以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
(パラボナアンテナの構成)
図1は、本実施形態に係るパラボナアンテナユニットの構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係るパラボナアンテナユニット1は、支柱部10と、接続部12と、パラボナアンテナ部20とを有する。パラボナアンテナユニット1は、パラボナアンテナ部20の固定部21が接続部12に取付けられることにより、パラボナアンテナ部20が接続部12を介して支柱部10に取付けられている。
支柱部10は、パラボナアンテナ部20を指示する柱状の部材であり、本実施形態では、地表面Grに対し鉛直方向に延在している。接続部12は、支柱部10に取付けられており、パラボナアンテナ部20と支柱部10とを接続している。接続部12は、パラボナアンテナ部20を、所定の設置傾斜角θ0で、支柱部10に取付けている。より詳しくは、設置傾斜角θ0は、パラボナアンテナ部20の中心軸X1と、支柱部10の中心軸X2との傾斜角度である。本実施形態において設置傾斜角θ0は90度であるが、これに限られない。また、接続部12は、設置傾斜角θ0の角度を変化させることができるものであってもよい。なお、パラボナアンテナ部20は、所定の設置傾斜角θ0で設置されるものであれば、このように支柱部10及び接続部12によって設置されるものでなくてもよく、設置の構成は任意である。
図2は、パラボナアンテナ部の一部断面図である。図2に示すように、パラボナアンテナ部20は、主反射鏡部22と、一次放射器26と、副反射鏡部27と、レドーム部30とを有する。パラボナアンテナ部20は、一次放射器26から導出された電波を、副反射鏡部27が主反射鏡部22に向かって反射し、主反射鏡部22がその反射された電波を反射することにより通信を行うカセグレン型のパラボナアンテナである。パラボナアンテナ部20は、通信を行うために屋外に設置されるため、外光が照射される。なお、パラボナアンテナ部20は、カセグレン型に限られず、例えば副反射鏡部28を有さないパラボナアンテナであってもよい。
主反射鏡部22は、内面23が回転放物面を形成する鏡面であり、凹形状の反射鏡である。内面23は、回転放物面であるため、回転放物面が形成する焦点24を有する。中心軸X1は、主反射鏡部22の中心軸である。一次放射器26は、電波を放射する装置であり、主反射鏡部22の内面23側であって、先端が焦点24に配置されるように設けられている。副反射鏡部27は、一次放射器26の内部であって、一次放射器26の先端、すなわち焦点24に配置されている。副反射鏡部27は、主反射鏡部22の内面23に向かって凸形状の鏡面を有する凸形状の反射鏡である。
一次放射器26は、中心軸X1に沿った電波を、焦点24に向かって出射する。一次放射器に放射された電波は、焦点24に配置された副反射鏡部27によって反射され、主反射鏡部22の内面23に向かう。副反射鏡部27に反射された電波は、主反射鏡部22の内面23により、中心軸X1に沿った電波として反射される。なお、パラボナアンテナ部20は、例えばマイクロ波無線通信等に用いられる大型(主反射鏡部22の直径が数メートル以上)のものである。
図1及び図2に示すように、レドーム部30は、内部が中空の円錐形状であり、底面が開口している。また、レドーム部30は、頂点30aが球形状となっている。図1に示すように、レドーム部30は、円錐の中心軸がパラボナアンテナ部20の中心軸X1と一致するように、主反射鏡部22に取付けられている。レドーム部30は、主反射鏡部22の内面23、一次放射器26及び副反射鏡部27を覆って保護するレーダードームである。ここで、図2に示すように、レドーム部30の円錐形状における底面の外周における鉛直方向上方の点である点30bと、頂点30aとを結ぶ母線を、母線X3とする。そして、中心軸X1と母線X3との間の角度を、傾斜角θ1とする。レドーム部30の鉛直方向上面の地表面Grに対する設置傾斜角であるレドーム設置傾斜角θ2(レドーム部30の設置されている角度であるレドーム設置傾斜角θ2)は、支柱部10が鉛直方向に延在しているため、次の式(1)で表される。
θ2=θ1−(90°−θ0) ・・・(1)
本実施形態では、傾斜角θ1は60度であり、設置傾斜角θ0が90度である。従って、レドーム設置傾斜角θ2は傾斜角θ1と同様に60度となる。なお、傾斜角θ1は、60度に限られない。
図3は、本実施形態のレドーム部の要部断面図である。図3に示すように、レドーム部30は、ゲルコート部32、GFRP部34、多孔層部35、GFRP部36、トップコート部38が、表面31からこの順で積層されている。表面31は、図2に示すように、レドーム部30の外面であり、主反射鏡部22の内面23を覆う面とは反対側の面である。言い換えれば、表面31は、外光が照射される側の面である。すなわち、レドーム部30は、外光が照射される積層体であり、母材37を形成するGFRP部34、多孔層部35及びGFRP部36の外側の表面に、樹脂としてのゲルコート部32が積層されており、母材37の内側の表面に、トップコート部38が積層されている。
ゲルコート部32は、酸化チタン等の顔料を含む樹脂である。ゲルコート部32は、母材37の外側の表面に積層され、母材37を、例えば紫外線等から保護する。ゲルコート部32の膜厚は、例えば100μm以上500μm以下となっている。また、ゲルコート部32の色は、灰色となっている。ここでいう色とは、色の三属性である色相、彩度及び明度を含む概念である。従って、本実施形態において、色が異なるとは、色相、彩度、又は明度の少なくともいずれかが異なるということである。ゲルコート部32は、色が灰色であるので、彩度がゼロの無彩色の灰色である。ただし、ゲルコート部32は、樹脂であれば上述の成分に限られず、膜厚も任意であってもよい。また、ゲルコート部32は、灰色でなくてもよく、色は任意である。ゲルコート部32の色は、一般的には灰色であるが、ゲルコート部32の形成時に確認してもよい。また、ゲルコート部32の色は、ゲルコート部32に含有される顔料量から算出してもよい。また、ゲルコート部32の色は、パラボナアンテナユニット1が設置された後に、確認してもよい。トップコート部38は、ゲルコート部32と同じ成分の樹脂であり、膜厚もゲルコート部32と同等であるが、これに限られず、母材37の内側の表面に積層されるものであれば、成分及び膜厚は任意である。
