JP2016168173A - 血管処置方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】処置剤を効果的に血管に作用させて血管を効果的に閉塞または収縮させることができる血管処置方法を提供する。【解決手段】長尺なシャフト部10および血管内で生体組織に接触可能な接触部30を備える医療デバイス1を血管内に挿入する挿入ステップと、接触部30を血管内で生体組織に接触させる接触ステップと、接触部30により血管を捩る捩りステップと、血管の内腔を閉塞または収縮させるための処置剤を前記医療デバイス1から放出する放出ステップと、を有する血管処置方法である。【選択図】図4
Description
本発明は、血管を処置するための血管処置方法に関し、より詳細には、静脈瘤を閉塞または収縮させるための血管処置方法に関する。
静脈は、血液の逆流を防ぐための静脈弁を備えている。下肢の静脈弁は、下肢の筋肉によって収縮し、血液を重力に逆らって心臓へ戻すためのポンプとしての役割をも果たしている。
静脈弁が正常に動作しなくなると、静脈において血液の逆流が発生し、静脈が拡大して静脈瘤の原因となる。静脈瘤は、立った状態で高い圧力を受ける下肢の表在静脈である大伏在静脈や小伏在静脈に発生しやすい。表在静脈の静脈弁が正常に動作しなくなると、通常は表在静脈から深部静脈へ流れ込む血液が、逆に深部静脈から表在静脈へ流れ込み、これにより表在静脈が拡大して、蛇行した静脈瘤の原因となる。
下肢静脈瘤の治療方法として、静脈自体を抜去する方法(ストリッピング手術)と、静脈を閉塞させる方法が挙げられる。静脈を閉塞させる方法としては、外部から静脈を圧迫する治療術、静脈瘤が発生している静脈を高い位置で縛りつけて逆流を防ぐ高位結紮術、RF(高周波・ラジオ波)やレーザを用いて熱で静脈を焼灼して閉塞させるアブレーション治療術、硬化剤や接着剤等の処置剤を用いて静脈瘤を閉塞させる治療術、静脈瘤の内壁を刺激して血管を閉塞させる治療術が挙げられる。
処置剤を使用する治療術では、処置剤により血管に損傷や炎症を発生させ、血栓を形成するとともに血管の内壁を癒着させることで、静脈を閉塞して血流を遮断し、静脈を縮退させる。
処置剤は、液体であるため、血液の流れの影響を受けて処置対象部位に滞留し難い。このため、バルーンや生体外部からの圧迫によって血流を一時的に遮断または低減させた後に、静脈内に処置剤を注入する場合がある。また、処置剤を泡立てて流動性を落としてから、血管内に注入することで、処置対象部位での滞留時間を長く確保する場合もある。しかしながら、血流を遮断または低減させたり、処置剤を泡立てたりしても、血管内に血液は存在しているため、血液により処置剤が拡散して、処置剤の効果が薄れる場合がある。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、処置剤を効果的に血管に作用させて血管を閉塞または収縮できる血管処置方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係る血管処置方法は、長尺なシャフト部および血管内で生体組織に接触可能な接触部を備える医療デバイスを血管内に挿入する挿入ステップと、前記接触部を血管内で生体組織に接触させる接触ステップと、前記接触部により血管を捩る捩りステップと、前記血管を閉塞または収縮させるための処置剤を前記医療デバイスから放出する放出ステップと、を有する血管処置方法である。
上記のように構成した血管処置方法は、血管を捩ることで血管内の血流が遮断または減少され、かつ血管内の血液量が減少された状態で処置剤を放出できるため、処置剤の拡散を抑制して血管壁に処置剤を効果的に作用させることが可能となり、血管を効果的に閉塞または収縮させることができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る医療デバイス1は、血管の治療(処置)に用いられ、特に、静脈瘤を閉塞または収縮させる治療に用いられる。静脈瘤は、主に、下肢の静脈、特に表在静脈である大伏在静脈や小伏在静脈に生じるが、静脈であれば特に限定されず、骨盤静脈、卵巣静脈または精索静脈などにも生じ得る。医療デバイス1は、静脈の内壁を刺激して損傷を与え、さらに硬化剤や接着剤などの処置剤を注入して静脈を閉塞または収縮させることで、血液の逆流を抑制する。なお、本明細書では、デバイスの静脈に挿入する側を「遠位側」、操作する手元側を「近位側」と称することとする。初期状態は、接触部が拡張する前の状態である。
医療デバイス1は、図1、2に示すように、長尺なシャフト部10と、シャフト部10の遠位部にて拡張および収縮可能な接触部30と、接触部30を操作するための操作部50とを備えている。シャフト部10は、管状の内管20と、内管20を収容する管状の外管40とを備えている。
内管20は、内部に硬化剤や接着剤などの処置剤を流通させるための第1ルーメン21が形成されている。処置剤は、例えば、ポリドカノール、テトラデシル硫酸ナトリウム(STS:sodium tetradecyl sulphate)、シアノアクリレートである。内管20の接触部30よりも遠位側には、内面から外面へ貫通する内管側孔22が形成されている。内管20の最遠位部には、内管20の開口部を塞ぐ先端部材23が固着されている。内管20の近位部は、操作部50を構成する第2操作部52に固定されている。
外管40は、内管20を収容する管体であり、内管20に対して軸方向へ相対的に移動可能となっている。外管40の遠位側端部41は、内管20の外周面と密着して摺動可能となっており、外管40の近位側端部42は、操作部50を構成する第1操作部51に固定されている。
接触部30は、遠位側端部33が内管20の遠位部に固着されており、近位側端部34が外管40の遠位側端部41に固着されている。接触部30は、接触部30の周方向に並ぶ複数の螺旋状の線材部31を備えている。各々の線材部31は、内管20を外管40に対して近位方向へ移動させることで、内管20の外周面から離れるように外側へ撓んで拡張可能であり(図1(B)、図2(B)を参照)、拡張した状態から、内管20を外管40に対して遠位方向へ移動させることで、内管20の外周面に近づくように収縮可能である(図1(A)、図2(A)を参照)。線材部31は、管体に螺旋状のスリット32を複数形成することで形成されている。なお、接触部30の線材部31は、ワイヤを並べて形成されてもよい。
