範囲で選択することができる。
ベンゼンジカルボン酸とアルカリ土類金属の水酸化物とを水中で混合する場合、50℃〜100℃に加熱してもよい。
加熱温度が550℃以上であると、77Kでの窒素吸着等温線の相対圧力P/P0が0.85のときの窒素吸着量を向上させることができる。加熱温度を700℃以下に抑えることで、炭素多孔体の製造を好適に行うことができる。
そして、形成された複合体は、アルカリ土類金属炭酸塩を溶解可能な洗浄液により洗浄される。洗浄することにより、複合体中のアルカリ土類金属炭酸塩が存在していた箇所が空洞になるものと推定される。
本発明の吸着材成形体は、上記の炭素多孔体に加え、例えば、バインダー、造孔材、又は添加剤等の他の成分を含有してもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲内において、上記の炭素多孔体以外の吸着材を更に含有してもよい。
バインダーとしては、水溶性バインダーの少なくとも1種が好ましい。水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、トリメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、トリメチルセルロースが好ましい。
本発明の吸着材成形体の製造は、特に制限はなく、既述の炭素多孔体及び必要に応じて熱伝導性材料を含む混合物(例えばスラリー)を調製し、調製された混合物を公知の成形手段により成形することによって行うことができる。
成形手段としては、加圧成形、押出成形等を目的等に応じて適宜選択することができる。
作動領域において、アンモニア圧力が390kPaのときのアンモニア吸着量A39NH3と、アンモニア圧力が300kPaのときのアンモニア吸着量A30NH3と、の差の絶対値(例えば、アンモニア吸着量A39NH3−アンモニア吸着量A30NH3による減算値)が、0.40g/g以上であることが好ましい。
この場合、窒素吸着させた場合の吸着量差と、アンモニア吸着させた場合の吸着量差と、を求め、二次元座標上にプロットすると、図2に示す直線的な相関関係が得られる。図2に示す相関関係から、窒素吸着量A0.85N2及び窒素吸着量A0.5N2の差としての好ましい範囲は、400cm3(STP)/g以上となる。
アンモニア圧力を作動領域の圧力に合わせて調節することにより、アンモニアの吸脱着速度を速めることができ、ひいては多量のアンモニアを吸着又は脱着できる。これにより、アンモニアガスの吸脱着量は向上する。
−炭素多孔体の作製−
(1.テレフタル酸のカルシウム塩の合成)
テレフタル酸(0.1mol)と水酸化カルシウム(0.1mol)とを水200mL中に加え、80℃の水浴で4時間加熱した。加熱後、生成したテレフタル酸のカルシウム塩の結晶を濾過して分取し、室温で風乾した。
テレフタル酸のカルシウム塩4gを管状電気炉内に配置し、管状電気炉内に窒素ガス(不活性ガス)を0.1L/分の流速で流し、炉内をガスフロー置換した。ガスフローを維持したまま、炉内温度を550℃(設定温度)まで1時間かけて昇温した。昇温完了後、ガスフローを維持したまま、550℃で2時間保持し、2時間経過後に室温(25℃)まで冷却した。炉内に、炭素と炭酸カルシウム(アルカリ土類金属炭酸塩)との複合体を生成した。
続いて、複合体を電気炉から取り出し、水500mLに分散させた。分散液に2mol/Lの塩酸50mLを添加し、撹拌した。その後、炭酸カルシウムの分解によると思われる発泡が観察された。次いで、分散液を濾過し、濾物を乾燥させた。
以上のようにして、目的とする粉末状の炭素多孔体を得た(収量:約1g)。なお、ミクロ細孔容量は、窒素吸着等温線のαsプロット解析から算出した。
得られた炭素多孔体の特性を以下の方法で求めた。結果を下記表1に示す。
(4−1)窒素吸着量A0.5N2,A0.85N2の算出
得られた炭素多孔体を用い、温度77Kで窒素を炭素多孔体に吸着させた。測定は、カンタクローム社製Autosorb−1を用いて行い、相対圧力P/P0を横軸とし、窒素吸着量[cm3(STP)/g]を縦軸として吸着等温線を作成した。この吸着等温線より、相対圧力P/P0が0.5及び0.85のときの窒素吸着量A0.5N2,A0.85N2の値を窒素吸着等温線から読み取り、両者の差(=A0.5N2−A0.85N2)を算出した。
(4−2)アンモニア吸着量A39NH3,A30NH3の算出