図4は、本実施形態に係るGFRP部の詳細断面図である。GFRP部34は、例えばGFRP(Glass Fiber Reinforced Plasctic:ガラス繊維強化プラスチック)であり、ガラス繊維とプラスチック(樹脂)とを積層した複合材料からなる。GFRP部34は、レドーム部30の強度を向上させる。図4に示すように、GFRP部34は、例えば、プラスチック部41、ガラス繊維部42、プラスチック部43、ガラス繊維部44、プラスチック部45、ガラス繊維部46、プラスチック部47が、この順で積層されている。多孔層部35は、例えば多孔性のウレタン(発泡ウレタン)である。GFPR部36は、GFRP部34と同じ構成であるため、説明を省略する。
(レドームの強度の劣化について)
パラボナアンテナは、一般的に、数十年等の長期間、屋外に配置される。レドーム部30は、主反射鏡部22等を保護するものであり、強度が劣化した場合、取替や補修等を行う必要がある。従って、パラボナアンテナにおいて、レドームの強度の劣化状態を知ることは重要となっている。ここで、レドーム部30は、GFRP部34、36によって強度が向上されている。言い換えれば、レドーム部30の強度の劣化度合いは、GFRP部34、36の強度の劣化度合いに対応するものである。
パラボナアンテナ部20は、上述のように長期間屋外に配置される。従って、パラボナアンテナ部20は、長期間にわたって外光が照射される。ここで、GFRP部34は、外光が有する紫外線によって強度が劣化する。ゲルコート部32は、GFRP部34の表面に積層され、紫外線から保護する役割を有している。しかし、ゲルコート部32は、層の厚みによって、照射される紫外線の一部を内部のGFRP34まで透過させる場合がある。紫外線の透過量は、ゲルコート部32の条件に応じて変化する。従って、レドーム部30の強度の劣化度合いを知るためには、GFRP部34に照射される紫外線の量、すなわち、ゲルコート部32が透過する紫外線量を知ることが重要となる。
(ゲルコート部の膜厚減少速度算出方法について)
ゲルコート部32は、GFRP34を紫外線から保護するものであるが、ゲルコート部32自身も、紫外線により摩耗風化して徐々に膜厚が減少する。本実施形態では、ゲルコート部32が透過する紫外線量を算出するため、ゲルコート部32の膜厚減少速度を算出する。なお、ゲルコート部32の膜厚減少速度とは、ゲルコート部32に外光が照射されてから(屋外に配置されてから)、単位時間当たりのゲルコート部32の膜厚減少量を示すものである。本実施形態においては、ゲルコート部32の膜厚減少速度は、1年当たりのゲルコート部32の膜厚減少量とし、単位はμm/年とする。
本実施形態において、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、膜厚減少速度算出項を取得する。膜厚減少速度算出項とは、膜の色と膜厚減少速度との関係を示す関係式である。より詳しくは、膜厚減少速度算出項は、膜の色に対応する反射率と膜厚減少速度との関係を示す関係式である。すなわち、本実施形態に係るゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、ゲルコートの膜厚減少速度とそのゲルコートの色に対応する反射率とに関係があるとして、ゲルコートの膜厚減少速度とそのゲルコートの色に対応する反射率との関係を示す膜厚減少速度算出項を算出して、取得する。なお、ここでの反射率は、可視光の反射率であるが、例えば、紫外線の反射率であってもよい。
更に詳しくは、膜厚減少速度算出項は、次の式(2)のようになる。
y1=Ax1+B ・・・(2)
ここで、x1はゲルコートの色の反射率であり、y1はゲルコートの膜厚減少速度である。また、Aは、負の所定の係数であり、Bは、所定の係数である。膜厚減少速度算出項は、色の反射率が大きくなるに従って、膜厚減少速度を小さい値とするものである。ゲルコートは紫外線の吸収によって消滅するため、反射率が大きくなるに従って、紫外線の吸収量が減少し、膜厚減少速度が小さくなる。なお、膜厚減少速度算出項は、反射率が大きくなるに従って膜厚減少速度が小さくなるものであれば、式(2)に示す式でなくてもよく、例えば2次式等であってもよい。
本実施形態において、膜厚減少速度算出項は、具体的には、暴露試験の試験結果に基づき算出される。以下に、暴露試験の条件及び結果の一例について説明する。以下は、本実施形態における暴露試験の一例であるため、条件及び結果は、以下説明するものに限られない。暴露試験は、JISZ2831に基づいて実施される屋外暴露試験であることが好ましい。以下説明する暴露試験は、暴露試験用ゲルコート101及び暴露試験用ゲルコート102を試料として用いて、これらを屋外に暴露した試験である。暴露試験用ゲルコート101は、ゲルコート部32と同じ成分であるが、顔料の含有量が異なることにより、ゲルコート部32とは異なる色となっている。暴露試験用ゲルコート101の色は、白色であり、暴露試験用ゲルコート102の色は、青色である。また、暴露試験において、暴露試験用ゲルコート101、102の試験面は、地表面Grに対してθ3度傾斜している。すなわち、暴露試験用ゲルコート101、102の設置される角度である暴露試験設置傾斜角を、θ3度とする。
暴露試験は、以上の条件で行われ、膜厚減少速度算出項は、暴露試験下でT年経過した後の暴露試験用ゲルコート101、102の試験面の膜厚減少量に基づき算出される。表1は、暴露試験の結果の一例を示す表である。暴露試験用ゲルコート101、102の試験面のT年後の膜厚減少量(μm)と、膜厚減少速度(μm/年)を、次の表1に示す。
表1に示すように、暴露試験下でT年経過後における暴露試験用ゲルコート101の試験面の膜厚減少量を、R101(μm)とする。また、暴露試験下でT年経過後における暴露試験用ゲルコート102の試験面の膜厚減少量を、R102(μm)とする。この場合における、暴露試験用ゲルコート101の膜厚減少速度は、R101/T(μm/年)であり、暴露試験用ゲルコート102の膜厚減少速度は、R102/T(μm/年)である。
本実施形態において、膜厚減少速度算出項は、暴露試験用ゲルコート101の膜厚減少速度及び色と、暴露試験用ゲルコート102の膜厚減少速度及び色との関係に基づき、算出される。より詳しくは、膜厚減少速度算出項は、暴露試験用ゲルコート101の膜厚減少速度及び色に対応する反射率と、暴露試験用ゲルコート102の膜厚減少速度及び色に対応する反射率との関係に基づき算出される。