内管20および外管40の構成材料は、硬度があって可撓性があることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、Wなどが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系などが好ましく使用される。また、剛性を増すために前記材料に金属のブレードやコイルを加えることも可能である。
接触部30の構成材料は、硬度があって可撓性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、Wなどが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系などが好ましく使用される。
医療デバイス1の長さ(内管20の最遠位部から操作部50までの長さ)は、特に限定されないが、例えば、100mm〜1000mmが好ましい。外管40の外径は、特に限定されないが、例えば、1.0mm〜3.0mmが好ましい。内管20の内径は、特に限定されないが、例えば、0.3mm〜1.0mmが好ましい。接触部30が拡張した状態における接触部30の最大外径は、特に限定されないが、例えば、3.0mm〜20mmが好ましい。内管20の内管側孔22が形成される範囲Lの長さは、特に限定されないが、例えば、30mm〜200mmが好ましい。
接触部30、内管20および外管40は、材料中にX線造影性材料が含まれて形成されていてもよい。これにより、X線造影下で位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、モリブデン、タングステン、タンタル、パラジウムあるいはそれらの合金等が好適である。
また接触部30、内管20および外管40は、超音波視認性を備えるように形成されていてもよい。これにより、超音波診断装置使用時に位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。超音波視認性構造としては、例えば、接触部30、内管20および外管40の表面に微細な溝や孔といった凹凸を設けたり、発砲金属、発砲プラスチックといった多孔質体等を加えること等が挙げられる。
また、内管20や外管40のいずれかの位置、例えば接触部30に囲まれる内管20に、X線造影性材料からなるマーカーが配置されてもよい。マーカーは、X線造影性材料により形成されるワイヤを内管20の外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成して内管20の外面にかしめる又は接着することにより取り付けられる。
操作部50は、外管40の近位側端部が連結される第1操作部51と、内管20の近位側端部が連結される第2操作部52とを備えている。第1操作部51は、外管40の近位側端部が嵌合して連結される操作部本体53と、操作部本体53の内部に配置されるシール部54と、操作部本体53の基端側に連結されるシール調節部55とを備えている。
操作部本体53は、管状の部材であり、遠位側の内側に内管20の近位側端部が嵌合して連結され、近位側の内側に、シール部54が配置されている。操作部本体53の近位側の外周面には、シール調節部55が螺合する雄ねじ部56が形成されている。
シール部54は、弾性的に変形可能な環状の部材である。シール部54には、内管20が挿通される。シール部54は、操作部本体53内の液密性を維持しつつ、内管20の挿通を許容する役割を果たす。
シール調節部55は、内管20が貫通する貫通孔58が形成される管状の部材であり、操作部本体53の雄ねじ部56が螺合する雌ねじ部57と、雌ねじ部57の内側で遠位方向に突出してシール部54を押圧可能な押圧部59とを備えている。操作部本体53の雄ねじ部56に雌ねじ部57を螺合させてシール調節部55を回転させると、操作部本体53内のシール部54が押圧部59により押圧されて内径が収縮し、シール部54を貫通する内管20の外周面と密着して、操作部本体53内の液密性を維持することができる。また、シール調節部55を回転させることで、シール部54を内管20の外周面に密着させて、内管20の位置を固定することもできる。
第2操作部52は、管状の部材であり、遠位部の内側に内管20の近位側端部が嵌合して連結され、近位部に、三方活栓やシリンジ等を連結可能な注入ポート60が形成されている。
第2操作部52を第1操作部51に対して相対的に近位方向へ移動させると、接触部30の遠位側端部および近位側端部が近づき、線材部31が内管20の外周面から離れるように外側へ撓んで拡張する(図1(B)、図2(B)を参照)。第2操作部52を第1操作部51に対して相対的に遠位方向へ移動させると、接触部30の遠位側端部および近位側端部が離れ、線材部31が内管20の外周面に近づくように収縮する(図1(A)、図2(A)を参照)。
操作部本体53、シール調節部55および第2操作部52の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の硬質の樹脂等が使用できる。
シール部54の構成材料は、特に限定されないが、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴムなどが使用できる。
次に、第1実施形態に係る医療デバイス1の使用方法を、下肢の大伏在静脈や小伏在静脈に生じる静脈Vを閉塞する場合を例として説明する。
まず、使用する医療デバイス1のプライミングを行い、内管20、接触部30、外管40、第1操作部51および第2操作部52の内部を生理食塩水で置換する。この初期状態において、図1(A)、図2(A)に示すように、接触部30は収縮している。シール部54を貫通する内管20は、シール部54に対して摺動可能となっている。