得られた炭素多孔体を用い、温度273Kにてアンモニアを炭素多孔体に吸着させた。飽和蒸気圧P0は、430kPaであった。圧力Pを変化させた際の炭素多孔体1gに吸着するアンモニアの吸着量[g/g]を測定し、圧力P[kPa]を横軸とし、炭素多孔体1gに吸着したアンモニア吸着量[g/g]を縦軸として吸着等温線を作成した。この吸着等温線より、アンモニア圧力が390kPaのときのアンモニア吸着量A39NH3、及びアンモニア圧力が300kPaのときのアンモニア吸着量A30NH3を読み取り、両者の差(=A39NH3−A30NH3)を算出した。
(4−3)BET比表面積の算出
窒素(N2)分子を炭素多孔体に吸着させ、吸着したN2分子の量に基づいてBET法により単位質量あたりの表面積(m2/g)を求めた。
上記で得た粉末状の炭素多孔体100部及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;水溶性バインダー)11部に、水300部を徐々に添加しながら混練し、スラリーを調製した。調製したスラリーを15mm×15mmの金型に詰め、油圧式ハンドプレスを用いて3.1MPaで加圧して成形処理し、吸着材成形体を作製した。
(1)アンモニア吸着量差ΔANH3の算出
温度273Kにてアンモニアを吸着材成形体に吸着させた。飽和蒸気圧P0は、430kPaであった。圧力Pを変化させた際に吸着材成形体1gに吸着するアンモニアの吸着量[g/g]を測定し、圧力P[kPa]を横軸とし、吸着材成形体1gに吸着したアンモニア吸着量[g/g]を縦軸として吸着等温線を作成した。この吸着等温線より、アンモニア圧力が390kPaのときのアンモニア吸着量A39NH3、及びアンモニア圧力が300kPaのときのアンモニア吸着量A30NH3を読み取り、A39NH3からA30NH3を減じてアンモニア吸着量差ΔANH3(=アンモニア吸着量A39NH3−アンモニア吸着量A30NH3)を求めた。
温度77Kにて窒素ガスを吸着材成形体に吸着させた。相対圧力P/P0を変化させた際に吸着材成形体1gに吸着する窒素の吸着量[cm3(STP)/g]を測定し、相対圧力P/P0を横軸とし、吸着材成形体1gに吸着した窒素吸着量[cm3(STP)/g]を縦軸として吸着等温線を作成した。この吸着等温線より、相対圧力P/P0が0.5のときの窒素吸着量A0.5N2、及び相対圧力P/P0が0.85のときのA0.85N2を読み取り、A0.5N2からA0.85N2を減じて窒素吸着量の差ΔAN2(=窒素吸着量A0.5N2−窒素吸着量A0.85N2)を求めた。
実施例1において、炭素多孔体を市販の活性炭(商品名:メソコール、(株)キャタラー製)に代えるとともに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの量を11部から7部に変更し、水の量を400部から160部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、吸着材成形体を作製し、成形体の密度等の算出を行なった。結果を下記表2に示す。
なお、市販の活性炭の特性を実施例1と同様の方法で求め、結果を表1に示す。
また、成形体1mL当たりでの窒素吸着量差は、実施例1が0.163であり、比較例1(0.043)の約4倍の吸着量差が現れた。
これに対して、従来の活性炭を用いた吸着材料では、窒素及びアンモニア等の気体の圧力を変化させても、気体の吸脱着速度及び吸脱着量を実施例1と同様に高めることができない。
Claims (5)
- 少なくとも粉状の炭素多孔体を含有し、
IUPACで定義されるIV型に分類される窒素吸着等温線における、温度77ケルビンでの飽和蒸気圧P0に対する平衡圧力Pの相対圧力P/P0が0.5及び0.85であるときのそれぞれの窒素吸着量の差の絶対値が0.15g/mL以上である吸着材成形体。 - 前記炭素多孔体は、前記窒素吸着等温線のαsプロット解析から算出したミクロ細孔容量が、0.1mL/g以下である請求項1に記載の吸着材成形体。
- 前記炭素多孔体は、IUPACで定義されるIV型に分類される窒素吸着等温線において、温度77Kでの飽和蒸気圧P0に対する平衡圧力Pの相対圧力P/P0が0.5のときの窒素吸着量が500cm3(STP)/g以下であり、かつ、前記相対圧力P/P0が0.85のときの窒素吸着量が600cm3(STP)/g以上1100cm3(STP)/g以下である請求項1又は請求項2に記載の吸着材成形体。
- 前記炭素多孔体は、BET法による比表面積が800m2/g以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の吸着材成形体。
- 更に、水溶性バインダーを含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の吸着材成形体。
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