図5は、本実施形態における膜厚減少速度とゲルコートの色の反射率との関係を示すグラフである。図5の横軸は、反射率であり、縦軸は、膜厚減少速度である。図5に示すように、暴露試験用ゲルコート101の色である白色の反射率を75%とし、暴露試験用ゲルコート102の色である青色の反射率を20%とする。ここで、暴露試験用ゲルコート101の膜厚減少速度を2μm/年とし、暴露試験用ゲルコート102の膜厚減少速度を3μm/年とする。この場合、白色(反射率75%)における膜厚減少速度は、暴露試験用ゲルコート101の膜厚減少速度2μm/年であり(図5のポイントP101)、青色(反射率20%)における膜厚減少速度は、暴露試験用ゲルコート102の膜厚減少速度3μm/年(図5のポイントP102)である。このポイントP101とポイントP102とを結んだ直線を、直線L1とすると、直線L1は、そのゲルコートの色に対応する反射率とゲルコートの膜厚減少速度との関係を示す直線となる。本実施形態では、この直線L1を表す関係式を、膜厚減少速度算出項として算出し、取得する。
本実施形態では、以上のように、膜厚減少速度算出項を、暴露試験後における暴露試験用ゲルコート101、102の膜厚減少量に基づき算出する。ただし、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、膜厚減少速度算出項をこのように算出しなくてもよく、膜の色の反射率と膜厚減少速度との関係を示す所定の関係式から取得するものであればよい。すなわち、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、膜厚減少速度算出項を上述の式(1)とするものであればよい。
また、膜厚減少速度算出項は、膜の色と膜厚減少速度との関係を示すものであれば、膜の色の反射率と膜厚減少速度との関係を示すものでなくてもよい。例えば、膜厚減少速度算出項は、膜の明度と膜厚減少速度との関係を示すものであってもよく、膜の色毎の紫外線吸収率と膜厚減少速度との関係を示すものであってもよい。
ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、以上のように算出された膜厚減少速度算出項を取得し、ゲルコート部32の色と膜厚減少速度算出項とに基づき、ゲルコート部32の仮膜厚減少速度を算出する。ここで、仮膜厚減少速度は、ゲルコート部32の膜厚減少速度を求めるための中間値である。より詳しくは、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、ゲルコート部32の色の反射率の値を膜厚減少速度算出項に適用し、ゲルコートの仮膜厚減少速度を算出する。すなわち、ゲルコート部32の色は灰色であり、このときの反射率を35%とすると、図5の直線L1に基づき、ゲルコート部32の仮膜厚減少速度は、約2.7μm/年となる。
ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、以上のように算出されたゲルコート部32の仮膜厚減少速度と、パラボナアンテナ部20の設置傾斜角θ1とに基づき、ゲルコート部32の膜厚減少速度を算出する。ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、ゲルコート部32の膜厚減少速度が、レドーム部30と外光との角度に基づいて変化するとして、ゲルコート部32の仮膜厚減少速度の値を、角度補正項で補正して、膜厚減少速度を算出する。角度補正項は、パラボナアンテナ部20の設置傾斜角θ1に基づいて求められる補正項である。より詳しくは、角度補正項は、レドーム部30の鉛直方向上面の地表面Grに対する設置傾斜角θ2と、暴露試験用ゲルコート101、102の設置されていた角度である暴露試験設置傾斜角θ3との比である。具体的には、角度補正項をDegとしたとき、角度補正項Degは、次の式(3)により算出される。
Deg=(1+cosθ2)/(1+cosθ3) ・・・(3)
ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、角度補正項を取得し、ゲルコート部32の仮膜厚減少速度と、角度補正項とから、ゲルコート部32の膜厚減少速度を算出する。具体的には、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、ゲルコート部32の仮膜厚減少速度をV1とし、ゲルコート部32の膜厚減少速度をV2としたとき、次の式(4)のように、ゲルコート部32の膜厚減少速度V2を算出する。
V2=V1・Deg ・・・(4)
以上説明したゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法の工程を、フローチャートに基づき説明する。図6は、本実施形態に係るゲルコート部の膜厚減少速度を説明するフローチャートである。
図6に示すように、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、最初に、膜厚減少速度算出項を取得する(ステップS10)。ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、図5の直線L1を表す関係式を、膜厚減少速度算出項として取得する。
膜厚減少速度算出項を取得した後、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、膜厚減少速度算出項とゲルコート部32の色の反射率とに基づき、仮膜厚減少速度を算出する(ステップS12)。具体的には、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、ゲルコート部32の反射率を35%として、膜厚減少速度算出項に基づき、ゲルコート部32の仮膜厚減少速度を算出する。
ゲルコート部32の仮膜厚減少速度を算出した後、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、角度補正項を取得する(ステップS14)。具体的には、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、式(3)により算出された角度補正項Degの値を取得する。なお、ステップS14は、次に説明するステップS16の前に行われれば、上述のステップS10、S12より前に行われてもよい。