大伏在静脈や小伏在静脈を閉塞する場合には、通常、静脈V内へアクセスしやすい膝から大伏在静脈や小伏在静脈内へ、イントロデューサシースを挿入する。この後、イントロデューサシースを介して、準備した初期状態の医療デバイス1を、遠位側端部から静脈V内へ挿入する(挿入ステップ)。なお、イントロデューサシースを設置する位置は、膝に限定されず、挿入方向は、上流方向の場合および下流方向の場合の両方があり得る。
次に、医療デバイス1を押し進め、図3(A)に示すように、接触部30を、静脈Vの治療を行う範囲の遠位端まで押し込む。治療を行う範囲の遠位端は、例えば、表在静脈側(大伏在静脈や小伏在静脈)と、深部静脈との合流部の近傍(例えば、合流部から表在静脈側へ10〜30mmの位置)である。
次に、第2操作部52を第1操作部51に対して近位方向へ移動させ、または第1操作部51を第2操作部52に対して遠位方向へ移動させると、図3(B)に示すように、接触部30が拡張して、静脈Vの内壁面と接触する(接触ステップ)。接触部30を適切な大きさに拡張させた後、シール調節部55を回転させることで押圧部59を遠位方向へ移動させてシール部54を圧縮し、シール部54により内管20を摺動不能に固定する。これにより、接触部30の拡張状態を維持することができる。また、静脈Vの内壁への損傷を大きくしたいとき、接触部30の径を拡張ステップ時の拡張状態の径よりもさらに大きくする。そのため、シール調節部55を解除し、内管20を拡張ステップ時の位置よりも基部方向に移動し、拡張状態の径を変更することができる。変形は、接触部30の基部側の線材部31の内表面と先端側の線材部31の内表面が軸方向に接触するまで行うことができる。これにより、確実に静脈Vの内壁面の内部に線材部31の頂点が位置することができ、捩じりやすく、静脈内壁に損傷を与えやすくなる。
次に、操作部50の全体を回転させると、図4(A)に示すように、内管20および外管40とともに接触部30が回転し、接触部30および静脈Vの間の摩擦抵抗により、静脈Vが回転して捩れる(捩りステップ)。静脈Vは、接触部30から捩り力を受けることで、接触部30を挟む両側で捩れ部V2が形成されて内径が減少する。捩れ部V2は血管の断面の円周状に少なくとも一つの折り部が形成されるため、内径が減少する。
なお、静脈Vにおける捩れ部V2の位置や捩れの程度は、静脈Vの状態や接触部30が接触する位置等の様々な条件により異なる。条件によって、捩れ部V2では、図5に示すように、静脈Vの内壁面V1(内膜)同士が重なるように接触し得る。静脈Vの内壁面V1が損傷されている場合は、静脈Vの内壁面V1の内膜と中膜、静脈Vの内壁面V1の中膜と中膜、静脈Vの内壁面V1の内膜と外膜、静脈Vの内壁面V1の中膜と外膜、静脈Vの内壁面V1の外膜と外膜が重なるように接触し得る。また、捩れ部V2では、静脈Vの内壁面V1が、内管20および外管40の外周面と接触し得る。これにより、静脈V内の血流を効果的に遮断または減少させることができ、かつ、静脈V内の血液を減少させることができる。なお、内径が減少する部位において、静脈Vの内壁面V1同士が接触しない場合もありえ、また、静脈Vの内壁面V1が内管20および外管40の外周面と接触しない場合もあり得る。この場合であっても、静脈Vを捩ることにより、静脈Vの血流を減少させ、かつ、静脈V内の血液を減少させることができる。
次に、操作部50の全体を牽引すると、接触部30が、静脈Vの内壁面に損傷を与えながら静脈Vの内部を移動する(移動ステップ)。このとき、接触部30は、螺旋状の線材部31を備えているため、静脈Vの内壁面の広い範囲を万遍なく損傷させることができる。また、接触部30が静脈V内を移動することで、接触部30の両側に位置する静脈Vの捩れ部V2も移動する。接触部30の移動量は、内管側孔22が形成される範囲Lの長さ(例えば、100mm)以内、すなわち、処置剤が放出される範囲内であることが好ましい。接触部30は、弾性的に変形可能であるため、静脈Vの内径の変化に応じて大きさが適宜変化し、常に適切な損傷を与えることができる。また、内管20の先端の外表面は血管内の末梢到達性を高めるためにシリコーンオイル等の潤滑コートを被覆可能である。その潤滑コートは、血管を捩じった後、血管内径が小さくなり、血管内壁と内管先端の外表面が接触しても、血管内径が内管先端を滑るので、血管内壁と内管の接触の抵抗が少なく、移動が容易になる。
また、医療デバイス1を静脈V内へ挿入直後に、接触部30と静脈Vの内壁面を接触させ、挿入部から静脈Vの治療を行う範囲の遠位端まで操作部50の全体を押しこみ、遠位端まで到達した後、操作部50全体を回転させてもよい。これにより、図4(A)に示すように、内管20および外管40とともに接触部30が回転し、接触部30および静脈Vの間の摩擦抵抗により、静脈Vが回転して捩れる。その後、操作部50全体を牽引することで、静脈Vの内壁面に往復で損傷を与えることができる。
次に、注入ポート60に処置剤を封入したシリンジ等を接続し、所定量を注入する。これにより、図4(B)に示すように、処置剤は内管20の第1ルーメン21内へ流入し、内管側孔22を介して静脈V内へ放出される(放出ステップ)。これにより、血管壁に処置剤が接触し、所定の浸漬時間を与えることで、炎症が生じ、血栓が形成され、あるいは血管壁中の平滑筋細胞の増殖等が起こると、効果的に静脈Vを閉塞または収縮させることができる。このとき、静脈V内の血流が遮断または減少し、かつ、静脈V内の血液量が減少した状態であるため、静脈V内に流入した処置剤は、血流により流され難く、かつ薄まり難い。このため、処置剤の拡散を抑制して血管壁に処置剤を効果的に作用させることができ、効果的に静脈Vを閉塞または収縮させることができる。なお、静脈Vの捩れ部V2の互いに接触する内壁面V1には、接触する内壁面V1同士の隙間から処置剤が到達することができる。
静脈Vの捩れは、接触部30と血管壁の間の滑りにより、徐々に解消されやすいが、操作部50を牽引すると、螺旋状の線材部31が血管壁と接触しつつ移動することで、線材部31の螺旋の傾きにより、静脈Vに回転力を作用させ、静脈Vの捩れた状態を維持することができる。したがって、線材部31の螺旋の向きは、接触部30を移動させる際に、静脈Vの捩れを補うように静脈Vに回転力を作用させる向きであることが好ましい。医療デバイス1を内管20の内管側孔22が形成される先端部の距離分移動させると、医療デバイス1を捩じる方向と反対方向に回転させ、捩れを解消する。一度捩じれを解消して、再度医療デバイス1を血管が捩じれる方向へ回転させ、医療デバイス1を移動させることができる。
なお、静脈Vを捩るために操作部50を回転させる動作を行わず、操作部50を牽引するのみで、血管壁と接触する線材部31の螺旋の傾きにより、静脈Vに回転力を作用させて静脈Vを捩ってもよい。
次に、再び注入ポート60から所定量の処置剤を注入する。これにより、処置剤は内管20の第1ルーメン21内へ流入し、内管側孔22を介して静脈V内へ放出される。これにより、線材部31により物理的に損傷を受けた血管壁に処置剤が効果的に作用し、所定の浸漬時間を与えることで、炎症が生じ、血栓が形成され、あるいは血管壁中の平滑筋細胞の増殖等が起こると、効果的に静脈Vを閉塞または収縮させることができる。このとき、静脈V内の血流が遮断または減少し、かつ、静脈V内の血液量が減少した状態であるため、静脈V内に流入した処置剤は、血流により流され難く、かつ薄まり難い。このため、損傷を受けた血管壁に処置剤を効果的に作用させることができ、効果的に静脈Vを閉塞または収縮させることができる。
次に、再び接触部30を移動させて血管壁を損傷させ、注入ポート60から処置剤を放出し、静脈Vを閉塞または収縮させる。この後、接触部30の移動および処置剤の放出を繰り返すことで、所望の範囲の静脈Vの全てを閉塞または収縮させることができる。
静脈Vの所望の範囲内の処置が終了した後、操作部50を捩れ部V2の捩れが解消する方向へ回転させる。これにより、捩れ部V2の捩れが解消する。次に、シール調節部55を回転させることで押圧部59を近位側へ移動させてシール部54の圧縮を緩め、シール部54を貫通する内管20を摺動可能とする。この後、第2操作部52を第1操作部51に対して遠位方向へ移動させ、または第1操作部51を第2操作部52に対して近位方向へ移動させると、接触部30が収縮して、医療デバイス1が図3(A)に示す初期状態へと戻る。
この後、医療デバイス1をイントロデューサシースから抜去し、かつイントロデューサシースを静脈Vから抜去して、処置が完了する。
以上のように、第1実施形態における血管処置方法は、(i)長尺なシャフト部および血管内で生体組織に接触可能な接触部を備える医療デバイスを血管内に挿入する挿入ステップと、(ii)前記接触部を血管内で生体組織に接触させる接触ステップと、(iii)前記接触部により血管を捩る捩りステップと、(iv)前記血管の内腔を閉塞または収縮させるための処置剤を前記医療デバイスから放出する放出ステップと、を有する。上記のように構成した血管処置方法は、血管を捩ることで血管内の血流が遮断または減少され、かつ血管内の血液量が減少した状態で処置剤を放出できるため、静脈内に流入した処置剤は、血流により流され難く、かつ薄まり難い。このため、処置剤の拡散を抑制して血管壁に処置剤を効果的に作用させることが可能となり、血管を効果的に閉塞または収縮させることができる。
また、上記血管処置方法は、前記接触ステップにおいて、前記接触部を前記シャフト部の径方向外側へ拡張させて前記生体組織に接触させるため、接触部を拡張させる前の収縮した状態で血管の目的部位へ搬送でき、操作性が向上する。
また、上記血管処置方法は、前記接触部を前記生体組織に接触させた状態で軸方向へ移動させて当該接触部により生体組織を損傷させる移動ステップを更に有するため、生体組織を効率よく損傷させることができる。また、接触部の移動に伴って、血管の捩れる位置が追従して移動し、血管の血流が遮断または減少され、かつ血液量が減少された領域に常に接触部を配置することができる。このため、血管の広い範囲であっても、接触部を移動させつつ、血管壁に処置剤を効果的に作用させることが可能となり、血管の内腔を効果的に閉塞または収縮させることができる。
また、上記血管処置方法は、前記接触ステップにおいて、螺旋状の線材部を有する前記接触部を血管の生体組織に接触させ、前記捩りステップにおいて、前記接触部を前記シャフト部の軸方向へ移動させることで前記接触部により血管に回転力を付与して当該血管を捩るため、接触部の軸方向への移動を利用して血管を捩ることができ、操作性が向上する。
また、上記血管処置方法は、前記捩りステップにおいて、捩れて内径が減少した血管の内壁面を前記シャフト部に接触させるため、血管内の流路を効果的に低減させることができ、血管内の血流および血液量を効果的に減少された状態で処置剤を血管内に放出できる。このため、処置剤の拡散を抑制して血管壁に処置剤を効果的に作用させることが可能となり、血管を効果的に閉塞または収縮させることができる。
また、上記血管処置方法は、前記捩りステップにおいて、捩れて内径が減少した血管の内壁面を前記シャフト部の前記処置剤を放出するための開口が形成される部位に接触させるため、血管内の流路を効果的に低減させつつ、血管壁に処置剤を効果的に作用させることが可能となり、血管を効果的に閉塞または収縮させることができる。
また、上記血管処置方法は、前記捩りステップにおいて、捩れた血管の内壁面同士を重なるように接触させるため、血管内の流路を効果的に低減させつつ、血管壁に処置剤を効果的に作用させることが可能となり、血管を効果的に閉塞または収縮させることができる。
なお、接触部の構成は、外管40および内管20を相対的に移動させることで拡張および収縮可能であれば、特に限定されない。例えば、図6に示す第1実施形態の変形例のように、接触部70が、螺旋状の線材部ではなく、直線状の線材部71を備えてもよい。このような構成であっても、接触部70により静脈Vを捩ることができ、かつ接触部70を移動させることで静脈Vに損傷を与えることができる。
<第2実施形態>
<第2実施形態>
第2実施形態に係る医療デバイス80は、硬化剤および接着剤などの処置剤が接触部30の近位側で放出される点で、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