角度補正項を取得した後、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、ゲルコート部32の仮膜厚減少速度と角度補正項とに基づき、ゲルコート部32の膜厚減少速度を算出する(ステップS16)。具体的には、ゲルコート部32の膜厚減少速度算出方法は、式(4)に基づき、ゲルコート部32の膜厚減少速度V2を算出する。これにより、ゲルコート部32の膜厚減少速度の算出は終了する。
(ゲルコート部の紫外線透過量の積算量の算出方法について)
上述のように、ゲルコート部32を透過した紫外線は、GFRP部34に照射され、GFRP部34の強度を劣化させる。従って、本実施形態においては、レドーム部30の強度の劣化度合いを知るために、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量を算出する。
本実施形態におけるゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、ゲルコート部32の膜厚と単位時間におけるゲルコート部32の紫外線透過量との関係を示す紫外線透過量算出項を取得する。以下、紫外線透過量算出項について説明する。
紫外線透過量算出項は、ゲルコート部32の膜厚と単位時間におけるゲルコート部32の紫外線透過量との関係を示す関係式である。すなわち、本実施形態に係るゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、ゲルコートの膜厚とそのゲルコートの紫外線透過量とに関係があるとして、ゲルコートの膜厚と単位時間におけるゲルコートの紫外線透過量との関係を示す紫外線透過量算出項を算出して、取得する。
具体的には、紫外線透過量算出項は、次の式(5)のようになる。
y2=exp(C・x2) ・・・(5)
ここで、x2はゲルコート部32の膜厚であり、y2はゲルコート部32の単位時間における紫外線透過量である。また、Cは、負の所定の係数である。紫外線透過量算出項は、膜厚が小さくなるに従って、紫外線透過量が大きくなるものである。なお、紫外線透過量算出項は、膜厚が小さくなるに従って紫外線透過量が大きくなるものであれば、指数関数である式(5)に限られず、例えば1次式又は2次式等であってもよい。
本実施形態において、紫外線透過量算出項は、具体的には、紫外線試験用ゲルコート110に紫外線照射試験を実施し、その後赤外分光法を施すことにより求められる。紫外線照射試験は、所定の期間紫外線を照射する試験であり、ここでは、1年である。なお、紫外線試験用ゲルコート110は、ゲルコート部32と同じ成分である必要はなく、樹脂であればよい。
赤外分光法は、対象物に赤外線を照射して、透過赤外線(又は反射赤外線)の波長スペクトルを解析することで、対象物の分子構造等の情報を取得する分析法である。具体的には、対象物に赤外線を照射した場合、照射した赤外線が対象物を励起することにより、対象物に吸収される。吸収される赤外線の波長は、対象物の化学結合の種類によって異なるため、赤外線の波長と、吸収される赤外線の強度を示す吸光度とを解析することで、対象物の化学結合を認識することができる。
ここで、紫外線照射後の紫外線試験用ゲルコート110は、紫外線により所定の化学結合が破壊される。従って、紫外線照射後の紫外線試験用ゲルコート110に赤外線を照射した場合、破壊された化学結合に対応する波長における赤外線の吸光度は、小さくなる。以下、破壊された化学結合に対応する赤外線の波長を、特定波長と記載する。
透過赤外線の強度は、照射した赤外線の強度から吸光度を差し引いたものである。従って、紫外線照射後の紫外線試験用ゲルコート110に赤外線を照射した場合、特定波長における透過赤外線の強度の減少量は、小さくなる。また、紫外線は、紫外線試験用ゲルコート110中の分子に反射、吸収される。そのため、紫外線の照射量は、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さが深くなるに従って、小さくなり、化学結合の破壊量が小さくなる。従って、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さが深くなるに従って、特定波長での吸光度が小さくなり、特定波長での透過赤外線の強度は、大きくなる。
図7は、紫外線試験用ゲルコートに赤外線分光法を施した場合の透過赤外線の強度の一例を示すグラフである。図7の横軸は、紫外線照射後の紫外線試験用ゲルコート110に照射された赤外線の波長であり、縦軸は、透過赤外線の強度である。図7の曲線α0は、紫外線試験用ゲルコート110の表面(表面深さがゼロ)における、透過赤外線の強度の波長スペクトルを示す。図7の曲線α1は、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さd1における、透過赤外線の強度の波長スペクトルを示す。図7の曲線α2は、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さd2における、透過赤外線の強度の波長スペクトルを示す。表面深さd1は、ゼロよりも大きく、表面深さd2よりも小さい値である。すなわち、曲線α2は、表面深さが最も深い場合の透過赤外線の強度の波長スペクトルを示す。また、波長Wは、特定波長である。
曲線α0の波長WでのピークであるピークA0と、曲線α1の波長WでのピークであるピークA1と、曲線α2の波長WでのピークであるピークA2とを比較すると、透過赤外線の強度は、波長Wにおいて、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さが大きくなるに従って、大きくなっていることが分かる。紫外線試験用ゲルコート110は、紫外線の照射により、>C=C<結合が破壊される。>C=C<結合に対応する波長は、1500cm−1付近のものであるため、特定波長としての波長Wは、1500cm−1付近である。ただし、特定波長は、この波長Wに限られるものではなく、波形から適宜判断することができる。