医療デバイス80は、図7、8に示すように、長尺なシャフト部81と、シャフト部81の遠位部にて拡張および収縮可能な接触部30と、接触部30を操作するための操作部90とを備えている。シャフト部81は、長尺な内側シャフト部100と、内側シャフト部100を収容する管状の外管110とを備えている。
内側シャフト部100は、望ましい剛性を付与するための芯材101と、芯材101の外周面を覆う被覆体102とを備えている。芯材101の遠位部は、医療デバイス80を静脈内に挿入する際に接触する生体組織への影響を低減させるために、遠位方向に向かって縮径して、遠位側ほど柔軟な傾斜物性を備えている。傾斜物性とは、医療デバイス80の近位側から遠位側へ、段々と剛性が小さくなることである。内側シャフト部100の近位部は、操作部90を構成する第2操作部92に固定されている。
外管110は、内側シャフト部100を収容する管体であり、内側シャフト部100に対して軸方向へ相対的に移動可能となっている。外管110の遠位側端部111は、内側シャフト部100の外周面と密着して摺動可能となっており、外管110の近位側端部113は、操作部90を構成する第1操作部91に連結されている。あ外管110の遠位側端部111よりも近位側は、内側シャフト部100の外周面との間に所定の隙間が形成されるように、遠位側端部111よりも内径が大きい外管本体部112が形成されている。外管本体部112には、内面から外面へ貫通する複数の外管側孔114が、軸方向および周方向に並んで形成されている。外管110および内側シャフト部100の間には、処置剤が流通可能な第2ルーメン115が形成されている。第2ルーメン115に流入した処置剤は、外管側孔114を介して外部へ流出可能である。
接触部30は、遠位側端部33が内側シャフト部100の遠位部に固着されており、近位側端部34が外管110の遠位部に固着されている。接触部30は、接触部30の周方向に並ぶ複数の螺旋状の線材部31を備えている。各々の線材部31は、内側シャフト部100を外管110に対して近位方向へ移動させることで、内側シャフト部100の外周面から離れるように外側へ撓んで拡張可能であり(図7(B)、図8(B)を参照)、拡張した状態から、内側シャフト部100を外管110に対して遠位方向へ移動させることで、内側シャフト部100の外周面に近づくように収縮可能である(図7(A)、図8(A)を参照)。
芯材101の構成材料は、硬度があって可撓性がある材質であることが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、Wなどが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系などが好ましく使用される。
被覆体102の構成材料は、硬度があって可撓性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。
操作部90は、外管110の近位側端部113が連結される第1操作部91と、内側シャフト部100の近位側端部が連結される第2操作部92とを備えている。第1操作部91は、外管110の近位側端部113が嵌合して連結される操作部本体93と、操作部本体93の内部に配置されるシール部54と、操作部本体93の基端側に連結されるシール調節部55とを備えている。
操作部本体93は、管状の部材であり、遠位側の内側に内側シャフト部100の近位側端部が嵌合して連結され、近位側の内側に、シール部54が配置されている。操作部本体93の近位側の外周面には、シール調節部55の雌ねじ部57が螺合する雄ねじ部56が形成されている。また、操作部本体93は、側方へ開口し、操作部本体93の内部へ処置剤を注入可能な注入ポート99を備えている。注入ポート99は、三方活栓やシリンジ等を連結可能である。
第2操作部92は、内側シャフト部100の近位部が連結される部材である。
第2操作部92を第1操作部91に対して相対的に近位方向へ移動させると、接触部30の遠位側端部33および近位側端部34が近づき、線材部31が内側シャフト部100の外周面から離れるように外側へ撓んで拡張する(図7(B)、図8(B)を参照)。第2操作部92を第1操作部91に対して相対的に遠位方向へ移動させると、接触部30の遠位側端部33および近位側端部34が離れ、線材部31が内側シャフト部100の外周面に近づくように収縮する(図7(A)、図8(A)を参照)。
操作部本体93および第2操作部92の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン等の硬質の樹脂等が使用できる。
次に、第2実施形態に係る医療デバイス80の使用方法を、下肢の大伏在静脈や小伏在静脈に生じる静脈Vを閉塞する場合を例として説明する。
まず、使用する医療デバイス80のプライミングを行い、接触部30、外管110および第1操作部91の内部を生理食塩水で置換する。この初期状態において、図7(A)、図8(A)に示すように、接触部30は収縮している。シール部54を貫通する内側シャフト部100は、シール部54に対して摺動可能となっている。
大伏在静脈や小伏在静脈を閉塞する場合には、通常、静脈V内へアクセスしやすい膝から大伏在静脈や小伏在静脈内へ、イントロデューサシースを挿入する。この後、イントロデューサシースを介して、準備した初期状態の医療デバイス80を、遠位側端部から静脈V内へ挿入する(挿入ステップ)。
次に、医療デバイス80を押し進め、図9(A)に示すように、接触部30を、静脈Vの治療を行う範囲の遠位端まで押し込む。
次に、第2操作部92を第1操作部91に対して近位方向へ移動させ、または第1操作部91を第2操作部92に対して遠位方向へ移動させると、図9(B)に示すように、接触部30が拡張して、静脈Vの内壁面と接触する(接触ステップ)。接触部30を適切な大きさに拡張させた後、シール調節部55を回転させることで押圧部59を遠位方向へ移動させてシール部54を圧縮し、シール部54により内側シャフト部100を摺動不能に固定する。これにより、接触部30の拡張状態を維持することができる。
次に、操作部90の全体を回転させると、図10(A)に示すように、内側シャフト部100および外管110とともに接触部30が回転し、接触部30および静脈Vの間の摩擦抵抗により、静脈Vが回転して捩れる(捩りステップ)。静脈Vは、接触部30から捩り力を受けることで、接触部30を挟む両側で捩れ部V2が形成されて内径が減少する。
次に、注入ポート99に処置剤を封入したシリンジ等を接続し、所定量を注入する。これにより、図10(B)に示すように、処置剤は外管110の第2ルーメン115内へ流入し、外管側孔114を介して静脈V内へ放出される(放出ステップ)。これにより、血管壁に処置剤が接触し、所定の浸漬時間を与えることで、炎症が生じ、血栓が形成され、あるいは血管壁中の平滑筋細胞の増殖等が起こると、効果的に静脈Vを閉塞または収縮させることができる。このとき、静脈V内の血流が遮断または減少し、かつ、静脈V内の血液量が減少した状態であるため、静脈V内に流入した処置剤は、血流により流され難く、かつ薄まり難い。このため、処置剤の拡散を抑制して血管壁に処置剤を効果的に作用させることができ、効果的に静脈Vを閉塞または収縮させることができる。
次に、操作部90の全体を牽引すると、接触部30が、静脈Vの内壁面に損傷を与えながら静脈Vの内部を移動する(移動ステップ)。接触部30が静脈V内を移動することで、接触部30の両側に位置する静脈Vの捩れ部V2も移動する。
静脈Vの捩れは、接触部30と血管壁の間の滑りにより、徐々に解消されやすいが、操作部90を牽引すると、螺旋状の線材部31が血管壁と接触しつつ移動することで、線材部31の螺旋の傾きにより、静脈Vに回転力を作用させ、静脈Vの捩れた状態を維持することができる。
次に、再び注入ポート99から所定量の処置剤を注入する。これにより、流体は外管110の第2ルーメン115内へ流入し、外管側孔114を介して静脈V内へ放出される。これにより、線材部31により物理的に損傷を受けた血管壁に処置剤が効果的に作用し、所定の浸漬時間を与えることで、炎症が生じ、血栓が形成され、あるいは血管壁中の平滑筋細胞の増殖等が起こると、効果的に静脈Vを閉塞または収縮させることができる。このとき、静脈V内の血流が遮断または減少し、かつ、静脈V内の血液量が減少した状態であるため、静脈V内に流入した処置剤は、血流により流され難く、かつ薄まり難い。このため、損傷を受けた血管壁に処置剤を効果的に作用させることができ、効果的に静脈Vを閉塞または収縮させることができる。
次に、再び接触部30を移動させて血管壁を損傷させ、注入ポート99から処置剤を放出し、静脈Vを閉塞または収縮させる。この後、接触部30の移動および処置剤の放出を繰り返すことで、所望の範囲の静脈Vの全てを閉塞させることができる。
静脈Vの所望の範囲内の処置が終了した後、操作部90を捩れ部V2の捩れが解消する方向へ回転させる。これにより、捩れ部V2の捩れが解消する。次に、シール調節部55を回転させることで押圧部59を近位側へ移動させてシール部54の圧縮を緩め、シール部54を貫通する内側シャフト部100を摺動可能とする。この後、第2操作部92を第1操作部91に対して遠位方向へ移動させ、または第1操作部91を第2操作部92に対して近位方向へ移動させると、接触部30が収縮して、医療デバイス80が図9(A)に示す初期状態へと戻る。
この後、医療デバイス80をイントロデューサシースから抜去し、かつイントロデューサシースを静脈Vから抜去して、処置が完了する。
以上のように、第2実施形態に係る医療デバイス80は、第1実施形態と異なり、接触部30よりも近位側で処置剤を放出する。このような構成であっても、接触部30により捩った状態の血管内で処置剤を放出できるため、処置剤の拡散を抑制して血管壁に処置剤を効果的に作用させることができ、血管を効果的に閉塞または収縮させることができる。
<第3実施形態>
<第3実施形態>
第3実施形態に係る医療デバイス120は、接触部が曲がった線材により構成される点で、第1、第2実施形態と異なる。なお、第1、第2実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
医療デバイス120は、図11に示すように、長尺なシャフト部130と、シャフト部130の遠位部にてシャフト部130の径方向外側へ向かって拡張可能な接触部132と、接触部132を操作するための操作部90とを備えている。シャフト部130は、長尺な内側シャフト部131と、内側シャフト部131を収容する管状の外管140とを備えている。
内側シャフト部131は、接触部132と一体的に形成される線材である。接触部132は、略直線状に延在する内側シャフト部131から90度未満の角度で曲がって形成されている。接触部132の遠位側端部には、医療デバイス120を静脈内に挿入する際に接触する生体組織への影響を低減させるために、線状の部位よりも外径が大きい球状の先端当接部133が形成されている。内側シャフト部131の近位部には、操作部90を構成する第2操作部92が固定されている。接触部132は、外管140から遠位方向へ突出することで、曲がった拡張状態となり(図11(B)を参照)、外管140内に収容されることで、曲がった部位が直線に近づくように弾性的に変形した収縮状態となる(図12(A)を参照)。
外管140は、内側シャフト部131を収容する管体であり、内側シャフト部131に対して軸方向へ相対的に移動可能である。外管140の近位側端部143は、操作部90を構成する第1操作部91に連結されている。外管140の内径は、内側シャフト部131の外周面との間に隙間が形成されるように、内側シャフト部131の外径よりも大きい。外管140には、内面から外面へ貫通する複数の外管側孔144が、軸方向および周方向に並んで形成されている。なお、外管側孔144は、形成されなくてもよい。外管140および内側シャフト部131の間には、処置剤が流通可能な第2ルーメン142が形成されている。第2ルーメン142に流入した流体は、外管側孔144および外管140の先端開口部145を介して外部へ流出可能である。