図8は、紫外線試験用ゲルコートの表面深さ毎の赤外線ピーク面積減少量を示すグラフである。図8の横軸は、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さであり、縦軸は、波長Wでの赤外線強度のピーク面積の減少量である。波長Wでの赤外線強度のピーク面積の減少量とは、紫外線を照射した場合の波長Wでの赤外線強度のピーク面積の減少量である。すなわち、波長Wでの赤外線強度のピーク面積の減少量は、紫外線を照射する前の紫外線試験用ゲルコート110の波長Wでの赤外線強度のピーク面積の値から、紫外線を照射した後の紫外線試験用ゲルコート110の波長Wでの赤外線強度のピーク面積の値を差し引いたものとなる。従って、波長Wでの赤外線強度のピーク面積の減少量は、波長Wでの赤外線の吸光度であるともいえる。
図8は、波長Wでのピーク面積の減少量と表面深さとの関係を示すグラフである。波長Wでの赤外線強度のピーク面積は、波長Wでの透過赤外線の強度を示すものであり、波長Wでの赤外線強度のピーク面積の減少量が小さいということは、波長Wでの透過赤外線の強度が大きいことを示し、さらには、紫外線照射量が小さいことを示す。
図8のQ0は、紫外線試験用ゲルコート110の表面における波長Wでの赤外線ピーク面積減少量の値を示している。すなわち、ピークA0の面積の値である。図8のポイントQ1は、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さd1における波長WでのピークA1の面積の値である。図8のポイントQ2は、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さd2における波長WでのピークA2の面積の値である。図8の曲線L2は、ポイントQ0、Q1、Q2の近似指数曲線である。紫外線試験用ゲルコート110において、表面深さと波長Wでのピーク面積の減少量との関係は、曲線L2が表す近似式で近似される。曲線L2によると、紫外線試験用ゲルコート110は、表面深さが深くなるに従って、ピーク面積減少量(吸光度)が小さくなっている。すなわち、曲線L2は、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さが深くなるに従って、紫外線照射量が小さくなることを示している。
さらにいえば、図8の曲線L2は、紫外線試験用ゲルコート110の各表面深さにおいて、単位時間でどれだけの量の紫外線が照射されたかを示すものである。従って、図8の曲線L2は、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さ毎の単位時間における紫外線透過量を示すものであるということができる。例えば、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さd1における紫外線透過量は、膜厚d1の紫外線試験用ゲルコート110が、単位時間でどれだけ量の紫外線を透過したかを示すことと同義である。従って、本実施形態においては、図8の曲線L2を、ゲルコート部32の膜厚と単位時間における紫外線透過量との関係に置き換える。すなわち、本実施形態において、紫外線透過量算出項は、図8の曲線L2に基づき算出される。なお、ここでの単位時間は、紫外線照射試験の所定の期間である1年である。
図9は、ゲルコート部の膜厚と紫外線透過量との関係の一例を示すグラフである。図9の横軸は、ゲルコート部32の膜厚を示し、縦軸は、ゲルコート部32の単位時間における紫外線透過量を示す。図9の曲線L3は、曲線L2が表す近似式を、ゲルコート部32の膜厚と単位時間における紫外線透過量との関係に置き換えたものである。すなわち、図9の曲線L3は、図8のL2について、横軸をゲルコート部の膜厚に置き換え、縦軸を単位時間における紫外線透過量に置き換えたものである。本実施形態において、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、図9の曲線L3が表す関係式を、紫外線透過量算出項として取得する。
次に、以上説明した紫外線透過量算出項の算出方法の工程について、フローチャートに基づき説明する。図10は、紫外線透過量算出項の算出方法の工程を示すフローチャートである。
図10に示すように、紫外線透過量算出項を算出する場合、最初に、紫外線試験用ゲルコート110について紫外線を照射する紫外線照射試験を実施する(ステップS20)。
紫外線照射試験を実施した後、紫外線透過量算出項の算出方法は、紫外線試験用ゲルコート110に赤外線を照射し、その赤外線の吸光度を、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さ毎に測定する(ステップS22)。具体的には、紫外線試験用ゲルコート110に赤外線を照射し、図7に示すように、波長毎の透過赤外線の強度スペクトルを、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さ毎に測定する。上述のように、透過赤外線の強度は、照射した赤外線の強度から吸光度を差し引いたものであるため、波長毎の透過赤外線の強度スペクトルは、波長毎の吸光度のスペクトルに対応するものである。
赤外線の吸光度を表面深さ毎に測定した後、紫外線透過量算出項の算出方法は、特定波長における赤外線の吸光度である特定波長吸光度を、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さ毎に算出する(ステップS24)。具体的には、紫外線透過量算出項の算出方法は、図8の曲線L2に示すように、表面深さと波長Wでのピーク面積の減少量との関係を算出する。上述のように、波長Wは特定波長であり、ピーク面積の減少量は、吸光度に対応するため、表面深さと波長Wでのピーク面積の減少量との関係を算出するということは、特定波長吸光度を、表面深さ毎に算出することとなる。
表面深さ毎に特定波長吸光度を算出した後、紫外線透過量算出項の算出方法は、表面深さ毎に特定波長吸光度に基づき、紫外線透過量算出項を算出する(ステップS26)。具体的には、紫外線透過量算出項の算出方法は、図9の曲線L3が表す関係式を、紫外線透過量算出項とする。以上により、紫外線透過量算出項の算出は終了する。