内側シャフト部131、接触部132および外管140の構成材料は、硬度があって可撓性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、Wなどが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系などが好ましく使用される。
操作部90は、外管140の近位側端部143が連結される第1操作部91と、内側シャフト部131の近位側端部が連結される第2操作部92とを備えている。第1操作部91は、外管140の近位側端部143が嵌合して連結される操作部本体93と、操作部本体93の内部に配置されるシール部54と、操作部本体93の基端側に連結されるシール調節部55とを備えている。
操作部本体93は、管状の部材であり、遠位側の内側に内側シャフト部131の近位側端部が嵌合して連結され、近位側の内側に、シール部54が配置されている。操作部本体93の近位側の外周面には、シール調節部55が螺合する雄ねじ部56が形成されている。また、操作部本体93は、側方へ開口し、操作部本体93の内部へ処置剤を注入可能な注入ポート99を備えている。第2操作部92は、内側シャフト部131の近位部が連結される部材である。
次に、第3実施形態に係る医療デバイス120の使用方法を、下肢の大伏在静脈や小伏在静脈に生じる静脈Vを閉塞する場合を例として説明する。
まず、使用する医療デバイス120のプライミングを行い、外管140および第1操作部91の内部を生理食塩水で置換する。この初期状態において、接触部132は外管140内に収容されて収縮している(図12(A)を参照)。シール部54を貫通する内側シャフト部131は、シール部54に対して摺動可能となっている。
大伏在静脈や小伏在静脈を閉塞する場合には、通常、静脈V内へアクセスしやすい膝から大伏在静脈や小伏在静脈内へ、イントロデューサシースを挿入する。この後、イントロデューサシースを介して、準備した初期状態の医療デバイス120を、遠位側端部から静脈V内へ挿入する(挿入ステップ)。
次に、医療デバイス120を押し進め、図12(A)に示すように、接触部132を、静脈Vの治療を行う範囲の遠位端まで押し込む。
次に、第2操作部92を第1操作部91に対して遠位方向へ移動させ、または第1操作部91を第2操作部92に対して近位方向へ移動させると、図12(B)に示すように、接触部132が外管140の先端開口部145から突出して、接触部132が自己の復元力により曲がった状態に戻り、径方向外側へ拡張した状態となる。
次に、接触部132を、静脈V内に対向して配置される一対の静脈弁V3(弁)の間に配置して静脈弁V3に引っ掛け(接触ステップ)、第2操作部92または操作部90の全体を回転させる。これにより、図13(A)に示すように、内側シャフト部131とともに接触部132が回転し、静脈弁V3が接触部132により回転力を受けて、静脈Vが回転して捩れる(捩りステップ)。静脈Vは、接触部132により捩り力を受けることで、接触部132を挟む両側で捩れ部V2が形成されて内径が減少する。
次に、注入ポート99に処置剤を封入したシリンジ等を接続し、所定量を注入する。これにより、図13(B)に示すように、処置剤は外管140の第2ルーメン42内へ流入し、外管側144孔および先端開口部145を介して静脈V内へ放出される(放出ステップ)。これにより、血管壁に処置剤が接触し、所定の浸漬時間を与えることで、炎症が生じ、血栓が形成され、あるいは血管壁中の平滑筋細胞の増殖等が起こると、効果的に静脈Vを閉塞または収縮させることができる。このとき、静脈V内の血流が遮断または減少し、かつ、静脈V内の血液量が減少した状態であるため、静脈V内に流入した処置剤は、血流により流され難く、かつ薄まり難い。このため、処置剤の拡散を抑制して血管壁に処置剤を効果的に作用させることができ、効果的に静脈Vを閉塞または収縮させることができる。
次に、第2操作部92の位置を保持した状態で、第1操作部91の近位方向へ移動させる(移動ステップ)。これにより、第2操作部92に連結される内側シャフト部131の先端部に設けられる接触部132は移動せず、処置剤を放出可能な外管140が近位方向へ移動する。
次に、再び注入ポート99から処置剤を所定量注入し、流体の放出範囲内で接触部132を移動させて血管を損傷させ、静脈Vを閉塞または収縮させる。この後、外管140の移動および硬化剤を放出する動作を繰り返すことで、所望の範囲の静脈Vの全てを閉塞させることができる。
静脈Vの所望の範囲内の処置が終了した後、操作部90を捩れ部V2の捩れが解消する方向へ回転させる。これにより、捩れ部V2の捩れが解消する。次に、第2操作部92を第1操作部91に対して遠位方向へ移動させ、または第1操作部91を第2操作部92に対して近位方向へ移動させると、接触部132が外管140内に収容されて収縮し、医療デバイス120が図12(A)に示す初期状態へと戻る。
この後、医療デバイス120をイントロデューサシースから抜去し、かつイントロデューサシースを静脈Vから抜去して、処置が完了する。
以上のように、第3実施形態に係る医療デバイス120によっても、接触部132により捩った状態の血管内で処置剤を放出できるため、血管壁に処置剤を効果的に作用させることが可能となり、血管の内腔を効果的に閉塞または収縮させることができる。
また、第3実施形態における血管処置方法は、前記捩りステップにおいて、接触部を、血管の静脈弁(弁)に係合させるため、接触部から血管に回転力を付与しやすくなり、血管を効果的に捩ることができる。
なお、第3実施形態に係る医療デバイス120の接触部132を引っ掛ける位置は、静脈弁V3に限定されない。例えば、図14に示すように、医療デバイス120を挿入した静脈Vから分岐する血管である分岐部V4に差し込んで、静脈Vを捩ってもよい。
また、図15に示す第3実施形態の第1変形例のように、接触部134が、内側シャフト部131の遠位部から二股に分岐して形成されてもよい。なお、第3実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。接触部134は、図15(A)に示すように、弾性的に変形して外管140に収容可能である。さらに、第2操作部92を第1操作部91に対して遠位方向へ移動させて接触部134を外管140から先端側へ突出させることで、接触部134は、自己の復元力により二股に広がるように拡張する。この二股の接触部134を、静脈弁V3や分岐部V4に引っ掛かけ、操作部90を回転させることで、静脈Vを捩ることができる。
また、図16に示す第3実施形態の第2変形例のように、接触部135が、内側シャフト部131の遠位部から細く縮径して延在する線材であってもよい。なお、第3実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。接触部135は、内側シャフト部131の遠位側で折り返されて近位方向へ延在し、外観140の第2ルーメン142および第1操作部91を貫通して近位側に導出されている。接触部135の第1操作部91を貫通して近位側に導出された端部には、把持することが可能な把持部136が固定されている。接触部135は、図16(A)に示すように、弾性的に変形して外管140に収容可能である。第2操作部92を第1操作部91に対して遠位方向へ移動させて接触部135を外管140から先端側へ突出させた後、把持部136を近位方向へ移動させると、接触部135が静脈V内で撓み、シャフト部130の径方向外側へ拡張する。そして、この湾曲した接触部135を、静脈弁V3や分岐部V4に引っ掛かけ、操作部90を回転させることで、静脈Vを捩ることができる。
また、図17に示す第3実施形態の第3変形例のように、接触部150および内側シャフト部151が連続する管体により形成されて、接触部150および内側シャフト部151の少なくとも一部に、処置剤を放出するための開口部152が形成されてもよい。内側シャフト部151の近位部は、処置剤を注入可能な注入ポート161が形成される第2操作部160に連結される。このような構成とすることで、注入ポート161に処置剤を封入したシリンジ等を接続し、外管140から突出する接触部150や内側シャフト部151自体から、処置剤を放出することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述した第1実施形態に係る医療デバイス1は、接触部30よりも遠位側から処置剤を放出し、第2、第3実施形態に係る医療デバイス80、120は、接触部30、132よりも近位側から処置剤を放出する構成となっているが、接触部の直下から処置剤を放出する構成としてもよい。また、接触部の遠位側、近位側および直下の2箇所以上から、処置剤を放出してもよい。また、医療デバイス1の接触部30の移動で静脈Vの内壁に損傷を与えるステップと、処置剤を放出するステップは順序が逆でも、同時でもよい。
また、接触部は、シャフト部の径方向外側へ突出するように拡張可能であれば、構成は限定されない。
また、上述した第1、第2実施形態に係る医療デバイス1、80は、近位方向へ接触部30を牽引することで、静脈Vを損傷させているが、遠位方向へ接触部30を押し込むことで、静脈Vを損傷させてもよい。
また、接触部を拡張させる構成として、操作部に、例えばボールペン等に設けられるような、押し込む毎に接触部が拡張と収縮を繰り返すノック機構が設けられてもよい。
1、80、120 医療デバイス、
10、81、130 シャフト部、
20 内管、
22 内管側孔、
30、70、132、134、135、150 接触部、
31、71 線材部、
40、110、140 外管、
114、144 外管側孔、
V 静脈(血管)、
V1 内壁面、
V2 捩れ部、
V3 静脈弁(弁)、
V4 分岐部。
10、81、130 シャフト部、
20 内管、
22 内管側孔、
30、70、132、134、135、150 接触部、
31、71 線材部、
40、110、140 外管、
114、144 外管側孔、
V 静脈(血管)、
V1 内壁面、
V2 捩れ部、
V3 静脈弁(弁)、
V4 分岐部。
Claims (8)
- 長尺なシャフト部および血管内で生体組織に接触可能な接触部を備える医療デバイスを血管内に挿入する挿入ステップと、
前記接触部を血管内で生体組織に接触させる接触ステップと、
前記接触部により血管を捩る捩りステップと、
前記血管の内腔を閉塞または収縮させるための処置剤を前記医療デバイスから放出する放出ステップと、を有する血管処置方法。 - 前記接触ステップにおいて、前記接触部を前記シャフト部の径方向外側へ拡張させて前記生体組織に接触させる請求項1に記載の血管処置方法。
- 前記接触部を前記生体組織に接触させた状態で軸方向へ移動させて当該接触部により生体組織を損傷させる移動ステップを更に有する請求項1または2に記載の血管処置方法。
- 前記接触ステップにおいて、螺旋状の線材部を有する前記接触部を血管の生体組織に接触させ、
前記捩りステップにおいて、前記接触部を前記シャフト部の軸方向へ移動させることで前記接触部により血管に回転力を付与して当該血管を捩る請求項1〜3のいずれか1項に記載の血管処置方法。 - 前記捩りステップにおいて、前記接触部を、血管の分岐部または弁体に係合させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の血管処置方法。
- 前記捩りステップにおいて、捩れて内径が減少した血管の内壁面を前記シャフト部に接触させる請求項1〜5のいずれか1項に記載の血管処置方法。
- 前記捩りステップにおいて、捩れて内径が減少した血管の内壁面を前記シャフト部の前記処置剤を放出するための開口が形成される部位に接触させる請求項6に記載の血管処置方法。
- 前記捩りステップにおいて、捩れた血管の内壁面同士を重なるように接触させる請求項1〜7のいずれか1項に記載の血管処置方法。
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2015
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