次に、本実施形態におけるゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法について説明する。ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量とは、単位期間毎のゲルコート部32の紫外線透過量を積算した量であり、本実施形態では、1年毎のゲルコート部32の紫外線透過量を積算した量である。図11は、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法の工程を示すフローチャートである。
図11に示すように、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、最初に、母材37への積層時におけるゲルコート部32の膜厚の情報を取得する(ステップS30)。すなわち、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、外光が照射される前である膜厚減少前のゲルコート部32の膜厚値の情報を取得する。この場合、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、積層処理時のゲルコート部32の膜厚の設定値を取得してもよいし、積層処理時の膜厚測定により、積層時におけるゲルコート部32の膜厚値を取得してもよい。
積層時におけるゲルコート部32の膜厚の情報を取得した後、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、ゲルコート部32の膜厚減少速度を算出する(ステップS32)。ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、図6に示す処理により、ゲルコート部32の膜厚減少速度を算出する。なお、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、あらかじめ算出していたゲルコート部32の膜厚減少速度を取得してもよい。また、ステップS32は、ステップS30の前に行われてもよい。
ゲルコート部32の膜厚減少速度を算出した後、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、積層時におけるゲルコート部32の膜厚の情報と、ゲルコート部32の膜厚減少速度とに基づき、単位時間毎のゲルコート部32の膜厚を算出する(ステップS34)。ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、積層時におけるゲルコート部32の膜厚値から、経過時間とゲルコート部32の膜厚減少速度の値との積を差し引くことで、単位時間毎のゲルコート部32の膜厚を算出することができる。
単位時間毎のゲルコート部32の膜厚を算出した後、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、紫外線透過量算出項を取得する(ステップS36)。ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、図10に示す処理により取得した紫外線透過量算出項を取得する。なお、このステップS36は、後述するステップS38の前に行われるものであれば、ステップS30からステップS34の前に行われてもよい。
紫外線透過量算出項を取得した後、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、単位時間毎のゲルコート部32の膜厚値と、紫外線透過量算出項とに基づき、単位時間毎のゲルコート部32の紫外線透過量を算出する(ステップS38)。紫外線透過量算出項は、ゲルコート部32の膜厚と単位期間における紫外線透過量との関係を示す算出式であり、図9の曲線L3が表す関係式である。ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、単位時間毎のゲルコート部32の膜厚値を、図9の横軸の膜厚として、図9の曲線L3が表す関係式に従い、単位時間毎のゲルコート部32の紫外線透過量を算出する。ゲルコート部32の紫外線透過量は、ゲルコート部32の膜厚に応じて変化する。また、ゲルコート部32の膜厚自体も、時間の経過により変化する(小さくなる)。ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、単位時間毎のゲルコート部32の膜厚値と、紫外線透過量算出項とに基づき、単位時間毎のゲルコート部32の紫外線透過量を算出するため、ゲルコート部32の膜厚変化に対応した紫外線透過量を算出することができる。
単位時間毎のゲルコート部32の紫外線透過量を算出した後、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、単位時間毎のゲルコート部32の紫外線透過量を積算して、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値を算出する(ステップS40)。これにより、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出処理は、終了する。
表2は、図11に示す処理により算出したゲルコート部の紫外線透過量の積算量の一例を示す表である。
表2の例では、0年でのゲルコート部32の膜厚(積層時のゲルコート部32の膜厚)は110μmであり、単位期間である0年から1年におけるゲルコート部32の紫外線透過量は、0.0016となる。また、この場合での(1年経過時の)ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値は、年数が1年しか経過していないため、同様に、0.0016となる。なお、紫外線透過量の値は、ゲルコート部32が無い場合における、母材37への1年間の紫外線の照射量を1とした場合の値である。
また、表2の例では、1年経過後のゲルコート部32の膜厚が108.1μmであり、単位期間である1年から2年におけるゲルコート部32の紫外線透過量は、0.0018である。この場合での(2年経過時の)ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値は、0年から1年におけるゲルコート部32の紫外線透過量と、1年から2年におけるゲルコート部32の紫外線透過量とを積算した、0.0034になる。
表3の例では、AA年経過後に、ゲルコートの膜厚は0μmとなり、ゲルコート部32は消失することとなる。この場合、単位期間であるAA年からAA+1年におけるゲルコート部32の紫外線透過量は、1である。そして、この場合(AA+1年経過時)でのゲルコート部32の紫外線透過量の積算値は、AA+1年までのゲルコート部32の紫外線透過量を積算した値となり、ここでは、例えば10となる。
以上のように、本実施形態におけるゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、積層時におけるゲルコート部32の膜厚情報を取得するステップと、膜厚減少速度算出項を取得するステップと、ゲルコート部32の色と膜厚減少速度算出項とから、ゲルコート部32の膜厚を経時毎に算出するステップと、紫外線透過量算出項を取得するステップと、経時毎のゲルコート部32の膜厚と紫外線透過量算出項とから、ゲルコート部32の経時毎の紫外線透過量を算出するステップと、ゲルコート部32の経時毎の紫外線透過量を積算して、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量を算出する。
このように、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、ゲルコート部32の単位時間毎の膜厚の変化、及び膜厚と紫外線透過量との関係を考慮して、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量を算出することができる。従って、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、ゲルコート部32を透過してGFRP部34に照射される紫外線量をより正確に算出することができるため、レドーム部30の強度の状態を適切に認識することができる。
また、膜厚減少速度算出項は、膜の色と膜厚減少速度とを関係付けたものである。従って、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、膜の色に応じて正確に膜厚減少速度を算出し、ゲルコート部32の紫外線透過量をより正確に算出することができる。さらに、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、ゲルコート部32の色の情報を取得するだけで、ゲルコート部32の膜厚減少速度を算出することができるため、容易、かつ正確に、ゲルコート部32の紫外線透過量を算出することができる。
さらに、膜厚減少速度算出項は、膜の色の反射率と膜厚減少速度とを関係付けたものであり、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、ゲルコート部32の色の反射率に基づいて、ゲルコート部32の膜厚減少速度を算出する。従って、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、ゲルコート部32に照射される紫外線量に応じて膜厚減少速度を算出することができるため、膜厚減少速度をより正確に算出することができる。
さらに、膜厚減少速度算出項は、膜の色の反射率が大きくなるに従って、膜厚減少速度を小さくする。すなわち、膜厚減少速度算出項は、反射率が大きくなるに従って、ゲルコート部32に照射される紫外線量が大きくなり、膜厚減少量を大きくするものであるといえる。従って、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、膜厚減少速度をより正確に算出することができる。
また、膜厚減少速度算出項は、暴露試験用ゲルコート101、102の暴露試験後における膜厚減少量に基づき算出する。膜厚減少速度算出項は、実際に試験によるものであるため、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、膜厚減少速度をより正確に算出することができる。
さらに、ゲルコート部32の膜厚減少速度は、仮膜厚減少速度に加え、レドーム部30の設置されている角度であるレドーム設置傾斜角θ2にも基づいて算出される。ゲルコート部32に照射される紫外線量は、ゲルコート部32への外光の照射角度に応じて変化する。ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、レドーム設置傾斜角θ2に基づいて膜厚減少速度を算出するため、ゲルコート部32に照射される紫外線量をより正確に考慮して、膜厚減少速度をより正確に算出することができる。
さらに詳しくは、ゲルコート部32の膜厚減少速度は、レドーム設置傾斜角θ2と、暴露試験設置傾斜角θ3との比である角度補正項にも基づき算出される。従って、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、ゲルコート部32に照射される紫外線量をより正確に考慮して、膜厚減少速度をより正確に算出することができる。
さらに、紫外線透過量算出項は、紫外線試験用ゲルコート110に所定の期間紫外線を照射する(紫外線照射試験を行う)ステップと、紫外線照射後の紫外線試験用ゲルコート110に赤外線を照射し、照射した赤外線の吸光度を紫外線試験用ゲルコート110の表面深さ毎に測定するステップと、特定波長吸光度を紫外線試験用ゲルコート110の表面深さ毎に算出するステップと、紫外線透過量算出項を、紫外線試験用ゲルコート110の表面深さ毎の特定波長吸光度に基づき算出するステップと、により算出される。このように、紫外線透過量算出項は、試験により算出される。従って、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、ゲルコート部32の紫外線透過量をより正確に算出することができる。
さらに、本実施形態においては、パラボナアンテナのレドームであるレドーム部30に積層されるゲルコート部32の紫外線透過量の積算量を算出するものである。パラボナアンテナは、高所に配置されるものもあり、特に大型のパラボナアンテナであれば、レドーム等の取替作業が困難である。従って、本実施形態によりゲルコート部32の紫外線透過量の積算量を算出し、レドーム部30の強度の状態を正確に認識することは、例えば不要な取替作業の機会を削減することができる。ただし、本実施形態においては、ゲルコート部32及びGFRP部34を含むパラボナアンテナのレドームについて説明したが、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、パラボナアンテナのレドームについてのものに限られない。ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量の算出方法は、母材及び母材の表面に積層される樹脂を有し、外光が照射される積層体であれば、任意の積層体に適用することができる。
(レドーム部の強度の劣化率の算出について)
本実施形態においては、以上のようにゲルコート部32の紫外線透過量の積算量を算出し、算出したゲルコート部32の紫外線透過量の積算量に基づき、レドーム部30の強度の劣化の度合い(劣化率)を算出する。以下、レドーム部30の強度の劣化率の算出方法について説明する。
レドーム部30の強度の劣化率の算出方法は、母材37のGFRP部34への紫外線照射量と母材37の強度の劣化率との関係を示す基準強度率と、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算量とに基づき、レドーム部30の強度の劣化率を算出する。
表3は、基準強度率の一例を示す表である。表3は、ゲルコート部32を積層しない母材37について暴露試験を行った場合における母材37の強度の劣化率を示す。表3の暴露期間とは、母材37への暴露期間を示す。表3の紫外線照射量とは、母材37のGFRP部34への紫外線透過量を示す。紫外線照射量は、上述のように、ゲルコート部32を積層しない母材37のGFRP部34への1年間の紫外線の照射量を1とした場合の値である。従って、暴露期間が1年において、紫外線照射量は1となっている。また、表3の基準強度率とは、暴露期間0年における母材37の強度を100とした場合における、暴露期間毎の母材37の強度を示すものである。すなわち、この基準強度率は、ゲルコート部32を積層しない場合における母材37の強度の劣化率を示す。基準強度率は、暴露試験後の母材37に強度試験を行った結果から算出されたものである。
表3に示すように、暴露期間0年の紫外線照射量は0であり、基準強度率は100%である。また、暴露期間1年の紫外線照射量は1であり、基準強度率は97.3%である。また、暴露期間2年の紫外線照射量は2であり、基準強度率は96.3%である。また、暴露期間10年の紫外線照射量は10であり、基準強度率は90.3%である。また、暴露期間15年の紫外線照射量は15であり、基準強度率は87.7%である。
表2に示すように、AA年でのゲルコート部32の紫外線透過量の積算量は、10であった。すなわち、ゲルコート部32が積層されていた場合におけるAA年でのGFRP部34への紫外線照射量は、表3の暴露期間10年の紫外線照射量と同じとなる。従って、ゲルコート部32が積層されていた場合におけるAA年でのレドーム部30の強度は、基準強度率90.3%と同じとなる。すなわち、従って、ゲルコート部32が積層されていた場合におけるAA年でのレドーム部30の強度劣化率は、9.7%となる。
なお、レドーム部30の強度の劣化率の算出方法は、以上のように、表3から算出するが、これに限られない。レドーム部30の強度の劣化率の算出方法は、ゲルコート部32が積層されない場合の母材37への紫外線照射量と、暴露期間毎の母材37の強度との関係に基づき算出されるものであればよい。
レドーム部30の強度の劣化率の算出方法は、以上のように、ゲルコート部32が積層されていた場合におけるレドーム部30の強度劣化率を算出するが、以下、レドーム部30の強度の劣化率の算出方法の工程について、フローチャートに基づき説明する。図12は、レドーム部の強度の劣化率の算出方法の工程を示すフローチャートである。
図12に示すように、レドーム部30の強度の劣化率の算出方法は、最初に、レドーム部30の基準強度率を取得する(ステップS50)。レドーム部30の基準強度率は、表3に示す値であり、ゲルコート部32が積層されない場合の母材37への紫外線照射量と、暴露期間毎の母材37の強度を示すものである。
レドーム部30の基準強度率を取得した後、レドーム部30の強度の劣化率の算出方法は、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値を算出する(ステップS52)。レドーム部30の強度の劣化率の算出方法は、図11に示した処理により、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値を算出する。なお、このステップS52は、ステップS50より先に行われるものであってもよい。
ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値を算出した後、レドーム部30の強度の劣化率の算出方法は、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値と、レドーム部30の基準強度率を比較して、レドーム部30の強度劣化率を算出する(ステップS54)。より詳しくは、レドーム部30の強度の劣化率の算出方法は、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値と、表3での紫外線照射量とを比較し、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値と同じ値の紫外線照射量が照射された年数を表3から読み取る。そして、レドーム部30の強度の劣化率の算出方法は、読み出した年数における母材37の強度の劣化率を、レドーム部30の強度の劣化率とする。以上により、レドーム部30の強度劣化率の算出処理は終了する。
以上のように、レドーム部30の強度劣化率の算出方法は、基準強度率を取得するステップと、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値を算出するステップと、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値と基準強度率とに基づき、レドーム部30の強度劣化率を算出するステップとを有する。レドーム部30の強度劣化率の算出方法は、このように、ゲルコート部32の紫外線透過量の積算値によりレドーム部30の強度劣化率を算出するため、レドーム部30の強度の状態を正確に認識することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態の内容によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。